(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改良されたX線発生装置があることが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、各独立請求項の主題によって達成される。更なる実施形態は、従属請求項に組み込まれる。なお、以下に説明される本発明の態様及び例は、X線発生装置、X線発生システム、X線発生方法並びにコンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体にも当てはまる。
【0006】
第1の態様によれば、X線発生装置が提供される。当該装置は、
少なくとも1つのカソードと、
アノードと、
電源と、
処理ユニットとを含む。
【0007】
電源は、少なくとも1つのカソードとアノードとの間に少なくとも2つの電圧を生成し、当該少なくとも2つの電圧は、第1の電圧及び第2の電圧を含む。少なくとも1つのカソード及びアノードは、少なくとも2つの電圧に対応するエネルギーで、少なくとも1つのカソードから放出される電子がアノードと相互作用するように動作可能であり、電子がアノードと相互作用してX線を発生する。少なくとも1つのカソード及びアノードは、電源が第1の電圧を生成する場合は、第1のX線を発生するように、また、電源が第2の電圧を生成する場合は、第2のX線を発生するように動作可能である。処理ユニットは、第1のX線と第2のX線との比が制御可能であるように電源を制御する。
【0008】
このようにすると、単一のソースについて組み合わせられた複数のエネルギーが重ね合わされて、X線スペクトルが成形される。言い換えると、追加の自由度を利用して、スペクトル成形が高められる。ソーススペクトルは成形されることが可能となり、これは、ソース−患者−検出器システムに依存して、スペクトルが最適化されることを容易にする。
【0009】
つまり、様々な電圧(これらの様々な電圧は、1つ以上のソースに印加可能である)の組み合わせ(例えば線形)は、患者、造影剤、検出器及び行われているスペクトル検査に合わせて調整及び最適化可能である様々なスペクトルが各ソースから生成されることを可能にする。画像内のボクセルを再構成するために使用される線積分は、ソース電圧エネルギーの組み合わせから導出される放射X線に関連付けられ、様々な電圧源から来るX線の相対量は、特定用途に合わせて調整することができる。更に、高エネルギー光子は維持され、それと同時に、低エネルギー光子の量が増加される。
【0010】
全体のスペクトル形状を特定の患者又は特定のスペクトル検査に合わせて最適化することができる高及び低エネルギー光子の混合体を生成する柔軟な方法が提供される。
【0011】
第1のX線と第2のX線との比を制御可能とすることによって、第1のX線の平均エネルギーと第2のX線の平均エネルギーとの間の最大分離を提供することができる。更に、例えばX線出力の変化につながる第1のX線(若しくは第2のX線又は実際には第1のX線及び第2のX線の両方)の発生に関連付けられる動作の低下が、出力が実質的に変わらないように第1のX線と第2のX線との比を制御することによって軽減可能であることによって、動作の一貫性が提供される。
【0012】
このようにすると、装置は、(例えば従来のコンピュータ断層撮影CTシステムにおける)コントラスト分解能の向上及びスペクトルシステムにおけるスペクトル性能の向上によって、取得画像の品質を向上させることができるX線を発生する。
【0013】
上記第1の態様によれば、少なくとも1つのカソードは、第1のカソード及び第2のカソードを含む。電源は、第1のカソードとアノードとの間に第1の電圧を生成し、また、電源は、第2のカソードとアノードとの間に第2の電圧を生成する。
【0014】
このようにすると、例えば両方のカソードがDC法で動作させられることで、カソードとアノードとの間の電圧のX線エネルギー特性を有するX線がアノードから発生することができたり、また、要求どおりに結果として得られるスペクトルをスペクトル的に成形するために、1つのカソードの動作により発生するX線量を、もう1つのカソードの動作により発生するX線量に対して変化させることができたりと、高い柔軟性が提供される。2つのカソードのうちの片方又は両方を、2つの電圧間で動作させることを可能とすることによっても、結果として得られるスペクトルをより柔軟に調整することができる。
【0015】
一例では、電源は、第1の電流を第1のカソードに供給し、第2の電流を第2のカソードに供給する。処理ユニットは、第1のX線と第2のX線との比を制御するように、第1の電流及び第2の電流を制御する。
【0016】
つまり、第1及び第2の電圧において動作する少なくとも1つのカソード(これらの電圧の間で行ったり来たりする1つのカソードであっても、DC法で動作する2つのカソード(1つのカソードが1つの電圧において、1つのカソードがもう1つの電圧において)であっても、実際には、片方又は両方が2つの電圧間でパルス動作する2つのカソードであってもよい)について、放出された電子出力が制御されて、関連付けられるX線放出の制御につながるように電流を制御することができ、これは、第1及び第2のカソードの動作に対応するX線の相対量を変化させることを可能にし、これにより、X線スペクトルを調整することができる。
