特許第6772343号(P6772343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772343
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】固体高分子形燃料電池、燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20201012BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20201012BHJP
   H01M 8/2483 20160101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01M8/2465
   H01M8/10 101
   H01M8/2483
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-126258(P2019-126258)
(22)【出願日】2019年7月5日
(62)【分割の表示】特願2014-222261(P2014-222261)の分割
【原出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-192648(P2019-192648A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄基
(72)【発明者】
【氏名】谷 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】網谷 和之
(72)【発明者】
【氏名】杉原 洸貴
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−313403(JP,A)
【文献】 特開平09−022717(JP,A)
【文献】 特開2006−092991(JP,A)
【文献】 特開2013−219000(JP,A)
【文献】 特開2013−004321(JP,A)
【文献】 米国特許第5132174(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/0297, 8/08−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質を燃料極及び酸化極で挟んだセルと、
前記セルと交互に並ぶように配設されて、当該セルの前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス流路を一方面に形成され且つ前記酸化極に酸化ガスを供給する酸化ガス流路を他方面に形成されると共に、前記燃料ガス流路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路及び当該燃料ガス流路から使用済みの燃料ガスを排出する燃料ガス排出路をそれぞれ形成され且つ前記酸化ガス流路に酸化ガスを供給する酸化ガス供給路及び当該酸化ガス流路から使用済みの酸化ガスと水とを排出する酸化ガス排出路をそれぞれ形成されたセパレータと、
前記セルと前記セパレータとの配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、当該セパレータの前記燃料ガス供給路に接続する燃料ガス供給口、当該セパレータの前記燃料ガス排出路に接続する燃料ガス排出口、当該セパレータの前記酸化ガス供給路に接続する酸化ガス供給口、当該セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する酸化ガス排出口を、一方及び他方のいずれかにそれぞれ形成された集電板と、
前記集電板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記集電板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記集電板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記集電板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記集電板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記集電板側のものにそれぞれ形成された絶縁板と、
前記絶縁板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記絶縁板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記絶縁板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記絶縁板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記絶縁板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記絶縁板側のものにそれぞれ形成された締付板と、
を有するスタックを備えている固体高分子形燃料電池において、
前記酸化ガス排出口を形成された前記集電板と異なる前記集電板に、前記セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する通水路が形成されると共に、
前記酸化ガス排出口を形成された前記絶縁板及び前記締付板と異なる前記絶縁板及び前記締付板の少なくとも一つに、前記集電板の前記通水路に接続して水を貯留する貯水室が前記酸化ガス流路よりも下流側に形成されており、
前記貯水室内の空間を前記配列方向を法線とする平面で切ったときの断面積が前記酸化ガス排出口のそれよりも大きいことを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の固体高分子形燃料電池において、
前記スタックの前記絶縁板の内部に前記貯水室が形成されていることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【請求項3】
固体高分子電解質を燃料極及び酸化極で挟んだセルと、
