(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
図1は、実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にカメラ12のレンズ部分を、乗りかご11内および乗場15が共に映る方向に向けて設置されている。カメラ12は、例えば車載カメラ等の小型の監視用カメラであり、広角レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば、30コマ/秒)の画像を連続的に撮影する。
【0011】
カメラ12は、常時オンであり、常に撮影を行うとしても良いし、所定のタイミングでオンになり撮影を開始し、所定のタイミングでオフになり撮影を終了するとしても良い。例えば、カメラ12は、乗りかご11の移動速度が所定値未満の時にオンになり、乗りかご11の移動速度が所定値以上の時にオフになるとしても良い。この場合、カメラ12は、乗りかご11が所定階に停止するために減速を開始し、移動速度が所定値未満になるとオンになり撮影を開始し、乗りかご11が当該所定階とは別の階に向かうために加速を開始し、移動速度が所定値以上になるとオフになり撮影を終了する。つまり、カメラ12による撮影は、乗りかご11が所定階に停止するために減速を開始し、移動速度が所定値未満になってから、乗りかご11が当該所定階に停止している間中も含めて、乗りかご11が当該所定階から別の階に向かうために加速を開始し、移動速度が所定値以上になるまで継続して行われる。
【0012】
カメラ12の撮影範囲はL1+L2に設定されている(L1≧L2)。L1は乗場15側の撮影範囲であり、かごドア13から乗場15に向けて設定される。L1は乗りかご11側の撮影範囲であり、かごドア13からかご背面に向けて設定される。なお、L1,L2は奥行方向の範囲であり、幅方向(奥行方向と直交する方向)の範囲については、少なくとも乗りかご11の横幅よりも大きいものとする。
【0013】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13が戸開している時には乗場ドア14も戸開しており、かごドア13を戸閉している時には乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0014】
カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに画像処理される。具体的には、画像処理装置20は、予め設定されたエリア(以下、検知エリアと表記する)における画像の輝度値の変化に基づいてかごドア13に最も近い利用者(の動き)を検知し、検知された利用者が乗りかご11に乗車する意思を有しているか否かの判定や、検知された利用者の手や腕が戸袋に引き込まれる可能性があるか否かの判定等を行う。画像処理装置20による画像処理の結果は、必要に応じて、エレベータ制御装置30による制御処理(主に、戸開閉制御処理)に反映される。
【0015】
エレベータ制御装置30は、乗りかご11が乗場15に到着した時のかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、エレベータ制御装置30は、乗りかご11が乗場15に到着した時にかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。
【0016】
但し、画像処理装置20により乗りかご11に乗車する意思のある利用者が検知された場合には、エレベータ制御装置30は、かごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する(かごドア13の戸開時間を延長する)。また、画像処理装置20により手や腕が戸袋に引き込まれる可能性のある利用者が検知された場合には、エレベータ制御装置30は、かごドア13の戸開動作を禁止するまたはかごドア13の戸開速度を通常時よりも遅くする、あるいはかごドア13から離れることを促す旨のメッセージを乗りかご11内に流す等して、手や腕が戸袋に引き込まれる可能性があることを当該利用者に対して通知する。
【0017】
なお、
図1では便宜的に、画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。また、
図1では、カメラ12と画像処理装置20とが別々に設けられている場合を例示しているが、カメラ12と画像処理装置20とは1つの装置として一体化されて設けられても良い。さらに、
図1では、画像処理装置20とエレベータ制御装置30とが別々に設けられている場合を例示しているが、画像処理装置20の機能はエレベータ制御装置30に搭載されるとしても良い。
【0018】
図2は、画像処理装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、画像処理装置20においては、バス21に、不揮発性メモリ22、CPU23、メインメモリ24および通信デバイス25等が接続されている。
【0019】
