特許第6772254号(P6772254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772254
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ポリエン及びアルケンの共重合
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/68 20060101AFI20201012BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20201012BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C08F4/68
   C08F236/04
   C08F210/06
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-510908(P2018-510908)
(86)(22)【出願日】2016年8月14日
(65)【公表番号】特表2018-525506(P2018-525506A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】US2016046951
(87)【国際公開番号】WO2017040005
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年7月10日
(31)【優先権主張番号】62/212,534
(32)【優先日】2015年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】チン ヅァンチュアン
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03645993(US,A)
【文献】 特開2005−036042(JP,A)
【文献】 特開昭48−043085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60− 4/70
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和炭化水素モノマーを重合するプロセスであって、前記モノマーを触媒組成物と接触させることを含み、前記エチレン性不飽和炭化水素モノマーが、1種類以上の共役ジエンモノマー及びプロピレンからなり、前記触媒組成物が、バナジウム含有化合物及び以下の一般式によって表される高度にハロゲン化されたケトンを含み、
【化1】

式中、R及びRの各々が、独立して、それぞれ一般式C2m+1及びC2n+1によって表されるC〜C(ヒドロ)ハロアルキル基であり、式中、QはH又Xであり、Xはハロゲン原子を表し、m及びnは、各々独立して、1以上〜8以下の整数であるが、但し、z/yの商が1以上〜2以下であり、zが前記高度にハロゲン化されたケトン中の原子Qの総数を表し、yがハロゲン原子である原子の総数を表し、
前記モノマーと前記触媒組成物との前記接触が、−30℃〜−10℃の温度で起こる、プロセス。
【請求項2】
各Qは、Xである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記高度にハロゲン化されたケトンのカルボニル基に隣接した各C原子上の各Qが、Xである、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本国際出願は、2015年8月31日に出願の米国特許仮出願第62/212,534号の利益を主張し、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
タイヤトレッドなどのゴム製品は多くの場合、例えば、粒状カーボンブラック及びシリカなどの1種類以上の補強材を含有するエラストマー組成物から作製される。例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook,13th ed.(1990)、pp.603〜04を参照のこと。加硫物は、このような組成物中のエラストマーの熱誘導架橋により提供される。
【0003】
様々な天然及び合成エラストマー材料が、例えばタイヤ成分などの加硫物の製造において用いられている。最も一般的に用いられている合成材料の一部は、ポリブタジエンを含み、多くの場合、触媒を用いるプロセスによって作製され、実質的にランダムなスチレン/ブタジエンインターポリマーが、多くの場合、フリーラジカル又はアニオン重合開始剤を用いるプロセスによって作製される。
【0004】
高次のシス−1,4ミクロ構造を有するポリマーは、第3族(ランタノイドを含む)金属錯体に基づく触媒組成物から提供されることができ、その一方で、バナジウムに基づく触媒組成物は、高次のトランス−1,4ミクロ構造を有するポリマーを生ずることが知られている。このような触媒組成物に関する詳細な情報について、関心のある読者は、例えば、米国特許第3,260,708号、同第3,652,518号、同第3,652,519号、同第3,824,224号、同第3,914,207号、同第4、189,558号、同第4,378,455号、同第5,527,951号、及び同第6,566,465号が案内される。
【0005】
合成することが特に困難であるのは、1,2−アルケン(一般にα−オレフィンと呼ばれる)及びポリエン、特に共役ジエンのインターポリマーである。これは、これら2つの種類のエチレン性不飽和モノマーの大いに異なった反応性が主な理由であり、具体的には、それらの非常に異なる感受性により、重合触媒の金属原子と配位結合するからである。有利には、上述のバナジウム錯体ベースの触媒組成物の一部は、これらのモノマーを共重合することができる。但し、この能力は多くの場合、極低温、例えば、−40℃未満、及び多くの場合−80℃近傍で行われる重合に限られている。
【0006】
合成が困難であるにもかかわらず、このようなインターポリマーは著しい商業的関心事である。ポリエン及びオレフィン系モノマーは通常、異なる原材料から生じ、異なる技術を介して提供されるので、エラストマー材料の製造者は、各々から様々な及び/又は調整可能な量の構造単位とインターポリマーを合成することによって、いずれのタイプのモノマーの供給及び価格破壊からも守ることができる。
【0007】
更に、空気タイヤの特定部分、特に側面は、好ましくは、大気による分解、特にオゾンによる分解に対する良好な耐性を示す。このような成分は、実質的に飽和エラストマーの含有物から恩恵を受けることができる。従来より通常の選択肢は、エチレン/プロピレン/非共役ジエン(EPDM)インターポリマー、又はイソブチレン及びパラ−メチルスチレンの臭素化コポリマーを含んでいる。これらの材料の代替例も依然として望ましい。
【発明の概要】
【0008】
高度にハロゲン化されたケトンの一群のうちのいずれかでは、バナジウム錯体を含む触媒組成物の成分として使用することができる。
【0009】
高度にハロゲン化されたケトンの一群を一般式によって表すことができ、
【化1】

式中、R及びRの各々は独立して、C〜C(ヒドロ)ハロアルキル基である。R及びRは、それぞれ、一般式C2m+1及びC2n+1によって表すことができ、式中、QがH又はXであり、Xがハロゲン原子を表し、m及びnが、各々独立して、1以上〜8以下の整数である。zが高度にハロゲン化されたケトン中の原子Qの総数を表す場合、即ち、z=2(m+n+1)及びyは、原子Xの総数を表し、即ち、ハロゲン原子であるそれらのQは、それゆえ、z/yは1以上〜2以下である。いくつかの実施形態では、y=z、即ち、ケトンは完全にハロゲン化される。
【0010】
バナジウム錯体、アルキル化剤、及び高度にハロゲン化されたケトンを含む触媒組成物は、少なくとも1種類のポリエン及び少なくとも1種類のC〜Cα−オレフィン、特にC〜Cα−オレフィン、及び有利にはプロペン、即ち、プロピレンを含むエチレン性不飽和炭化水素モノマーの重合における特定の効用が見出される。高度にハロゲン化されたケトンの存在は、高度にハロゲン化されたケトンを含有しない、それ以外は同一の触媒組成物と比較して、触媒組成物の活性を増大させ(即ち、それによって、より大きな割合でモノマーをポリマーに転化することができる)、一方で、オレフィンマーを組み込む相対的割合(モル)に悪影響を与えない。
【0011】
本発明の一態様は、エチレン性不飽和炭化水素モノマーを重合させるプロセスに関する。本方法は、モノマーを上記の触媒組成物と接触させることを含む。エチレン性不飽和炭化水素モノマーは、有利には、1種類以上のポリエン並びに少なくとも1種類のC〜Cα−オレフィンを含む。重合は、これまでに記載されている多くのV化合物ベースの触媒組成物で必要とされる温度より適度な温度、即ち、約0〜約−40℃、一般に、約−10〜約−30℃で行うことができる。
