(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772162
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】合金ホイールを被覆する方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/04 20060101AFI20201012BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20201012BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20201012BHJP
B60B 3/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
B05D3/04 C
B05D7/14 P
B05D3/12 Z
B60B3/00 A
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-544563(P2017-544563)
(86)(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公表番号】特表2018-504272(P2018-504272A)
(43)【公表日】2018年2月15日
(86)【国際出願番号】US2015059954
(87)【国際公開番号】WO2016077345
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2018年11月6日
(31)【優先権主張番号】62/077,447
(32)【優先日】2014年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517059506
【氏名又は名称】スピアリア インダストリーズ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】カカー、パービーン
(72)【発明者】
【氏名】シュノー、ヘンリー クレー ザ サード
【審査官】
團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0015209(US,A1)
【文献】
特開2002−233901(JP,A)
【文献】
特表2008−540771(JP,A)
【文献】
特開2008−142713(JP,A)
【文献】
特開2008−104933(JP,A)
【文献】
特開2006−181571(JP,A)
【文献】
米国特許第05526977(US,A)
【文献】
特開平10−193512(JP,A)
【文献】
特開平10−225860(JP,A)
【文献】
特開平02−265680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05D 1/00− 7/26
B32B 1/00−43/00
B60B 1/00−11/10
17/00−19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および凹面を画定する3次元形状を有する合金ホイールを形成する工程と、
前記合金ホイールの前記表面を機械加工して前記表面にホイール合金の平滑面を与えると共に、前記表面の前記平滑面と前記凹面との間に境界(edge)を画定する工程と、
前記合金ホイールに向けて大気圧プラズマジェットを発射するノズル要素を近づける工程と、
前記大気圧プラズマジェットを前記表面の前記平滑面、前記境界、および前記凹面の少なくとも一部に向けて発射して、少なくとも前記表面および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界上に合金酸化物を形成する工程と、
第1のポリマー被覆を、前記表面、前記凹面および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界に塗布する工程と、
を含む、合金ホイールを被覆する方法。
【請求項2】
前記大気圧プラズマジェットを前記合金ホイールに向けて発射する前記工程は、前記ノズル要素を前記合金ホイールの半径方向内側および半径方向外側に関節運動させながら、前記合金ホイールを前記ノズル要素に対してホイール軸の周りを回転させることによってさらに特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面、前記凹面、および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界の表面エネルギーを第1の表面エネルギーから第2の表面エネルギーに変化させる工程をさらに含み、前記第2の表面エネルギーは、前記第1の表面エネルギーよりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記大気圧プラズマジェットを発射する前記工程は、前記大気圧プラズマジェットに反応