特許第6772277号(P6772277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772277
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/28 20060101AFI20201012BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20201012BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20201012BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   H05B33/28
   H05B33/22 Z
   H05B33/12 B
   H05B33/14 A
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-540595(P2018-540595)
(86)(22)【出願日】2016年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2016078283
(87)【国際公開番号】WO2018055767
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】和氣 範明
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/042845(WO,A1)
【文献】 特開2005−216713(JP,A)
【文献】 特開平11−160704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発光部と、第1透光部と、
前記第1発光部及び前記第1透光部に亘って広がる第1導電層と、
前記第1発光部及び前記第1透光部に亘って広がる発光層を含む有機層と、
前記第1発光部を画定し、前記第1透光部に亘って広がる絶縁層と、
を備え、
前記第1発光部及び前記第1透光部を可視光が透過した場合、CIELABにおいて、前記第1発光部と前記第1透光部の色差は、0.4以上6.5以下である発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
透光領域として機能する領域を有する前記第1透光部と、透光領域として機能する領域を有していて前記第1透光部の内側にある前記第1発光部と、を含み、キャップ層を含む第1領域と、前記第1領域の外側にあって前記第1領域のうちの第1部分領域に接し、前記キャップ層を含まない第2領域と、を備え、
前記第1部分領域及び前記第2領域を可視光が透過した場合、CIELABにおいて、前記第1部分領域と前記第2領域の色差は、0.4以上である発光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発光装置において、
前記第1部分領域及び前記第2領域を可視光が透過した場合、CIELABにおいて、前記第1部分領域と前記第2領域の色差は、0.4以上6.5以下である発光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記有機層の厚さは、500nm以上である発光装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記有機層の厚さは、50nm以下である発光装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
第2発光部を備え、
前記第1導電層は、前記第2発光部に亘って広がり、
前記絶縁層は、前記第2発光部を画定し、
前記第1発光部及び前記第2発光部は、前記第1透光部の内側にあり、
前記第1透光部、第1発光部及び第2発光部を可視光が透過した場合、前記第1透光部と前記第1発光部の色差及び前記第1透光部と前記第2発光部の色差は、CIELABにおいて、いずれも6.5以下である発光装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第1発光部内で前記第1導電層と重なる第2導電層と、
前記第1透光部内で前記第1導電層と重なり、前記第2導電層から離間した第3導電層と、
前記第1発光部と、前記第1発光部から離間して前記第3導電層を含む前記第1透光部と、の間かつ前記第2導電層と前記第3導電層との間の第2透光部と、
を備え、
前記第1導電層は、前記第2透光部に亘って広がり、
前記有機層は、前記第2透光部に亘って広がっている発光装置。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記第1発光部内で前記第1導電層と重なる第2導電層と、
前記第1透光部内で前記第1導電層と重なり、前記第2導電層から離間した第3導電層と、
前記第1発光部と、前記第1発光部から離間して前記第3導電層を含む前記第1透光部と、の間かつ前記第2導電層と前記第3導電層との間の第2透光部と、
を備え、
前記第1導電層は、前記第2透光部に亘って広がり、
前記絶縁層は、前記第2透光部に亘って広がっている発光装置。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
第2発光部を備え、
前記第1導電層は、前記第2発光部に亘って広がり、
前記絶縁層は、前記第2発光部を画定し、
前記第1透光部は、前記第1発光部と前記第2発光部の間の領域を含み、
