(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乾燥工程において、前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの前記第3ロールに対する接触距離と、前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの全搬送距離との比(接触距離/全搬送距離)が、0.1以下であることを特徴とする請求項1記載の偏光子の製造方法。
請求項1〜4の何れかに記載の偏光子の製造方法で得られた偏光子の少なくとも片面に接着剤層を介して透明保護フィルムを貼り合わせる工程を含むことを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
画像表示セルに、請求項5〜7の何れかに記載の偏光フィルムの製造方法で得られた偏光フィルム、または請求項8記載の積層偏光フィルムの製造方法で得られた積層偏光フィルムを貼り合わせる工程を含むことを特徴とする画像表示パネルの製造方法。
請求項9記載の画像表示パネルの製造方法で得られた画像表示パネルの偏光フィルムまたは積層偏光フィルム側に、透明板を設ける工程を含むことを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<偏光子の製造方法>
本発明の偏光子の製造方法は、ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも、染色工程、架橋工程、および延伸工程を施した後に、乾燥工程を施して得られる偏光子の製造方法であって、前記染色工程、架橋工程、および延伸工程の少なくとも1つの処理浴は、亜鉛イオンを含有し、前記乾燥工程は、亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムを複数のロールにより搬送しながら乾燥させて、厚さが20μm以下であり、かつ水分率が13重量%以上19重量%以下である偏光子を製造する工程であり、前記複数のロールは、ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向の最上流側に設けられた第1ロールと、ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向の最下流側に設けられた第2ロールと、前記第1ロールと前記第2ロールの間に設けられた1つ以上の第3ロールを含み、前記1つ以上の第3ロールのうち、少なくとも1つのロールは、当該ロールと前記ポリビニルアルコール系フィルムとの抱き角が90°以下である。
【0024】
前記ポリビニルアルコール(PVA)系フィルムは、可視光領域において透光性を有し、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を分散吸着するものを特に制限なく使用できる。また、通常、原反として用いる、PVA系フィルムは、厚さが10〜100μm程度であることが好ましく、15〜80μm程度であることがより好ましく、20〜60μm程度であることがさらに好ましく、そして、幅が100〜5000mm程度であることが好ましい。
【0025】
前記ポリビニルアルコール系フィルムの材料としては、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が挙げられる。前記ポリビニルアルコールの誘導体としては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール;エチレン、プロピレン等のオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、およびそのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したもの等が挙げられる。前記ポリビニルアルコールは、平均重合度が100〜10,000程度であることが好ましく、1,000〜10,000程度であることがより好ましく、2,000〜4,500程度であることがさらに好ましい。また、前記ポリビニルアルコールは、ケン化度が80〜100モル%程度であることが好ましく、95モル%〜99.95モル程度であることがより好ましい。なお、前記平均重合度および前記ケン化度は、JIS K 6726に準じて求めることができる。
【0026】
前記ポリビニルアルコール系フィルムには、可塑剤や界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。前記可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の、ポリオールおよびその縮合物等が挙げられる。前記添加剤の使用量は、特に制限はないが、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム中、20重量%以下程度が好適である。
【0027】
本発明の偏光子の製造方法は、前記ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも、染色工程、架橋工程、および延伸工程を施した後に、乾燥工程を施す製造方法であり、前記染色工程、架橋工程、および延伸工程の少なくとも1つの処理浴は、亜鉛イオンを含有する。前記少なくとも1つの処理浴に亜鉛イオンを含有することにより、ポリビニルアルコール系フィルムに亜鉛を含有させることができ、得られる偏光子が亜鉛を含有する。
【0028】
<染色工程>
前記染色工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを、染色浴(ヨウ素溶液)に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素または二色性染料等の二色性物質を吸着・配向させることができる。前記ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であることが好ましく、ヨウ素および溶解助剤としてヨウ化物を含有する。なお、前記ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、ヨウ化カリウムが好適である。
【0029】