物を注入して、前記表面、前記凹面、および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界の反応性を増加させることによってさらに特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記大気圧プラズマジェットに前記反応物を注入する前記工程が、前記大気圧プラズマジェットにシロキサンを注入することによってさらに特徴付けられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ノズル要素を近づける前記工程は、前記大気圧プラズマジェットを前記合金ホイールに向けて協働的に発射する複数のノズルを近づけることによってさらに特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ノズル要素を近づける前記工程は、ノズルを前記表面、前記凹面および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界から一定の距離に維持するための関節アームに前記ノズルを取り付けることによってさらに特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記大気圧プラズマジェットを前記第1のポリマー被覆の上に発射し、その上にポリマー被覆の第2の層を塗布する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記合金ホイールの前記表面を機械加工して前記合金ホイールの前記表面に前記平滑面を与える前記工程が、前記第1のポリマー被覆を塗布する前記工程の後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
表面および凹面を画定する3次元形状を有する合金ホイールを被覆する方法であって、
第1の塗料被覆を前記合金ホイールに塗布する工程と、
前記合金ホイールに向けて大気圧プラズマジェットを発射するノズル要素を近づける工程と、
第2の塗料被覆を前記第1の塗料被覆上に塗布する工程と、
前記第2の塗料被覆の塗布前に、前記合金ホイールに向けて前記第1の塗料被覆上に前記大気圧プラズマジェットを発射する工程と、
を含む、方法。
【請求項11】
前記第1の塗料被覆を塗布する前記工程は、プライマー被覆を塗布することとしてさらに特徴付けられ、前記第2の塗料被覆を塗布する前記工程は、カラー被覆を塗布することとしてさらに特徴付けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の塗料被覆を塗布する前記工程は、カラー被覆を塗布することとしてさらに特徴付けられ、前記第2の塗料被覆を塗布する前記工程は、クリア被覆を塗布することとしてさらに特徴付けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の塗料被覆を塗布する前に前記合金ホイールに化成被覆(conversion coating)を塗布する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の塗料被覆を塗布する前に前記合金ホイールに大気圧プラズマ処理を施す工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の塗料被覆を塗布する前に前記合金ホイールに向けて前記第1の塗料被覆上に前記大気圧プラズマジェットを発射する前記工程は、前記第1の塗料被覆の表面エネルギーを増加させることによってさらに特徴付けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の塗料被覆を除去することによって前記合金ホイールの前記表面を露出させ、次いで前記大気圧プラズマジェットを当該露出面に向けて発射する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記露出面が前記大気圧プラズマジェットにさらされた後に、前記合金ホイールの前記露出面の上にクリア被覆を塗布する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1および前記第2の塗料被覆を除去することによって前記合金ホイールの前記表面を露出させ、次いで前記大気圧プラズマジェットを当該露出面に向けて発射する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記露出面が前記大気圧プラズマジェットにさらされた後に、前記合金ホイールの前記露出面の上にクリア被覆を塗布する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(先願)
