【文献】
J. Agric. Food Chem.,1998年,Vol.46,pp.3411-3414
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リパーゼが、クロモバクテリウム・ビスコサムリパーゼ、シュードモナス・フルオレセンスリパーゼ、およびリゾプス・オリゼーリパーゼからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長鎖トリグリセリドの加水分解を改善するために、市販のリパーゼ栄養補助剤が食事に添加される場合がある。しかしながら、種々の理由から、リパーゼ栄養補助剤は、長鎖トリグリセリドを分解するための能力が低下しているか、あるいは別の理由で必須脂肪酸を受ける必要がある全ての人の低脂肪酸吸収の問題を必ずしも解決するわけではない。例えば、大部分の市販されているリパーゼ栄養補助剤は、動物の膵臓リパーゼから生成され、これは、pH7以下で著しく不安定であることが知られている。例えば、米国特許出願第2010/0239559号;D.Kasperら著、Harrison’s Principles of Internal Medicine 第16版(2004年)を参照されたい。このようなリパーゼが胃を通過するまでに、相当量が不活性化されている可能性が高い。更に、所与の長鎖脂肪酸の加水分解に対して全てのリパーゼが同程度まで作用するわけではなく、このことは、リパーゼ特異性が重要な検討項目であることを示唆している(R.Jensenら著、Lipids 18(3):239−252(1983年)参照)。その上、早期産児又は集中治療室内の患者などの膵機能不全を有する一部の集団においては、栄養調合物は厳密に調節されている。このような制御下にある集団に、承認済み調合物を追加の成分で補充することは望ましくないか、又は実現可能ではない場合がある。更に、多くの脂肪酸が補充された調合物は、中鎖トリグリセリドを含有し得るが、長鎖脂肪酸を食事から摂取することに明らかな医学的利点がある。したがって、長鎖トリグリセリドの加水分解を増強する改善された方法が求められている。
【0005】
長鎖多価不飽和トリグリセリド(TG−LCPUFA)の適切な加水分解は、種々の理由で特に重要である。長鎖多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)は、神経及び網膜の発達に極めて重要である。更に、その一部は「必須脂肪酸」とされ、ヒトがこれらを合成できず、食事源から取得する必要がある。n−3 LC−PUFAのドコサヘキサエン酸(DHA)及びエイコサペンタエン酸(EPA)についての主要な食事源は、それらの前駆体の、必須脂肪酸であるα−リノレン酸(ALA)である。しかしながら、内因性酵素は、ALA
のDHA及びEPA
への変換において非常に非効率的である。「International Society for the Study of Fatty Acids and Lipids」(ISSFAL)による公式発表によれば、ALAのDHAへの変換は、乳児では約1%であり、成人ではかなり低い(Brennaら著、Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids、80(2−3):85−91(2009年)を参照)。したがって、DHA及びEPAはそれ自体、必須脂肪酸ではないが、DHA及びEPAの食事源は重要である。n−6 LC−PUFAのアラキドン酸(ARA又はAA)の主要な食事源は、必須脂肪酸である
リノール酸(LA)である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、(i)例えば、長鎖多価不飽和トリグリセリド及びエステルなどの特定の長鎖トリグリセリド及びエステルを加水分解することにおいて、他のよりも著しく効率の高いリパーゼを提供すること、(ii)例えば、LC−PUFAトリグリセリド、LC−PUFA脂肪酸エステル、及び/又はその他の長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸エステルの前加水分解成分(すなわち、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸)を含む医療用栄養調合物又は乳児用調乳などの栄養調合物を提供すること
、(iii)LC−PUFAトリグリセリド、LC−PUFA脂肪酸エステル、及び/又はその他の長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸エステルを含有する調合物がリパーゼに一時的に曝される方法を含む、このような栄養調合物を生成する方法を提供すること、並びに(iv)モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸、例えば、LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFA脂肪酸エステルを含む栄養調合物を提供するよう設計された装置を提供することにより、これらの種々の問題を解決する。調合物がリパーゼに一時的に曝され、リパーゼが摂取前に調合物から除去又は分離される実施形態において、本発明は、外因性リパーゼの摂取を必要とすることなく、LC−PUFAトリグリセリド、LC−PUFA脂肪酸エステル、及び/又はその他の長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸エステルの分解を確実にする利点を提供する。
【0007】
したがって、本発明の一部の実施形態は栄養調合物を提供する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、LC−PUFAを含む。一部の実施形態において、総LC−PUFAの2%超は、モノグリセリド及び遊離脂肪酸の形である、すなわち、総LC−PUFAの98%未満は、トリグリセリド又はエステルの形である。一部の実施形態において、LC−PUFAモノグリセリド及び遊離脂肪酸は、栄養調合物中に2.5%超、3%超、4%超、5%超、6%超、7%超、8%超、10%超、12%超、15%超、20%超、25%超、30%超、40%超、50%超、又は75%超の総LC−PUFAを含む。特定の実施形態において、トリグリセリド及びエステルに対するLC−PUFAモノグリセリド及び遊離脂肪酸の比は、少なくとも0.08:1、少なくとも0.09:1、少なくとも0.1:1、少なくとも0.25:1、少なくとも0.5:1、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも8:1、少なくとも10:1、又は少なくとも20:1である。
【0008】
特定の実施形態において、栄養調合物は、未熟児への投与用に調合される。本明細書により包含される他の栄養調合物は、LC−PUFAトリグリセリド、LC−PUFA脂肪酸エステル、及び/又はその他の長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸エステルを加水分解するための低下した能力を有する、若しくは追加の必須食事性LC−PUFA及び/又は他の長鎖脂肪酸を単に必要とする乳児、幼児、子供、又は成人用に調合される。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物は、1歳未満である対象のためのものである。一部の実施形態において、この対象は、1歳〜4歳である。一部の実施形態において、この対象は、1歳〜6歳である。
【0009】
特定の実施形態において、本発明の栄養調合物は、医療用栄養調合物、すなわち、処方箋のもとに病院又は薬局を通じて分配されるものなど、医療管理下で経口的又は経腸的に消費又は投与されるよう調合される。典型的には、医療用栄養調合物は、特殊な栄養要求が存在する特定の医学的障害、疾患、又は異常状態の食事管理用に調合される。医療用栄養調合物は、「Generally Recognized As Safe(一般に安全と認められる)」ステータスを有し、ラベリング、製品要求事項、及び製造に関するFDA規定に準拠する必要がある。
【0010】
一部の実施形態において、栄養調合物は、追加のリパーゼを含有しない。他の実施形態において、栄養調合物はリパーゼを含有する。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)
のリパーゼから選択される。
【0011】
一部の実施形態において、この栄養調合物は、EPA、DHA、ARA、LA、及び/又はALAを含む。
【0012】
遊離多価不飽和脂肪酸は不安定かつ急速に分解するために、本発明は、対象による摂取の直前に、本発明の栄養調合物を調製するための利便性が高く効果的な方法も提供する。特定の実施形態において、この方法は、追加の食事性LC−PUFA及び/又はその他の長鎖脂肪酸を必要としている個人による摂取前に、LC−PUFAトリグリセリド、LC−PUFA脂肪酸エステル、並びに/若しくはその他の長鎖トリグリセリド及び/又は長鎖脂肪酸のエステルを含む液体栄養組成物をリパーゼに曝す工程を含む。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、摂取前に、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも5分間、少なくとも8分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間、又は少なくとも60分間リパーゼに曝される。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、1分間以下、2分間以下、3分間以下、5分間以下、8分間以下、10分間以下、15分間以下、30分間以下、45分間以下、60分間以下でリパーゼに曝される。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、24時間以下でリパーゼに曝される。特定の実施形態において、リパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)
のリパーゼから選択される。特定の実施形態において、このリパーゼは、摂取前に栄養調合物から除去され得る。他の実施形態において、LC−PUFAトリグリセリド、LC−PUFA脂肪酸エステル、並びに/若しくはその他の長鎖トリグリセリド及び/又はエステルを含む液体栄養組成物は、摂取前に固体支持体に固定化されたリパーゼに曝される。一部の実施形態において、このリパーゼは、共有結合、イオン結合、又は架橋結合により固体支持体に固定化される。特定の実施形態において、固定化リパーゼは、透過性膜内に封入されるか、又は透過性膜に付着される。
【0013】
本発明の別の態様は、腸管内で長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸エステルを分解するための能力が低下している人、膵機能不全に罹患している人、栄養失調に罹患している人、及び完全静脈栄養を受容した人などの食事性LC−PUFA及び/又はその他の長鎖脂肪酸を必要とする対象に、本発明の調合物を投与することにより栄養を提供する方法である。一部の実施形態において、この対象は、未熟児である。他の実施形態において、この対象は、満期産児又は幼児である。特定の実施形態において、この対象は50歳を超える、60歳を超える、又は70歳を超える。一部の実施形態において、この対象は、膵機能不全に罹患している。他の実施形態において、この調合物は、栄養補給チューブを通して投与される。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物は、あらゆる年齢の人において認知能力を改善するため、早期産児における慢性肺疾患を予防するために、早期産児の神経学的発達を増強させるため、若しくは、例えばEPA、DHA、ARA、LA、及びALAなどの長鎖脂肪酸の摂取の増加による改善に関連するその他多くの状態を治療又は予防するために投与される。このような状態としては、アルツハイマー病、双極性障害、抑鬱症、敗血症、急性呼吸ストレス、創傷治癒、癌、心血管疾患、卒中、パーキンソン病、精神分裂症、糖尿病、多発性硬化症、栄養失調症、GI機能障害、並びにリウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、及び炎症性大腸疾患などの慢性炎症性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の別の実施形態は、本発明の栄養調合物を投与することによる、患者が完全静脈栄養を必要する時間を低減するための方法を提供する。この結果、このような患者において、長期にわたる(24時間を超える)完全静脈栄養に関連する腸管萎縮及び他の合併症のリスクが低減する。このような方法は、例えば、吸収障害、短腸症候群、IBD、膵機能不全、手術、化学療法又は放射線療法の前後の栄養失調症、若しくは栄養失調のその他の原因、癌、創傷、並びに圧迫潰瘍などのGI機能障害に罹患している患者の回復時間を短縮するために使用することが可能である。このような患者は、本発明の栄養調合物を、
経鼻胃チューブを介して受容することができる。この供給方法は、患者が腸運動性の変化、全身性炎症反応症候群による膵臓酵素分泌の不全、又はLC−PUFAトリグリセリド、LC−PUFA脂肪酸エステル、及び/又はその他の長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸のエステルの切断又は吸収の不全を引き起こすその他の状態に陥る状況において有利であり得る。胃を迂回することが有利である代替実施形態において、本発明の栄養調合物は、
経鼻空腸チューブを介して投与され得る。供給装置の他のタイプもまた本発明の調合物を送達させるために使用されてもよい。
【0015】
また、健常な対象も、例えば心血管疾患のリスクを低減することによって、LC−PUFAの吸収の増大から恩恵を受けることができる。したがって、一部の実施形態において、本発明は、健常な対象において脂肪吸収を改善する方法を提供し、当該方法は、対象に本発明の栄養調合物を供給する工程を含む。
【0016】
本発明は、本発明の栄養調合物を調製するための装置を更に提供する。一部の実施形態において、この装置は、少なくとも1種のリパーゼを収容するチャンバを備え、このチャンバは、液体栄養組成物をリパーゼに曝すように、液体栄養調合物を保持することができる。一部の実施形態において、容器内のリパーゼは、容器の内面に固定化されている。他の実施形態において、リパーゼは、チャンバ内の支持体に固定化されている。一部の実施形態において、この装置は、透過性膜からなり、チャンバ内の固定化リパーゼを包含するチャンバを備えることで、液体栄養組成物は透過性膜を通過して、リパーゼに接触するが、リパーゼは透過性膜を通過することができない。一部の実施形態において、本発明の装置のチャンバ内に収容されたリパーゼは、微生物リパーゼである。いくつかの実勢形態において、このリパーゼは細菌リパーゼから選択される。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)
のリパーゼから選択される。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)
のリパーゼから選択される。一部の実施形態において、このリパーゼは、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼである。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
長鎖多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)を含む栄養調合物であって、前記LC−PUFAの5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である、栄養調合物。
(項目2)
前記LC−PUFAが、DHA、ARA、及びEPAからなる群から選択される1種以上のLC−PUFAを含む、項目1に記載の栄養調合物。
(項目3)
前記LC−PUFAが、DHAを含む、項目2に記載の栄養調合物。
(項目4)
前記LC−PUFAが、EPAを含む、項目2に記載の栄養調合物。
(項目5)
前記LC−PUFAが、ARAを含む、項目2に記載の栄養調合物。
(項目6)
前記LC−PUFAが、DHA及びEPAを含む、項目2に記載の栄養調合物。
(項目7)
前記LC−PUFAが、DHA、及びARAを含む、項目2に記載の栄養調合物。
(項目8)
前記LC−PUFAが、DHA、EPA、及びARAを含む、項目2に記載の栄養調合物。
(項目9)
前記栄養調合物が、乳児用調乳である、項目1〜8のいずれか一項に記載の栄養調合物。
(項目10)
クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼから選択されるリパーゼを更に含む、項目1〜9のいずれか一項に記載の栄養調合物。
(項目11)
LC−PUFAのミリグラム当たり0.1ミリグラム以下のリパーゼを含む、項目10に記載の栄養調合物。
(項目12)
前記栄養調合物が、追加のリパーゼを含まない、項目1〜9のいずれか一項に記載の栄養調合物。
(項目13)
クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼから選択されるリパーゼを含む栄養調合物。
(項目14)
更にDHAを含み、前記DHAの5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である、項目13に記載の栄養調合物。
(項目15)
更にARAを含み、前記ARAの5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である、項目13又は14に記載の栄養調合物。
(項目16)
更にEPAを含み、前記EPAの5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である、項目13〜15のいずれか一項に記載の栄養調合物。
(項目17)
LC−PUFAのミリグラム当たり0.1ミリグラム以下のリパーゼを含む、項目13〜16のいずれか一項に記載の栄養調合物。
(項目18)
対象による摂取の前に、栄養調合物を調製する方法であって、LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルを含む液体栄養組成物をリパーゼに曝す工程を含む方法。
(項目19)
前記リパーゼが、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼからなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記液体栄養組成物が、摂取前に少なくとも1分間リパーゼに曝される、項目18又は項目19に記載の方法。
(項目21)
前記液体栄養組成物が、摂取前に60分以下リパーゼに曝される、項目18〜20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
飲用液体を、LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステル並びにリパーゼを含む固体又は粉末組成物に添加することにより液体組成物を調製し、これによって、LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルを含む液体組成物をリパーゼに曝す工程を含む、項目18〜21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
(a)飲用液体をLC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルを含む固体又は粉末組成物に添加することにより液体組成物を調製する工程と、
(b)リパーゼを前記液体組成物に曝し、これによって、前記LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルを前記リパーゼに曝す工程と、を含む項目18〜21のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルを前記リパーゼに曝す工程の後に、前記リパーゼを前記液体組成物から除去する工程を更に含む、項目18〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記リパーゼが、
(a)前記液体組成物中の前記リパーゼを前記リパーゼに結合する分子に曝す工程であり、前記分子が固体支持体に固定化されていることによって、前記リパーゼを前記固体支持体に結合させる工程と、
(b)前記液体組成物を前記固体支持体から分離する工程と、を含むプロセスにより除去される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記液体組成物中の前記LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルが、固体支持体に固定化されているリパーゼに曝され、前記液体組成物を前記固体支持体から分離することにより、前記リパーゼが除去される、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記液体組成物中の前記LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルが、前記リパーゼに曝され、次いで、前記液体組成物にチャンバを通過させることで前記リパーゼから分離され、前記リパーゼが前記チャンバの内面の少なくとも一部に固定されている、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記液体組成物中の前記LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルが、前記リパーゼに曝され、次いで前記液体組成物にチャンバを通過させる前記工程を含むプロセスによって前記リパーゼから分離され、前記リパーゼが前記チャンバ内に収容されている固体基材に固定されている、項目24に記載の方法。
(項目29)
前記チャンバがカラムである、項目28に記載の方法。
(項目30)
LC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルを含む前記液体組成物が、前記リパーゼに曝され、次いでLC−PUFAトリグリセリド及び/又はLC−PUFAエステルを含む前記液体組成物を固体支持体に固定化されたリパーゼを含有する容器に曝す前記工程を含むプロセスによって、前記リパーゼから分離され、前記容器の前記内面の少なくとも一部が、LC−PUFAトリグリセリド及びLC−PUFAエステルに対しては透過性であるが、前記固体支持体に対し不透過性である、項目26に記載の方法。
(項目31)
