(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように特許文献1に記載のデュアルガスセンサ装置は、相互に構成が異なる第1センサ及び第2センサを組み合わせて使用することで、H
2O
2の蒸気濃度を取得することができる。
【0006】
このように複数の異種センサを組み合わせて計測を行うことで、様々な種類の特性を計測することができるが、計測に関するロバスト性や信頼性を高いレベルで維持することは必ずしも容易ではない。特に、測定対象の流体(気体、液体、又はゾル等)が気泡やゴミなどの異物を含むケースでは、複数のセンサのうちのいずれかのセンサの測定部に異物が接触することで測定を邪魔して適正な計測結果を得られない場合もある。
【0007】
またセンサが故障して間違った計測結果がセンサから出力される場合であっても、その出力結果からセンサの故障の有無を必ずしも把握することができない。したがって予期しない計測結果が得られた場合に、その計測結果が測定対象の特性に由来するのかセンサの故障に由来するのかを適切に判断することが難しい。
【0008】
また複数の異種センサを組み合わせて計測を行う場合に、1つでもセンサが故障等の不具合を起こしてしまうと、その不具合を起こしたセンサが受け持つ流体の特性を計測することができず、センサの交換等の作業が即座に必要になってしまうことがあり不便である。
【0009】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、計測に関して優れたロバスト性及び信頼性を有するセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、第1検出素子及び第2検出素子と、第1検出素子及び第2検出素子に接続され、第1検出素子の検出結果及び第2検出素子の検出結果を受信するコントローラと、を備え、第1検出素子及び第2検出素子は同一の特性を検出するセンサ装置に関する。
【0011】
本態様によれば、同一の特性を検出する第1検出素子及び第2検出素子が設けられるので、第1検出素子の検出結果及び第2検出素子の検出結果に基づいてロバスト性及び信頼性の高い計測を行うことができる。例えば第1検出素子及び第2検出素子のいずれか一方に故障等の不具合が生じても、他方を使って測定対象の特性の計測を続行することが可能である。また第1検出素子の検出結果及び第2検出素子の検出結果から導き出される平均値等の値を計測値として使用することで、各検出素子固有の検出特性のばらつきの影響を低減することができる。
【0012】
第1検出素子及び第2検出素子は同一の構成を有してもよい。
【0013】
本態様によれば、同一構成の第1検出素子及び第2検出素子によって同一の特性を検出するため、より効果的に、計測に関するロバスト性及び信頼性を向上させることができる。
【0014】
第1検出素子と第2検出素子とは一体的に構成されてもよい。
【0015】
本態様によれば、一体的に構成される第1検出素子及び第2検出素子によって測定対象の特性を近傍箇所で計測することができ、測定箇所の違いによる特性のばらつきの影響を低減することができる。
【0016】
第1検出素子及び第2検出素子は流体の特性を検出してもよい。
【0017】
本態様によれば、液体やゾルなどの液状体や気体の特性を計測することができる。
【0018】
センサ装置は、第1検出素子と第2検出素子との間における流体の流れをコントロールする整流板を更に備えてもよい。
【0019】
本態様によれば、整流板によって流体の流れがコントロールされるので、よどみ等の流体の意図しない挙動を効果的に防ぐことができ、第1検出素子と第2検出素子との間における検出結果のばらつきを低減することができる。
【0020】
整流板は、第1検出素子と第2検出素子との間に設けられてもよい。
【0021】
本態様によれば、第1検出素子と第2検出素子との間に設けられる整流板によって、流体の流れを効果的にコントロールすることができる。
【0022】
整流板は、相互に対向する第1面及び第2面を有し、第1検出素子は第1面に取り付けられ、第2検出素子は第2面に取り付けられてもよい。
【0023】
本態様によれば、整流板を簡単且つ効果的に配置することができる。
【0024】
コントローラは、第1検出素子の検出結果及び第2検出素子の検出結果を解析する解析部を有してもよい。
【0025】
