(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772225
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】より一様な注入及びより少ない光学的損失を備える改善されたpコンタクト
(51)【国際特許分類】
H01L 33/14 20100101AFI20201012BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20201012BHJP
H01L 29/43 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
H01L33/14
H01L29/44 P
H01L29/46
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-146112(P2018-146112)
(22)【出願日】2018年8月2日
(62)【分割の表示】特願2017-102265(P2017-102265)の分割
【原出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2019-33258(P2019-33258A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2018年8月31日
(31)【優先権主張番号】61/556,343
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517152128
【氏名又は名称】ルミレッズ ホールディング ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】エプレル ヨン エドワルト
【審査官】
吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04447822(US,A)
【文献】
特開昭59−165473(JP,A)
【文献】
特開2010−171142(JP,A)
【文献】
特開2010−010591(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/125290(WO,A1)
【文献】
特開2010−056322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型層と、
p型層と、
前記n型層及び前記p型層の間の発光層と、
前記n型層に結合されたnパッドと、
前記p型層に結合されたpパッドと、
前記pパッドと前記p型層との間のpコンタクトと、
前記pコンタクトの一部を覆って延在した、前記発光層、前記p型層、及び前記pコンタクトを前記nパッドから分離する境界層であり、前記nパッド及び前記pパッドの各々の一部が当該境界層の上を延在するようにされた境界層と、
前記pコンタクトの周辺部にある電流阻止領域と、
前記pコンタクトの中央部と前記p型層との間に配置された材料であり、当該材料が前記電流阻止領域には存在しないようにされた材料と、
を有する発光装置。
【請求項2】
前記材料はNiOを含む、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記pコンタクトの前記電流阻止領域は、前記発光層にわたる電流注入の均一性を向上させるように機能する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記電流阻止領域が、前記pコンタクトの、前記電流阻止領域がない場合に最大電流注入を供給する領域に対応する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記pコンタクトが銀を有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記電流阻止領域が、前記pコンタクトの曲率半径より大きい曲率半径を持つ湾曲したコーナーを含む、請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
n型層と、
p型層と、
前記n型層及び前記p型層の間の発光層と、
前記n型層に結合されたnパッドと、
前記p型層に結合されたpパッドと、
前記pパッドと前記p型層との間のpコンタクトと、
前記pコンタクトの一部を覆って延在した、前記発光層、前記p型層、及び前記pコンタクトを前記nパッドから分離する境界層であり、前記nパッド及び前記pパッドの各々の一部が当該境界層の上を延在するようにされた境界層と、
前記pコンタクトの周辺部の周りに配置された透明な抵抗性コーティングと、
を有する発光装置。
【請求項8】
前記透明な抵抗性コーティングは、前記pコンタクトの電流阻止領域である、請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記透明な抵抗性コーティングは誘電体材料である、請求項7に記載の発光装置。