前記調製された栄養調合物中の前記LC−PUFAの5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である、項目18〜30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記LC−PUFAが、DHA、ARA、及びEPAからなる群から選択される1つ以上を含む、項目18〜31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記液体栄養組成物が、摂取前に、60分以下でリパーゼに曝される、項目18〜20及び項目22〜32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記液体栄養組成物が、前記液体栄養組成物中のLC−PUFAのミリグラム当たり0.1ミリグラム以下のリパーゼに曝される、項目18〜33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記液体栄養組成物が、摂取前に、30分以下でリパーゼに曝される、項目18〜34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
項目18〜35のいずれか一項に記載の方法により調製される栄養調合物。
(項目37)
対象に栄養を提供する方法であって、前記対象に、項目1〜17及び項目36のいずれか一項に記載の前記栄養調合物を供給する工程を含む方法。
(項目38)
前記栄養調合物が、乳児用調乳である、項目37に記載の方法。
(項目39)
対象において脂肪吸収を改善する方法であって、項目1〜17及び項目36のいずれか一項に記載の前記栄養調合物を前記対象に供給する工程を含む方法。
(項目40)
前記方法が、少なくとも50%まで、前記対象の大便中の総脂肪レベルを低減する、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記方法が、前記対象の大便中の、DHA、ARA、及びEPAからなる群から選択される少なくとも1つのLC−PUFAの前記レベルを少なくとも50%まで低減する、項目39又は項目40に記載の方法。
(項目42)
前記方法が、前記対象の血漿中のDHA、ARA、又はこれら双方の前記レベルを増加させる、項目39〜41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記方法が、前記対象の網膜中のDHA、ARA、又はこれら双方の前記レベルを増加させる、項目39〜42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記方法が、前記対象の心臓中のDHA、ARA、又はこれら双方の前記レベルを増加させる、項目39〜43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記対象が、膵機能不全、膵臓の生産活動の欠陥、LC−PUFAトリグリセリド又はLC−PUFAエステルを加水分解するための能力の低下、又はLC−PUFAトリグリセリド又はLC−PUFAエステルを吸収する能力が低下している、項目39〜44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記栄養調合物が、栄養補給チューブを介して前記対象に供給される、項目39〜45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記対象が、早期産児である、項目39〜46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記対象が、少なくとも50歳である、項目39〜46のいずれか一項に記載の方法。(項目49)
前記対象が、6歳以下である、項目39〜46のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
50歳を超える対象において認知能力を改善するための方法であって、項目1〜17及び項目36のいずれか一項に記載の前記栄養調合物を前記対象に供給する工程を含む方法。
(項目51)
乳児における慢性肺疾患を予防するための方法であって、項目1〜17及び項目36のいずれか一項に記載の前記栄養調合物を前記乳児に供給する工程を含む方法。
(項目52)
少なくとも第1及び第2の区画を含む容器であって、前記第1の区画が栄養調合物を収容し、前記第2の区画がリパーゼを収容する、容器。
(項目53)
前記リパーゼが、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼからなる群から選択される、項目52に記載の容器。
(項目54)
前記栄養調合物が、粉末形態である、項目52又は項目53に記載の容器。
(項目55)
前記栄養調合物が、液体形態である、項目52又は項目53に記載の容器。
(項目56)
前記第2の区画が、前記第1の区画内に収容される前記栄養調合物中のLC−PUFAのミリグラム当たり0.1ミリグラム以下のリパーゼを収容する、項目52〜55のいずれか一項に記載の容器。
(項目57)
調乳を調製するための装置であって、
液体を収容するための本体壁と、
前記容器内に収容された少なくとも1種のリパーゼと、を含む装置。
(項目58)
前記少なくとも1種のリパーゼが、前記容器内に固定化されている、項目57に記載の装置。
(項目59)
前記少なくとも1種のリパーゼが、前記容器の内部と流体連通する構造に付着されている、項目58に記載の装置。
(項目60)
前記少なくとも1種のリパーゼが、構造内の共有結合、イオン結合、又は架橋結合の少なくとも1つにより前記構造に付着される、項目59に記載の装置。
(項目61)
前記構造が、前記容器の内面を含む、項目59又は項目60に記載の装置。
(項目62)
前記構造が、前記容器のキャップを含む、項目59又は項目60に記載の装置。
(項目63)
前記構造が、前記容器内の表面突起部を含む、項目59又は項目60に記載の装置。
(項目64)
前記構造が、前記容器内の粒子を含む、項目59又は項目60に記載の装置。
(項目65)
前記粒子が、ボール又はビーズを含む、項目64に記載の装置。
(項目66)
前記少なくとも1種のリパーゼが、脂肪酸に対しては透過性であるが前記リパーゼに対し不透過性である材料内に封入されている、項目61〜65のいずれか一項に記載の装置。
(項目67)
前記容器が、前記容器内の少なくとも1つの開口部を更に含む、項目57〜66のいずれか一項に記載の装置。
(項目68)
前記開口部が、栄養補給チューブに接続するよう構成されている、項目67に記載の装置。
(項目69)
弁を更に含む、項目67又は項目68に記載の装置。
(項目70)
瓶の閉鎖部材用のキャップを含む調乳を調製するための装置であって、前記キャップが、前記瓶の内部との流体接触のために配置された表面上又は表面内に固定化された少なくとも1種のリパーゼを含む、装置。
(項目71)
前記少なくとも1種のリパーゼが、共有結合、イオン結合、又は前記構造内の封入の少なくとも1つにより、前記表面上又は前記表面内に固定化されている、項目70に記載の装置。
(項目72)
前記表面が、前記キャップの内面を含む、項目70又は項目71に記載の装置。
(項目73)
前記表面が、容器内に延伸するよう構成された突起部を含む、項目70〜72のいずれか一項に記載の装置。
(項目74)
前記少なくとも1種のリパーゼが、脂肪酸に対しては透過性であるが、前記リパーゼに対し不透過性である材料内に封入されている、項目70〜73のいずれか一項に記載の装置。
(項目75)
栄養調合物中のトリグリセリド及び/又は脂肪酸エステルを加水分解するための装置であって、固体支持体に付着されたリパーゼを含む装置。
(項目76)
前記リパーゼが、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼからなる群から選択される、項目57〜75のいずれか一項に記載の装置。
(項目77)
容器を含み、前記リパーゼが、前記容器の内側表面の少なくとも一部に固定化されている、項目75に記載の装置。
(項目78)
容器を含み、前記リパーゼが、前記容器内に収容された固体基材に固定化されている、項目75に記載の装置。
(項目79)
前記リパーゼが、共有結合又は架橋結合により固定化されている、項目77又は項目78に記載の装置。
(項目80)
前記容器に取り付けられた栄養補給チューブを更に含む、項目75〜79のいずれか一項に記載の装置。
(項目81)
患者が完全静脈栄養を必要とする時間の長さを短縮するための方法であり、項目1〜17及び項目36のいずれか一項に記載の前記栄養調合物を経腸的に投与する工程を含む、方法。
(項目82)
前記方法が、前記対象の赤血球中のDHA、ARA、又はこれら双方のレベルを増加させる、項目39〜49のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
前記方法が、トリグリセリド、コレステロール、HDL、及びLDLからなる群から選択される1つ以上の血漿成分の前記レベルを増加させる、項目39〜51のいずれか一項に記載の方法。
(項目84)
前記方法が、前記肝臓中の脂肪の前記蓄積を有意に増加させない、項目39〜51のいずれか一項に記載の方法。
(項目85)
前記調合物が、成人用栄養調合物である、項目1〜8又は項目10〜17のいずれか一項に記載の栄養調合物。
(項目86)
前記対象が、1歳未満である、項目49に記載の方法。
(項目87)
前記対象が、1歳〜6歳である、項目49に記載の方法。
(項目88)
前記方法が、前記血漿中のビタミンA、ビタミンE、又はこれら双方の前記レベルを増加させる、項目39〜49のいずれか一項に記載の方法。
(項目89)
ビタミンA及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つのビタミンの前記血漿レベルを増加させるための方法であって、項目1〜17及び項目36のいずれか一項に記載の前記栄養調合物を前記対象に供給する工程を含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
長鎖多価不飽和脂肪酸
長鎖多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)は、二重結合を2つ以上有する炭化水素鎖である。メチル末端に対する第1の二重結合の位置に応じて、LC−PUFAは、オメガ−3(n−3)又はオメガ−6(n−6)脂肪酸として分類することが可能である。ALA及びLAは、それぞれn−3及びn−6PUFAファミリーの親脂肪酸である。これらは「必須脂肪酸」とされ、ヒトがこれらを合成することができないが、むしろ食事によって取得する必要がある。この理由は、哺乳動物が、脂肪酸中に炭素9及び10を超えて二重結合を導入することができないためである(Blosoverら著、Cell Biology:A Short Course、John Wiley & Sons,Inc.39(2011年)参照)。しかしながら、ヒトは、ALA及びLAで開始する追加の長鎖PUFAを生成することは可能である。
【0019】
ALA及びLAの双方は、一連の脱飽和及び伸長工程によって代謝されその他の長鎖PUFAを生成する。例えば、ALAはEPAに代謝され、最終的にDHAになる。LAは、n6−脂肪酸であるARAに代謝される。しかしながら、ALAのDHA及びEPAの変換及びLAのARAの変換は、それほど効率的ではない(L.Arterburnら著、Am.J.Clin.Nutr.83(追補):1467S−1476S(2006年)参照)。研究により、ヒトにおけるDHAへのALAの変換が5%未満であると推定された(B.Anderson及びD.Ma著、Lipids Health Dis.8:33(2009年)参照)。肝臓は、ALAをDHAに変換しかつLAをARAに変換するために最も活性な組織を含有し、したがって、肝臓は脳などの低い活性の組織又は器官にDHA及びARAを提供する上で重要な役割を果たす(M.Martinezら著、J.Pediatr.120:S129−S138(1992年)参照)。あるいは、これらLC−PUFAは、食事から直接的に消費され得る。DHA及びEPAは、魚、クルミ、及びアマニ油で見出され、一方ARAは、動物性脂肪源、コーン油、ダイズ油及びヒマワリ種子油から取得可能である。
【0020】
n−3脂肪酸
n−3脂肪酸DHAは、神経及び網膜の発達並びに機能に重要である。これは神経膜中の主要な長鎖PUFAであり、脳機能、脳回路の構築、及び神経インパルスの伝達に必須である。結合膜成分として、DHAは、シナプス構造、神経伝達、及びシナプス可塑性を維持するために重要である膜流動性に寄与する(G.Jichaら著、Clin.Interv.Aging5:45−61(2010年)参照)。また、DHAは、ニューロン分化及び生存に必須であるシグナリング事象に影響を与え、神経伝達物質及びエイコサノイドのレベル及び代謝に及ぼす作用を有する。脳内のDHA蓄積の大部分は、生後二年間の第三期の始めに生じる。齧歯類及び霊長類において、この期間中のn−3 PUFAの不適切な供給が、学習能力及び神経伝達の不全を引き起こすことが示されている(M.Martinezら著、J.Pediatr.120:S129−S138(1992年)参照)。事前にDHA欠乏食餌に制限されたラットにおけるDHAの補充は、記憶及び学習課題における遂行能力をレスキューする(W.Chungら著、J.Nutr.138(6):1165−1171(2008年)参照)。健常な思春期の少年の試験において、DHAの8週間の補充が、プラセボと比較して活性化課題の遂行時に背側方前頭前皮質中の機能活性化を著しく増大させた(R.McNamaraら著、Am.J.Nutr.91:1060−7(2010年)参照)。したがって、DHAは、発達のみならず、ニューロン機能の維持においても重要であると考えられる。
【0021】
また、DHAは、網膜中で高度に濃縮され、光受容体分化及び視覚色素ロドプシンの活性化に及ぼす重要な作用を有する(H.Lauritzenら著、Prog.Lipid Res.40:1−94(2001年);M.Clandininら著、J.Pediatr.125:S25−32(1994年)参照)。霊長類及び齧歯類の発達の初期段階におけるDHAの不十分な供給は、異常な網膜生理及び視力を低下させる(M.Reisbickら著、Dev.Psychol.33:387−395(1997年);J.McCannら著、Am.J.Clin.Nutr.82:281−295(2005年)参照)。同様に、ヒトにおいて、DHAを含まない調乳を生後12ヶ月間供給された乳児は、DHA補充調乳を供給された乳児よりも視力が低下することが示されている(E.Birchら著、Am.J.Clin.Nutr.91(4):848−859(2010年)参照)。DHA欠乏はまた、胎児アルコール症候群、注意欠陥多動障害、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、単極性うつ病、攻撃的敵対、及び副腎白質委縮症にも関連している(A.Horrocksら著、Pharmacological Res.40(3):211−225(1999年)参照)。
【0022】
DHA及びその他のn−3脂肪酸の摂取の増大の有益性は、例えば、アルツハイマー病(AD)、双極性障害(BP)、大うつ病性障害(MDD)及び産後うつ病を含むうつ病、敗血症、急性呼吸ストレス、創傷治癒、癌、心血管疾患、卒中、パーキンソン病、精神分裂症、糖尿病、多発性硬化症、並びにリウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、及び炎症性大腸疾患などの慢性炎症性疾患を含む様々な疾患について記述されている。
【0023】
例えば、AD患者に対する臨床試験により、DHAが治療効果を与えることが示されている。ADにおけるDHAの効果を評価する試験の検討については、G.Jicha及びW.Markesbery著、Clin.Interv.Aging 5:45−61(2010年)を参照されたい。ADのインビトロアッセイ、細胞培養系、及びネズミモデルからのデータは、脳内のアミロイド処理におけるn−3 PUFAの直接的役割を支持している。その上、アミロイドを産生するADの遺伝子導入モデルにおいて、DHAの補充は、αβのレベルを低下させる(M.Oksmanら著、Neurobiol.Dis.23(3):563−572(2006年)参照)。ADを有する患者における有効な臨床試験データに加えて、軽度の記憶愁訴を有する健常な高齢者における大規模試験により、DHAを投与された被験者が、プラセボ服用被験者と比べて、6ヶ月後に学習及び記憶試験で優れていることが示された。(Martek Press Release、2010年5月4日)。したがって、DHAは、ADを予防する上で有益な役割も果たすことができる。
【0024】
DHAの治療的用途も、BP及びMDDを有する患者において検討されてきた。BPにおけるDHAの作用の検討については、V.Balencia−Martinezら著、Expert.Rev.Neurother.11(7):1029−1047(2011年)を参照されたい。ヒト患者から得た脳組織中のDHAレベルを評価することの難しさのために、血液試料から得た赤血球膜中の脂肪酸組成が評価され、健常な対照よりもBP及びMDDを有する患者で、はるかに少ないDHAを含有することが見出された(R.McNamaraら著、J.Affect.Disord.126(1−2):303−311(2010年)参照)。剖検試験において、眼窩前頭皮質の脂肪酸組成物は、正常な対照に比べ、BP患者ではDHAのレベルがはるかに低かった(R.McNamaraら著、Psychiatry Res.160(3):285−299(2008年)参照)。その上、4ヶ月、二重盲検プラセボ対照試験において、n−3脂肪酸を服用したBP患者は、プラセボ群よりもはるかに長い寛解期を有した(Stollら著、Arch.Gen.Psychiatry 56(5):407−412(1999年)参照)。これら試験は、DHAが特にその精神安定作用により、BD及びMDDにおいて治療的に有益であることを示唆している。
【0025】
DHAは、その他の型のうつ病に罹患している患者にも有益であることが示されている。この検討については、A.Loganら著、Lipids Health Dis.3:25−32(2004年)を参照されたい。多くの研究が、うつ病患者の血中のn−3レベルが低下していることを見出している。同様に、血漿DHAの増大は、産後うつ病の症状を報告している女性の人数の減少に関連していた。いくつかのプラセボ対照試験により、n−3処置が、抑うつ系を改善することが発見されている。n−3レベルとうつ病の間の関係の検討については、A.Loganら著、Lipids Health Dis.3:25−32(2004年)を参照されたい。
【0026】
敗血症においては、EPA、γ−リノレン酸、及び酸化防止剤が富化された経腸食が、重症の敗血症の患者又は機械的換気を必要とする敗血症ショックを有する患者において、院内転帰を改善し、死亡を低減した(A.Pontes−Arrudaら著、Crit.Care Med.34(9):2325−2333(2006年)参照)。ventilator−free days(人工呼吸器を装着しなかった日数)、ICU−free days(ICUに入らなかった日数)における同様な有益性は、新たな臓器障害を低減し、長鎖PUFA及び酸化防止剤が富化された食事を供給された急性呼吸ストレスを有する患者において、死亡率の低下が報告されている(J。Gadekら著、Crit.Care Med.27(8):1409−1420(1999年)参照)。
【0027】
n−3脂肪酸は、創傷治癒にも有益な作用を有することが報告されている。脂質微細環境を変更することを通して、n−3脂肪酸は、上皮細胞の再構成を増強し、炎症を低減することにも役立つことができる(D.Ruthig及びK.Meckling−Gill著、J.Nutr.129:1791−1798(1999年);J.McDanielら著、Wound Repair Regen.19(2):189−200(2011年)参照)。
【0028】
EPA及びDHAは、前立腺癌及び乳癌などの癌において保護作用を示す。この有益な作用は、抗炎症特性、並びにNF−κBのダウンレギュレーションなどにより増殖を低減し、アポトーシスを促進するメカニズムによるためのものであり得る。癌におけるn−3脂肪酸に関する考察については、B.Anderson及びD.Ma著、Lipids Health Dis.8:33(2009年)を参照されたい。
【0029】
n−3脂肪酸は、心血管疾患を有する患者における並びに健康な人の心血管疾患のリスクを低減する上での有益な作用にも関連している。同様な有効な作用は卒中においても報告されている。したがって、アメリカ心臓学会、並びにその他の健康関連機関は、食事中のn−3脂肪酸の摂取増加に関する推奨を発表した(P.Kris−Ethertonら著、Circulation 106:2747−2757(2002年)参照)。心血管健康状態に及ぼすn−3脂肪酸の観察された作用についての可能なメカニズムとしては、トリグリセリド濃度低下作用、血圧降下作用、血小板凝集の低下、及び心筋それ自体に及ぼす安定化作用が挙げられる。
【0030】
いくつかの病態におけるn−3脂肪酸の有益性は、広範な抗炎症作用に起因する可能性がある。EPA及びDHAは、炎症消散及び免疫調節機能を備えた抗炎症性調節因子であるレゾルビン類を生成する。例えば、EPA及びDHAは、白血球走化性に及ぼす阻害作用を呈し、免疫細胞中のNF−κBの活性化を低下させることを通して、炎症性サイトカインの産生を変更する(P.Calder著、Int.Rev.Immunol.28:506−534(2009年)参照)。一般に、n−3 PUFAは、炎症誘発性T細胞応答の低下に関連している。動物飼料中のn−3脂肪酸が増加された場合、脂質ラフト中のT細胞膜マイクロドメイン組成が変わり、NF−κB活性化、IL−2産生、及び細胞増殖を低下させる。具体的には、n−3 PUFAは、タンパク質キナーゼCなどのT細胞活性化の最初の信号伝達調節因子の分布及び分配に影響を与える(Y.Fanら著、J.Immunol.173:6151−6160(2004年)参照)。また、n−3脂肪酸は、樹状細胞のMHCクラスII発現を低下させて、T細胞に対する抗原提示を効果的に低減することが示されている一方、n−6脂肪酸は、抗原提示活性の増大に関連している(Sandersonら著、J.Leukoc.Biol.62:771−777(1997年)参照)。単核細胞系及び腹腔内マクロファージにおいて、DHA及びEPAは、Gタンパク質結合受容体120(GPR120)を媒介する抗炎症特性を有する。この結果として、これら脂肪酸は、マクロファージ誘導組織炎症を抑制することを介して、インビボで抗糖尿病作用を示す(D.Ohら著、Cell 142(5):687−698(2010年)参照)。n−3 PUFAの種々の免疫調節機能は、これらが多くのヒト疾患において影響力を有し得ることを示唆している。
【0031】
n−6脂肪酸
n−3脂肪酸と同様に、ARAなどのn−6脂肪酸は、出生前及び出生後の発達の間に脳内のARA蓄積を伴い、神経発達及び脳機能において極めて重要な役割を果たす(B.Koletzoら著、J.Perinat.Med.36(1):5−14(2008年)参照)。n−6脂肪酸は、一般的に、正常な発達及び免疫性に重要であり、皮膚及び頭髪の成長も刺激し、骨の健康状態を維持し、代謝を調節し、生殖系を維持する。
【0032】