前記第1発光部、第2発光部及び第1透光部を可視光が透過した場合、CIELABにおいて、前記第1発光部と前記第1透光部の色差及び前記第2発光部と前記第1透光部の色差は、いずれも、前記第1発光部と前記第2発光部の色差よりも小さい発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透光性を有する有機発光ダイオード(OLED)が開発されている。例えば特許文献1には、セグメント(具体的には、7セグメント)を表示する透光性OLEDについて記載されている。このOLEDは、第1電極、有機層及び複数の第2電極を備えている。第1電極は、透明電極であり、セグメントとほぼ同一の形状を有している。有機層は、第1電極を覆っている。複数の第2電極は、第1電極と重なるように有機層上で並んでいる。これにより、光は、互いに隣接する2つの第2電極の間を透過することができる。このようにして、このOLEDは、透光性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−100126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、透光性OLEDの新規な構造について検討した。このOLEDは、有機層及び導電層を備え、有機層及び導電層は、発光部及び透光部に亘って広がっている。本発明者が検討したところ、このようなOLEDを可視光が透過した場合、発光部と透光部の間で色差が生じる場合があることが明らかとなった。このような色差は、できる限り小さいことが好ましい。一方、このような色差は小さすぎると、発光部と透光部を識別することが困難となり、例えばOLEDの検査が困難になる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、透光性OLEDにおいて発光部と透光部の間の色差を発光部と透光部が識別可能な程度で目立たないようにすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
第1発光部と、第1透光部と、
前記第1発光部及び前記第1透光部に亘って広がる第1導電層と、
前記第1発光部及び前記第1透光部に亘って広がる発光層を含む有機層と、
前記第1発光部を画定し、前記第1透光部に亘って広がる絶縁層と、
を備え、
前記第1発光部及び前記第1透光部を可視光が透過した場合、CIELABにおいて、前記第1発光部と前記第1透光部の色差は、0.4以上6.5以下である発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0008】
図1】実施形態に係る発光装置を示す平面図である。
図2図1から導電層を取り除いた図である。
図3図2に示した発光部を示す断面図である。
図4図2に示した第1透光部を示す断面図である。
図5図2に示した第2透光部を示す断面図である。
図6図2に示した第3透光部を示す断面図である。
図7図2に示した第4透光部を示す断面図である。
図8図1及び図2に示した発光装置の断面の一例を示す図である。
図9】発光部、第1透光部及び第2透光部のそれぞれの詳細の第1例を示す断面図である。
図10】発光部、第1透光部及び第2透光部のそれぞれの詳細の第2例を示す断面図である。
図11】実施例に係る発光装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る発光装置10を示す平面図である。図2は、図1から導電層130を取り除いた図である。図3は、図2に示した発光部160を示す断面図である。図4は、図2に示した第1透光部162を示す断面図である。図5は、図2に示した第2透光部164を示す断面図である。図6は、図2に示した第3透光部166を示す断面図である。図7は、図2に示した第4透光部168を示す断面図である。発光装置10は、基板100、複数の導電層110、有機層120、導電層130、絶縁層140、キャップ層150及び複数の発光部160を備えている。なお、説明のため、図1及び図2では、キャップ層150を示していない。
【0011】
基板100は、透光性を有している。一例において、基板100は、ガラス基板である。図1図7に示す例において、基板100は、第1面102及び第2面104を有している。複数の導電層110、有機層120、導電層130、絶縁層140及びキャップ層150は、第1面102上にある。第2面104は、第1面102の反対側にある。
【0012】
導電層110は、透光性を有している。言い換えると、導電層110は、透明導電層である。一例において、導電層110は、ITO(Indium Tin Oxide)を含んでいる。
【0013】
有機層120は、透光性を有しており、複数の発光層(EML)122(発光層(EML)122a及び発光層(EML)122b)を含んでいる。EML122a及びEML122bのそれぞれは、エレクトロルミネセンスにより光を発する有機化合物を含んでいる。EML122aから出射される光の波長は、EML122bから出射される光の波長と異なっている。具体的には、EML122aは、赤色の光(おおよそ600nm以上750nm以下の波長の光)を発し、EML122bは、緑色の光(おおよそ500nm以上570nm以下の波長の光)を発する。
【0014】
導電層130は、透光性を有している。言い換えると、導電層130は、透明導電層である。一例において、導電層130は、MgAg合金を含んでいる。導電層130の厚さは相当に薄く、例えば、15nm以下である。このため、導電層130は、透光性を有している。一例において、可視光(波長380nm以上780nm以下の光)についての導電層130の透過率は、65%以上、好ましくは80%以上である。
【0015】