不揮発性メモリ22は、例えばオペレーティングシステム(OS)等を含む各種プログラムを格納する。なお、不揮発性メモリ22に格納されているプログラムには、上記した画像処理(より詳しくは、後述する利用者検知処理)を実行するためのプログラムや、後述するキャリブレーション機能を実現するためのプログラム(以下、キャリブレーションプログラムと表記する)が含まれる。
【0020】
CPU23は、例えば不揮発性メモリ22に格納されている各種プログラムを実行するプロセッサである。なお、CPU23は、画像処理装置20全体の制御を実行する。
【0021】
メインメモリ24は、例えばCPU23が各種プログラムを実行する際に必要とされるワークエリア等として使用される。
【0022】
通信デバイス25は、有線または無線により、例えばカメラ12やエレベータ制御装置30等の外部装置と実行される通信(信号の送受信)を制御する機能を有する。
【0023】
ここで、上記したように、画像処理装置20は、予め設定された検知エリアにおける画像の輝度値の変化に基づいてかごドア13に最も近い利用者を検知する利用者検知処理を実行する。この利用者検知処理では、予め設定された検知エリアにおける画像の輝度値の変化に注目するため、当該検知エリアは、画像上の決まった位置に常に設定される必要がある。
【0024】
しかしながら、エレベータシステムの運用中に例えば乗りかご11やカメラ12に対する衝撃等によって、カメラ12の取り付け位置(取り付け角度)にずれが生じてしまうと、上記した検知エリアにもずれが生じてしまうため、画像処理装置20は、実際に注目したいエリアとは異なるエリアの画像の輝度値の変化に注目してしまい、その結果、本来であれば検知する必要のある利用者(や物体)を検知できない、あるいは、本来であれば検知する必要のない利用者(や物体)を誤検知してしまう、等の可能性がある。
【0025】
図3は、カメラ12の取り付け位置にずれがない場合に撮影された画像の一例を示す。なお、
図1においては示されていないが、乗りかご11側には、かごドア13の開閉をガイドするためのシル(敷居)(以下、かごシルと表記する)13aが設けられている。同様に、乗場15側には、乗場ドア14の開閉をガイドするためのシル(以下、乗場シルと表記する)14aが設けられている。また、
図3中の斜線部分は、画像上に設定された検知エリアe1を示している。ここでは一例として、乗場15にいる利用者を検知するために、検知エリアe1が、長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺から、乗場15側に向けて所定の範囲を有して設定される場合を想定する。なお、検知エリアは、手や腕の戸袋への引き込まれを抑止するために乗りかご11側に設定されても良いし、乗場15側および乗りかご11側の双方に複数設定されても良い。
【0026】
一方、
図4は、カメラ12の取り付け位置にずれがある場合に撮影された画像の一例を示す。なお、
図4中の斜線部分は、
図3同様に、画像上に設定された検知エリアe1を示す。
【0027】
図4に示すように、カメラ12の取り付け位置にずれがあると、カメラ12によって撮影された画像は、
図3に示す場合に比べて、例えば回転した画像(傾いた画像)となる。しかしながら、検知エリアe1は、
図3同様、画像上の決まった位置に設定されるため、本来であれば
図3に示すように、長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺から、乗場15側に所定の範囲を有して設定されるにも関わらず、
図4に示すように、長方形状のかごシル13aの長辺とは全く関係のない位置から所定の範囲を有して設定されてしまうことになる。これによれば、上記したように、本来であれば検知する必要のある利用者を検知できなかったり、検知する必要のない利用者を誤検知してしまったりする可能性がある。なお、
図4では、カメラ12の取り付け位置のずれに起因して、画像が回転してしまった場合を例示したが、カメラ12の取り付け位置のずれに起因して、画像が左右方向にずれてしまった場合も同様の可能性がある。
【0028】
そこで、本実施形態に係る画像処理装置20は、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かを検知し、ずれが生じている場合には、当該ずれにあわせて適切な位置に検知エリアを設定可能なキャリブレーション機能を有している。以下では、このキャリブレーション機能について詳しく説明する。
【0029】
なお、キャリブレーション機能を実現するにあたっては、例えば
図5に示すようなマーカmがカメラ12の撮影範囲内に設置される必要がある。マーカmは、例えばエレベータシステムの保守点検を行う保守員により設置される。ここでは、マーカmが正方形状であり、4つの黒い丸印を模様として含むものとしたが、マーカmは4つの角が全て直角である四角形であって、カメラ12の撮影範囲内に含まれる他の物体(例えば、乗りかご11や乗場15の床面)と区別可能な模様を含むものであれば、どのようなものであっても構わない。