長鎖PUFA栄養補助剤
10年にわたり、健康関連機関は、n−3脂肪酸の健康上の有益性のために、食事でのn−3脂肪酸の消費を推奨してきた。DHA及びEPAは、栄養補助剤又は医療用薬品中のトリグリセリド又はエステル化された形態として市販されている(例えば、LOVAZA(登録商標)、OMACOR(登録商標)、及びVascepa(商標))。DHA栄養補助剤は、魚油から、若しくはアマニ油又は藻類などの菜食源から誘導され得る。栄養補助剤は、粉剤、液体飲料、又は経管栄養調合物であり得る。
【0033】
乳児用調乳は、連邦食品医薬品化粧品法の対象とされ、「母乳を模倣するものであること、又は母乳の完全若しくは部分的代替物として好適であることを理由として、乳児向け食品として単独で特殊な食事に使用されることを謳っている又はそれが説明されている食品」として定義されている。FDAは、乳児を12ヶ月以下の個人として定義している(21CFR 105.3(e))。母乳中の主要なn−3脂肪酸はDHAであり、平均で7〜8mg/dLを含む(総脂肪酸の0.17%〜1.0%に及ぶ)(R.Yuhasら著、Lipids 41(9):851−858(2006年)参照)。母乳中のDHAの量は、母体におけるDHA摂取をほぼ反映している。
【0034】
市販のTG−LCPUFA補充乳児用調乳としては、Enfamil LIPIL(登録商標)及びEnfamil PREMIUM(登録商標)などのEnfamil調乳、Baboo、Earth’s Best Organic、Nestle Gerber GOOD START(登録商標))及びNestle NAN(登録商標)などのNestle調乳、NEOCATE(登録商標)及びAPTAMIL(登録商標)などのNutricia調乳、Parent’s Choice Organic、Pfizer’sSMA GOLD(登録商標)、Similac ADVANCE(登録商標)、Similac EARLY SHIELD(登録商標)、及びISOMIL(登録商標)などのSimilac調乳、並びにUltra Bright Beginningsが挙げられる。その他の乳児用調乳もまた、TG−LCPUFAで補充されることが可能である。TG−LCPUFA補充調乳は、牛乳又はダイズを主成分としてよく、有機質であり得る。合衆国では、TG−LCPUFA補充乳児用調乳は製品販売の約90%を占める(Mead Johnson Nutrition)。
【0035】
TG−LCPUFAはまた、フォローオン調乳並びに長鎖脂肪酸を含む栄養補給又は食事栄養補充を必要としている幼児、高齢者、及びその他の人のための飲料に添加されてもよい。このような製品としては、ENSURE(登録商標)、PEDIASURE(登録商標)、CARNATION(登録商標)、BOOST(登録商標)、CERELAC(登録商標)、及びSOUVENAID(登録商標)が挙げられる。これに加えて、TG−LCPUFA又はLC−PUFAのエステルで補充されている特定化調合物が、経管栄養を必要とする患者において、本発明の方法及び装置と組み合わせて使用することが可能である。例えば、経小腸調合物は、早期産児、腎不全、胃腸疾患又はGI機能障害を生じる状態、腸管切除、脂肪吸収障害、栄養失調症、膵炎、高血糖症/糖尿病、肝不全、急性及び慢性肺疾患、又は免疫不全状態を有する患者で一般的に使用することが可能である。市販の経小腸調合物の検討については、A.Malone著、Pract.Gastr.29(6):44−74(2005年)を参照されたい。栄養調合物は、患者の疾患又は状態に基づいて標準的、基本的であってもよく、又は特殊化されてもよい。一般的に使用される標準的配合物としては、例えば、ISOCAL(登録商標)、NUTREN 1.0(登録商標)、NUTREN 1.5(登録商標)、NUTREN 2.0(登録商標)、OSMOLITE 1.0(登録商標)、OSMOLITE 1.2(登録商標)、FIBERSOURCE 1.2(登録商標)、JEVITY 1.2(登録商標)、JEVITY 1.5(登録商標)、PROBALANCE(登録商標)、ISOSOURCE 1.5(登録商標)、DELIVER 2.0(登録商標)、NOVOSOURCE 2.0(登録商標)、及びTWOCAL HN(登録商標)が挙げられる。基本的配合物は、ポリマー配合物及び加水分解配合物を含む巨大栄養物を含有してもよく、繊維強化されてもよい。疾患特異的配合物としては、例えば、MAGNACAL RENAL(登録商標)、NEPRO(登録商標)、NOVASOURCE RENAL(登録商標)、SUPLENA(登録商標)及びNUTRI−RENAL(登録商標)などの腎臓用調合物が挙げられる。
【0036】
胃腸(GI)用調合物は、重度のタンパク質又は脂肪吸収障害、広範囲にわたる腸管切除、嚢胞性線維症、脳性小児麻痺、短小腸症候群、IBD、膵炎、クローン病、下痢症、胃腸瘻孔、セリアック病、吸収障害症候群、外傷/手術、放射線腸炎、腸不全、乳糜胸症を有する患者を含むGI機能障害を有する患者の栄養管理に使用することができる。また、これらの調合物は、術後初期の栄養補給、栄養供給、完全静脈栄養(TPN)代替物、及びTPNとの二重栄養補給にも使用される。GI用調合物としては、例えば、PEPTAMEN(登録商標)(これは、脂肪吸収障害の可能性を低減するために70%の中鎖トリグリセリド及び30%の長鎖トリグリセリドからなる)、VIVONEX PLUS(登録商標))、及びVIVONEX PEDIATRIC(登録商標)が挙げられる。
【0037】
しかしながら、例えば、膵臓の生産活動に欠陥がある人、又は膵機能不全に罹患している人など、長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸のエステルを加水分解する能力の障害に罹患している人では、このような調合物をDHA、EPA、及びその他のn−3脂肪酸で補充しても、これら化合物に関連する有益性を実現するために十分でない場合もある。長鎖トリグリセリド又は脂肪酸エステルは、腸管内で適切に吸収されるために、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸に代謝されねばならない。本発明は、既存の市販されている長鎖PUFA栄養補助剤又は長鎖PUFAで補充された新しく設計した調合物を利用して、有意に高濃度の長鎖モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有するすぐに使用可能な調合物を与える方法を提供する。一部の実施形態において、この方法は、DHA、EPA、及びARAトリグリセリド若しくはエステル化DHA、EPA、及びARAから生成された長鎖モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の提供において特に効果的であるので、この調合物は、別の方法でこれら重要な脂肪酸を加水分解し吸収することができない人に、これら重要な脂肪酸に関連する最大利益を提供するであろう。
【0038】
長鎖トリグリセリド及び脂肪酸エステルを加水分解するための能力の低下
膵機能不全は、長鎖トリグリセリドを加水分解するための能力の低下につながる状態の1つである。膵機能不全は、膵臓リパーゼを含む膵外分泌酵素の不十分な産生によって特徴付けられる。膵機能不全は、ヒトの一生の種々の段階で自然に発生する可能性がある。例えば、膵臓リパーゼの分泌は、妊娠30週頃から低レベルで開始し、生後1年の間低レベルのままである。したがって、乳児、特に早期産児は、膵機能不全を経験する可能性がある。結果的に、彼らが母乳栄養でない場合、これら乳児は不良な脂肪酸加水分解及び吸収に罹りやすく、DHA、EPA、及びその他のLC−PUFAの摂取に関連する利益を受けられない。
【0039】
この対極として、他の点では健常な高齢者もまた、自然の老化作用の一部として生じる膵臓における変化のために、膵機能不全又はLC−PUFAトリグリセリド又はエステル化LC−PUFAを加水分解するための能力の他の低下を経験する。これらの変化としては、膵臓の萎縮、線維化、硬化、又は脂肪腫を挙げることができる。この結果的として、高齢者は、膵外分泌酵素の低下のために、栄養失調症、脂肪便、下痢症、腹部痛及び体重減少を含む消化不良の症状を経験する可能性がある(K.Herzigら著、BMC Geriatrics 11:4−8(2011年)参照)。
【0040】
また、膵機能不全又はLC−PUFAトリグリセリド又はエステル化LC−PUFAを加水分解する能力のその他の低下は、疾患又は外傷から生じる場合もある。例えば、膵炎は膵臓における炎症の状態であり、これが膵機能不全を引き起こす。膵炎は、急性又は慢性のいずれかであり得、アルコール依存症により発症する膵炎、突発性慢性膵炎、遺伝性膵炎、外傷性膵炎、急性壊死性膵炎、及び自己免疫性膵炎を含む。嚢胞性線維症は、特に小児及び青年に発症する膵機能不全の原因でもある。ガストリノーマ(ゾリンジャー−エリソン症候群)などの十二指腸内のpHを低下させる障害は、リパーゼを不活性化し、膵機能不全を引き起こす可能性がある。膵機能不全は、胃又は膵臓の一部が除去される胃腸管の手術、膵臓癌、胃潰瘍、セリアック病、又はクローン病などの胃腸障害、若しくは全身性エリテマトーデス(SLE)又は炎症性腸疾患(IBD)などの自己免疫障害によって引き起こされる可能性もある。
【0041】
TG−LCPUFA、エステル化LC−PUFA、及び/又はその他の長鎖トリグリセリド及び脂肪酸エステルを消化するための能力の低下のその他の原因としては、例えば、過敏性腸症候群、高トリグリセリド血症、タンパク質−カロリー栄養失調症を含む栄養失調症、膵臓及び十二指腸新生物、腹部放射線治療、ヘモクロマトーシス、原発性硬化性胆管炎、原発性胆汁性肝硬変、シュワヒマン症候群、トリプシノーゲン欠損症、エンテロキナーゼ欠損症、又はリパーゼ単独欠損症が挙げられる(D.Kasperら著、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第16版(2004年)参照))。また、長鎖トリグリセリド又はエステル化長鎖PUFAを消化するための能力の低下は、腸管切除、嚢胞性線維症、脳性小児麻痺、短腸症候群、IBD、膵炎、クローン病、下痢症、胃腸瘻孔、セリアック病、吸収障害症候群、外傷/手術(特にGI外傷又は手術)、放射線腸炎、腸不全、乳糜胸症、癌(特に、膵臓癌又はGI癌)、及び/又は創傷治癒から生じる場合もある。正確な原因は知られていないが、注意欠陥多動性障害(ADHD)を有する小児においても、LC−PUFAのレベルが低下している(Burgressら著、Am.J.Clin.Nutri.71(追補):327S−30S(2000年)参照)。
【0042】
例えば嚢胞性線維症(CF)患者は、LC−PUFAのレベルの低下を有することが示されている(Perettiら著、Nutrition & Metabolism 2:11−28(2005年)参照)。膵臓酵素置換療法を受けているCF患者は、多くの場合、継続的に脂肪吸収障害に罹患する(Kalivianakis著、American Journal of Clinical Nutrition 69:127−134(1999年)参照)。一部の実施形態において、本発明は、CF患者においてLC−PUFAなどの脂肪の吸収を改善するための調合物及び方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、CF患者において体重増加を誘発するための調合物を提供する。
【0043】
進行期における組織の異化状態、栄養の流路変更、及び吸収障害による悪液質及び体重減少は、多くの癌の進行期に共通するが、膵臓癌(PC)は、体重減少及び吸収障害が例外的であり、診断の時点で患者の80%〜90%で存在する。体重減少の大きな要因である外分泌欠陥から生じる吸収障害は、膵臓柔組織の損失、酵素が腸管まで到達することを抑制する膵管の遮断、及び外科手術手技に起因する。これらメカニズムの全ての共通の最終結果は、脂肪便症及び体重減少である(Damerlaら著、J of Support Oncology 6:393−396(2008年)参照)。PCにおける体重の安定化は、生存及び生活の質の改善に関連する(Davidsonら著、Clinical Nutrition 23、239−247(2004年)参照)。一部の実施形態において、本発明は、PC患者において、例えば、LC−PUFAなどの脂肪の吸収を改善するための調合物及び方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、PC患者において、体重増加を誘発するための調合物及び方法を提供する。
【0044】
本発明の一部の実施形態は、TG−LCPUFA、エステル化LC−PUFA、及び/又はその他の長鎖トリグリセリド及び脂肪酸エステルを加水分解する能力を低下させる膵機能不全及びその他の状態に対する現行の治療選択肢を改善する。TG−LCPUFA、エステル化LC−PUFA、及び/又はその他の長鎖トリグリセリド及び脂肪酸エステルを加水分解するための低下した能力を有する患者において、加水分解を改善することなく単にこれら栄養の消費を増加させることは、脂肪便、腹部痛、筋痙攣、下痢症、及びその他の胃腸合併症を引き起こす可能性がある。膵臓酵素置換療法もまた、合併症につながる可能性がある。大量の膵臓消化酵素は、大腸に損傷を与え、線維化結腸疾患を引き起こす可能性があることが観察されている(D.Bansiら著、Gut 46:283−285(2000年);D.Borowitzら著、J.Pediatr.127:681−684(1995年)参照)。リパーゼ栄養補助剤により引き起こされる別の重大な危険性はアレルギー反応であり、これは多くの市販のリパーゼ栄養補助剤が動物源に由来するためである。したがって、前加水分解された長鎖トリグリセリド又は長鎖PUFAエステルを提供する本発明の実施形態は、リパーゼが追加の有無を問わず、膵機能不全又は長鎖トリグリセリド又はエステル化長鎖PUFAを消化するためのその他の能力の低下を治療するためのより良好かつ安全な方法を提供するであろう。
【0045】
n−3及びn−6脂肪酸の双方は、発達時に重要であるが、n−3脂肪酸は、人生後期でn−6脂肪酸よりも一層重要であると考えられている。一部の対象、特に一部の成人において、(DHA及びEPA):ARAの比を増加させることが望ましい場合がある。特に、嚢胞性線維症患者は、彼らの血漿中の(DHA及びEPA):ARAの比を増加させることから利益を受ける可能性がある。しかしながら、現在使用可能な成人用調合物は、一般的にn−3:n−6脂肪酸の低い比を有する。更に、TG−LCPUFAの加水分解に障害がある対象において、n−3 TG−LCPUFAの消費を単純に増加させることは、対象の(DHA及びEPA):ARAの比を大幅に改善する可能性は低く、結果として生じる未消化のTG−LCPUFAの増加は、胃腸障害を引き起こす場合がある。
【0046】
したがって、本発明の一部の実施形態は、対象、特に成人対象において、(DHA及びEPA):ARAの比を増加させるための調合物及び方法を提供する。例えば、一部の実施形態は、n−3トリグリセリド及び/又はエステルを含む調合物が、そこでn−3トリグリセリド及び/又はエステルを加水分解するリパーゼに曝される成人用調合物を調製する方法を提供する。一部の実施形態において、調製された調合物は、リパーゼ処理がない対応する調合物よりもn−3:n−6モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の高い比、例えば、遊離ARAに対する遊離DHA及びEPAの高い比を含む。一部の実施形態において、この調合物は、n−6モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸よりも多くのn−3モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含む(例えば、遊離ARAよりも多くの遊離DHA及びEPAを含む)。一部の実施形態において、この調合物は、これを、n−6トリグリセリド及び/又はエステルよりもn−3トリグリセリド及び/又はエステルに対してより高い活性を有するリパーゼに曝すことにより調製される。一部の実施形態において、酵素はRO酵素である。本発明はまた、n−3:n−6遊離脂肪酸及び/又はモノグリセリドの比が対象の血漿中に見出されるn−3:n−6脂肪酸の比よりも高い調合物、例えば、遊離ARAに対する遊離DHA及びEPAの比が対象の血漿中のものよりも高い調合物を提供する。本発明はまた、このような調合物が成人対象に投与される方法も提供する。一部の実施形態において、この対象は嚢胞性線維症を有する。
【0047】
早期産児における長鎖脂肪酸を加水分解するための能力の低下
長鎖PUFAは、正常な神経系及び網膜発達のために乳児で重要であり、脳及び網膜の細胞膜中に高度に蓄積され、これは妊娠30週から開始する(C.Martinら著、J.Pediatr.159(5):743−749(2011年);A.Lapilloneら著、Leukotrines Ess.Fatty Acids 81:143−150(2009年);J.McCannら著、Am.J.Clin.Nutr.82:281−295(2005年)、M.Martinezら著、J.Pediatr.120:S129−S138(1992年)参照)。DHA、EPA、及びARAを含む通常の脂肪酸、並びにこれら脂肪酸をモノグリセリド及び遊離脂肪酸に分解するために必要なリパーゼは、胎盤を通して胎児に提供され、その後乳児に母乳を通して提供される。早期産児は、誕生後の彼らの脂肪酸の外部供給源への依存後に、短縮された妊娠期間のために脂肪酸の不十分な供給の有意に高いリスクにある(C.martinら著、J.Pediatr.159(5):743−749(2011年)参照)。更に、早期産児は、十分なレベルの膵臓リパーゼを産生しないために、彼らは結果的にその調乳で提供されるいかなる長鎖脂肪酸も加水分解することが困難である。
【0048】
早期産児は、満期産児と比較して、脳及び網膜の双方でより少ないDHA及びより低いDHA/ARA比を有することが示されている(M.Martinezら著、J.Pediatr.120:S129−S138(1992年)参照)。これに加えて、早期産児の脂肪酸プロファイルの後ろ向き研究において、不適切なレベルの長鎖PUFAは、おそらく、免疫応答調節異常に起因する、慢性肺疾患及び敗血症の増加に関連した(C.Martinら著、J.Pediatr.159(5):743−749(2011年)参照)。これら研究などは、DHA及びその他の長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸エステルで補充された調乳を使用しても、早期産児において適切なレベルの長鎖PUFAを確立することは、重要かつ潜在的な未達成の問題であることを示唆している。本発明の調合物、方法、及び装置は、早期産児が十分な量の長鎖脂肪酸を受け取り、関連する医学的有益性を認識することを可能にするであろう。
【0049】
人工栄養乳児における長鎖脂肪酸を加水分解するための能力の低下
また、脂肪酸が補充されない人工栄養児も、長鎖PUFAが欠乏する可能性がある。長鎖PUFAのレベルは、母乳栄養児に比べて、非補充人工栄養児で低下することが認められている(B.Koletzoら著、J.Perinat.Med.36(1):5−14(2008年)参照)。母乳栄養児であっても、母乳中のDHAの量が変動し、母体の食事摂取に関連するために、n−3脂肪酸が欠乏する可能性がある。母乳中のDHAの量と母乳栄養乳児における視覚及び言語発達との間の正相関が説明されている(S.Innis著、J.Pediatr.143:S1−S8(2003年)参照)。したがって、DHAを含有する食事が授乳中の女性に推奨される。人工栄養児については、全ての主要な調乳製造業者が、DHA及びARAを含有する脂肪を含む特別な乳児用調乳を導入している。しかしながら、これらDHA及びARA富化調乳の有益性に関する報告は、まちまちである。一部の研究では、乳児が長鎖PUFA含有調乳を受容する場合、認知発達において顕著な効果を示したが、他の研究では示されていない(B.Koletzoら著、J.Perinat.Med.36(1):5−14(2008年);E.Sarkadi−Nagyら著、J.Lipid Res.45:71−80(2004年)参照)。最近、生後1年間、DHA及びARAを含有するEnfamil LIPIL(登録商標)を供給された乳児が、脂質を含まない同一の調乳を供給された乳児に比べて、呼吸器の健康状態の改善を含む免疫の転帰の改善を経験したことが示されている(E.Birchら著、J.Pediatr.156(6):902−906(2010年)参照)。しかしながら、全体として、前臨床データ間は、現行の長鎖PUFA補充調乳の乳児発達についての一貫した有益性を示してはいない。
【0050】
これら研究の矛盾した結果についての1つの説明は、一部の乳児が、長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸エステルで補充された調乳を摂取する場合、腸管から必要量の重要な脂肪酸を吸収することができないことである。この脂肪酸を吸収することが不可能な点は、乳児の低レベルの内因性膵臓リパーゼに起因するものである可能性がある。リパーゼは一般的には母乳を通して乳児に運ばれるために、人工栄養児は、腸管による吸収のために、長鎖PUFA又はPUFAエステルをモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸まで分解するためのリパーゼの十分なレベルを有することができない。この結果、LC−PUFA補充調乳を供給された乳児は、母乳栄養児と比べてLC−PUFAのより少ない吸収量をなお有する。改めて、単に脂肪酸栄養補助剤を提供するだけではなく、これら脂肪酸の加水分解及び吸収を可能にする明確な必要性が存在する。
【0051】
法律で定められた乳児用調乳(又は、例えば、医療用栄養調合物)にリパーゼを添加することは、好適なリパーゼ栄養補助剤をスクリーニングし、安定化及び製剤化するために相当な開発研究を必要とする可能性がある。十分な試験が行われていない未調節の調乳においては、リパーゼの安定性、特異性の欠如、純度、及び/又は他の物質との干渉に関わる問題が、酵素を過剰なレベル又は潜在的に有害なレベルにする場合がある。規制のハードルを越える新しい物質の大量の添加は、長鎖トリグリセリドを加水分解するための低い能力を有する個人、特に乳児がどれほど十分に調合物に忍容性があるかの別の変数を更に持ち込む。この問題は、例えば、米国特許第5,902,617号(Pabst)及び米国特許第4,944,944号(Tang)に記載されている調合物に存在する。
【0052】
本発明の実施形態は、乳児の腸管を通して容易に吸収され得る必須モノグリセリド及び遊離脂肪酸の増量を提供する栄養調合物をas−fed(現物として)提供することによって、これらの種々の問題を解決する。この結果的として、調乳供給対象は、DHA、EPA、及びARAの有益性を供与され得る。一部の実施形態において、この栄養調合物は、既存の調乳中に存在する前加水分解された脂肪以外に新しい成分を導入することはない。特定の実施形態において、人工栄養児は、リパーゼ栄養補助剤に曝されることなく、母乳栄養児が取得する脂肪酸の有益性を供与される。他の実施形態において、本発明の栄養調合物は、長鎖モノグリセリド及び遊離脂肪酸、特にDHA、EPA、及びARAの増量を提供するために、乳児用調乳に添加されたリパーゼの最小量の使用を可能にする高度に特異的なリパーゼを含有する。