前記セルと交互に並ぶように配設されて、当該セルの前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス流路を一方面に形成され且つ前記酸化極に酸化ガスを供給する酸化ガス流路を他方面に形成されると共に、前記燃料ガス流路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路及び当該燃料ガス流路から使用済みの燃料ガスを排出する燃料ガス排出路をそれぞれ形成され且つ前記酸化ガス流路に酸化ガスを供給する酸化ガス供給路及び当該酸化ガス流路から使用済みの酸化ガスと水とを排出する酸化ガス排出路をそれぞれ形成されたセパレータと、
前記セルと前記セパレータとの配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、当該セパレータの前記燃料ガス供給路に接続する燃料ガス供給口、当該セパレータの前記燃料ガス排出路に接続する燃料ガス排出口、当該セパレータの前記酸化ガス供給路に接続する酸化ガス供給口、当該セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する酸化ガス排出口を、一方及び他方のいずれかにそれぞれ形成された集電板と、
前記集電板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記集電板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記集電板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記集電板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記集電板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記集電板側のものにそれぞれ形成された絶縁板と、
前記絶縁板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記絶縁板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記絶縁板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記絶縁板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記絶縁板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記絶縁板側のものにそれぞれ形成された締付板と、
を有するスタックを備えている固体高分子形燃料電池において、
前記酸化ガス排出口を形成された前記集電板と異なる前記集電板に、前記セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する通水路が形成されると共に、
前記酸化ガス排出口を形成された前記絶縁板及び前記締付板と異なる前記絶縁板及び前記締付板の少なくとも一つに、前記集電板の前記通水路に接続して水を貯留する貯水室が前記酸化ガス流路よりも下流側に形成されており、
前記貯水室の内部に補強リブが設けられていることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【請求項4】
固体高分子電解質を一対の電極で挟んだセルとセパレータとが交互に並ぶように複数配列されて積層されたスタックを含む燃料電池であって、
前記スタックは、前記各セルに燃料ガスを供給するために前記配列方向に延びる燃料ガス供給用連通孔と、前記各セルに酸化ガスを供給するために前記配列方向に延びる酸化ガス供給用連通孔と、使用済みの酸化ガスと水を排出するために前記配列方向に延びる酸化ガス排出用連通孔とを少なくとも有し、
前記酸化ガス排出用連通孔は前記配列方向一端が開放され、他端が閉塞されるとともに、前記他端に水を貯留する貯水室が形成されており、
前記貯水室は前記酸化ガス排出用連通孔と連通し、
前記貯水室内の空間を前記配列方向を法線とする平面で切ったときの断面積が前記酸化ガス排出用連通孔のそれよりも大きいことを特徴とする燃料電池。
【請求項5】
固体高分子電解質を一対の電極で挟んだセルとセパレータとが交互に並ぶように複数配列されて積層されたスタックを含む燃料電池であって、
前記スタックは、前記各セルに燃料ガスを供給するために前記配列方向に延びる燃料ガス供給用連通孔と、前記各セルに酸化ガスを供給するために前記配列方向に延びる酸化ガス供給用連通孔と、使用済みの燃料ガスを排出するために前記配列方向に延びる燃料ガス排出用連通孔とを少なくとも有し、
前記燃料ガス排出用連通孔は前記配列方向一端が開放され、他端が閉塞されるとともに、前記他端に水を貯留する貯水室が形成されており、
前記貯水室は前記燃料ガス排出用連通孔と連通し、
前記貯水室内の空間を前記配列方向を法線とする平面で切ったときの断面積が前記燃料ガス排出用連通孔のそれよりも大きいことを特徴とする燃料電池。
【請求項6】
前記貯水室は、前記他端側に設けられた絶縁板または締付板の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子形燃料電池等の燃料電池は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質を、ガス透過性を有する燃料極及び酸化極で挟んだセルと、水素ガス等の燃料ガスの流路を一方面に形成されて酸素ガス等の酸化ガスの流路を他方面に形成された導電性を有するセパレータとを交互に複数配列し、配列方向外側に対をなす集電板及び絶縁板を配設して、さらに配列方向外側に対をなす締付板を配設して締付固定したスタックを備えてなっている。
【0003】
このような固体高分子形燃料電池のスタックにおいては、セパレータの燃料ガス流路からセルの燃料極に燃料ガスを供給し、セパレータの酸化ガス流路からセルの酸化極に酸化ガスを供給すると、燃料ガス中の水素が燃料極からプロトンとなってセルの固体高分子電解質を伝導して酸素極に到達すると同時に、電子が集電板を介して外部回路を流れることにより、プロトンが酸化ガス中の酸素と電気化学的に反応して水を生成すると同時に、外部回路に給電することができる。そして、酸素極で生成した水は、セパレータの酸化ガス流路を介してスタックの外部へ排出されるようになっている。
