(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの終端磁極片(16)は、その軸方向長さが磁極片(15)とは異なり、その結果、終端磁極片(16)が中に配置されるコイル(12)の1つは、磁極片(15)が中に配置されるコイル(12)のいずれか1つとは異なるインダクタンスを有する、請求項2に記載の薬物送達デバイス(1)。
個々のコイル(12)に、それらのインダクタンスを決定するために制御ユニット(18)が接続され、該制御ユニット(18)は、決定されたインダクタンスから、固定子(7)内における電機子(8)の軸方向位置を決定するように適用される、請求項1に記載の薬物送達デバイス(1)。
固定子(7)のコイル(12)は、第1の群(19)と第2の群(20)に細分され、第1の群(19)は、電機子(8)の長さに対応する距離に沿ってカートリッジ(4)から近位方向に延び、第2の群(20)は、カートリッジ(4)の長さの少なくとも一部にわたって同軸配置され、コイル(12)の第2の群(20)は、カートリッジ(4)の挿入を可能にするために、ノッチ付き金属板(13)と磁極片(15、16)との間に、第1の群(19)に比べて増大された空隙(21)を有し、ここで、固定子(7)は、コイル(12)と交互に配置される複数のノッチ付き金属板(13)をさらに含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス(1)。
ノッチ(22)の内径は、電機子(8)に作用する推力(FT)または掛止力(FL)の勾配曲線が所与の特性線(R)に収束するように変えられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
磁極片(15)のうちの1つの長さの、終端磁極片(16)のうちの1つの長さに対する比は、0.3〜0.5の範囲内である、請求項8に記載の薬物送達デバイス(1)。
コイル(12)の第1の群(19)の動作範囲における空隙(21)の、カートリッジ(4)の外径に対する比は、0.01〜0.05の範囲内である、請求項8に記載の薬物送達デバイス(1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、改善された駆動ユニット、特に薬物送達デバイスのための改善された駆動ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の駆動ユニットによって達成される。
【0011】
本発明の例示的な実施形態は、従属請求項において与えられる。
【0012】
本発明によれば、駆動ユニットは:
− 軸方向に連続的に配置される複数のコイルを含む固定子と、
− 固定子内で軸方向に可動の電機子と
を含み、電機子は、軸方向に連続的に配置されるいくつかの磁石および磁極片を含み、
ここで、それぞれの磁極片は、それぞれの隣接する磁石間に配置され、電機子の少なくとも1つの軸方向端は、終端磁極片を含む。
【0013】
したがって、駆動ユニットは、たとえば交流電圧をコイルに印加することで、薬物送達デバイスにおける線形アクチュエータとして適用可能である。
【0014】
例示的な一実施形態では、少なくとも1つの終端磁極片は、その幾何形状、特にその軸方向長さが磁極片とは異なり、その結果、終端磁極片が中に配置されるコイルの1つは、磁極片が中に配置されるコイルのいずれか1つとは異なるインダクタンスを有する。
【0015】
例示的な一実施形態では、個々のコイルに、それらのインダクタンスを決定するために制御ユニットが接続され、制御ユニットは、決定されたインダクタンスから、固定子内における電機子の軸方向位置を決定するように適用される。
【0016】
したがって、コイルのインダクタンスを決定し他のすべてのインダクタンスとは異なるインダクタンスのコイルを配置することによって、固定子内における電機子の軸方向位置を決定することができる。こうして、駆動ユニットは、電機子の駆動だけでなく、その軸方向位置の決定にも使用することができ、したがって、さらなるセンサの必要はなくなる。
【0017】
例示的な一実施形態では、固定子は、コイルと交互に配置される複数のノッチ付き金属板をさらに含む。
【0018】
例示的な一実施形態では、磁石は、軸方向に磁化される。
【0019】
例示的な一実施形態では、磁石の連続したものは、交番磁極性を示す。
【0020】