【0012】
他の態様では、式(I)の化合物並びに触媒組成物を製造する方法が提供される。
【0013】
また、粒状充填剤及び得られたポリマーを含む、加硫物などの組成物も提供され、その特定の実施形態では、末端官能基も含まれ得る。また、このような組成物を提供する方法、及び使用する方法も提供される。
【0014】
本発明の他の態様は、以下の詳細な説明から当業者に明白となるであろう。その説明の理解を手助けするために、ある特定の定義をすぐ下に提供するが、これらは周辺の文章が反対の意図を明白に示していない限り、全体を通して適用されるものとする。
「ポリマー」とは1つ以上のモノマーの重合生成物を意味し、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
「マー」及び「マー単位」は両方とも、1つの反応分子に由来するポリマーの一部分を意味する(例えばエチレンマーは、一般式−CHCH−で表される)。
「コポリマー」は、2つの反応物質、通常はモノマーに由来するマー単位を含んだポリマーを意味し、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマーなどを含む。
「インターポリマー」は、少なくとも2つの反応物質、通常はモノマーに由来するマー単位を含んだポリマーを意味し、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
「置換」は、ある基について意図した目的を阻害しないヘテロ原子又は官能基(例えば、ヒドロカルビル基)を含むことを意味する。
「ポリエン」は、最長部分又は分子鎖に少なくとも2つの二重結合が存在する分子、通常はモノマーを意味し、具体的にはジエン、トリエンなどが挙げられる。
「ポリジエン」は、1つ以上のジエンのマー単位を含むポリマーを意味する。
「phr」とは、ゴム100重量部(pbw)当たりのpbwを意味する。
「ラジカル」は、反応の結果、何らかの原子が得られるか又は失われるかに関わらず、別の分子と反応した後に残る分子の一部分を意味する。
「アリール」とは、フェニル又は多環式芳香族ラジカルを意味する。
「アラルキル」とは、アリール置換基、例えばベンジル基を含有するアルキルラジカルを意味する。
「アルカリル」とは、アルキル置換基を含むアリール基を意味する。
「末端」とは、ポリマー鎖の端部を意味する。
「末端活性の」とは、リビング末端又は擬似リビング末端を有するポリマーを意味する。
「末端部分」は、末端に位置する基又は官能基を意味する。
【0015】
以下の説明において、ミクロ構造特性はIR及びNMR(13C及びH)分光法よって決定することができ、一方で、数平均及び重量平均分子量で、それぞれMn及びMwの両方は、較正用のポリスチレン標準を用いたGPC、及び適切なマルク−ホウインク定数によって決定することができる。これらの技術の各々が、通常、当事者によく知られている。
【0016】
本明細書全体を通して、%で示される全ての値は、周囲の文章が反対の意図を明確に示していない限り、重量%である。具体的に言及される任意の特許、又は公開済みの特許出願の一箇所若しくは複数箇所の関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による触媒組成物を使用して、1種類以上のポリエンを含むエチレン性不飽和モノマーを重合することができるが、任意にある観点において、少なくとも1種類の共役ジエンを含むことが好ましい。用語「触媒組成物」は、成分の単純な混合物、物理的若しくは化学的引力から生じる様々な成分の錯体、成分の一部若しくは全てからなる化学反応生成物、又は前述のものの組み合わせを包含することを意味する。
【0018】
得られるポリマーは、それ自体がエチレン性不飽和を含むマー単位を含む、エラストマー性のものであり得る。エチレン性不飽和を含むマー単位は、ポリエン、特にジエン及びトリエン(例えばミルセン)に由来し得る。例示的なポリエンとしては、C〜C30ジエン、好ましくはC〜C12ジエンが挙げられる。このうち、好ましいものとして、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどの共役ジエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
1,2−ミクロ構造でポリマー鎖へと組み込まれていないポリエンマーは、シス又はトランス異性体配置のいずれかをとり得る。特定の最終用途にとって望ましい低次の1,2−ビニル構造を有するポリマーは、フリーラジカル又はアニオン(リビング)重合を介して達成することが困難又は非効率的な場合があるため、一般に触媒を用いたプロセスによって調製される。
【0020】
ポリマーは、C〜Cα−オレフィンマーも含むことができる。特定の実施形態では、このようなマーの一部又は全部が、C〜Cα−オレフィンマーであり得る。好適なC〜Cα−オレフィンはプロピレンであり、好適なポリマーは、プロピレン及びポリエン、特に1,3−ブタジエンのコポリマーである。
【0021】
本開示の方法によって製造されるポリマーの数平均分子量(M)は、典型的には、失活後の試料が、約2〜約150、より一般的には約2.5〜約125、更により一般的には約5〜約100、最も一般的には約10〜約75のゴムムーニー粘度(ML1+4/100℃)を示す程度の値となる。これらのムーニー粘度は、概ね約5,000〜約250,000ダルトン、一般的には約10,000〜約200,000ダルトン、より一般的には約50,000〜約150,000ダルトン、最も一般的には約10,000〜約125,000ダルトン、又は更には約10,000〜約100,000ダルトンのMに相当する。得られるポリマーは通常、1〜10、一般的に1.5〜7.5、及びより一般的に2〜5の分子量分布を有する。
【0022】
要約して上記にかつより完全に下記に記載される触媒組成物は、溶液重合に用いることができ、これは、例えばランダム性、ミクロ構造などのポリマー特性の特別な制御をもたらす。溶液重合は、約20世紀中頃から行われ、そして、その一般的な態様は、通常の当業者にとって既知である。それにもかかわらず、特定の態様が、参照のため便宜上ここで提供される。
【0023】
好適な溶媒としては、重合しないか、又は成長するポリマー鎖に組み込まれない(即ち、触媒組成物に対して不活性であり、かつそれによる影響を受けない)それらの有機化合物が挙げられる。好適な有機化合物は、周囲温度及び圧力にて液体である。好適な有機溶媒の例としては、比較的低沸点の、芳香族炭化水素及び(シクロ)脂肪族炭化水素などの炭化水素が挙げられる。例示の重合溶媒としては、様々なC〜C12環式及び非環式アルカン(例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−ノナン、イソペンタン、イソヘキサン、イソオクタン、2、2−ジメチルブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなど)並びにそれらのアルキル化誘導体、特定の液体芳香族化合物(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びメシチレン)、石油エーテル、ケロシン、石油スピリット、及びこれらの混合物が挙げられる。溶媒として使用可能な他の可能性として好適な有機化合物としては、パラフィン系油、芳香油、又は一般に油展ポリマーに使用される他の炭化水素油などの高分子量の高沸点の炭化水素が挙げられる。通常当業者は、他に有用な溶媒の選択肢及び組み合わせに精通している。
【0024】
有用な触媒組成物としては、V原子及び複数の結合した原子又は基若しくは配位子(即ち、V含有化合物)を含む化合物が挙げられる。大部分のこのような化合物が+5の酸化状態でVを含むと共に、これは強制的ではなく、実際に、触媒組成物の他の成分が、結果としてVが減少した酸化状態にあるV含有化合物にしてもよい。
【0025】
