特許第6772344号(P6772344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6772344エレベータ遠隔診断方法およびエレベータ遠隔診断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6772344
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】エレベータ遠隔診断方法およびエレベータ遠隔診断装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20201012BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20201012BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B13/14 L
   B66B3/00 M
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-127538(P2019-127538)
(22)【出願日】2019年7月9日
【審査請求日】2019年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大塲 健翔
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−043751(JP,A)
【文献】 特開平07−257847(JP,A)
【文献】 特開2015−054748(JP,A)
【文献】 特開2006−052057(JP,A)
【文献】 特開2016−055976(JP,A)
【文献】 特開2005−126224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00─ 5/28
B66B 13/00─13/30
B66B 3/00─ 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不停止階が設定されたエレベータについて、各階床におけるドア開閉動作を遠隔から診断するためのドア診断運転を実行する遠隔診断装置が、
前記ドア開閉動作を各階床で順次実行するために選択した次のドア開閉動作候補階が、当該階床を行先階とするかご呼びを登録不可とするかご不停止階として設定されており、且つ乗りかご内に利用者がいると判断したときには、当該階床のドア開閉動作処理をスキップし、
次のドア開閉動作候補階が、当該階床におけるホール呼びを登録不可とするホール不停止階として設定されており、且つ当該階床のエレベータホールに利用者がいると判断したときには、当該階床のドア開閉動作処理をスキップして、前記ドア診断運転を実行する
ことを特徴とするエレベータ遠隔診断方法。
【請求項2】
前記遠隔診断装置は、
前記ホール不停止階でドア開閉動作を実行したときに利用者が前記乗りかごに乗車したと判断すると、前記乗りかご内の出力装置から、当該エレベータを使用できない旨を示す報知情報を出力させ、当該利用者が降車したことを検知するまで戸開状態を維持してかご呼びを登録不可とし、
前記ホール不停止階以外の階でドア開閉動作を実行したときに利用者が前記乗りかごに乗車したと判断すると通常運転に切り替え、当該利用者のかご呼び操作に応答した運転が完了するとドア診断運転を再開する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ遠隔診断方法。
【請求項3】
前記遠隔診断装置は、
前記ホール不停止階のフロアへの入り口に設置されたセキュリティゲート、前記ホール不停止階のフロア内に設置されたカメラ装置、または前記ホール不停止階のエレベータホールに設置された人感センサの少なくともいずれかで前記エレベータの利用者が検知されたときには、当該ホール不停止階のエレベータホールに利用者がいると判断する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエレベータ遠隔診断方法。
【請求項4】
前記遠隔診断装置は、
前記かご不停止階または前記ホール不停止階の設定の一部または全部が解除されたと判断したときに、前記ドア診断運転を実行する
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のエレベータ遠隔診断方法。
【請求項5】
不停止階が設定されたエレベータについて、各階床におけるドア開閉動作を遠隔から診断するためのドア診断運転を実行し、
前記ドア開閉動作を各階床で順次実行するために選択した次のドア開閉動作候補階が、当該階床を行先階とするかご呼びを登録不可とするかご不停止階として設定されており、且つ乗りかご内に利用者がいるときには、当該階床のドア開閉動作処理をスキップし、
次のドア開閉動作候補階が、当該階床におけるホール呼びを登録不可とするホール不停止階として設定されており、且つ当該階床のエレベータホールに利用者がいるときには、当該階床のドア開閉動作処理をスキップして、前記ドア診断運転を実行する