【0004】
このような固体高分子形燃料電池のスタックを、例えば、水中を移動する水中航行体に搭載して、水の振動等によって当該水中航行体に周期的な揺れが発生すると、当該水中航行体の揺れの方向及び周期によっては、上述した電気化学反応に伴って生成した水が、スタックの酸化ガス排出口から外部へ向かって流れずにセパレータの酸化ガス流路等に滞留してしまう場合がある。このような場合を生じると、セパレータの酸化ガス流路内を酸化ガスが流通できなくなってしまい、発電運転できなくなってしまうおそれがある。
【0005】
このため、例えば、下記特許文献1,2等においては、セパレータの酸化ガス流路内の水を排出する酸化ガス排出口をスタックの複数の方向に設けることにより、スタックの傾斜に対応する方向に位置した酸化ガス排出口から水を排出できるようにすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−177148号公報
【特許文献2】特開2012−043778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1,2で提案されている発明では、水を排出するための配管をスタックの複数の方向に取り付けなければならず、非常に煩雑になってしまうと共に、かなり嵩張ってしまうという問題があった。
【0008】
このようなことから、本発明は、水の滞留による発電性能の低下を簡単且つコンパクトな構造で抑制することができる固体高分子形燃料電池、燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための、第一番目の参考例の発明に係る固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質を燃料極及び酸化極で挟んだセルと、前記セルと交互に並ぶように配設されて、当該セルの前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス流路を一方面に形成され且つ前記酸化極に酸化ガスを供給する酸化ガス流路を他方面に形成されると共に、前記燃料ガス流路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路及び当該燃料ガス流路から使用済みの燃料ガスを排出する燃料ガス排出路をそれぞれ形成され且つ前記酸化ガス流路に酸化ガスを供給する酸化ガス供給路及び当該酸化ガス流路から使用済みの酸化ガスと水とを排出する酸化ガス排出路をそれぞれ形成されたセパレータと、前記セルと前記セパレータとの配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、当該セパレータの前記燃料ガス供給路に接続する燃料ガス供給口、当該セパレータの前記燃料ガス排出路に接続する燃料ガス排出口、当該セパレータの前記酸化ガス供給路に接続する酸化ガス供給口、当該セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する酸化ガス排出口を、一方及び他方のいずれかにそれぞれ形成された集電板と、前記集電板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記集電板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記集電板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記集電板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記集電板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記集電板側のものにそれぞれ形成された絶縁板と、前記絶縁板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記絶縁板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記絶縁板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記絶縁板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記絶縁板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記絶縁板側のものにそれぞれ形成された締付板と、を有するスタックを備えている固体高分子形燃料電池において、前記酸化ガス排出口を形成された前記集電板と異なる前記集電板に、前記セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する通水路が形成されると共に、前記酸化ガス排出口を形成された前記絶縁板及び前記締付板と異なる前記絶縁板及び前記締付板の少なくとも一つに、前記集電板の前記通水路に接続して水を貯留する貯水室が形成され、前記配列方向に沿う直線を法線とする平面に沿った前記貯水室の断面積が、前記配列方向に沿う直線を法線とする平面に沿った前記酸化ガス排出口の断面積よりも大きいものであることを特徴とする。
【0010】
