特許第6772179号(P6772179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6772179-電気加熱可能なプラスター 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772179
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】電気加熱可能なプラスター
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/03 20060101AFI20201012BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20201012BHJP
   A61F 7/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61F7/08 331
   A61F13/02 310A
   A61F13/02 310Z
   A61F13/02 390
   A61F7/00 320Z
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-552124(P2017-552124)
(86)(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公表番号】特表2018-513736(P2018-513736A)
(43)【公表日】2018年5月31日
(86)【国際出願番号】EP2016057756
(87)【国際公開番号】WO2016162481
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年3月28日
(31)【優先権主張番号】15162818.7
(32)【優先日】2015年4月8日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・クラッフェンバッハ
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 実開平08−001539(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0096574(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0043658(US,A1)
【文献】 特開2003−327527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/03
A61F 7/00
A61F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気加熱可能なプラスターであって、
接着性組成物と基材とからなる自己接着性皮膚接触層と、
電気接点を備え、導電性繊維が互いに接触している、布、ニット構造、かぎ針編み構造、編み上げ構造、双方向もしくは多方向布、フェルトまたは繊維のフリースである、導電性のテキスタイルシートと
を含み、
ここで、該電気加熱可能なプラスターは、自己接着性皮膚接触層、導電性のテキスタイルシート以外の層/シートを含まず、
自己接着性皮膚接触層の基材は、プラスターの表面層を構成し、
該導電性のテキスタイルシートは、プラスターの背面層を構成し、そして
該電気加熱可能なプラスターは、少なくとも1種の医薬活性物質を、自己接着性皮膚接触層内に含むことを特徴とする、
前記プラスター。
【請求項2】
テキスタイルシートは、
a)もっぱら導電性の繊維;
b)導電性繊維および非導電性繊維の混合物;ならびに/または
c)テキスタイルシート内に三次元的にかつ耐久的に固定されている、接着性導電性バインダーおよび導電性粒子を装備している、1つまたはそれ以上の非導電性テキスタイルシート
からなるテキスタイルシートの群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のプラスター。
【請求項3】
導電性シートは、樹脂層またはポリマー層に埋め込まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラスター。
【請求項4】
樹脂層またはポリマー層は、少なくとも1種の導電性フィラーを含むことを特徴とする、請求項3に記載のプラスター。
【請求項5】
電源を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスター。
【請求項6】
テキスタイルシートの温度を一定に維持できる制御および調節電子システムを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスター。
【請求項7】
医薬活性物質は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、抗コリン薬、副交感神経遮断剤、抗真菌薬、MAO−B阻害剤、セロトニンアンタゴニスト、アルファ2受容体アゴニスト、光増感剤、ホルモンおよび/またはタンパク質からなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気加熱可能なプラスターを製造する方法であって:
− 布、ニット構造、かぎ針編み構造、編み上げ構造、双方向もしくは多方向布、フェルトまたは繊維のフリースであり、導電性繊維が互いに接触している、導電性テキスタイルシートを準備する工程と、
− 少なくとも1種の医薬活性物質を含む自己接着性皮膚接触層上に導電性テキスタイルシートを積層する工程と、
− 個々のプラスターを分離する工程と、
− 導電性テキスタイルシートの自己接着性皮膚接触層に接触しない側に電極との接点を取り付ける工程と
を含む、前記方法。
【請求項9】
少なくとも1つのさらなる層を持つ積層体を準備する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気加熱可能なプラスターの製造のための、導電性テキスタイルシートの使用であって、該導電性のテキスタイルシートは、電気接点を備え、導電性繊維が互いに接触している、布、ニット構造、かぎ針編み構造、編み上げ構造、双方向もしくは多方向布、フェルトまたは繊維のフリースである、前記使用。