【0053】
一部の実施形態において、この栄養調合物は、脂肪酸吸収を改善する。一部の実施形態において、対象はこの栄養調合物を、3日間、5日間、7日間、10日間、14日間、30日間、60日間、又はそれ以上にわたって摂取する。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物のこのような摂取は、大便中の総脂肪を低減し、具体的には、大便中のDHA、ARA、及び/又はEPAのレベルを低減することが可能である。一部の実施形態において、この低減は、この栄養調合物の摂取を開始する前の対象の大便組成に対して測定される。一部の実施形態において、この低減は、摂取前に、現在使用可能な栄養調合物などのリパーゼに曝されていない栄養調合物を供給された対象の大便組成に対して測定される。大便中の総脂肪、DHA、ARA、及び/又はEPAのレベルは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれ以上まで低減され得る。特定の実施形態において、大便中の総脂肪、DHA、ARA、及び/又はEPAのレベルは、50%と80%の間まで低減される。一部の実施形態において、大便中の総脂肪のレベルは、少なくとも50%まで低減される。一部の実施形態において、大便中の少なくとも1つのLC−PUFA(DHA、ARA、又はEPAなど)のレベルは、少なくとも50%まで低減される。一部の実施形態において、大便中の少なくとも1つのLC−PUFA(DHA、ARA、又はEPAなど)のレベルは、少なくとも60%まで低減される。一部の実施形態において、大便中のDHA、ARA、又はEPAのレベルは、それぞれ少なくとも50%まで低減される。一部の実施形態において、大便中のDHA、ARA、又はEPAのレベルは、それぞれ少なくとも60%まで低減される。一部の実施形態において、この栄養調合物の摂取は、DHA及びARAのレベルを含む脂肪レベルの血漿、赤血球、及び組織集積を改善する。組織は、網膜、心臓、脂肪、及び腎臓組織を含むことができる。一部の実施形態において、この栄養調合物の摂取は、血漿、赤血球、又はこれら双方におけるDHA、ARA、又はこれら両者のレベルを増大させる。一部の実施形態において、この栄養調合物の摂取は、網膜中のDHA、ARA、又はこれら両者のレベルを増大させる。一部の実施形態において、この栄養調合物の摂取は、心臓中のDHA、ARA、又はこれら両者のレベルを増大させる。一部の実施形態において、この栄養調合物の摂取は、トリグリセリド、コレステロール、HDL、及び/又はLDLの血漿レベルを増大させる。一部の実施形態において、この栄養調合物の摂取は、対象の血漿中のLDLに対するHDLの比を増大させる。
【0054】
一部の実施形態において、この栄養調合物の摂取は、ビタミンA及び/又はビタミンEの血漿レベルを増加させる。理論によって束縛されるつもりはないが、この増加は、ビタミンA及びEが、典型的には、加水分解されるべきであるエステルとして提供されることに起因すると考えられる。本発明の種々の方法及び組成物におけるリパーゼへの曝露は、これらビタミンエステルの加水分解を向上させ、これが血漿中のビタミンA及びEをより一層蓄積させる。
【0055】
一部の実施形態において、この栄養調合物の摂取は、肝臓中の脂肪の蓄積を著しく増加させることなく、有益な作用を有する。脂肪肝疾患(FLD)は、肝細胞中の脂肪、特にトリグリセリドの蓄積の増加によって特徴付けられる。この状態は、脂肪代謝に影響を与えるその他の疾患にも関連する。肝臓は、それ自体でいくつかの脂肪を含有することは正常であり、このことが症状を誘発することはない。一部の患者において、脂肪肝は、肝臓の炎症及び肝細胞死(脂肪性肝炎)を伴う場合がある。肝臓癌(肝細胞癌)との関連も存在する。インスリン抵抗性、並びに炭水化物及び飽和脂肪酸の消費の増加、及び繊維及びオメガ−3脂肪酸の低摂取は、全てがFLDの病因に明らかに関連する。
【0056】
FLDの原因としては、食事、薬物治療、疾患、及び医学的症状が挙げられる。過剰なカロリーの消費は、FLDを誘発し、過剰なカロリー摂取は、脂肪を通常の様式で代謝する肝臓の能力を圧倒し、これが肝臓中の脂肪蓄積を引き起こす。タモキシフェン、アミオダロン注射、アミオダロン経口投与、及びメトトレキサートなどを含む多くの薬物治療は、FLDに関連する。脂肪肝はまた、II型糖尿病、肥満症、及び血中の高トリグリセリドレベル、セリアック病、及びウィルソン病(銅代謝の異常)、急激な体重減少、並びに栄養失調とも関連している。
【0057】
リパーゼ
膵機能不全及び長鎖トリグリセリド又は長鎖脂肪酸エステルを加水分解するための能力の低下に関連するその他の状態は、現在、膵臓リパーゼを含む補助的な消化酵素で治療されている。しかしながら、膵臓酵素、特にこれら栄養補助剤中に存在する膵臓リパーゼは、多くの場合、胃酸及びペプシンによる分解作用に対して感受性であるので、摂取された酵素のごくわずかな部分だけが活性な形態で十二指腸に到達する(E.Villeら著、Digestion 65:73−81(2001年)参照)。しかしながら、酸保護コーティングの多くは、送達される重量のかなりの部分がプラスチックコーティングであるために、乳児集団又は免疫不全患者に対して潜在的に安全上の問題を有する。更に、酸保護コーティングが役立っても、ある程度の吸収不良が持続し、膵機能不全を有する患者に酵素栄養補助剤の投与量増加を必要とさせる。経腸コーティング酵素の脂肪酸吸収不良のこの存在は、膵機能不全を有する患者の十二指腸及び上部空腸が多くの場合酸性環境であることで、pHの期待される上昇が達成されず、酵素を放出するために保護コーティングが適切に溶解されないという事実に起因する可能性がある(D.Graham著、New England J.Med.296(23):1314−1317(1977年)参照)。これら問題の双方は、投与されるリパーゼの用量を増加させることにより解決されてきた。しかしながら、前述した通り、膵臓酵素栄養補助剤の高投与量は、線維化結腸疾患に関連することが見出されている。したがって、本発明の一部の実施形態は、追加のリパーゼなしで、長鎖モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸のより高い含有率を含む栄養調合物を提供する。一部の実施形態は、本明細書に記載されているリパーゼの最適用量を含む栄養調合物を提供する。
【0058】
リパーゼは、動物、植物、並びに多くの天然又は遺伝子操作微生物から得ることが可能である。大部分ではないにしても多くの市販の食餌性リパーゼ栄養補助剤は、動物に由来し、消化酵素による分解作用を特に受けやすい。使用頻度の低い代替物は、微生物リパーゼ、すなわち、細菌又は例えば酵母などの真菌類で産生されるリパーゼである。微生物リパーゼは、動物又は植物リパーゼよりも広いpH範囲にわたって活性を保持し、したがって腸溶錠の必要性を排除する。しかしながら、微生物酵素は、小腸内でトリプシンによって分解されやすく、これによって腸管内でトリグリセリド及びエステルを分解するためのこれらの利用可能性を低下させる。特定の実施形態において、本発明の調合物、方法、又は装置で使用されるリパーゼは、細菌リパーゼ、真菌類リパーゼ、又はこれらの双方である。
【0059】
個々のリパーゼの特異性及び動態は、大きく変化する可能性がある。リパーゼの特異性は、酵素の分子特性、基質の構造及び基質への酵素の結合に影響を与える因子によって制御される。特異性の種類としては、基質特異性(すなわち、所与のリパーゼが、別のリパーゼよりも1つの種の脂肪酸を分解する上で活性であり得ること)、及び位置特異性(これは、トリグリセリドのグリセロール骨格の1位及び/又は3位中のエステル結合の優先的加水分解を伴う)が挙げられる。
【0060】
現在、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)により産生されるリパーゼが、カンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、ペニシリウム・カメムベルチ(Penicilium camemberti)、アスペルギルス・ニガー(Aspergilus niger)、及びアスペルギルス・オリゼー(Aspergilis oryzae)により産生されるリパーゼなどの他のリパーゼよりも、DHA、EPA、及びARAに対して大きな特異性を有することが明らかにされている。この結果、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)、及び/又はリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)を含むリパーゼ栄養補助剤、又はリパーゼ補充栄養製品は、TG−DHA、TG−EPA、及び/又はTG−ARAの加水分解の増大を提供するであろう。したがって、本発明の一態様は、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)リパーゼ、及び/又はリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼを含むリパーゼ栄養補助剤、又はリパーゼ補充栄養製品を提供する。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、又はリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼである。特定の実施形態において、このリパーゼは、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼである。
【0061】
クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼなどの特定の種のリパーゼへの言及は、このリパーゼが野生宿主腫から直接的に調製されたことを必ずしも必要とするものではない。例えば、同一のリパーゼは、別の宿主細胞中で組換え的に産生されることができる。
【0062】
本発明の別の態様は、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼの1つ以上を食事栄養補助剤として投与することにより、又はこれら酵素の1つ以上でDHA、EPA、及び/又はARAを含有する調合物を前加水分解することにより、DHA、EPA、及び/又はARAの吸収を増大させる方法である。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、又はリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼである。本発明の追加の態様は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって決定され、実施例1に記載されているようなクロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)の1つ以上の特異的活性に匹敵するDHA、EPA、及び/又はARAに対して特異的活性を有するリパーゼを提供する。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、又はリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼの1つ以上の特異的活性に匹敵するDHA、EPA、及び/又はARAに対する特異的活性を有する。本発明の一実施形態は、5,000単位未満のリパーゼを含有する栄養調合物である(Pharmaceutical Enzymes:Properties and Assay Methods、R.Ruyssen及びA.Lauwers(編集)、Scientific Publishing Company、Ghent、Gelgium(1978年)に記載されているものなどの、標準オリーブ油アッセイで評価される単位を使用)。他の実施形態において、この栄養調合物は、3,000単位未満のリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、1,000単位未満を含有する。特定の形態において、5,000未満、3,000未満、又は1,000単位未満のリパーゼを含有する調合物は、乳児用調乳又は医療用栄養調合物である。
【0063】
固定化リパーゼ
酵素及びその他のタンパク質を不溶性支持体に固定化するプロセスは周知であり、文献中に記載されている。リパーゼの固定化は、酵素の安定性を改善し、これを再使用可能にし、製品がリパーゼにより汚染されることなくこの酵素から容易に分離させることを可能にする。一部の実施形態において、リパーゼは固体支持体に共有結合されているが、非共有結合も使用されてもよい。リパーゼの固定化の適切な方法としては、例えば、吸着、イオン結合、共有結合、架橋結合、カプセル化、並びに疎水性又は親水性ポリマーマトリクス及び無機マトリクスへの閉じ込めが挙げられる。Y.Renら著、BMC Biotechnol.11:63(2011年);V.R.Murtyら著、Biotechnol.Bioprocess Eng.7:57−66(2002年)を参照されたい。リパーゼは、支持体材料に直接的に結合することによって、又はリンカーを通して結合することによって固定されてもよい。例えば、Stark及びHolmberg著、Biotechnol.and Bioeng.34(7):942―950(1989年)を参照されたい。
【0064】
吸着による固定化は可逆的であり、典型的には疎水性相互作用が関与する。これは簡便かつ安価であるが、不完全な固定化又は不溶性支持体からの酵素の漏出の欠点を有する。この方法を使用する固定化リパーゼの例は、E.Lieら著、Chem.Technol.and Biotechnol.50:549−553(1991年)(カンジダ・シリンドラセー(Candida cylindracea)リパーゼ、ゼオライト支持体);M.Basriら著、J.Chem.Technol.and Biotechnol.59:37−44(1994年)(カンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)リパーゼ;ポリマー支持体);H.Gunnlaughsdottirら著、Enzyme and Microbiol.Tech.22:360−367(1998年)(フミコラ・ラヌギノーサ(Humicola lanuginose)リパーゼ;ガラスビーズ支持体)で見出すことができる。吸着による固定化に好適な支持体としては、例えばToyonite(東洋電化工業株式会社)などのセラミックビーズが挙げられる。
【0065】
イオン結合は、リパーゼと、固体支持体上のDEAE−セルロース又はDEAE−セファデックスなどのマトリクス上の異なる電荷のイオン基との間の静電相互作用に基づく。イオン結合は、リパーゼの形に最小の変化を引き起こし、多くの場合、高活性を有する固定化リパーゼを生じる。しかしながら、酵素と支持体との間の結合力は、吸着を使用する場合よりも強いが、共有結合ほど強くはなく、したがって支持体からのリパーゼの漏出が発生する場合があることを理解されたい。
【0066】
共有結合は、支持材料とリパーゼの表面上のアミノ酸上の官能基との間の共有結合に基づく。支持体への酵素のこの結合において起こり得る官能基は、リパーゼの触媒活性に必須ではないアミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、ヒドロキシル、イミダゾール、又はフェノール基であり得る。活性部位を保護するために、固定化は、基質又は競合的阻害因子の存在下で実施することが可能である。リパーゼの支持材料への共有結合を使用することの大きな利点は、結合の強さ、すなわち、固定化の安定性である。共有結合によるリパーゼ固定化の例については、S.Emiら著、European Polymer Journal 30(5):589−595(1994年)を参照されたい。共有結合に好適な支持体としては、例えば、Immobead(商標)(ChiralVision)が挙げられる。
【0067】
架橋結合は、リパーゼをそれ自体に結合させて三次元構造を形成するか又は架橋剤を使用してリパーゼを固体構造に結合させることを伴う。例えば、リパーゼは、キトサンビーズに架橋結合され得る。S.H.Chiouら著、Prep.Biochem.Biotechnol.37(3):265−275(2007年)を参照されたい。カプセル化によるリパーゼの固定化は、通常、リパーゼの周囲の多孔質コーティング又は半透膜の形成を伴い、これによって、リパーゼは多孔質材料の内側に収容されるが、トリグリセリド及びエステルは自由に通過できる。閉じ込めによるリパーゼの固定化は、酵素を格子構造内に閉じ込めることにより、酵素の移動を制限することを伴う。アルギン酸塩ビーズを、この種の固定化に使用してもよい(I.Bushanら著、J.Bioactive and Compatible Polymers 23(6):552−562(2008年)参照)。合成及び天然ポリマーを使用してもよい。G.Fernandez−Lorenteら著、J.Am.Oil Chem.Soc.(2010年12月14日にオンラインで公開)及びG.Fernandez−Lorenteら著、J.Am.Oil Chem.Soc.88:1173−1178(2011年)も参照されたい。
【0068】
特定の実施形態において、本発明の調合物、方法、及び装置は、カプセル化などの固定化の別の形態を伴い又は伴わず、安定性を向上させるために、米国特許第6,541,606号(Margolin)で記載されている結晶化かつ架橋結合されたリパーゼを利用してもよい。
【0069】
一部の実施形態において、リパーゼは、磁気ナノ粒子(MNP)に固定化される。これらMNPは、リパーゼが反応するアミノ又はエポキシ官能基を含有するリンカー又はポリマーによってコーティングされ得る。MNPに好適なコーティングの1つは、例えば、ポリドーパミンである。例えば、Y.Renら著、BMC Biotechnology 11:63(2011年)を参照されたい。リパーゼ固定化にMNPを使用することは、生体適合性、超磁性、小型であること、及び低毒性などの利点を有する。ナノ粒子の磁気特性は、リパーゼの溶液からの除去を容易にし、MNP−リパーゼを固体支持体に付着するための別の手段も提供する。
【0070】
一部の実施形態において、固定化リパーゼは、微生物リパーゼである。一部の実施形態において、固定化リパーゼは、細菌リパーゼから選択される。一部の実施形態において、固定化リパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)から選択される1種以上のリパーゼである。
【0071】
特定の実施形態において、(固定の有無を問わず)リパーゼは、調合物に1、2、3、4、5、10、20、30分間又はそれ以上にわたって添加される。LC−PUFAトリグリセリド及びエステルの加水分解は、RP−HPLCにより測定される。特定の実施形態において、LC−PUFAトリグリセリド及びエステルのパーセント加水分解は、30分までに10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%である。実施形態において、LC−PUFAトリグリセリド及びエステルのパーセント加水分解は、20分までに10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%である。実施形態において、LC−PUFAトリグリセリド及びエステルのパーセント加水分解は、10分までに10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%である。特定の実施形態において、このリパーゼは、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼである。
【0072】
固定化リパーゼを含む装置
様々な実施形態によれば、本開示は、栄養製品を調製するための装置及び方法を提供する。この装置及び方法は、消費前に、乳児用調乳又はその他の栄養製品をリパーゼに曝すために使用することができる。したがって、リパーゼは、引き続いての遊離脂肪酸及びモノグリセリドの放出を伴い、脂肪及び油を分解する。この装置及び方法は、調乳又はその他の栄養製品を調製するための便利な手段を可能にするであろう。
一部の実施形態において、この装置及び方法は、この製品を消費する乳児又は他者に外因性リパーゼを消費することを回避させる。一部の実施形態において、この装置及び方法は、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含むが、(ELISAにより決定される)いかなる多量のリパーゼも含有しない調合物の産生を可能にする。
【0073】
図1、2A〜2C、3A〜3C、4A〜4B、5A〜4B、9A〜9C、10A〜10C、11A〜11C、12、13A〜13B、14、15、16、17A〜17B、18、19、20、及び21は、本開示の様々な実施形態に係る装置を図示する。
図1に示すように、本開示の装置100は、乳児用調乳120又はその他の液体栄養製品を保持するよう構成された容器110を含むことができる。以下に詳細に説明するように、容器110は、
経鼻胃チューブ114又はその他の授乳メカニズム(例えば、哺乳瓶)を通して乳児に供給される調乳120が、リパーゼをいずれの認識し得る量で含有しないように、固定化されているリパーゼを含むことができる。例えば、リパーゼが容器内で調乳120に流体接触するように、リパーゼは、壁に沿って見られる構造上又は構造内に固定化されるか若しくはその他の方法で容器内に固定化され得る。更に、以下の様々な実施形態を参照して説明するように、容器110内のリパーゼの酵素処理を可能にする種々の方法で、調乳は、容器110に加えることができる。例えば、流体は、チューブ112を通して供給するか、又は容器に注ぐことが可能であり、その後、供給のために
経鼻胃チューブ又はその他の装置を通過することが可能である。
【0074】
本開示全体を通して、装置及び方法は、例えば、乳児用調乳及び医療用栄養調合物などの栄養調合物を処理又は調製する上での使用について言及するであろう。この装置及び方法は、消費前にリパーゼ処理を提供することが有益であり得る任意のタイプの栄養調合物を処理又は調製するために使用することが可能であることを理解されたい。このような製品は、膵機能不全を有する人によって、又は長鎖トリグリセリド又はエステル化長鎖PUFAを加水分解するための能力が低下した他者によって消費される任意の栄養調合物を含むことができる。
【0075】
図2A〜2C及び3A〜3Cは、様々な実施形態に係る、より詳細な装置を図示する。示すように、装置200〜202、300〜302は、液体調合物を保持するための容器210,310を含むことができる。容器210,310は、種々の異なるタイプ及び形状を含むことができる。例えば、容器210,310は、ガラス製又はプラスチック製のジャー又はバイアル、バッグ(例えば、IV生理食塩水バッグに似たシリコーン又はその他の可撓性材料)、注射器外管などの円筒状容器、若しくは調乳又はその他の製品の所望の量を保持するよう寸法決めされ形づけられたその他の容器を含むことができる。