【0017】
一例では、装置は、第1のX線のエネルギーを決定し、第2のX線のエネルギーを決定し、第1のX線と第2のX線との比は、第1のX線のエネルギーと第2のX線のエネルギーとの比を含む。
【0018】
このようにすると、スペクトル成形を必要に応じて行うことができる、簡単に決定可能な量に基づく好都合な手段が提供される。
【0019】
一例では、第1のX線のエネルギーは、集積X線エネルギーを含み、第2のX線のエネルギーは、集積X線エネルギーを含む。
【0020】
一例では、電源は、少なくとも2つの電圧を、第1の電圧と第2の電圧との間で、デューティサイクルで変化させ、処理ユニットは、第1のX線と第2のX線との比を制御するように、デューティサイクルを制御する。
【0021】
つまり、少なくとも1つのカソードは、時間T1の間、第1の電圧に維持され、次に、時間T2の間、第2の電圧に維持され、次に、時間T1の間、第1の電圧に戻り、これが繰り返され、時間T=T1+T2である。継続時間T、T1及びT2はすべて、デューティサイクルの定義の一部を形成する。したがって、Tを変化させることができ、T1をT2に対して変化させて、デューティサイクルを変化させることができる。一例では、T1は、T2が一定である間に変化させられてデューティサイクルが変化させられる。一例では、T2は、T1が一定である間に変化させられてデューティサイクルが変化させられる。一例では、T1及びT2が共に変化させられてデューティサイクルが変化させられ、T1とT2との比も変化させられる。即ち、Tも変化させられる。
【0022】
このようにすると、1つのカソードを、2つの電圧で動作させることができ、各電圧は、X線スペクトルの生成に関連付けられ、組み合わせられたX線スペクトルは、カソードが(アノードに対して)1つの電圧に維持された時間を、当該カソードがもう1つの電圧に維持された時間に対して変更することによって調整される。このようにすると、スペクトルの相対量を相対的に変更することができ、これにより、スペクトル形状を必要に応じて調整することが可能になる。
【0023】
一例では、少なくとも1つのカソードは、少なくとも1つのグリッドスイッチカソードヘッドを含む。
【0024】
このようにすると、カソード電流(例えば管電流)の独立制御が容易にされる。
【0025】
このようにすると、電子放出、したがって、X線発生の制御が向上され、これにより、スペクトル形状の調整及び制御が向上される。
【0026】
一例では、少なくとも1つのグリッドスイッチカソードヘッドは、デューティサイクルと同期化される。
【0027】
一例では、電源は、少なくとも2つの電流を少なくとも1つのカソードに供給し、処理ユニットは、第1のX線と第2のX線との比を制御するように少なくとも2つの電流を制御する。
【0028】
一例では、電源は、アノードが、第1のX線及び第2のX線を実質的に同時に発生するように動作可能であるように構成される。
【0029】
一例では、アノードは回転体を含み、電源は、アノードの回転周波数と同期化されるように構成される。
【0030】
つまり、少なくとも1つのカソードから放出される電子は、アノードの回転と同期化されることが可能である。例えばアノードは、パイのように形成され、様々なセグメントが様々な材料で作られる。カソードとアノードとの間の電圧(例えば140kV)によって特徴付けられるエネルギーを有する1つのカソードから放出される電子は、回転周波数に対して電源を制御することによって、1つの材料のみと相互作用するように同期化される。同様に、カソードとアノードとの間の電圧(例えば60kV)によって特徴付けられるエネルギーを有する第2のカソードから放出される電子は、回転周波数に対して電源を制御することによって、アノードの別の材料のみと相互作用するように同期化される。更に、例えば140kVにおける電子は、材料A及びBと相互作用するように同期化され、60kVにおける電子は、材料C及びDと相互作用するように同期化される。したがって、スペクトルを成形するためのもう1つの自由度が提供される。
【0031】
第2の態様によれば、物体撮像システムが提供される。当該システムは、
上記X線発生装置と、
X線検出器と、
出力ユニットとを含む。
【0032】
少なくとも1つのカソード及び少なくとも1つのアノードは、少なくとも1つのカソード、少なくとも1つのアノード及びX線検出器間の領域の少なくとも一部が、物体を収容するための検査領域であるように、X線検出器に対して配置される。X線検出器は、物体の画像データを取得する。出力ユニットは、物体の画像データを代表するデータを出力する。
【0033】
