(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記封止部を形成する前に前記偏光板の外側に表面保護フィルムを仮着すること、および、該封止部の切断後に該表面保護フィルムを剥離すること、をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.画像表示装置の製造方法
本発明の画像表示装置の製造方法は、表示セルと、該表示セルの少なくとも一方の側に配置された偏光板と、を備える画像表示パネルを準備すること;該画像表示パネルの周囲端面を覆う封止部を形成すること;および、該画像表示パネルの周囲端から所定の厚みを残して該封止部を切断すること;を含む。画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置、量子ドット表示装置が挙げられる。以下、図面を参照して、本発明の画像表示装置の製造方法の一例である液晶表示装置の製造方法を説明する。図示例では表示セルの両側に偏光板が配置されている実施形態を説明するが、表示セルの片側に偏光板が配置された画像表示装置にも本発明が適用され得ることは当業者に自明である。例えば、有機EL表示装置の製造方法においては、偏光板は、表示セルの視認側のみに配置され得る。
【0010】
A−1.画像表示パネルの準備
最初に、
図1(a)に示すように、画像表示パネル(本実施形態では、液晶表示パネル)を準備する、画像表示パネルは、代表的には、表示セル(液晶セル)100と、表示セルの両側に配置された偏光板11、12とを備える。上記のとおり、画像表示装置の種類や構成に応じて、偏光板の一方は省略されてもよい。例えば、画像表示装置が反射型液晶表示装置、有機EL表示装置、量子ドット表示装置である場合には、背面側の偏光板12は省略され得る。実用的には、偏光板11、12の外側にはそれぞれ、表面保護フィルム21、22があらかじめ仮着されている。これにより、後述の封止部の形成および当該封止部の所定厚みへの切断において、偏光板が適切に保護され得る。表面保護フィルムは、画像表示装置の最終的な使用時には剥離除去される。表面保護フィルムの剥離除去は、封止部の形成および所定厚みへの切断後の任意の適切なタイミングで行われ得る。
【0011】
A−1−1.偏光板
偏光板は、偏光膜と、偏光膜の少なくとも片側に配置された保護フィルムと、を有する。本発明の実施形態においては、偏光膜はヨウ素を含むポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムで構成されている。偏光膜がヨウ素を含む場合に、封止部を設ける効果が顕著となる。偏光膜の厚みは、代表的には8μm以下である。偏光膜がヨウ素を含み、かつ、その厚みがこのように非常に薄い場合には、偏光膜中のヨウ素密度が高くなり、加湿によるヨウ素の安定性が低下しやすくなるため、封止部を設ける効果がさらに顕著となる。保護フィルムは、偏光膜の片側に配置されてもよく、両側に配置されてもよい。保護フィルムが偏光膜の片側に配置される場合、表示セル側に配置されてもよく、表示セルと反対側に配置されてもよい。実用的には、偏光板の表示セル側最外層として粘着剤層が設けられ、偏光板は当該粘着剤層を介して表示セルに貼り合わせられる。なお、本明細書において単に保護フィルムというときは、このような偏光膜を保護するフィルム(偏光板の構成要素)を意味し、上記の表面保護フィルム(作業時に偏光板を一時的に保護するフィルム)とは異なるものである。
【0012】
A−1−1−1.偏光膜
偏光膜は、上記のとおり、ヨウ素を含むPVA系樹脂フィルムから構成される。偏光膜は、単層の樹脂フィルムから形成されてもよく、二層以上の積層体から形成されてもよい。
【0013】
単層の樹脂フィルムから形成される偏光膜の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光膜が用いられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3〜7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0014】
積層体を用いて得られる偏光膜の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光膜が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光膜の保護フィルムとしてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護フィルムを積層して用いてもよい。このような偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012−73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0015】