本出願は、2014年11月10日に出願された米国仮特許出願第62/077,447号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本出願は、概して、改善された耐久性を提供するための鋳造合金ホイールを被覆する方法に関する。より具体的には、本出願は、改善された耐久性を提供するための被覆方法の一部としてプラズマを用いて鋳造合金ホイールを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車外装部品の耐久性を改善することは、現在進行中の努力である。特に、金属基材の外装被覆のチップまたは他の磨耗は、アルミニウム合金成分上に白い錆として現れる酸化による被覆の促進された破壊を引き起こすことが知られている。これは、チップや錆にも強い審美的に快適な表面を提供するためにかなりの量の加工が必要なアルミホイールの場合に特に当てはまる。今日まで、鋳造合金ホイールで実施された処理のいずれも、OEM顧客が要求する高められた耐久性を提供することができなかった。
【0004】
典型的な鋳造合金ホイールの3次元形状は、被覆方法の複雑さを増す。本発明の方法は、3次元形状を達成するための鋳造プロセスを通じて合金ホイールを形成することから始まるいくつかの工程を含む。形成に続いて、合金ホイールを機械加工して、所望の形状を有する平滑面を提供する。機械加工後、ホイール全体が、液体洗浄および化成被覆の添加を含む前処理を受けて、耐食性および改善された塗料接着性を提供する。化成被覆は、塗料被覆を受けるための合金の表面を調製するための酸性洗浄を含むことが知られている。化成被覆での処理に続いて、ホイールは粉末プライマーおよび液体カラー被覆で塗装され、その後ホイールの表面面が再び機械加工されて明るく機械加工された表面を露出させ、所望の美的効果を達成する。ホイールの機械加工された部分を再び化成被覆で処理し、粉末または液体のクリア被覆で塗装して2トーンの外観を得、ホイールの表面が明るく機械加工された表面を示し、ホイールの3次元輪郭の残りの部分はカラー被覆を呈する。
【0005】
この方法は、非常に面倒であるばかりでなく、特にホイールの表面におけるクリア被覆の耐久性が、増大する消費者の期待と足並みが揃わない。化成被覆を適用するための塗布装置を維持し、操作することに関連するコストは、非常に高くなりつつあり、一方で必要な耐久性を提供しない。したがって、合金ホイールの被覆された表面の耐久性を向上させると同時に、耐久性のある被覆を提供するのに必要な工程数を同時に低減することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
強化された耐久性を提供する合金ホイールを被覆する方法が開示される。表面と凹面を画定する3次元形状を有する合金ホイールが形成される。ホイールの表面は機械加工され、表面に平滑面を与え、表面の平滑面と凹面との間の境界(edge)を画定する。ホイールに向かってプラズマジェットを発射するノズル要素が近づけられている。プラズマジェットは、表面の平滑面に向けて、境界に向けて、および凹面の少なくとも一部に向けて発射され、少なくとも表面および表面と凹面との間に配された境界の上に合金酸化物を形成する。第1のポリマー被覆が、表面、凹面および表面と凹面との間に配された境界に塗布される。
【0007】
プラズマジェットをホイール表面に向けて発射することに加えて、第2の塗料被覆を塗布する前に、第1の塗料被覆上にプラズマジェットを任意に発射する。第1の塗料被覆をプラズマ処理に供することにより、被覆層間の接着性を向上させることが判明している。プラズマジェットをホイール合金上に発射することと組み合わせて使用すると、多層被覆接着性および耐久性の改善が達成可能である。
【0008】
本出願の本発明の方法は、先行技術の被覆方法でこれまで達成できなかった耐久性を向上させた。本出願の方法に供されたホイールで実施された性能試験の前に、合金表面を従来の化成被覆で処理することにより、ホイール表面がポリマー被覆で塗装されたときに最良の耐久性を提供すると考えられていた。加速試験後の改善は、予想外の耐久性結果を提供することによってすべての予想を上回った。湿度チャンバーでの糸状試験の後、ASTM試験手順に従った合金基材にスクライバーで刻まれた線(line scribed)から腐食はほとんど広がらなかった。あるいは、従来の化成被覆を使用した従来のホイール被覆システムは、3mmを超える腐食を示した。
【0009】
グラベロメーター試験は、本発明の方法で被覆されたホイールおよび従来の方法で被覆されたホイールについてASTM D3170規格に従って行われた。被覆は傷ついたが、本発明の方法を用いて被覆されたホイールは、グラベロメーター試験を受けた後、被覆層のチップ(chip)を示さず、ASTM定格がA、または最も高い定格であった。従来の被覆を有するホイールは、3〜6mmの範囲のかなりの数の被覆チップを示した。
【0010】
本発明の他の利点は、添付の図面とともに考慮される場合、以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるように、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のホイールおよびノズル要素の断面図である。
【