【0030】
図6は、本実施形態に係る画像処理装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。ここでは、上記したキャリブレーション機能に関する機能構成について主に説明する。
【0031】
画像処理装置20は、
図6に示すように、格納部201、画像取得部202、ずれ検知部203、設定処理部204および通知処理部205、等を含む。ずれ検知部203は、
図6に示すように、認識処理部231、算出処理部232および検知処理部233、等をさらに含む。
【0032】
本実施形態においては、これら各部202〜205が、例えば
図2に示すCPU23(つまり、画像処理装置20のコンピュータ)が不揮発性メモリ22に格納されているキャリブレーションプログラムを実行すること(つまり、ソフトウェア)により実現されるものとして説明するが、上記した各部202〜205は、ハードウェアにより実現されても良いし、ソフトウェアおよびハードウェアの組み合わせにより実現されても良い。また、本実施形態において、格納部201は、例えば
図2に示す不揮発性メモリ22または他の記憶装置等によって構成される。
【0033】
格納部201には、キャリブレーション機能に関する設定値が格納されている。キャリブレーション機能に関する設定値は、基準点に対するマーカの相対位置を示す値(以下、第1設定値と表記する)を含む。基準点とは、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かを検知するための指標となる位置であり、例えば、長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺の中央がこれに相当する。なお、基準点は、上記した長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺の中央ではなく、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていない場合に当該カメラ12の撮影範囲内に含まれる位置であれば任意の位置が基準点に設定されて構わない。
【0034】
また、キャリブレーションに関する設定値には、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていない場合の画像(基準画像)に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置を示す値(以下、第2設定値と表記する)が含まれる。
【0035】
さらに、キャリブレーションに関する設定値には、基準点に対するかごシル13aの各頂点(四隅)の相対位置を示す値(以下、第3設定値と表記する)が含まれる。なお、本実施形態においては、検知エリアが長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺から乗場15側に所定の範囲を有して設定される場合を想定しているため、上記した第3設定値として、基準点に対するかごシル13aの各頂点の相対位置を示す値が含まれるとしているが、これに限定されず、第3設定値には、検知エリアを設定すべき領域に応じた値が設定される。例えば、検知エリアが手や腕の戸袋への引き込まれを抑止することを目的として、戸袋近辺に設定される場合、第3設定値として、基準点に対する戸袋の各特徴点の相対位置を示す値が含まれるとしても良い。
【0036】
また、キャリブレーションに関する設定値には、乗りかご11の床面からカメラ12までの高さと、当該カメラ12の画角(焦点距離)とを示す値(以下、カメラ設定値と表記する)が含まれる。
【0037】
さらに、キャリブレーションに関する設定値には、複数のマーカm間の距離に対して設定される上限値(閾値)が含まれる。
【0038】
なお、格納部201には、カメラ12の取り付け位置にずれがない場合に撮影された画像(基準画像)が格納されていても良い。
【0039】
画像取得部202は、乗りかご11内の床面に複数のマーカmが設置された状態でカメラ12により撮影された画像(以下、撮影画像と表記する)を取得する。なお、本実施形態においては、複数のマーカmが、長方形状のかごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺の両端部にそれぞれ沿うようにして、乗りかご11内の床面に設置される(以下では、単にかごシル13aの両端部に設置すると表記する)場合を想定するが、複数のマーカmは基準点(本実施形態の場合、かごシル13aの中央)との相対位置を特定可能な位置であれば、乗場15側の床面に設置されても良いし、かごシル13aや乗場シル14a上に設置されても良い。
【0040】
ずれ検知部203は、画像取得部202により取得された撮影画像に対して認識処理を実行し、当該撮影画像に含まれる複数のマーカmを認識(抽出)する。撮影画像に含まれるマーカmの認識は、例えばマーカmに含まれる模様、本実施形態の場合、正方形の中に含まれる4つの黒い丸印を模様として含む物体を、マーカmとして認識することを予め設定しておくことで実現するとしても良いし、その他の公知の画像認識技術を用いて実現するとしても良い。