【請求項11】
医薬活性物質の皮膚透過、および/または活性物質の経皮投与を増大させる局所熱療法での使用のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気加熱可能なプラスター。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のプラスターが患者に適用され、電源と導電性テキスタイルシートとの間の回路が閉じていることを特徴とする、局所熱療法および/または活性物質の経皮投与での使用のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気加熱可能なプラスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質のプラスターを含むプラスターおよびそれらを製造する方法に関する。本発明は、特に、電気加熱可能な接着剤および活性物質のプラスターに関する。
【背景技術】
【0002】
熱は、治癒効果を有すると考えられている。故に、熱療法は、最古の医療処置に属する。治療用ハイパーサーミアとは異なり、医療熱療法は、局所的に、例えば、運動系の疾患または過負荷による損傷で使用される。熱は、医療分野において、とりわけ、下記の効果を有すると考えられている:筋弛緩、循環の改善、滑液の粘度の低減、コラーゲン性結合組織の拡張性の改善および疼痛緩和。
【0003】
局所熱療法では、事前に加熱されたある特定の担体が、一般に、潜熱蓄熱材として、数分間から数時間にわたって治療予定の身体のエリアに適用される。潜熱蓄熱材の例は、穀物袋、泥パックまたは蓄熱ゲルである。しかしながら、局所熱療法に加熱クッションを使用することもでき、その内容物は、加速酸化プロセスを経由して、最大24時間にわたって熱を伝達する。さらに、特異的な皮膚受容体を、熱の主観的な感覚を生成するために、カプサイシンを含有する担体、例えば軟膏またはプラスターで刺激することもできる。
【0004】
プラスターは、患者が動いた場合でも滑り落ちず、患者の皮膚の表面との接触を維持するように、自己接着性表面を用いて患者の皮膚の上にまたは中に締結することができるため、局所熱療法に特に好適である。
【0005】
熱の供給は、医薬活性物質の経皮投与を改善できることも公知である。しかしながら、これらの目的のために使用される潜熱蓄熱材は、例えば、目標温度の正確な設定も、最大数時間の長期間にわたる所定の目標温度の一定維持も不可能であることから、熱の監視および/または制御可能な供給を行うことができない。潜熱蓄熱材がプラスターに固定して統合されるならば、プラスターを患者の皮膚から除去する必要なしに熱の供給を中断することは、不可能である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、熱の局所的供給用のプラスターであって、数時間を超える場合であっても、プラスターをその適用部位から除去する必要なしに、制御可能な温度管理ができるプラスターを提供することであった。
【0007】
特許文献1は、創傷治癒および疼痛緩和を促進するという特性を持つ多層創傷被覆材を開示している。この創傷被覆材は、柔軟であり、銀メッキ繊維および非金属化繊維から構成される、少なくとも1つの良好な導電層を含む。
【0008】
特許文献2は、導電性テキスタイル発熱エレメントと、導電性テキスタイルを制御するための制御回路とを含む、加熱可能な創傷被覆材を開示している。導電性テキスタイルは、患者の皮膚と直接接触するか、または患者の皮膚と接触する層がそれに隣接して配置されるかのいずれかである。
【0009】
特許文献3は、電気絶縁クロスによって構成される柔軟なポケットと、伝熱媒体を受け取るためのデバイスとを持つ、電気刺激ボディパックについて記述している。ポケットは、冷却された伝熱媒体をそれと接触している身体から分離するための水分障壁を持つ第1の表面と、皮膚の火傷を防ぐために加熱された伝熱媒体をそれと接触している身体から分離するための絶縁デバイスを持つ第2の表面とを有する。柔軟なポケットの第1の表面を配置し身体部分に押し付けるためのデバイスは、柔軟なポケットの第1または第2の表面のいずれかを身体部分に押し付けるように構築される。ボディパックは、柔軟な電気的神経および筋肉刺激電極をさらに有し、これは、柔軟なポケットの第1または第2の表面のいずれかが身体部分に押し付けられた際に、刺激電極と身体部分との間の直接接触を可能にする位置で柔軟なポケットに締結されており、ここで、導線は、柔軟な神経および筋肉刺激電極と電気的に接続されている。
【0010】
特許文献4は、導電性糸および非導電性糸から生成される、疼痛緩和特性を持つ布を開示している。布は、包帯、支持包帯および衣類のようなテキスタイル製品に組み込まれる。
【0011】
特許文献5は、活性物質の局所投与に好適であり、通気性発熱エレメントを含む、装置を開示している。通気性発熱エレメントは、金属化布である。層状発熱エレメントは、皮膚または創傷接触層に適用され、接着剤層によって覆われる。発熱エレメントは、エッチング布における創傷金属伝導性トラックである。皮膚接触層は、マイクロカプセル化した活性物質を含有することができ、これは、熱活性化によってマイクロカプセルから解放できるものであり、次いで、溶融し、皮膚に供給される。しかしながら、発熱エレメントを構成する創傷金属伝導性トラックは、十分に均質ではない熱分布をもたらす。
【0012】
三次元繊維分布を持つ導電性テキスタイルは、特許文献6において、熱可塑性またはデュロプラスチックの繊維プラスチック複合部材の製造におけるプラスチック金型の均一加熱のための加熱可能な表面を生成するための装置として提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO99/15101A1号公報
【特許文献2】WO03/039417A2号公開明細書
【特許文献3】WO94/15668A1号公報
【特許文献4】US2003/0186608A1
【特許文献5】WO2004/107816A1号公報