例示的な一実施形態では、駆動ユニットは、カートリッジ内に摺動可能に配置されるストッパを含む薬物カートリッジをさらに含む薬物送達デバイスに適用される。電機子は、ストッパに当接する。駆動ユニットは、こうして、ストッパを変位させカートリッジから薬物の用量を投薬するのに使用することができる。さらに、駆動ユニットは、すでに送達された薬物の量を決定するおよび/またはカートリッジ内に残る薬物の量を決定するために、電機子、したがってストッパの位置を決定するのに使用することができる。
【0021】
例示的な一実施形態では、固定子のコイルは、第1の群と第2の群に細分され、第1の群は、電機子の長さに対応する距離に沿ってカートリッジから近位方向に延び、第2の群は、カートリッジの長さの少なくとも十分な部分にわたって同軸配置され、コイルの第2の群は、カートリッジの挿入を可能にするために、ノッチ付き金属板と磁極片との間に、第1の群に比べて増大された空隙を有する。
【0022】
例示的な一実施形態では、第1の群と電機子との間の空隙は、1mm未満であり、したがって、使用可能なスペースを有効利用し、大幅な効率アップを達成する。電機子に作用する磁気的な掛止力および推力は、ノッチ付き金属板と磁極片との間の空隙によってほぼ決まる。これにより、第1の群の動作領域における要求される推力パラメータへの正確な適用が可能になる。
【0023】
例示的な一実施形態では、ノッチの内径は、電機子に作用する推力または掛止力の勾配曲線が所与の特性線に収束するように変えられる。例示的な一実施形態では、制限線は、直線的に減衰する。
【0024】
例示的な一実施形態では、固定子の外径とカートリッジの外径の関係は、1.5〜3の範囲内、特に2.2である。
【0025】
例示的な一実施形態では、電機子の外径と固定子の内径の関係は、0.8〜0.99の範囲内、特に0.95である。
【0026】
例示的な一実施形態では、磁極片のうちの1つの長さと、終端磁極片のうちの1つの長さの関係は、0.3〜0.5の範囲内、特に0.43であり、および/または、磁極片のうちの1つの透磁率は、終端磁極片のうちの1つの透磁率とは異なる。したがって、2つの近接するコイルのインダクタンスは、終端磁極片が通過するときに著しく異なり、したがって、電機子の位置がより正確に決定可能になる。
【0027】
例示的な一実施形態では、コイルの第1の群の動作範囲における空隙と、カートリッジの外径の関係は、0.01〜0.05の範囲内、特に0.02である。
【0028】
本発明の適用性のさらなる範囲は、本明細書の以下に示される詳細な説明から明らかになろう。しかし、当業者にはこの詳細な説明から本発明の趣旨および範囲内で様々な変形および改変が明らかであるので、詳細な説明および具体的な例は、本発明の例示的な実施態様を示すが、例示としてのみ示されると理解されたい。
【0029】
本発明は、例示としてのみ示されしたがって本発明を限定しない、本明細書の以下に示される詳細な説明および添付の図面からさらに良く理解することになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
すべての図面において、対応する部分には同じ参照符号が印付けられている。
【0032】
図1は、薬物送達デバイス1の例示的な一実施形態の概略縦断面図である。薬物送達デバイス1は、細長いケース2と、カートリッジホルダ3と、薬物カートリッジ4と、駆動ユニット5とを含む。
【0033】
例示的な一実施形態では、ケース2は、管状形状を有することができる。カートリッジホルダ3は、ケース2に軸方向かつ径方向に固定される。薬物カートリッジ4は、皮下注射針のようなノズルに連結されるように適用された、または取り付け済みノズルを有する、アンプルまたはシリンジとして配置される。例示的な一実施形態では、カートリッジ4は、ガラスまたはプラスチック材料を含むまたはそれから構成される。ストッパ6は、近位からカートリッジ4を封止し、カートリッジ4に対して遠位方向Dでストッパ6の並進運動がされることでカートリッジ4内に保持される薬物の変位を可能にするように、カートリッジ4内に摺動可能に配置される。ノズルは、さらに、針なし注射のためのジェットノズルとして、またはスプレーノズルとして配置することができる。例示的な一実施形態では、カートリッジ4は、取り替え可能である。
【0034】