【0041】
なお、本実施形態において、複数のマーカmを認識するとは、複数のマーカmの撮影画像上での座標値を算出することを含む。本実施形態においては、マーカmとして認識された物体に含まれる4つの黒い丸印の中心点を結ぶことで形成される四角形の中心点(重心)をマーカmとみなして、複数のマーカmの撮影画像上での座標値が算出される場合を想定する。なお、ここでは、マーカmとして認識された物体に含まれる4つの黒い丸印の中心点を結ぶことで形成される四角形の重心をマーカmとみなすとするが、マーカmとして認識された物体のどの部分をマーカmとみなすかは任意に設定されて構わない。
【0042】
ずれ検知部203は、認識された複数のマーカmに基づいて、カメラ12の取り付け位置のずれを検知する。なお、ずれ検知部203に含まれる認識処理部231、算出処理部232および検知処理部233の機能については、フローチャートの説明と共に後述するため、ここではこれらの詳しい説明を省略する。
【0043】
設定処理部204は、ずれ検知部203によりカメラ12の取り付け位置にずれが生じていることが検知された場合、画像取得部202により取得された撮影画像のうちの当該ずれにあわせた適切な位置に検知エリアを設定する。これによれば、カメラ12の取り付け位置のずれを考慮した検知エリアが撮影画像上に設定される。なお、ずれにあわせて適切な位置に設定された検知エリアの座標値は、格納部201に格納されても良い。
【0044】
通知処理部205は、ずれ検知部203によりカメラ12の取り付け位置にずれが生じていることが検知された場合、エレベータシステムの運用状態等を監視する監視センタ(の管理者)や、マーカmを設置してエレベータシステムの保守点検を行う保守員(が所持する端末)に対して、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていること(異常が生じていること)を通知する。なお、この通知は、例えば通信デバイス25を介して行われる。
【0045】
次に、
図7のフローチャートを参照して、本実施形態におけるキャリブレーション機能における画像処理装置20の処理手順について説明する。なお、
図7に示す一連の処理は、例えば定期メンテナンス時に実行される他、エレベータシステムの運用前等に実行されても良い。
【0046】
まず、画像取得部202は、乗りかご11内の床面に複数のマーカmが設置された状態で撮影された画像(撮影画像)をカメラ12から取得する(ステップS1)。ここでは一例として、
図8に示す撮影画像i1が画像取得部202により取得された場合を想定する。撮影画像i1には、
図8に示すように、かごシル13aの両端部に設置された2つのマーカm1,m2が含まれている。なお、詳細については後述するが、撮影画像i1には、
図8に示すように、マーカm1の鏡像m’も含まれている。
【0047】
続いて、ずれ検知部203に含まれる認識処理部231は、画像取得部202により取得された撮影画像に対して認識処理を実行し、当該撮影画像に含まれる複数のマーカmを認識(抽出)する(ステップS2)。
【0048】
なお、本実施形態においては、上記したように複数のマーカmが、かごシル13aの両端部に設置されている。これによれば、撮影画像から複数のマーカmを認識する際に、次のような問題が生じ得る。
【0049】
一般的に、かごシル13a近辺の出入口柱は、アルミやステンレス等、光沢性を有する金属材料(鏡面反射特性を有する材料)により形成されている場合が多い。また近年では、意匠性の向上を目的として、上記した出入口柱に限らず、乗りかご11内の側壁を、光沢性を有する金属材料により形成し、鏡面仕上げ等を施す場合も多い。このため、上記したように複数のマーカmがかごシル13aの両端部に設置される等、複数のマーカmが光沢性を有する金属材料により形成される部分近辺に設置される場合、
図8に示すように、これらマーカmの鏡像m’(
図8の場合、マーカm1の鏡像m’)が、光沢性を有する金属材料により形成される部分(
図8の場合、乗りかご11内の側壁)に映り込む可能性がある。
【0050】
これによれば、認識処理部231が、光沢性を有する金属材料により形成される部分に映り込んだ鏡像m’をマーカmと誤認識してしまう可能性がある。鏡像m’がマーカmと誤認識されてしまうと、後述する基準点に対するカメラ12の相対位置を正確に算出することができず、ひいては、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かを検知することができないという問題が生じ得る。
【0051】
そこで、本実施形態に係る認識処理部231は、上記したステップS2において認識された複数のマーカmが鏡像m’を含んでいるか否かを判定する誤認識抑止機能を、上記したキャリブレーション機能のうちの一機能として有している。
【0052】