上記PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.9モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.5モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光膜が得られ得る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0016】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜5000、さらに好ましくは1500〜4500である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0017】
上記のとおり、偏光膜はヨウ素を含む。偏光膜は、実質的には、ヨウ素が吸着配向されたPVA系樹脂フィルムである。PVA系樹脂フィルム中のヨウ素濃度は、例えば5.0重量%〜12.0重量%である。また、PVA系樹脂フィルム中のホウ酸濃度は、例えば12重量%〜25重量%である。
【0018】
偏光膜の厚みは上記のとおり代表的には8μm以下であり、好ましくは7μm以下、より好ましくは6μm以下である。一方、PVA系樹脂フィルムの厚みは、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは2.0μm以上である。
【0019】
上記偏光膜は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光膜の単体透過率は、好ましくは40.0%〜46.0%であり、より好ましくは41.0%〜45.0%である。偏光膜の偏光度は、好ましくは99.9%以上であり、より好ましくは99.95%以上であり、さらに好ましくは99.98%以上である。偏光板が反射型液晶表示装置または有機EL表示装置に適用される場合には、偏光膜の偏光度は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは93%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。後述するように、偏光膜を含む画像表示パネルの周囲端面を覆う封止部を設けることにより、このような優れた光学特性(単体透過率および偏光度のバランスに優れること)と優れた耐久性(加湿環境下においてもこのような優れた光学特性を維持し得ること)とを両立することができる。
【0020】
A−1−1−2.保護フィルム
保護フィルムは、偏光膜の保護フィルムとして使用できる任意の適切なフィルムで構成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0021】
本発明の実施形態においては、上記のとおり、偏光板の製造において用いられる樹脂基材をそのまま保護フィルムとして用いてもよい。
【0022】
視認側に配置される偏光板において保護フィルムが偏光膜の視認側に配置される場合には、保護フィルムには、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0023】
保護フィルムの厚みは、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な厚みが採用され得る。保護フィルムの厚みは、例えば10μm〜40μmであり、好ましくは10μm〜30μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護フィルムの厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0024】
偏光膜の表示セル側に保護フィルム(内側保護フィルム)を配置する場合、1つの実施形態においては、当該内側保護フィルムは光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm〜10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が−10nm〜+10nmであることをいう。内側保護フィルムのRe(550)は、好ましくは0nm〜8nmであり、より好ましくは0nm〜6nmであり、さらに好ましくは0nm〜3nmである。内側保護フィルムのRth(550)は、好ましくは−8nm〜+8nmであり、より好ましくは−6nm〜+6nmであり、さらに好ましくは−3nm〜+3nmである。なお、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(550)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx−ny)×dによって求められる。また、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
【0025】