【0076】
前に述べたように、本開示の装置は、所望の酵素作用を得るために、調乳をリパーゼに曝させることが可能であり、一方で、その後リパーゼを消費することなく調乳を好都合に消費させることが可能である。したがって、様々な実施形態において、調乳が除去される場合(例えば、
経鼻胃チューブ、哺乳瓶の乳首を通して、又は調乳を別の容器に移すことによって)、リパーゼが容器210,310内に留まるように、若しくは消費前に調乳から除去されることができるように、リパーゼは容器210,310内に固定化される。他の実施形態において、リパーゼは、容器210,310内、例えば、取り外し可能な固体支持体上に固定化されることで、後の消費のために調乳を容器内にそのまま残すと同時に、リパーゼは容器から容易に除去されることが可能である。
【0077】
図2A〜2Cは、容器210内にリパーゼを固定化するための特定の実施形態と共に、容器210の1つの構成を示す。前述したように、容器210は、種々の異なる材料、寸法及び形状を有してもよい。これに加えて、容器210は、調乳260の容器に流入し容器から流出する流れを制御するために、1つ以上のアクセスポート220,230を備えてもよい。
【0078】
リパーゼは種々の方法で容器210内に固定化され得る。例えば、リパーゼは、容器210の内側に位置する構造250,252内に固定化又は収容され得る(
図2A及び2C)。これに加えて、又はこの代わりに、リパーゼ251は、容器210の壁の内部に固定化又は収容されることも可能である(
図2B)。したがって、調乳260が容器の内部に配置されると同時に、調合物260は、リパーゼに接触し、所望の酵素作用を生じる。
【0079】
前述したように、リパーゼを容器内の構造250,252及び/又は容器の壁251に結合することにより、リパーゼは容器内に固定化され得る。容器内の構造は、種々の形状を有することができる。例えば、特定の実施形態において、この構造は、ビーズ、ボール、又は構造が調乳内で流動するように容器内でそれ自体が可動性であり得る任意のその他の構造を備えてもよい。例えば、
図4Aに示すように、構造250は、リパーゼ257が結合することができる表面壁256を有するビーズ又はボールを含むことができる。更に、構造250,252は種々の異なる形状又は構成(例えば、立方体様、卵形体、棒状)を有することが可能であることを理解されたい。
【0080】
構造250,252及び/又は容器210の壁の構成は、許容可能な時間の間に調乳が十分な量のリパーゼに接触することができる所望の表面積を提供するよう構成することが可能である。例えば、構造250,252は、十分な量のリパーゼに結合するための高表面積を提供するために、多数のビーズ250(
図2A)又は棒状構造252(
図2C)を含むことができる。あるいは、調合物をリパーゼとインキュベートするためにより長時間が利用可能である場合、及び/又は高い酵素活性を備えるリパーゼが使用される場合、より少量のリパーゼが好適であり得る
。
【0081】
様々な実施形態において、構造250,252及び/又は容器は、調乳260が消費又は貯蔵のために容器から取り出されると同時に、リパーゼが調乳260内に保持されないように構成される。例えば、ビーズ250又は棒状構造は、これらが比較的小さなアクセスポート230を通過しないように寸法決めすることが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、構造は、容器の壁に取り付けることが可能であり、及び/又は容器が調合物260を含む構造が移動することを防止するよう寸法決めされているスクリーン又はフィルターを備えてもよい。更に、構造250,252は、調乳からのそれらの分離を容易にするその他の特性を有することが可能である。例えば、構造250は、磁気フィルターに結合することにより除去することができる磁気ビーズから形成されることができる。
【0082】
一部の実施形態において、容器210内の構造及び/又は容器の壁への付着によりリパーゼを固定するよりはむしろ、リパーゼ257’は、構造250,252及び/又は容器の壁251内に収容されている。
図4Bは、1つのこのような実施形態を図示する。示すように、構造250’は、壁256’を有するビーズ又はその他の形状を含むことができる。この壁は、調乳260の流入及び流出を許可するがリパーゼ257’の流入及び流出を許可しない半透過性材料から形成することができる。このような封入は、壁の表面が半透過性材料を有し、その内部にリパーゼが収容され得るように、その他の構造(例えば252)及び/又は容器の壁に同様に使用されてもよい。
【0083】
容器は、増加量のリパーゼ、及び/又はリパーゼの調乳260との接触の増加を提供する表面形状を同様に有してもよい。例えば、容器の壁は、表面積を増大させるためにリッジ又はその他の表面改変を有してもよい。更に、容器は、単一の開放空間を含有するよりはむしろ、流路の変形(例えば、リパーゼに対する長期又は長時間の曝露を可能にする巻き経路、及び/又はリパーゼが固定化され、それを通して調乳が流れることができるチャネル又はチューブの集合体)を含有してもよい。例えば、
図1の要素150、及び
図21の要素2101を参照されたい。
【0084】
特定の実施形態において、容器は、製造され、本明細書に記載されている実施形態のいずれかにおけるリパーゼと共に予めパッケージされてもよい。使用時に、容器を開けることができ、調乳を容器内に配置し、十分な時間にわたってリパーゼと接触させて、所望の酵素作用を生じることができる。他の実施形態において、構造の表面に固定化された又はその内部に収容/封入されたリパーゼを有するビーズ250などの構造又は棒状構造は、パッケージされかつ配給され、これら構造は、調乳を含有する別個の容器内に配置することが可能である。一部の実施形態において、固定化リパーゼ及び調乳を含む容器を一定時間にわたって振蕩又は撹拌することが効果的であり得る。
【0085】
述べたように、調乳260は、様々なアクセスポートを介して容器210内に配置することが可能である。例えば、容器は、頂部アクセスポート220及び/又は底部アクセスポート230を含むことができる。ポート220,230は、それぞれ調乳の流入及び流出に使用することができる。これに加えて、単一のポートを使用することが可能であり、又は複数のポートを使用してもよい。これらポートは、流体の供給又は移転に使用され得るその他の装置に係合するよう構成された構造を含むことができる。例えば、これらポートは、ルアーロック接続部、ねじ部、及び/又は
経鼻胃チューブに係合することができる導管又はチューブなどのコネクタを含むことができる。これに加えて、これらポートは、哺乳瓶、哺乳瓶乳首、若しくは供給において別の容器への流体の移転を容易にする、又は供給で補助するための任意の他の構造に係合するよう構成されることが可能である。更に、ポート220,230の一方又は両方は、弁140(
図1)、240(
図2A)又はその他の流体流動制御機構を備えてもよい。
【0086】
図3A〜3Cは、特定の実施形態に係る、本開示の装置を図示する。示すように、装置300〜302は、調乳260を受容するための容器310を含む。これに加えて、容器310は、ジャー又は瓶用のねじ切り頂部などのキャップ322又はその他の閉鎖用具を含むことができる。
図2A〜2Cに示す実施形態と同様に、この装置は、その表面に固定化された及び/又はその中に封入されたリパーゼを含有する構造350,351,351’及び353を備えてもよい。
【0087】
図3A〜3Cの実施形態は、リパーゼを含有する構造からの調乳のより迅速な分離を提供することが可能である。例えば、
図3Aに示すように、棒状構造350は、リパーゼを含有することが可能であり、調乳の酵素処理後に、キャップ322が取り外され、これと同時に構造350及びリパーゼを同時に除去することができる。更にキャップ322は、別のキャップ、哺乳瓶乳首、又はその他の流体接続部で置き換えられることが可能である。同様に、ボール又はビーズ351,351’に似たその他の構成を有する構造(
図3B)は、調合物260からの容易な除去のために寸法決めすることが可能である。例えば、示すように、ビーズ351,351’は、これらが手動で又は濾過により容易に除去され得るように寸法決めされている。更に、容器310は、その内面353に固定化され又は収容されているリパーゼを提供することができ、酵素処理後に、調乳260は、別の容器に移転されることができ、若しく
はキャップ322を哺乳瓶乳首又はその他
の供給システムへの接続部に交換することで消費されることができる。
【0088】
これに代えて、又はこれに加えて、構造350,351,351’は、構造内に収容された固定化リパーゼを提供する追加の構成部品を備える透過性の外部壁を有することが可能である。例えば、構造351’(
図3B)は、構造351’が多数のビーズ250を包囲する透過性の外部壁を有する1つの実施形態を図示する。外部壁は、ビーズ250との接触を提供するために、メッシュ若しくは調合物の構造351’に向かう及び構造からの容易な移動を可能にするその他の構成を備えてもよい。更に、上記の様々な実施形態で記載されている通り、ビーズは、ビーズの表面に固定化され又はその内部に封入されることが可能であるリパーゼを提供することができる。
【0089】
上述したように、リパーゼを含有するこの構造は、製造され、容器310と共に予めパッケージされた構成部品として配給されることが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、構造は容器とは別個にパッケージされ配給されてもよい。例えば、その内部に収容されているか又はそこに固定化されているリパーゼを有する棒状構造350又はビーズ351,351’、若しくは他のものを含有するキャップ322が、製造されかつ配給されてもよい。このキャップは、調乳を含有し得る標準的哺乳瓶、水筒、若しくは他の容器又は器具との接続用に構成されてもよい。
【0090】
他の実施形態において、調乳が容器内に配置されると同時に、及び/又は授乳中又は容器からの取り外し時に、リパーゼが調乳と接触するように、リパーゼは提供され得る。例えば、
図5Aは、例示的な実施形態に係る、1つの装置500を図示する。装置500は、標準哺乳瓶乳首を含み得、リパーゼは、乳首の周縁部又は乳首それ自体の内表面510に固定化され得る。このようにして、通常の使用時に、調乳はリパーゼと接触するであろう。同様に、リパーゼは、
経鼻胃栄養供給装置の流体用チューブなどの供給に使用され得るその他の構造の内部又はその上に収容され得る。
【0091】
あるいは、リパーゼは、通常の流体の流れの間に、調乳のリパーゼとの接触を可能にするよう構成された別個の要素で提供することができる。例えば、一実施形態において、リパーゼは、乳首(
図5A)又は哺乳瓶キャップ/頂部(
図5B)などの哺乳瓶閉鎖部材との係合用に構成されたハウジング520内に収容されることが可能である。ハウジング520は、調乳に壁量を通過させ、その中に提供されたリパーゼと接触させる透過性壁を含むことができる。
【0092】
ハウジング520内に収容されているリパーゼは、種々の形態で提供され得る。例えば、一部の実施形態において、リパーゼは、前述されたように、結合又は封入によってハウジング520内のビーズ550の上に固定化されている。更に、ハウジング520は、調乳にそれを通過させる開放メッシュ又はその他の構成を含むことができる。例えば、
図5Aに示す哺乳瓶構成を使用して、開放メッシュ又はハウジング520を通る流路は、授乳中に調乳が哺乳瓶を出ると同時に、調乳をリパーゼに接触させるであろう。あるいは、
図5Bに示すように、調乳は、ハウジングの頂部530に注入又はそこから注出され、容器310を充填又は空にする間に、調乳をリパーゼに接触
させることができる。ハウジング520の頂部530及び/又はその他のどの部分も、種々の材料から形成することが可能である。例えば、ハウジング520は、制御された流体の流れを可能にする膜から形成され得る。更に、頂部530は、流体(調乳)がそれを通して流れることを許可するが、リパーゼの通過を許可しない半透過膜から形成され得る。したがって、頂部530を形成している膜は、別の方法でリパーゼを容器310内に結合又は固定化することなく、容器310内にリパーゼを固定化するために役立ち得る。
【0093】
様々な実施形態において、上記記載の装置は、リパーゼ活性を改善する又は別の方法で制御するための変更形態を備えてもよい。例えば、容器110,210,310は、インキュベーションの間に調乳の連続的移動を可能にする
攪拌システムを含むことができることにより、リパーゼが流体容量全体にわたって見出される脂肪酸に接触することを可能にする。更に、この装置は、リパーゼ活性を改善又は制御するために温度を制御するためのシステムを含むことができる。
【0094】
本発明の特定の実施形態は、栄養調合物及びリパーゼを含有する容器を提供する。一部の実施形態において、リパーゼは、容器内で栄養調合物と接触状態にある。他の実施形態において、リパーゼ及び栄養調合物は、容器内で接触状態にはない。一部の実施形態において、栄養調合物及びリパーゼは、容器内の別個の区画内に収容されている。一部の実施形態において、栄養調合物は乾燥形態である。一部の実施形態において、栄養調合物は液体形態である。一部の実施形態において、リパーゼを、栄養調合物を含有する区画内に放出することにより、リパーゼを栄養調合物に接触させる。一部の実施形態において、リパーゼ及び栄養調合物を別の容器に移すことによって(例えば、他の容器に移して、リパーゼ区画及び栄養調合物区画を空にすることによって)、リパーゼを栄養調合物に接触させる。一部の実施形態において、リパーゼ及び栄養調合物を他の容器に移す前又は移した後に、液体が他の容器に添加される。
【0095】
本開示による装置は、多くの異なる形状及び/又は構成を有することが可能である。例えば、
図9A〜9C、10A〜10C、11A〜11C、12、13A−13B、14、15、16、17A〜17B、18、19、20、21は、種々の追加の形状及び/又は構成を図示する。これら図面について述べられたそれぞれの構成において、リパーゼは、(例えば、装置内のビーズなどの構造上にリパーゼを固定化することにより、及び/又は装置の壁の内部又は壁上若しくは他の表面上にリパーゼを固定化することにより)上記記載の方法のいずれかを使用して固定化することが可能である。更に、特定の構成が、表面積、容積、リパーゼの量、及び/又は酵素に対する物質の曝露時間などの多種多様な特徴を提供するよう選択されてもよい。
【0096】
図9A〜9C、10A〜10C、11A〜11C、12、13A〜13B、14、15、16、17A〜17B、18、19、20、21に図示されている装置は、種々の方法でリパーゼの接触を可能にするよう構成することができる。例えば、様々な実施形態において、調乳とリパーゼとの間の接触を可能にするために、装置の一部又は全体を
調乳を含む容器内に挿入することができる。他の実施形態において、装置は、調乳のインライン処理用に構成されている。
【0097】
図9A〜9Cは、調乳を処理するために、容器内に配置され得る装置のための構成を図示する。示すように、装置900,920(
図9A及び
図9C)は、リパーゼを取り囲む外部壁901,901”から形成された多様な形状を有することができる。上に示したように、リパーゼ902は、ビーズへの付着を含む多様な方法で固定化され得る。更には、装置910(
図9B)は、1つ以上の壁901’内に形成された複数のポケット又は開口部903を含むことができる。特定の構成、ポケット又は開口部の数、並びにリパーゼの量及び/又は装置の容積は、使用目的に応じて及び/又はリパーゼ反応速度を制御するために変動することができる。
【0098】
特定の実施形態において、装置は、その寸法又は形状における変化を可能にするよう構成され得る。例えば、
図10A〜10Cは、装置1000を図示し、これは、例えば使用前の容器1001内での貯蔵用に圧縮することが可能である。必要に応じて、容器1001は開けることができ、装置の壁1003は、容器容積に対するリパーゼ容積1002の所望の比を生じるように膨張することが可能である。一部の実施形態において、装置1000は、構造的支持を提供し、及び/又は装置が所望の形状及び/又は容積を維持するよう補助するコイル又はバネ1004を含む。
【0099】
一部の実施形態において、装置は、調乳の容積内のリパーゼの配置及び除去を容易にするための棒状延長部を含むことができる。例えば、
図11A〜11C、12、13A〜13B、14及び15は、棒状延長部を含む装置についての種々の例示的な構成を図示する。示すように、装置1100,1100’,1100”,1200,1300,1400,1500は、棒状延長部1102,1202,1302,1402,1502の遠位領域の近くに種々の構成で配置された1つ以上のポケット又は開口部1101,1201,1301,1401,1501のいずれかを含むことができる。一部の実施形態において、例えば、
図13A〜13Bに示すように、例えば使用時に狭い開口部内への挿入を可能にするために及び/又は貯蔵空間を最小限に抑えるために、ポケット又は開口部1301の配向を調節することが可能である。
【0100】
様々な実施形態において、リパーゼは、瓶又はジャーのキャップ又は閉鎖部材の一部に付着され得ることで、キャップ又は閉鎖部材が瓶又はジャーに配置される場合、リパーゼは瓶又はジャー内に収容されている流体に接触することができる。例えば、本明細書に示されている装置のいずれかは、瓶又はジャー内で調乳容器に接触させるために、キャップ又は閉鎖部材の表面に取り付けられてもよい。キャップ又は閉鎖部材1602,1702,1802,1902,2002に付着されたリパーゼを含む装置1600,1700,1800,1900,2000の種々の構成が、
図16、17A〜17B、18、19、及び20に図示されている。示すように、リパーゼは、種々の形状又は構成を有するポケット又は開口部1601,1705,1805,1901,2001内に収容され得る。更に、一部の実施形態において、キャップ又は閉鎖部材1902、2002は、容器から流体を挿入又は除去するための開口部1910,2010を含むことが可能であり、このような開口部1910,2010は、流体チューブ用のコネクタ、例えばルアー型コネクタを含むことができる。
【0101】
一部の実施形態において、調乳がチューブを通過しているときに(例えば、
図1に示すような調乳供給中、又は調乳を1つの容器から別の容器に転移中に)調乳を処理することが望ましい場合もある。
図21は、リパーゼのインライン処理用の別の装置2100を図示する。装置2100は、上述のように固定化され得るリパーゼを含有するポケット又は開口部2101を含むことができる。更に、ポケット又は開口部2101は、リパーゼと調乳との間のより長い接触時間を可能にするために、曲がりくねった又は曲線流路を有してもよい。これに加えて、装置2100は、調乳の流入又は流出のためのチューブ又は導管への接続を可能にするために、両端で開口部2110を含んでもよい。
【0102】
様々な実施形態において、装置はリパーゼが患者によって摂取される調乳に流入することを防止するためにスクリーン又はメッシュとして作動する材料を含んでもよい。例えば、
図19及び
図21に示す装置は、ビーズ又はその他の構造上に固定化されたリパーゼが摂取される調乳に移動することを防止するために、1つ以上のメッシュ又はスクリーン1906,2106を含むことができる。
【0103】
一部の実施形態において、リパーゼが、更なるステップが開始されるまで調乳と接触しないように、リパーゼは容器の構成部品内又はその上に固定化され得る。例えば、一実施形態において、リパーゼは、キャップ又は閉鎖部材の一部の内部に又はその上に収容されてもよく、このキャップ又は閉鎖部材は、固定化されたリパーゼを容器内に放出するための機構を含むことができる。例えば、リパーゼは、ビーズ又はその他の構造(例えば、
図18の要素1805を参照)上又はその内部に収容されることが可能であり、ビーズ又はその他の構造は、キャップに取り付けられ又はキャップ内に収容されていて、必要に応じて、(例えば、キャップを捩ることによって、又はバリア/取り付け機構を取り外すことによって)リパーゼが容器に滴下され得る。同様に、リパーゼは、容器の壁又はその他の構造に付着されても又はこれらに収容され、ビーズ又はその他の材料の上に固定されてもよく、(例えば、リパーゼを容器内に放出するか、又はリパーゼの上を覆うバリアを取り外すことによって)所望の場合にのみ、リパーゼを調乳に接触させることが可能である。
【0104】
図6Aは、ポリマービーズ上に固定化されたリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)
のリパーゼを含有するバイアルの写真である。固定化リパーゼは、
図6B〜Dに示した装置などの本発明による装置の容器又はチャンバに添加することができる乾燥顆粒形態で存在する。チャンバの流出端部に、調乳を通過させるのに十分に大きな孔を含有するが、固定化リパーゼをチャンバ内に保持するフィルターを単に提供することによって、調乳がチャンバを通過しチャンバから出ることを許可する一方、固定化リパーゼは、装置のチャンバ内に捕捉されてもよい。あるいは、調乳がチャンバを通過すると同時に調乳がリパーゼに曝されるように、装置の内部チャネル又はチャンバをコーティングすることにより、リパーゼは固定化されてもよい。このような装置内のリパーゼは、リパーゼの安定性及び再利用可能性の増加のために、長期間にわたる連続的供給に使用することが可能である。
【0105】
栄養調合物
本発明の特定の実施形態は、栄養調合物を提供する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、乳児用調乳である。一部の実施形態において、栄養調合物は、医療用栄養調合物である。一部の実施形態において、栄養調合物は、摂取前にリパーゼに曝される。一部の実施形態において、この曝露は、栄養調合物中の少なくともいくつかの脂質の前加水分解を可能にする。したがって、一部の実施形態において、栄養調合物は、「as−fed、現物としての」調合物すなわち、対象による摂取の直前に構成されるような液体調合物であり、製造業者により販売されている調合物とは組成で異なる。用語「栄養調合物」とは、摂取後の対象の体内の組成物を包含しない。
【0106】
一部の実施形態において、この栄養調合物は、長鎖脂肪酸を含む。一部の実施形態において、この栄養調合物は、DHA、ARA、及びEPAなどの1種以上のLC−PUFAを含む。一部の実施形態において、この栄養調合物は、DHAを含む。一部の実施形態において、この栄養調合物は、ARAを含む。一部の実施形態において、この栄養調合物は、DHA及びARAを含む。一部の実施形態において、この栄養調合物は、DHA。ARA、及びEPAを含む。
【0107】
一部の実施形態において、この栄養調合物中の総長鎖脂肪酸の