ことを特徴とするエレベータ遠隔診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ遠隔診断方法およびエレベータ遠隔診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータと遠隔監視センタとを通信ネットワークを介して接続し、遠隔監視センタから当該エレベータを遠隔監視する技術が普及している。この遠隔監視は、遠隔監視センタからエレベータに遠隔診断運転指令を送信して自動で診断運転を実行させ、その診断結果をエレベータから遠隔監視センタに送信することで実行される。このような遠隔監視により、エレベータの保守員が直接現場に赴くことなく、エレベータの保守管理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−257847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したエレベータの遠隔診断運転による診断項目の1つに、エレベータドアの開閉動作が正常に行われるか否かを確認するためのドア診断がある。ドア診断では、各階床に順次乗りかごを着床させ、ドア開閉動作を実行させる。
【0005】
一方で、建物によっては、セキュリティ等の観点から入場者を制限するために、エレベータを不停止とするように設定された階床(以下、「不停止階」と記載する)を有する場合がある。上述した遠隔診断運転の間も一般利用者がエレベータを利用することは可能であるため、ドア診断運転中に不停止階で乗りかごをドア開閉させるとセキュリティレベルが低下してしまう。
【0006】
しかし、不停止階でドア開閉動作を行わないようにすると当該階床で発生したドア故障を検出することができず、ドア診断の精度が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、不停止階のセキュリティレベルを確保しつつ、遠隔診断運転におけるドア診断を確実に実行させるためのエレベータ遠隔診断方法およびエレベータ遠隔診断装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ遠隔診断方法では、不停止階が設定されたエレベータについて、各階床におけるドア開閉動作を遠隔から診断するためのドア診断運転を実行する遠隔診断装置が、ドア開閉動作を各階床で順次実行するために選択した次のドア開閉動作候補階が、当該階床を行先階とするかご呼びを登録不可とするかご不停止階として設定されており、且つ乗りかご内に利用者がいるときには当該階床のドア開閉動作処理をスキップし、次のドア開閉動作候補階が、当該階床におけるホール呼びを登録不可とするホール不停止階として設定されており、且つ当該階床のエレベータホールに利用者がいるときには当該階床のドア開閉動作処理をスキップして、ドア診断運転を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1、第3実施形態による遠隔診断装置を用いるエレベータシステムの構成を示す全体図。
図2】第1実施形態によるエレベータシステムに用いるエレベータの、(a)ホール操作盤の正面図、および(b)エレベータホールの外観斜視図。
図3】第1実施形態による遠隔診断装置で実行される遠隔診断運転の動作を示すフローチャート。
図4】第1実施形態による遠隔診断装置で実行される遠隔診断中のドア開閉動作実施階の選定処理を示すフローチャート。
図5】第2実施形態による遠隔診断装置を用いるエレベータシステムの構成を示す全体図。
図6】第2実施形態による遠隔診断装置で実行される遠隔診断中のエレベータホール有人/無人判断処理を示すフローチャート。
図7】第2実施形態による遠隔診断装置で実行される遠隔診断中の、セキュリティゲートからの情報に基づくエレベータ利用者有無判断処理を示すフローチャート。
図8】第2実施形態による遠隔診断装置で実行される遠隔診断中の、防犯カメラ装置からの情報に基づくエレベータ利用者有無判断処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による遠隔診断システムについて、図面を参照して説明する。本実施形態による遠隔診断システムは、エレベータに自動で診断運転を実行させることにより、当該エレベータ内の各機器の稼動状態を遠隔から診断するためのシステムである。以下、遠隔から各機器の稼動状態を診断するためにエレベータに自動で実行させる診断運転を、「遠隔診断運転」と称して説明する。
【0011】
以下の実施形態では遠隔診断運転により、昇降路内に設置された着床スイッチやリミットスイッチのON/OFF動作診断、巻上げ機に備えられたブレーキの動作診断、各階床における乗りかごの着床位置診断、ドアの開閉動作の診断等を実行する。
【0012】
《第1実施形態》
〈第1実施形態による遠隔診断装置を利用したエレベータシステムの構成〉
本発明の第1実施形態による遠隔診断装置を利用したエレベータシステムの構成について、図1を参照して説明する。本実施形態においてエレベータシステム1Aは、建物に設置されたエレベータ10と、当該エレベータ10に通信ネットワーク20を介して接続され、遠隔地の遠隔監視センタに設置された遠隔監視センタ装置30とを備える。遠隔監視センタ装置30は、エレベータ10の遠隔診断運転の実行スケジュール情報を保持し、当該実行スケジュール情報を、通信ネットワーク20を介してエレベータ10に送信する。
【0013】
エレベータ10は、昇降路11上部に設置された巻き上げ機12と、巻き上げ機12に吊り下げられた乗りかご13と、建物内のエレベータホール14に設置されたホール操作盤141およびホールドア142と、巻き上げ機12、乗りかご13、およびホール操作盤141に接続されたエレベータ制御盤15とを有する。乗りかご13は、利用者が行先階を指定してかご呼び操作を行うためのかご操作盤131と、かごドア132と、かごドア132を開閉動作させるドアモータ133と、ドアモータ133に設置されたトルクセンサ134と、かごドア132の戸開および戸閉を検知するドアスイッチ135とを有する。トルクセンサ134は、ドアモータ133にかかるトルク値を検出し、エレベータ制御盤15に送信する。