【特許文献6】DE202013006258U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、熱を生成することができるプラスターであって、プラスターの表面、特に皮膚接触表面上での熱分布が可能な限り均質であるプラスターを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、本発明の第1の態様に従って、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートとを含む電気加熱可能なプラスターにより、解決される。
【0016】
第2の態様によれば、本発明は、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートとを含む電気加熱可能なプラスターの製造のための方法に関する。
【0017】
第3の態様によれば、本発明は、電気加熱可能なプラスターの製造のための、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートの使用に関する。
【0018】
さらなる態様によれば、本発明は、局所熱療法のための、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートとを含む電気加熱可能なプラスターの使用に関する。
【0019】
さらなる態様によれば、本発明は、プラスター中に含有される活性物質の皮膚透過を改善するための、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートとを含む電気加熱可能なプラスターの使用に関する。
【0020】
さらなる態様によれば、本発明は、哺乳動物の皮膚中および/または上への、プラスター中に含有される少なくとも1種の活性物質の投与のための、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートとを含むプラスターの使用に関する。
【0021】
さらなる態様によれば、本発明は、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートとを含む電気加熱可能なプラスターを利用する、哺乳動物の皮膚中および/または上への、熱および/または少なくとも1種の活性物質の投与のための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例2において記述されているジクロフェナクプラスチックについての皮膚透過実験の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の態様によるプラスターという用語は、哺乳動物、好ましくはヒトの皮膚の上または中に適用することができる、層状の、柔軟な、好ましくは自己接着性エレメントとして理解されるべきである。本開示の文脈において、用語「プラスター」は、いわゆる絆創膏だけでなく、いわゆる薬用プラスターも含む。絆創膏は、被覆材または物品を患者の皮膚に固定するために一般に使用されている、接着性テキスタイルストリップである。薬用プラスターは、薬用プラスターの適用後に解放されて、患者の皮膚の中または上に投与される少なくとも1種の医薬活性物質を含有する、層状で、柔軟な、好ましくは自己接着性エレメントとして理解されるべきである。
【0024】
本発明の文脈において、プラスターは、創傷を覆う働きをするのではなく、無傷の皮膚に締結される。故に、本発明の文脈における用語「プラスター」は、一片の被覆材がテキスタイルまたはプラスチック材料の接着性ストリップと接続されている、既製の即時創傷被覆材を含まない。
【0025】
第1の態様によるプラスターは、電気加熱可能なプラスターである。これは、プラスターの少なくとも1つの部分または部材を通って電流が流れる際に、プラスターが熱を発生させることができることを意味する。
【0026】
第1の態様によるプラスターは、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性のテキスタイルシートとを含む。自己接着性皮膚接触層は、患者の皮膚の中または上に締結される、プラスターの層である。皮膚接触層は、皮膚適合性接着剤を含むまたはそれからなる。皮膚適合性接着剤は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、シリコーン、ポリイソブチレンおよびそれらの混合物を含む接着剤の群から選択することができる。
【0027】
プラスターは、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートをさらに含む。このシートは、それが電流回路の一部であり、それを通って電流が流れるならば、熱を発生させることができる。導電性テキスタイルシートは柔軟であり、故に、皮膚エリアの加熱が可能な限り均一になることを確実にでき、プラスターが患者によって過度に侵入する異物として知覚されないように、プラスターが接着する表面の輪郭を適合させることができる。
【0028】
プラスターの一実施形態において、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートは、プラスターの背面層を構成する。この実施形態は、比較的簡単にかつ経済的に作製できる、プラスターの最も簡単な構築物を表す。
【0029】
代替的な実施形態において、プラスターは、自己接着性皮膚接触層、導電性テキスタイルシートおよび追加で背面層を含む。この実施形態において、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートは、プラスターの背面層を構成しない。この実施形態において、導電性テキスタイルシートは、追加のシートである。この実施形態は、活性物質に不透過性であるような背面層を選択することができるため、医薬活性物質を含有する本発明によるプラスターの実施形態において、特に有利である。
【0030】
追加のおよび/または代替的な実施形態によれば、追加の背面層は、テキスタイルシートまたはポリマーフィルム、好ましくは活性物質に不透過性のポリマーフィルムである。さらなる実施形態において、シートは、天然繊維の、合成繊維の、または天然および合成繊維の混合物の、ニット構造である。別の実施形態によれば、ポリマーフィルムは、穿孔されている。プラスターの背面層としてのテキスタイルシートまたは穿孔ポリマーフィルムは、非穿孔ポリマーフィルムの背面層よりも、ガス交換または皮膚への酸素の供給を損なうことが少ない。