解析部は、第1検出素子の検出結果及び第2検出素子の検出結果に基づいて、特性を示す特性値を算出してもよい。
【0026】
本態様によれば、信頼性の高い特性値を得ることができる。
【0027】
解析部は、第1検出素子の検出結果及び第2検出素子の検出結果に基づいて、第1検出素子及び第2検出素子の検出の信頼性を評価してもよい。
【0028】
本態様によれば、第1検出素子の検出結果と第2検出素子の検出結果との間のばらつきに応じて、第1検出素子及び第2検出素子の検出の信頼性を評価することができる。
【0029】
コントローラは、第1検出素子及び第2検出素子を制御する素子制御部を更に有し、素子制御部は、解析部に接続され、第1検出素子及び第2検出素子の各々から特性の検出結果を受信して解析部に検出信号を送信してもよい。
【0030】
解析部と素子制御部とは別体として設けられてもよい。
【0031】
本態様によれば、別体として設けられる解析部及び素子制御部のうちの一方に故障等の不具合が生じた場合であっても、他方にその不具合の影響が及び難い。したがって、解析部及び素子制御部のうちの一方に不具合が生じても、不具合が生じた一方のみを交換又は修理すればよく、他方を交換等することなく継続して使用しうる。
【0032】
第1検出素子及び第2検出素子は水分センサであってもよい。
【0033】
本態様によれば、測定対象に含まれる水分量を計測することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、同一の特性を検出する第1検出素子及び第2検出素子が設けられ、第1検出素子の検出結果及び第2検出素子の検出結果に基づいてロバスト性及び信頼性の高い計測を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺及び縦横の寸法比等を実物のそれらから適宜変更し誇張してある。
【0037】
以下の実施形態では、主として油などの流体に含まれる水分量を検出するセンサ装置であって、管路やタンクなどの被装着体に装着されて使用されるセンサ装置に本発明を適用するケースについて例示する。したがって、下記の実施形態に係るセンサ装置は、管路を流れる機械用潤滑油、作動油、鉱物油、或いは絶縁油等の油やタンクに貯留される油に含まれる水分量の検出に好ましく使用可能であり、例えば油圧機器において用いられる油を測定対象としうる。なおセンサ装置は、油以外の流体を測定対象としてもよく、また水分量以外の特性を計測してもよい。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ装置10を一方の側面側から見た斜視図である。センサ装置10は、ハウジング11と、ハウジング11に対して着脱自在に装着されるカバー12とを備える。ハウジング11は大径部13及び小径部14を有し、大径部13と小径部14とは、ナット等の締結部15を介して相互に固定されている。
【0039】
ハウジング11に対してカバー12を装着すると、カバー12の内側には、小径部14の先端に設けられた検出素子20が配置される。カバー12は、測定対象の流体に対して耐食性を有する金属等の部材から形成され、筒形状(
図1に示す例では円筒状)を有する。カバー12のうち軸方向に沿った一方の端部には側壁部22が設けられ、側壁部22から筒状の周壁部25が延在し、他方の端部は開口している。側壁部22には第1導入孔24が貫通形成され、周壁部25には第2導入孔26が貫通形成されている。第1導入孔24及び第2導入孔26は、カバー12の内側と外側との間で測定対象の流体を導入及び導出するための貫通孔である。第1導入孔24及び第2導入孔26の具体的な形状や数は特に限定されない。本実施形態では、1つの円形状の第1導入孔24が側壁部22の中央部に形成され、複数の円形状の第2導入孔26が周壁部25に形成され、これらの第1導入孔24及び第2導入孔26は相互に同じ形状及び内径D(
図2参照)を有する。第1導入孔24及び第2導入孔26の内径Dは、検出素子20の大きさよりも小さいことが好ましい。この場合、使用環境等の意図しない要因によって検出素子20がセンサ装置10から外れても、カバー12がストッパーとして機能してカバー12の外側へ検出素子20が脱落することはないため、検出素子20の紛失を防ぐことができる。
【0040】
図2は、