【0014】
ホール操作盤141の詳細な構成について、図2を参照して説明する。図2(a)は、ホール操作盤141の正面図であり、図2(b)は、ホール操作盤141が設置されたエレベータホール14を示す図である。
【0015】
図2(a)に示すように、ホール操作盤141には、上方向のホール呼び登録操作を行うための上方向呼びボタン141aと、下方向のホール呼び登録操作を行うための下方向呼びボタン141bと、乗りかご13の位置情報および走行方向を示す情報を表示する表示部141cと、人感センサ141dとが設置されている。このように構成されたホール操作盤141は、図2(b)に示すようにホールドア142の横に設置され、人感センサ141dは、エレベータホール14のホールドア142前方の検知範囲X内にいる人を検知する。この人感センサ141dは、エレベータホール14に人がいないときに照明を消すかまたは低減させて消費電力の省力化を図る目的で設置されている既設のものを用いてもよい。
【0016】
人感センサ141dの検知範囲Xは、ホールドア142の開閉時間と人の歩行速度(一般的には80m/分)とに基づいて、ホールドア142が開いたときに乗りかご13に乗り込む可能性がある人を検知できるように設定される。そして、人感センサ141dは、検知範囲X内に人を検知しなかったときには当該エレベータホール14は無人であることを示す情報を生成し、検知範囲X内に人を検知したときには当該エレベータホール14に待ち利用者がいることを示す情報を生成し、生成した情報をエレベータ制御盤15に送信する。
【0017】
図1においては、説明を簡略化するため、エレベータホール14およびホール操作盤141をそれぞれ1つのみ示しているが、実際には建物内の各階に設置されている。ただし、人感センサ141dは、後述するホール不停止階として設定されている階のホール操作盤141のみが備えていればよい。
【0018】
エレベータ制御盤15は、不停止階情報記憶部151と、呼び登録部152と、動作制御部153と、送受信部154と、かご内無人判断部155と、ホール無人判断部156と、遠隔診断装置としての診断運転実行部157とを有する。
【0019】
不停止階情報記憶部151は、当該建物内で、通常運転中に乗りかご13の停止を禁止する不停止階の情報を記憶する。不停止階には、かご呼びの行先階としての停止を禁止する不停止階(以下、「かご不停止階」と記載する)、および、ホール呼び操作に対する停止を禁止する不停止階(以下、「ホール不停止階」と記載する)が含まれる。
【0020】
呼び登録部152は、かご操作盤131での操作情報を取得して該当する行先階の情報を含むかご呼びを登録するとともに、ホール操作盤141での操作情報を取得して該当する階床の情報を含むホール呼びを登録する。このとき、不停止階情報記憶部151に記憶された情報を参照して、かご操作盤131で操作された行先階がかご不停止階である場合には、当該操作情報に関するかご呼びを登録しない。また、ホール不停止階のホール操作盤141でホール呼び操作が行われた場合には、当該操作情報に関するホール呼びを登録しない。動作制御部153は、呼び登録部152に登録された呼びに応答するように、巻き上げ機12を含むエレベータ10内の機器の動作を制御する。送受信部154は、通信ネットワーク20を介して遠隔監視センタ装置30との情報の送受信を行う。
【0021】
かご内無人判断部155は、乗りかご13に設置されたカメラ装置(図示せず)または荷重検知装置(図示せず)で取得される情報に基づいて、乗りかご13内が無人であるか否かを判断する。ホール無人判断部156は、エレベータホール14が無人であるか否かを判断する。
【0022】
診断運転実行部157は、遠隔監視センタ装置30から送信された遠隔診断スケジュールに従って各種遠隔診断のための運転を実行する。診断運転実行部157は、開閉動作実施階選定部157aと、運転指示部157bと、センサ情報取得部157cと、診断部157dとを有する。開閉動作実施階選定部157aは、ドア診断運転中に次のドア開閉動作実施階を選定する。次のドア開閉動作実施階を選定する際には、不停止階情報記憶部151に記憶された情報、かご内無人判断部155による判断結果、およびホール無人判断部156による判断結果を参照して処理を行う。選定処理の詳細については、後述する。
【0023】
運転指示部157bは、開閉動作実施階選定部157aで選定された階床に乗りかご13を着床させるための呼びを呼び登録部152に登録する。センサ情報取得部157cは、乗りかご13のドアモータ133に設置されたトルクセンサ134のトルク値、およびドアスイッチ135の動作情報を取得する。診断部157dは、センサ情報取得部157cで取得された情報に基づいて、ドア開閉動作実施階におけるドア開閉動作の異常の有無を診断し、診断結果を遠隔監視センタ装置30に送信する。
【0024】
〈第1実施形態による遠隔診断装置を利用したエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Aの動作について説明する。まず、遠隔監視センタ装置30からエレベータ10に関する遠隔診断運転の実行スケジュール情報が通信ネットワーク20を介してエレベータ10に送信される。エレベータ10では、遠隔監視センタ装置30から送信された遠隔診断運転の実行スケジュール情報がエレベータ制御盤15の送受信部154から受信され、診断運転実行部157で取得される。本実施形態において、遠隔診断運転の実行スケジュールには、遠隔診断運転が毎月1日の午前0時〜1時に実行されることが設定されているものとする。
【0025】