駆動ユニット5は、固定子7と、固定子7内で軸方向に可動の、ストッパ6に当接するように配置される電機子8とを含む。固定子7は、図示の実施形態ではケース2としての役割も果たす強磁性管9を含む。例示的な一実施形態では、管9は、2つの軸方向に心合わせされる管セクションを含むように、軸方向に分割される。さらにこれらの内部構成要素は、異なるやり方で、管9に固定される。さらに、固定子7は、軸方向に金属板13の後にコイル12があり、また他の金属板13があって他のコイル12があるような交互配置で、たとえば銅コイルであるいくつかのコイル12と、ノッチ付き金属板13とをさらに含む。例示的な一実施形態では、固定子は、21個のコイル12と、22個のノッチ付き金属板13を含む。当業者には、あらゆる他の数のコイルおよびノッチ付き金属板13を配置することができることが理解されよう。しかし、例示的な一実施形態では、ノッチ付き金属板13の数は、コイル12の数よりも1つ多い。
【0035】
電機子8は、いくつかの軸方向に磁化された磁石14、たとえば、鉄およびネオジムを含むネオジム磁石などの希土類磁石を含む。いくつかのこれらの磁石14は、連続的に、軸方向に沿って、磁極性が交番するように配置される。強磁性材料を含むまたはそれからなるそれぞれの磁極片15は、隣接した磁石14間に配置され、それぞれ終端磁極片16は、強磁性材料を含むまたはそれからなり、磁石14と磁極片15の連続した各軸方向端部にある。磁極片15、終端磁極片16および磁石14は、非強磁性のステンレス鋼を含むまたはそれからなってよい非強磁性軸17上に配置されるように、中心ボアを有することができる。熱収縮ホースなどの保護層は、電機子8を機械的に保護するために電機子8の上に配置される。
【0036】
例示的な一実施形態では、電機子8は、4つの磁石14と、3つの磁極片15と、2つの終端磁極片16とを含む。当業者には、あらゆる他の数の磁石14、磁極片15および終端磁極片16を配置することができることが理解されよう。しかし、磁極片15と終端磁極片16の好ましい数は、磁石14の数よりも1つ多い。
【0037】
終端磁極片16は、それらの幾何形状、特にそれらの軸方向長さの点で、磁極片15とは異なる。終端磁極片16は、電機子8の軸方向位置を決定するのに使用される。別法として、またはそれに加えて、終端磁極片16の材料は、異なるインダクタンス、たとえばより高いインダクタンスを発生させるように、その透磁率の点で、磁極片15の材料とは異なっていてよい。
【0038】
固定子7のコイル12およびノッチ付き金属板13は、第1の群19および第2の群20にさらに細分される。図示の実施形態では、第1の群19は、電機子8の長さに対応する距離に沿って、カートリッジ4の後ろに近位方向に延びる。第2の群20は、カートリッジ4の長さの少なくとも十分な部分、たとえばその長さの約80%にわたって同軸配置される。当業者には、第2の群20は、カートリッジ4の長さのあらゆる他の一部分またはその全長に延びることができることが理解されよう。図示の実施形態では、第1の群19は、8個のコイル12と、9個の金属板13を含み、第2の群は、13個のコイル12と、14個の金属板13を含み、第1の群19および第2の群20は、金属板13のうちの1つを共有し、そこで互いに隣り合う。
【0039】
第1の群19は、電機子8を案内する役割を果たし、カートリッジ4が満杯のときに電機子8を前進させるために外部磁場を生成するように配置される。第1の群19と電機子8との間の空隙21は、非常に小さく、たとえば、1mm未満であり、したがって、使用可能なスペースを効率よく使用することができ、大幅な効率アップを達成することができる。電機子8に作用する磁気的な掛止力および推力は、ノッチ付き金属板13と磁極片15、16との間の空隙21によってほぼ決まる。これにより、第1の群19の動作領域における要求された推力パラメータへの正確な適用が可能になる。例示的な一実施形態では、この適用により、電機子の最小掛止力は、コイル12がオフにされるとき、1Nより低くなり、推力は、コイル12に電流が供給されるとき、20Nよりも高くなることができる。
【0040】
図2は、固定子7に対する電機子8の軸方向位置Lに応じた、コイル12の第1の群19によって電機子8に及ぼされる力Fの線図である。
図3は、駆動ユニット5の概略的な詳細断面図である。ノッチ付き金属板13によって作成されるノッチの内径d
lは、推力F
Tまたは掛止力F
Lの勾配曲線が所与の特性線に収束するように個別に変えられる。再び
図2を参照すると、推力F
Tは、コイル12に電流が供給されるとき、直線的に減衰する制限線Rに収束する。掛止力F