【請求項10】
前記透明な抵抗性コーティングが、前記pコンタクトの、前記透明な抵抗性コーティングがない場合に最大電流注入を供給する領域に対応する、請求項7に記載の発光装置。
【請求項11】
前記pコンタクトが銀を有する、請求項7に記載の発光装置。
【請求項12】
前記透明な抵抗性コーティングが、前記pコンタクトの曲率半径より大きい曲率半径を持つ湾曲したコーナーを含む、請求項7に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置の分野に関し、詳細には、抽出効率を高め、前記装置の発光領域にわたってより一様な電流分布を供給するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置の需要の大幅な増大、及びそれに対応する需要を満たすための競争の増大が、製造業者に、コストを減らす又はパフォーマンスを高める技術を探求させている。特に注目すべきなのは、発される光の質又は効率を高める技術は、或る競合企業の製品と他の競合企業の製品を区別するのに役立ち得ることである。
【0003】
図1は、Daniel A. Steigerwald、Jerome C. Bhat及びMichael J. Ludowiseに出されたUSP 6,828,596、"CONTACTING SCHEME FOR LARGE AND SMALL AREA SEMICONDUCTOR LIGHT EMITTING FLIp-CHIP DEVICES"に開示されているような従来技術の薄膜フリップチップ(TFFC)のInGaNの発光装置(LED)の例を図示しており、参照により本願明細書に盛り込まれる。
【0004】
この例の装置においては、n型層110とp型層130との間に発光層120が形成される。外部電源(図示せず)が、パッド160及び170に対する接続を介して装置に電力を供給する。pパッド160は、pコンタクト材料の移動を阻止する随意のガード層150を通して、pコンタクト140を介してp型層130に結合される。nコンタクト層170は、この例においては、n型層110に直接結合される。境界層180は、nコンタクト層170及びn型層110をp型層130及びpコンタクト140から絶縁する。
【0005】
pコンタクト140は、電流の流れに対して相対的により高い抵抗を持つp型層130を通る電流の一様な分布を促進するよう大きな面積にわたって設けられる。n型層110は、高い抵抗を示さず、従って、nコンタクトは、装置の面積の10%以下であり得るより小さな面積しか覆わない。pコンタクト140は、好ましくは、発光装置の上部の発光面の方へ光を反射するよう高反射性である。pコンタクト140として一般に銀が用いられる。nコンタクト層も反射性であり、アルミニウムなどの金属が好ましい。ガード層150は、金属製であってもよいが、この用途ための適切な高反射性金属はまだ見つかっていないので、部分的にしか反射性ではない。この部分的に反射性のガードシートが、pコンタクトに隣接する領域を埋め、pコンタクトの周囲においてより多くの光学的損失をもたらす。
【0006】
本発明者は、pコンタクトの周囲の約15ミクロン内に生成される光が、高い確率で、ガード層領域150に入り、装置を出る機会を持つ前に、光吸収を被り得ることに気付いた。それ故、pコンタクトの縁端部に注入される電流は、pコンタクトの中央領域に注入される電流より低い外部量子効率を示すだろう。
【0007】
本発明者は、nコンタクト層を通る電流の横方向の流れと関連する電圧降下が、垂直の電流の流れの、接合電圧に対する指数関数的依存性と組み合わされて、装置の縁端部及びコーナーにおいて著しく高い電流密度を供給することから、装置の縁端部及びコーナーにおけるより多くの光学的損失にもかかわらず、装置の中央部より、装置の周囲及びコーナーにおいて、より多くの発光がもたらされることにも気付いた。これらの相対的に高い注入電流は、装置のコーナーに明るい領域を持つわずかなハロー効果(halo-effect)を生じさせる。
【0008】
このような非一様な電流注入パターンは、場合によっては光学異常をもたらすことに加えて、内部量子効率が、より高い電流密度に対してはより低くなるので、非効率的である。発光装置の「過剰発光」部、とりわけ、コーナーは、装置内の電流をより多く引き寄せる「ホットスポット」にもなるだろう。これは、高い電流で動作させられる装置の早すぎる故障を招くことが確認されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発光領域を部分的に反射性のガード層から遠ざけること、及び活性層の表面にわたる注入電流密度発光の一様性を更に高めることは有利であるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの問題及び他の問題により良く対処するため、本発明の実施例においては、半導体装置のp型層にわたる電流分布が、ガードシートに隣接する領域において前記p型層を通る電流の流れを故意に阻止することによって、前記装置の如何なる部分の光反射率も低下させずに、修正される。この電流の流れは、前記pコンタクトに結合される前記p型層の抵抗率を、接触領域の縁端部に沿って及びコーナーにおいて、上げることによって、阻止され得る。実施例においては、高抵抗性領域は、前記pコンタクトが作成された後の、浅い少量水素イオン(H+)注入によって生成される。同様に、前記pコンタクト及び前記p型層の間の選択領域に抵抗性コーティングが付されてもよい。