このようにすると、少なくとも1つのカソード及び少なくとも1つのアノードは、カソード/アノードとX線検出器との間に、物体を収容する検査領域が提供されるように配置される。
【0034】
第3の態様によれば、X線発生方法が提供される。当該方法は、
a)電源を用いて、少なくとも1つのカソードとアノードとの間に、第1の電圧及び第2の電圧を含む少なくとも2つの電圧を生成するステップと、
b)少なくとも1つのカソードから電子を放出するステップと、
c)少なくとも2つの電圧に対応するエネルギーで、少なくとも1つのカソードから放出される電子をアノードと相互作用させるステップと、
d)アノードからX線を発生するステップであって、電子はアノードと相互作用してX線を発生し、電源が第1の電圧を生成する場合に、第1のX線が発生され、電源が第2の電圧を生成する場合に、第2のX線が発生される、上記ステップと、
e)第1のX線と第2のX線との比が制御可能であるように、電源を制御するステップとを含む。
【0035】
上記第3の態様によれば、少なくとも1つのカソードは、第1のカソード及び第2のカソードを含み、上記方法は、電源を用いて、第1のカソードとアノードとの間に第1の電圧を生成し、電源を用いて、第2のカソードとアノードとの間に第2の電圧を生成するステップを含む。
【0036】
別の態様によれば、処理ユニットによって実行されると、上記方法のステップを行うように適応される、上記装置を制御するコンピュータプログラム要素が提供される。
【0037】
別の態様によれば、上記コンピュータ要素が格納されているコンピュータ可読媒体が提供される。
【0038】
有利には、上記態様の何れかによって提供される恩恵は、他の態様のすべてにも等しく適用され、また、その反対も同様である。
【0039】
上記態様及び例は、以下に説明される実施形態から明らかとなり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、X線発生装置10の一例を示す。装置10は、少なくとも1つのカソード20、アノード30、電源40及び処理ユニット50を含む。電源40は、少なくとも1つのカソード20とアノード30との間に少なくとも2つの電圧を生成する。少なくとも2つの電圧は、第1の電圧及び第2の電圧を含む。少なくとも1つのカソード20は、アノード30に対して配置される。少なくとも1つのカソード20及びアノード30は、少なくとも2つの電圧に対応するエネルギーで、少なくとも1つのカソード20から放出された電子がアノード30と相互作用するように動作可能であり、電子は、アノード30と相互作用して、X線を発生する。少なくとも1つのカソード20及びアノード30は、電源40が第1の電圧を生成する場合に、第1のX線を発生し、電源40が第2の電圧を生成する場合に、第2のX線を発生するように動作可能である。処理ユニット50は、第1のX線と第2のX線との比が制御可能であるように、電源40を制御する。
【0043】
一例によれば、少なくとも1つのカソードは、第1のカソード22及び第2のカソード24を含む。電源40は、第1のカソード22とアノード30との間に第1の電圧を生成し、電源40は、第2のカソード24とアノード30との間に第2の電圧を生成する。
【0044】
一例では、様々な電圧にバイアスされる2つ以上の隣接カソード構造体が提供される。
【0045】
一例では、2つ以上のカソードが異なる電圧にバイアスされるシュートスルーカソード構造体が提供される。このようにすると、カソード構造体と共に動作するために1つの集束及び偏向ユニットしか必要としない非常に小型のカソードが提供され、また、空間及びコスト削減も提供される。
【0046】
一例では、電源は、第1のカソードとアノードとの間に第1の電圧を生成し、第
1のカソードとアノードとの間に第2の電圧を生成する。このようにすると、第1のカソードはパルス動作可能であり、カソードは第1の電圧から第2の電圧
へ、また、前記第1の電圧に戻るように繰り返してパルス動作する。一例では、電源は、第2のカソードとアノードとの間に第2の電圧を生成し、第2のカソードとアノードとの間に第1の電圧を生成する。このようにすると、第2のカソードはパルス動作可能であり、カソードは第2の電圧から第1の電圧
へ、また、前記第2の電圧に戻るように繰り返してパルス動作する。
【0047】
一例では、第1のカソードは、DCモードで動作させられる。一例では、第2のカソードは、DCモードで動作させられる。一例では、第1のカソードは、パルスモードで動作させられる。一例では、第2のカソードは、パルスモードで動作させられる。一例では、第1のカソードは、DCモードで動作させられ、第2のカソードは、DCモードで動作させられる。一例では、第1のカソードは、パルスモードで動作させられ、第2のカソードは、パルスモードで動作させられる。一例では、第1のカソードは、DCモードで動作させられ、第2のカソードは、パルスモードで動作させられる。一例では、第1のカソードは、パルスモードで動作させられ、第2のカソードは、DCモードで動作させられる。
【0048】
