(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772390
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】穿孔された組織移植片
(51)【国際特許分類】
A61L 27/36 20060101AFI20201012BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20201012BHJP
A61F 2/06 20130101ALI20201012BHJP
A61F 2/08 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
A61L27/36 400
A61L27/58
A61F2/06
A61F2/08
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-548300(P2019-548300)
(86)(22)【出願日】2018年3月6日
(65)【公表番号】特表2020-509816(P2020-509816A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(86)【国際出願番号】US2018021107
(87)【国際公開番号】WO2018165131
(87)【国際公開日】20180913
【審査請求日】2019年10月1日
(31)【優先権主張番号】62/467,503
(32)【優先日】2017年3月6日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502207736
【氏名又は名称】ティーイーアイ バイオサイエンシズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コーンウェル, ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ, ケネス
【審査官】
山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−104866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
A61F 2/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の組織の修復または再構成のための組織移植片であって、
複数の小穿孔の行と、複数の大穿孔の行とを有する、組織移植片材料のシートを備え、前記小穿孔の行は、前記大穿孔の行と交互し、前記大穿孔および小穿孔は、1つの小穿孔が、実質的に正方形または長方形様式で配列される4つの隣接する大穿孔ごとにセンタリングされ、1つの大穿孔が、実質的に正方形または長方形様式で配列される4つの隣接する小穿孔ごとにセンタリングされるように、互い違いの行および列に配置され、前記小穿孔は、前記大穿孔よりサイズが小さく、
前記組織移植片材料は、無細胞動物真皮であり、
前記大穿孔は、前記組織移植片の厚さ方向の全体を通り、
前記組織移植片は、約0.5〜約4.5mmの範囲内の厚さを有し、
前記小穿孔は、直径約1mm〜約2.5mmであり、前記大穿孔は、直径約2.5mm〜約4mmであり、
前記小穿孔および前記大穿孔は、比率約1:1.2〜約1:2.0における直径を有する、組織移植片。
【請求項2】
前記組織移植片は、約2〜約4mmの範囲内の厚さを有する、請求項1に記載の組織移植片。
【請求項3】
前記小穿孔および大穿孔は、実質的に円形である、請求項1に記載の組織移植片。
【請求項4】
前記小穿孔および前記大穿孔は、比率約1:1.5〜約1:3における開放面積を有する、請求項1に記載の組織移植片。
【請求項5】
前記小穿孔は、前記穿孔内のフィブリンの仮のマトリックスの形成および肉芽組織発達を促進し、ひいては、前記哺乳動物上に埋め込まれる前記組織移植片の血管再生および細胞再増殖を促進するための血管および細胞の供給源となるようなサイズである、請求項1に記載の組織移植片。
【請求項6】
前記大穿孔は、前記哺乳動物内の埋込部位に蓄積する血管外組織流体が、前記組織移植片を通して容易に排出され、外科手術ドレインまたは負圧創傷療法を介して、周術および術後早期期間に、前記埋込部位から除去され得るように、前記穿孔内のフィブリンの仮のマトリックスの形成および肉芽組織発達の発生を低減させるようなサイズである、請求項1に記載の組織移植片。