別の実施形態においては、内側保護フィルムは、いわゆるλ/4板として機能し得るようなRe(550)を有していてもよい。このような実施形態は、例えば、偏光板が円偏光板として機能し、反射型液晶表示装置または有機EL表示装置の反射防止フィルムとして用いられる場合に適用され得る。この場合、Re(550)は、好ましくは120nm〜160nmであり、より好ましくは約140nmである。この場合、内側保護フィルムは、その遅相軸が偏光膜の吸収軸に対して好ましくは40°〜50°、より好ましくは約45°の角度をなすようにして配置され得る。
【0026】
A−2.封止部の形成
次に、
図1(b)に示すように、画像表示パネル(液晶表示パネル)の周囲端面を覆う封止部30を形成する。封止部で画像表示パネルの周囲端面を覆うことにより、加湿環境下においても偏光板(偏光膜)および表示セルの光学特性を維持し、結果として、画像表示装置の耐久性を向上させる。したがって、封止部は、バリア機能を有することが好ましい。本明細書において「バリア機能を有する」とは、偏光膜および表示セルに侵入する酸素および/または水蒸気の透過量を制御して偏光膜および表示セルをこれらから実質的に遮断することを意味する。
【0027】
封止部は、代表的には、粘着剤組成物を画像表示パネルの周囲端面を覆うように配置することにより形成される。1つの実施形態においては、封止部は、シート状の粘着剤組成物を所定の位置に配置(代表的には、貼り合わせ)して形成され得る。封止部は、画像表示パネルの周囲端面を覆い、当該周囲端面が密封されていればよく、当該周囲端面に密着している必要はない。
【0028】
粘着剤組成物としては、例えば、ゴム系ポリマーをベースポリマーとするゴム系粘着剤組成物が挙げられる。
【0029】
ゴム系ポリマーとしては、例えば、1種の共役ジエン化合物を重合することによって得られる共役ジエン系重合体、2種以上の共役ジエン化合物を重合することによって得られる共役ジエン系共重合体、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体、および、これらの水添物が挙げられる。
【0030】
共役ジエン化合物としては、重合可能な共役ジエンを有する単量体であれば特に限定されない。共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0031】
芳香族ビニル化合物としては、共役ジエン化合物と共重合可能な芳香族ビニル構造を有する単量体であれば特に限定されない。芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ジエン系共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。また、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物以外の化合物を共重合して、ジエン系共重合体を得てもよい。
【0033】
共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系共重合体は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物のモル比が、共役ジエン化合物/芳香族ビニル化合=10/90〜90/10(モル%)であることが好ましい。
【0034】
このような共役ジエン系(共)重合体の具体例としては、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEBS)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、イソプレン−スチレン共重合体が好ましい。また、これらの水添物も好適に用いることができる。
【0035】
ゴム系ポリマーとして、共役ジエン系(共)重合体の他にも、イソブチレン(IB)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレンプロピレン共重合体−スチレンブロック共重合体等も用いることができる。ゴム系ポリマーは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明に用いられ得るゴム系ポリマーは、ゴム系ポリマー全体中に、上記共役ジエン系(共)重合体を好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上含む。共役ジエン系(共)重合体の含有量の上限は特に限定されるものではなく、100重量%(すなわち、共役ジエン系(共)重合体のみからなるゴム系ポリマー)であってもよい。
【0037】
上記のとおり、粘着剤組成物は、ゴム系ポリマーをベースポリマーとして含む。粘着剤組成物におけるゴム系ポリマーの含有量は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。ゴム系ポリマーの含有量の上限は特に限定されず、例えば90重量%以下である。
【0038】