図1に示すセンサ装置10の平面図であり、ハウジング11とカバー12とが分離した状態を示す。ハウジング11の小径部14は第1螺合部16及び第2螺合部17を有し、第1螺合部16及び第2螺合部17の各々には雄螺子が形成されている。第2螺合部17の先端からはピン21が突出して設けられ、第2螺合部17側に設けられる部材とピン21とははんだ付け等によって強固に固定されている。本実施形態では、ピン21の一方の先端には当該ピン21と電気的に接続する検出素子20が設けられ、ピン21の他方の先端には当該ピン21と電気的に接続する後述のコントローラが設けられる。
【0041】
検出素子20は、流体の特性を検出する第1検出素子41及び第2検出素子42を具備し、第1導入孔24及び第2導入孔26を介してカバー12内に流入する流体の特性を検出する。検出素子20(第1検出素子41及び第2検出素子42)の具体的な構成及び作用については後述する。
【0042】
カバー12の開口端23側の内周面にはカバー螺合部27が形成され、カバー螺合部27には、小径部14の第2螺合部17の雄螺子に対応する雌螺子が形成されている。カバー螺合部27が第2螺合部17と螺合することで、カバー12は、内側に検出素子20を収容した状態でハウジング11の小径部14に装着される。
【0043】
複数の第2導入孔26は、カバー12の周壁部25のうち軸方向に関して幅を持った領域Z1において、分散的に設けられる。この領域Z1は、カバー12の軸方向に関し、開口端23に最も近い第2導入孔26から側壁部22に最も近い第2導入孔26までの領域となる。第2導入孔26が形成されるこの領域Z1は、カバー12がハウジング11に装着された状態で、カバー12の軸方向に関して検出素子20の配置位置を含み、第2導入孔26の少なくとも一部が検出素子20と対向する。したがって、第2導入孔26を介してカバー12の内側に流入した流体は、検出素子20に到達しやすい。
【0044】
なお、複数の第2導入孔26の配置態様は特に限定されず、様々な観点に基づいて第2導入孔26の配置位置を決めることができる。典型的には、筒形状のカバー12(周壁部25)において検出素子20を取り囲むように円周方向へ等間隔に複数の第2導入孔26を設けることができ、カバー12の軸方向に関してほぼ等位置に配置される複数の第2導入孔26によって、検出素子20を取り囲む方向(すなわち円周方向)に延在する複数の列(
図1及び
図2に示す例では2列)或いは単数の列(すなわち1列)が形成されてもよい。また
図1及び
図2に示す例において、検出素子20を取り囲む方向に関して隣り合って配置される第2導入孔26同士は、カバー12の軸方向に関してほぼ等位置に配置されているが、カバー12の軸方向に関して異なる位置に配置されてもよい。
図3A〜
図3Cは、第2導入孔26の配置例を示すカバー12の平面図である。
図3A〜
図3Cに示すように検出素子20を取り囲む方向に関して隣り合って配置される第2導入孔26同士はカバー12の軸方向に関して異なる位置に配置されてもよく、検出素子20を取り囲む方向に関して所定個数おきに(
図3A及び
図3Bに示す例では1個おきに、また
図3Cに示す例では3個おきに)カバー12の軸方向に関してほぼ等位置に配置されてもよい。また、カバー12の軸方向に配置される第2導入孔26の個数は、検出素子20を取り囲む方向に関して必ずしも一定である必要は無く、
図3Bに示す例では「カバー12の軸方向に1個の第2導入孔26が配置される態様」と「カバー12の軸方向に2個の第2導入孔26が配置される態様」とが検出素子20を取り囲む方向に関して繰り返される。このように第2導入孔26の配置を工夫することによって、例えば検出対象の流体をスムーズに流すことも可能である。
【0045】
図4は、
図1に示すセンサ装置10を他方の側面側から見た斜視図である。ハウジング11の大径部13の端面のうち小径部14と反対側の端面18aには、接続部18及び報知部19が設けられる。
【0046】
接続部18には電力供給線及び信号線が配設され、これらの電力供給線及び信号線はハウジング11に収容されるコントローラに接続される。電力供給線には外部に設けられた電源が接続され、その電源からもたらされる電力が電力供給線を介してコントローラに供給される。信号線には外部に設けられる出力装置等の外部機器類が接続され、検出素子20の検出結果から導き出される流体中の水分量の検出信号がコントローラから外部機器類に送信される。
【0047】