【請求項7】
前記大穿孔は、哺乳動物組織が、前記穿孔の中に圧縮され、哺乳動物組織接触面積を増加させることを可能にすることによって、哺乳動物組織係留を増大させるようなサイズである、請求項1に記載の組織移植片。
【請求項8】
前記小穿孔および大穿孔の複数の行は、前記組織移植片の表面全体上に実質的に等しく離間される、請求項1に記載の組織移植片。
【請求項9】
2つの隣接する穿孔の中心間で測定されるとき、前記小穿孔は約5mm〜約20mm離れて離間され、前記大穿孔は約5mm〜約20mm離れて離間される、請求項1に記載の組織移植片。
【請求項10】
前記小穿孔の行および前記大穿孔の行は、前記行内の2つの隣接する小穿孔の中心を接続する第1のラインと前記行内の2つの隣接する大穿孔の中心を接続する第2のラインとの間で測定されるとき、約5mm〜約20mm離れて離間される、請求項1に記載の組織移植片。
【請求項11】
前記組織移植片材料は、胎児または新生児ウシ真皮から導出される、無細胞コラーゲンマトリックスである、請求項1に記載の組織移植片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、その全体が本明細書中に参考として本明細書によって援用される、2017年3月6日に出願された米国仮出願番号第62/467,503号の利益を主張している。
【0002】
背景
本発明は、組織工学の分野、特に、動物組織を修復するために使用される、動物由来の生体改変可能バイオポリマー足場材料に関する。
【背景技術】
【0003】
組織工学の分野では、以下の3つの構成要素が、単独で、または組み合わせて、新しい組織および器官代用品を修復または作成するために使用される。1)天然起源ポリマー(例えば、コラーゲン)、人工ポリマー、(例えば、PTFE、Dacron、PET、またはポリエチレン)、または自己分解性人工ポリマー(例えば、PLAまたはPGA)から作製される、足場、2)発達命令を細胞に与える、信号伝達分子、および3)細胞。
【0004】
合成ポリマー、プラスチック、および表面コーティングされた金属等の人工インプラント材料は、異なる免疫原性度を有し、その広範な用途を妨げる、有意な限界に悩まされ得る。主な限界は、細胞が、埋込後、それらを再構築することができないことである。それらは、微生物感染症を受けやすくあり得、一部は、石灰化を受ける。
【0005】
脱細胞化された動物組織は、天然起源ポリマーから作製される、足場を備える。脱細胞された動物組織および脱細胞化プロセスは、米国特許第9,011,895号、第7,354,702号、および第6,696,074号(それぞれ、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明される。本特許は、動物組織、例えば、胎児または新生児ウシ真皮組織を化学的および機械的処置に曝すことによって、生体改変可能バイオポリマー足場材料を形成および保存する方法を説明する。結果として生じる生成物は、その微生物、真菌、ウイルス、およびプリオン不活性化状態によって特徴付けられ、強度があって、生体改変可能であって、ドレープ性があって、かつ石灰化を受けない。そのような脱細胞された動物組織は、臨床用途において広範な可用性を有する。PRIMATRIX Dermal Repair ScaffoldおよびSURGIMEND Collagen Matrix(TEI Biosciences, Inc.(Waltham, Massaachusetts)は、市場の脱細胞化された動物組織の例である。
【0006】
孔または間隙が、組織移植片内に設置され、流体排出、物質もしくは細胞通過、および/または移植片材料拡張を可能にしている。例えば、PRIMATRIX Dermal Repair Scaffoldは、中実構成に加えて、メッシュ状かつ有窓の構成において市場に供給されている。
【0007】
種々の組織移植片材料が、商業的に利用可能であるが、組織修復、再生、および再構成のための物理的性質および有効性が改良された組織移植片の必要性が残ったままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9,011,895号明細書
【特許文献2】米国特許第7,354,702号明細書
【特許文献3】米国特許第6,696,074号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
要旨