好適なV含有化合物としては、ぎ酸エステル、酢酸エステル、(メタ)アクリル酸エステル、吉草酸エステル、グルコン酸エステル、クエン酸エステル、フマル酸エステル、乳酸エステル、マレイン酸エステル、しゅう酸エステル、2−ヘキサン酸エチル、ネオデカン酸エステル(即ち、Momentive Specialty Chemicals Inc.から入手可能なVersaticTM酸といったトリアルキルカルボン酸から調製されるカルボン酸エステル)、ナフテン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、安息香酸エステル、ピコリン酸エステルなどのようなカルボン酸エステル;様々なリン酸ジアルキル、リン酸ジオレイル、リン酸ジフェニル及び置換ジフェニル、リン酸ブチル(2−エチルヘキシル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(パラ−ノニルフェニル)などのようないずれかの有機リン酸エステル;様々なC〜C18ホスホン酸アルキル及びアルキルアルキルホスポネート、ホスホン酸オレイル、ホスホン酸フェニル及び置換フェニル並びにフェニルフェニルホスポネート、オレイルオレイルホスホネート、フェニルフェニルホスホネート、混合ホスホン酸アルキルなどのようないずれかの有機ホスホン酸エステル;様々なC〜C18ホスフィン酸アルキル及びジアルキル、ホスフィン酸オレイル及びジオレイル、ホスフィン酸フェニル及び置換フェニル並びにジフェニル、混合ホスフィン酸アルキルなどのようないずれかの有機ホスフィン酸エステル;様々なC〜Cチオカルバミン酸ジアルキル、チオカルバミン酸ジベンジルなどのようないずれかの(チオ)−カルバミン酸エステル;様々なC〜Cキサントゲン酸アルキル、キサントゲン酸ベンジルなどのようないずれかのキサントゲン酸エステル;アセチルアセトネート、トリフルオロアセチルアセトネート、ヘキサフルオロアセチル−アセトネート、ベンゾイルアセトネート、及び2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタジオネートなどのようなβ−ジケトン酸塩;様々なC〜Cアルキルアルコキシドなどのようないずれかのアルコキシド;フェノキシド及び置換フェノキシド、ナフトキシドなどのようなアリールオキシド;シロキシド;ハロゲン化物;オキシハロゲン化物(任意にTHFのようなルイス塩基と可溶化された);オキソアルコキシド;オキソシロキシド;シアン化合、(チオ)シアン酸エステル、アジ化物、フェロシアン化物などのような擬ハライド;並びにシクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、アリル及び置換アリル配位子を含有するそれらのような有機バナジウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
背景技術の項に列挙された特許文献に、より詳細に記載されるように、例示的なVベースの錯体としては、バナジウムオキシハロゲン化物(即ち、バナジルトリハロゲン化物);バナジウムアルコキシド;バナジウムオキシアルコキシド;バナジルジアルコキシハロゲン化物;バナジウムトリアセチルアセトネート;バナジウムトリベンゾイルアセトネート;バナジルジアセチルアセトネート及びハロアセチルアセトネート;バナジルトリアルコラート及びハロアルコラート、テトラヒドロフラネート、エーテラート、三及び四塩化バナジウム、並びに三塩化バナジルのアミン化合物;三及び四塩化バナジウム、並びに三塩化バナジルのピリデート;シクロペンタジエニル、インデニル及び/又はフルオレニル環を含むそれらのようなバナジウム錯体化合物と、バナジウムオキシジアセテートのようなカルボン酸のバナジウム塩とが挙げられるが、それらに限定されない。
【0027】
触媒組成物は、活性剤、一般的にアルキル化剤も含み、多くの場合、ヒドロカルビル基を他の金属へ移動することができる有機金属化合物である。これらの薬剤は、通常、第1族、第2族及び第3族の金属などの陽性金属の有機金属化合物である。例示的なアルキル化剤は、一般式AlRX’3−oを有するものなどの有機アルミニウム化合物を含み、式中、oが1以上〜3以下の整数であり、各Rは独立して、C原子を介してAl原子に結合するN、O、B、Si、S、Pなどのヘテロ原子を含有し得る一価の有機基であり、各X’は独立して、H、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基である。1つ以上の実施形態では、各Rは独立して、例えばアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリル、アリル、及びアルキニル基のようなヒドロカルビル基であることができ、各基は、単一C原子、又は基を形成する適切な最小のC原子数から最大約20個のC原子を含んでいる。これらのヒドロカルビル基は、N、O、B、Si、S及びP原子を含むヘテロ原子を含むことができるが、これらに限定されない。この一般式の範囲内の有機アルミニウム化合物の非限定的な種類としては、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−n−ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリス(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1−メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル−p−トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウム、及びエチルジベンジルアルミニウムのようなトリヒドロカルビルアルミニウム化合物;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ−n−プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジ−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ−p−トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、p−トリルエチルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、p−トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、p−トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムヒドリドのようなジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、n−プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n−ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、及びn−オクチルアルミニウムジヒドリドのようなヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド;
ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート;
ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート);
ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド;
ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド;
ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、ジ−n−プロピルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジ−n−オクチルアルミニウムクロリド、ジフェニルアルミニウムクロリド、ジ−p−トリルアルミニウムクロリド、ジベンジルアルミニウムクロリド、フェニルエチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−プロピルアルミニウムクロリド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロリド、フェニル−n−ブチルアルミニウムクロリド、フェニルイソブチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムクロリド、p−トリルエチルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムクロリド、p−トリルイソプロピルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムクロリド、p−トリルイソブチルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムクロリド、ベンジルエチルアルミニウムクロリド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムクロリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムクロリド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロリド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムクロリドのようなジヒドロカルビルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムジクロリド(EADC)、n−プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、n−ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、及びn−オクチルアルミニウムジクロリドのようなヒドロカルビルアルミニウムジハライド;
ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド;及び
ヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシドが挙げられる。
特定の実施態様においてアルキル化剤には、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、及び/又はヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドを含むことができる。
【0028】
活性剤、即ちアルキル化剤として機能することができる他の有機アルミニウム化合物としては、ジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチルアルミニウム2−エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2−エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、及びイソブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
アルミノキサンは、活性剤、即ちアルキル化剤としての使用に適する、他の一群の有機アルミニウム化合物を構成する。(これらの化合物はアルキル化作用が終了した後も、活性剤として機能し得る。)この一群はオリゴマー直鎖状アルミノキサン及びオリゴマー環状アルミノキサンが含まれ、いずれの式も、例えば米国特許第8,017,695号を含む様々な参照文献に提供されている。(オリゴマー種の化合物がアルキル化剤として使用される場合、モル数とは、オリゴマー分子のモル数ではなく、Al原子のモル数を指しており、アルミノキサンを用いる触媒系の分野で一般に採用されている慣行である。)
【0030】
アルミノキサンの調製は、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることによって行うことができる。この反応は、例えば、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒中に溶解し、次にそれを水と接触させること、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩に含まれる結晶水又は無機若しくは有機化合物に吸着された水と反応させること、又は(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合されるモノマー(複数可)の存在下で水と反応させることなどの既知の方法により実施可能である。
【0031】
好適なアルミノキサン化合物としては、メチル−アルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO、周知の技術を用いて約20〜80%のメチレン基をC〜C12ヒドロカルビル基で、好ましくはイソブチル基で置換することにより形成される)、エチルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n−ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n−ヘキシルアルミノキサン、n−オクチルアルミノキサン、2−エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、及び2,6−ジメチルフェニルアルミノキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
アルミノキサンは、単独で、又は他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用することができる。一実施形態においては、MAOと、ジイソブチルアルミニウムヒドリドなどの少なくとも1種類の他の有機アルミニウム化合物とを組み合わせて使用することができる。興味のある読者は、組み合わせて使用されるアルミノキサン及び有機アルミニウム化合物の他の例について米国特許第8,017,695号を参照されたい。
【0033】
また、活性剤(アルキル化剤)としては、一般式RMgX’2−gを有するような有機マグネシウム化合物も好適であり、式中、X’は、上で定義したとおりであり、gは、1又は2であり、Rは、各1価の有機基がC原子を介してMg原子に結合していることを除き、Rと同じである。潜在的に有用な有機マグネシウム化合物としては、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、ヒドロカルボニルマグネシウムヒドリド(例えばメチルマグネシウムヒドリド、エチルマグネシウムヒドリド、ブチルマグネシウムヒドリド、ヘキシルマグネシウムヒドリド、フェニルマグネシウムヒドリド及びベンジルマグネシウムヒドリド)、ヒドロカルビルマグネシウムハロゲン化物(例えばメチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド及びベンジルマグネシウムブロミド)、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート(例えばメチルマグネシウムヘキサノエート、エチレンマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート及びベンジルマグネシウムヘキサノエート)、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド(例えばメチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド及びベンジルマグネシウムエトキシド)、並びにヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシド(例えばメチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、及びベンジルマグネシウムフェノキシド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
触媒組成物は、ハロゲン源も含むことができ、ハロゲン源という用語には、少なくとも1種類の不安定なハロゲン原子を含む任意の物質が含まれる。一実施形態では、ハロゲン源の少なくとも一部を、他の2つの上記触媒組成物の成分、即ち、V含有化合物(例えば、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物など)、及び/又は上述の活性剤(アルキル化剤)のいずれかによって提供することができ、その場合、これら化合物の一方又は両方が、少なくとも1種類の不安定なハロゲン原子を含む。
【0035】
ハロゲン源の少なくとも一部分は、1種類以上の別個の異なるハロゲン含有化合物の形態であってもよい。ハロゲン源としては、1種類以上の不安定なハロゲン原子を含有する各種化合物、又はそれらの混合物を用いることができる。これらの化合物、又はそれらの混合物は、炭化水素液体(溶媒)への溶解性に優れるものが好ましいが、溶解度の低いものであっても、重合系中に懸濁させて、触媒活性種を形成させることができる。
【0036】