絶縁層140は、透光性を有している。一例において、絶縁層140は、無機絶縁層であり、具体的には、シリコン酸化物(SiO)を含んでいる。他の例において、絶縁層140は、有機絶縁層であってもよく、具体的には、ポリイミドを含んでいてもよい。
【0016】
絶縁層140は、複数の開口142を有している。絶縁層140の開口142から露出している領域は、発光部160として機能しており、言い換えると、絶縁層140は、複数の発光部160を画定している。
【0017】
キャップ層150は、透光性を有している。一例において、キャップ層150は、絶縁層である。キャップ層150は、導電層130を覆っている。このようにして、キャップ層150は、導電層130と空気層との屈折率段差を緩和し、透過率を向上させている。
【0018】
複数の発光部160のそれぞれは、導電層110と導電層130の間の電圧によって光を発する。具体的には、導電層110は、絶縁層140の開口142と重なる領域内においてアノード(第1電極112)として機能する領域を有している。導電層130は、絶縁層140の開口142と重なる領域内においてカソード(第2電極132)として機能する領域を有している。複数の発光部160のうちの第1発光部160aは、EML122aから光を発する。複数の発光部160のうち第2発光部160bは、EML122bから光を発する。
【0019】
なお、図1及び2に示す例において、発光装置10は、3つの導電層110を備えている。3つの導電層110のうち中央の導電層110は、絶縁層140によって導電層130から電気的に絶縁されている。言い換えると、この導電層110は、アノードとして機能しておらず、ダミー導電層として機能している。
【0020】
図1図7に示す例において、発光装置10は、ボトムエミッションである。すなわち、EML122からの光は、基板100の第2面104から外側へ出射される。
【0021】
発光装置10は、透光性を有している。より具体的には、基板100、複数の導電層110、有機層120、導電層130、絶縁層140及びキャップ層150は、いずれも透光性を有している。このため、基板100の第2面104側からは、基板100の第1面102側の物体が透けて見える。同様にして、基板100の第1面102側からは、基板100の第2面104側の物体が透けて見える。
【0022】
図3に示すように、発光部160は、基板100、導電層110、有機層120、導電層130及びキャップ層150の積層を含んでいる。言い換えると、発光部160は、絶縁層140(図4図7)を有していない。発光部160において、有機層120は、EML122(図3に示す例では、EML122a)を含んでいる。
【0023】
図4に示すように、第1透光部162は、基板100、導電層110、絶縁層140、有機層120、導電層130及びキャップ層150の積層を含んでいる。第1透光部162において、有機層120は、EML122(図4に示す例では、EML122a)を含んでいる。
【0024】
図5に示すように、第2透光部164は、基板100、絶縁層140、有機層120、導電層130及びキャップ層150の積層を含んでいる。言い換えると、第2透光部164は、導電層110(図3図4図6及び図7)を有していない。第1透光部162において、有機層120は、EML122(図5に示す例では、EML122a)を含んでいる。特に図1及び図2に示した例では、第2透光部164は、互いに隣接する2つの導電層110の間にある。
【0025】
図6に示すように、第3透光部166は、基板100、導電層110、絶縁層140、有機層120、導電層130及びキャップ層150の積層を含んでいる。第3透光部166において、有機層120は、互いに重なった複数のEML122(図6に示す例では、EML122a及びEML122b)を含んでいる。
【0026】
図7に示すように、第4透光部168は、基板100、導電層110、絶縁層140、有機層120、導電層130及びキャップ層150の積層を含んでいる。第4透光部168において、有機層120は、EML122を含んでいない。
【0027】
図3図7に示すように、発光部160、第1透光部162、第2透光部164、第3透光部166及び第4透光部168は、共通の有機層(有機層120)、共通の第1導電層(導電層130)及び共通のキャップ層(キャップ層150)を有している。言い換えると、有機層120、導電層130及びキャップ層150は、発光部160、第1透光部162、第2透光部164、第3透光部166及び第4透光部168に亘って広がっている。特に、図3図5に示すように、発光部160、第1透光部162、第2透光部164及び第3透光部166は、共通の発光層(EML122a)を有している。言い換えると、EML122aは、発光部160、第1透光部162、第2透光部164及び第3透光部166に亘って広がっている。さらに、図1及び2に示す例では、第1発光部160a及び第2発光部160bは、共通の第1導電層(導電層130)を有している。言い換えると、導電層130は、第1発光部160a及び第2発光部160bに亘って広がっている。
【0028】
図4図7に示すように、第1透光部162、第2透光部164、第3透光部166及び第4透光部168は、共通の絶縁層(絶縁層140)を有している。言い換えると、絶縁層140は、第1透光部162、第2透光部164、第3透光部166及び第4透光部168に亘って広がっている。
【0029】
