(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772215
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ドアロック装置対
(51)【国際特許分類】
E05B 77/34 20140101AFI20201012BHJP
E05B 85/02 20140101ALI20201012BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
E05B77/34
E05B85/02
B60J5/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-101797(P2018-101797)
(22)【出願日】2018年5月28日
(65)【公開番号】特開2019-206819(P2019-206819A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】多賀 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 亮也
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−140811(JP,A)
【文献】
特開2013−83086(JP,A)
【文献】
特開2008−248590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
10/00−10/90
B60R 13/06
E05B 77/34
85/02
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に適用される右ドアロック装置および左ドアロック装置からなるドアロック装置対であって、
前記右ドアロック装置および前記左ドアロック装置はそれぞれ、
ハウジングと、
前記ハウジングから突出する筒状のカプラー壁と、
前記ハウジングにおける前記カプラー壁の周囲に設けられた平坦部と、
前記平坦部に固定されて前記カプラー壁の外周壁を巻いて覆う防水シールと、
を有し、
前記防水シールは、
内周面および外周面と、
一端で前記内周面とともに鋭角を形成して前記外周面とともに鈍角を形成する斜面と、
を有し、
前記内周面は、前記カプラー壁の前記外周壁に対して一周当接してさらに前記斜面に当接するように設けられ、
前記右ドアロック装置および前記左ドアロック装置における前記防水シールは、それぞれ同形状であって前記カプラー壁に対して同方向に巻かれていることを特徴とするドアロック装置対。
【請求項2】
請求項1に記載のドアロック装置対において、
前記カプラー壁は、
前記平坦部からの高さが一定の筒部と、
前記カプラー壁の全周に対して180度以下であって前記筒部からさらに突出する突出部と、
を有することを特徴とするドアロック装置対。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドアロック装置対において、
前記右ドアロック装置および前記左ドアロック装置における前記平坦部は、それぞれ同形状で前記防水シールの固定面に沿う形状に設けられていることを特徴とするドアロック装置対。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のドアロック装置対において、
前記ハウジングは複数設けられ、
前記平坦部は複数の前記ハウジングにわたって形成されていることを特徴とするドアロック装置対。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のドアロック装置対において、
前記防水シールにおける前記一端の鋭角部は、40度〜50度であることを特徴とするドアロック装置対。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のドアロック装置対において、
前記防水シールの他端の内周側角部は、前記一端の鈍角部と一致していることを特徴とするドアロック装置対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される右ドアロック装置および左ドアロック装置からなるドアロック装置対に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のドアロック装置はドアを閉じた際に車両のストライカを係合保持し、ドアを開く際にストライカを解放する装置である。車両の右ドアの中には右ドアロック装置が設けられ、左ドアの中には左ドアロック装置が設けられる。右ドアロック装置と左ドアロック装置とは左右対称構造となっている。
【0003】