【0031】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、プラスターは、断熱層を含む。断熱層は、プラスターにより発生した熱が、実質的に皮膚の方向に供給されることを確実にする。プラスターの自由表面は、プラスターの適用後、加熱が弱まり、これは、患者によって快適であるとして知覚される。さらに、所定の温度を維持するために必要とされる電気エネルギーが少なくなる。故に、所与の動力源をより長く使用することができるか、または低電力の動力源を使用することができ、これらはまた、一般に、より小さくかつ/またはより軽いものである。
【0032】
断熱層は、患者の皮膚から遠く離れた導電性テキスタイルシートの表面上のプラスター中に配置される。この実施形態の1つの形態において、特に、導電性テキスタイルシートがプラスターの背面層を構成しないプラスターの実施形態において、プラスターの背面層は、断熱層として構築される。実施形態の代替的な形態において、断熱層は、背面層に加えて存在し、故に、導電性テキスタイルシートと背面層との間に配置される層である。故に、この実施形態によるプラスターは、自己接着性皮膚接触層、導電性テキスタイルシート、断熱層および背面層を有する。
【0033】
断熱層は、例えば、ポリマー発泡体の層であってよい。断熱層用のポリマー発泡体は、連続気泡発泡体、すなわち、気泡が互いに開放接続を有するポリマー発泡体、または個々の気泡が互いに開放的に接続していない独立気泡発泡体であってよい。
【0034】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、プラスターは、それが使用される前にプラスターの自己接着性皮膚接触層を覆う、除去可能な保護層を有する。除去可能な保護層は、それが使用される前に、プラスターの自己接着性表面から除去されなくてはならない。
【0035】
追加のおよび/または代替的な実施形態によれば、導電性テキスタイルシートは、自己接着性皮膚接触層と背面層との間に配置される。別の実施形態において、導電性テキスタイルシートは、自己接着性皮膚接触層に埋め込まれている。
【0036】
導電性テキスタイルシートは、三次元繊維分布を持つテキスタイルシートである。これは、繊維がテキスタイルシート内で交差しているまたは重複していることを意味する。故に、テキスタイルシートの導電性繊維は、電流がテキスタイルシートの全エリア上を流れることができ、テキスタイルシートを可能な限り均一に温めることができるように、テキスタイルシート内で互いに接触している。用語「互いに接触している」は、それらの交点における電気繊維の直接的な相互接触だけでなく、テキスタイルシートの2つの交差している導電性繊維の間の交点に導電性材料が位置している設計も含む。
【0037】
テキスタイルシートは、好ましくは、布、ニット構造、かぎ針編み構造、編み上げ構造、双方向もしくは多方向布、フェルトまたは繊維のフリース(繊維フリースまたはスピンフリース)である。
【0038】
好ましい実施形態によれば、布は、平織、あや織または繻子織の布である。布は、特に好ましくは、5枚または8枚繻子織である。繻子織の利点は、一方では、特に整合性があること、他方では、可能な限り多数の導電性繊維がプラスターの表面の可能な限り近くに位置しており、患者の皮膚と接触するように配向してプラスター中に配置できることにある。
【0039】
代替的なおよび/または追加の実施形態において、導電性テキスタイルシートは、
(a)もっぱら導電性の繊維;
(b)導電性および非導電性繊維の混合物;ならびに
(c)テキスタイルシート内に三次元的にかつ耐久的に固定されている、接着性導電性バインダーおよび導電性粒子、好ましくは金属粒子を装備している、1つまたはそれ以上の非導電性繊維テキスタイルシート
からなるテキスタイルシートの群から選択される。
【0040】
「導電性繊維」は、電流を伝導することができる繊維として理解されるべきである。導電性繊維は、例えば、導電性材料、例えば、金属、合金または導電性プラスチック材料からなる繊維である。しかしながら、用語「導電性繊維」は、非導電性材料によってシースされている少なくとも1つの導電性コアを含む繊維としても理解されるべきである。導電性繊維の少なくとも1つの導電性コアは、導電性材料、例えば、金属、合金または導電性プラスチック材料からなる。用語「導電性繊維」は、導電性材料でシースされている少なくとも1つの非導電性コアを含む繊維としても理解されるべきである。導電性シース用の導電性材料は、金属、合金または導電性プラスチック材料であってよい。そのような繊維の例は、銀でシースされているポリアミド繊維である。
【0041】
本発明の第1の態様によるプラスターは、電気加熱可能なプラスターである。これは、プラスターの導電性テキスタイルシートへの電圧の印加により、結果として生じる電流フロー熱を生成できることを意味する。導電性テキスタイルシートを用いて生成できる、好ましくは導電性テキスタイルシートの表面において所与の電圧または電流密度で測定される温度は、導電性テキスタイルシート内、または導電性もしくは金属シート繊維および非導電性繊維の混合物内における、導電性繊維の性質および割合によって調整することができる。概して、導電性テキスタイルシート内における導電性繊維および/または粒子の割合が小さくなればなるほど、実現される温度が高くなることは事実である。
【0042】
代替的にかつ/または追加で、所与の導電性テキスタイルシートを用いる加熱の程度は、導電性テキスタイルシートに印加される電圧および/または電流密度を利用して調整できる。一実施形態によれば、プラスターの適用中に導電性テキスタイルシートに印加される電圧は、少なくとも1.35V、好ましくは3.6V未満、特に好ましくは3.0V未満である。従来のバッテリーを使用する場合、電圧は、バッテリーに応じて、約1.35V、約1.4V、約1.5V、約1.55Vまたは約3.0Vである。
【0043】