第二番目の参考例の発明に係る固体高分子形燃料電池は、第一番目の発明において、前記スタックの前記絶縁板の内部に前記貯水室が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第三番目の参考例の発明に係る固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質を燃料極及び酸化極で挟んだセルと、前記セルと交互に並ぶように配設されて、当該セルの前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス流路を一方面に形成され且つ前記酸化極に酸化ガスを供給する酸化ガス流路を他方面に形成されると共に、前記燃料ガス流路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路及び当該燃料ガス流路から使用済みの燃料ガスを排出する燃料ガス排出路をそれぞれ形成され且つ前記酸化ガス流路に酸化ガスを供給する酸化ガス供給路及び当該酸化ガス流路から使用済みの酸化ガスと水とを排出する酸化ガス排出路をそれぞれ形成されたセパレータと、前記セルと前記セパレータとの配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、当該セパレータの前記燃料ガス供給路に接続する燃料ガス供給口、当該セパレータの前記燃料ガス排出路に接続する燃料ガス排出口、当該セパレータの前記酸化ガス供給路に接続する酸化ガス供給口、当該セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する酸化ガス排出口を、一方及び他方のいずれかにそれぞれ形成された集電板と、前記集電板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記集電板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記集電板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記集電板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記集電板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記集電板側のものにそれぞれ形成された絶縁板と、前記絶縁板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記絶縁板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記絶縁板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記絶縁板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記絶縁板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記絶縁板側のものにそれぞれ形成された締付板と、を有するスタックを備えている固体高分子形燃料電池において、前記酸化ガス排出口を形成された前記集電板と異なる前記集電板に、前記セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する通水路が形成されると共に、前記酸化ガス排出口を形成された前記絶縁板及び前記締付板と異なる前記絶縁板及び前記締付板の少なくとも一つに、前記集電板の前記通水路に接続して水を貯留する貯水室が形成され、前記貯水室の内部に補強リブが設けられていることを特徴とする。
【0012】
第四番目の参考例の発明に係る固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質を燃料極及び酸化極で挟んだセルとセパレータとが交互に並ぶように複数配列されたスタックを備える固体高分子形燃料電池において、前記スタックは、前記各セルに燃料ガスを供給するように前記配列方向に接続する燃料ガス供給口と、前記各セルに酸化ガスを供給するように前記配列方向に接続する酸化ガス供給口と、使用済みの酸化ガス及び水を排出するように前記配列方向に接続する酸化ガス排出口とを有すると共に、前記配列方向一方の外側に位置する前記酸化ガス排出口が、前記スタックの外側へ接続し、前記配列方向他方の外側に位置する前記酸化ガス排出口が、水を貯留する貯水室へ接続し、前記配列方向に沿う直線を法線とする平面に沿った前記貯水室の断面積が、前記配列方向に沿う直線を法線とする平面に沿った前記酸化ガス排出口の断面積よりも大きいものであることを特徴とする。
【0013】
第五番目の発明に係る固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質を燃料極及び酸化極で挟んだセルとセパレータとが交互に並ぶように複数配列されたスタックを備える固体高分子形燃料電池において、前記スタックは、前記各セルに燃料ガスを供給するように前記配列方向に接続する燃料ガス供給口と、前記各セルに酸化ガスを供給するように前記配列方向に接続する酸化ガス供給口と、使用済みの燃料ガスを排出するように前記配列方向に接続する燃料ガス排出口とを有すると共に、前記配列方向一方の外側に位置する前記燃料ガス排出口が、前記スタックの外側へ接続し、前記配列方向他方の外側に位置する前記燃料ガス排出口が、水を貯留する貯水室へ接続し、前記配列方向に沿う直線を法線とする平面に沿った前記貯水室の断面積が、前記配列方向に沿う直線を法線とする平面に沿った前記燃料ガス排出口の断面積よりも大きいものであることを特徴とする。
【0014】
第六番目の参考例の発明に係る固体高分子形燃料電池は、第四番目又は第五番目の発明において、前記スタックは、前記配列方向他方の外側に配設される絶縁板又は締付板の少なくとも一方に前記貯水室が形成されたものであることを特徴とする。
【0015】
また、第1番目の発明に係る固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質を燃料極及び酸化極で挟んだセルと、前記セルと交互に並ぶように配設されて、当該セルの前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス流路を一方面に形成され且つ前記酸化極に酸化ガスを供給する酸化ガス流路を他方面に形成されると共に、前記燃料ガス流路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路及び当該燃料ガス流路から使用済みの燃料ガスを排出する燃料ガス排出路をそれぞれ形成され且つ前記酸化ガス流路に酸化ガスを供給する酸化ガス供給路及び当該酸化ガス流路から使用済みの酸化ガスと水とを排出する酸化ガス排出路をそれぞれ形成されたセパレータと、前記セルと前記セパレータとの配