【0011】
一例として、添付図面を参照して、更に詳細に、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】この例の発光装置における電流分布を図示する。
【
図3A】電流分布を改善するために高抵抗領域と低抵抗領域とを含むpコンタクトを備える発光装置の例を図示する。
【
図3B】電流分布を改善するために高抵抗領域と低抵抗領域とを含むpコンタクトを備える発光装置の例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面の全体を通じて、同じ参照符号は、同様の又は対応する特徴又は機能を示す。図面は、例示の目的のために含まれており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0014】
限定ではなく、説明の目的のための以下の記載において、本発明の概念の完全な理解を供給するために、特定のアーキテクチャ、インタフェース、技術などのような具体的な詳細を記載する。しかしながら、本発明が、これらの具体的な詳細から逸脱する他の実施例において実施され得ることは、当業者には明らかであるだろう。同様に、この記載の文は、図に図示されているような実施例に向けられており、請求項にはっきりと含まれている限定を超えて、請求項に記載の発明を限定するものではない。分かりやすさ及び明瞭さの目的のため、よく知られている装置、回路及び方法の詳細な記載は、本発明の記載を、不必要な詳細で不明瞭にしないように、省かれる。
【0015】
説明及び理解を容易にするために、
図1の従来技術の装置の例に照らして、本発明を提示する。しかしながら、当業者は、様々な異なるLED構造、又は低損失電流注入領域に隣接する吸収領域によってもたらされる光学的損失の減少から利益を得るだろうあらゆる構造に、本発明の原理の一部又は全部が適用可能であり得ることを理解するだろう。
【0016】
上記のように、
図1の発光装置、
図2及び3において繰り返されているそれの構造は、p型層130を通る電流のより一様な分布を供給する高反射性大面積pコンタクト140を含む。n型層110とnパッド170との間の接触は、n型層110の周囲に沿っている。境界層180は、n型素子110、180を、p型素子130、140、150から分離する。
【0017】
図2に図示されているように、nパッド170及びpパッド160を介して外部電源に接続される場合、nパッド170からの電子電流200は、n型層110を通って横方向に広がり、境界層180を横切り、pコンタクト140及びp型パッド160に向けて下へ進む。n型層110にわたる電流分布が、完全には一様ではなく、電流200の供給源及びpコンタクト140の周囲からの距離が、pコンタクト140の中央部からの距離より短いことから、pコンタクト140の周囲に対する電流の流れ200aは、pコンタクト140の中央部に対する電流の流れ200bより大きいだろう。形状(コーナー対縁端部)、n-GaNのシート抵抗(厚さ及びドーピング)及び動作状態(電流、温度)に依存して、電流200のかなりの部分200aが、pコンタクト140の境界の近くに集中させられ得る。従って、活性層120のpn接合を通る電流注入は、活性層120の周囲のまわりでより大きくなり、周囲においてより多くの発光をもたらすだろう。
【0018】
この非一様な発光に起因する場合によっては好ましくない光学的作用に加えて、この非一様性は、場合によっては、全体的な光抽出効率を低下させる。なぜなら、光学的損失が最も大きい領域において、より多くの発光が生じるからである。発光活性層120の中央においては、発される光の大部分が、直接又はpコンタクト層140からの反射を介して、最終的に、発光装置の上面を出るだろう。活性層120の中央から上面に対してシビアな角度で発される光(側面光)は、他の領域からのこのような光より、装置の上面を出る可能性がより高いだろう。なぜなら、中央からは、上面を出る前に境界層180のような光吸収機構に遭遇する可能性がより少ないからである。逆に、活性層120の周囲沿いでは、境界層180に遭遇する可能性が著しく高く、それに対応する光学的損失の増大を伴う。
【0019】
非一様な電流の流れに関連する光学的な問題に加えて、より大きな電流の流れ200aは、バンドギャップを小さくし、更により多くの電流を引き寄せ、装置内に故障を起こしやすい領域の生成をもたらす「ホットスポット」を生じさせる。
【0020】