粘着剤組成物は、ゴム系ポリマーに加えて、任意の適切な添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、架橋剤(例えば、ポリイソシアネート、エポキシ化合物、アルキルエーテル化メラミン化合物など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂、ビニルトルエン樹脂など)、可塑剤、充填剤(例えば、層状シリケート、クレイ材料など)、老化防止剤が挙げられる。粘着剤組成物に添加される添加剤の種類、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に設定され得る。粘着剤組成物における添加剤の含有量(総量)は、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。
【0039】
このようにして形成される封止部30の厚みは、好ましくは30μm〜1000μmであり、より好ましくは50μm〜500μmである。本明細書において「封止部の厚み」とは、特に明記しない限り、画像表示パネルの周囲端面から外側に延びる方向の厚みである。
【0040】
A−3.封止部の厚みの調整
次に、
図1(c)に示すように封止部30を切断し、
図1(d)に示すように所定の厚みを有する封止部40を形成する。このような切断を行うことにより、端面の凹凸を小さくし、および/または、所望の寸法に対する寸法精度を上げることができるという利点がある。切断後の封止部40の厚みは、好ましくは10μm〜500μmであり、より好ましくは20μm〜300μmである。
【0041】
切断は、機械的に行ってもよく、レーザー光を照射することにより行ってもよい。
【0042】
機械的な切断としては、フライス加工、エンドミル加工が挙げられる。
【0043】
レーザー光は、好ましくは、少なくとも1500nm以下の波長の光を含む。レーザー光は、より好ましくは100pm〜1000nmの波長の光を含み、さらに好ましくは400nm〜900nmの波長の光を含み、特に好ましくは420nm〜680nmの波長の光を含む。1つの実施形態においては、レーザー光は、上記のような範囲にピーク波長を有する。このような波長を含むレーザー光によれば、封止部の上下の厚み方向にわたって良好に切断できる。
【0044】
レーザーとしては、例えば、YAGレーザー、YLFレーザー、YVO4レーザー、チタンサファイアレーザー等の固体レーザー、アルゴンイオンレーザー、クリプトンイオンレーザーを含むガスレーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー、色素レーザーが挙げられる。好ましくは、固体レーザーが用いられる。
【0045】
上記レーザーとしては、好ましくは、短パルスレーザー(1ナノ秒以下のパルス幅を有する光を照射するレーザー、例えば、ピコ秒レーザーまたはフェムト秒レーザー等)が用いられる。封止部への熱ダメージを抑制する目的では、500ピコ秒以下(例えば、10ピコ秒〜50ピコ秒)のパルス幅が特に好ましい。熱ダメージを抑制することにより、美しく、均一でかつ平滑な切断面が得られ得る。
【0046】
レーザー光の照射条件は、任意の適切な条件に設定され得る。例えば、固体レーザー(YVO4レーザー)を用いる場合、パルスエネルギーは、好ましくは10μJ〜150μJ、より好ましくは25μJ〜71μJである。スキャン速度は、好ましくは10mm/秒〜10000mm/秒であり、より好ましくは100mm/秒〜1000mm/秒である。繰返し周波数は、例えば100Hz〜12480Hzである。スキャンピッチは、好ましくは10μm〜50μmである。レーザー光の照射位置におけるビーム形状は、目的に応じて適切に設定され得る。当該ビーム形状は、例えば、円形であってもよく、ライン状であってもよい。ビーム形状を所定の形状とする手段としては、任意の適切な手段が採用され得る。例えば、所定の開口部を有するマスクを介してレーザー照射してもよく、回折光学素子等を用いてビーム整形してもよい。例えばビーム形状が円形である場合には、焦点径(スポット径)は、好ましくは50μm〜60μmである。さらに、パルスレーザーの投入エネルギーは、好ましくは20000μJ/mm
2〜100000μJ/mm
2であり、より好ましくは25000μJ/mm
2〜75000μJ/mm
2である。なお、投入エネルギーE(μJ/mm
2)は下記の式から求められる。
E=(e×M)/(V×p)
e:パルスエネルギー(J)
M:繰り返し周波数(Hz)
V:スキャン速度(mm/秒)
p:スキャンピッチ(mm)
【0047】
レーザー光の照射形態(走査様式)は、目的に応じて適切に設定され得る。レーザー光は、例えば、直線状に走査されてもよく、S字状に走査されてもよく、渦巻き状に走査されてもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0048】