ハロゲン源の少なくとも一部として用いられ得る有用なハロゲン含有化合物としては、基本的なハロゲン;一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素、五フッ化ヨウ素などのような混合ハロゲン;HF、HCl、HBr、及びHIのようなハロゲン化水素;塩化又は臭化t−ブチル、塩化又は臭化アリル、塩化又は臭化ベンジル、クロロ又はブロモジフェニルメタン、塩化又は臭化トリフェニルメチル、塩化又は臭化ベンジリデン、種類のアルキルトリクロロシラン及びジアルキルジクロロシラン、塩化又は臭化ベンゾイル、塩化又は臭化プロピオニル、クロロぎ酸メチル、ブロモぎ酸メチルなどのようないずれかの有機ハライド;PCl、PBr、PCl、POCl、POBr、BCl、BBr、BF、SiF、SiCl、SiBr、SiI、AsCl、AsBr、AsI、SeCl、SeBr、TeCl、TeBr、TeIなどのような無機ハロゲン化物;Sn、Al、Sb、Al、Ga、In、Ti、Znなどのような金属のハロゲン化物(様々な酸化状態のいずれかで);並びに、様々の塩化ジアルキルアルミニウム、臭化物及びフッ化物、二塩化アルキルアルミニウム、二臭化物及び二フッ化物、セスキ塩化アルキルアルミニウム、塩化アルキルマグネシウム、臭化物及びヨウ化物、塩化又は臭化フェニルマグネシウム、塩化ベンジルマグネシウム、塩化及び臭化トリアルキルスズ、二塩化及び二臭化ジアルキルスズなどのようないずれかの有機金属のハロゲン化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
ここで記載した種類の触媒組成物は、広範囲の濃度及び比率にわたり、共役ジエンなどのポリエンを重合させて、立体特異的なポリマーとする、非常に高い触媒活性を有するが、通常、最も望ましい特性を有するポリマーは、比較的狭い範囲の成分濃度及び成分比率を用いる系から得られる。有利には、このような触媒組成物は、1種類以上のポリエンと、1種類以上のC〜Cα−オレフィンのインターポリマー、好ましくはポリエン、特に、1,3−ブタジエン、及びC〜Cα−オレフィン、特にプロピレンのコポリマーを提供することができる。
【0038】
更には触媒組成物の各成分は、相互作用して活性触媒種を形成すると考えられるため、各成分の最適濃度が、他の成分の濃度に依存する場合もある。以下のモル比は、前述の成分に基づく様々な異なる系について、比較的代表的なものと考えられる(アルキル化剤は、好適な種類の活性剤を表す):
アルキル化剤対V含有化合物は約1:1〜約500:1、一般的には約2:1〜約200:1、通常は約5:1〜約100:1、
有機アルミニウム化合物対V含有化合物は約1:1〜約200:1、一般的には約2:1〜約150:1、通常は約5:1〜約100:1。
【0039】
V含有化合物を含む触媒組成物を用いて製造されるポリマーの分子量は、使用するV含有化合物の量、及び/又は触媒組成物中の助触媒化合物濃度の量を調節することにより、制御できる。この手法により、広範囲の分子量を有するポリマーを製造することができる。一般に金属錯体及び助触媒の濃度を高めると、得られたポリマーの分子量が減少するが、非常に低い分子量のポリマー(例えば液体ポリジエン)では、極めて高い触媒濃度が必要とされる。この場合、硫黄硬化速度の遅延などの悪影響を回避するために、通常は、ポリマーから触媒残渣を除去する必要がある。
【0040】
V含有化合物を含む触媒組成物は、以下の方法のいずれかを用いて形成することができる。
(1)その場(in situ)法。触媒成分を、モノマー及び溶媒を含有する溶液(又は単にバルクモノマー)に添加する。この添加は、段階的に又は同時に行われてもよい。後者の場合には、好ましくは、まず活性剤を添加した後、V含有化合物を添加する。
(2)予備混合法。成分を、概ね約−78℃〜約25℃の温度で重合系外にて混合した後に、モノマー(複数可)に導入することができる。
(3)モノマー(複数可)存在下での予備形成法。触媒成分を少量の共役ジエンモノマー(複数可)の存在下で約−78℃〜約25℃の温度で混合する。モノマー(複数可)の量は、V含有化合物1モル当たり、約1〜約500モル、一般的には約5〜約250モル、通常は約10〜約100モルの範囲であり得る。得られる触媒組成物は、重合されるモノマー(複数可)の残りに添加される。
(4)2段階処理法。
(a)活性剤を、約−78℃〜約25℃の温度で、モノマーの不存在下、又は少量のモノマー(複数可)の存在下で、V含有化合物と組み合わせる。
(b)前述の混合物及び残留成分を、段階的又は同時に作用する方法のいずれかで、残りのモノマー(複数可)に添加して、重合させる。
触媒成分のうちの1種類以上の溶液を、前述の方法で重合系外で調製する場合、有機溶媒又は担体を用いることが好ましい。有用な有機溶媒としては前述したものが挙げられる。他の実施形態においては、1種類以上のモノマーをキャリアとして使用することもできるし、又は触媒成分を未希釈(即ち、他のキャリアの溶媒を含まない)で用いてもよい。
【0041】
前に記載した種類の触媒組成物の存在下で1,3−ブタジエンを重合する場合、得られるポリジエンは、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のトランス−1,4−結合含量を有し、ここで、これらの%値は、ジエンマーの総数に対する、トランス−1,4配置のジエンマーの数に基づいている。前述のように、そのようなポリマーの1,2−結合含量は、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は更には1%未満であり得る。(少量の残留するジエンマーは、シス−1,4配置を有する。)
【0042】
触媒組成物における、一般式(I)型の化合物のような高度にハロゲン化されたケトンの含有は、驚くべきことに、高度にハロゲン化されたケトンを含有しない、それ以外は同一の触媒組成物と比較して、触媒組成物の活性を増大させることができる(即ち、より大きな割合のモノマーを重合することができる)。有利には、増大する活性を、オレフィンマーを組み込む相対的割合(モル)への悪影響を及ぼさずに得ることができる。
【0043】
一般式(I)によって定められる化合物の一群では、R及びRの各々は独立して、それぞれ一般式C2m+1及びC2n+1によって表されるC〜C(ヒドロ)ハロアルキル基であり、式中、Q、m、及びnは、上記のように定められる。m及びnの好適な値は独立して、1以上〜4以下である。
【0044】
及びR基の非限定的な実施例は、−CX、−CHX、−CHCX、−CXCX、−CXCHX、−CHCXCX、−CXCHCX、−CXCXCHX、−CXCHCHXなどを含み、Xは上記のように定められている。好ましくは、それらの高度にハロゲン化されたケトンであり、式中、カルボニル基(−C(O))に隣接したC原子上の各QがXである。
【0045】
zが高度にハロゲン化されたケトン中の原子Qの総数、即ち、z=2(m+n+1)を表し、yが原子Xの総数を表す場合、その場合、z/yが1以上〜2以下、好ましくは、1以上〜1.75以下、より好ましくは、1以上〜1.67以下、更により好ましくは、1以上〜1.5以下、より更により好ましくは、1以上〜1.4以下、それ以上により更により好ましくは、1以上〜1.33以下、これまでより更により好ましくは、1以上〜1.25以下、及び最も好ましくは、1以上〜1.15以下である。特定の好適な実施形態では、ケトンは完全にハロゲン化される。
【0046】
触媒組成物に用いられる高度にハロゲン化されたケトンの量は一般に、相当に小さく、例えば、用いられるVのモル数に対して5:1未満のモル比である。一般的なケトン対Vのモル比は、9:2、4:1、7:2、3:1、8:3、5:2、7:3、2:1、7:4、5:3、3:2、4:3、5:4、1:1、4:5、3:4、又は2:3以下であるそれらを含み、単一のものより大きいものが好ましい。
【0047】
1つ以上の実施形態において、触媒組成物の一部又は全部は、不活性キャリアによって担持されていてもよい。担体は、タルク、層状ケイ酸塩、無機酸化物又は超微粒子状ポリマー粉末などの多孔質固体であり得る。好適な無機酸化物は、第2族〜第5族及び第13族〜第16族の任意の元素の酸化物である。担体の例としては、SiO、酸化アルミニウム、並びに元素Ca、Al、Si、Mg又はTiの混合酸化物、及び更に対応する酸化物混合物、Mgハロゲン化物、スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー、ポリエチレン又はポリプロピレンが挙げられる。
【0048】