図8は、図1及び図2に示した発光装置10の断面の一例を示す図である。なお、本図では、説明のため、キャップ層150(図3図7)を示していない。本図に示す例において、発光装置10は、3種類の領域、すなわち、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164を有している。図3を用いて説明したように、発光部160は、基板100、導電層110、有機層120及び導電層130の積層を有している。図4を用いて説明したように、第1透光部162は、基板100、導電層110、絶縁層140、有機層120及び導電層130の積層を有している。図5を用いて説明したように、第2透光部164は、基板100、絶縁層140、有機層120及び導電層130の積層を有している。
【0030】
発光装置10は、2つの導電層110を備えている。2つの導電層110は、互いに離間している。2つの導電層110のうちの一方(第2導電層:本図に示す例では、第1電極112として機能する領域を有する導電層110)は、発光部160において有機層120及び導電層130と重なっている。2つの導電層110のうちの他方(第3導電層:本図に示す例では、ダミー導電層114)は、第1透光部162において絶縁層140、有機層120及び導電層130と重なっている。
【0031】
有機層120は、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って広がっており、特に本図に示す例では、互いに離間した2つの導電層110に亘って広がっている。これにより、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164の間の色差を抑制することができる。
【0032】
詳細には、外部からの可視光(波長380nm以上780nm以下の光)が発光装置10を透過した場合、この可視光は、発光装置10の透過前後で異なる色を有するようになることがある。このような現象は、一例において、特定の波長の光が強め合う干渉が有機層120によって生じる場合(言い換えると、有機層120によってマイクロキャビティが形成される場合)、又は他の例において、有機層120が特定の波長の光を吸収する場合に生じる。本図に示す例では、有機層120は、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って広がっている。このため、仮に、可視光の色がこのように変化しても、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164の間の色差を抑制することができる。
【0033】
さらに、有機層120の厚さは、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って実質的に一定である。言い換えると、発光部160における有機層120の厚さは、第1透光部162における有機層120の厚さ及び第2透光部164における有機層120の厚さのそれぞれと実質的に等しく、具体的には、第1透光部162における有機層120の厚さの例えば95%以上105%以下かつ第2透光部164における有機層120の厚さの例えば95%以上105%以下である。これにより、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164の間の色差をさらに抑制することができる。
【0034】
詳細には、特定の波長の光が強め合う干渉が有機層120の上面と下面の間で生じることがある。本図に示す例では、仮に、このような干渉が生じたとしても、有機層120の厚さは、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って実質的に一定である。このため、発光部160の有機層120で干渉が生じる波長、第1透光部162の有機層120で干渉が生じる波長及び第2透光部164の有機層120で干渉が生じる波長は、互いにほぼ等しくなる。これにより、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164の間の色差をさらに抑制することができる。
【0035】
絶縁層140は、発光部160を画定し、第1透光部162及び第2透光部164に亘って広がっており、特に本図に示す例では、互いに離間した2つの導電層110に亘って広がっている。これにより、第1透光部162及び第2透光部164の間の色差を抑制することができる。
【0036】
詳細には、外部からの可視光(波長380nm以上780nm以下の光)が発光装置10を透過した場合、この可視光は、発光装置10の透過前後で異なる色を有するようになることがある。このような現象は、一例において、特定の波長の光が強め合う干渉が絶縁層140によって生じる場合(言い換えると、絶縁層140によってマイクロキャビティが形成される場合)、又は他の例において、絶縁層140が特定の波長の光を吸収する場合に生じる。本図に示す例では、絶縁層140は、第1透光部162及び第2透光部164に亘って広がっている。このため、仮に、可視光の色がこのように変化しても、第1透光部162及び第2透光部164の間の色差を抑制することができる。
【0037】
さらに、絶縁層140の厚さは、第1透光部162及び第2透光部164に亘って実質的に一定である。言い換えると、第2透光部164における絶縁層140の厚さは、第1透光部162における絶縁層140の厚さと実質的に等しく、具体的には、第1透光部162における絶縁層140の厚さの例えば95%以上105%以下である。これにより、第1透光部162及び第2透光部164の間の色差をさらに抑制することができる。
【0038】