簡潔かつ一般的用語において、本発明は、少なくとも2つの異なるサイズの穿孔を有する、脱細胞化された組織生成物等の組織移植片を提供する。脱細胞化された組織生成物内の選択されたサイズの穿孔の導入は、インプラントの生物学的性質を変調させる。より具体的には、穿孔のサイズは、局所流体収集/除去、血管再生、組織発生、および組織再構築特性に影響を及ぼす。
【0010】
本発明の側面によると、哺乳動物の組織の修復または再構成のための組織移植片が、提供される。組織移植片は、複数の小穿孔と、複数の大穿孔とを有する、バイオポリマーベースのマトリックスのシートを備え、小穿孔は、大穿孔よりサイズが小さい。組織移植片内の特定の孔パターンの作成は、デバイス内の場所による異なる生物学的応答を方向づける。外科手術部位流体排出、組織再生、および創傷治癒が、組織移植片内の穿孔のサイズおよび場所を改変することによって制御される。
【0011】
本発明の別の側面によると、組織移植片を処置の必要がある患者に付与することによって、軟組織の修復または再構成のための方法が、提供され、組織移植片は、デバイス内で異なる生物学的応答を方向づける、特定のパターンを有する。より具体的には、患者内の組織を修復または構築する方法は、組織移植片材料のシートを備え、複数の小穿孔と、複数の大穿孔とを有する、組織移植片を提供するステップであって、小穿孔は、大穿孔よりサイズが小さい、ステップと、組織移植片を埋込部位において患者に付与するステップと、患者内の血管再生および細胞再増殖を可能にするステップと、外科手術ドレインまたは負圧創傷療法を適用し、周術および術後早期期間において、血管外組織流体を埋込部位から除去するステップとを含む。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、付随の例示的図面と関連して検討されるとき、以下の発明の詳細な説明からより明白となる。
より特定すれば、本明細書は、以下の項目に関する構成を記載する。
(項目1)
哺乳動物の組織の修復または再構成のための組織移植片であって、
複数の小穿孔と、複数の大穿孔とを有する、組織移植片材料のシートを備え、
前記小穿孔は、前記大穿孔よりサイズが小さい、組織移植片。
(項目2)
前記組織移植片は、約0.5〜約4.5mmの範囲内の厚さを有する、項目1に記載の組織移植片。
(項目3)
前記組織移植片は、約2〜約4mmの範囲内の厚さを有する、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目4)
前記小穿孔および大穿孔は、実質的に円形である、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目5)
前記小穿孔は、直径約1mm〜約2.5mmであって、前記大穿孔は、直径約2.5mm〜約4mmである、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目6)
前記小穿孔および前記大穿孔は、比率約1:1.2〜約1:2.0における直径を有する、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目7)
前記小穿孔および前記大穿孔は、比率約1:1.5〜約1:3における開放面積を有する、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目8)
前記小穿孔は、前記穿孔内のフィブリンの仮のマトリックスの形成および肉芽組織発達を促進し、ひいては、前記哺乳動物上に埋め込まれる前記組織移植片の血管再生および細胞再増殖を促進するための血管および細胞の供給源となるようなサイズである、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目9)
前記大穿孔は、前記哺乳動物内の埋込部位に蓄積する血管外組織流体が、前記組織移植片を通して容易に排出され、前記外科手術ドレインまたは負圧創傷療法を介して、周術および術後早期期間に、前記埋込部位から除去され得るように、前記穿孔内のフィブリンの仮のマトリックスの形成および肉芽組織発達の発生を低減させるようなサイズである、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目10)
前記大穿孔は、哺乳動物組織が、前記穿孔の中に圧縮され、哺乳動物組織接触面積を増加させることを可能にすることによって、哺乳動物組織係留を増大させるようなサイズである、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目11)