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、当該セパレータの前記燃料ガス供給路に接続する燃料ガス供給口、当該セパレータの前記燃料ガス排出路に接続する燃料ガス排出口、当該セパレータの前記酸化ガス供給路に接続する酸化ガス供給口、当該セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する酸化ガス排出口を、一方及び他方のいずれかにそれぞれ形成された集電板と、前記集電板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記集電板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記集電板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記集電板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記集電板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記集電板側のものにそれぞれ形成された絶縁板と、前記絶縁板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記絶縁板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記絶縁板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記絶縁板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記絶縁板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記絶縁板側のものにそれぞれ形成された締付板と、を有するスタックを備えている固体高分子形燃料電池において、前記酸化ガス排出口を形成された前記集電板と異なる前記集電板に、前記セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する通水路が形成されると共に、前記酸化ガス排出口を形成された前記絶縁板及び前記締付板と異なる前記絶縁板及び前記締付板の少なくとも一つに、前記集電板の前記通水路に接続して水を貯留する貯水室が前記酸化ガス流路よりも下流側に形成されており、前記貯水室内の空間を前記配列方向を法線とする平面で切ったときの断面積が前記酸化ガス排出口のそれよりも大きいことを特徴とする。
【0016】
第2番目の発明に係る固体高分子形燃料電池は、第一番目の発明において、前記スタックの前記絶縁板の内部に前記貯水室が形成されていることを特徴とする。
【0017】
第3番目の発明に係る固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質を燃料極及び酸化極で挟んだセルと、前記セルと交互に並ぶように配設されて、当該セルの前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス流路を一方面に形成され且つ前記酸化極に酸化ガスを供給する酸化ガス流路を他方面に形成されると共に、前記燃料ガス流路に燃料ガスを供給する燃料ガス供給路及び当該燃料ガス流路から使用済みの燃料ガスを排出する燃料ガス排出路をそれぞれ形成され且つ前記酸化ガス流路に酸化ガスを供給する酸化ガス供給路及び当該酸化ガス流路から使用済みの酸化ガスと水とを排出する酸化ガス排出路をそれぞれ形成されたセパレータと、前記セルと前記セパレータとの配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、当該セパレータの前記燃料ガス供給路に接続する燃料ガス供給口、当該セパレータの前記燃料ガス排出路に接続する燃料ガス排出口、当該セパレータの前記酸化ガス供給路に接続する酸化ガス供給口、当該セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する酸化ガス排出口を、一方及び他方のいずれかにそれぞれ形成された集電板と、前記集電板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記集電板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記集電板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記集電板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記集電板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記集電板側のものにそれぞれ形成された絶縁板と、前記絶縁板の、前記配列方向外側に対をなすようにしてそれぞれ配設されて、前記絶縁板の前記燃料ガス供給口に接続する燃料ガス供給口、前記絶縁板の前記燃料ガス排出口に接続する燃料ガス排出口、前記絶縁板の前記酸化ガス供給口に接続する酸化ガス供給口、前記絶縁板の前記酸化ガス排出口に接続する酸化ガス排出口を、対応する前記絶縁板側のものにそれぞれ形成された締付板と、を有するスタックを備えている固体高分子形燃料電池において、前記酸化ガス排出口を形成された前記集電板と異なる前記集電板に、前記セパレータの前記酸化ガス排出路に接続する通水路が形成されると共に、前記酸化ガス排出口を形成された前記絶縁板及び前記締付板と異なる前記絶縁板及び前記締付板の少なくとも一つに、前記集電板の前記通水路に接続して水を貯留する貯水室が前記酸化ガス流路よりも下流側に形成されており、前記貯水室の内部に補強リブが設けられていることを特徴とする。
【0018】