ドアロック装置はオートロック、ルームランプなどの機能のためカプラーを介して電気信号の入出力を行う。カプラーはドア内のパネルに対して取り付けられ、パネルとの間には防水シールが設けられる。防水シールはドアロック装置のハウジングにおける平坦部に固定されてカプラーの外周壁を覆う。特許文献1に記載されている防水シールでは、矩形のシール材に対して中央部に直線スリットを設けておき、該スリットを広げてカプラーの周囲に外挿している。このような防水シールによれば、元となる広い面積のシール材から防水シールとなる部分を切り出す際に無駄がなく、歩留まりが高い。特許文献1に記載のカプラーは四隅が丸い矩形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5115442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カプラーの形状は円形であることが多い。特許文献1に記載の防水シールを円形のカプラーに適用する場合には、スリットを広げて円形外壁に合わせこむ必要があり、作業性が悪い。また、スリット部が広がりすぎて切れてしまわないように、ある程度の余裕をもった強度および寸法が必要である。一方、防水シールを円形に形成すると歩留まりが悪い。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、防水シールをハウジングに固定する際の作業性がよく、しかも防水シールの歩留まりが高いドアロック装置対を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるドアロック装置対は、車両に適用される右ドアロック装置および左ドアロック装置からなるドアロック装置対であって、前記右ドアロック装置および前記左ドアロック装置はそれぞれ、ハウジングと、前記ハウジングから突出する筒状のカプラー壁と、前記ハウジングにおける前記カプラー壁の周囲に設けられた平坦部と、前記平坦部に固定されて前記カプラー壁の外周壁を巻いて覆う防水シールと、を有し、前記防水シールは、内周面および外周面と、一端で前記内周面とともに鋭角を形成して前記外周面とともに鈍角を形成する斜面と、を有し、前記内周面は、前記カプラー壁の前記外周壁に対して一周当接してさらに前記斜面に当接するように設けられ、前記右ドアロック装置および前記左ドアロック装置における前記防水シールは、それぞれ同形状であって前記カプラー壁に対して同方向に巻かれていることを特徴とする。
【0008】
前記カプラー壁は、前記平坦部からの高さが一定の筒部と、前記カプラー壁の全周に対して180度以下であって前記筒部からさらに突出する突出部と、を有してもよい。
【0009】
前記右ドアロック装置および前記左ドアロック装置における前記平坦部は、それぞれ同形状で前記防水シールの固定面に沿う形状に設けられていてもよい。
【0010】
前記ハウジングは複数設けられ、前記平坦部は複数の前記ハウジングにわたって形成されていてもよい。
【0011】
前記防水シールにおける前記一端の鋭角部は、40度〜50度であってもよい。
【0012】
前記防水シールの他端の内周側角部は、前記一端の鈍角部と一致していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるドアロック装置対は、車両に適用される右ドアロック装置および左ドアロック装置からなる。右ドアロック装置および左ドアロック装置における防水シールは、それぞれ同形状であってカプラー壁に対して同方向に巻かれている。したがって、防水シールをハウジングに固定する際の作業性がよく、しかも防水シールの歩留まりが高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかるドアロック装置対を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、シール材からカプラーシールを切り出す工程の説明図であり、(a)はその第1例の説明図であり、(b)はその第2例の説明図である。
【
図4】
図4は、ドアロック装置対の一部拡大側面図であり、(a)は右ドアロック装置の一部拡大側面図であり、(b)は左ドアロック装置の一部拡大側面図である。
【
図5】
図5は、カプラーシールを取り外した状態におけるドアロック装置対の一部拡大側面図であり、(a)は右ドアロック装置の一部拡大側面図であり、(b)は左ドアロック装置の一部拡大側面図である。
【
図6】
図6は、カプラーシールを取り外した状態におけるドアロック装置対の一部拡大斜視図であり、(a)は右ドアロック装置の一部拡大斜視図であり、(b)は左ドアロック装置の一部拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、平坦部におけるガイド凸部およびその周辺の斜視図である。
【
図8】
図8は、カプラーおよびカプラーシールの周辺を斜め後方から見たドアロック装置対の斜視図であり、(a)は右ドアロック装置の斜視図であり、(b)は左ドアロック装置の斜視図である。
【
図9】
図9は、突起部が取付孔に挿入された状態の右ドアロック装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかるドアロック装置対の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態であるドアロック装置対10を示す斜視図である。ドアロック装置対10は車両の右ドアに適用される右ドアロック装置10Rおよび左ドアに適用される左ドアロック装置10Lからなる。右ドアロック装置10Rと左ドアロック装置10Lとはほぼ左右対称に構成されているが、一部左右非対称に構成されている。以下、右ドアロック装置10Rと左ドアロック装置10Lで左右対称形状の要素には、右ドアロック装置10Rにかかるものの符号にRを付し、左ドアロック装置10Lにかかるものの符号にLを付して表記する。右ドアロック装置10Rと左ドアロック装置10Lで同形状またはほぼ同形状の要素には符号R、Lを付さないで表記する。まず、右ドアロック装置10Rについて説明する。