一例によれば、電源40は、第1の電流を第1のカソード22に供給し、また、第2の電流を第2のカソード24に供給する。処理ユニット50は、第1のX線と第2のX線との比を制御するために、第1の電流及び第2の電流を制御する。
【0049】
一例では、電源は、第2の電流を第1のカソードに供給し、第1の電流を第2のカソードに供給する。
【0050】
一例によれば、装置10は、第1のX線のエネルギーを決定し、また、第2のX線のエネルギーを決定する。第1のX線と第2のX線との比は、第1のX線のエネルギーと第2のX線のエネルギーとの比を含む。
【0051】
一例では、X線モニタ60を使用してエネルギーが決定される。一例では、カソード対アノードの電圧、カソード電流を含む動作特性のルックアップテーブルを使用してエネルギーが決定される。
【0052】
一例によれば、第1のX線のエネルギーは、集積X線エネルギーを含み、第2のX線のエネルギーは、集積X線エネルギーを含む。
【0053】
一例では、処理ユニットは、第1のX線の集積エネルギーが第2のX線の集積エネルギーと同じになるように電源を制御する。
【0054】
一例によれば、電源40は、上記少なくとも2つの電圧を、第1の電圧と第2の電圧との間で、デューティサイクルで変化させる。処理ユニット50は、第1のX線と第2のX線との比を制御するようにデューティサイクルを制御する。
【0055】
一例では、デューティサイクルを用いて動作させることは、キャパシタンスが低減した電源からの自然リプルを利用することを含む。
【0056】
一例では、デューティサイクルは、検出周期(例えばサンプリング周期)と同期化されない。
【0057】
一例では、デューティサイクルは、アノード回転周波数と同期化される。このようにすると、アノードスロット又は他のアノード欠陥の影響を最小限に抑えることができる。更に、このやり方では、異なるろ過をアノードに組み込むことができ、様々な電圧における少なくとも1つのアノードの動作は、回転アノードに組み込まれる様々なろ過と同期化されることができる。
【0058】
一例によれば、少なくとも1つのカソード20は、少なくとも1つのグリッドスイッチカソードヘッド26を含む。
【0059】
一例では、第1のカソード及び/又は第2のカソードは、グリッドスイッチカソードヘッドを含む。一例では、デューティサイクルを有する電圧が印加される単一のカソードが使用され、単一のグリッドスイッチカソードヘッドが提供される。
【0060】
一例では、少なくとも1つのグリッドスイッチカソードヘッドは、検出器の検出周期と同期化される。
【0061】
一例によれば、少なくとも1つのグリッドスイッチカソードヘッド26は、デューティサイクルと同期化される。
【0062】
一例によれば、電源40は、少なくとも1つのカソード20に、少なくとも2つの電流を供給し、処理ユニット50は、第1のX線と第2のX線との比を制御するように当該少なくとも2つの電流を制御する。
【0063】
一例では、(第1及び第2の電圧間で動作する)単一のカソードに、デューティサイクルを印加すると、電力は、電圧が変化するにつれて、実質的に一定に保たれることが可能である。
【0064】
一例では、1つの電圧において動作させる場合の電力は、もう1つの電圧において動作させる場合の電力とは異なっていてよい。
【0065】
一例によれば、電源40は、アノード30が第1のX線及び第2のX線を実質的に同時に発生するように動作可能であるように構成される。
【0066】
一例では、電源40は、第1のカソード22及び第2のカソード24が電子を実質的に同時に放出するように動作可能であるように構成される。
【0067】
一例によれば、アノードは回転体を含み、電源は、アノードの回転周波数と同期化される。
【0068】
図2は、X線発生システム100の一例を示す。システム100は、
図1を用いて説明された例のうちの1つ以上の例について説明されたX線発生装置10を含む。システム100は更に、X線検出器110と、出力ユニット120とを含む。少なくとも1つのカソード20及び少なくとも1つのアノード30は、少なくとも1つのカソード20、少なくとも1つのアノード30及びX線検出器110間の領域の少なくとも一部が、物体が入れられる検査領域であるように、X線検出器110に対して配置される。X線検出器110は、物体の画像データを取得する。出力ユニット120は、物体の画像データを代表するデータを出力する。
【0069】
図3は、X線発生方法200の基本ステップを示す。当該方法は、次のステップを含む。
ステップa)とも呼ばれる生成ステップ210。電源40を用いて、少なくとも1つのカソード20とアノード30との間に少なくとも2つの電圧が生成される。少なくとも2つの電圧は、第1の電圧及び第2の電圧を含む。少なくとも1つのカソードは、アノードに対して配置される。
ステップb)とも呼ばれる放出ステップ220。少なくとも1つのカソードから電子が放出される。
ステップc)とも呼ばれる相互作用ステップ230。少なくとも2つの電圧に対応するエネルギーを用いて、少なくとも1つのカソードから放出される電子を、アノードと相互作用させる。