上記のようにして形成された封止部40は、バリア性を有し、代表的には水分およびガス(例えば酸素)に対するバリア性を有する。封止部40の40℃、90%RH条件下での水蒸気透過率(透湿度)は、好ましくは300g/m
2/24hr以下であり、より好ましくは100g/m
2/24hr以下であり、さらに好ましくは50g/m
2/24hr以下であり、特に好ましくは25g/m
2/24hr以下である。透湿度の下限は、例えば0.01g/m
2/24hrであり、好ましくは検出限界未満である。封止部40の透湿度がこのような範囲であれば、画像表示パネルを空気中の水分および酸素から良好に保護し得る。なお、透湿度は、JIS Z0208に準じて測定され得る。
【0049】
以上のようにして、
図1(d)に示すように、画像表示パネルの周囲端面を覆う所定厚みの封止部40が形成される。このようにして得られた画像表示パネルと目的等に応じた任意の適切な光学部材とを組み合わせることにより、画像表示装置が得られる。光学部材および組み合わせ方法は業界で周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
B.画像表示装置
本発明は、上記のようにして製造された画像表示装置も包含する。本発明の実施形態による画像表示装置は、表示セルと、該表示セルの少なくとも一方の側に配置された偏光板と、を備える画像表示パネルと;該画像表示パネルの周囲端面を覆う封止部と;を備える。本明細書に記載した以外の画像表示装置の構成は業界で周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0051】
画像表示装置(実質的には、偏光板)は、85℃および85%RH環境下で120時間保持した後の色抜け量が、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下であり、特に好ましくは25μm以下である。色抜け量の下限は好ましくはゼロであり、1つの実施形態においては5μmである。色抜け量は、以下のようにして算出され得る:偏光板(または偏光膜)から、延伸方向に直交する方向および延伸方向をそれぞれ対向する二辺とする所定サイズの試験片を切り出す。なお、延伸方向は、代表的には偏光膜の吸収軸方向に対応する。延伸方向は、例えば偏光板の長尺方向(搬送方向(MD方向))に対応し得る。次いで、粘着剤で試験片を同じサイズの無アルカリガラス板に貼り合わせ、試験片およびガラス板の周囲端面に封止部を形成し、当該封止部にレーザー光を照射して厚みが20μm〜300μmとなるように切断する。これを画像表示装置代替品とする。なお、液晶表示装置代替品は、ガラス板の両面に視認側試験片および背面側試験片をそれぞれ貼り合わせる。有機EL表示装置代替品は、ガラス板の片面に視認側試験片のみを貼り合わせる。この画像表示装置代替品を85℃および85%RHのオーブン内で120時間放置して加湿する。液晶表示装置代替品は、加湿後の端部の色抜け状態を顕微鏡により調べる。有機EL表示装置代替品は、加湿後の有機EL表示装置代替品を標準偏光板とクロスニコルの状態に配置した時の、端部の色抜け状態を顕微鏡により調べる。いずれの場合にも、具体的には、試験片(偏光板または偏光膜)端部からの色抜けの大きさ(色抜け量:μm)を測定する。
図2に示すように、延伸方向の端部からの色抜け量aおよび延伸方向と直交する方向の端部からの色抜け量bのうち、大きい方を色抜け量とする。なお、色抜けした領域は偏光特性が著しく低く、偏光板としての機能を実質的に果たさない。したがって、色抜け量は小さければ小さいほど好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0053】
(1)厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製KC−351C)を用いて測定した。
(2)透湿度
実施例および比較例で調製した粘着剤組成物を用いて、剥離ライナー/粘着剤層(実施例または比較例の厚みを有する)/剥離ライナーの構成を有する粘着シートを形成した。粘着シートの一方の剥離ライナーを剥がして粘着面を露出させ、該粘着面を介して、粘着シートをトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム、厚み:25μm、コニカミノルタ(株)製)に貼り合わせ、10cmΦの円状に切り出した。最後に、もう一方の剥離ライナーを剥がして、測定用サンプルを得た。得られた測定用サンプルについて、透湿度試験方法(カップ法、JIS Z 0208に準じる)により、透湿度(水蒸気透過率)を測定した。なお、測定条件は下記のとおりであった。また、測定の際には恒温恒湿槽を使用した。
測定温度:40℃
相対湿度:92%
測定時間:24時間
(3)色抜け量