【0017】
右ドアロック装置10Rは、ドアラッチ装置12Rと、ケース(ハウジング)14Rと、カバー(ハウジング)16Rと、外部機器との電気的な接続のためのカプラー18と、防水カバー(ハウジング)20Rと、カプラーシール(防水シール)22と、ラッチシール24と、ケーブルカバー26Rとを備える。
【0018】
防水カバー20Rは、右ドアロック装置10Rの上面および前面においてケース14Rとカバー16Rとの境部を覆っている。カプラーシール22はカプラー18の周囲を覆っている。ラッチシール24はドアラッチ装置12Rの上部および両側方と、内面側のケーブルカバー26Rに至るまでの部分を覆っている。
【0019】
ここではケース14Rとカバー16Rとは名称を区別しているが、両者は一体的に組み合わされて内部部品を覆うハウジングであり、さらに防水カバー20Rについても外殻部材としてのハウジングである。ケース14Rは外側ハウジングとも呼び得る。カバー16Rは内側ハウジングとも呼び得る。防水カバー20Rは上側ハウジングとも呼び得る。
【0020】
ドアラッチ装置12Rは、車両本体に設けられたストライカと係脱して車両のドアを閉じた状態または開放可能な状態にする装置である。ドアラッチ装置12Rは、ケース14Rにおける車両後側の部分に固定されており、この状態でケース14Rによって支持される。このようなドアラッチ装置12Rは、ボディ12Raと、カバープレート12Rbと、ラッチ機構12Rcとを備える。ラッチ機構12Rcは、ボディ12Raに設けられ、カバープレート12Rbによって覆われている。カバープレート12Rbは、進入溝12Rdを有し、進入溝12Rdが車両内外方向にラッチ機構12Rcと通じる状態となるようボディ12Raに取り付けられる。進入溝12Rdは、車両のドアが閉じられる際に当該車両のストライカが進入する溝である。
【0021】
カプラー18はハーネスコネクタとの電気的な接続部分であり、カバー16Rの側面から車室内側に突出する円筒型のカプラー壁18aと、カプラー壁18aの内側で立設している複数のカプラーピン18bとを有する。ハーネスコネクタはカプラー壁18aの内側におけるコネクタ溝18cに嵌合される。カプラー壁18aの側面視形状は円形以外にも楕円形や四隅が滑らかに丸まった矩形などの非角型の筒状体であってもよい。カプラー壁18aは車室内側に向かって突出しており、後述するように取付孔42a(
図9参照)に挿入される。
【0022】
右ドアロック装置10Rは内部にモータおよびスイッチを備えており、これらのモータおよびスイッチに対して複数のターミナルが接続されて回路が形成されている。ターミナルの端部がカプラーピン18bとして形成されている。
【0023】
図2に示すように、組立前のカプラーシール22は断面略正方形の長尺形状であって、内周面22aと、外周面22bと、シール面(固定面)22cと、パネル当接面22dとを有する。カプラーシール22の一端には斜面22eが形成されている。カプラーシール22における斜面22eが形成されている端部を巻き終わり端とも呼び、他端を巻き始め端とも呼ぶ。斜面22eは内周面22aとともに鋭角部22fを形成し、外周面22bとともに鈍角部22gを形成している。鋭角部22fの角度θ1は45度、鈍角部θ2は135度である。カプラーシール22は可撓性によって湾曲可能な防水シールである。カプラーシール22には図示しない台紙がシール面22cにあらかじめ貼られており、右ドアロック装置10Rの組立工程において該台紙を剥がすことによりシール面22cが露呈され、その粘着性によりカプラー壁18aの周囲への貼り付けが可能となる。なお、後述するようにカプラーシール22は左ドアロック装置10Lに対しても共通に適用される。
【0024】
図3(a)に示すように、カプラーシール22は、例えば1枚の広い面積のシール材30から切り出される。すなわちシール材30を多段の平行線に沿って切り出して長尺材を作り、さらにその中央部を45度にカットすることより、1本の長尺材あたり同形状の2本のカプラーシール22が得られる。このようにしてシール材30は廃棄される部分がなく全面積をカプラーシール22として利用でき、歩留まりが高い。また、特許文献1に記載の防水シールのようにスリットを設ける必要がなく、製作が簡便である。なお、このようにして切り出されるカプラーシール22は同形状となるが、ここでいう同形状とは厳密な意味ではなく、カプラー18に対する防水性を発揮させることができればよく、幅、長さ、角度に多少の誤差があってもよいことはもちろんである。次の
図3(b)の場合も同様である。
【0025】
また、