また、本実施形態において、エレベータ制御盤15の不停止階情報記憶部151には、かご不停止階として「2階」が登録され、ホール不停止階として「3階」が登録されているものとする。
【0026】
遠隔診断運転の実行スケジュール情報に従って、診断運転実行部157で実行される処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
診断運転実行部157の運転指示部157bでは、取得した遠隔診断運転の実行スケジュール情報に基づいて、現在時刻が遠隔診断運転の実行時間に該当するか否かが監視され、実行時間に該当すると判断されると、遠隔診断運転が開始される。遠隔診断運転では、昇降路内に設置された着床スイッチやリミットスイッチのON/OFF動作診断、巻上げ機に備えられたブレーキの動作診断、各階床における乗りかごの着床位置診断、ドアの開閉動作の診断等が所定順序で実行される。
【0028】
これらの項目のうち、ドア開閉動作の診断のためのドア診断運転の実行タイミングが到来すると(S2の「YES」)、運転指示部157bにより、呼び登録部152にかご呼びまたはホール呼びが登録されているか否かが確認される。ここで、いずれかの呼びが登録されている場合には(S3の「YES」)、当該呼びへの応答が完了するまでドア診断運転は開始されない(S4の「NO」)。このようにドア診断運転よりも登録された呼びへの応答を優先させることにより、利用者への利便性の低下を防止することができる。
【0029】
呼びへの応答が完了したことを検知すると(S4の「YES」)、ステップS1に戻り、まだ遠隔診断運転の実行時間内であるか否かが確認される。そして、遠隔診断運転の実行時間内であり(S1の「YES」)、ドア診断運転の実行タイミングが到来しており(S2の「YES」)、呼び登録部152に呼びが登録されていない状態になると(S3の「NO」)ドア診断運転が実行開始され、開閉動作実施階選定部157aにより、ドア開閉動作を実施する階床が選定される(S5)。
【0030】
開閉動作実施階選定部157aで実行される、ドア開閉動作を実施する階床を選定する処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。まず、予め設定されたドア診断の実施順序に従って、次のドア開閉動作を行う候補階が選択される(S51)。ドア診断の実行順序には、例えば、最下階から始める順序、最上階から始める順序、乗りかごの現在位置に近い階から始める順序、または、診断可能条件が制限される不停止階から始める順序等がある。ここでは、最下階から最上階に向かって順に実行するものとし、最初のドア開閉動作の候補階として最下階の「1階」が選択される。
【0031】
次に、選択された候補階「1階」が、不停止階情報記憶部151に記憶されたかご不停止階であるか否かが判断される。ここでは、候補階「1階」はかご不停止階ではないため(S52の「NO」)、ステップS53に移行し、さらに当該候補階「1階」がホール不停止階であるか否かが判断される。ここでは、候補階「1階」はホール不停止階にも該当しないため(S53の「NO」)、当該「1階」が次のドア開閉動作実施階として選定される(S54)。
【0032】
ドア開閉動作実施階が選定されると、図2のフローチャートに戻り、運転指示部157bからの指示により、選定された「1階」に乗りかご13を移動させるための呼びが呼び登録部152に登録される。そして、動作制御部153により、登録された呼びへの応答のために乗りかご13が「1階」に移動開始されると(S6)、当該「1階」に到着するまでの間、呼び登録部152に新たなかご呼びまたはホール呼びが登録されたか否かが監視される(S7の「NO」、S8)。
【0033】
ここで、乗りかご13が「1階」に到着するまでの間に新たな呼びが呼び登録部152に登録されると(S8の「YES」)、当該呼びへの応答が完了するまでドア診断運転が中断される(S9、S10の「NO」)。呼びへの応答が完了したことを検知すると(S10の「YES」)、ステップS1に戻り、まだ遠隔診断運転の実行時間内であるか否かが確認される。ここで、遠隔診断運転の実行時間内であり(S1の「YES」)、ドア診断運転の実行タイミングが到来しており(S2の「YES」)、呼びが登録されていない場合には(S3の「NO」)、ドア開閉動作実施階の選定処理が実行される。ここでは、ドア開閉動作実施階として、設定されたドア診断の実行順序に従って再度「1階」が選定されたものとする。
【0034】
そして、ステップS6において「1階」への乗りかご13の移動が開始された後、呼び登録部152に新たな呼びが登録されていない状態で、選定された「1階」に乗りかご13が到着すると(ステップS7の「NO」→S8の「NO」→S7の「YES」)、当該「1階」での乗りかご13のドア開閉動作が実施される。そして、乗りかご13のドア開閉動作の実行中に、ドアモータ133のトルクセンサ134で計測されたトルク値、ドアスイッチ135の動作情報等が、センサ情報取得部157cで取得される。取得された情報は診断部157dに送出され、診断部157dに予め保持された判断閾値が用いられて当該「1階」におけるドア開閉動作の異常の有無が診断される(S11)。
【0035】
この時点ではまだすべての階床のドア開閉動作が完了していないため(S12の「NO」)、ステップS1に戻り、処理が繰り返される。そして、遠隔診断運転の実行時間内であり(S1の「YES」)、ドア診断運転の実行タイミングが到来しており(S2の「YES」)、呼び登録部152に呼びが登録されていない状態であれば(S3の「NO」)ドア診断運転が継続され、開閉動作実施階選定部157aにより、ドア開閉動作を実施する階床が選定される(S5)。
【0036】