図2】本発明のホイールおよびノズル要素の代替的な実施形態の断面図である。
【
図3】本発明の方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【
図4】本発明の方法のさらなる実施形態のフローチャートを示す。
【
図5】本発明の方法のまたさらなる実施形態のフローチャートを示す。
【
図6】本発明の方法のまたさらなる実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアルミニウムホイールを被覆する方法は、従来技術のものよりも合理化された方法を提供すると同時に、ホイールの耐久性を向上させる。ここで
図1を参照すると、アルミニウムホイールの断面が概して10で示されている。ホイール10は、従来の形成方法によって形成され、機械加工されたホイールの表面12を含み、「明るく機械加工された(bright machined)」表面を形成する。ラグ開口部13およびバルブステム開口部15を形成する追加の機械操作が含まれるが、本発明の範囲内には含まれない。ホイール10は、当業者には周知のようにホイールがその周りを回転するホイール軸aを画定する。ホイール10はまた、ホイールスポークの側部およびホイールリム17の可視部分を画定する凹面14を有する3次元形状を含む。境界19は、機械加工表面12と凹面14との間に配される。
【0013】
ノズル要素21は、例えばロボットアームなどの関節アーム25に取り付けられたプラズマノズル23を含む。プラズマノズル23は、その内容が参照により本明細書に含まれる米国特許第6,677,550号明細書に記載されているように、大気環境においてプラズマジェット27を発射する。ノズル23は、PlasmaTreat GmbHによって提供される。しかしながら、大気圧プラズマジェットを提供することができる他の同等のノズル23を使用することもできる。ガスライン29は、必要に応じて反応ガスをノズル23に供給する。本発明者らは、本明細書の以下でより明らかになるように、シロキサンまたは他の反応物で十分であると考える。
【0014】
関節アーム25は、ノズル23をホイール軸aに対して略平行な方向と、ホイール10に対して半径方向内側および外側に横方向とに移動させる。処理中、ホイール10は軸aを中心に回転し、ノズル21はプラズマジェット27をホイール10に向けて発射させる。ホイールが回転する間、関節アームはノズル21を半径方向に移動させ、プラズマジェット27がホイールの表面12および境界19の全体に接触するようにする。ノズル23は、引き続きプラズマジェット27をホイール10のスポーク33とラグ開口部13との間の空間31に発射させて、凹面14の少なくとも一部がプラズマ処理されるようにする。
【0015】
2つのノズル要素21が含まれる代替の実施形態が
図2に示されている。各ノズル要素21は、関節アーム25に取り付けられたノズル23を含む。2つのノズル要素21は、プラズマ処理のサイクル時間を半減させると考えられる。各ノズル21は、軸aに平行な横方向に、そしてホイールに関する半径方向に移動する。一例では、ホイールは180°だけ移動し、ノズルはプラズマジェット27を所望の位置に発射する。さらに、各関節アーム25がホイール10の周りに各ノズル23を移動させるが、ホイールは静止位置に留まることができ、凹面14にまっすぐに(directly)プラズマを発射することを含むとさらに考えられる。サイクル時間をさらに短縮するために、3つ以上のノズル要素21を選択することができるとさらに考えられる。
【0016】
代替の実施形態では、複数のノズルが、軸aから半径方向外側に延びて、プラズマプロセスを完了するためにホイールが360°の1回転だけ回転することが必要である。さらに別の実施形態では、複数のノズル29は、軸aから半径方向外側に延びるX形状または十字形状として構成され、関節アーム25がホイール10の周りにノズル29を移動させるが、ホイールは十分なプラズマ被覆のために90°回転するだけで、または全く回転しなくてもよい。
【0017】
ここで
図3を参照すると、第1の実施形態のフローチャートが概して16で示されており、番号の付いた各ボックスは、ホイール10の処理および被覆の異なる工程を表している。ホイール10は、最初に、工程18で特定されるように幾何学的に望ましい構造に形成される。形成工程18に続いて、ホイール10には工程20で特定されるような従来の洗浄および前処理が施され、例えばリン酸系洗浄剤のような酸性洗浄剤がホイールの表面を洗浄し、ジルコニウムチタン分子エッチングを行い、塗料被覆を塗布するためのホイールの全表面を調製するジルコニウム系化成被覆を形成する。前処理工程20に続いて、ベース被覆が工程22で特定されるようにプライマー表面を提供するホイール表面全体に塗布される。工程22でベース被覆を塗布した後、カラー被覆が、工程24で特定されるようなホイール10の少なくとも3次元表面14に塗布される。時にはベース被覆と呼ばれるステップ24のカラー被覆は、ホイール10の審美性をさらに向上させるために、3次元表面14に視覚的な深さを加えるためのカラーフレークおよび金属フレーク用の顔料を含む。カラー被覆工程24に続いて、ホイール10の表面12が旋盤上で機械加工されて、工程26で特定されるような明るく機械加工された外観を有する概して平坦な表面を提供する。当業者であれば、各塗料塗布工程20、24、32の後に塗料を塗料焼成炉で硬化させることを理解すべきである。