5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この栄養調合物中の総LC−PUFAの5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形で存在する。一部の実施形態において、DHAの5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、ARAの5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、EPAの5%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0108】
一部の実施形態において、この栄養調合物中の総長鎖脂肪酸の10%超、15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、95%超、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この栄養調合物中の総LC−PUFAの10%超、15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、95%超、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、このDHAの10%超、15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、95%超、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、このARAの10%超、15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、95%超、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、このEPAの10%超、15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、95%超、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、双方のこのDHA及びARAの10%超、15%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、85%超、90%超、95%超、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。特定の実施形態において、双方のこのDHA及びARAの90%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。特定の実施形態において、双方のこのDHA及びARAの95%超が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0109】
一部の実施形態において、この栄養調合物中の総長鎖脂肪酸の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、このDHAの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、このARAの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、このEPAの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、双方のこのDHA及びARAの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。特定の実施形態において、双方のこのDHA及びARAの少なくとも90%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。特定の実施形態において、双方のこのDHA及びARAの少なくとも95%が、モノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0110】
本発明の一部の実施形態において、本発明の栄養調合物のおよその
サービングサイズは、未熟児用調乳については約100〜110mLであり、満期産児用調乳については90〜150mL(例えば、148mL)であり、経腸栄養については230〜500mL(例えば、235〜250mL)であり、小児用調合物及び成人用調合物については230〜250mLである。一部の実施形態において、各摂取量は、約10〜35mgのARA遊離脂肪酸及びモノグリセリド(現在使用可能な早期産児及び満期産児用調乳中のTG−ARAの完全な加水分解から得られるものとして)若しくは約40〜50mgのARA遊離脂肪酸又はモノグリセリド(現在使用可能な成人用調合物中のTG−ARAの完全な加水分解から得られるものとして)を含有する。一部の実施形態において、各摂取量は、約7〜20mgのDHA遊離脂肪酸及びモノグリセリド(現在使用可能な早期産児及び満期産児用調乳中のTG−DHAの完全な加水分解から得られるものとして)若しくは約10〜40mgのDHA遊離脂肪酸又はモノグリセリド(現在使用可能な小児用及び成人用調合物中のTG−DHAの完全な加水分解から得られるものとして)を含有する。230〜250mLの成人摂取量は、約1,100mgのEPA遊離脂肪酸及びモノグリセリド並びに約240mgのDHA遊離脂肪酸及びモノグリセリド(ProSure(登録商標)などのいくつかの現在使用可能な成人用調合物中のTG−EPA及びTG−DHAの完全な加水分解から得られるものとして)を含有する。しかしながら、本発明の一部の実施形態において、摂取前にTG−LCPUFAを前加水分解するための能力は、現在使用可能な調合物中よりも高いレベルのLC−PUFAを有する調合物が生成されることを可能にする。したがって、一部の実施形態において、ARA及び/又はDHAの遊離脂肪酸及び/又はモノグリセリドの量は、現在使用可能な調合物中のTG−LCPUFAの完全な加水分解から得ることができる量を超える。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物の摂取量は、50〜100mgのLC−PUFA遊離脂肪酸及び/又はモノグリセリドを含有する。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物の摂取量は、100〜200mgのLC−PUFA遊離脂肪酸及び/又はモノグリセリドを含有する。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物の摂取量は、200〜300mgのLC−PUFA遊離脂肪酸及び/又はモノグリセリドを含有する。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物の摂取量は、250〜500mgのLC−PUFA遊離脂肪酸及び/又はモノグリセリドを含有する。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物の摂取量は、500〜1000mgのLC−PUFA遊離脂肪酸及び/又はモノグリセリドを含有する。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物の摂取量は、1〜2gのLC−PUFA遊離脂肪酸及び/又はモノグリセリドを含有する。一部の実施形態において、本発明の栄養調合物の摂取量は、2〜3gのLC−PUFA遊離脂肪酸及び/又はモノグリセリドを含有する。
【0111】
一部の実施形態において、栄養調合物は、脂肪、炭水化物、及びタンパク質(又はアミノ酸)を含む。一部の実施形態において、本発明の乳児用調乳は、脱脂乳、乳糖、植物油(例えば、パームオレイン油、ココナッツ油、ダイズ油、及び高オレイン酸ヒマワリ油)、ホエータンパク質濃縮物、糖類、LC−PUFA、ビタミン、及び鉱物の1つ、複数又は全てを含む。一部の実施形態において、栄養調合物は、中鎖脂肪酸からなる脂肪及び長鎖脂肪酸からなる脂肪を含む。一部の実施形態において、栄養調合物は、n−6脂肪酸からなる脂肪及びn−3脂肪酸からなる脂肪を含む。一部の実施形態において、栄養調合物は、LA及びALAを含む。
【0112】
一部の実施形態において、本発明の栄養調合物は、追加のリパーゼを含まない。一部の実施形態において、本発明の装置及び/又は方法は、栄養調合物をリパーゼに曝すために使用されるが、栄養調合物は供給前にリパーゼから離隔されているので、「as−fed、現物の」栄養調合物は、追加のリパーゼを含まない。追加のリパーゼを含まない栄養調合物とは、例えば、固定化リパーゼが固体支持体から調合物に浸出するために、リパーゼが検出不能であるか、又はリパーゼが非常に低いレベルで存在する調合物を指す。一部の実施形態において、栄養調合物は、0.02%(w/w)以下のリパーゼ、0.01%(w/w)以下のリパーゼ、0.005%(w/w)以下のリパーゼ、0.002%(w/w)以下のリパーゼ、0.001%(w/w)以下のリパーゼ、0.0005%(w/w)以下のリパーゼ、0.0002%(w/w)以下のリパーゼ、又は0.0001%(w/w)以下のリパーゼを含む。一部の実施形態において、栄養調合物は、0.02%(w/w)未満のリパーゼ、0.01%(w/w)未満のリパーゼ、0.005%(w/w)未満のリパーゼ、0.002%(w/w)未満のリパーゼ、0.001%(w/w)未満のリパーゼ、0.0005%(w/w)未満のリパーゼ、0.0002%(w/w)未満のリパーゼ、又は0.0001%(w/w)未満のリパーゼを含む。
【0113】
一部の実施形態において、この栄養調合物は、リパーゼを含む。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)
のリパーゼから選択される。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)
のリパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)
のリパーゼから選択される。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)
のリパーゼである。一部の実施形態において、このリパーゼは、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)
のリパーゼである。一部の実施形態において、このリパーゼは、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)
のリパーゼである。
【0114】
一部の実施形態において、栄養調合物の摂取量は、5,000単位未満のリパーゼを含有する(これは、Pharmaceutical Enzymes:Properties and Assay Methods、R.Ruyssen及びA.Lauwers(編集)、Scientific Publishing Company、Ghent、Belgium(1978年)などの標準オリーブアッセイで評価された単位を使用する)。他の実施形態において、栄養調合物の摂取量は、3,000単位未満のリパーゼを含有する。一部の実施形態において、栄養調合物の摂取量は、1,000単位未満のリパーゼを含有する。特定の実施形態において、摂取量当たり5,000単位未満、3,000単位未満、又は1,000単位未満のリパーゼを含有する調合物は、乳児用調乳又は医療用栄養調合物である。
【0115】
一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪(遊離脂肪酸、モノグリセリド、エステル、又はトリグリセリド形態であっても)のグラム当たり0.01mg〜1gのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜500mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜250mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜200mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜150mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜100mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜50mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり1〜50mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり25〜75mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり1〜100mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり50mg以下のリパーゼを含有する。
【0116】
一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFA(遊離脂肪酸、モノグリセリド、エステル、又はトリグリセリド形態であっても)のミリグラム当たり0.001〜10mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜5mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜3mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜0.5mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜0.1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜0.05mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.01〜0.1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.02〜0.08mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.04〜0.06mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.1mg以下のリパーゼを含有する。
【0117】
一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHA(遊離脂肪酸、モノグリセリド、エステル、又はトリグリセリド形態であっても)のミリグラム当たり0.001〜10mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜5mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜3mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜0.5mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜0.1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜0.05mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.01〜0.1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.02〜0.08mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.04〜0.06mgのリパーゼを含有する。
【0118】
一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARA(遊離脂肪酸、モノグリセリド、エステル、又はトリグリセリド形態であっても)のミリグラム当たり0.001〜10mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARAのミリグラム当たり0.001〜5mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARAのミリグラム当たり0.001〜3mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARAのミリグラム当たり0.001〜1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARAのミリグラム当たり0.001〜0.5mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARAのミリグラム当たり0.001〜0.1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARAのミリグラム当たり0.001〜0.05mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARAのミリグラム当たり0.01〜0.1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARAのミリグラム当たり0.02〜0.08mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総ARAのミリグラム当たり0.04〜0.06mgのリパーゼを含有する。
【0119】
一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPA(遊離脂肪酸、モノグリセリド、エステル、又はトリグリセリド形態であっても)のミリグラム当たり0.001〜10mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPAのミリグラム当たり0.001〜5mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPAのミリグラム当たり0.001〜3mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPAのミリグラム当たり0.001〜1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPAのミリグラム当たり0.001〜0.5mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPAのミリグラム当たり0.001〜0.1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPAのミリグラム当たり0.001〜0.05mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPAのミリグラム当たり0.01〜0.1mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPAのミリグラム当たり0.02〜0.08mgのリパーゼを含有する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、栄養調合物中の総EPAのミリグラム当たり0.04〜0.06mgのリパーゼを含有する。
【0120】
一部の実施形態において、栄養調合物は、本明細書に開示されている方法によって調製される。一部の実施形態において、栄養調合物は、本明細書に開示されている装置を使用して調製される。
【0121】
栄養調合物を調製する方法
様々な実施形態によれば、本開示はまた、栄養調合物を調製する方法を提供する。一部の実施形態において、この栄養調合物は、乳児用調乳である。一部の実施形態において、この栄養調合物は、医療用栄養調合物である。一部の実施形態では、この栄養調合物は成人用の栄養飲料(完全栄養飲料、例えば、ENSURE、PEDIASUREなど)である。
【0122】
一部の実施形態において、栄養調合物を調製する方法は、液体栄養組成物をリパーゼに曝す工程を含む。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、LC−PIFAトリグリセリド又はLC−PUFAエステルを含む。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、DHA、ARA、及びEPAからなる群から選択される1種以上のLC−PUFAのトリグリセリド又はエステルを含む。
【0123】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼから選択されるリパーゼに曝される。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼ、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼ、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼから選択される。一部の実施形態において、このリパーゼは、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)リパーゼである。一部の実施形態において、このリパーゼは、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)リパーゼである。一部の実施形態において、このリパーゼは、リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼである。
【0124】
これら方法に関与する成分は、様々な順序で混合されてもよい。一部の実施形態において、リパーゼは液体栄養組成物に添加され、これによって、液体栄養組成物中の脂質をリパーゼに曝す。一部の実施形態において、液体栄養組成物は、飲用液体を栄養調合物の固体又は粉末形態に添加することにより調製される。一部の実施形態において、リパーゼは、飲用液体の添加前に栄養組成物の固体又は粉末形態中に存在する。他の実施形態において、リパーゼは、液体栄養組成物が調製された後に添加される。一部の実施形態において、このリパーゼ及び栄養組成物の固体又は粉末形態は、同時に飲用液体に添加される。
【0125】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、摂取前に、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも5分間、少なくとも8分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも45分間、又は少なくとも60分間にわたってリパーゼに曝される。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、30秒間以下、1分間以下、2分間以下、3分間以下、5分間以下、8分間以下、10分間以下、15分間以下、30分間以下、45分間以下、60分間以下、2時間以下、4時間以下、6時間以下、12時間以下、又は24時間以下にわたってリパーゼに曝される。
【0126】