報知部19は、ユーザに報知可能な任意のデバイスを具備し、本実施形態では3つのランプ(第1ランプ19a、第2ランプ19b及び第3ランプ19c)を具備する。第1ランプ19a、第2ランプ19b及び第3ランプ19cの各々は、ハウジング11に収容されるコントローラによって点灯態様が制御される。第1ランプ19a、第2ランプ19b及び第3ランプ19cの点灯態様は特に限定されず、例えば点灯時に相互に同じ色の光を出射するものであってもよいし、相互に異なる色の光を出射するものであってもよいし、点灯方式(例えば点滅方式)が相互に異なっていてもよい。
【0048】
コントローラは、検出素子20の検出結果に基づいて報知部19を制御することができ、検出素子20の検出結果から導き出される流体の含有水分量を判定し、当該判定結果に応じて報知部19の点灯態様を変えてもよい。コントローラは、例えば、測定対象の流体に含有される水分量が予め設定された低い範囲内にあると判定される場合には第1ランプ19aを点灯させ、流体に含有される水分量が予め設定された中程度の範囲内にあると判定される場合には第2ランプ19bを点灯させ、流体に含有される水分量が予め設定された高い範囲内にあると判定される場合には第3ランプ19cを点灯させてもよい。このように検出素子20によって検出される流体中の水分量に応じて報知部19の点灯態様を変えることで、報知部19は流体中のおおよその水分量をユーザに報知することができる。なお検出素子20により検出される流体中の水分量の具体的な実測値のデータは、コントローラから信号線を介して外部機器類に送信され、当該外部機器類においてユーザはその実測値を確認することが可能である。また報知部19は、流体中の水分量以外の状態等をユーザに報知することも可能であり、例えばセンサ装置10自体(例えば検出素子20)に異常が発生した場合には第1ランプ19a、第2ランプ19b及び第3ランプ19cのすべてを点灯すること等によってユーザにその異常を報知することもできる。
【0049】
図5は、被装着体100に対するセンサ装置10の取り付け状態の一例を示す図である。被装着体100の管路やタンク等の壁部には、センサ装置10を装着するための挿通孔101が形成されている。挿通孔101の内周面には、センサ装置10の第1螺合部16に形成される雄螺子に対応する雌螺子が形成されている。カバー12が設けられるセンサ装置10の先端部を、挿通孔101を介して被装着体100の内側に差し込んで、センサ装置10の第1螺合部16と挿通孔101とを螺合することにより、センサ装置10を被装着体100に装着することができる。
【0050】
被装着体100にセンサ装置10が装着されると、カバー12により覆われる検出素子20が被装着体100の内側に配置され、被装着体100の内側に存在する流体102の含有水分量を検出素子20によって検出することができる。なお、流体102が流動することによって含有水分量も均一化されるため、検出素子20による含有水分量の検出は、通常は、被装着体100の内側において測定対象の流体102が流動している状態で行われることが好ましい。ただし、検出処理前に流体102の含有水分量が十分に均一化されている場合や、含有水分量が偏った状態の流体102を測定対象とするケースのように含有水分量の均一化が不要の場合には、検出の際に流体102を流動させる必要はない。
【0051】
流体102は、第1導入孔24及び第2導入孔26を介してカバー12内に流入し、検出素子20に接触する。検出素子20は、水分子の吸着量に応じた電気信号をハウジング11に収容されるコントローラに出力する。コントローラは、検出素子20からの電気信号に基づいて流体102の含有水分量を取得し、その含有水分量を示す検出信号を、信号線を介して外部機器類に送信する。またコントローラは、検出素子20によって検出される流体102の含有水分量に応じて報知部19(第1ランプ19a、第2ランプ19b及び第3ランプ19c)を点灯させて、流体102の含有水分量のレベルをユーザに報知する。
【0052】
次に、検出素子20の具体例について説明する。
【0053】
図6は、検出素子20の一例を示す側面図である。
図7は、
図6に示す検出素子20の斜視図である。本例の検出素子20は、平板状の第1検出素子41及び第2検出素子42と、第1検出素子41と第2検出素子42との間に設けられる整流板45とを具備する。
【0054】