前記小穿孔および大穿孔は、行状にアレイ化される、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目12)
前記行は、相互と実質的に平行である、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目13)
小穿孔の複数の行と、大穿孔の複数の行とを備え、前記小穿孔の行は、前記大穿孔の行と交互する、上記項目のいずれかいに記載の組織移植片。
(項目14)
前記大穿孔および小穿孔は、1つの小突出部が、実質的に正方形または長方形様式で配列される4つの隣接する大突出部ごとにセンタリングされ、1つの大突出部が、実質的に正方形または長方形様式で配列される4つの隣接する小突出部ごとにセンタリングされるように、互い違いの行および列に配置される、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目15)
前記小穿孔および大穿孔の複数の行は、前記組織移植片の表面全体上に実質的に等しく離間される、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目16)
前記小穿孔は、2つの隣接する穿孔の中心間で測定されるとき、約5mm〜約20mm離れて離間され、前記大穿孔は、約5mm〜約20mm離れて離間される、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目17)
前記小穿孔の行および前記大穿孔の行は、前記行内の2つの隣接する小穿孔の中心を接続する第1のラインと前記行内の2つの隣接する大穿孔の中心を接続する第2のラインとの間で測定されるとき、約5mm〜約20mm離れて離間される、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目18)
前記組織移植片材料は、動物組織から生成されたバイオポリマーベースのマトリックスである、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目19)
前記組織移植片材料は、胎児または新生児ウシ真皮から導出される、無細胞コラーゲンマトリックスである、上記項目のいずれかに記載の組織移植片。
(項目20)
患者内の組織を修復または構築する方法であって、
組織移植片材料のシートを備え、複数の小穿孔と、複数の大穿孔とを有する、組織移植片を提供するステップであって、前記小穿孔は、前記大穿孔よりサイズが小さい、ステップと、
前記組織移植片を埋込部位において前記患者に付与するステップと、
前記患者内の血管再生および細胞再増殖を可能にするステップと、
を含む、方法。
(項目21)
前記組織移植片は、約0.5〜約4.5mmの範囲内の厚さを有する、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記小穿孔および大穿孔は、実質的に円形であって、前記小穿孔は、直径約1mm〜約2.5mmであって、前記大穿孔は、直径約2.5mm〜約4mmである、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目23)
組織を前記大穿孔の中に圧縮し、組織接触面積を増加させることによって、前記組織移植片を係留するステップを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目24)
前記組織移植片の上方および下方から組織を前記大穿孔の中に圧縮することによって、前記組織移植片を係留するステップを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目25)
前記大穿孔には、新しく堆積された宿主組織がない、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目26)
前記小穿孔内の凝固および肉芽組織発達を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目27)
前記組織移植片の上方および下方から組織を前記大穿孔の中に圧縮することによって、前記組織移植片を係留するステップを含み、前記小穿孔は、凝固および肉芽組織発達を含み、前記大穿孔内の凝固および肉芽組織発達は、前記小穿孔と比較して低減され、前記埋込部位に蓄積する血管外組織流体は、前記大穿孔を通して排出されることができる、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目28)