ドア開閉動作を実施する階床の選定処理は、図3のフローチャートで示すように、まず次のドア開閉動作の候補階として「2階」が選択される。ここで、選択された「2階」は不停止階情報記憶部151に記憶されたかご不停止階に該当するため(S52の「YES」)、ステップS55に移行し、かご内無人判断部155による判断結果に基づいて、乗りかご13が無人であるか否かが確認される。ここで、乗りかご13内に利用者がいると判断された場合(S55の「NO」)には、1つ先の「3階」がドア開閉動作候補階として更新され(S56)、ステップS52に戻る。このように、乗りかご13内に利用者いるときにはかご不停止階でのドア開閉動作をスキップさせることで、乗りかご13内の利用者がかご不停止階に降車することを回避することができる。ステップS55で乗りかご13内に利用者がいない(無人である)と判断された場合(S55の「YES」)には、候補階を「2階」としたままステップS53に移行する。ここでは、乗りかご13内に利用者がいると判断され、1つ先の「3階」がドア開閉動作候補階として更新されたものとする。
【0037】
更新された候補階「3階」はかご不停止階ではなく(S52の「NO」)、ホール不停止階に該当する(S53の「YES」)ため、ステップS57に移行し、ホール無人判断部156による判断結果に基づいて、3階のエレベータホール14が無人であるか否かが確認される。ここで、3階のエレベータホール14に待ち利用者がいると判断された場合(S57の「NO」)には、1つ先の「4階」がドア開閉動作候補階として更新され(S58)、ステップS52に戻る。このように、ホール不停止階のエレベータホールに待ち利用者がいるときには当該階床でのドア開閉動作でのドア開閉動作をスキップさせることで、ホール不停止階から乗りかご13に利用者が乗り込むことを回避することができる。ステップS57でエレベータホール14に待ち利用者いない(無人である)と判断された場合(S57の「YES」)には、候補階を「3階」としたままステップS54に移行する。ここでは、エレベータホール14に待ち利用者がいると判断され、1つ先の「4階」がドア開閉動作候補階として更新されたものとする。
【0038】
そして、更新されたドア開閉動作候補階「4階」はかご不停止階ではなく(S52の「NO」)、且つホール不停止階でもない(S53の「NO」)ため、当該「4階」が次のドア開閉動作実施階として選定される(S54)。その後、新たな呼びが登録されずに乗りかご13が選定された「4階」に到着すると(S6、S7の「YES」)、当該「4階」での乗りかご13のドア開閉動作が実施され、異常の有無が診断される(S11)。
【0039】
以降、ドア開閉動作をスキップさせた「2階」および「3階」を含む、ドア開閉動作未実施階に対し、ステップS1〜S10の処理が実行され(S12の「NO」)、すべての階床のドア開閉動作および診断が完了し(S12の「YES」)、すべての遠隔診断項目に関する診断運転が完了すると(S13の「YES」)、遠隔診断の処理が終了される。
【0040】
上述した遠隔診断の処理中、ホール不停止階以外の階でドア開閉動作を実行したときに利用者が乗りかご13に乗車したと判断すると、エレベータ10は通常運転に切り替えられ、当該利用者のかご呼び操作に応答した運転が完了するとドア診断運転が再開される。
【0041】
以上の第1実施形態によれば、不停止階をかご不停止階とホール不停止階とに分けて、それぞれのドア開閉診断の実施可能条件を定めることで、かご不停止階とホール不停止階それぞれに求められるセキュリティ要件を満たしつつ、不停止階を含むすべての階床に対する遠隔からのドア開閉診断を確実に実行させることができる。
【0042】
上述した第1実施形態において、ホール不停止階でドア開閉動作を実行したときに、万が一利用者が乗車し、かご内無人判断部155により利用者が乗車したと判断された場合には、動作制御部153により乗りかご13内のスピーカ装置(図示せず)や表示装置(図示せず)から、「エレベータを使用できない」旨を示す報知情報を出力させ、利用者が降車するまで戸開状態を維持してかご呼びを登録不可とするようにしてもよい。
【0043】
《第2実施形態》
〈第2実施形態による遠隔診断装置を利用したエレベータシステムの構成〉
本発明の第2実施形態による遠隔診断装置を利用したエレベータシステム1Bの構成について、図5を参照して説明する。エレベータシステム1Bは、建物のホール不停止階のフロアへの入り口等に設置されたセキュリティゲート21と、当該ホール不停止階のフロア内に設置された第1防犯カメラ装置22および第2防犯カメラ装置23とを有する他は、第1実施形態で説明したエレベータシステム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。これらのセキュリティゲート21、第1防犯カメラ装置22、および第2防犯カメラ装置23は、当該建物のセキュリティ対策のために設置された既存の装置を用いることができる。
【0044】
セキュリティゲート21は、ホール不停止階のフロアに入場する人を制限するために設置され、当該フロアに入場しようとする人が携帯するICカード等から当該者の識別情報を取得し、当該者が当該フロアへの入場を許可された人であると判定すると、開状態にして当該者を入場させる。またセキュリティゲート21は、エレベータ制御盤15に通信接続され、開状態にしたときに取得した当該入場者の識別情報を、エレベータ制御盤15に送信する。
【0045】
第1防犯カメラ装置22は、防犯や人の監視のためにセキュリティゲート21とエレベータホール14との間の所定位置に設置され、設置位置に対応するエリアを撮影する。また第1防犯カメラ装置22はエレベータ制御盤15に通信接続され、撮影した撮像情報をエレベータ制御盤15に送信する。