本実施形態の第1検出素子41及び第2検出素子42は、同一の構成を有し、同一の特性を検出し、流体中の水分量を検出する水分センサが第1検出素子41及び第2検出素子42として用いられる。整流板45は相互に対応する第1面46及び第2面47を有し、第1検出素子41は第1面46に取り付けられ、第2検出素子42は第2面47に取り付けられる。なお、第1検出素子41及び第2検出素子42と整流板45との間における異物の侵入を防ぐ観点からは、第1検出素子41及び第2検出素子42の各々は整流板45(第1面46及び第2面47)に対して隙間なく密着して設けられることが好ましい。
【0055】
このようにして第1検出素子41と第2検出素子42とは整流板45を介して一体的に構成され、整流板45は第1検出素子41と第2検出素子42との間における流体102の流れをコントロールする。例えば流体102に気泡やゴミなどの異物が含まれている場合、その異物が第1検出素子41及び第2検出素子42に接触した状態では、第1検出素子41及び第2検出素子42は適切な検出を行うことができない場合がある。特に、第1検出素子41と第2検出素子42の間隔が比較的狭い場合に第1検出素子41と第2検出素子42との間に異物が侵入すると、第1検出素子41と第2検出素子42との間で異物がとどまってしまい、第1検出素子41及び第2検出素子42によって検出を適切に行うことができない状態が続くことがある。したがって、本実施形態のように第1検出素子41と第2検出素子42との間に設けられる整流板45によって流体102の流れをコントロールすることで、気泡やゴミなどの異物が第1検出素子41及び第2検出素子42に付着することを効果的に防ぐことができる。
【0056】
第1検出素子41は一対の第1ピン21aを介してコントローラに接続され、第2検出素子42は一対の第2ピン21bを介してコントローラに接続される。第1検出素子41及び第2検出素子42の検出結果は、第1ピン21a及び第2ピン21bを介してコントローラに送信される。
【0057】
図8は、第1検出素子41の平面図である。
図9は、
図8のIX−IX線における断面図である。なお
図8及び
図9には第1検出素子41の構成が図示されているが、第2検出素子42も第1検出素子41と同様の構成を有する。
【0058】
本例の第1検出素子41及び第2検出素子42は、それぞれ流体に含有される水分量を検出する静電容量式のセンサであり、センサ基板30と、センサ基板30上に設置された第1電極31とを具備する。第1電極31上には感応膜33が形成され、感応膜33上には第2電極32が形成されている。
【0059】
第1電極31は、例えば金を含有するクロム等の金属材料によって構成可能であり、第1電極端子34が接続されている。第2電極32は、例えばクロム等の金属材料によって構成可能であり、特に本例では水分子が第2電極32を透過可能であるように構成され、第2電極端子35が接続されている。第1電極端子34及び第2電極端子35は、センサ基板30の一辺から引き出されてピン21(第1検出素子41では第1ピン21a、第2検出素子42では第2ピン21b)に接続され、当該ピン21を介してハウジング11に収容されるコントローラに接続される。
【0060】
感応膜33は、例えばポリイミド等の水分子を脱吸着する有機絶縁物或いは絶縁性を有する無機物によって構成可能であり、第1電極31よりも若干大きく形成され、第1電極31及び第2電極32から感応膜33の端部がはみ出すように設けられている。第1電極31は感応膜33によって覆われ、第1電極31及び第2電極32は感応膜33を介して対向して配置される。感応膜33に対する水分子の吸着及び脱離は、第2電極32からはみ出した感応膜33の露出部分に接触する水分子だけではなく、第2電極32を透過して感応膜33に接触する水分子によっても行われる。
【0061】
第1検出素子41の周辺における流体中の水分量が安定すると、感応膜33と流体との間で水分量が平衡化し、流体中の水分量に応じて感応膜33に水分子が吸着する。例えば流体に含まれる水分子が増加すれば、感応膜33に吸着される水分子の量も増加し、流体に含まれる水分子が減少すれば、感応膜33に吸着される水分子の量も減少する。
【0062】
この感応膜33に対する水分子の吸着量に応じて、第1電極31と第2電極32との間の静電容量が変化する。したがって、第1電極31と第2電極32との間の静電容量を、第1電極端子34及び第2電極端子35に接続されたコントローラで検知することによって、流体に含まれる水分量を検出することができる。なお、流体に含まれる水分量を精度良く検出するには、感応膜33に対する水分子の吸着が平衡化するための時間等が最小限必要となる。