【0018】
機械加工26工程が、むき出しの、平滑に機械加工されたアルミニウムであるホイール10の表面12に対して実行された後、表面12は、工程28で特定されるような乾燥前処理を受ける。乾燥前処理工程28は、合金粉砕物、粉塵および離型剤を除去することによって、表面12に清浄な表面を提供するために、ホイール10を洗浄28Aおよびすすぎ28Bすることを含む。すすぎに続いて、ホイールの表面12には、ドライクリーニングをホイール10の表面12に提供するための大気圧プラズマジェット27を有するプラズマ処理が施される。これは、プラズマノズル23が、ホイール10の表面12を含む明るく機械加工された表面上にプラズマジェット27を提供するように示されている
図1に最もよく表されている。
【0019】
この実施形態では、ノズル29がホイール10の軸a(
図1および2)に向かってプラズマ処理28C(
図4)を提供するための軸aに向かうリム17付近からホイール10の明るく機械加工された表面12およびホイール10の3次元表面14と表面12との間に配された境界30まで移動する間、ホイール10は、軸a(
図3)に対して枢動する。この実施形態では、工程28Cで使用されるプラズマジェット27は、ホイール10の明るく機械加工された表面12に迅速なドライクリーニングを提供するスプレーパターンを含む。
【0020】
図4の工程28Dにおいて、ホイール10の明るく機械加工された表面12上にアルミニウムシロキサン分子構造または他の合金シロキサン構造が形成されたプラズマジェット31にシロキサンまたは同等の反応物が注入される乾式変換プロセスが実行される。この実施形態では、本発明者らは、プラズマジェット31の直径が約6mmであると考えている。しかしながら、上述した工程28Bの乾燥またはプラズマ用のノズル23構成の複数の実施形態もまた使用され得る。さらに、工程28Cおよび28Dの両方についてノズル23をホイール10の明るく機械加工された表面12から有効距離に離間させることが望ましい。ホイール10の明るく機械加工された表面12が実質的に平坦でない限り、ノズル23はホイール10の表面12に向かって移動し、上記のように表面12からの有効距離を維持する。上述したように、境界19はまた、プラズマジェット27を受ける。
【0021】
乾燥変換工程28Dに続いて、乾燥予熱工程28Eが実行され、工程32で特定されるクリア被覆塗装用のホイールが用意される。クリア被覆は、特定のホイールの必要性および性能要件に応じて、粉末または液体のいずれかである。クリア被覆が硬化した後、ホイールは工程34に示すように梱包および出荷の準備が整う。
【0022】
別の実施形態を
図4に示す。この実施形態では、ホイールは、上述の工程36で形成される。形成に続いて、ホイール全体が工程38で特定されるカラー前処理を受ける。カラー前処理工程38の間に、工程38Aおよび38Bで特定されるように、ホイール全体が洗われ、すすがれ、ホイール10の表面から不純物質を取り払う。工程38Cとして特定されるように、ホイール10全体が大気プラズマクリーニングで処理される。この実施形態では、ホイールは、プラズマガスがホイール10の全表面上でプラズマクリーニングを行う真空チャンバー内に配置される。プラズマクリーニング工程38Cに続いて、プラズマまたは乾燥変換工程38Dが実行される。この工程38Dにおいて、チャンバーは再び真空中に維持され、シロキサンガス、または同等の反応物が、ホイール全体をプラズマ処理する前に注入される。したがって、ホイール全体は、シロキサンアルミニウム、または同等のシロキサン合金でエッチングされた表面を含む。プラズマ変換工程38Dに続いて、ホイール10は、ホイール10の乾燥前処理工程38を完了する乾燥予熱工程38Eを受ける。ベース被覆またはプライマー塗布は、工程40で特定されるように、乾燥前処理工程38に続く。ベース被覆塗布工程40に続いて、カラー適用工程42が、上記と同様の方法で行われる。
【0023】
ホイール10の表面12には、上述したのと同様の方法で行われる、明るく機械加工された表面12を露出させる機械加工工程44が施される。機械加工工程44の後、上述した実施形態の工程28で示したクリア前処理工程と同様の乾燥前処理工程46が行われる。したがって、この実施形態のホイール10の明るく機械加工された表面12は、クリア被覆塗布工程48に付される前に、プラズマジェット27による大気プラズマクリーニングおよびプラズマ変換を受ける。上述のように、クリア被覆の塗布は、粉末クリア被覆または液体クリア被覆の形態をとる。さらに上述されるように、各塗料塗布工程40、42、48の後に塗料を塗料焼成炉で硬化させる。クリア被覆が一旦硬化すると、ホイールは顧客への出荷のために包装される。