一実施形態において、導電性テキスタイルシートの加熱は、導電性テキスタイルシートの表面において測定される温度が、50℃の値を超えないように調整できる。導電性テキスタイルシートの加熱は、好ましくは、導電性テキスタイルシートの表面において測定される温度が、45℃の値、好ましくは40℃の値、特に好ましくは37℃の値、最も特に好ましくは35℃の値、最も極めて好ましくは32℃の値を超えないように調整される。
【0044】
導電性テキスタイルシートのシートまたは表面抵抗、故に所与の電圧および加熱面積における加熱時間は、非導電性繊維部材の選択によって用途特異的様式で調整できる。
【0045】
導電性または金属シース繊維および非導電性繊維の混合物内における非導電性繊維の割合が高くなればなるほど、テキスタイルシート上の所定の表面温度を実現するために、所与の電圧および加熱面積での加熱時間は長くなる。
【0046】
追加のおよび/または代替的な実施形態によれば、導電性テキスタイルシートは、樹脂層またはポリマー層に埋め込まれている。別の追加のおよび/または代替的な実施形態によれば、導電性テキスタイルシートは、樹脂またはポリマーを含浸しているまたはそれで飽和している。
【0047】
追加の実施形態によれば、樹脂またはポリマーは、少なくとも1種の導電性フィラーを含む。少なくとも1種の導電性フィラーは、黒鉛、すす、カーボンナノチューブおよび金属粒子からなる群から選択することができる。少なくとも1種の導電性フィラーの結果として、導電性シートは、樹脂またはポリマーをベースにして生成され、これにより、(テキスタイルまたはテキスタイル補強)シートの表面上の特に均質な熱分布を実現することができる。
【0048】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、導電性テキスタイルシートは、電極の好適な位置に設けられ、これを利用して、電力供給導電性テキスタイルシートを制御するための、導電性テキスタイルシートと電源および/または電子部品との接触が起こり得る。
【0049】
導電性テキスタイルシートと電極との接触は、電極を導電性テキスタイルシート内に/上に、縫い付ける、溶接するまたは糊付けすることによって、実行することができる。接触は、エネルギー損失および加熱がより強い位置を確実に防ぐために、電気接点と導電性テキスタイルとの間の接触抵抗が可能な限り小さくなるように実行すべきである。電極は、好ましくは、導電性テキスタイルシート上に並列導体の形態で配置される。
【0050】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、プラスターは、導電性テキスタイルシートと電気的に接続可能な電源を含む。電源は、好ましくは、直流源である。直流源は、バッテリーであってよい。いわゆるボタンセル、すなわち、その全高が直径よりも小さい円形断面を持つ電気化学セルが特に好適である。好適なボタンセルの例は:
【表1】
である。
【0051】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、プラスターは、導電性テキスタイルシートと電源との間の電流回路を閉じるおよび/または再度中断することができるスイッチを含む。この実施形態において、プラスターは、患者の皮膚へのその適用後、任意の所望時に熱を発生させることができ、熱の発生は、必要な場合、プラスターを皮膚から除去する必要なしに、中断することができる。
【0052】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、プラスターは、電源に加えて、電源と導電性テキスタイルシートとの間の電流回路を中断する絶縁ストリップを含む。この絶縁ストリップは、非導電性材料、好ましくは非導電性プラスチック材料からなる。絶縁ストリップは、除去可能なように配置される。これは、カバー等を開ける必要なしに絶縁ストリップを引き出すことができ、絶縁ストリップの除去の結果として、電源と導電性テキスタイルシートとの間の電流回路が閉じられることを意味する。この絶縁ストリップは、プラスターの使用前に直接除去することができる。
【0053】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、プラスターは、テキスタイルシートの温度を一定に維持することができる制御および調節電子システムを含む。
【0054】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、プラスターは、光学機能表示を含む。光学機能表示は、プラスターが適正に機能していることを使用者に示す働きをする。光学機能表示は、光ダイオードであってよく、これは、電源と導電性シートとの間の電流回路が閉じており、電流が流れている限り、照明する。代替的なおよび/または追加の光学機能表示は、温度測定ストリップであってよく、これは、温度、好ましくは導電性テキスタイルシートの表面の温度を示す。
【0055】
追加のおよび/または代替的な実施形態によれば、プラスターは、少なくとも1種の医薬活性物質を含む。医薬活性物質を含有するプラスターは、経皮治療システムまたは活性物質のプラスターとも称される。これらは、活性物質、好ましくは医薬物質を、長期間にわたって、一定のまたは少なくともほぼ一定の速度で、使用者/患者の皮膚の中および上に供給するために好適なデバイスである。
【0056】
活性物質含有プラスターの一実施形態において、自己接着性皮膚接触層は、自己接着性ポリマーマトリックスによって構成され、これは、少なくとも1種の活性物質または複数の活性物質のうちの少なくとも1種も含有する。追加のおよび/または代替的な実施形態において、自己接着性皮膚接触層は、別個の自己接着性接触層であり、これは、少なくとも1種の活性物質を含有することができるが、活性物質リザーバーまたはプラスターとして機能することはない。別個の自己接着性層は、追加で存在する活性物質リザーバーの皮膚側の表面の少なくとも1つの領域に適用される。
【0057】