図3(b)に示すように、ロール32に巻かれた相当に長いシール材34を利用することも可能である。すなわち、シール材34を連続的に45度にカットすることによって得られる長尺平行四辺形型の部材をカプラーシール22として利用してもよい。この場合もシール材34で廃棄される部分がなく、歩留まりが高い。
【0026】
図4(a)に示すように、カプラーシール22は、内周面22aがカプラー壁18aの外周壁18aoに当接しながら該カプラー壁18aのまわりを1周し、さらに内周面22aが斜面22eにし、この部分で重複するように固定されている。
【0027】
斜面22eは、カプラー壁18aの下方に位置しているとともに、外周壁18aoに対して接線方向で斜め下方を指向している。これにより特に、上方からの被水に対して効果的である。鋭角部22fの角度は45度であることから、斜面22eを外周壁18aoの接線方向としやすい。鋭角部22fの角度が大きすぎると重複部分でカプラーシール22が巻きづらく、また鋭角部22fの角度が小さすぎると斜面22eが長くなる。このような観点から鋭角部22fの角度は40度〜50度の範囲が好ましい。
【0028】
カプラーシール22は、巻き始め端の内周面22a側の角部から、巻き終わり端の鋭角部22fまでカプラー壁18aの周囲を略390度巻いており、概念的には数字の「9」字形状をなしている。カプラーシール22は巻き始め端の内周面22a側の角部が斜面22eの鈍角部22gと一致している。これにより、カプラー壁18aは十分にカプラーシール22で囲まれて防水性が得られることになり、しかもカプラーシール22は必要なだけの長さに抑えられ、無駄がない。内周面22aとは斜面22eとは重複的になっていることから鋭角部22fには多少の隙37があっても構わない。
【0029】
図5(a)および
図6(a)に示すように、カバー16Rの側面におけるカプラー壁18aの周囲には平坦部36Rが設けられている。平坦部36Rはカプラーシール22のシール面22cが貼り付けられて固定される部分である。平坦部36Rは、防水カバー20Rの一部である上平坦部36Raと、カバー16Rの一部である下平坦部36Rbとにわたって形成されている。なお、
図5では防水カバー20R,20Lの識別が容易になるようにドット地で示している。上平坦部36Raと下平坦部36Rbとの2か所の境界38Ra,38Rbの隙間は十分に狭く、実質的には隙間寸法が0に形成されている。境界38Ra、38Rbは、円形のカプラー壁18aに対して略接線方向に設けられ、かつカプラー壁18aから離間するにしたがって下方または斜め下方を指向している。
【0030】
上平坦部36Raはカプラー壁18aの上方半分と前方とを囲うように形成されており、下平坦部36Rbはその残余の部分を囲うように形成されている。上平坦部36Raはカプラーシール22を固定するのに十分な長さがある。上平坦部36Raはカプラー壁18aを略180度にわたって囲っている。
【0031】
下平坦部36Rbは、カプラー壁18aの
図5(a)の下方から右側方にかけての巻き始め平坦部40Raと、下方の巻き終わり平坦部40Rbと、これらの境界に設けられた直線状のガイド凸部40cとを有する。カプラーシール22は、巻き始め平坦部40Raから巻き始められ、上平坦部36Raを通り、巻き終わり平坦部40Rbまで巻かれる。
【0032】
巻き始め平坦部40Raはカプラーシール22の巻き始め端を安定的に固定するのに十分な長さが確保されている。同様に、巻き終わり平坦部40Rbは、カプラーシール22の巻き終わり端を安定的に固定するのに十分な長さが確保されている。巻き始め平坦部40Raと巻き終わり平坦部40Rbとの境界を斜面22eの中間点とすると、両者はそれぞれカプラー壁18aを略90度にわたって囲っておりバランスがよい。
【0033】
図7に示すように、ガイド凸部40cは細くかつ低い突形状であって、カプラーシール22の巻き始め端における内周面22aと、巻き終わり端における斜面22eとのガイドとなる。
【0034】
図8(a)および
図9に示すように、カプラー壁18aは、平坦部36Rからの高さが一定の筒部18aaと、筒部18aaからさらに突出する突出部18Rabとを有する。筒部18aaは、平坦部36Rからの高さが、カプラーシール22の非圧縮時厚みよりもわずかに高くなっている。突出部18abは、カプラー壁18aにおける下部にあり、該カプラー壁18aの全周に対して略140度の範囲にわたって設けられている。すなわち、カプラー壁18aの中心を基準として車両後方を0度としたとき、時計方向に向かって略45度までは緩傾斜で高くなり、略120度まではその高さが維持され、略140度までは急傾斜で低くなっている。突出部18abの最も高い箇所は、カプラー壁18aの真下部を含み、その高さは平坦部36Rを基準として、カプラーシール22の非圧縮時厚みと取付パネル42の厚みとの合計厚みよりもわずかに高くなっている。
【0035】
カプラー壁18aを取付パネル42の取付孔42aに挿入する際、このような突出部18abがガイドとなり、挿入作業が容易となる。例えば、右ドアロック装置10Rをやや斜めにしておき、まず突出部18abを取付孔42aの縁に当て、それから右ドアロック装置10Rを立てることにより筒部18aaがわずかに取付孔42aに挿入される(
図9参照)。この後、所定の締結操作によってカプラーシール22が圧縮され、防水機能を奏するようになる。