ステップd)とも呼ばれる発生ステップ240。アノードからX線が発生される。電子がアノードと相互作用してX線が発生される。電源が第1の電圧を生成する場合に、第1のX線が発生され、電源が第2の電圧を生成する場合に、第2のX線が発生される。
ステップe)とも呼ばれる制御ステップ250。第1のX線と第2のX線との比が制御可能であるように、電源が制御される。
【0070】
一例では、少なくとも1つのカソードは、第1のカソードと第2のカソードとを含み、上記方法は、電源を用いて、第1のカソードとアノードとの間に第1の電圧を生成することと、電源を用いて、第2のカソードとアノードとの間に第2の電圧を生成することとを含む。
【0071】
一例では、上記方法は、電源を用いて、第1のカソードに第1の電流を供給することと、電源を用いて、第2のカソードに第2の電流を供給することとを含み、上記方法は、第1のX線と第2のX線との比を制御するように、第1の電流及び第2の電流を制御することを含む。
【0072】
一例では、上記方法は、第1のX線のエネルギーを決定することと、第2のX線のエネルギーを決定することとを含み、第1のX線と第2のX線との比は、第1のX線のエネルギーと第2のX線のエネルギーとの比を含む。
【0073】
一例では、第1のX線のエネルギーは、集積X線エネルギーを含み、第2のX線エネルギーは、集積X線エネルギーを含む。
【0074】
一例では、上記方法は、電源を用いて、少なくとも2つの電圧を、第1の電圧と第2の電圧との間で、デューティサイクルで変化させることを含み、上記方法は、第1のX線と第2のX線との比を制御するように、デューティサイクルを制御することを含む。
【0075】
一例では、上記方法は、電源を用いて、少なくとも1つのカソードに、少なくとも2つの電流を供給することを含み、上記方法は、第1のX線と第2のX線との比を制御するように、少なくとも2つの電流を制御することを含む。
【0076】
一例では、少なくとも1つのカソードは、少なくとも1つのグリッドスイッチカソードヘッドを含む。
【0077】
一例では、上記方法は、少なくとも1つのグリッドスイッチカソードヘッドを、デューティサイクル及び/又は検出器の検出周期と同期化させることを含む。
【0078】
一例では、上記方法は、アノードが第1のX線及び第2のX線を実質的に同時に発生するように動作可能であるように、電源を構成することを含む。
【0079】
一例では、上記方法は、第1のカソード及び第2のカソードが実質的に同時に電子を放出するように動作可能であるように、電源を構成することを含む。
【0080】
一例では、アノードは回転体を含み、上記方法は、電源をアノードの回転周波数と同期化させることを含む。
【0081】
X線発生装置、システム及び方法の例について、
図4乃至
図17と併せてより詳細に以下に説明する。
【0082】
図4は、例示的なX線発生装置を示し、
図5は、例示的なX線発生装置と共に使用する例示的なマルチプルカソードを示す。アノードに対して、低kVカソードが60kVで動作し、高kVカソードが140kVで動作する。低及び高kVカソードは、これらの電圧とは異なる電圧で動作することも可能である。カソードから放出される電子は、アノードと相互作用して、コンピュータ断層撮影(CT)システム内で使用されるX線を発生する。発生したX線は、他のX線撮像分野において使用されることも可能である。電源(
図4及び
図5には図示せず)は、電圧レベルを提供し、カソード電流を制御する。
図5に示されるシュートスルーカソードは非常に小型であり、空間を節約し、1つの集束及び偏向ユニットしか必要とせず、単独のデュアルカソードと比較してコスト節約を提供する。
【0083】
低kVカソードから放出される電子によってアノードから発生するX線は、特性スペクトルを有し、また、高kVカソードから放出される電子によってアノードから発生するX線は、特性スペクトルを有する。スペクトル形状は、電圧に依存し、発生するX線量は、電圧及び電流に依存する。低kVソースからのX線と高kVソースからのX線との比は、高エネルギー光子及び低エネルギー光子(X線)の混合体を柔軟に生成するように、X線ビームのソーススペクトルを成形するように制御され、スペクトル形状は、特定の患者又は特定のスペクトル検査に合わせて最適化される。つまり、X線検出のために与えられる基本的なソーススペクトルは、基本的に、管電圧、ターゲット材料及びビームと患者との間のろ過によって基本的に決定される。ここでは、スペクトルは、ソース電圧及び/又はソース電流の制御を介してX線ビームのソーススペクトルを成形することによって、ソース−患者−検出器システムに合わせて最適化される。
【0084】
基本的に、スペクトル成形装置、システム及び方法は、単独で又は一緒に(組み合わせで)動作することが可能である2つのモードにおいて動作することが可能である。
【0085】