具体的には、認識処理部231は、上記したステップS2において認識された複数のマーカm間の距離に関し予め設定される条件に基づいて、当該認識された複数のマーカmに鏡像m’が含まれているか否かを判定する。詳細については後述するが、本実施形態においては、上記した複数のマーカm間の距離に関し予め設定される条件が、格納部201に設定値として格納される複数のマーカm間の距離の上限値(閾値)である場合を想定する。
ここで、
図9および
図10を参照して、上記したステップS2の認識結果として得られる複数のマーカmに鏡像m’が含まれていない場合と、上記したステップS2の認識結果として得られる複数のマーカmに鏡像m’が含まれている場合とについて説明する。
【0053】
図9は、認識結果として得られる複数のマーカmに鏡像m’が含まれていない場合を説明するための図である。
図9では、マーカmを実線で示し、鏡像m’を点線で示している。また、
図9では、マーカm1に含まれる4つの黒い丸印(を含む物体)と、マーカm2に含まれる4つの黒い丸印(を含む物体)とがマーカmとして認識された場合を想定する。さらに、ここでは、格納部201には、設定値として複数のマーカm間の距離の上限値dmaxが格納されており、
図9においてマーカmと認識された2つのマーカm(この場合、マーカm1,m2)間の距離dmが上限値dmax以下である場合を想定する。
【0054】
認識処理部231は、
図9に示す場合、つまり、マーカmと認識された複数のマーカm間の距離dmが、格納部201に設定値として格納されている上限値dmax以下である場合に、当該認識された複数のマーカmには鏡像m’が含まれていないものと判定する。
【0055】
一方で、
図10は、認識結果として得られる複数のマーカmに鏡像m’が含まれている場合を説明するための図である。
図10では、
図9同様、マーカmを実線で示し、鏡像m’を点線で示している。また、
図10では、マーカm1の図中左側の2つの黒い丸印と鏡像m’の図中右側の2つの黒い丸印(を含む物体)、および、マーカm2に含まれる4つの黒い丸印(を含む物体)がマーカmとして認識された場合を想定する。さらに、ここでは、格納部201には、設定値として複数のマーカm間の距離の上限値dmaxが格納されており、
図10においてマーカmと認識された2つのマーカm(この場合、マーカm1と鏡像m’とにより構成されるマーカm、および、マーカm2)間の距離dmが上限値dmaxを超えている場合を想定する。
【0056】
認識処理部231は、
図10に示す場合、つまり、マーカmと認識された複数のマーカm間の距離dmが、格納部201に設定値として格納されている上限値dmaxを超える場合に、当該認識された複数のマーカmには鏡像m’が含まれているものと判定する。
【0057】
再度、
図7の説明に戻る。上記したステップS2において複数のマーカmが認識されると、認識処理部231は、上記した誤認識抑止機能により、当該認識された複数のマーカmの座標値に基づいて、複数のマーカm間の距離(2点間の距離)を算出し、当該算出された複数のマーカm間の距離が、格納部201に設定値として格納されている上限値以下であるか否かを判定する(ステップS3)。なお、本実施形態においては、複数のマーカmが、かごシル13aの両端部に設置される場合を想定しているので、上限値は、例えば、かごドア13の幅に基づいて設定される。
【0058】
複数のマーカm間の距離が上限値を超えていると判定された場合(ステップS3のNO)、認識処理部231は、ステップS2において認識された複数のマーカmには鏡像m’が含まれていると判定し、複数のマーカmを正常に認識することができなかったと判定する(ステップS4)。その後、認識処理部231は、複数のマーカmを正常に認識することができなかったことを、通信デバイス25を介して、監視センタ(の管理者)や保守員(の端末)に通知し(ステップS5)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0059】
なお、ステップS5による通知を受けた管理者や保守員は、乗りかご11内の照度調整を行う、カメラ12の露光調整を行う、等をして、マーカmが光沢性を有する金属材料により形成される部分に映り込みにくくした上で、一連の処理を再度実行させる。
【0060】
一方で、複数のマーカm間の距離が上限値以下であると判定された場合(ステップS3のYES)、認識処理部231は、ステップS2において認識された複数のマーカmには鏡像m’が含まれていないと判定し、複数のマーカmを正常に認識することができたと判定する(ステップS6)。
【0061】
なお、以下の説明中では、上記したステップS2〜S6の処理により、ステップS1において取得された撮影画像i1からマーカm1,m2が鏡像m’を含まない複数のマーカmとして正常に認識された場合を想定する。
【0062】