前記染色浴中、ヨウ素の濃度は、0.01〜1重量%程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量%程度であることがより好ましい。前記染色浴中、前記ヨウ化物の濃度は、0.01〜10重量%程度であることが好ましく、0.05〜5重量%程度であることがより好ましい。
【0030】
前記染色浴に亜鉛イオンを含有させる場合、亜鉛塩を使用することが好ましい。前記亜鉛塩としては、例えば、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛;硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等の無機亜鉛塩等が挙げられる。これらの中でも、硫酸亜鉛が好適である。前記染色浴中、前記亜鉛イオンの濃度は、0.1〜10重量%程度であることが好ましく、0.3〜7重量%程度であることがより好ましく、0.5〜3重量%程度であることがさらに好ましい。
【0031】
前記染色浴の温度は、10〜50℃程度であることが好ましく、15〜45℃程度であることがより好ましい。また、前記染色浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの染色の程度が染色浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10〜300秒間程度であることが好ましく、20〜240秒間程度であることがより好ましい。前記染色工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0032】
<架橋工程>
前記架橋工程は、前記染色工程にて染色されたポリビニルアルコール系フィルムを、ホウ素化合物を含む処理浴(架橋浴)中に浸漬する処理工程であり、ホウ素化合物によりポリビニルアルコール系フィルムが架橋して、ヨウ素分子または染料分子が当該架橋構造に吸着できる。前記ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸、ホウ酸塩、ホウ砂等が挙げられる。前記架橋浴は、水溶液が一般的であるが、例えば、水との混和性のある有機溶媒および水の混合溶液であってもよい。また、前記架橋浴は、ヨウ化カリウム等のヨウ化物を含むことができる。
【0033】
前記架橋浴中、前記ホウ素化合物の濃度は、1〜15重量%程度であることが好ましく、1.5〜10重量%程度であることがより好ましく、2〜5重量%程度であることがより好ましい。また、前記架橋浴にヨウ化カリウム等のヨウ化物を使用する場合、前記架橋浴中、ヨウ化カリウム等のヨウ化物の濃度は、1〜15重量%程度であることが好ましく、1.5〜10重量%程度であることがより好ましい。
【0034】
前記架橋浴に亜鉛イオンを含有させる場合、亜鉛塩を使用することが好ましい。前記亜鉛塩としては、例えば、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛;硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等の無機亜鉛塩等が挙げられる。これらの中でも、硫酸亜鉛が好適である。前記架橋浴中、前記亜鉛イオンの濃度は、0.1〜10重量%程度であることが好ましく、0.3〜7重量%程度であることがより好ましく、0.5〜3重量%程度であることがさらに好ましい。
【0035】
前記架橋浴の温度は、20〜70℃程度であることが好ましく、30〜60℃程度であることがより好ましい。また、前記架橋浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの架橋の程度が架橋浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5〜300秒間程度であることが好ましく、10〜200秒間程度であることがより好ましい。前記架橋工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0036】
<延伸工程>
前記延伸工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを、少なくとも一方向に所定の倍率に延伸する処理工程である。一般には、ポリビニルアルコール系フィルムを、搬送方向(長手方向)に1軸延伸する。前記延伸の方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法(ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等)のいずれも採用できるが、本発明では、湿潤式延伸方法を用いるのが好ましい。前記延伸工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。前記延伸工程は、偏光子の製造において、いずれの段階で行われてもよい。
【0037】
前記湿潤延伸法における処理浴(延伸浴)は、通常、水、または水との混和性のある有機溶媒および水の混合溶液等の溶媒を用いることができる。前記延伸浴は、ヨウ化カリウム等のヨウ化物を含むことができる。前記延伸浴にヨウ化カリウム等のヨウ化物を使用する場合、当該延伸浴中、ヨウ化カリウム等のヨウ化物の濃度は、1〜15重量%程度であることが好ましく、2〜10重量%程度であることがより好ましい。また、前記処理浴(延伸浴)には、架橋度を向上するために前記ホウ素化合物を含むことができ、この場合、当該延伸浴中、前記ホウ素化合物の濃度は、1〜15重量%程度であることが好ましく、1.5〜10重量%程度であることがより好ましい。
【0038】
前記延伸浴に亜鉛イオンを含有させる場合、亜鉛塩を使用することが好ましい。前記亜鉛塩としては、例えば、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛;硫酸亜鉛、酢酸亜鉛等の無機亜鉛塩等が挙げられる。これらの中でも、硫酸亜鉛が好適である。前記延伸浴中、前記亜鉛イオンの濃度は、0.1〜10重量%程度であることが好ましく、0.3〜7重量%程度であることがより好ましく、0.5〜3重量%程度であることがさらに好ましい。
【0039】