詳細には、特定の波長の光が強め合う干渉が絶縁層140の上面と下面の間で生じることがある。本図に示す例では、仮に、このような干渉が生じたとしても、絶縁層140の厚さは、第1透光部162及び第2透光部164に亘って実質的に一定である。このため、第1透光部162の絶縁層140で干渉が生じる波長及び第2透光部164の絶縁層140で干渉が生じる波長は、互いにほぼ等しくなる。これにより、第1透光部162及び第2透光部164の間の色差をさらに抑制することができる。
【0039】
図9は、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164のそれぞれの詳細の第1例を示す断面図である。本図に示す例において、有機層120は、正孔注入層(HIL)120a、正孔輸送層(HTL)120b、発光層(EML)120c(図1図7に示したEML122)及び電子輸送層(ETL)120dを含んでいる。なお、有機層120に含まれる層は、本図に示す例に限定されるものではない。一例において、有機層120は、ETL120dと導電層130の間に電子注入層(EIL)をさらに含んでいてもよい。
【0040】
本図に示す例において、有機層120の厚さは相当に厚く、例えば500nm以上、好ましくは例えば1000nm以上である。より具体的には、本図に示す例において、有機層120のうちのHIL120a(すなわち、導電層110及び絶縁層140に接する層(第1層))の厚さが相当に厚く、例えば100nm以上、好ましくは例えば200nm以上である。有機層120の厚さがこのように厚い場合、有機層120の上面と下面の間で可視光(波長380nm以上780nm以下の光)による強め合いの干渉が生ずること、すなわちマイクロキャビティが生ずることが防止される。このため、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164間での色差が小さくなっている。
【0041】
詳細には、有機層120の上面と下面の間で可視光による強め合いの干渉が生ずるための条件は、以下の式(1)に示すようになる。
2L=mλ (1)
ただし、Lは有機層120の上面と下面の間の光路長、mは1以上の整数、λは可視光の波長である。有機層120の厚さが厚い場合、式(1)の光路長Lは大きいものとなる。この場合に式(1)を満たすためには、整数mが大きい必要がある。一方、このような高次の干渉は、実際にはほとんど生じ得ない。このようにして、本図に示す例では、有機層120の上面と下面の間で可視光(波長380nm以上780nm以下の光)による強め合いの干渉が生ずること、すなわちマイクロキャビティが生ずることが防止されている。
【0042】
本図に示す例において、HIL120aの厚さは、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って実質的に一定である。言い換えると、発光部160におけるHIL120aの厚さは、第1透光部162におけるHIL120aの厚さ及び第2透光部164におけるHIL120aの厚さのそれぞれと実質的に等しく、具体的には、第1透光部162におけるHIL120aの厚さの例えば95%以上105%以下かつ第2透光部164におけるHIL120aの厚さの例えば95%以上105%以下である。これにより、有機層120の厚さが発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って実質的に一定になる。
【0043】
本図に示す例において、HIL120aは、導電性高分子材料、具体的には例えばPEDOT:PSSを含んでいる。このため、HIL120aの厚さが厚くても、発光部160を発光させるための電圧(すなわち、駆動電圧)が高くならないようにすることができる。
【0044】
さらに、HIL120aは、塗布プロセスにより形成されている。具体的には、正孔注入材料を含むインクを塗布する。次いで、このインクを加熱する。これにより、HIL120aが形成される。
【0045】
図10は、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164のそれぞれの詳細の第2例を示す断面図である。本図に示す例は、以下の点を除いて、図9に示した例と同様である。
【0046】
本図に示す例において、有機層120の厚さは相当に薄く、例えば50nm以下、好ましくは例えば30nm以下である。有機層120の厚さがこのように薄い場合、有機層120の上面と下面の間で可視光(波長380nm以上780nm以下の光)による強め合いの干渉が生ずること、すなわちマイクロキャビティが生ずることが防止される。このため、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164間での色差が小さくなっている。
【0047】
詳細には、有機層120の上面と下面の間で可視光による強め合いの干渉が生ずるための条件は、上記した式(1)に示すようになる。有機層120の厚さが薄い場合、式(1)の光路長Lは小さいものとなる。特に有機層120の厚さが相当に薄い場合、いずれの整数mであっても、式(1)を満たし得ない。このようにして、本図に示す例では、有機層120の上面と下面の間で可視光(波長380nm以上780nm以下の光)による強め合いの干渉が生ずること、すなわちマイクロキャビティが生ずることが防止されている。
【0048】
以上、本実施形態によれば、有機層120は、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って広がっている。さらに、有機層120の厚さは、相当に厚く、又は相当に薄い。さらに、有機層120の厚さは、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って実質的に一定である。このため、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164の間での色差が小さくなっている。