次に、認識処理部231は、格納部201に設定値として格納されているカメラ設定値(カメラ12の高さおよびカメラ12の画角)に基づいて、ステップS6において正常に認識された複数のマーカmに対するカメラ12の各相対位置と、カメラ12の3軸の角度(カメラ12の取り付け角度)とを算出する(ステップS7)。上記したように、ステップS6において鏡像m’を含まない複数のマーカmとしてマーカm1,m2が正常に認識されている場合、認識処理部231は、複数のマーカmに対するカメラ12の相対位置として、マーカm1に対するカメラ12の相対位置と、マーカm2に対するカメラ12の相対位置とをそれぞれ算出する。なお、
図8では、点p1がマーカm1とみなされる部分に相当し、点p2がマーカm2とみなされる部分に相当する。
【0063】
ずれ検知部203に含まれる算出処理部232は、認識処理部231により算出された複数のマーカmに対するカメラ12の各相対位置と、格納部201に設定値として格納されている第1設定値とに基づいて、基準点に対するカメラ12の相対位置を算出する(ステップS8)。
【0064】
上記したように、ステップS7においてマーカm1,m2に対するカメラ12の相対位置が算出されている場合、算出処理部232は、マーカm1に対するカメラ12の相対位置と、第1設定値である基準点に対するマーカm1の相対位置とを合成することにより、基準点に対するカメラ12の相対位置を算出する。同様に、算出処理部232は、マーカm2に対するカメラ12の相対位置と、第1設定値である基準点に対するマーカm2の相対位置とを合成することにより、基準点に対するカメラ12の相対位置を算出する。なお、
図8では、点p3が基準点に相当する。
【0065】
続いて、ずれ検知部203に含まれる検知処理部233は、算出処理部232により算出された基準点に対するカメラ12の相対位置と、格納部201に設定値として格納されている第2設定値とに基づいて、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かを判定する(ステップS9)。具体的には、検知処理部233は、算出処理部232により算出された基準点に対するカメラ12の相対位置と、第2設定値である基準点に対するカメラ12の相対位置とが一致しているか否かを判定して、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かを検知する。
【0066】
基準点に対するカメラ12の相対位置が一致し、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていないと判定された場合(ステップS9のYES)、検知処理部233は、カメラ12の取り付け位置にずれはなく、検知エリアの再設定は必要ないと判定し、ここでの一連の処理を終了させる。
【0067】
一方で、基準点に対するカメラ12の相対位置が一致せず、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていると判定された場合(ステップS9のNO)、設定処理部204は、算出処理部232により算出された基準点に対するカメラ12の相対位置と、格納部201に設定値として格納されている第3設定値およびカメラ設定値とに基づいて、画像取得部202により取得された撮影画像のうちのカメラ12の取り付け位置のずれにあわせた適切な位置に検知エリアを設定する(ステップS10)。
【0068】
本実施形態においては、かごシル13aから乗場15側に所定の範囲を有する検知エリアを設定する場合を想定しているので、まず、設定処理部204は、算出処理部232により算出された基準点に対するカメラ12の相対位置と、第3設定値である基準点に対するかごシル13aの各頂点の相対位置とを合成することにより、カメラ12に対するかごシル13aの各頂点の相対位置を算出する。なお、
図8では、点p4〜点p7がかごシル13aの各頂点に相当する。
【0069】
その後、設定処理部204は、算出されたカメラ12に対するかごシル13aの各頂点の相対位置と、認識処理部231により算出されたカメラ12の3軸の角度と、格納部201にカメラ設定値として格納されているカメラ12の画角とに基づいて、検知エリアを設定する。
【0070】
これによれば、画像取得部202により取得された撮影画像i1には、
図8の斜線部分に示されるように、カメラ12の取り付け位置のずれにあわせた検知エリアe1、つまり、かごシル13aの長辺のうちの乗りかご11側の長辺から乗場15側に所定の範囲を有する検知エリアe1が設定される。
【0071】
しかる後、通知処理部205は、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていることを、通信デバイス25を介して、監視センタ(の管理者)に通知し(ステップS11)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0072】
なお、