一部の実施形態において、この方法は、この栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である栄養調合物を結果として生じる。一部の実施形態において、DHAの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、ARAの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、EPAの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0127】
この使用の目的のために、栄養組成物又は調合物のリパーゼに対する曝露とは、液体栄養組成物又は液体調合物が、溶液中にあるか又は固定化され得るリパーゼに接触状態にある一定時間を指す。この使用の目的のために、リパーゼに対する曝露は、調合物が対象により摂取される時、又は液体調合物をリパーゼが固定化されている固体支持体から分離することによりリパーゼが除去される時に終了する。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも20%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも20%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも20%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0128】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも40%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも40%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも40%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0129】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも50%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも50%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも50%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0130】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも60%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも60%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも60%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0131】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも70%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも70%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに10分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも70%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0132】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも20%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも20%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも20%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0133】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも40%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも40%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも40%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0134】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも50%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも50%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも50%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0135】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも80%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも80%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも80%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0136】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも90%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも90%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに20分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも90%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0137】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも20%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも20%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも20%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0138】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも40%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも40%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも40%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0139】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも60%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも60%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも60%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0140】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも70%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも70%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも70%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0141】
一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のDHAの少なくとも80%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中のARAの少なくとも80%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。一部の実施形態において、この液体栄養組成物は、リパーゼに30分間以下で曝され、得られた栄養調合物中の総LC−PUFAの少なくとも80%がモノグリセリド及び/又は遊離脂肪酸の形である。
【0142】
一部の実施形態において、栄養調合物が対象に供給される場合、このリパーゼは栄養調合物中にそのまま留まる。他の実施形態において、このリパーゼは、液体栄養組成物が対象に供給される前に、液体栄養組成物から除去される。一部の実施形態において、このリパーゼは、リパーゼを含んでいる液体栄養組成物をリパーゼに結合する分子に固定化された固体支持体に曝し、これによってリパーゼを固体支持体に結合させ、液体栄養組成物を固体支持体から分離することにより除去される。リパーゼが固体支持体に固定化されているために、液体栄養組成物を固体支持体から分離することは、リパーゼを液体栄養組成物から除去する作用を有する。一部の実施形態において、リパーゼが液体栄養組成物に曝される前に、リパーゼは固体支持体に固定化され、このリパーゼは、液体栄養組成物を固体支持体から分離することにより除去される。一部の実施形態において、このリパーゼは、チャンバの内面の少なくとも一部又はチャンバ内に収納されている固体支持体に固定化され、液体栄養組成物は、チャンバを通過することによりリパーゼに一時的に曝される。一部の実施形態において、チャンバはカラムである。一部の実施形態において、液体栄養組成物は、固体支持体に固定化されたリパーゼを含有する容器に対して曝され、この容器の内面の少なくとも一部は、トリグリセリド及びエステルに対しては透過性であるが、固体支持体に対し不透過性である材料からなる。
【0143】
一部の実施形態において、この方法は、追加のリパーゼを含まない栄養調合物を産生する。一部の実施形態において、栄養調合物はリパーゼに曝されるが、この栄養調合物は、供給の前にリパーゼから分離されることで、as−fed(現物の)栄養調合物は、追加のリパーゼを含むことはない。追加のリパーゼを含まない(又は含有しない)栄養調合物は、例えば、固定化されたリパーゼが固体支持体から調合物に浸出するために、リパーゼが検出不能であるか又は非常に低いレベルでのみ存在する調合物を指す。一部の実施形態において、栄養調合物は、0.02%(w/w)以下のリパーゼ、0.01%(w/w)以下のリパーゼ、0.005%(w/w)以下のリパーゼ、0.002%(w/w)以下のリパーゼ、0.001%(w/w)以下のリパーゼ、0.0005%(w/w)以下のリパーゼ、0.0002%(w/w)以下のリパーゼ、又は0.0001%(w/w)以下のリパーゼを含む。一部の実施形態において、栄養調合物は、0.02%(w/w)未満のリパーゼ、0.01%(w/w)未満のリパーゼ、0.005%(w/w)未満のリパーゼ、0.002%(w/w)未満のリパーゼ、0.001%(w/w)未満のリパーゼ、0.0005%(w/w)未満のリパーゼ、0.0002%(w/w)未満のリパーゼ、又は0.0001%(w/w)未満のリパーゼを含む。
【0144】
一部の実施形態において、この方法は、摂取量当たり5,000単位未満のリパーゼ(これは、Pharmaceutical Enzymes:Properties and Assay Methods、R.Ruyssen及びA.Lauwers(編集)、Scientific Publishing Company、Ghent、Belgium(1978年)などの標準オリーブアッセイで評価された単位で)に栄養調合物を曝す工程を含む。他の実施形態において、栄養調合物は、摂取量当たり3,000単位未満のリパーゼに曝される。一部の実施形態において、栄養調合物は、摂取量当たり1,000単位未満のリパーゼに曝される。特定の実施形態において、摂取量当たり5,000単位未満、3,000単位未満、又は1,000単位未満のリパーゼに曝された調合物は、乳児用調乳又は医療用栄養調合物である。
【0145】
一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪(遊離脂肪酸、モノグリセリド、エステル、又はトリグリセリド形態であっても)のグラム当たり0.01mg〜1gのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜500mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜250mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜200mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜150mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜100mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり0.1〜50mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり1〜50mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり25〜75mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり1〜100mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、本発明の方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総脂肪のグラム当たり50mg以下のリパーゼに曝す。
【0146】
一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFA(遊離脂肪酸、モノグリセリド、エステル、又はトリグリセリド形態であっても)のミリグラム当たり0.001〜10mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜5mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜3mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜1mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜0.5mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜0.1mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.001〜0.05mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.01〜0.1mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.02〜0.08mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.04〜0.06mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総LC−PUFAのミリグラム当たり0.1mg以下のリパーゼに曝す。
【0147】
一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHA(遊離脂肪酸、モノグリセリド、エステル、又はトリグリセリド形態であっても)のミリグラム当たり0.001〜10mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜5mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜3mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜1mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜0.5mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜0.1mgのリパーゼを曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.001〜0.05mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.01〜0.1mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.02〜0.08mgのリパーゼに曝す。一部の実施形態において、この方法は、栄養調合物を、栄養調合物中の総DHAのミリグラム当たり0.04〜0.06mgのリパーゼに曝す。
【0148】
一部の実施形態において、栄養調合物を調製する方法は、液体栄養組成物を本明細書に記載されている装置に曝す工程を含む。
【実施例】
【0149】
実施例1:DHA及びARAに対するリパーゼの特異的活性
様々なリパーゼのDHA及び/又はARAトリグリセリドに及ぼす酵素活性を評価するために、0.1MのTris緩衝液、pH7.7及び基質DHA又はARAトリグリセリドを含有する(磁気撹拌棒が備わった)2mLのガラスバイアルにおいて実験を行った。リパーゼ溶液を添加することにより、反応を開始させた。リパーゼは、以下の市販供給源から得た:リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)(Amano DF−15、天野エンザイム株式会社、名古屋、日本)、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)(EMD CalBiochem、EMD Biosciences、Billerica、MA)、及びシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)(Amano AK、天野エンザイム株式会社、名古屋、日本)。その他のリパーゼもまた、カンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)(Amano AY 30又はAmano 30、天野エンザイム株式会社、名古屋、日本)、アスペルギルス・ニガー(Aspergilus niger)(Amano DS、天野エンザイム株式会社、名古屋、日本)、ペニシリウム・カメムベルチ(Penicillium camembertii)(Amano 50、天野エンザイム株式会社、名古屋、日本)、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)(L4277、Sigma−Aldrich)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergilis oryzae)(62285、Sigma−Aldrich)、及びブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)(534641、Sigma−Aldrich)など、市販供給源から入手可能である。リパーゼ溶液は、B.cepaciaリパーゼを精製して均一なものとした以外は、更なる精製を行うことなく、これら市販のリパーゼから調製した。
【0150】
バイアルを、磁気撹拌器上に配置した37℃の水浴に移した。50μlの試料を異なる時間間隔、0、15、30、45、60、90、及び120分に採取し、950μlの移動緩衝液(30%の10mMリン酸アンモニウム緩衝液、pH3.0及び70%のアセトニトリル)を含有するHPLCバイアルに加えた。次いで試料を、Agilent HPLC 1100シリーズ及びC8 RPカラムを使用し、215及び220nmでモニタリングして、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって、DHA遊離酸又はARA遊離酸のいずれかについて分析した。市販の標準物質:DHAトリグリセリド(Nu−check Prep、Inc.ロット番号T−310−D7−V)、ARAトリグリセリド(Nu−check Prep,Inc.ロット番号T−295−JY14−V)、DHA遊離酸型(Nu−check Prep、Inc.ロット番号U−84A−AU20−U)、及びARA遊離酸型(Nu−check Prep,Inc.ロット番号U−71A−N11−U)を使用して、保持時間により遊離酸ピークを特定した。このアッセイにおけるリパーゼのパネルのDHA及びARAに対する特異的活性を表1に概説する。本発明者の見解では、クロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)(CV)、ブルコルデリア・セパシア(Burcholderia cepacia)(BC)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas Fluorescens)(PF)、及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)(RO)は、カンジダ・ルゴーサ(Candida rugosa)(CR)を含む試験されたその他のリパーゼと比べて、DHA及び/又はARAに対して実質的により高い特異的活性を有した。
【表1】
【0151】
実施例2:乳児用調乳中のDHA、ARA、及びEPAに対するクロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)及びリゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)
のリパーゼの酵素活性
乳児用調乳に補充される場合のDHA、ARA、及びEPAに及ぼすCV及びROリパーゼの酵素活性を評価するために、牛乳を主成分とする乳児用調乳を、35mLの水に10gのENFAMIL(登録商標)末を溶解することにより調製した。基質EPAを含有する乳児用調乳、0.1MのTris緩衝液、pH7.7、並びに2.7mgの基質DHA(Nu−check Prep,Inc.ロット番号T−310−D7−V)及び5.4mgのARA(Nu−check Prep,Inc.ロット番号T−295)を1mLのガラスバイアル(磁気撹拌棒を含む)に加えた。酵素(すなわち、リパーゼ)を加えることで反応を開始させ、各酵素の4つの濃度を試験した。バイアルを、磁気撹拌器上に配置した37℃の水浴に移した。各試料の50μlを異なる時点、0、10、20、30、45、及び60分で採取し、950μlのHPCL移動緩衝液(30%の10mMリン酸アンモニウム緩衝液、pH3.0及び70%のアセトニトリル)を含有するHPLCバイアルに加えた。次いで、上記の通りにPR−HPLCにより、試料をDHA酸、ARA酸、又はEPA酸のいずれかについて分析した。