L(後退力)は、概ね負であり、したがって、コイル12がオフにされるとき、電機子はゼロ位置へと動き、それによって安全機能がもたらされる。
【0041】
第1の群19とは対照的に、コイル12の第2の群20は、カートリッジ4の挿入を可能にする増大した空隙21を有する。したがって、第2の群20では動力損失がより大きくなり、したがって達成可能な推力F
Tがより低くなる。第1の群19の空隙21はより小さいので、結果的に効率がより高くなり、力がより大きくなる。
図4は、固定子7に対する電機子8の軸方向位置に応じた、コイル12の第2の群20によって電機子8に及ぼされる推力F
Tの線図である。さらに、第2の群20の動作領域において達成可能な掛止力F
Lは、第1の群19の動作領域におけるよりも低い。第2の群20では、すべてのノッチおよびコイル12は、同一の内径を有する。
【0042】
例示的な一実施形態では、薬物送達デバイス1の幾何学的パラメータは、掛止力F
Lに対する推力F
Tの関係が15〜40の範囲内、特に20であるように選択される。この目的のため、薬物送達デバイス1の幾何学的関係は、以下の通りであってよい:
【0043】
固定子7の外径とカートリッジ4の外径の関係は、1.5〜3の範囲内、特に、2.2である。
【0044】
電機子8の外径とカートリッジ4の外径の関係は、0.5〜0.9の範囲内、特に0.8である。
【0045】
電機子8の外径と固定子7の内径の関係は、0.8〜0.99の範囲内、特に0.95である。
【0046】
固定子7の長さとカートリッジ4の長さの関係は、1〜1.5の範囲内、特に1.2である。
【0047】
電機子8の長さとカートリッジ4の長さの関係は、0.3〜0.9の範囲内、特に0.61である。
【0048】
磁極ピッチの長さと電機子8の長さの関係は、0.15〜0.3の範囲内、特に0.185である。磁極ピッチ長さは、磁極片15のうちの1つの長さと隣接する磁石14の長さの合計である。
【0049】
磁極片15のうちの1つの長さと終端磁極片16のうちの1つの長さの関係は、0.3〜0.5の範囲内、特に0.43である。
【0050】
コイル12の第1の群19の動作領域における空隙21とカートリッジ4の外径の関係は、0.01〜0.05の範囲内、特に0.02である。
【0051】
例示的な一実施形態では、推力F
Tは、20Nであり、掛止力F
Lは、1Nであってよい。
【0052】
電機子8の軸方向位置、したがって薬物の用量投薬は、固定子7内のコイル12のインダクタンスの計測によって、またはそのインダクタンスの変動によって決定される。
【0053】
長い円筒形コイル12のインダクタンスLは、コイル12の幾何形状によって決まり、式1を用いて計算され、コイル12の、巻き数N、磁場定数μ
0、比透磁率μ
r、および内側断面積Aに応じて決まる。
【数1】
【0054】
より短い円筒形コイル12は、あまりよくない磁束を示し、したがって、インダクタンスLは、さらに巻線の半径r
wを考慮して、式2によって概算される。
【数2】
【0055】
インダクタンスLを変えるために、異なる比透磁率μ
rの異なるコア材料をコイルにおいて使用することもできる。インダクタンスLを増加させるために、比透磁率が300〜10000の範囲内の鉄のような強磁性材料を使用することができる。線形の依存により、インダクタンスは乗算される。
【0056】
電機子8のような透磁率が変えられる可動のコアがコイル内に配置される場合、コイルのインダクタンスは、コアの軸方向位置によって決まる。
図5は、有限要素モデルを用いて決定された、電機子8の軸方向位置に応じた、いくつかの順々に続くコイル12のインダクタンスLの線図である。電機子8の端部にあるより長い終端磁極片16は、磁石14間に配置されたより短い磁極片15とは対照的に、インダクタンスLの増加を引き起こす。これにより、電機子8の位置のより正確な決定が可能になる。
【0057】
例示的な一実施形態では、磁極片15によるインダクタンスLの変動に対する終端磁極片16によるインダクタンスLの変動の関係は、2〜5の範囲内、特に3である。例示的な一実施形態では、終端磁極片16によるインダクタンスLの変動は、150μHであり、磁極片15によるインダクタンスLの変動は、50μHである。
【0058】
ストッパ6を前進させカートリッジ4から薬物の用量を投薬するために推力F
Tを電機子8に加えるために、コイル12には交流電流またはパルス電流が供給され、それによって磁場がコイル12内に誘起され、電機子8の磁石14によって生成される静磁場と相互作用する。