更に、発光領域への一様でない電流注入は、チップ全体の内部量子効率(IQE:注入電子当たりに放射される光子数の割合)も低下させる。なぜなら、IQEは、(当業界においては「IQE垂下」として知られているように)電流密度が増加するにつれて低下するからである。
【0021】
本発明の実施例においては、
図3A及び3Bにおいて図示されているように、pコンタクト140の周囲領域310においては正孔電流注入が阻止される。
図3Bは、
図3Aの装置の断面A−A’である。この正孔電流注入阻止領域310は、例えば、浅い少量H+注入、又はこの領域における電流の流れを減らす若しくはブロックする他の手段を用いることによって、形成され得る。このような注入は、pコンタクト140を形成する銀の堆積後に、続いて電流阻止領域310を作成するよう処理される領域310を形成するフォトレジストパターンを用いて、実施され得る。この目的のための十分なエネルギ及び量は、銀の厚さに依存するが、15keVのエネルギ及び2e14cm-2の量が公称値である。p型層内へ50nmより深く注入する高いエネルギ及び多い量は、p型層において過剰な損傷を生じさせ、光吸収を増大させる。
【0022】
図3Cにおいて図示されているように誘電性又は他の低導電性透明材料などの抵抗性材料310’でpコンタクト140の周囲をコーティングするなどの、周囲においてp型層130への電流の流れを阻止する他の手段も用いられ得る。pコンタクト層140は、誘電性層310’の縁端部にぶつかり、少なくとも5μmの範囲まで重なり合い、重なり合った領域において高反射性銀−誘電体ミラーを生じさせ得る。
【0023】
領域310において電流の流れを阻止することによって、ソース電流300は、
図3Aにおける電流の流れ300a、300bによって図示されているように、更にn型層110を通って横方向に進路変更させられる。pコンタクト140の周囲から横方向にそらすため、電流300aは、
図2における電流200aと比べて、pコンタクト140に到達する前に、n型層110を通ってより遠くへ流れ、それに応じて、大きさが減少させられる。この周囲における電流の大きさの減少は、高い電流200aと関連する「ホットスポット」を減らし、高い電流200aに起因する早すぎる故障の可能性を低下させるだろう。
【0024】
pコンタクト140の周囲における電流の減少は、それに応じて、
図2における電流200bと比べて、発光層120の中央へ流れる電流300bの増大を供給するだろう。
図2及び3における同じ総電流量に対する全体的な作用効果は、
図3の装置からのより一様な光出力を供給する、
図3の発光層120のより一様な励起である。
【0025】
更に、電流をpコンタクト140の周囲から遠くへ横方向に移動させることによって、発光領域の縁端部が、吸収するガード領域150から遠くへ再配置され、それによって、この領域150へ失われる光の量を減らす。
【0026】
発光層120の下に最大限の反射領域を設け、それによって、あらゆる後方散乱光のための損失を最小限にするために、pコンタクト層の外周コーナー320においては可能な限り小さい曲率半径を維持するのが望ましい。しかしながら、従来の装置においては、小さい曲率半径は、装置のコーナー320に押し寄せる電流を最大化し、コーナーにおいて更によりすごい局所ホットスポットを生じさせる。局所ホットスポットの可能性の低減は、阻止領域310の内周コーナー330を丸めることによっても達成され得る。コーナー320において小さい曲率半径を持つpコンタクト層に、コーナー330における曲率半径がより大きい電流阻止領域を作成することによって、光学的効率は維持され、ホットスポットは減らされる。
【0027】
本発明を、図面において図示し、上記の説明において詳細に説明しているが、このような図及び説明は、説明的なもの又は例示的なものとみなされるべきであって、限定するものとみなされるべきではない。本発明は、開示されている実施例に限定されない。
【0028】
例えば、Agコンタクトの、強化された接触が望ましい領域の下にNiOなどの接触強化層を置き、強化が望ましくない領域においてはこの層を取り除くことによって、本発明を動作させることが可能である。この実施例は、Ag-GaNコンタクトの効果を減らすために、一般的なpコンタクトにおけるMgドーピング又は他の損傷の削減と組み合され得る。
【0029】
請求項に記載の発明を実施する当業者は、図面、明細及び添付の請求項の研究から、開示されている実施例に対する他の変形を、理解し、達成し得る。請求項において、「有する」という用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形表記は、複数の存在を除外しない。特定の手段が、相互に異なる従属請求項において引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利になるように使用されることができないと示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されてはならない。