第4番目の発明に係る燃料電池は、固体高分子電解質を一対の電極で挟んだセルとセパレータとが交互に並ぶように複数配列されて積層されたスタックを含む燃料電池であって、前記スタックは、前記各セルに燃料ガスを供給するために前記配列方向に延びる燃料ガス供給用連通孔と、前記各セルに酸化ガスを供給するために前記配列方向に延びる酸化ガス供給用連通孔と、使用済みの酸化ガスと水を排出するために前記配列方向に延びる酸化ガス排出用連通孔とを少なくとも有し、前記酸化ガス排出用連通孔は前記配列方向一端が開放され、他端が閉塞されるとともに、前記他端に水を貯留する貯水室が形成されており、前記貯水室は前記酸化ガス排出用連通孔と連通し、前記貯水室内の空間を前記配列方向を法線とする平面で切ったときの断面積が前記酸化ガス排出用連通孔のそれよりも大きいことを特徴とする。
【0019】
第5番目の発明に係る燃料電池は、固体高分子電解質を一対の電極で挟んだセルとセパレータとが交互に並ぶように複数配列されて積層されたスタックを含む燃料電池であって、前記スタックは、前記各セルに燃料ガスを供給するために前記配列方向に延びる燃料ガス供給用連通孔と、前記各セルに酸化ガスを供給するために前記配列方向に延びる酸化ガス供給用連通孔と、使用済みの燃料ガスを排出するために前記配列方向に延びる燃料ガス排出用連通孔とを少なくとも有し、前記燃料ガス排出用連通孔は前記配列方向一端が開放され、他端が閉塞されるとともに、前記他端に水を貯留する貯水室が形成されており、前記貯水室は前記燃料ガス排出用連通孔と連通し、前記貯水室内の空間を前記配列方向を法線とする平面で切ったときの断面積が前記燃料ガス排出用連通孔のそれよりも大きいことを特徴とする。
【0020】
第6番目の発明に係る燃料電池は、第4番目又は第5番目の発明において、前記貯水室は、前記他端側に設けられた絶縁板または締付板の少なくとも一方に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る固体高分子形燃料電池、燃料電池によれば、スタックが揺動して、酸化ガス排出口を形成された締付板の高さ位置が、他の締付板の高さ位置よりも高くなるように傾斜すると、セパレータの酸化ガス排出路内の水が、貯水室内に流入して一旦貯留され、酸化ガス排出口を形成された締付板の高さ位置が、他の締付板の高さ位置よりも低くなるように傾斜すると、セパレータの酸化ガス排出路内の水及び貯水室内の水が、締付板の酸化ガス排出口からスタックの外部へ排出されることから、セパレータの酸化ガス流路内に水が貯まってしまうことを大きく抑制することができるので、水の滞留による発電性能の低下を簡単且つコンパクトな構造で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る燃料電池の主な実施形態のスタックの概略構成図である。
図2図1の一方の締付板の概略構成図である。
図3図1の一方の絶縁板の概略構成図である。
図4図1の一方の集電板の概略構成図である。
図5図1のセパレータの一方面側の概略構成図である。
図6図1のセパレータの他方面側の概略構成図である。
図7図1の他方の集電板の概略構成図である。
図8図1の他方の絶縁板の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る燃料電池の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0024】
〈主な実施形態〉
本発明に係る燃料電池の主な実施形態を図1〜8に基づいて説明する。
【0025】
本実施形態に係る燃料電池(例えば、固体高分子形燃料電池)は、図1に示すように、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質を、ガス透過性を有する燃料極及び酸化極で挟んだセル110及びシール材101と、水素ガス等の燃料ガスの流路を一方面に形成されて酸素ガス等の酸化ガスの流路を他方面に形成された導電性を有するセパレータ120とを交互に複数配列し、配列方向(図1中、左右方向)外側に対をなす集電板130,140及び絶縁板150,160をそれぞれ配設して、さらに配列方向(図1中、左右方向)外側に対をなす締付板170,180をそれぞれ配設して締付固定したスタック100を備えてなっている。
【0026】
図2に示すように、一方(図1中、左側)の前記締付板170には、水素ガス等の燃料ガス1を供給する燃料ガス供給口171Aと、酸素ガス等の酸化ガス2を供給する酸化ガス供給口171Bと、使用済みの燃料ガス1を排出する燃料ガス排出口172Aと、使用済みの酸化ガス2及び生成した水3を排出する酸化ガス排出口172Bとがそれぞれ形成されている。
【0027】
図3に示すように、一方(図1中、左側)の前記絶縁板150には、前記締付板170の前記燃料ガス供給口171Aに接続する燃料ガス供給口151Aと、前記締付板170の前記酸化ガス供給口171Bに接続する酸化ガス供給口151Bと、前記締付板170の前記燃料ガス排出口172Aに接続する燃料ガス排出口152Aと、前記締付板170の前記酸化ガス排出口172Bに接続する酸化ガス排出口152Bとがそれぞれ形成されている。
【0028】
図4に示すように、一方(図1中、左側)の前記集電板130には、前記絶縁板150の前記燃料ガス供給口151Aに接続する燃料ガス供給口131Aと、前記絶縁板150の前記酸化ガス供給口151Bに接続する酸化ガス供給口131Bと、前記絶縁板150の前記燃料ガス排出口152Aに接続する燃料ガス排出口132Aと、前記絶縁板150の前記酸化ガス排出口152Bに接続する酸化ガス排出口132Bとがそれぞれ形成されている。
【0029】
図5,6に示すように、前記セパレータ120には、前記板130,150,170の前記燃料ガス供給口131A,151A,171Aに接続する燃料ガス供給口(燃料ガス供給用連通孔)121Aと、前記板130,150,170の前記酸化ガス供給口131B,151B,171Bに接続する酸化ガス供給口(酸化ガス供給用連通孔)121Bと、前記板130,150,170の前記燃料ガス排出口132A,152A,172Aに接続する燃料ガス排出口122Aと、前記板130,150,170の前記酸化ガス排出口132B,152B,172Bに接続する酸化ガス排出口(酸化ガス排出用連通孔)122Bとがそれぞれ形成されている。
【0030】
また、図5に示すように、前記セパレータ120の一方面には、前記セル110の燃料極に水素ガス等の燃料ガス1を供給する燃料ガス流路123Aと、前記燃料ガス供給口121Aと前記燃料ガス流路123Aとを接続する燃料ガス供給マニホールド124Aと、前記燃料ガス排出口122Aと前記燃料ガス流路123Aとを接続する燃料ガス排出マニホールド125Aとがそれぞれ形成されている。