【0063】
次に、ハウジング11内に配置されるコントローラの具体例について説明する。
【0064】
図10は、コントローラ50の外観例を示す平面図である。本例のコントローラ50は検出基板51及び電源基板52を有する。検出基板51は、ピン21(第1ピン21a及び第2ピン21b)を介して検出素子20(第1検出素子41及び第2検出素子42)に接続される。
【0065】
検出基板51は検出基板端子55を有し、電源基板52は第1電源基板端子56、第2電源基板端子57及び第3電源基板端子58を有する。検出基板51の検出基板端子55と電源基板52の第1電源基板端子56とは第1配線59を介して接続され、電源基板52の第2電源基板端子57と報知部19とは第2配線60を介して接続される。接続部18から延在する第3配線61は上述の信号線及び電力供給線を含み、第3配線61は第3電源基板端子58に接続される。なお第1配線59は検出基板端子55及び第1電源基板端子56の各々と着脱自在に構成されることが好ましく、第2配線60は少なくとも第2電源基板端子57と着脱自在に構成されることが好ましく、第3配線61は少なくとも第3電源基板端子58と着脱自在に構成されることが好ましい。
【0066】
コントローラ50と外部に設けられる機器類や電源との間における信号の送受信や電力供給等の電気的なやりとりは、接続部18、第3配線61及び第3電源基板端子58を介して行われる。またコントローラ50と報知部19との間における電気的なやりとりは、第2電源基板端子57及び第2配線60を介して行われる。またコントローラ50の検出基板51と電源基板52との間における電気的なやりとりは、検出基板端子55、第1配線59及び第1電源基板端子56を介して行われる。
【0067】
図11は、コントローラ50の機能構成の一例を示すブロック図である。本例のコントローラ50では、検出基板51が素子制御部63を有し、電源基板52が解析部66、電力分配部67及びアラーム制御部68を有する。
【0068】
素子制御部63は、第1検出素子41及び第2検出素子42(検出素子20)を制御し、第1検出素子41の検出結果及び第2検出素子42の検出結果を受信する。この素子制御部63は、解析部66に接続され、第1検出素子41及び第2検出素子42の各々から流体中の水分量の検出結果を受信して解析部66に検出信号を送る。
【0069】
解析部66は、素子制御部63から送られてくる検出信号に基づいて、第1検出素子41の検出結果及び第2検出素子42の検出結果を解析する。解析部66による解析手法は特に限定されず、解析部66は、例えば第1検出素子41の検出結果及び第2検出素子42の検出結果に基づいて、測定対象の流体の特性を示す特性値(本実施形態では流体中の水分量)を得ることができる。例えば解析部66は、第1検出素子41の検出結果及び第2検出素子42の検出結果の平均を求め、その平均に基づいて検出素子20による流体中の水分量を確定的に決定してもよい。この場合、第1検出素子41及び第2検出素子42の個体差に基づく検出特性のばらつきの影響を低減することができる。
【0070】
また解析部66は、第1検出素子41の検出結果及び第2検出素子42の検出結果に基づいて、第1検出素子41及び第2検出素子42の検出の信頼性を評価することができる。
【0071】
図12は、第1検出素子41及び第2検出素子42の検出結果を示す検出値(縦軸)と検出経過時間(横軸)との関係の一例を示す図である。
図12において、符号「G1」は第1検出素子41の経時的な検出値を示し、符号「G2」は第2検出素子42の経時的な検出値を示す。
【0072】
本例の第1検出素子41及び第2検出素子42は、上述のように、測定対象の流体の近傍箇所を対象として水分量の検出を行う。したがって、第1検出素子41及び第2検出素子42の各々によって適正に検出が行われる場合には、第1検出素子41の検出値と第2検出素子42の検出値とは、相互に同じ値又は近似した値となり、経時的な挙動も同じ又は類似したものとなる。一方、第1検出素子41及び第2検出素子42のうちの一方が故障や異物付着等の不具合によって検出を適正に行うことができなくなった場合には、第1検出素子41の検出値と第2検出素子42の検出値とは、相互に異なる値となる。
【0073】