【0024】
さらに別の実施形態を
図5に示す。この実施形態では、第1の工程は、形成工程47であり、その後ホイール10はカラー前処理工程49にかけられる。カラー前処理工程49は、ホイールが液体洗浄および液体変換を受ける従来のカラー前処理、または所望の乾式洗浄および乾式変換のいずれかである。カラー前処理工程49に続いて、ホイールにはベース被覆塗布工程50が施される。工程50は、特にホイール10の3次元表面14にプライマーを設ける工程を含む。ベース被覆塗布工程50の後、ホイール10上に配置されたベース被覆を上述したような乾燥プラズマクリーニング52Aに供する被覆間変換工程52が実行され、続いて、プラズマジェットに配置されたシロキサンまたは他の反応物を有するプラズマの乾燥変換工程52Aが実行され、ベース被覆塗布工程50の間に塗布されたベース被覆の化学組成を変える。
【0025】
被覆間変換工程52に続いて、ホイールは、カラー適用工程54を介して、特に3次元表面14上にカラー被覆を受ける。次に、ホイール10の表面12に機械加工工程56を施して明るく機械加工表面を与え、当該表面は、次に、従来の液体前処理または上述のプラズマジェット27を用いたプラズマクリーニングおよびプラズマ変換処理のいずれかであるクリア前処理工程58を受ける。クリア前処理工程58が完了すると、クリア被覆塗布工程60は、ホイール10全体に美的に好ましい仕上げを与える。上述されるように、各塗装工程50、54、60の後に塗料を塗料焼成炉で硬化させる。完了すると、ホイール10は、顧客への出荷のために包装される。
【0026】
ここで
図6を参照すると、本発明のプラズマクリーニングおよびプラズマ変換工程を利用して代替のおよび冗長な乾燥処理工程をホイール10に適用できる本発明の柔軟性が示されている。このようにして、ホイールが工程62で形成され、続いて液体洗浄および液体変換被覆を利用するカラー前処理工程64が行われる。次に、ベース被覆塗布工程66において、プライマーがホイール10に塗布される。
【0027】
ベース被覆塗布工程66に続いて、ホイールは、ベース被覆塗布工程66で塗布されたプライマーのプラズマクリーニング68Aおよびプラズマ変換工程68Bを利用して、上記実施形態で説明したのと同じ方法で実施される被覆間変換工程68を受ける。被覆間変換工程68に続いて、ホイール10にカラー適用工程70が施され、これにより少なくともホイール10の3次元表面14にカラー被覆が施される。
【0028】
カラー適用工程70に続いて、ホイール10の表面12は、機械加工工程72の間に旋盤上で機械加工されて、ホイール10の表面12に明るく機械加工面を与える。機械加工工程72に続いて、クリア前処理工程74が行われ、ホイール10が最初に洗浄工程74Aで洗浄され、すすぎ工程74Bですすがれる。すすぎ工程74Bに続いて、上述のシロキサンまたは同等の反応物を含む周囲環境プラズマジェット27を利用したドライクリーニング工程74Cおよび乾燥変換工程74Dが行われる。乾燥変換工程74Dに続いて、ホイールが乾燥され、予熱され、その後クリア被覆塗布工程76が行われ、ホイール全体にクリア被覆が施される。上述されるように、各塗装工程66、70、76の後に塗料を塗料焼成炉で硬化させる。クリア被覆工程76が完了した後、ホイール10は包装されて顧客に出荷される。
【0029】
当業者であれば、各プラズマ工程は、少なくともホイール10の明るく機械加工された表面12にドライクリーニングを提供するだけでなく、シロキサンまたは類似の反応性化合物を用いた乾燥変換もまた遷移境界19に同じ前処理を施す。各実施形態において、チップ試験および腐食試験を受けると、ホイールの耐久性能は、予想外の向上した結果を示した。本発明者らが意図するドライクリーニングおよび乾燥変換工程の様々な適用方法は、ホイール10が、その軸a上で3次元CNC表面形状に沿って枢動され、それによって、プラズマジェット27が、関節アーム25を介してホイールの輪郭に追従する2D回転プロファイルと、周囲環境およびシロキサン強化工程の両方で、低真空環境下でのホイール全体のプラズマ処理とを含む。
【0030】
本発明は、例示的な方法で説明されており、使用されている用語は、限定ではなく説明のためのものであることが意図されていることを理解されたい。明らかに、上記教示に照らして、本発明の多くの改変および変形が可能である。したがって、本明細書の中で、参照番号は単に便宜上のものであり、決して限定するものではなく、本発明は具体的に記載されている以外の方法で実施することができることを理解されたい。
【0031】
(付記)
(付記1)
表面および凹面を画定する3次元形状を有する合金ホイールを形成する工程と、
前記ホイールの前記表面を機械加工して前記表面に平滑面を与えると共に、前記表面の前記平滑面と前記凹面との間に境界(edge)を画定する工程と、
前記ホイールに向けてプラズマジェットを発射するノズル要素を近づける工程と、