トランス−1,4−ポリジエンのようなポリマー、有利には、トランス−1,4−ジエンマー、特にブタジエンの交互コポリマーを含むインターポリマー並びにコポリマーであって、そのマーの大部分が通常、トランス−1,4配置並びにC〜Cα−オレフィン、特にC〜Cα−オレフィンに組み込まれるインターポリマー並びにコポリマー、及び特に大部分のプロピレンは、上記のような触媒組成物の触媒としての有効量がある場合には、共役ジエンモノマー及び少なくとも1種類のC〜Cα−オレフィン、特にC〜Cα−オレフィン(好ましくはプロピレン)を重合することによって生成され得る。重合物中で使用される総触媒濃度は、成分の純度、重合温度、所望の重合速度と転化率、所望の分子量などの多数の要因の相互作用に依存する。したがって具体的な総触媒濃度については、各触媒成分を触媒的に有効な量で使用できるという以外、断定的に明確に述べることはできない。V含有化合物の量は、概ね、モノマー100g当たり約0.005〜約5mmol、一般的には約0.01〜約2mmol、通常は約0.05〜約1mmolの範囲である。上記に記載の各種の比率を参照して、他の全ての成分を、V含有化合物の量に基づく量で添加することができる。
【0049】
重合は好ましくは、上述の種類(複数可)のうちの1種類以上の有機溶媒中で、即ち溶液重合(ここで、形成されるモノマー(複数可)及びポリマーの両方は溶媒に溶解可能である)又は沈殿重合(モノマーは濃縮相中にあるが、ポリマーは不溶性である)として実施される。触媒成分は好ましくは有機液体中に可溶化又は懸濁され、通常、追加の(触媒組成物を調製する際に使用されるもの以外の)溶媒が、重合系に添加される。この付加的な溶媒(複数可)は、触媒組成物の調製に用いる溶媒(複数可)と同じであってもよいし又は異なっていてもよい。1つ又は2つ以上の実施形態において、重合混合物の溶媒含量は、重合混合物の総重量に対して20重量%超、50重量%超、又は更には80重量%超であり得る。重合の開始時に存在するモノマーの濃度は概ね、約3〜約80重量%、一般的には約5〜約50重量%、及び通常は約10〜約30重量%の範囲である。
【0050】
特定の実施形態においては、最少量以下の溶媒を含むバルク重合系、即ち1種類又は2種類以上のモノマーが溶媒として機能するバルク重合プロセスを使用することができる。有用となり得るバルク重合プロセスの例は米国特許第7,351,776号に開示されている。バルク重合において、重合混合物の溶媒含量は、重合混合物の総重量に対して約20重量%未満、約10重量%未満、又は更には約5重量%未満であり得る。重合混合物は更には溶媒が実質的にないこともあり得る、即ち、そうでなければ重合プロセスに大きな影響を及ぼしたであろう溶媒量未満を含有することさえできる。
【0051】
重合は、任意の様々な反応容器内で実施することができる。例えば、溶液重合を、撹拌槽型反応器内で行うことができる。また、モノマー転化率が約60%未満の場合、撹拌槽型反応内でバルク重合を実施することもできる。モノマー転化率が約60%超の場合、通常は、非常に粘稠なポリマーセメント(即ち、溶媒、ポリマー及びいかなる残留モノマー(複数可)の混合物)となる。この場合、バルク重合を、細長い反応器で実施することができ、反応器内では、この粘稠なセメントが、例えばピストン、又は自己洗浄単軸若しくは二軸スクリュー撹拌機により動かされる。
【0052】
重合で又はその最中に使用する全ての成分は単一容器(例えば攪拌槽型反応器)内で混合することができ、重合プロセス全体をこの容器内で行うことができる。あるいは2つ以上の成分を重合容器の外で混ぜ合わせて、別の容器に移すことができ、この別の容器でモノマー(複数可)又は少なくともその大部分の重合を行ってもよい。
【0053】
重合は、バッチプロセス、連続プロセス又は半連続プロセスとして実施することができる。重合が進行する条件は、−50℃〜約25℃、概して−45℃〜10℃、一般的に−40℃〜0℃、より一般的には−35℃〜−5℃、及び通常は通常は−30℃〜−10℃の範囲に重合混合物の温度が維持されるように、調整され得る。これらの重合温度は、V化合物ベースの触媒を用いる他の重合で可能な温度より著しく高く、通常は−50℃未満か、多くの場合、約−80℃未満で行われなければならない。
【0054】
重合によって発生する熱を、任意に内部冷却によって補助され、熱的に制御された反応器ジャケットによる外部冷却(反応器に接続された還流凝縮器を使用してモノマーを蒸発及び凝縮させることによる)によって除去することができる。また、条件を、約0.01〜約5MPa、一般的に約0.05〜約3MPa、通常は約0.1〜約2MPa、の圧力下で重合を行うように制御することができ、重合が実行される圧力は、大多数のモノマーが液相であるようにすることができる。これら又は他の実施形態において重合混合物は、通常、N、Ar又はHeなどの不活性保護ガスによって提供される嫌気条件下で維持され得る。
【0055】
バッチプロセス、連続プロセス又は半連続プロセスのいずれを使用するかに関わらず、重合は、好ましくは穏やかに〜激しく攪拌しながら行われる。
【0056】
重合で用いられるモノマーは、ポリエン及びC〜Cα−オレフィンを含み、得られるマーは通常、交互に組み入れられ、ポリエンマーが優先的にトランス−1,4配置に組み込まれる。好適な重合生成物は、1,3−ブタジエン及びプロピレンの交互コポリマーである。
【0057】
記載された重合プロセスは、反応性(擬似リビング)末端を有する少なくともいくつかのポリマー鎖をもたらし、更に1種類又は2種類以上の官能化剤と反応させて、末端部分を有するポリマーを提供することができる。この種のポリマーは官能化されたと称される場合があり、同様に反応しなかった生長鎖とは異なる。1つ又は2つ以上の実施形態では、官能化剤と末端活性ポリマーとの間の反応は、付加反応又は置換反応を介して進行し得る。
【0058】
末端部分は、他のポリマー鎖(生長及び/若しくは非生長)に対して、又は粒状補強充填剤(例えばカーボンブラック)などゴム化合物の他の材料に対して、反応性であるか、又は相互作用性であり得る。上述のように、ゴム化合物中のポリマーと粒状充填剤との間の相互作用の拡大により、得られる加硫物の機械的及び動的性質を向上させる。例えば特定の官能化剤は、ヘテロ原子を含む末端部分をポリマー鎖に付与することができる。このような官能化ポリマーは加硫物を提供し得るゴム化合物で使用可能であり、その加硫物はこのような官能化ポリマーを含まない類似のゴム化合物から調製される加硫物が有するものより少ない高温(例えば50℃)のヒステリシス損失(高温でのtanδ値の減少により示される)を有することができる。高温でのヒステリシス損失の減少は、少なくとも5%、少なくとも10%、又は更には少なくとも15%であり得る。
【0059】
所望のモノマー転化が達成された後かつ失活剤(プロトン性H原子を有する化合物)の導入の前、又は、重合混合物が部分的に失活された後に、1種類又は2種類以上の官能化剤を導入することができる。官能化剤は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、又は少なくとも80%のモノマー転化の後、重合混合物に添加することができる。特定の実施形態では、官能化剤は、完全な又は実質的に完全なモノマー転化の後に添加される。特定の実施形態では、官能化剤は、米国特許第8,324,329号に開示されているように、ルイス塩基の導入直前に、それと共に又はその直後に重合混合物に導入され得る。
【0060】
有用な官能化剤は、反応の際に、2本以上のポリマー鎖を1つに結合することなく、官能基をポリマー鎖の末端に提供する化合物、並びに2本以上のポリマー鎖を官能性結合を介して1つに結合又は接合して単一の巨大分子を形成することができる化合物を含む。当業者は、終端剤、カップリング剤及び/又は連結剤によるこの種の後重合官能化によって得ることができる末端官能基の多数の例に精通している。更なる詳細については、興味のある読者は、米国特許第4,015,061号、同第4,616,069号、同第4,906,706号、同第4,935,471号、同第4,990,573号、同第5,064,910号、同第5,153,159号、同第5,149,457号、同第5,196,138号、同第5,329,005号、同第5,496,940号、同第5,502,131号、同第5,567,815号、同第5,610,227号、同第5,663,398号、同第5,567,784号、同第5,786,441号、同第5,844,050号、同第6,812,295号、同第6,838,526号、同第6,992,147号、同第7,153,919号、同第7,294,680号、同第7,642,322号、同第7,671,136号、同第7,671,138号、同第7,732,534号、同第7,750,087号、同第7,816,483号、同第7,879,952号、同第7,902,309号、同第8,063,153号、同第8,088,868号、同第8,183,324号、同第8,642,706号などのいずれか、並びこれらの特許に引用される文献及びこれらの特許を引用するその後の刊行物を参照されたい。具体的な官能化化合物の例としては、金属ハロゲン化物(例えばSnCl)、RSnCl、RSnCl、RSnCl、半金属ハロゲン化物(例えば、SiCl)、カルボジイミド、ケトン、アルデヒド、エステル、キノン、N−環状アミド、N,N’−二置換環状尿素、環状アミド、環状尿素、シッフ塩基、イソ(チオ)シアネート、金属エステル−カルボキシレート錯体(例えばジオクチルスズビス(オクチルマレエート)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アルキルチオチアゾリン、アルコキシシラン(例えばSi(OR、RSi(OR、RSi(ORなど)、環状シロキサン、アルコキシ−スズ酸塩、及びこれらの混合物が挙げられる。(前述の場合、各Rは独立して、C〜C20アルキル基、C〜C20シクロアルキル基、C〜C20アリール基、又はC〜C20アラルキル基である)。一般に使用される官能化化合物の例としては、SnCl、トリブチルスズクロリド、ジブチルスズジクロリド、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。