図7に示すステップS2においては、撮影画像から1組の複数のマーカmが認識され、当該1組の複数のマーカmを対象にして、上記した誤認識抑止機能に基づく各種処理が実行されるものとしたが、撮影画像から複数のマーカmが複数組認識され、上記した誤認識抑止機能に基づく各種処理が、認識されたマーカの組毎に実行されるとしても良い。この場合、全てのマーカの組について、認識された複数のマーカmに鏡像m’が含まれているか否かを順に判定し、その結果、全てのマーカの組において、認識された複数のマーカmに鏡像m’が含まれていると判定された場合にのみ、上記したステップS5の処理は実行されれば良い。
【0073】
また、全てのマーカの組について、認識された複数のマーカmに鏡像m’が含まれているか否かを順に判定し、その結果、複数のマーカの組において、認識された複数のマーカmに鏡像m’が含まれていないと判定された場合、鏡像m’が含まれていないと判定される際に算出された複数のマーカm間の距離のうち、上限値に最も近い(あるいは、上限値とは別に設定される上限値よりも小さい所定値に最も近い)距離に対応するマーカの組により示される複数のマーカmを、正常に認識された複数のマーカmとして選択するとしても良い。
【0074】
なお、
図7に示すステップS9においては、撮影画像に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置と、基準画像に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置とが一致するか否かに応じて、カメラ12の取り付け位置にずれが生じているか否かが判定(検知)されるものとしたが、カメラ12の取り付け位置にずれが生じている場合であっても、当該ずれが上記した利用者検知処理の精度に影響を与えない程度であれば、検知エリアの再設定を行わない構成であっても良い。すなわち、撮影画像に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置と、基準画像に含まれる基準点に対するカメラ12の相対位置との差(乖離度)が予め設定された範囲内であるか否かに基づいてステップS9の処理が実行され、当該乖離度が予め設定された範囲内にない場合に、カメラ12の取り付け位置にずれが生じていると判定されても良い。
【0075】
本実施形態においては、複数のマーカm間の距離に対して設定される設定値として上限値(閾値)が格納部201に格納されているものとしたが、複数のマーカm間の距離に対して設定される設定値としては、所定の範囲を有した範囲値(つまり、下限値と上限値により範囲が規定される範囲値)が格納されるとしても良い。この場合、認識処理部231は、認識結果として得られる複数のマーカm間の距離が、上記した範囲値に含まれるか否かに基づいて、当該複数のマーカmに鏡像m’が含まれているか否かを判定すれば良い。
【0076】
また、本実施形態における検知エリアの設定が、既に設定された検知エリアの再設定を指す場合、検知エリアの設定は、検知エリアの補正と表現されても構わない。この場合、基準点に対するカメラ12の相対位置は、上記したカメラ12の3軸の角度と共に、検知エリアの補正を実現するために必要な値であるため、補正値と表現されても構わない。
【0077】
本実施形態において、画像処理装置20は、乗りかご11の床面および乗場15の床面と区別可能なマーカmが複数設置された状態で撮影された画像をカメラ12から取得し、取得された画像から複数のマーカmを認識し、認識された複数のマーカmに基づいて、カメラ12の取り付け位置のずれを検知し、カメラ12の取り付け位置のずれが検知された場合には、画像処理(利用者検知処理)に関する設定値を設定する。この画像処理に関する設定値は、撮影画像に対して設定されたかごドア13に最も近い利用者を検知するための検知エリア(の座標値)を含む。
【0078】
このような構成によれば、カメラ12の取り付け位置にずれが生じた場合であっても、当該カメラ12によって撮影された画像(例えば、回転した画像、左右方向にずれた画像)に対して、適切な検知エリアを設定することが可能となるため、利用者の検知精度の低下を抑止することが可能となる。
【0079】
さらに本実施形態において、画像処理装置20は、撮影画像から複数のマーカmを認識すると、当該認識された複数のマーカm間の距離を算出し、当該算出された複数のマーカm間の距離が設定値として格納されている上限値以下であるか否かを判定し、当該認識された複数のマーカmに鏡像’が含まれているか否かを判定する。画像処理装置20は、認識された複数のマーカm間の距離が上限値を超えている場合に、当該認識された複数のマーカmには鏡像m’が含まれていると判定し、認識された複数のマーカm間の距離が上限値以下である場合に、当該認識された複数のマーカmには鏡像m’が含まれていないと判定する。
【0080】
このような構成によれば、複数のマーカmが、光沢性を有する金属材料により形成される部分近辺に設置されたとしても、光沢性を有する金属材料により形成される部分に映り込んだ鏡像m’をマーカmと誤認識してしまうことを抑止することが可能となるため、カメラ12の取り付け位置のずれの検知精度を向上させることが可能となる。
【0081】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。