血管外組織流体を前記埋込部位から除去するために、外科手術ドレインまたは負圧創傷療法を適用するステップをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の実施形態は、図面を参照して本明細書に説明される。
【0014】
【
図1】
図1は、本発明による、組織移植片の実施形態の平面図である。
【0015】
【
図2】
図2は、サイズ閾値を上回るまたは下回る穿孔の概略図および視覚的表現である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特定の例示の実施形態の詳細な説明
本開示は、軟組織の修復または再構成のための少なくとも2つの異なるサイズの穿孔を有する、組織移植片に関する。本開示の組織移植片の実施形態は、図面を参照して詳細に説明される。
【0017】
用語「組織移植片」および「組織移植片材料」は、本明細書で使用されるとき、組織由来のインプラントまたは修復材料を指し、自家移植片、同種移植片、または異種移植片、ヒトまたは動物組織から生じる材料から操作される材料、および前述の組み合わせを含む。組織移植片および組織移植片材料の例は、脱細胞化された動物組織、操作されたコラーゲンマトリックス、およびヒト胎盤組織を含む。
【0018】
用語「穿孔」は、本明細書で使用されるとき、何らかのものを通る開口または開口を何らかのものに作製する行為を指す。穿孔は、任意の形状またはサイズであることができる。用語「穿孔」、「開口部」、「孔」、「間隙」、「空隙」、「細孔」、および「開口」は、本明細書では、同義的に使用され得る。
【0019】
用語「シート」は、本明細書で使用されるとき、材料の幅広の比較的に薄い表面または層を指す。そのようなシートは、平坦または厚さが均一であってもよく、もしくはその表面を横断して厚さが変動してもよく、任意の形状であってもよい。
【0020】
本明細書で使用されるように、「〜を備える」、「〜を含む」、「〜を有する」、「〜を含有する」、「〜を伴う」、「〜から構成される」、および同等物等の移行句は、非制限的であって、「限定ではないが、〜を含む」という意味であると理解されたい。
【0021】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書および請求項で使用されるように、そうではないことが明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されたい。
【0022】
用語「約」は、本明細書で使用されるように、値が、最大±10%、例えば、±5%、±2%、または±1%変動し得ることを示す。
【0023】
本発明の側面によると、組織移植片は、複数の小穿孔と、複数の大穿孔とを有する、組織移植片材料のシートを備えるように提供され、小穿孔は、大穿孔よりサイズが小さい。
【0024】
組織移植片材料は、胎児または新生児ウシ真皮に由来する、無細胞コラーゲンマトリックスであってもよい。天然起源バイオポリマーベースのマトリックスのシートが、以下のステップ、すなわち、(1)組織をその動物供給源から取り出し、次いで、肉を組織から除去し、(2)必要に応じて、成長因子および分化因子を組織から抽出し、(3)例えば、NaOHで処置することによって、組織の感染性作用物質を不活性化し、(4)圧力を機械的に印加し、望ましくない成分を組織から除去し、(5)化学残留物の除去のために、組織を洗浄し、(6)必要に応じて、乾燥させ、例えば、凍結乾燥させ、(7)必要に応じて、化学および機械的処置後、組織を架橋し、(8)必要に応じて、組織を所望の形状およびサイズに切断し、(9)必要に応じて、最終的に滅菌することを含む、プロセスによって、動物組織から生成されてもよい。例えば、米国特許第9,011,895号(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。本発明の組織移植片を生成するために、付加的ステップが、プロセスの間、例えば、乾燥ステップ後、架橋ステップ後、または切断ステップ後、特定のサイズの穿孔を追加するために、プロセス内に含まれる。穿孔ステップは、下記により詳細に説明される。
【0025】