【0046】
第2防犯カメラ装置23は、防犯や人の監視のために第1防犯カメラ装置22とエレベータホール14との間の所定位置に設置され、設置位置に対応するエリアを撮影する。また第2防犯カメラ装置23はエレベータ制御盤15に通信接続され、撮影した撮像情報をエレベータ制御盤15に送信する。
【0047】
また本実施形態においてエレベータ制御盤15のホール無人判断部156は、セキュリティゲート21、第1防犯カメラ装置22、第2防犯カメラ装置23、およびホール不停止階の人感センサ141dから取得する情報に基づいて、これらの装置の設置位置のいずれかでエレベータ10の利用者を検知したときに、当該ホール不停止階のエレベータホール14に人がおり無人ではないと判断する。
【0048】
〈第2実施形態による遠隔診断装置を利用したエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Bの動作について図3図4を参照して説明する。本実施形態において、診断運転実行部157の運転指示部157bには、建物への人の出入りが少ない時間帯に遠隔診断運転が行われるように設定された実行スケジュール情報が保持されている。
【0049】
この実行スケジュール情報に基づいて、ステップS1〜S4で実行される処理は、第1実施形態で説明した処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、ステップS5のドア開閉動作を実施する階床を選定する処理において、ステップS51、S52、S55、およびS56で実行される処理についても、第1実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0050】
本実施形態において、ステップS53で、選択された候補階がホール不停止階に該当すると判断された際に(S53の「YES」)、ステップS57で実行される、当該ホール不停止階のエレベータホール14が無人であるか否かを確認する処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0051】
まず、ホール無人判断部156において、セキュリティゲート21からの情報に基づいて、当該ホール不停止階のエレベータホール14にエレベータ10の利用者がいるか否かが判定される(S21)。当該判定処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0052】
ホール無人判断部156では、セキュリティゲート21から、当該ホール不停止階のフロアへの入場者を検知した情報が取得されていない間は(S31の「NO」)、当該ホール不停止階のエレベータホール14にエレベータ10の利用者無しと判定される(S32)。入場者が検知され、該当する人の識別情報が取得されると(S31の「YES」)、予め保持した情報に基づいて、当該識別情報で示される人が当該ホール不停止階からエレベータ10に乗車することが許可された管理者であるか否かが判定される(S33)。判定の結果、当該識別情報で示される人が管理者であるときには(S33の「YES」)、乗車が制限される一般利用者はおらず当該階床で乗りかご13を戸開させても問題ないため、当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者無しと判定される(S32)。
【0053】
ステップS33において、当該識別情報で示される人が当該管理はではないと判定されたときには(S33の「NO」)、セキュリティゲート21での入場検知から一定時間が経過したか否かが判定される(S34)。入場検知から一定時間が経過していない場合には(S35の「NO」)、当該入場者がエレベータ10を利用するためにエレベータホール14にいる可能性があると判断し、当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者有りと判定される(S35)。また、入場検知から一定時間が経過した場合には(S34の「YES」)、当該入場者が所定時間内にエレベータ10を利用する可能性はなくなったと判断し、当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者無しと判定される(S32)。
【0054】
図6に戻り、上述した処理により、セキュリティゲート21からの情報に基づいて当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者無しと判定されると(S21の「NO」)、第1防犯カメラ装置22からの情報に基づいて、当該ホール不停止階のエレベータホール14にエレベータ10の利用者がいるか否かが判定される(S22)。当該判定処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
ホール無人判断部156では、第1防犯カメラ装置22から送信された撮像情報が順次解析され、撮像エリア内に人がいるか否かが監視される。そして、撮像エリア内に人が検知されていない間は(S41の「NO」)、当該ホール不停止階のエレベータホール14にエレベータ10の利用者無しと判定される(S42)。撮影エリア内に人が検知されると(S41の「YES」)、さらに撮像情報が解析され、当該検知された人がエレベータホール14に向かっているか否かが判定される(S43)。
【0056】