経皮治療システムの少なくとも1つの活性物質リザーバーは、少なくとも1種の活性物質を含有するポリマーマトリックス、またはシースによって画成され、実質的に液体の活性物質調製物を含有する袋形状のリザーバーのいずれかである。用語「液体」は、低粘度、高粘度およびゲル様調製物を含む。袋形状のリザーバーのシースは、少なくとも皮膚に向けられる予定の側に半透膜を含み、これを介して、リザーバーに含有される活性物質を供給することができ、場合により、活性物質の放出速度を制御する機能を有する。少なくとも1種の活性物質が経皮治療システムのポリマーマトリックスに含有されるならば、このポリマーマトリックスを活性物質リザーバーとみなすべきである。
【0058】
活性物質含有プラスターは、少なくとも1種の活性物質、好ましくは少なくとも1種の医薬活性物質を含有する。医薬活性物質は、任意の所望の経皮投与可能な医薬活性物質であってよい。例えば、少なくとも1種の医薬活性物質は、非ステロイド性抗リウマチ薬(NSAID)、抗コリン薬、副交感神経遮断薬、抗真菌薬、MAO−B阻害剤、セロトニンアンタゴニスト、アルファ2受容体アゴニスト、光増感剤、ホルモンおよび/またはタンパク質を含む群から選択することができる。
【0059】
非ステロイド性抗リウマチ薬(NSARまたはNSA)、非ステロイド性消炎薬(NSAP)またはNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)も、痛み止め(非オピオイド鎮痛薬)であり、それらの抗炎症(消炎)効果により、リウマチ療法にも症状に関連する問題で使用される。一実施形態において、非ステロイド性抗リウマチ薬は、アントラニル酸誘導体、例えば、メフェナム酸、フルフェナム酸、エトフェナメートおよびメクロフェナム酸、選択的COX−2阻害剤、例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、ルミラコキシブおよびバルデコキシブ、酢酸誘導体およびアリール酢酸誘導体、例えば、アセクロフェナク、アセメダシン、ブフェキサマク、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシンおよびケトロラク、オキシカム、例えば、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカムおよびテノキシカム、プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、デキシブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、ベノキサプロフェンおよびチアプロフェン酸、サリチレート、例えば、アセチルサリチル酸、カルシウムカルバサレート、アセチルサリチル酸リシンおよびサリチル酸、ならびにナブメトンおよびニメスリドからなる群から選択される。
【0060】
少なくとも1種の医薬活性物質は、その遊離塩基および/またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1つの形態で存在する。用語「薬学的に許容される塩」は、活性物質の薬学的に許容される酸付加塩も含む。少なくとも1種の活性物質がキラル物質であるならば、活性物質は、ラセミ体の形態またはその医薬活性エナンチオマーの形態のいずれかで経皮治療システム内に存在する。
【0061】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、経皮治療システムは、少なくとも1種の透過増強剤を含み、これは、患者の皮膚を通る少なくとも1種の活性物質の透過を改善する。
【0062】
一実施形態において、活性物質含有プラスターは、活性物質不透過性背面層を含む。活性物質不透過性背面層は、一般に、ポリマーフィルムからなり、これは、プラスター中に含有される活性物質に不透過性である。活性物質不透過性背面層は、活性物質含有層に保護を提供する。加えて、背面層は、患者または別の人物が、プラスター中に含有される活性物質と意図せず接触するのを防ぎ、活性物質が患者の皮膚に向けた様式で放出されることを確実にする。
【0063】
経皮治療システムは、部分的に対立する要件が満たされなくてはならない複雑な送達形態である。例えば、経皮治療システム内の活性物質含有量は、単位時間当たり治療的利益に必要な量の活性物質を比較的長期間にわたって供給することができるために十分大きくなくてはならない。しかしながら、これに関連して、経皮治療システムのサイズには、特に製造、取り扱いおよび患者コンプライアンスにおける要件によって引き起こされる限界がある。
【0064】
活性物質の経皮投与を改善するために、例えば、いわゆる透過増強剤を使用することができる。これらは、経皮治療システムに含有され、皮膚を、プラスター中に同じく含有される活性物質に対してより透過性にする物質である。一実施形態において、活性物質含有プラスターは、追加で、少なくとも1種の透過増強剤および/または少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0065】
しかしながら、透過増強剤の使用は、皮膚刺激のような望ましくない副作用を伴い得る。プラスターにおける透過増強剤および/または他の薬学的に許容される賦形剤の使用を除外することなく、電気加熱可能なプラスターは、皮膚エリアを加熱することにより、プラスター中に含有される活性物質の皮膚透過における改善を可能にし、ここで、活性物質は、電気加熱可能なプラスターを活用して、経皮的に投与予定である。故に、プラスター中における透過増強剤の含有量は、同じ透過速度を実現するために、適切ならば、同等の加熱不可能なプラスター中よりも小さくなり得る。
【0066】
一実施形態において、導電性テキスタイルシートは、活性物質含有シートと活性物質含有プラスターの活性物質不透過性背面層との間に配置される。
【0067】
代替的な実施形態において、導電性テキスタイルシートは、活性物質不透過性層によって活性物質含有層から分離される。
【0068】
第2の態様によれば、本発明は、第1の態様による電気加熱可能なプラスター、すなわち、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートとを含む、電気加熱可能なプラスターを製造する方法に関する。
【0069】
方法の一実施形態において、製造方法は、少なくとも下記の工程を含む:
− 導電性テキスタイルシートを準備する工程、
− 自己接着性層上に導電性テキスタイルシートを積層する工程、
− 個々のプラスターを分離する工程、および
− 導電性テキスタイルシートの非積層側に接点を取り付ける工程。
【0070】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、方法は、少なくとも1つのさらなる層を積層させることも含む。この実施形態の1つの形態において、少なくとも1つのさらなる層は、ポリマーフィルム、穿孔ポリマーフィルム、またはテキスタイル、ニット構造、布もしくはフリースのようなテキスタイルシート、または、プラスターの皮膚接触層を構成する自己接着性層から遠く離れた導電性のテキスタイルシートの表面に好ましくは適用される、連続気泡発泡体材料もしくは独立気泡発泡体材料の層である。別のおよび/または追加の実施形態において、少なくとも1つのさらなる層は、例えば、自己接着性層と導電性のテキスタイルシートとの間に活性物質含有リザーバーとして配置される、ポリマー層である。
【0071】
追加のおよび/または代替的な実施形態の方法は、電源および/またはオン−オフスイッチおよび/または絶縁ストリップを取り付ける工程を含む。
【0072】
方法の一実施形態において、自己接着性接着剤層は、医薬活性物質を含まない。代替的な実施形態において、自己接着性接着剤層は、少なくとも1種の医薬活性物質ならびに場合により少なくとも1種の透過増強剤および/または少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0073】
追加のおよび/または代替的な実施形態において、自己接着性接着剤層は、導電性テキスタイルシートの積層前に、例えば完成したプラスターの除去可能な保護フィルムを構成するポリマーフィルムに取り付けられる。
【0074】
プラスターを製造する方法は、一般に、プラスターの個々の層または階層を準備する工程の後に、それらをロールまたはシート材料の形態で一緒に連結する工程を含む。製造方法において、異なるシートは互いの上に置き、一緒に連結して積層体を形成する。シート形状の積層体からプラスターを分離する工程は、打ち抜きによってまたは切断によって実行することができる。
【0075】
第3の態様によれば、本発明は、電気加熱可能なプラスターを製造するための、好ましくは、少なくとも1種の医薬活性物質を含有する電気加熱可能なプラスターを製造するための、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートの使用に関する。
【0076】
プラスターにおける発熱エレメントとしての導電性テキスタイルシートの使用の結果として、低電圧、患者の皮膚から発熱エレメントの間隔が狭いこと、および場合により、温度が、患者の皮膚表面の温度を数度だけ上回る温度までわずかにしか増大しないことにもかかわらず、プラスターの表面上での温度分布において望ましくない不均質が起こらないように、均質な熱分布を実現することができる。このようにして、皮膚の特に均一な加熱および特に良好な療法転帰を実現することができる。
【0077】
さらなる態様の1つによれば、本発明は、局所熱療法のための、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触しているテキスタイルシートとを含む、上述した電気加熱可能なプラスターの使用に関する。故に、本発明は、自己接着性皮膚接触表面と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートとを含む、上述したプラスターの1つ、好ましくは活性物質を含まないプラスターが使用される、局所熱療法のための方法にまでも及ぶ。
【0078】
さらなる態様のもう1つによれば、本発明は、プラスター中に含有される活性物質の皮膚透過を改善するための、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートとを含む、上述したプラスターの使用に関する。故に、本発明は、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートと、活性物質とを有する、第1の態様によるプラスターが使用される、活性物質、好ましくは医薬活性物質の皮膚透過を増大させるための方法にまでも及ぶ。
【0079】
さらなる態様のもう1つによれば、本発明は、少なくとも1つの活性物質を、哺乳動物の皮膚の中および/または上に投与するための、自己接着性皮膚接触層と、導電性繊維が互いに接触している導電性テキスタイルシートと、少なくとも1種の活性物質とを含む、上述した通りのプラスターの使用に関する。故に、本発明は、活性物質を含有し、電気加熱可能であるプラスターが患者の皮膚の上にまたは中に締結される、活性物質、好ましくは医薬活性物質の経皮投与のための方法にまで及ぶ。
【0080】
本発明によるプラスターの使用において、テキスタイルシートは、発熱エレメントとして機能し、これを用いて、プラスターおよびプラスターによって覆われている患者の皮膚のエリアが加熱される。使用においては、熱の利用が重要であり、電流自体の作用は、テキスタイルシートが身体またはプラスターによって覆われている身体のエリアを加熱するのに必要ではない。この点について、本発明によるプラスターの本発明による使用は、創傷、例えば上皮における傷害またはさらには患者の体内の手術の傷(operational wound)の治癒が、電気刺激を従来の創傷ケアと組み合わせることによって、標準的な創傷ケアと比較して加速される、干渉電流レギュレーション療法(interference current−regulation therapy)とは異なる。
【0081】
本発明のさらなる態様による使用および/または方法を用いて、電源と導電性のテキスタイルシートとの間の電流回路は、プラスターが、哺乳動物、好ましくはヒトの皮膚の上にまたは中に締結される前または後に直接閉じる。電流回路を閉じた結果として、電流が導電性のテキスタイルシートを通って流れ、印加電圧およびその抵抗の結果としてテキスタイルシートが加熱する。加熱は、治療効果を有するか、またはプラスター中に潜在的に含有される活性物質の皮膚透過における増大をもたらす。