1.スペクトルが、患者、造影剤、検出器及び行われるスペクトル検査に合わせて調整及び最適化されるように、様々な電圧源の線形結合を導入する。つまり、高エネルギー光子及び低エネルギー光子の混合体が要求どおりに制御されるように、様々なDC電圧源に適切なDC電流が提供される。
図4及び
図5を参照されたい。
【0086】
2.ソース電圧に高電圧リプルを印加する。ソースは、画像内のボクセルを再構成するために使用される線積分が、ソース電圧エネルギーの組み合わせを有するように、波形を変調することによって成形される。これは、高エネルギー光子を維持する一方で、より多くの低エネルギー光子を追加する。つまり、高エネルギー光子及び低エネルギー光子の混合体を制御するように、デューティサイクルを用いて高電圧と低電圧との間を行ったり来たりする。事実上、3つの制御、即ち、2つのDC電圧レベルと、一方又は他方のソースからの電流をカットオフ(又は制御)するための1つのグリッド(又は複数のグリッド)の制御がある。
図6及び
図7を参照されたい。しかし、電圧レベルが高速に変化するように電源を構成することができるので、グリッドは不要である。実際に、電源全体が、内部「クロウバー(crowbar)」及び/又は適切な回路を介して、値を非常に速く上昇させ、また、速く減少させることができる。
【0087】
このように、本明細書に提示される装置、システム及び方法は、高エネルギー光子及び低エネルギー光子の混合体を生成する柔軟なやり方を提供する。スペクトル形状は、特定の患者又は特定のスペクトル検査に合わせて最適化される。
【0088】
なお、スペクトルCTについて、最適要件は、必ずしも低エネルギー画像と高エネルギー画像との間のノイズマッチングではない。最適化は、ヨードマップの生成、直線的に混合された画像の作成又はモノクロ画像の合成といった様々なデュアルエネルギー処理タスクに依存し、低エネルギーデータ及び高エネルギーデータの重み付け係数は同じである必要はない。X線発生装置、システム及び方法は、タスクに対して様々なレベルの最適化を可能にする。
・スペクトルは、スペクトル検出システムにおいて使用される場合に最適化されることが可能である。スペクトルは、行われている検査のタイプ(即ち、ヨードマップ、モノクロ画像等)に対して調整することができる。
・高い軟組織コントラストが必要である従来のCTにおける利用が提供される。許容可能なノイズレベルを維持しつつ、可能な限り低い管電圧にすることが、通常、望ましい。これは、管出力又は最大管電流によって制限される。したがって、ノイズを最小限に抑えるために、所望よりも高いkVにおいて行うことが必要である場合、これらの電圧の線形結合によってより低いkVを追加することができる。
【0089】
図8は、単極X線管(源)用の調節可能な管電流制御のための回路を示す。同様の回路を双極X線管(源)に使用することもできる。この回路は、上記されたように、光子スペクトルの線形結合及び/又は高電圧変調に使用することができる。各フィラメント又はエミッタ温度は、個別に調節可能であり、各カソードから放出されたX線の混合体が要求どおりに制御又は選択されることが可能となる。これによって、スペクトル成形が、例えば線量又はコントラスト分解能に合わせて最適化される。
【0090】
上記2つの技術(1、2)について更に詳述する。
1.ソーススペクトル成形−線形結合光子スペクトル
a.(
図4に示される)2つ以上の隣接カソード構造体が、様々な電圧にバイアスされる。
b.(
図5に示される)シュートスルーカソード構造体が、様々な電圧にバイアスされる2つ以上のカソードを有する。
【0091】
2.ソーススペクトル成形−高電圧変調
a.制御された電圧リプル変調。
図9に示される回路によって、
図7に示されるデューティサイクルが生成及び制御される。詳細は以下の表に示す。
b.キャパシタンスが低減した電源からの自然リプル。
図10に適切な回路が示される。更に説明すると、CTスキャナ用の電源は、通常、厳しいリプル仕様を有する。通常、理想的なケースは、電圧が完全なDCである場合であると考えられている。HVリプルは、しばしば、管電流の関数である。必要とされる電力でリプルが変化しすぎると、測定されるCTの数は一貫しない。しかし、スペクトル画像が取得される(画像は異なる光子エネルギー範囲から生成される)と、これは、少し違って見ることができる。この状況では、リプルは、関心のエネルギー範囲における最適な光子量を得るために有利に使用される。これは、通常使用されるものよりもはるかに小さいジェネレータキャパシタンスを選択することによって達成される。又は、これは、行われている検査に基づいてキャパシタンスを選択するより柔軟な方法において達成されることも可能である。