図12に示す例において、第1検出素子41による検出値G1と第2検出素子42による検出値G2とが略同じ値を示す基準時t0から第1の時間t1までは、第1検出素子41の検出値と第2検出素子42の検出値とは略同じである。したがって、基準時t0から第1の時間t1までは第1検出素子41及び第2検出素子42による検出が適正に行われていると推定され、第1検出素子41及び第2検出素子42の検出結果は信頼性が相対的に高いものとなる。一方、第1検出素子41による検出値G1と第2検出素子42による検出値G2とが異なる値を示す第1の時間t1以降は、第1検出素子41及び第2検出素子42の少なくともいずれか一方に不具合が生じていると推定することができ、第1検出素子41及び第2検出素子42の検出結果は信頼性が相対的に低いものとなる。したがって、
図11に示す解析部66は第1検出素子41の検出結果と第2検出素子42の検出結果とを比較することで、第1検出素子41及び第2検出素子42の検出の信頼性を適切に評価することができる。
【0074】
また解析部66は、第1検出素子41及び第2検出素子42のうちの一方に不具合が生じている場合には、不具合が生じていない他方の検出結果に基づいて、流体中の水分量を確定的に決定してもよい。この場合、解析部66は、そのような確定的な流体中の水分量に基づいてアラーム制御部68を制御したり、流体中の含有水分量を示す検出信号を生成して外部機器類に送信したりすることができ、ロバスト性に優れた計測を行うことができる。なお第1検出素子41及び第2検出素子42における不具合の有無を確認する手法は特に限定されず、例えば予め含有水分量が分かっている流体を対象として検出を行うことで、不具合の有無を簡単に確認することができる。
【0075】
上述のような解析部66の解析結果は、第3電源基板端子58及び第3配線61を介して外部機器類に送信される。
【0076】
図11に示す電源基板52の電力分配部67は、外部に設けられる電源から第3配線61(電力供給線)及び第3電源基板端子58を介してコントローラ50に供給される電力を、解析部66、アラーム制御部68、素子制御部63及びその他のコントローラ50の各部に分配する。
【0077】
アラーム制御部68は、検出素子20(第1検出素子41及び第2検出素子42)の検出結果から導き出される流体中の水分量の解析結果を解析部66から受信し、この流体中の水分量の解析結果に応じて報知部19の点灯態様を制御する。
【0078】
以上説明したように本実施形態によれば、測定対象の流体の同一特性を検出する複数の検出素子を設けて検出に関する冗長性を積極的にもたせることで、検出素子の個体差の影響を抑えた高精度な検出を行うことができる。また検出素子20(第1検出素子41及び第2検出素子42)の故障や異物付着等の不具合の有無を自己診断することが可能になり、ロバスト性及び信頼性の高い計測を行うことができる。
【0079】
<変形例>
本発明は、上述の実施形態に限定されず、種々の変更が加えられてもよい。
【0080】
図13は、検出素子20の他の例を示す側面図である。上述の実施形態では、検出素子20が2つの検出素子(第1検出素子41及び第2検出素子42)を具備する例について説明したが、検出素子20は3以上の検出素子を具備していてもよい。例えば
図13に示すように、検出素子20は4つの検出素子(第1検出素子41、第2検出素子42、第3検出素子43及び第4検出素子44)を具備していてもよい。
【0081】
また上述の実施形態では単一の整流板45が設けられる例について説明したが、2以上の整流板45が設けられていてもよい。例えば
図13に示すように、2つの整流板(第1整流板45a及び第2整流板45b)を設けることができる。複数の整流板45の設置箇所は特に限定されないが、複数の検出素子間に整流板45が設けられることが好ましい。例えば
図13に示すように、第1検出素子41と第2検出素子42との間及び第3検出素子43と第4検出素子44との間に第1整流板45aを設置し、第1検出素子41と第3検出素子43との間及び第2検出素子42と第4検出素子44との間に第2整流板45bを設置することもできる。
【0082】
また上述の整流板45(第1整流板45a及び第2整流板45b)以外に、測定対象の流体の流れをコントロールする整流部を、カバー12の外側及び/又は内側に設けてもよい。特にカバー12内において流体は停滞しやすいため、カバー12内の流体を効果的に流動させることができるように整流部を設けたり、第1導入孔24及び第2導入孔26の配置や形状を工夫したりすることが好ましい。