組織移植片材料の別の例は、操作されたコラーゲンマトリックスである。操作されたコラーゲンマトリックスのシートが、以下のステップ、すなわち、(1)コラーゲン(例えば、ウシ腱コラーゲン)の分散液を調製し、(2)必要に応じて、グリコサミノグリカン(GAG)をコラーゲン分散液中に添加し、(3)コラーゲンまたはコラーゲン/GAG分散液を乾燥するまで凍結乾燥し、(4)必要に応じて、シリコーン層を凍結乾燥されたコラーゲンまたはコラーゲン/GAG材料に付与し、(5)必要に応じて、凍結乾燥されたコラーゲンまたはコラーゲン/GAG材料を架橋し、(6)必要に応じて、組織を所望の形状およびサイズに切断し、(7)必要に応じて、最終的に滅菌することを含む、プロセスから生成されてもよい。例えば、米国特許第6,969,523号(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。本発明の組織移植片を生成するために、付加的ステップが、プロセスの間、例えば、凍結乾燥ステップ後、シリコーン層追加ステップ後、架橋ステップ後、または切断ステップ後、特定のサイズの穿孔を追加するために、プロセス内に含まれる。穿孔ステップは、下記により詳細に説明される。
【0026】
また、そうではないことが明確に示されない限り、1つを上回るステップまたは行為を含む、本明細書で説明または請求される任意のプロセスまたは方法では、方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも、方法のステップまたは行為が列挙される順序に限定されないことを理解されたい。ステップまたは行為の順序は、当業者によって調節されてもよい。
【0027】
図1は、本発明の組織移植片の例示的実施形態を描写する。組織移植片10は、複数の小穿孔110と、複数の大穿孔120とを有する、組織移植片材料のシート、例えば、胎児および新生児ウシ組織からの無細胞真皮を含む。小穿孔110は、大穿孔120よりサイズが小さい。小穿孔および大穿孔は、円形または実質的に円形である。小穿孔は、約2mmの直径を有し、外科手術用メッシュ血管再生および細胞再増殖を早める。大穿孔は、約3mmの直径を有し、患者筋肉組織がより大きい直径の穿孔の中に圧縮されることを可能にすることによって組織係留を改良し、したがって、増加される接触面積、より迅速な付着またはシールを可能にし、潜在的に、血清腫を低減させる。実施形態の組織移植片は、約2mm厚である。直径約2mmの小穿孔は、開放面積3.14mm
2と、空隙容量約6.28mm
3とを有する。直径約3mmの大穿孔は、開放面積7.07mm
2と、空隙容量約14.14mm
3とを有する。2つのサイズの穿孔を含む、組織移植片は、局所組織外傷の結果として生成される、組織流体の排出/除去を可能にする。
【0028】
組織移植片は、約0.5mm〜約4.5mmの範囲内、好ましくは、約2mm〜約4mmの範囲内の厚さを有してもよい。
【0029】
小穿孔は、直径約1mm〜約2.5mmであってもよく、大穿孔は、直径約2.5mm〜約4mmであってもよい。小穿孔および大穿孔は、比率約1:1.2〜約1:2、好ましくは、約1:1.3〜約1:1.7、例えば、約1:1.5における直径を有する。
【0030】
図面に描写される実施形態は、円形穿孔を有するが、穿孔は、卵形、正方形、長方形、菱形等の任意の形状、または任意の不規則的もしくは他の形状を有することができることが企図される。小穿孔および大穿孔は、比率約1:1.5〜約1:3、好ましくは、約1:2〜約1:2.5、例えば、約1:2.25における開放面積を有する。小穿孔および大穿孔は、比率約1:1.5〜約1:3、好ましくは、約1:2〜約1:2.5、例えば、約1:2.25における空隙容量を有する。
【0031】
小穿孔は、穿孔内のフィブリンの仮のマトリックスの形成(凝固)および肉芽組織発達を促進し、ひいては、哺乳動物に埋め込まれる組織移植片の血管再生および細胞再増殖を促進するための血管および細胞の供給源であるようなサイズである。大穿孔は、哺乳動物内の埋込部位に蓄積する血管外組織流体が、組織移植片を通して容易に排出され、外科手術ドレインまたは負圧創傷療法を介して、周術および術後早期期間に、埋込部位から除去され得るように、穿孔内のフィブリンの仮のマトリックスの形成および肉芽組織発達の発生を低減させるようなサイズである。大穿孔は、哺乳動物組織が、穿孔の中に圧縮され、哺乳動物組織接触面積を増加させることを可能にすることによって、哺乳動物組織係留を増大させるようなサイズである。
【0032】