【0061】
重合混合物に添加される量官能化剤の量は、使用するV含有化合物の量、官能化剤の種類、所望の官能性水準などを含む様々な要因に依存し得る。1つ又は2つ以上の実施形態では、官能化剤の量は、V含有化合物のモル当たり、約1〜約200モル、一般的には約5〜約150モル、通常は約10〜約100モルの範囲であり得る。
【0062】
官能化剤は、重合若しくは少なくともその一部が実行された場所(例えば容器内)で、又はそこから離れた場所で重合混合物に導入することもできる。例えば官能化剤は、下流反応器若しくはタンク、インライン反応器若しくはミキサ、押出機、又は脱揮発槽を含む下流容器内で重合混合物に導入することができる。
【0063】
必須ではないが所望に応じて、任意の残った反応性コポリマー鎖及び触媒組成物を不活性化するために、失活を実行できる。焼き入れは、25℃〜約150℃の温度で最大で約120分間、ポリマーとアルコール又は酸などの活性水素含有化合物とを攪拌することによって実施され得る。いくつかの実施形態で焼き入れ剤は、米国特許第7,879,958号に開示されているようにポリヒドロキシ化合物を含むことができる。酸化防止剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を添加することを、急冷剤の添加と一緒に、添加する前に、又は添加した後に行ってもよい。用いられる酸化防止剤の量は、ポリマー生成物の約0.2〜1%(重量)であり得る。失活剤及び酸化防止剤は未希釈で添加してもよいし、重合混合物への添加前に、必要に応じて炭化水素溶媒若しくは液体モノマーに溶解させてもよい。
【0064】
重合、官能化(もしあれば)及び失活(もしあれば)が終了すると、重合混合物の種々の成分を回収できる。未反応のモノマーは重合混合物から、例えば蒸留又は脱揮発槽を用いて回収することができる。回収したモノマーは、精製、保存、及び/又は重合プロセスでの再利用が可能である。
【0065】
ポリマー生成物は、既知の技術を使用して重合混合物から回収できる。例えば、重合混合物を脱溶媒押出機などの加熱スクリュー装置を通過させてもよく、ここで揮発性物質(例えば、低沸点溶媒及び未反応のモノマー)を、適切な温度(例えば約100℃〜約170℃)、及び大気圧下又は亜大気圧下での蒸発により除去する。別の選択肢は蒸気脱溶媒と、それに続いて得られたポリマークラムを熱風式トンネルで乾燥させることを含む。更に別の選択肢としては、重合混合物をドラム乾燥機で乾燥することによって直接ポリマーを回収することが含まれる。前述のいずれかを水、アルコール又は蒸気による凝固と組み合わせてもよく、凝固を実施する場合には、オーブン乾燥が望ましいことがある。
【0066】
回収されたポリマーは他のモノマーとグラフトして、並びに/又は他のポリマー(例えばポリオレフィン)及び添加物とブレンドして、種々の用途に有用な樹脂組成物を形成できる。更に反応させるかどうかに関わらず、このポリマーは、以下に限定されるわけではないが、タイヤトレッド、サイドウォール、サブトレッド、及びビードフィラーを含む種々のタイヤ構成要素の製造での使用に特に適している。また、エラストマー性配合物の相溶化剤として使用することができるし、かつ/又は、ホース、ベルト、靴底、ウインドウシール、他のシール、振動減衰ゴム、及び他の産業用若しくは消費者用製品の製造で使用することもできる。
【0067】
得られるポリマーを特定のエラストマー組成物に利用する場合、トレッドストックに使用されるそれらのように、単体で使用されてもよいし、又は従来から用いられている任意のトレッドストックゴムとブレンドしてもよい。ここで、従来から用いられているトレッドストックゴムとしては、天然ゴム及び/又は非官能化合成ゴム、例えば、ポリエンのみに由来するマー単位を含む1種類又は2種類以上のホモ及びインターポリマー(例えば、ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、及びブタジエン、イソプレンなどを組み込むコポリマー)、SBR、ブチルゴム、ネオプレン、EPR、EPDM、NBR、シリコーンゴム、フルオロエラストマー、エチレン/アクリルゴム、EVA、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン酸化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレンゴムなどが挙げられる。官能化ポリマー(複数可)が従来のゴム(複数可)とブレンドされるとき、その量は総ゴムの約5〜約99%で変動することができ、従来のゴム(複数可)が総ゴムの残りを構成する。
【0068】
非晶質シリカ(SiO)を充填剤として用いることができる。シリカは一般に、水中での化学反応により製造されて超微細球状粒子として沈殿されるため、湿式法での水和シリカとして分類される。これらの一次粒子は強く会合して凝集体になり、この凝集体は、比較的弱い力で結合して粒塊になる。「高分散性シリカ」は、脱凝集して、薄片顕微鏡により観察され得るエラストマー性マトリックス中に分散するための非常に実質的な能力を有する任意のシリカである。
【0069】
表面積により、異なる二酸化ケイ素の強化する特性の信頼できる指標が与えられる。ブルナウアー−エメット−テラー(「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,vol.60,p.309及び以下に記載されている)は、表面積を決定するための広く認められている方法である。シリカのBET表面積は一般に450m/g未満であり、有用な表面範囲は約32〜約400m/g、約100〜約250m/g、及び約150〜約220m/gを含む。
【0070】
シリカ充填剤のpHは、一般に約5〜約7又はわずかにそれを超え、好ましくは約5.5〜約6.8である。
【0071】
使用され得るいくつかの市販のシリカとしては、Hi−Sil(商標)215、Hi−Sil(商標)233、及びHi−Sil(商標)190(PPG Industries,Inc.;Pittsburgh,Pennsylvania)が挙げられる。市販のシリカの他の供給元としては、Grace Davison(Baltimore,Maryland)、Degussa Corp.(Parsippany,New Jersey)、Rhodia Silica Systems(Cranbury,New Jersey)、及びJ.M.Huber Corp.(Edison,NewJersey)が挙げられる。
【0072】
シリカは1〜100phrの量で、一般的に約5〜約80phrの量で使用することができる。有用な上限は、かかる充填剤によって付与され得る高い粘性によって制限される。
【0073】
他の有用な充填剤としては、あらゆる形態のカーボンブラックが挙げられ、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びランプブラックなどが含まれるが、これらに限定されない。より具体的にはカーボンブラックの例としては、超摩耗ファーネスブラック、高摩耗ファーネスブラック、高速押出ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、中間超摩耗ファーネスブラック、半補強性ファーネスブラック、中級加工チャンネルブラック、ハード加工チャンネルブラック、導電性チャンネルブラック、及びアセチレンブラックが挙げられ、これらのうちの2つ以上の混合物が使用されてもよい。少なくとも20m/g、好ましくは少なくとも約35m/gの表面積(EMSA)を有するカーボンブラックが好ましく、表面積値は、CTAB法を用いてASTM D−1765によって判定され得る。カーボンブラックはペレット化形態であってもよく、又はペレット化されていない綿状塊あってもよいが、特定のミキサでの使用では、ペレット化されてないカーボンブラックが好ましいこともある。