【実施例】
【0082】
〔実施例1〕
電気加熱可能な背面層を持つイブプロフェン−プラスター
デュロタック387−2353 174.32g(固体含有量37%)を、酢酸エチル8.07gで希釈し、メタノール中10%水酸化カリウムの溶液31.6gを添加した。徹底的に混合した後、オレイン酸16.63gを添加した。次いで、アルミニウムアセチルアセトネート1.2gおよびアセチルアセトン1gを添加した。すべての成分を一緒によく混合した後、イブプロフェン(ラセミ体)16.63gを添加した。組成物を、すべての成分が完全に溶解するまで室温で撹拌した。次いで、接着性組成物を、60g/mの乾燥重量が実現されるように、シリコン処理したPETフィルム100μm上にスクレーパーを利用して広げた。溶媒をおよそ80℃で蒸発させた。次いで、導電性繊維を持つスピンフリースである加熱可能な繊維材料で、積層体を覆った。
【0083】
〔実施例2〕
電気加熱可能な背面層を持つジクロフェナクプラスター
デュロタック387−2287 94.92g(固体含有量50%)を、酢酸エチル13g中アルミニウムアセチルアセトネート0.72gの溶液と混合した。酢酸エチル0.4gに溶解したα−トコフェロール0.12gを、この組成物に添加し、均質に撹拌した。ジクロフェナク−Na2.4gを、メタノール5.4gに溶解し、組成物に添加した。組成物を、固体が完全に溶解するまで室温で撹拌した。接着性組成物を、80g/mの乾燥重量が実現されるように、シリコン処理したPETフィルム100μm上にスクレーパーを利用して広げた。溶媒をおよそ75℃で蒸発させた。次いで、導電性繊維を持つスピンフリースである加熱可能な繊維材料で、積層体を覆った。
【0084】
〔実施例3〕
電気加熱可能な背面層を持つジクロフェナクプラスター
デュロタック387−2051 118.57g(固体含有量50%)を、メタノール21.6g中水酸化カリウム2.4gの溶液24gで中和した。このようにして中和した接着剤溶液90.66gを、メタノール1.75gおよび酢酸エチル0.3g中アルミニウムアセチルアセトネート0.3gの溶液2.26gと混合した。オレイン酸7.5gおよびα−トコフェロール0.25gを添加し、撹拌して、溶解を完了させた。メタノール4.38g中ジクロフェナク−Na2.0gの溶液6.38gをそれに添加した。組成物を、すべての固体が完全に溶解するまで室温で撹拌した。接着性組成物を、80g/mの乾燥重量が実現されるように、シリコン処理したPETフィルム100μm上にスクレーパーを利用して広げた。溶媒を、最初に室温でおよそ10分間にわたってフラッシュオフさせ、次いで、およそ60℃で蒸発させた。次いで、導電性繊維を持つスピンフリースである加熱可能な繊維材料で、積層体を覆った。
【0085】
〔実施例4〕
皮膚透過実験の遂行
インビトロ透過試験の遂行のために、Keshary−Chienによる改良型拡散セル(modified diffusion cell)を使用した。セルは、2つの水平分割領域、ドナー領域およびアクセプター領域からなる。水浴を利用して、拡散セルの温度を32℃に維持した。アクセプター培地(リン酸緩衝液、pH5.5)を、試験の間、磁気撹拌器を利用して絶えず撹拌した。
【0086】
皮膚を2つの領域の間でクランプし、それにより、皮膚の角質層は、ドナー領域を上向きに指した。プラスターを、皮膚の角質層に向けて、接着剤層により皮膚試料上に位置付けた。
【0087】
アクセプター培地を、指定された除去時間においてアクセプター領域から完全に除去し、その中に溶解された活性物質のその後の定量的決定のために保った。次いで、同量の新鮮なアクセプター培地を添加した。このようにして、アクセプター培地中において飽和溶解度に潜在的に達することにより、透過動力学は影響を受けないことを確実にした。
【0088】
採皮した(Dermatomised)ヒト皮膚(800μm)をすべての皮膚透過実験に使用した。セルにおける開口部の面積は、1.54cmであった。
【0089】
アクセプター培地中に透過した活性物質の定量的決定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を利用して実行した。
【0090】
ジクロフェナクの分析のために、アセトニトリルおよび0.025m KHPO(50:50、v/v)の混合物を、移動相として使用した。pH値は3.0に設定した。Zorbax SB C8 80A 5μmを詰めた150×4.6mmの分離カラムを、固定相として使用した。流速は1.5ml/分であり、カラム温度は30℃であった。注入体積は50μlであり、検出器の波長は225nmに設定した。
【0091】
イブプロフェンの分析のために、ノバパックC18 5μmを詰めた150×4.0mmの分離カラムを使用した。55:45:1.5の混合比のアセトニトリル:水−テトラメチル:水酸化アンモニウムの混合物を、移動相として使用した。pH値は3.0に設定した。流速は1.0ml/分であり、カラム温度は25℃であった。注入体積は50μlであり、検出波長は214nmに設定した。
【0092】
計算は、認証標準物質を使用する外部標準法を利用して実行した。
【0093】
プラスターは、それらの縁部が拡散セルから著しく突出するように大きく製造した。加熱可能な背面層との接触は、導電性テキスタイルシートに縫い付けることによって実行した。ワニ口クリップを利用して、直流(HAMEG社製パワーサプライHM7042−5)をそれらに印加した。42℃の表面温度を実現するために、電圧は3Vに設定した。50℃の表面温度を実現するために、電圧は6Vに設定した。得られた電流強度は、3Vおよび42℃についてはおよそ200Ma、ならびに6Vおよび50℃についてはおよそ50mAであった。
【0094】
電力の印加のない平行測定を参照として実行した。
【0095】
実施例2において記述されているジクロフェナクプラスチックについての皮膚透過実験の結果を、図1にグラフで示す。この図解から、ジクロフェナクプラスターの背面層を約42℃または約50℃の温度に加熱することは、直流が印加されなかった「パッシブ」と称される参照と比較して、皮膚上でのプラスター中に含有されるジクロフェナクの著しく改善した透過をもたらすことが明らかである。
図1