そして、当該検知された人がエレベータホール14に向かっていると判定されたときには(S43の「YES」)、検知されてから所定時間範囲内であるか否かが判定される(S44)。この時間範囲は、当該第1防犯カメラ装置22からエレベータ10までの距離と、人間の歩行速度(一般に80m/分)と、エレベータ10のドア開閉動作に要する時間とに基づいて、当該検知された人がエレベータホール14に到着するときに、ドア診断運転により当該階でドア開閉動作していると予測される範囲の時間で設定される。
【0057】
このように設定されることにより、現在時が上述した所定時間範囲内であると判定されたとき(S44の「YES」)には、当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者有りと判定される(S45)。また、現在時が上述した所定時間範囲内ではない、つまり当該所定時間範囲に達していないかまたは、当該所定時間範囲を超えていると判定されたとき(S44の「NO」)には、当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者無しと判定される(S42)。
【0058】
また、ステップS43において、当該検知された人がエレベータホール14に向かっていないと判定されたときには(S43の「NO」)、検知されてから一定時間が経過したか否かが判定される(S46)。この一定時間を経過したか否かを判定するための閾値は、当該第1防犯カメラ装置22からエレベータ10までの距離と、人間の歩行速度(一般に80m/分)とに基づいて、当該検知された人がエレベータホール14から十分に離れたと判断可能な時間で設定される。
【0059】
このように設定されることにより、検知されてから一定時間が経過している場合には(S46の「YES」)、エレベータホール14に向かっていない人がエレベータホール14から十分に離れたと判断され、当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者無しと判定される(S42)。また、検知されてから一定時間が経過していない場合には(S46の「NO」)、当該検知された人がエレベータホール14に向かう可能性があると判断され、当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者有りと判定される(S45)。
【0060】
図6に戻り、上述した処理により、第1防犯カメラ装置22から送信された撮像情報に基づいて当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者無しと判定されると(S22の「NO」)、さらに、第1防犯カメラ装置22よりもエレベータホール14に近い位置に設置された第2防犯カメラ装置23からの情報に基づいて、当該ホール不停止階のエレベータホール14にエレベータ10の利用者がいるか否かが判定される(S23)。当該判定処理は、第1防犯カメラ装置22から送信された撮像情報に基づいて実行されたステップS41〜S45と同様の処理により実行される。
【0061】
そして、第2防犯カメラ装置23から送信された撮像情報に基づいて当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者無しと判定されると(S23の「NO」)、さらに、エレベータホール14の人感センサ141dから送信された検知情報に基づいて、当該ホール不停止階のエレベータホール14にエレベータ10の利用者がいるか否かが判定される(S24)。具体的には、人感センサ141dで人が検知されていればエレベータホール14にエレベータ10の利用者がいると判定され、人が検知されていなければエレベータホール14にエレベータ10の利用者がいないと判定される。
【0062】
当該処理により、人感センサ141dから送信される情報に基づいて当該階のエレベータホール14にエレベータ利用者無しと判定されると(S24の「NO」)、当該階のエレベータホール14が無人であると判定される(S25)。また、ステップS21、S22、S23、S24のいずれかでエレベータ利用者有りと判定されると(S21の「YES」、S22の「YES」、S23の「YES」、または、S24の「YES」)、エレベータホール14が有人であると判定される(S26)。
【0063】
図4に戻り、当該階のエレベータホール14が無人であると判定されたときには(S57の「YES」)、ステップS54に移行し、当該階のエレベータホール14が有人であると判定されたとき(S57の「NO」)には、ステップS58に移行する。移行後は、第1実施形態で説明した処理と同様の処理が実行されるため、詳細な説明は省略する。
【0064】
以上の第2実施形態によれば、建物内の既存の設備を利用することで、第1実施形態よりもさらに高い精度でホール不停止階のエレベータホールの待ち利用者の有無を判定可能であり、当該階のセキュリティレベルを向上させることができる。
【0065】
上述した第2実施形態では、エレベータシステム1Bが、第1実施形態で説明したエレベータシステム1Aの構成に、建物内の既存のセキュリティゲート21、第1防犯カメラ装置22、および第2防犯カメラ装置23を加えた場合について説明したが、これには限定されず、これらのうちの少なくともいずれかを用いて待ち利用者の有無の判定精度を向上させるようにしてもよい。また、さらに多くのエレベータ利用者判定手段を設けるようにしてもよい。
【0066】
《第3実施形態》
〈第3実施形態による遠隔診断装置を利用したエレベータシステムの構成〉
本発明の第3実施形態による遠隔診断装置を利用したエレベータシステム1Cの構成は、第1実施形態で説明したエレベータシステム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0067】