【0074】
カーボンブラックの量は最大約50phrであってもよく、通常5〜40phrである。カーボンブラックをシリカと共に用いるとき、シリカの量を約1phr程度に減らすことができ、シリカの量を減らした場合は、使用する加工助剤、更にもしあればシランの量を減らすことができる。
【0075】
エラストマー性化合物は通常、エラストマー性ストックの総体積で割った添加充填剤(複数可)の総体積である体積分率が約25%になるように充填されて、したがって、補強充填剤、すなわち、シリカとカーボンブラックの通常の(合わせた)量は約30〜100phrである。
【0076】
シリカが補強充填剤として用いられる場合、シランなどのカップリング剤の添加はエラストマー(複数可)への良好な混合及びエラストマー(複数可)との相互作用を確実にするために慣用される。一般に添加されるシランの量は、エラストマー性化合物中に存在するシリカ充填剤の重量に対して、約4〜20%の範囲内である。
【0077】
カップリング剤は、シリカ充填剤の表面上の基(例えば、表面シラノール基)と物理的及び/又は化学的に結合が可能な官能基、並びにエラストマーとの(例えば、硫黄含有結合を介した)結合が可能な官能基を含む。かかるカップリング剤としては、有機シラン、特に、多硫化アルコキシシラン(例えば、米国特許第3,873,489号、同第3,978,103号、同第3,997,581号、同第4,002,594号、同第5,580,919号、同第5,583,245号、同第5,663,396号、同第5,684,171号、同第5,684,172号、同第5,696,197号など参照)又は上に記載の官能基のタイプを有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。例示のカップリング剤は、ビス[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィドである。
【0078】
加工助剤の添加は、使用されるシランの量を減少させるために用いることができる。加工助剤として使用する糖の脂肪酸エステルの説明に関しては、米国特許第6,525,118号を参照されたい。加工助剤として有用な追加の充填剤としては、クレイ(含水ケイ酸アルミニウム)、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)及びマイカなどの鉱物充填剤に加え、尿素及び硫酸ナトリウムなどの非鉱物充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいマイカは、主にアルミナ、シリカ、及び炭酸カリウムを含むが、他の変種が有用な場合もある。追加の充填剤は、最大約40phr、通常最大約20phrの量で用いることができる。
【0079】
他の従来のゴム添加剤が添加されてもよい。例えばこれらには、プロセスオイル、可塑剤、酸化防止剤、及びオゾン劣化防止剤などの劣化防止剤、硬化剤などが含まれる。
【0080】
全ての成分を標準の機器、例えば、Banbury型又はBrabender型ミキサを用いて混合することができる。通常、混合は、2つ以上の段階で行われる。第1段階(多くの場合、マスタバッチ段階と称される)の間、混合は通常、120〜130℃の温度で開始し、いわゆる降下温度、通常は163℃±3℃に到達するまで上昇させる。
【0081】
配合物がシリカを含む際、多くの場合、別の再ミル段階がシラン成分(複数可)の別の添加のために用いられる。この段階は、多くの場合、マスタバッチ段階で用いられる温度、すなわち、約90℃から約150℃の降下温度まで上昇される温度と同様であるが、多くの場合、これよりわずかに低い温度で実施される。
【0082】
強化されたゴム化合物は従来法により、例えば硫黄又は過酸化物系硬化系などの1種類又は2種類以上の公知の加硫剤約0.2〜約5phrで硬化される。好適な加硫剤の一般的な開示について興味のある読者は、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chem.Tech.,3d ed.(Wiley Interscience,New York,1982),vol 20,pp.365〜468に示されるような概説を参照されたい。加硫剤、促進剤などは最終の混合段階で添加される。加硫の開始が早まって発生しないことを確実にするために、この混合工程は、多くの場合低温で実施されて、例えば約60〜約65℃で開始して、約105〜約110℃よりも高温にされない。
【0083】
本発明の種々の実施形態は、限定ではなく例として提供されている。先の説明から明らかなように、特徴、範囲、数値限定、及び実施形態に関する全体的な選好は、干渉しないか、又は不適合性でない限り、実行可能な程度に、他のかかる全体的に好ましい特徴、範囲、数値限定、及び実施形態と組み合わせることができると想定される。
【0084】
以下の非限定的かつ例示的な実施例は、本発明の実施において有用となり得る詳細な条件及び材料を読者に示すものである。実施例で用いられる触媒は、米国特許第4,189,558号に記載されている合成手順に従って調製した。
【実施例】
【0085】
実施例1〜3:塩素化したケトン
予め乾燥させたNパージしたボトルに、ヘキサン、ヘキサン中の1,3−ブタジエンブレンド、及びプロピレンを添加して、30%(重量/重量)のモノマー、具体的には43.9gの1,3−ブタジエン及び31.1gのプロピレンを含む250gの溶液を得た。即ち、プロピレンに対して1,3−ブタジエンが10%モル過剰で提供されている。
【0086】
各ボトルは、溶液が−22℃に冷却されるまで激しく撹拌しながらドライアイス/CCl槽に入れた。
【0087】
各ボトルに、0.83mLのVO[OCHC(CHCl溶液(ヘキサン中に0.45M)及び3.3mLのTIBA溶液(ヘキサン中に1.03M)を添加した。これにより、モノマー100部当たり約0.5mmolのV及び9:1のTIBA対V比を得た。
【0088】
以下の表で実施例1(比較)と示されるボトルは、更なる成分が添加されず、その一方で、実施例2及び3と示されるボトルには、それぞれ、67μL及び100μLの未希釈のヘキサクロロアセトン(HCLA)が添加された。
【0089】
各重合を、最後の触媒成分が添加されてから約4時間の間、−22℃で進めさせた。
【0090】
各ポリマーセメントを、BHTを含有する約5mLのイソプロパノールで急冷した後、大量のイソプロパノールで凝固させ、120℃のドラム乾燥機で乾燥させた。
【0091】
これらのポリマーの各々の特性を表1にまとめる。
【表1】
【0092】
表1のデータは、高度にハロゲン化されたケトンの存在により触媒の活性が向上し(即ち、例示的な高度にハロゲン化されたケトンを含まない、それ以外は同一の触媒組成物に対してポリマー収率が増加)、分子量に正の影響を与えたことを示している。これらの改良は、成分のマーの量及び/又は配置に著しく影響を及ぼすことなく成し遂げられた。
【0093】
実施例4〜5(比較):塩素化した酢酸エステル
予め乾燥させたNパージしたボトルに、ヘキサン、ヘキサン中の1,3−ブタジエンブレンド、及びプロピレンを添加して、30.7%(重量/重量)のモノマー、具体的には34.5gの1,3−ブタジエン及び26.9gのプロピレンを含む200gの溶液、即ち、1:1のモル比のモノマーを得た。各ボトルを、溶液が約−47℃に冷却されるまで激しく撹拌しながらドライアイス/キシレン槽に入れた。
【0094】
各ボトルに、0.68mLのVO[OCHC(CHCl溶液(ヘキサン中に0.45M)及び3.0mLのTIBA溶液(ヘキサン中に1.03M)を添加した。これにより、モノマー100部当たり約0.5mmolのV及び10:1のTIBA対V比を得た。以下の表で実施例4と示されるボトルは、更なる成分が添加されず、その一方で、実施例5と示されるボトルには、120μLの未希釈のトリクロロ酢酸エチル(ECLA)が添加された。
【0095】
各重合を、最後の触媒成分が添加されてから約4時間の間、−47℃で進めさせた。
【0096】
各ポリマーセメントを、実施例1〜3に記載される手順と同様に処理し、それらのポリマーの特性を、表2にまとめる。
【表2】
【0097】
表2のデータは、ハロゲン化した酢酸エステルの存在が、触媒活性に有害な影響があることを示す(即ち、添加剤を含有しない、それ以外は同一の触媒組成物に対して転化率を減少させた)。