前記プラズマジェットを前記表面の前記平滑面、前記境界、および前記凹面の少なくとも一部に向けて発射して、少なくとも前記表面および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界上に合金酸化物を形成する工程と、
第1のポリマー被覆を、前記表面、前記凹面および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界に塗布する工程と、
を含む、合金ホイールを被覆する方法。
【0032】
(付記2)
前記プラズマジェットを前記ホイールに向けて発射する前記工程は、前記ノズル要素を前記ホイールの半径方向内側および半径方向外側に関節運動させながら、前記ホイールを前記ジェット要素に対してホイール軸の周りを回転させることによってさらに特徴付けられる、付記1に記載の方法。
【0033】
(付記3)
前記表面、前記凹面、および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界の表面エネルギーを第1の表面エネルギーから第2の表面エネルギーに変化させる工程をさらに含み、前記第2の表面エネルギーは、前記第1の表面エネルギーよりも大きい、付記1に記載の方法。
【0034】
(付記4)
前記プラズマジェットを発射する前記工程は、前記プラズマジェットに反応物を注入して、前記表面、前記凹面、および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界の反応性を増加させることによってさらに特徴付けられる、付記1に記載の方法。
【0035】
(付記5)
前記プラズマジェットに反応物を注入する前記工程が、前記プラズマジェットにシロキサンを注入することによってさらに特徴付けられる、付記1に記載の方法。
【0036】
(付記6)
ノズル要素を近づける前記工程は、プラズマジェットを前記ホイールに向けて協働的に発射する複数のノズルを近づけることによってさらに特徴付けられる、付記1に記載の方法。
【0037】
(付記7)
ノズル要素を近づける前記工程は、前記ノズルを前記表面、前記凹面および前記表面と前記凹面との間に配された前記境界から一定の距離に維持するための関節アームにノズルを取り付けることによってさらに特徴付けられる、付記1に記載の方法。
【0038】
(付記8)
プラズマジェットを前記第1のポリマー被覆の上に発射し、その上にポリマー被覆の第2の層を塗布する工程をさらに含む、付記1に記載の方法。
【0039】
(付記9)
前記ホイールの前記表面を機械加工して前記ホイールの前記表面に平滑面を与える前記工程が、前記第1のポリマー被覆を塗布する前記工程の後に行われる、付記1に記載の方法。
【0040】
(付記10)
表面および凹面を画定する3次元形状を有する鋳造合金ホイールを被覆する方法であって、
第1の塗料被覆を前記鋳造合金ホイールに塗布する工程と、
前記ホイールに向けてプラズマジェットを発射するノズル要素を近づける工程と、
第2の塗料被覆を前記鋳造合金に塗布する工程と、
前記第2の塗料被覆の塗布前に、前記ホイールに向けて前記第1の塗料被覆上にプラズマジェットを発射する工程と、
を含む、方法。
【0041】
(付記11)
第1の塗料被覆を塗布する前記工程は、プライマー被覆を塗布することとしてさらに特徴付けられ、第2の塗料被覆を塗布する前記工程は、カラー被覆を塗布することとしてさらに特徴付けられる、付記10に記載の方法。
【0042】
(付記12)
第1の塗料被覆を塗布する前記工程は、カラー被覆を塗布することとしてさらに特徴付けられ、第2の塗料被覆を塗布する前記工程は、クリア被覆を塗布することとしてさらに特徴付けられる、付記10に記載の方法。
【0043】
(付記13)
前記第1の塗料被覆を塗布する前に前記ホイールに化成被覆(conversion coating)を塗布する工程をさらに含む、付記10に記載の方法。
【0044】
(付記14)
前記第1の塗料被覆を塗布する前に前記ホイールにプラズマ処理を施す工程をさらに含む、付記10に記載の方法。
【0045】
(付記15)
前記第2の塗料被覆を塗布する前に前記ホイールに向けて前記第1の塗料被覆上にプラズマジェットを発射する前記工程は、前記第1の塗料被覆の表面エネルギーを増加させることによってさらに特徴付けられる、付記10に記載の方法。
【0046】
(付記16)
前記第1の塗料被覆を除去することによって前記ホイールの前記表面を露出させ、次いで前記プラズマジェットを当該露出面に向けて発射する工程をさらに含む、付記10に記載の方法。
【0047】
(付記17)
前記露出面が前記プラズマジェットにさらされた後に、前記ホイールの前記露出面の上にクリア被覆を塗布する工程をさらに含む、付記16に記載の方法。
【0048】
(付記18)
前記第1および前記第2の塗料被覆を除去することによって前記ホイールの前記表面を露出させ、次いで前記プラズマジェットを当該露出面に向けて発射する工程をさらに含む、付記10に記載の方法。
【0049】
(付記19)
前記露出面が前記プラズマジェットにさらされた後に、前記ホイールの前記露出面の上にクリア被覆を塗布する工程をさらに含む、付記18に記載の方法。