【0049】
さらに、本実施形態によれば、絶縁層140は、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って広がっている。さらに、絶縁層140の厚さは、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164に亘って実質的に一定である。このため、発光部160、第1透光部162及び第2透光部164の間での色差が小さくなっている。
【実施例】
【0050】
図11は、実施例に係る発光装置10を示す平面図である。本実施例において、発光装置10は、第1領域R1及び第2領域R2を備えている。第1領域R1は、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3を含んでいる。第1透光領域TR1及び第2透光領域TR2は、第3透光領域TR3の内側にある。本図に示す例では、第3透光領域TR3の面積は、第1透光領域TR1の面積及び第2透光領域TR2の面積のいずれよりも大きい。第3透光領域TR3は、第1透光領域TR1と第2透光領域TR2の間の領域(領域RR)を含んでいる。第2領域R2は、第1領域R1の外側にあり、本図に示す例では、第1領域R1を囲んでいる。第1領域R1は、第1部分領域PR1を含んでいる。また、第2領域R2はキャップ層150を含まなくてもよい。第1部分領域PR1は、第2領域R2に接しており、本図に示す例では、第1領域R1の外縁に沿って延伸している。
【0051】
発光装置10は、第1発光部160a(発光部160)、第2発光部160b(発光部160)及び第1透光部162を備えている。第1発光部160aは、第1透光領域TR1として機能する領域を有している。本図に示す例において、第1発光部160aは、7セグメントを表示している。第2発光部160bは、第2透光領域TR2として機能する領域を有している。本図に示す例において、第2発光部160bは、+(プラス)マークを表示している。第1透光部162は、第3透光領域TR3として機能する領域を有している。
【0052】
図11に示す発光部160は、実施形態に係る発光部160と同様である。具体的には、図3を用いて説明したように、発光部160は、基板100、導電層110、有機層120、導電層130及びキャップ層150の積層を含んでいる。特に、第1発光部160a及び第2発光部160bは、図1及び図2を用いて説明したように、それぞれ、EML122a及びEML122bから光を発する。
【0053】
図11に示す第1透光部162は、実施形態に係る第1透光部162と同様である。具体的には、図4を用いて説明したように、第1透光部162は、基板100、導電層110、絶縁層140、有機層120、導電層130及びキャップ層150の積層を含んでいる。
【0054】
実施形態と同様にして、第1発光部160a、第2発光部160b及び第1透光部162は、共通の第1導電層(導電層130)(図1図7)を有している。言い換えると、導電層130は、第1発光部160a、第2発光部160b及び第1透光部162に亘って広がっている。または、導電層130は、その一部が離間していてもよい。
【0055】
本図に示す例において、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3を可視光(波長380nm以上780nm以下の光)が透過した場合、より具体的には、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3をD65光源からの光が透過した場合、第1透光領域TR1と第3透光領域TR3の色差及び第2透光領域TR2と第3透光領域TR3の色差は、いずれもある程度小さく、CIELABにおいて、いずれも例えば6.5以下、好ましくは例えば3.2以下である。これにより、第1透光領域TR1及び第2透光領域TR2のいずれとも目立たないようになる。
【0056】
詳細には、一例において、第1透光領域TR1と第3透光領域TR3の色差をほぼゼロにしても、第2透光領域TR2と第3透光領域TR3の色差がある程度大きいときは、第2透光領域TR2が目立ってしまう。他の例において、第2透光領域TR2と第3透光領域TR3の色差をほぼゼロにしても、第1透光領域TR1と第3透光領域TR3の色差がある程度大きいときは、第1透光領域TR1が目立ってしまう。本図に示す例では、第1透光領域TR1と第3透光領域TR3の色差及び第2透光領域TR2と第3透光領域TR3の色差は、いずれもある程度小さい。このため、第1透光領域TR1及び第2透光領域TR2のいずれとも目立たないようになる。
【0057】
なお、他の例において、第1透光領域TR1及び第2透光領域TR2は、第3透光領域TR3の内側になくてもよい。この例において、第1透光領域TR1及び第2透光領域TR2は、第3透光領域TR3の近傍に位置していてもよく、より具体的には、第3透光領域TR3に接していてもよい。この場合において第3透光領域TR3の面積が第1透光領域TR1の面積及び第2透光領域TR2の面積のいずれよりも大きくても、第1透光領域TR1と第3透光領域TR3の色差及び第2透光領域TR2と第3透光領域TR3の色差がいずれも上記したようにある程度小さいときは、第1透光領域TR1及び第2透光領域TR2のいずれとも目立たないようになる。
【0058】