本実施形態においてエレベータ制御盤15の不停止階情報記憶部151は、不停止階の設定情報として、所定の時間帯のみをエレベータ10のかご不停止階またはホール不停止階とする階床の情報を記憶する。また呼び登録部152は、不停止階情報記憶部151に記憶された情報を参照して、現在時刻が、いずれかの階床に関してかご不停止階に該当すると判断したときには、当該階を行先階とするかご呼び操作が行われても当該操作を無効としてかご呼びを登録しない。また呼び登録部152は、現在時刻が、いずれかの階床に関してホール不停止階に該当すると判断したときには、当該階で操作されたホール呼び操作を無効としてホール呼びを登録しない。また送受信部154は、不停止階情報記憶部151に記憶された情報を参照して、いずれかの階床がかご不停止階またはホール不停止階に切り替わったとき、またはかご不停止階またはホール不停止階が解除されたときに、該当する情報を遠隔監視センタ装置30に送信する。
【0068】
遠隔監視センタ装置30は、エレベータ制御盤15から送信される情報に基づいて、予め保持されたエレベータ10の遠隔診断運転の実行スケジュール情報に該当し、且つ、エレベータ10内のすべての階床のかご不停止階およびホール不停止階が解除されたタイミングで、遠隔診断運転の実行指示をエレベータ10に送信する。
【0069】
〈第3実施形態による遠隔診断装置を利用したエレベータシステムの動作〉
本実施形態においては、遠隔監視センタ装置30において、予め保持されたエレベータ10の遠隔診断運転の実行スケジュール情報に基づいて遠隔診断運転の実行タイミングが到来しており、且つ、エレベータ制御盤15から送信される情報に基づいてエレベータ10内のすべての階床のかご不停止階およびホール不停止階が解除された状態であるか否かが監視される。
【0070】
そして、これらの条件が満たされたときに、遠隔診断運転の実行指示がエレベータ10に送信される。エレベータ10では、遠隔監視センタ装置30から送信された遠隔診断運転の実行指示が診断運転実行部157で取得されると、これに基づいて、第1実施形態または第2実施形態で説明した処理と同様に、遠隔診断運転が実行される。
【0071】
以上の第3実施形態によれば、エレベータの不停止階を含む建物に関する遠隔診断運転を、より高い精度で効率よく実行させることができる。
【0072】
上述した第3実施形態において、遠隔監視センタ装置30が、予め保持されたエレベータ10の遠隔診断運転の実行スケジュール情報に基づいて遠隔診断運転の実行タイミングが到来しており、且つ、エレベータ制御盤15から送信される情報に基づいてエレベータ10内のかご不停止階およびホール不停止階が一部解除された状態のときに、遠隔診断運転の実行指示を送信するようにしてもよい。この場合、かご不停止階またはホール不停止階として設定されている階床に関しては、第1実施形態または第2実施形態で説明した処理と同様に、その不停止階の種類に応じた処理が行われる。
【0073】
このように遠隔診断運転が実行されることにより、予め設定された遠隔診断運転の実行スケジュールからなるべくずれることなく、且つ効率よく、エレベータの不停止階を含む建物に関する遠隔診断運転を実行させることができる。
【0074】
また、上述した第3実施形態において、所定階をかご不停止階またはホール不停止階に設定する処理、および設定されたかご不停止階またはホール不停止階を解除する処理を、管理者の手動操作で実行されるように構成し、これらの処理状況に基づいて呼び登録部152における呼びの登録処理および送受信部154における不停止階の設定切り替えに関する情報の送信処理を実行するようにしてもよい。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1A,1B,1C…エレベータシステム、10…エレベータ、11…昇降路、12…巻き上げ機、13…乗りかご、14…エレベータホール、15…エレベータ制御盤、20…通信ネットワーク、21…セキュリティゲート、22…第1防犯カメラ装置、23…第2防犯カメラ装置、30…遠隔監視センタ装置、131…かご操作盤、132…かごドア、133…ドアモータ、134…トルクセンサ、135…ドアスイッチ、141…ホール操作盤、141a…上方向呼びボタン、141b…下方向呼びボタン、141c…表示部、141d…人感センサ、142…ホールドア、151…不停止階情報記憶部、152…呼び登録部、153…動作制御部、154…送受信部、155…かご内無人判断部、156…ホール無人判断部、157…診断運転実行部、157a…開閉動作実施階選定部、157b…運転指示部、157c…センサ情報取得部、157d…診断部
【要約】
【課題】 不停止階のセキュリティレベルを確保しつつ、遠隔診断運転におけるドア開閉診断を確実に実行させるためのエレベータ遠隔診断方法およびエレベータ遠隔診断装置を提供する。
【解決手段】 実施形態によればエレベータ遠隔診断方法では、不停止階が設定されたエレベータについて、各階床におけるドア開閉動作を遠隔から診断するためのドア診断運転を実行する遠隔診断装置が、ドア開閉動作を各階床で順次実行するために選択した次のドア開閉動作候補階が、当該階床を行先階とするかご呼びを登録不可とするかご不停止階として設定されており、且つ乗りかご内に利用者がいるときには当該階床のドア開閉動作処理をスキップし、当該階床におけるホール呼びを登録不可とするホール不停止階として設定されており、且つ当該階床のエレベータホールに利用者がいるときには当該階床のドア開閉動作処理をスキップして、ドア診断運転を実行する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8