【0083】
また第1導入孔24及び第2導入孔26の形状は円形状には限定されず、矩形状、細長状(スリット状)或いは他の形状であってもよい。また第1導入孔24と第2導入孔26とは相互に異なる形状を有していてもよい。また複数の第2導入孔26のうち一部の第2導入孔26を他の第2導入孔26とは異なる形状としてもよい。またカバー12の側壁部22に設けられる第1導入孔24は複数であってもよいし、カバー12の周壁部25に設けられる第2導入孔26は単数であってもよい。また第1導入孔24及び第2導入孔26のうちの一方を設けずに、他方のみをカバー12に設けてもよい。
【0084】
また上述の実施形態ではセンサ装置10が被装着体100に固定的に装着される例について説明したが、センサ装置10は他の態様によって測定対象の流体の特性を計測してもよい。例えば、ユーザがセンサ装置10を手で支持しながら測定対象の流体に差し込むことで計測が行われてもよいし、管路やタンクから採取した流体試料を測定対象として計測が行われてもよい。
【0085】
また上述の実施形態では油などを測定対象流体とする例について説明したが、油以外の流体を測定対象としてもよく、任意の液状体(液体及びゾル等)及び気体の特性を検出するセンサ装置に対して本発明を応用することができる。液状体の測定対象として、例えば排水、飲食品、薬品、河川の水、海水、インク、洗剤及び光造形剤等が挙げられる。
【0086】
また上述の実施形態では、小径部14が第1螺合部16及び第2螺合部17を有する例について説明したが、第1螺合部16及び第2螺合部17のうちの一方又は両方が設けられていなくてもよい。上述の実施形態では第1螺合部16が挿通孔101に螺合して第2螺合部17がカバー螺合部27に螺合するが、実際の使用態様に応じて、第1螺合部16及び/又は第2螺合部17は必ずしも形成されなくてもよい。例えばカバー12は、ネジ等以外の手段によってハウジング11に固定されてもよいし、ネジ等の固定手段を設けることなくハウジング11(特に小径部14)がカバー12に挿入されるだけであってもよい。同様にセンサ装置10は、ネジ等以外の手段によって被装着体100に固定されてもよいし、ネジ等の固定手段を設けることなくセンサ装置10(特に小径部14)が被装着体100に挿入されるだけであってもよい。
【0087】
また上述の実施形態では水分量を検出特性とする例について説明したが、水分量以外の流体の特性を検出特性としてもよい。第1検出素子41及び第2検出素子42は、例えば流体の圧力、温度、流量、液面、或いは流速等を検出するものであってもよいし、流体中における特定の含有物質の有無や含有物質の濃度を検出するものであってもよいし、流体中の含有物質を検出及び特定するものであってもよい。
【0088】
また第1検出素子41及び第2検出素子42の検出方式は、静電容量式以外の方式であってもよく、例えば光学素子を有する検出素子や熱伝導式の検出素子を第1検出素子41及び第2検出素子42の各々として使用することも可能である。ただし第1検出素子41及び第2検出素子42の検出方式は、測定対象の流体及び検出特性の種類に応じて適切な方式が選択されることが好ましい。また第1検出素子41及び第2検出素子42の構成及び材料も、測定対象の流体及び検出特性の種類に応じて適切な構成及び材料が選択されることが好ましい。
【0089】
また上述の実施形態ではコントローラ50に設けられる解析部66と素子制御部63とが別体として設けられるが、解析部66及び素子制御部63を同一体に設けてもよく、単一の回路等によって解析部66及び素子制御部63を実現してもよい。
【0090】
上述の実施形態及び変形例は本発明の代表的な適用例に過ぎず、上述の実施形態及び変形例同士が適宜組み合わされてもよい。また他の構成に対しても本発明を応用することができ、種々の変形が加えられた各種構成に対して本発明を応用することも可能である。また本発明を実現するために必要とされる各機能構成は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは両者の組み合わせによって適宜実現可能であり、その各機能構成を実現するプログラムが非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。