【0031】
また、図6に示すように、前記セパレータ120の他方面には、前記セル110の酸化極に酸素ガス等の酸化ガス2を供給する酸化ガス流路123Bと、前記酸化ガス供給口121Bと前記酸化ガス流路123Bとを接続する酸化ガス供給マニホールド124Bと、前記酸化ガス排出口122Bと前記酸化ガス流路123Bとを接続する酸化ガス排出マニホールド125Bとがそれぞれ形成されている。
【0032】
なお、本実施形態では、前記燃料ガス供給口121A及び前記燃料ガス供給マニホールド124Aによりセパレータの燃料ガス供給路を構成し、前記燃料ガス排出口122A及び前記燃料ガス排出マニホールド125Aによりセパレータの燃料ガス排出路を構成し、前記酸化ガス供給口121B及び前記酸化ガス供給マニホールド124Bによりセパレータの酸化ガス供給路を構成し、前記酸化ガス排出口122B及び前記酸化ガス排出マニホールド125Bによりセパレータの酸化ガス排出路を構成している。
【0033】
図7に示すように、他方(図1中、右側)の前記集電板140には、前記セパレータ120の前記酸化ガス排出口122Bに接続する通水口142Bが形成されている。
【0034】
図1,8に示すように、他方(図1中、右側)の前記絶縁板160には、水3を貯留する貯水室163Bが内部に形成されると共に、前記集電板140の前記通水口142Bに前記貯水室163Bを接続する接続口162Bが形成されている。
【0035】
他方の前記絶縁板160は、一方の前記絶縁板150と同様に、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等のような絶縁性や高剛性や加工容易性等を有する材料からなり、内部に十分な大きさの前記貯水室163Bを形成できるように、一方の前記絶縁板150よりも厚さが大きくなっている。
【0036】
このようなスタック100を備えた本実施形態に係る燃料電池においては、当該スタック100の前記締付板170の前記燃料ガス供給口171Aに水素ガス等の燃料ガス1を供給すると共に、当該締付板170の前記酸化ガス供給口171Bに酸素ガス等の酸化ガス2を供給すると、上記燃料ガス1が、前記絶縁板150の前記燃料ガス供給口151A及び前記集電板130の前記燃料ガス供給口131Aを介して各前記セパレータ120の前記燃料ガス供給口121Aを流通し、各前記セパレータ120の前記燃料ガス供給マニホールド124A内に流入して前記燃料ガス流路123A内を流れて各セル110の燃料極に供給されると共に、上記酸化ガス2が、前記絶縁板150の前記酸化ガス供給口151B及び前記集電板130の前記酸化ガス供給口131Bを介して各前記セパレータ120の前記酸化ガス供給口121Bを流通し、各前記セパレータ120の前記酸化ガス供給マニホールド124B内に流入して前記酸化ガス流路123B内を流れて各セル110の酸化極に供給されることにより、上記燃料ガス1中の水素と上記酸化ガス2中の酸素とが当該セル110で電気化学的に反応して、当該セル110の酸化極側に水3が生じると共に、前記集電板130,140を介して外部に給電することができる。
【0037】
前記セル110で上記電気化学反応に寄与しなかった残りの前記燃料ガス1は、前記セパレータ120の前記燃料ガス流路123Aから前記燃料ガス排出マニホールド125A内に流入して前記燃料ガス排出口122A内を流れ、前記集電板130の前記燃料ガス排出口132A及び前記絶縁板150の前記燃料ガス排出口152Aを介して前記締付板170の前記燃料ガス排出口172Aから前記スタック100の外部へ排出される。
【0038】
また、前記セル110で上記電気化学反応に寄与しなかった残りの前記酸化ガス2は、上記電気化学反応に伴って生成した水3と共に、前記セパレータ120の前記酸化ガス流路123Bから前記酸化ガス排出マニホールド125B内に流入して前記酸化ガス排出口122B内を流れ、前記集電板130の前記酸化ガス排出口132B及び前記絶縁板150の前記酸化ガス排出口152Bを介して前記締付板170の前記酸化ガス排出口172Bから前記スタック100の外部へ排出される。
【0039】
このようなスタック100を備えた本実施形態に係る燃料電池を、例えば、水中を移動する水中航行体に搭載して、水の振動等によって当該水中航行体に周期的な揺れを生じて、上記スタック100が、例えば、図1中、左右方向に周期的な揺れを発生して、一方(図1中、左側)の前記締付板170の高さ位置が他方(図1中、右側)の前記締付板180の高さ位置よりも高くなるように傾斜してしまうと、前記セパレータ120の前記酸化ガス排出マニホールド125B及び前記酸化ガス排出口122B並びに一方(図1中、左側)の前記板130,150,170の前記酸化ガス排出口132B,152B,172B内の水3は、他方(図1中、右側)の前記集電板140の前記通水口142Bを介して他方(図1中、右側)の前記絶縁板160の前記接続口162Bから前記貯水室163B内に流入して一旦貯留される。
【0040】
そして、前記スタック100が、他方(図1中、右側)の前記締付板180の高さ位置が一方(図1中、左側)の前記締付板170の高さ位置よりも高くなるように傾斜すると、他方の前記絶縁板160の前記貯水室163Bの内部に一旦貯留された前記水3は、前記接続口162Bから他方(図1中、右側)の前記集電板140の前記通水口142Bを介して前記セパレータ120の前記酸化ガス排出口122Bを流通し、一方(図1中、左側)の前記板130,150,170の前記酸化ガス排出口132B,152B,172Bを介して外部へ排出される。
【0041】
以下、上記揺動周期に対応して、上記水3は、他方(図1中、左側)の前記絶縁板160の前記貯水室163B内への一時貯留と、一方(図1中、右側)の前記板130,150,170の前記酸化ガス排出口132B,152B,172Bからの外部への排出とが交互に繰り返される。
【0042】