本図に示す例において、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3を可視光(波長380nm以上780nm以下の光)が透過した場合、より具体的には、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3をD65光源からの光が透過した場合、第1透光領域TR1と第3透光領域TR3の色差及び第2透光領域TR2と第3透光領域TR3の色差は、ある程度大きく、CIELABにおいて、いずれも例えば0.4以上である。これにより、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3の識別が可能となる。
【0059】
詳細には、第1透光領域TR1と第3透光領域TR3の色差が0.4未満である場合、人間の視覚では第1透光領域TR1と第3透光領域TR3を識別することが困難になり、同様にして、第2透光領域TR2と第3透光領域TR3の色差が0.4未満である場合、人間の視覚では第2透光領域TR2と第3透光領域TR3を識別することが困難になる。第1透光領域TR1と、第2透光領域TR2と、第3透光領域TR3とを識別することが困難な場合、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3の検査が困難なものとなる。本図に示す例では、第1透光領域TR1と第3透光領域TR3の色差及び第2透光領域TR2と第3透光領域TR3の色差は、ある程度大きい。このため、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3の識別が可能となる。このため、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3の検査が容易なものとなる。
【0060】
本図に示す例において、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3を可視光(波長380nm以上780nm以下の光)が透過した場合、より具体的には、第1透光領域TR1、第2透光領域TR2及び第3透光領域TR3をD65光源からの光が透過した場合、CIELABにおいて、第1透光領域TR1と第3透光領域TR3の色差及び第2透光領域TR2と第3透光領域TR3の色差は、いずれも、第1透光領域TR1と第2透光領域TR2の色差よりも小さく、言い換えると、第1透光領域TR1と領域RRの色差及び第2透光領域TR2と領域RRの色差は、いずれも、第1透光領域TR1と第2透光領域TR2の色差よりも小さい。これにより、第1透光領域TR1から第2透光領域TR2にかけての色差が目立つことを抑制することができる。
【0061】
詳細には、第1透光領域TR1と第2透光領域TR2の色差は、第1透光領域TR1と第2透光領域TR2が互いに接している場合では、第1透光領域TR1と第2透光領域TR2が互いに離れている場合よりも、人間の知覚にとって際立つようになる。本図に示す例では、第1透光領域TR1と第2透光領域TR2の間に領域RRが位置している。このため、仮に、第1透光領域TR1と第2透光領域TR2の色差が大きい場合であっても、第1透光領域TR1から第2透光領域TR2にかけての色差が目立つことを抑制することができる。
【0062】
なお、第1透光領域TR1及び第2透光領域TR2を可視光(波長380nm以上780nm以下の光)が透過した場合、より具体的には、第1透光領域TR1及び第2透光領域TR2をD65光源からの光が透過した場合、第1透光領域TR1と第2透光領域TR2の色差は、CIELABにおいて、例えば0.4以上6.5以下である。
【0063】
本図に示す例において、第1部分領域PR1及び第2領域R2を可視光(波長380nm以上780nm以下の光)が透過した場合、より具体的には、第1部分領域PR1及び第2領域R2をD65光源からの光が透過した場合、第1部分領域PR1と第2領域R2の色差は、ある程度小さく、CIELABにおいて、例えば6.5以下、好ましくは例えば3.2以下である。これにより、第1領域R1及び第2領域R2が互いに目立つことを抑制することができる。
【0064】
詳細には、第1部分領域PR1と第2領域R2の色差がある程度大きい場合、第1領域R1と第2領域R2が互いに目立つようになる。本図に示す例では、第1部分領域PR1と第2領域R2の色差は、ある程度小さい。このため、第1領域R1及び第2領域R2が互いに目立つことを抑制することができる。
【0065】
本図に示す例において、第1部分領域PR1及び第2領域R2を可視光(波長380nm以上780nm以下の光)が透過した場合、より具体的には、第1部分領域PR1及び第2領域R2をD65光源からの光が透過した場合、第1部分領域PR1と第2領域R2の色差は、ある程度大きく、CIELABにおいて、例えば0.4以上である。これにより、第1領域R1及び第2領域R2の識別が可能となる。
【0066】
詳細には、第1部分領域PR1と第2領域R2の色差が0.4未満である場合、人間の視覚では第1部分領域PR1と第2透光領域TR2を識別することが困難になる。第1部分領域PR1と第2領域R2を識別することが困難な場合、第1領域R1及び第2領域R2の検査が困難なものとなる。本図に示す例では、第1部分領域PR1と第2領域R2の色差は、ある程度大きい。このため、第1領域R1及び第2領域R2の識別が可能となる。このため、第1部分領域PR1及び第2領域R2の検査が容易なものとなる。
【0067】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11