小穿孔および大穿孔は、行状にアレイ化され、行は、相互に実質的に平行である。組織移植片は、小穿孔の複数の行と、大穿孔の複数の行とを有してもよく、小穿孔の行は、大穿孔の行と交互する。大穿孔および小穿孔は、1つの小穿孔が、実質的に正方形または長方形様式で配列される4つの隣接する大穿孔ごとにセンタリングされ、1つの大突出部が、実質的に正方形または長方形様式で配列される4つの隣接する小突出部ごとにセンタリングされるように、互い違いの行および列に配置される。
【0033】
一側面によると、小穿孔および大穿孔の複数の行は、組織移植片の表面全体上に実質的に等しく離間される。小穿孔は、例えば、同一行内の2つの隣接する穿孔の中心間で測定されるとき、約5mm〜約20mm離れて、好ましくは、約7mm〜約15mm離れて、例えば、約10mm離れて離間される。大穿孔は、例えば、同一行内の2つの隣接する穿孔の中心間で測定されるとき、約5mm〜約20mm離れて、好ましくは、約7mm〜約15mm離れて、例えば、約10mm離れて離間される。小穿孔および/または大穿孔が組織移植片の特定の部分のみに所望される、用途が存在し得ることが予期される。例えば、複数の小穿孔および大穿孔は、組織移植片の表面の約75%にわたって、約50%にわたって、または約25%にわたって配置される。加えて、同一サイズの穿孔は、行に配列される必要はない。例えば、大穿孔は、ある面積内に群化されてもよい一方、小穿孔は、他の面積内に群化されてもよく、これらの大穿孔面積および小穿孔面積は、臨床用途および所望の結果に依存して、組織移植片の全体表面上または部分表面上、もしくは任意の他の配列に均一に配置されてもよい。
【0034】
小穿孔の行および大穿孔の行は、行内の2つの隣接する小穿孔の中心を接続する第1のラインと行内の2つの隣接する大穿孔の中心を接続する第2のラインとの間で測定されるとき、約5mm〜約20mm離れて、好ましくは、約7mm〜約15mm離れて、例えば、約10mm離れて離間される。
【0035】
組織移植片の穿孔は、所望の寸法の表面を有する切断ダイを備える、穿孔機械を使用して実施される。切断ダイは、その表面上に、調製されるべき組織移植片上の穿孔の所定の形状およびサイズに対応する形状およびサイズを有する、パンチを有する。これらのパンチは、調製されるべき組織移植片の所定の穿孔パターンに対応する、パターンで配置される。好適な穿孔機械は、産業用途のためのものを含む。
【0036】
孔、間隙、または空隙は、事前に脱細胞化された組織内に設置されているが、先行技術における孔は、全ての同一サイズであって、多くの場合、非常に離れて離間され、流体排出を可能にしながら、メッシュの機械的性質に及ぼす影響を最小限にする。本発明では、孔サイズの生物学的効果の相違が、血管再生、組織発生、および組織再構築を方向づけるように識別および利用されている。これらの応答をデバイス内の場所によって異なるように方向づけるためのデバイス内の特定の孔パターンの作成は、先行技術との有意な差異である。
【0037】
本発明は、外科手術用メッシュ内の穿孔のサイズおよび/または場所を改変することによって、外科手術部位流体排出、組織再生、および創傷治癒を制御する能力を提供する。これは、新しく発生された組織の中への血流を制御する能力を提供する。
【0038】
組織移植片の中への孔および空隙空間の導入は、異なるサイズ間隙または孔を伴うインプラントの生物学的性質を変調させ、血管再生、組織発生、および組織再構築特性に影響を及ぼす。いったん埋め込まれると、これらの設計された空隙は、宿主発生組織で充填されることが見出される。空隙内の宿主発生組織中の細胞、血管密度、および代謝/栄養学的要求が、埋め込まれた細胞外マトリックス(ECM)の微細気孔内で発生されたものを上回る場合、大/微小血管系が、インプラント内のこれらの製作された空隙に向かって具体的に方向づけるられるように形成されることが観察される。そのような空隙(孔、有窓/細隙、および/または溝)を方略的に設置することは、したがって、大/微小血管系の指向性血管新生を誘発するための機構である。指向性血管新生は、組織工学および再建外科手術において使用され、新しく発生された組織全体を通して、血流および血液成分の流れを空間的に調整し、以前に製作された組織欠陥を充填するために見出される大/微小血管系を宿主発生毛細管ネットワークに向かって方向づけ、血液/栄養支援を、例えば、膵島、上皮、腎臓、肝臓等の宿主組織充填組織欠陥に隣接して、またはその内側に設置された異なる細胞/組織タイプに提供し、そのような大/微小血管系の起始部を画定し、美容整形手術および/または顕微鏡下外科手術技法を介して、血管系に再接続することによって、療法または組織修復機能のために、発生された組織の患者内の他の場所への移植を支援することができる。