【0152】
総トリグリコシドのパーセントは、遊離酸及びモノグリセリドの量が増加するにつれて経時的に減少した。例えば、ROで加水分解された場合、DHA遊離酸の量は、時間と共に増加した(
図7)。同様に、ROで加水分解された場合、ARA遊離酸の量は、時間と共に増加した(
図8)。
【0153】
このアッセイにおける各々のリパーゼの特異的活性を、乳児用調乳中で放出された遊離DHA酸、ARA酸、又はEPA酸の量に基づいて計算し、表2に示す。
【表2】
【0154】
実施例3:DHAトリグリセリド及びARAトリグリセリドスケールアップの加水分解
乳児用調乳を補充するために使用することができる量までスケールアップされる場合、リパーゼを、TG−DHA及びTG−ARAを加水分解するためのそれらの能力について評価した。乳児用調乳(ミルク)を、水道水(熱水、温度は37℃であった)648mL中に162gのEnfamil末を溶解することにより調製した。DHAトリグリセリド(442mg、DHAの最終濃度は0.54g、総脂肪の1.2%)及びARAトリグリセリド(885mg、ARAの最終濃度は1.08g、総脂肪の2.4%)を実施例2と同一の供給源から正確に秤量し、水を加える前に乳児用調乳末と混合した。反応は、一定の撹拌状態で、水浴中で行った。CV又はROリパーゼのいずれかを添加することにより、脂肪加水分解を開始させた。調乳試料を0、15、及び30分で取り出し、上記記載の通りに、RP−HPLCによりDHA及びARAの加水分解について分析を行った。結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0155】
実施例4:乳児用調乳及び緩衝液中のTG−DHA又はTG−ARAに及ぼす固定化リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)リパーゼの酵素活性
乳児用調乳に補充される場合、TG−DHA又はTG−ARAに及ぼす固定化ROリパーゼの酵素活性を評価するために、牛乳を主成分とする乳児用調乳を、35mLの水に10gのENFAMIL(登録商標)末を溶解することにより調製した。反応を次の通りに行った。0.1MのTris緩衝液、pH7.7、及び基質(TG−DHA又はTG−ARA)を1mLのガラスバイアル(磁気撹拌棒を具備した)に添加した。リパーゼを添加することによって反応を開始した。バイアルを磁気撹拌器上に配置した37℃の水浴に移した。各試料50μlを、0、10、20、及び30分の異なる時点で採取し、900μlのHPLC移動緩衝液(30%の10mMリン酸アンモニウム緩衝液、pH3.0及び70%のアセトニトリル)を含有するHPLCバイアルに加えた。次いで試料を、上記記載の通りにRP−HPLCにより、DHA酸又はARA酸のいずれかについて分析した。
【0156】
TG−DHA及びTG−ARAの加水分解についてのリパーゼの特異的活性を、乳児用調乳内で放出された遊離DHA酸又はARA酸の量に基づいて計算し、その結果を表4に示す。
【表4】
【0157】
実施例5:動物及び手術手順
5.1 動物
スウェーデン農業大学(Swedish Agricultural University)、Department of Agricultural Biosystems and TechnologyのOdarslovにおいて大学が飼育したブタで、それぞれ約10±2kgの体重のものから得た12匹のブタ(9+3)で、実験を行った。動物を、06.00〜18.00(6am〜6pm)の時間帯で明るくし、18.00〜06.00(6pm〜6am)の時間帯で暗くした状態で、12時間の昼夜サイクルで維持した。ブタを、乾燥試料トラフ、飲用乳首及び一定の加熱ランプ(150W)を備えた代謝ケージ又は個別の畜舎に個々に収容した。ブタは畜舎内で自由に移動させ、互いに視認できるようにさせた。
【0158】
5.2 飼料
手術後及び前処置期間中に、ブタには、5000IE/kgのビタミンA、500IE/kgのビタミンD、及び85mg/kgのビタミンEと共に、17.5%の粗タンパク質、3.9%の粗繊維、3.5%の粗脂肪、及び5.2%の灰分を含有する標準ブタ用飼料(「53908 Vaxtill 320 P BK」、Lantmannen、スウェーデン)を与えた。ブタには、09:00〜10:00の時間帯(9am〜10am)及び17:00〜18:00の時間帯(5pm〜6pm)に、一日2回飼料を与えた(食餌ごとに体重の2.0%)。実験を開始する前の数日間、すなわち適応期間中に、ブタを乳児用調乳(NAN Pro 1 Gold Infant Formula、Nestle)を消費するよう訓練した。ブタは大量の液体を飲むことを好まないために、調乳は、適切な消費を可能にするために製造元により推奨されるような1:7の希釈に代えて、水道水で1:4の希釈として調製した。一日の栄養必要量は400kL/kg体重であり、これは40gの調乳末/kg体重に相当する。一日分の飼料を4つの部分に分け、第1番目の食餌を9amに開始し、その後3時間ごとに与え、最後の食餌を6amに与えた。100gのNAN調乳は、約27.7%の脂肪、9.6%のタンパク質、及び57.8%の炭水化物を含有する。
【0159】
5.3 DHA及びARAトリグリセリドで強化された乳児用調乳
製造元によると、NAN Pro 1 Gold(Nestle)は、栄養学的に完全であり、出生から健康な乳児用に特別に調合されている上質の乳漿優位型授乳開始乳児用調乳である。これは、脳及び視覚の発達を支援するために魚油も含有する。(http://www.nestlebaby.com/au/baby_nutrition/products/infant_formula/)
NAN Pro 1 Goldの成分:乳固形分、植物油(ダイズを含有する)、鉱物(クエン酸カルシウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸亜鉛、リン酸カルシウム、硫酸銅、硫酸マンガン、ヨウ化カリウム、セレン酸ナトリウム)、オメガLCPUFA(魚油から得たDHA、AA)、乳化剤(ダイズレシチン)、ビタミン類[アスコルビン酸ナトリウム(vit C)、d−lアルファトコフェリル酢酸(vit E)、ナイアシンアミド(ナイアシン)、パントテン酸カルシウム、レチニル酢酸(vit A)、チアミン硝酸塩(vit B1)、ピリドキシン塩酸塩(vit B6)、リボフラビン(vit B2)、葉酸、フィロキノン(vit K1)、ビオチン、コレカルシフェロール(vit D3)]、シアノコバラミン(B12)、L−ヒスチジン、タウリン、イノシトール、ヌクレオチド(シチジン5’−一リン酸、ウリジン5’−一リン酸、アデノシン5’−一リン酸、グアノシン5’−一リン酸)、L−カルニチン、培養物(ビフィダス)。
以下の表5は、これら実験における使用のための乳児用調乳及びブタ用調乳と共に、母乳及び乳児用調乳
*の脂質組成を概説する。
【表5】
NAN調乳中のTG−DHA及びTG−AAの全濃度は0.22%であり、これは1%の推奨レベルより低い。したがって、NAN調乳を、魚油から得たTG−DHA及びTG−AAで強化し(NuCheck(http://www.nu−chekprep.com、〜40%のTG−DHA及びTG−ARA)、それぞれ1%のTG−DHA及び2%のTG−DHAの最終濃度に到達させた。
【0160】
5.4 膵外分泌機能不全(EPI)の誘発のための膵管結紮術
6〜8週齢の12+2匹の幼若ブタでEPI誘発手術を行った。EPIは、一般的には術後3〜4週間で十分に発症する。完全な膵機能不全の発症を、成長停止(最小限の体重増加又は体重増加なし)及び/又は脂肪便の発症によって確認した。
【0161】
実施例6:実験計画、手順
6.1 試験計画
試験は3つの期間:適応、対照、及び試験を包含した。7日間の適応期間中に、ブタは、TG−DHA及びTG−ARAで強化された乳児用調乳を飲むよう訓練された。7日間の対照期間中には、ブタはTG−DHA及びTG−ARAで強化された乳児用調乳を与えられ続けた。7日間の試験期間には、ブタは、(a)加水分解されていない、(b)CVリパーゼで前加水分解された、又は(c)ROリパーゼで前加水分解された、のいずれかのTG−DHA及びTG−ARAで強化された乳児用調乳を与えられた。調乳消費を毎日測定し、糞便試料を各試験期間の最後の3日間採集し(72時間の採集)、血液試料を対照及び試験期間の7日目に採集した。
【0162】
6.2 リパーゼ投与量
リパーゼの用量及び前加水分解時間を、インビトロの結果(実施例3)及びブタの1日の栄養必要量に基づいて決定した。リパーゼRO又はCV(〜1300U/gの総脂肪)と混合したNAN調乳を37℃で15分間振蕩しながらインキュベートした。
提案された調合調製物及びリパーゼ混合物:
−11〜14kgの範囲のブタの体重
−飼料必要量:40gの調乳末/kg体重
−一日必要量:500gの粉末/ブタ
−一日当たり4回の食餌
−125gの粉末/ブタ/食餌
食餌の調製:500gの粉末+1.5Lの水(1:4の希釈)
−初めに乾燥末を加える
−TG−PUFA油(7.5mLのDHA及び15mLのARA)を加え、十分に混合し、37℃の水浴から水道水を加え、十分に混合する。
−リパーゼ処理調乳については、CV又はROリパーゼ中で混合する
−水を加え、最終容量にする
−全てを37℃の水浴中で15分間混合する
−4つのバケツに分け、約600mLの調乳を各ブタに与える
【0163】
6.2.1 適応期間(7〜10日間)
適応期間前の約7〜10日間、ブタ12匹を代謝ケージ内に配置し、TG−PUFAで富化された調乳を飲むよう訓練した。適応期間の最初の朝に、朝の食餌前に体重を記録した。
【0164】
6.2.2 対照期間(7日間)
全ての選択されたブタに、乳児用調乳を、一日当たり4回、単一の食餌供給源として与えた。毎日の調乳消費の合計を、全実験中に測定した。対照期間の最初の日の朝に、朝の食餌前に体重を記録した。3×24時間の大便試料を、5日目〜7日目に採集した。血液試料を、この期間の最後の日に、食前1時間、食後1、2、及び3時間にて採集した。
【0165】
6.2.3 試験期間(7日間)
全ての選択されたブタに、TG−PUFA富化乳児用調乳を、一日当たり4回、単一の食餌供給源として与えた。毎日の調乳消費の合計を、全実験中に測定した。試験期間の最初の日の朝に、朝の食餌前に体重を記録した。3×24時間の大便試料を、5日目〜7日目に採集した。血液試料を、この期間の最後の日に、食前1時間、食後1、2、及び3時間にて採集した。
【0166】
この期間の開始前に、体重及び調乳を飲もうとする意欲に基づいて、ブタを以下の3つの群に無作為割り付けした。
1)EPIブタの3分の1(n=4)にROリパーゼで前加水分解した調乳を与えた
2)EPIブタの3分の1(n=4)にCVリパーゼで前加水分解した調乳を与えた
3)EPIブタの3分の1(n=4)に調乳のみを与えた
調乳及びリパーゼ混合物の調製は、上記段落[00201]([0157])に記載した。
【0167】
6.3 陽性反応の基準
2%のTG−ARA及び1%のTG−AAで補充された調乳のみを与えられたEPIブタと比較する場合、糞便中のLCPUFAの著しい減少、脂肪吸収係数(%CFA)の増加、及び血漿LCPUFAの濃度の増加が認められた。
6.4データ分析
【0168】
個々のデータは、これらが発生した時点で記録した。スチューデントのt−検定を使用して、統計分析を行った。差は、p<0.05の場合、有意であるとみなされた。
【0169】
実施例7:RO及びCVリパーゼは、EPIブタにおいて脂肪酸吸収を改善する
十分に確立された外科的モデルである膵外分泌機能不全(EPI)を有するブタを、膵外分泌機能に欠陥がある、ヒトの早期産児又は満期産児を模倣するモデルとして使用した。EPI外科的ブタモデルを本質的に実施例5及び実施例6に記載されている通りに使用して、非加水分解乳児用調乳と比較した時のCVリパーゼ又はROリパーゼで前加水分解された乳児用調乳の脂肪酸吸収に及ぼす作用を評価した。EPIブタは10週齢(+/−2週)であり、これは、ヒトの乳児の生後約6ヶ月に相当する。ブタに、魚油(NuCheck(http://www.nu−chekprep.com、〜40%のTG−DHA及びTG−ARA)から得た2%のARAトリグリセリド(TG−ARA)及び1%のDHAトリグリセリド(TG−DHA)で富化されたNestle(NAN Pro 1 Gold)調乳を与えた。食餌供給は、一日当たり4回、3時間ごとに行った。前加水分解された調乳を受容するブタの群において、調乳を、CVリパーゼ又はROリパーゼと37℃で混合することにより、供給前15分に前加水分解した。実験の持続時間は1週間であり、その後、糞便中のLC−PUFA濃度、血漿のLC−PUFAの吸収、及び組織(網膜、心臓、肝臓、腎臓、赤血球、脳、及び脂肪)中のLC−PUFAの集積を分析した。
【0170】
図22Aに示すように、CVリパーゼ又はROリパーゼで前加水分解された調乳を与えられたEPIブタは、大便重量が有意に減少した(CV:>60%の減少、p<0.001;RO:〜30%の減少、p<0.05)。CVリパーゼ又はROリパーゼによる脂肪の前加水分解はまた、対照EPIブタと比較して糞便中の総脂肪含量を有意に低下し(
図22B)、対照と比較して脂肪吸収係数(%CFA)を有意に増加させ(
図22C)、ここで、%CFA=(脂肪摂取量(g/24時間)−糞便中の脂肪(g/24時間))/(脂肪摂取量(g/24時間))、n=3/群、p=0.002(CV対対照)、及びp=0.003(RO対対照)である。対照と比較するとき、CVリパーゼ又はROリパーゼのいずれかによる前加水分解は、糞便中のARA(それぞれ36%及び65%の減少)、EPA(いずれの酵素でも78%の減少)、及びDHA(それぞれ68%及び60%の減少)の有意な減少を引き起こした(
図23)。これらデータは、CV又はROリパーゼによる調乳の前加水分解が、総脂肪、ARA、DHA、及びEPAの糞便中のレベルを減少させ、これがω−3、ω−6、及び総脂肪酸の吸収における改善を示唆していることを示す。
【0171】
加えて、前加水分解された調乳を与えられたブタは、対照ブタと比較して、7日間の供給後にARA及びDHAの血漿及び組織レベルの有意な増加を有した。これら試験について、対照及びCVリパーゼ群は4匹のブタからなり、ROリパーゼ群は3匹のブタからなった。食餌前の血漿飼料は、処置から7日後、一晩の絶食の後に採取した。ARA及びDHAの血漿レベルは、非加水分解調乳を与えられたブタと比較して、ROリパーゼで前加水分解された調乳を与えられたブタで有意に高かった(それぞれ60%及び30%、p<0.05)(
図24)。ARAの血漿レベルもまた、非加水分解調乳を与えられたブタと比較して、CVリパーゼで前加水分解された調乳を与えられたブタで有意に高かった(40%、p<0.05)(
図24)。ARA及びDHAレベルは、非加水分解調乳を与えられたブタと比較して、ROリパーゼで前加水分解された調乳を与えられたブタの網膜(
図25A)及び脂肪組織(
図25B)でも有意に増加した(p<0.05)。ARAの網膜レベルは、非加水分解調乳を与えられたブタと比較して、CVリパーゼで前加水分解された調乳を与えられたブタでも有意に高かった(p<0.05)(
図25A)。CV又はROリパーゼで前加水分解された調乳を与えられたブタにおいて、ARAレベルは、非加水分解調乳を与えられたブタと比較して、ブタの心臓(
図26A、それぞれ60%及び20%の増加)及び腎臓(
図26B)でも有意に増加した(p<0.05)。DHAレベルは、皮加水分解調乳を与えられたブタと比較して、CVリパーゼで前加水分解された調乳を与えられたブタの心臓で有意に増加した(60%、p<0.05)(
図26A)。肝臓、赤血球、及び脳では最小限の変化があったか、又は変化がなく、これは、この試験の処置の比較的短い持続時間(7日間)によって説明することが可能である。
【0172】
実施例8:「ティーバッグ」中の固定化リパーゼによる乳児用調乳中のTG−DHA及びTG−ARAの加水分解
リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)(RO)リパーゼをアクリルビーズに共有結合させ、ティーバッグに似た器具内に収容した。Enfalac乳児用調乳(25g)を37℃で水道水(88mL)と合わせた。100mLの乳児用調乳及び100、500、1000、又は2000mgの固定化ROリパーゼを含有するティーバッグを含むガラス瓶内で反応を行った。各反応物を、瓶を倒置しながら37℃で30分間インキュベートした。試料を0、1、2、3、4、5、10、20、及び30分の時点で採取した。逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により、試料をDHA及びARAについて分析した。
【0173】
固定化ROリパーゼの各濃度において、DHA及びARAの加水分解率は、固定化ROリパーゼの量が増加するにつれて増加した(
図27)。これらデータは、調乳をリパーゼで前加水分解するためのティーバッグ器具の実用可能性を裏付けている。
【0174】
実施例9:カートリッジ内の固定化リパーゼによる乳児調乳中のTG−DHA及びTG−ARAの加水分解
リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)(RO)リパーゼ及びクロモバクテリウム・ビスコサム(Chromobacterium viscosum)(CV)リパーゼを、マクロ多孔質アクリルポリマービーズ(Immobeads(商標);ChiralVision)に固定化した。ビーズの1グラム当たり約200mgのROリパーゼを使用した。CVリパーゼコーティングビーズの試料を照射し(CVI)、固定化リパーゼの効力に及ぼす照射の効果を決定した。約1.7gの各ビーズ調製物(RO、CV、及びCVI)を約5mLの床容積を有するカラムに充填した。DHA及びARAトリグリセリドを含有する乳児用調乳を、75mL/時の流速でカラム上を通過させた。カラム溶出物を、HPLCによりDHA及びARAの加水分解について分析した。CV、CVI、及びROリパーゼによるDHA及びARAトリグリセリドの加水分解%を表6に示す。
【表6】
【0175】
実施例10:ROリパーゼ対パンクレアチン
リゾプス・オリゼー(Rhizopus oryzae)(RO)リパーゼは、膵臓リパーゼ、プロテアーゼ、及びアミラーゼの混合物を含有するブタパンクレアチン(Zenpep(登録商標))よりもDHA及びARAトリグリセリドに対する大きな活性を示した。1.4mLの乳児用調乳を、100uLのリパーゼ(パンクレアチン又はROリパーゼのいずれか)及び100uLのDHA及びARAの各々のトリグリセリドと混合した。反応物を37℃で15分間インキュベートした。試料を0、1、2、4、6、8、10、及び15分の時点で採取し、DHA及びARAについてRP−HPLCで分析した。DHA(
図28A)及びARA(
図28B)トリグリセリドは、ROリパーゼで経時的に加水分解されたが、パンクレアチンによって加水分解されなかった。
【0176】
実施例11:6週間試験:固定化リパーゼにより前加水分解された調乳によるブタの長期栄養供給
6匹の健常なブタ及び外科的に誘発された膵外分泌機能不全(EPI)を有する20匹のブタ(実施例5を参照)に、2週間の適応/対照期間、その後の6週間の試験期間を受けさせた(
図29)。適応期間中には、全てのブタに、NAN Pro 1 Gold乳児用調乳(Nestle)を与えた(「IF」)。試験期間中には、健康なブタ(「Healty」)及びEPIを有するブタ(「EPI」)の6匹に、TG−LCPUFAで強化された乳児用調乳を与え(実施例5及び実施例6を参照)、EPIを有するブタの7匹に、「ティーバッグ」器具を使用して固定化RO酵素で前加水分解されているTG−LCPUFA強化乳児用調乳を与えた(「EPI+iRO」)。残りのブタは、様々な理由、例えば完全なEPIを外科的に誘発することの失敗のために、試験から外された。
【0177】
前加水分解については、2リットルのNAN Pro 1 Gold(Nestle)乳児用調乳を、37℃の水1.5リットルを50mg/kgのTG−DHA及び100mg/kgのTG−ARAで強化された粉末調乳500gと混合することにより調製した(実施例5、セクション5.3を参照)。ビーズ上に固定化されたROリパーゼを含有する5つのティーバッグ様器具(各「ティーバッグ」中に1グラムの固定化リパーゼを含有する)を、2リットルの調乳に加え、磁気撹拌器を一定混合速度で使用して、室温で15分間混合した。これは、強化調乳中の総脂肪(60U/gの総脂肪)の150グラム当たり9,000単位(オリーブ油に対して測定された)の固定化ROリパーゼに相当する。加水分解の前に、強化調乳は17.4ミリモル/リットルの非エステル化脂肪酸を含有した。加水分解後には、この調乳は、107.6ミリモル/リットルの非エステル化脂肪酸を含有した。
【0178】
食餌消費を毎日測定した。血液及び大便試料を、適応期間の終わり(「基底」)、処置期間の1、4、及び6週間後に採集した。基底試料については、糞便を48時間にわたって(2×24時間)採集した。1、4、及び6週の試料については、糞便を72時間にわたって(3×24時間)採集した。処置期間の完了時に、吸収及び安全性試験用に器官及び組織を採集した。
【0179】
前加水分解調乳は、食餌摂取、成長、器官(肉眼的検査による)、又は一般的な健康状態において投与による変化がなく耐用性は良好であった。ブタを6週間試験の終わりに屠殺したとき、肉眼による肝臓検査により脂肪肝の発症はなかった。
【0180】
6週間後に、前加水分解されていないTG−LCPUFA強化調乳を与えられたEPIブタ(EPI)と比べたとき、前加水分解調乳を与えられたEPIブタ(EPI+iRO)において、赤血球中のARA(
図30A)及びDHAレベル(
図30B)で統計的に有意な増加が存在した(それぞれ20%及び36%)。ARA及びDHAの赤血球レベルは、健常なブタと前加水分解調乳を6週間与えられたEPIブタの間で有意差は認められなかった。
【0181】
表7に示すように、前加水分解調乳を6週間与えられたEPIブタにおいて、トリグリセリド、コレステロール、HDL、及びLDLの血漿レベルで統計的に有意な増加が存在した。トリグリセリド、コレステロール、HDL、及びLDLの血漿レベルは、健常なブタと6週間にわたって前加水分解調乳を与えられたEPIブタとの間で有意な差は認められなかった。
【表7】
【0182】
表8に示すように、前加水分解調乳を6週間にわたって与えられたブタは、ビタミンA及びビタミンEの血漿レベルを増加させたが、ビタミンDについては、有意差は認められなかった。EPIとEPI+iRO群との間でビタミンEの血漿レベルにおいて統計的な有意な差が存在した(p<0.05)。ビタミンAについては、EPIと健常群との間で統計的に有意な差が存在したが(p<0.05)、EPI+iROと健常群との間では存在しなかった。
【表8】