実施例および比較例で得られた視認側偏光板および背面側偏光板から、延伸方向に直交する方向および延伸方向をそれぞれ対向する二辺とする試験片(50mm×50mm)をそれぞれ切り出した。粘着剤で試験片を同じサイズの無アルカリガラス板の両面にそれぞれ貼り合わせ、視認側試験片/ガラス板/背面側試験片の積層体の周囲端面に封止部を形成し、当該封止部にレーザー光を照射して所定の厚みとなるように切断し、画像表示装置代替品とした。これを85℃および85%RHのオーブン内で120時間放置して加湿し、加湿後の偏光膜の端部の色抜け状態を顕微鏡により調べた。具体的には、偏光膜端部からの色抜けの大きさ(色抜け量:μm)を測定した。顕微鏡としてOlympus社製、MX61Lを用い、倍率10倍で撮影した画像から色抜け量を測定した。
図2に示すように、延伸方向の端部からの色抜け量aおよび延伸方向と直交する方向の端部からの色抜け量bのうち、大きい方を色抜け量とした。なお、実施例3については、視認側偏光板のみを貼り合わせたものを画像表示装置代替品とし、加湿後の画像表示装置代替品を標準偏光板とクロスニコルの状態に配置した時の色抜け量を調べた。
【0054】
[実施例1]
樹脂基材として、厚み100μm、Tg75℃のイソフタル酸ユニットを7モル%有するアモルファスのポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルムを用意した。このフィルムの表面にコロナ処理(58W/m2/min)を施した。
アセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名:ゴーセファイマー(登録商標)Z200、平均重合度:1200、ケン化度:98.5モル%以上、アセトアセチル化度:5%)と、PVA(平均重合度:4200、ケン化度:99.2モル%)とを1:9の割合で含むPVA系樹脂を用意し、該PVA系樹脂100重量部に対してヨウ化カリウム13重量部を添加してPVA系樹脂水溶液を調製した(PVA系樹脂濃度:5.5重量%)。この水溶液を乾燥後の膜厚が13μmになるように樹脂基材のコロナ処理面に塗布し、60℃の雰囲気下において熱風乾燥により10分間乾燥して、樹脂基材上に厚み9μmのPVA系樹脂層を形成した。このようにして、積層体を作製した。
得られた積層体を空気中140℃で2.4倍に延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を液温30℃のホウ酸水溶液に30秒間浸漬してPVA系樹脂層を不溶化させた。本工程のホウ酸水溶液は、ホウ酸含有量を水100重量部に対して3重量部とした。
次いで、積層体を液温30℃のヨウ素およびヨウ化カリウムを含む染色液に、得られる偏光膜の単体透過率が42〜45%程度になるように任意の時間、浸漬し染色した。染色液は、水を溶媒とし、ヨウ素濃度を0.1〜0.4重量%の範囲内とし、ヨウ化カリウム濃度を0.7〜2.8重量%の範囲内とし、ヨウ素とヨウ化カリウムの濃度の比は1:7とした。
次いで、積層体を30℃のホウ酸水溶液に60秒間浸漬して、ヨウ素を吸着させたPVA樹脂層に架橋処理を施した。本工程のホウ酸水溶液は、ホウ酸含有量を水100重量部に対して3重量部とし、ヨウ化カリウム含有量を水100重量部に対して3重量部とした。
さらに、積層体をホウ酸水溶液中で延伸温度70℃として、先の空中補助延伸と同様の方向に2.3倍に延伸した(最終的な延伸倍率5.50倍)。本工程のホウ酸水溶液は、ホウ酸含有量を水100重量部に対して3.5重量部とし、ヨウ化カリウム含有量を水100重量部に対して5重量部とした。
次に、ヨウ化カリウム含有量が水100重量部に対して4重量部とした水溶液で積層体を洗浄し、60℃の温風により乾燥し、樹脂基材上に厚み5μmの偏光膜を得た。
【0055】
得られた偏光膜の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、硬化型接着剤を介してシクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、ZF−12、13μm)を貼り合わせた。具体的には、偏光膜およびシクロオレフィン系フィルムのそれぞれに、硬化型接着剤を厚み1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、可視光線をシクロオレフィン系フィルム側から照射して硬化型接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離して、当該剥離面に硬化型接着剤を介してシクロオレフィン系フィルムのλ/4板(日本ゼオン社製、ZD−12、厚み23μm、Re(550)=140nm)を貼り合わせ、シクロオレフィン系フィルムZD−12(保護フィルム)/偏光膜/シクロオレフィン系フィルムZF−12(保護フィルム)の構成を有する偏光板を得た。ここで、ZD−12フィルムは、その遅相軸が偏光膜の吸収軸に対して45°の角度をなすようにして貼り合わせた。この偏光板を視認側偏光板とした。得られた偏光板を用いて上記(3)に記載のとおりにして画像表示装置代替品を作製し、色抜け量の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、色抜けの状態を