【0039】
本発明の組織移植片は、組織修復、再生、および再構成のために使用されてもよい。それらは、修復もしくは置換デバイスまたは外科手術用メッシュとして使用され、人体全体を通して軟組織を支持することができる。組織移植片は、皮膚創傷ガーゼまたは皮膚置換組織として使用されることができる。それらはまた、ヘルニア修復、結腸、直腸、膣、および/または尿道脱出処置、骨盤床再構成、筋肉弁補強、肺組織支持、回旋筋腱板修復または置換、骨膜置換、硬膜修復および置換、心膜修復、軟組織増強、椎間板修復、および歯根膜修復のために使用されることができる。組織移植片はまた、尿道スリング、椎弓切除術障壁、または脊椎融合デバイスとして使用されてもよい。それらはまた、増殖因子等の生物活性剤の担体としての役割を果たし、組織を発生させてもよい。
【0040】
本発明の組織移植片は、組織修復、再生、または再構成の必要がある患者に付与されてもよい。組織移植片内の小穿孔は、患者内の血管再生および細胞再増殖を促進する。大穿孔は、流体排出を可能にする。大穿孔は、外科手術ドレインまたは負圧創傷療法が、周術および術後早期期間において、血管外組織流体を埋込部位から除去するために付与され得るように、穿孔内の凝固および肉芽組織発達の発生を低減させる。
(実施例)
【0041】
実験結果は、異なるサイズの穿孔が異なる宿主応答をもたらすことを示す。
【実施例1】
【0042】
ヘルニア修復における実験結果および腹部内モデルは、特定のサイズを上回るおよび下回る穿孔が異なる宿主応答をもたらしたことを示した。これらの実験は、胎児または新生児ウシ真皮由来のSURGIMEND Collagen Matrix(TEI Biosciences, Inc.(Waltham, Mass)上で行われた。
【0043】
より小さい穿孔(直径<3mm、厚さ2mmのSURGIMENDマトリックス)が、新しく堆積された宿主結合組織で充填され、この新しい結合組織は、細胞/脈管を再増殖させる供給源としての役割を果たし、それによって、埋め込まれたSURGIMEND細胞外マトリックスの周囲の細胞再増殖/血管再生の速度を増加させる。
【0044】
より大きい穿孔(直径>3mm、厚さ2mmのSURGIMENDマトリックス)は、開放したまま/新しく堆積された宿主結合組織がない傾向にあった。
【実施例2】
【0045】
筋内インプラントモデルにおける実験結果は、特定のサイズを上回るおよび下回る穿孔が異なる宿主応答をもたらすことを示した。
【0046】
より小さい穿孔(直径<3mm、厚さ2mmのSURGIMENDマトリックス)が、新しく堆積された宿主結合組織で充填され、この新しい結合組織は、細胞/脈管を再増殖させる源としての役割を果たし、それによって、埋め込まれたSURGIMEND細胞外マトリックスの周囲の細胞再増殖/血管再生の速度を増加させる。
【0047】
より大きい穿孔(直径>3mm、厚さ2mmのSURGIMENDマトリックス)は、筋肉組織が、細孔の中に圧入され、細孔を筋肉組織で充填し得るに十分に大きかった。
【0048】
サイズ閾値を上回るおよび下回る穿孔の概略図および視覚的表現は、
図2に提供される。
【実施例3】
【0049】
脱細胞化された組織生成物内の空隙空間の導入は、インプラントの生物学的性質を変調させる。より具体的には、空隙空間または孔のサイズは、血管再生、組織発生、および組織再構築特性に影響を及ぼし、それによって、臨界サイズを上回るおよび下回る空隙は、異なる宿主応答をもたらす。この応答は、インプラント場所および環境信号伝達に基づいて変動し得るが、概して、より小さい空隙(幅<3mm、厚さ2mmの材料)は、より迅速に血管再生され、新しく堆積された宿主組織で充填される傾向にある。より大きい空隙(幅>3mm、厚さ2mmの材料)は、開放したままである/新しく堆積された宿主組織がない傾向にある。
【表1】
【0050】
本発明は、その範囲および不可欠な特性から逸脱することなく、他の形態で具現化されてもよい。説明される実施形態は、したがって、あらゆる点において、制限的ではなく、例証的であると見なされる。本発明は、ある好ましい実施形態の観点から説明されたが、当業者に明白となる他の実施形態もまた、本発明の範囲内である。