c.高電圧波形は、純スペクトル成形効果が所望されるサンプリングと同期化される必要はない。これは、スペクトル識別検出器を使用することができるからである。更に説明すると、患者を走査する1つの方法は、1つのkVで走査し、次に、戻って同じ関心領域を別のkVで走査する方法である。目的は、2つの異なるエネルギーでグローバル空間における所与のボクセルを再構成することである。しかし、患者は動く可能性があり、小さい構造体を解析する場合、(2つの画像間)の画像レジストレーションがうまくいかない場合がある。これを行う別のやり方は、2つの別個の電圧で動作する2つの別個のX線源を使用することである。X線源は間に空間が置かれている。これは、画像レジストレーションが達成できないという上記解決策と同じ問題を有する。第3の実施態様は、データサンプリング周期と同期化されている2つの別個の電圧間でソースを交代することである。奇数のサンプリング周期は、第1のエネルギー再構成に再構成され、偶数のサンプリング周期は、第2のエネルギー再構成に再構成される。これをうまく行うためには、非常に高速のkV上昇時間と下降時間とが必要となるが、これは実現することが難しい。したがって、特別な検出器を使用して、様々な光子エネルギーグループが測定される(
図14に、当該検出器が示される)。これにより光子エネルギーが識別される。様々な光子エネルギーに対応する2つの測定値が、同じ場所及び時間で得られる。次に、画像内の各ボクセルが、多くの異なるサンプルから構成される。したがって、とられる実効データは、変化するソースからの様々なkVの平均値(のようなもの)である。スペクトル識別測定を使用して、光子エネルギーが分けられる。したがって、サンプリングとの同期化は不要である。デュアルエネルギー検出器を使用するのではなく、3つ以上のエネルギービンを使用する光子計数を使用することができる。
d.高電圧波形を、次の特別な機能のために、アノード周波数と同期化することができる。
i.アノードスロット又は他のアノード欠陥の影響を最小限に抑える。
ii.アノードに様々なろ過が組み込まれたシステムを作る。様々な電圧を、回転アノードターゲットに組み込まれた様々なろ過と同期化することができる。
iii.更に説明すると、制御された変調を、様々な材料を有するアノードと共に使用することができる。例えば1つの種類の材料ではより高い電圧を、別の種類の材料では低電圧を提供する。したがって、ソーススペクトルを成形するための自由度が更に高められる。2つの異なるkVを設定することができ、デューティサイクルを設定することができ、高及び低電圧電子が衝突する材料を設定することができる。
e.高電圧波形を、グリッド又はデータサンプリング周期と同期化することができる。グリッドとの同期化は、光子エネルギー分布の成形を可能にする。更に説明すると、デュアルエネルギー検出器を用いて物体のデュアルエネルギー画像を作成することが望まれる場合(電圧は120kVに設定される)、物体を通る光子のほとんどは、120kVの高エネルギー範囲にあるか又はそれに近く、低エネルギー光子はほとんど検出されない。したがって、低エネルギー範囲に関する情報はほとんどない。したがって、より高い範囲におけるソース光子は、120kVソースへの電流を下げることによって「下げられ(turned down)」、第2のソースが、より多くのより低いエネルギー光子を追加するために80kVにおいて追加され、これらのソースからの光子の相対量を制御するためにグリッドが使用される。次に、本明細書に説明されるようなやり方でパラメータを調節して、より高い及びより低いエネルギー範囲の両方に関するより最適な情報を得ることができる。
【0092】
【表1】
図9に示される回路に関連付けられるスイッチングパラメータであって、スイッチは、例えば一連の半導体素子又は真空スイッチとして設けられる。
【0093】
1つの単純な最適化は、
図14に示されるデュアルエネルギー検出器について最大平均kV分離を得ることである。
図5に示されるカソードの管電流は、60kVソースと140kVソースとが同じ集積X線エネルギーを提供するように調節される。これは、
図11に示される。上記されたように、
図8に示される回路は、各カソードに関連付けられる集積エネルギーが同じであるように、フィラメント及びエミッタ温度が制御されることを可能にする。1:1の比以外の他のエネルギー及び集積エネルギーの比も可能である。
図12及び
図13に示されるように、
図14の特定のデュアルレイヤ検出器及び40cmの水での最大kV分離は、28KeVである。kV成形なしで、本発明の装置を使用すると、最大分離は20KeVとなる。したがって、この具体例についての本発明のX線発生装置、システム及び方法は、スペクトル性能において40%の増加を示す。この最適条件は、正規化された曲線の60kVの80%及び140kVの20%において達成される。
図15に、60kV及び140kVの様々な線形結合の一例が示される。
【0094】
高電圧リプル構成の実施形態に関して、
図7に示されるように、制御された変調済みデューティサイクルアプローチを使用することができる。管電流を独立して制御するためにグリッドが使用されなければ、スペクトルに大きな影響を及ぼすには、低エネルギーにおいて多くの時間を費やさなければならない。
図16に、デューティサイクルの関数としての平均エネルギーが示される。