つまり、本実施形態に係る前記スタック100においては、周期的な揺動により一方(図1中、左側)の前記板130,150,170の前記酸化ガス排出口132B,152B,172Bから外部に水3を排出できないときに、他方(図1中、右側)の前記絶縁板160の内部に形成した前記貯水室163B内に水3を一旦貯留し、一方(図1中、左側)の上記板130,150,170の上記酸化ガス排出口132B,152B,172Bから外部に水3を排出できるときに、他方(図1中、右側)の上記絶縁板160の上記貯水室163B内に一旦貯留した水3が排出されるようにしたのである。
【0043】
このため、本実施形態に係る前記スタック100では、前記セパレータ120の前記酸化ガス排出マニホールド125B及び前記酸化ガス排出口122B並びに前記板130,150,170の前記酸化ガス排出口132B,152B,172B内に水3が貯まってしまうことを大きく抑制することができる。
【0044】
したがって、本実施形態に係る燃料電池によれば、水3の滞留による発電性能の低下を簡単且つコンパクトな構造で抑制することができる。
【0045】
また、前記貯水室163Bが前記絶縁板160の内部に形成されているので、当該貯水室163Bに対して電気的な腐食防止加工を省略することができる。
【0046】
ここで、図1に示すように、前記スタック100の他方(図1中、右側)の前記絶縁板160に最も近い位置に位置する前記セル110の前記燃料極又は前記酸化極の下端部を通る線(面)Fと水平線(面)Lとのなす角度θが、前記スタック100の前記揺動周期における最大傾斜角となったときに、当該絶縁板160の前記貯水室163Bの上面163Baが上記線(面)Fよりも上方に位置するように、当該貯水室163Bは、その高さHが設定される。
【0047】
また、前記スタック100の単位時間当たりの水3の生成量をQとし、前記スタック100の揺動の一周期に要する時間をCとし、前記スタック100の前記絶縁板160の前記貯水室163Bの内部容積をVとすると、当該貯水室163Bは、下記の式(1)を満足できるように、その厚さTと高さHと幅Wとが設定される。
【0048】
V>α×Q×C (1)
ただし、αは余裕係数であり、任意に設定される1以上の数値である。
【0049】
このとき、上記高さH及び上記幅Wは、その最大値が、前記セル110の大きさ等に基づく前記絶縁板160の大きさから自ずと決まるので、上記厚さTを、上記条件を満足し得る最小値に設定することにより、前記絶縁板160は、その厚さの増加が必要最小限に抑えられる。
【0050】
また、前記貯水室163Bの内部に補強リブを設けると、前記絶縁板160の強度を高めることができ、当該絶縁板160の厚さの増加をさらに抑えることができるので、好ましい。
【0051】
〈他の実施形態〉
なお、前述した実施形態においては、前記絶縁板160に前記貯水室163Bを形成した前記スタック100を備えた燃料電池の場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、前記絶縁板160の前記貯水室163Bに代えて、他方の前記締付板180に、前記絶縁板160の前記接続口162Bに接続する接続口を形成して当該締付板180の内部に貯水室を形成することや、前記絶縁板160に前記貯水室163Bを設けると共に前記締付板180にも上記貯水室を設けるようにすることも可能である。
【0052】
ここで、前記締付板180に前記貯水室を設ける場合、当該締付板180が金属材料からなることから、電気的な腐食を防止するコーティング等を当該貯水室の内壁面に施工すると、好ましい。
【0053】
また、前述した実施形態においては、一方の前記板130,150,170にすべての前記口131A,131B,132A,132B,151A,151B,152A,152B,171A,171B,172A,172Bを形成するようにしたが、他の実施形態として、例えば、一方の前記板130,150,170に前記供給口131A,131B,151A,151B,171A,171Bのみを形成して他方の前記板140,160,180に燃料ガス排出口及び酸化ガス排出口をそれぞれ形成し、一方の前記集電板140に通水口を形成すると共に一方の前記絶縁板150や前記締付板170に接続口及び貯水室を形成するようにすることも可能である。
【0054】
つまり、酸化ガス排出口を形成された絶縁板や締付板と異なる絶縁板や締付板に貯水室等を形成するのである。
【0055】
また、上述した電気化学反応によって発生する水3は、前記セル110の酸化極側がほとんどであることから、前述した実施形態においては、前記貯水室を酸化ガス排出口に接続するように前記絶縁板等に形成するようにしたが、各種条件等によっては、前記セル110の燃料極側にも水3が生成してしまう場合があることから、他の実施形態として、例えば、燃料ガス排出口に接続する貯水室を前記絶縁板等にさらに形成するようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る固体高分子形燃料電池、燃料電池は、水の滞留による発電性能の低下を簡単且つコンパクトな構造で抑制することができるので、産業上、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 燃料ガス
2 酸化ガス
3 水
100 スタック
101 シール材
110 セル
120 セパレータ
121A 燃料ガス供給口
121B 酸化ガス供給口
122A 燃料ガス排出口
122B 酸化ガス排出口
123A 燃料ガス流路
123B 酸化ガス流路
124A 燃料ガス供給マニホールド
124B 酸化ガス供給マニホールド
125A 燃料ガス排出マニホールド
125B 酸化ガス排出マニホールド
130 集電板
131A 燃料ガス供給口
131B 酸化ガス供給口
132A 燃料ガス排出口
132B 酸化ガス排出口
140 集電板
142B 通水口(通水路)
150 絶縁板
151A 燃料ガス供給口
151B 酸化ガス供給口
152A 燃料ガス排出口
152B 酸化ガス排出口
160 絶縁板
162B 接続口
163B 貯水室
170 締付板
171A 燃料ガス供給口
171B 酸化ガス供給口
172A 燃料ガス排出口
172B 酸化ガス排出口
180 締付板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8