【0059】
固定子7内における電機子8の軸方向位置を決定するために、インダクタンスは、たとえば個々のコイル12に接続される制御ユニット18によって、個々のコイル12について決定される。これは、交流電圧をコイル12に印加するなどの任意の従来の方法によって実行され、それによって結果的に生じる電流の振幅および位相シフトが決定され、誘導性リアクタンス、したがってインダクタンスが計算される。さらに、交流電流は、コイル12によって駆動され、結果的に生じる電圧の振幅および位相シフトが決定される。さらに、コイル12は、蓄電器に接続される。蓄電器は、パルス信号をウォブルまたは印加し応答信号を分析することによってその共振周波数が決定される共振器を形成する既知のキャパシタンスを有する。次いで、インダクタンスは、決定された共振周波数から計算される。さらに、コイル12は、共振周波数を決定するために、ブリッジネットワーク、たとえばマクスウェルブリッジの一部として接続される。
【0060】
インダクタンスは、他の磁極片15のうちの1つが配置されるコイル12とは対照的に、終端磁極片16のうちの1つが中に配置されるコイル12においてより高いので、電機子8の軸方向位置、したがってすでに投薬された用量および/またはカートリッジ4内に残る用量が決定可能になる。
【0061】
コイル12のインダクタンスは、推力F
Tを電機子8に加えるのに使用される同じ電圧によって決定される。
【0062】
非限定的な代替実施形態では、駆動ユニット5は、磁極片15と終端磁極片16の幾何形状の違いはないが、第1の群19と第2の群20の空隙21が上述したように異なるように配置される。
【0063】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0064】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0065】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0066】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0067】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0068】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0069】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0070】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0071】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0072】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0073】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0074】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C
H)と可変領域(V
H)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0075】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0076】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0077】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0078】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0079】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0080】
本明細書に記載の装置、方法、および/またはシステム、ならびに実施形態の様々な構成要素の改変(追加および/または削除)は、本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができ、本発明は、そのような改変、および本発明のあらゆる均等物もすべて包含することが当業者には理解されよう。