図17に、40cmの水を通った後のスペクトルが示される。これは、グリッドが上記構成に追加されたならば大幅に改善され、X線の影響のバランスを取ることができる。
【0095】
単独又は組み合わせで使用可能なソース成形のための構成のまとめ
1.独立放出制御を有する独立電圧源は、単一のソーススペクトルを提供する
2.高電圧リプル−システムの供給及びキャパシタンスによって設定された通りに自然に発生する
3.高電圧リプル変調−システムの制御ループを介して制御される
4.グリッド制御での高電圧リプル変調−スペクトルのバランスをよりうまく取ることができるので、kV制御は制御可能な範囲内で変調するのがより簡単である。
【0096】
別の例示的な実施形態では、上記実施形態のうちの1つによる方法のステップを適切なシステム上で実行するように適応されていることによって特徴付けられるコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム要素が提供される。
【0097】
したがって、コンピュータプログラム要素は、コンピュータユニットに記憶されていてもよい。当該コンピュータユニットも、本発明の一実施形態の一部であってよい。当該コンピュータユニットは、上記方法のステップを行うか又はステップの実行を誘導する。更に、コンピュータユニットは、上記装置のコンポーネントを動作させる。コンピュータユニットは、自動的に動作するか及び/又はユーザの命令を実行する。コンピュータプログラムが、データプロセッサの作業メモリにロードされてよい。したがって、データプロセッサは、本発明の方法を実行する能力を備えている。
【0098】
本発明のこの例示的な実施形態は、最初から本発明を使用するコンピュータプログラムと、アップデートによって、既存のプログラムを、本発明を使用するプログラムに変えるコンピュータプログラムとの両方を対象とする。
【0099】
更に、コンピュータプログラム要素は、上記方法の例示的な実施形態の手順を満たすすべての必要なステップを提供することができる。
【0100】
本発明の更なる例示的な実施形態によれば、CD−ROMといったコンピュータ可読媒体が提示される。コンピュータ可読媒体に、コンピュータプログラム要素が記憶され、コンピュータプログラム要素は上記セクションに説明されている。
【0101】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体又は固体媒体といった適切な媒体上に記憶される及び/又は分散配置されるが、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介した形態といった他の形態で分配されてもよい。
【0102】
しかし、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブといったネットワークを介して提示され、当該ネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードされてもよい。本発明の更なる例示的な実施形態によれば、ダウンロード用にコンピュータプログラム要素を利用可能にする媒体が提供され、当該コンピュータプログラム要素は、本発明の上記実施形態のうちの1つによる方法を行うように構成される。
【0103】
なお、本発明の実施形態は、様々な主題を参照して説明されている。具体的には、方法タイプのクレームを参照して説明される実施形態もあれば、デバイスタイプのクレームを参照して説明される実施形態もある。しかし、当業者であれば、上記及び下記の説明から、特に明記されない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、様々な主題に関連する特徴の任意の組み合わせも、本願によって開示されていると見なされると理解できるであろう。しかし、すべての特徴は、特徴の単なる足し合わせ以上の相乗効果を提供する限り、組み合わされることが可能である。
【0104】
本発明は、図面及び上記説明において詳細に例示され、説明されたが、当該例示及び説明は、例示的に見なされるべきであり、限定的に見なされるべきではない。本発明は、開示される実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形態様は、図面、開示内容及び従属請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解され、実施される。
【0105】
請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、「a」又は「an」との不定冠詞も、複数形を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に引用される幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されることだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。