【0036】
このような突出部18abは、上方から視認されやすいように、上方部は避けて下方または側方に設けるとよい。また、突出部18abは、ガイド機能を奏するためにはカプラー壁18aの全周に対して180度以下であるとよい。突出部18abは、両端の傾斜面を介して筒部18aaの一定高さ部とつながっていることから、カプラー壁18aは滑らかにガイドされる。
【0037】
ここまで右ドアロック装置10Rについて説明した。
図1(a)、
図4(a)、
図5(a)、
図6(a)、
図8(a)は右ドアロック装置10Rの説明図であるのに対し、左ドアロック装置10Lについては、対応する視点で順に
図1(b)、
図4(b)、
図5(b)、
図6(b)、
図8(b)に示している。上記のとおり左ドアロック装置10Lで、右ドアロック装置10Rにかかるものと左右対称形状の要素には符号Rの代わりに符号Lを付して図示しているので、個別の要素についての詳細な説明は省略する。左ドアロック装置10Lは右ドアロック装置10Rと同様の作用効果を有する。
【0038】
右ドアロック装置10Rと左ドアロック装置10Lとでは、カプラー壁18aに対する防水手段としてカプラーシール22が共通に用いられているので、以下、カプラーシール22および該カプラーシール22が貼り付けられる平坦部36Rおよび平坦部36Lについて説明する。カプラー壁18aは車室内側に突出していることから、右ドアロック装置10Rでは左向きに、左ドアロック装置10Lでは右向きに突出していることになる。
【0039】
図4(a)および
図4(b)に示すように、右ドアロック装置10Rおよび左ドアロック装置10Lにおけるカプラーシール22は共通つまり同形状である。これによりカプラーシール22は1種類で済むことから部品管理が容易となり、また、左右対称部品を用意する必要がないことからカプラーシール22の製作工程も1工程で済み、結果としてコストダウンを図ることができる。カプラーシール22は右ドアロック装置10Rおよび左ドアロック装置10Lで同形状であるが、
図3に基づいて説明したように多少の誤差を含みうる。
【0040】
右ドアロック装置10Rおよび左ドアロック装置10Lで、カプラーシール22はカプラー壁18aに対して同方向に巻かれている。つまり、巻き始め端を基準とすれば反時計方向に巻かれている。これにより、作業者は右ドアロック装置10Rと左ドアロック装置10Lとの区別をほとんど意識することなく、カプラーシール22の巻き付け固定作業をすることができ、しかもカプラーシール22は特許文献1に記載の防水シールのようにスリットを広げるなどの前処理が不要であり、作業性がよい。さらに、カプラーシール22は単純形状で、スリットのような脆弱部がないため、形状的に過度に余裕をもたせる必要がない。
【0041】
図5(a)および
図5(b)に示すように、右ドアロック装置10Rと左ドアロック装置10Lとでは、平坦部36Rと平坦部36Lとが側面視で同形状となっている。換言すれば、右ドアロック装置10Rと左ドアロック装置10Lとでは、平坦部36Rと平坦部36Lとが左右非対称形状である。これは、カプラーシール22の貼り付け形態に合わせているためである。平坦部36Rの上平坦部36Raと平坦部36Lの上平坦部36Laとは左右対称形状になっている。
【0042】
平坦部36Rの下平坦部36Rbと平坦部36Lの下平坦部36Lbとは、基本的に同形状であるが、後者は前者に対してやや時計方向に回転シフトした形状に設けられている。これにより、巻き始め平坦部40Laはカプラーシール22の巻き始め端を安定的に固定するのに十分な長さが確保されている。同様に、巻き終わり平坦部40Lbは、カプラーシール22の巻き終わり端を安定的に固定するのに十分な長さが確保されている。巻き始め平坦部40Laと巻き終わり平坦部40Lbとの境界を斜面22eの中間点とすると、両者はそれぞれカプラー壁18aを略90度にわたって囲っておりバランスがよい。
【0043】
このように、カプラー壁18aに対して左右対で共通のカプラーシール22を適用して、同方向に巻きつけるという防水手段は右ドアロック装置10Rと左ドアロック装置10Lとからなるドアロック装置対10に限らず、車両の左右でカプラー18を介して取付パネル42の取付孔42aに取り付ける電気装置対全般に適用することができる。
【0044】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
10 ドアロック装置対
10R 右ドアロック装置
10L 左ドアロック装置
14R ケース(ハウジング)
16R カバー(ハウジング)
18 カプラー
18a カプラー壁
18ao 外周壁
18aa 筒部
18ab 突出部
20R,20L 防水カバー(ハウジング)
22 カプラーシール(防水シール)
22a 内周面
22b 外周面
22c シール面(固定面)
22d パネル当接面
22e 斜面
22f 鋭角部
22g 鈍角部
30,34 シール材
36R,36L 平坦部
36Ra,36La 上平坦部
36Rb,36Lb 下平坦部
40c ガイド凸部
40Ra,40La 巻き始め平坦部
40Rb,40Lb 巻き終わり平坦部
42 取付パネル
42a 取付孔