図3に示す。
【0056】
一方、上記と同様にして得られた樹脂基材/偏光膜の積層体の偏光膜表面に、上記と同様にしてシクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン社製、ZF−12、13μm)を貼り合わせた。次いで、樹脂基材を剥離して、当該剥離面に粘着剤(12μm)を介して反射型偏光子(3M社製、APF−V3)を貼り合わせ、シクロオレフィン系フィルムZF−12(保護フィルム)/偏光膜/反射型偏光子の構成を有する偏光板を得た。この偏光板を背面側偏光板とした。なお、反射型偏光子は、その透過軸と偏光膜の透過軸とが0°の角度をなすようにして貼り合わせた。
【0057】
IPSモードの液晶表示装置(Apple社製、商品名「iPad(登録商標) Air」)から液晶パネルを取り出し、当該液晶パネルから偏光板等の光学部材を取り除き、液晶セルを取り出した。液晶セルは、その両表面(それぞれのガラス基板の外側)をアルコールにて洗浄および清掃して用いた。上記で得られた視認側偏光板の保護フィルム表面にアクリル系粘着剤層(厚み:20μm)を形成した後、液晶セルと同じサイズ(約150mm×200mm)に切り出し、粘着剤層を介して、ZF−12フィルムが液晶セル側となるようにして液晶セルの視認側表面に貼り合わせた。液晶セルの背面側には、上記で得られた背面側偏光板を、アクリル系粘着剤層(厚み:20μm)を介して貼り合わせた。このようにして、液晶パネルを得た。液晶パネルの周囲端面にシート状の粘着剤を貼り合わせ、当該周囲端面を密封した。このようにして、液晶パネルの周囲端面を覆う封止部を形成した。なお、封止部を構成する粘着剤は、スチレン・エチレンプロピレン共重合体・スチレンのブロックコポリマー(クラレ社製、商品名「セプトン2063」、スチレン含有量:13重量%)100重量部に対してポリブテン(JX日鉱日石エネルギー社製、「商品名「日石ポリブテンHV−300」」10重量部、テルペンフェノール粘着付与剤(ヤスハラケミカル社製、商品名「YSポリスターTH130」)40重量部、および芳香族粘着付与剤(イーストマンケミカル社製、商品名「ピコラスチックA5」)を配合し作製した。
次いで、当該粘着剤にレーザー光を照射し、液晶パネルの周囲端から100μmを残すようにして当該粘着剤を切断し、最終的な封止部を形成した。得られた封止部の透湿度は20g/m
2/24hrであった。レーザー光の照射は、GCC社製「LaserPro Spirit」を用いて行った。
このようにして得られた液晶パネルを元の液晶表示装置に組み込み、本実施例の液晶表示装置を得た。
【0058】
[実施例2]
透湿度が40g/m
2/24hrである封止部(厚み50μm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして液晶表示装置および代替品を作製した。上記(3)の画像表示装置代替品を実施例1と同様に色抜け量の評価に供した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例3]
反射防止用途として偏光板が用いられている三星無線社製のスマートフォン(Galaxy−S5)を分解して有機EL表示装置を取り出した。この有機EL表示装置に貼り付けられていた偏光板および位相差板を剥離除去し、当該除去面を洗浄した。当該除去面に実施例1と同様にして視認側偏光板を貼り合わせ、有機ELパネルを得た。以下の手順は実施例1と同様にして、有機ELパネルの周囲端面を覆う封止部(透湿度:20g/m
2/24hr、厚み:100μm)を形成した。このようにして得られた有機ELパネルを元の有機EL表示装置に組み込み、本実施例の有機EL表示装置を得た。上記(3)の画像表示装置代替品を実施例1と同様に色抜け量の評価に供した。結果を表1に示す。
【0060】
[比較例1]
封止部を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして液晶表示装置および代替品を作製した。上記(3)の画像表示装置代替品を実施例1と同様に色抜け量の評価に供した。結果を表1に示す。さらに、色抜けの状態を
図4に示す。
【0061】
[比較例2]
通常のアクリル系粘着剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして封止部(透湿度:1000g/m
2/24hrを超える、厚み:25μm)を形成し、液晶表示装置および代替品を作製した。上記(3)の画像表示装置代替品を実施例1と同様に色抜け量の評価に供した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1から明らかなように、所定の透湿度を有する封止部を画像表示パネルの外周端面に形成することにより、加湿環境下においても優れた光学特性を維持し得る画像表示装置が得られることがわかる。