前記延伸浴の温度は、25〜80℃程度であることが好ましく、40〜75℃程度であることがより好ましい。また、前記延伸浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸の程度が延伸浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、10〜800秒間程度であることが好ましく、30〜500秒間程度であることがより好ましい。なお、前記湿潤延伸法における延伸処理は、前記染色工程、前記架橋工程、後述する膨潤工程、および後述する洗浄工程のいずれか1つ以上の処理工程とともに施してもよい。
【0040】
前記ポリビニルアルコール系フィルムに施される総延伸倍率(累積の延伸倍率)は、目的に応じ適宜設定できるが、2〜7倍程度であることが好ましく、3〜6.8倍程度であることがより好ましく、3.5〜6.5倍程度であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明の偏光子の製造方法は、前記ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも、前記染色工程、前記架橋工程、および前記延伸工程を施した後に、乾燥工程を施す製造方法であるが、前記染色工程を施す前に、膨潤工程を施してもよく、また、乾燥工程の前に洗浄工程を施してもよい。
【0042】
<膨潤工程>
前記膨潤工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを、膨潤浴中に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系フィルムの表面の汚れやブロッキング剤等を除去でき、また、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラを抑制できる。前記膨潤浴は、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。前記膨潤浴は、常法に従って、界面活性剤、アルコール等が適宜に添加されていてもよい。
【0043】
前記膨潤浴の温度は、10〜60℃程度であることが好ましく、15〜45℃程度であることがより好ましい。また、前記膨潤浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの膨潤の程度が膨潤浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、5〜300秒間程度であることが好ましく、10〜200秒間程度であることがより好ましい。前記膨潤工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0044】
<洗浄工程>
前記洗浄工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを、洗浄浴中に浸漬する処理工程であり、ポリビニルアルコール系フィルムの表面等に残存する異物を除去できる。前記洗浄浴は、通常、水、蒸留水、純水等の水を主成分とする媒体が用いられる。また、前記洗浄浴にヨウ化カリウム等のヨウ化物を使用することができ、この場合、前記洗浄浴中、ヨウ化カリウム等のヨウ化物の濃度は、1〜10重量%程度であることが好ましく、2〜4重量%程度であることがより好ましく、1.6〜3.8重量%程度であることがさらに好ましい。
【0045】
前記洗浄浴の温度は、5〜50℃程度であることが好ましく、10〜40℃程度であることがより好ましく、15〜30℃程度であることがさらに好ましい。また、前記洗浄浴への浸漬時間は、ポリビニルアルコール系フィルムの洗浄の程度が洗浄浴の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、1〜100秒間程度であることが好ましく、2〜50秒間程度であることがより好ましく、3〜20秒間程度であることがさらに好ましい。前記膨潤工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0046】
<乾燥工程>
前記乾燥工程は、亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムを複数のロールにより搬送しながら乾燥させて、厚さが20μm以下であり、かつ水分率が13重量%以上19重量%以下である偏光子を製造する工程であり、前記複数のロールは、ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向の最上流側に設けられた第1ロールと、ポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向の最下流側に設けられた第2ロールと、前記第1ロールと前記第2ロールの間に設けられた1つ以上の第3ロールを含み、前記1つ以上の第3ロールのうち、少なくとも1つのロールは、当該ロールと前記ポリビニルアルコール系フィルムとの抱き角が90°以下である。
【0047】
前記複数のロールは、乾燥機、オーブン、加熱炉等の乾燥処理部の内部に配置される複数の搬送ロールである。前記第1ロールは、前記乾燥処理部において、亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向の最上流側に設けられた、亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムが乾燥処理部で最初に接触する搬送ロールである。また、前記第2ロールは、前記乾燥処理部において、亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの搬送方向の最下流側に設けられた、亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムが乾燥処理部で最後に接触する搬送ロールである。また、前記第3ロールは、前記乾燥処理部において、前記第1ロールと前記第2ロールの間に設けられた、1つ以上の搬送ロールである。
【0048】
前記複数のロールは、略円状のロール形状であり、大きさは特に制限されないが、例えば、搬送時の曲率による偏光子へのダメージの観点から、直径が10〜1000mm程度であることが好ましく、30〜500mm程度であることがより好ましい。また、前記複数のロールは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、前記複数のロールは、加熱式ロール(熱ロール)であってもよく、非加熱式ロールであってもよいが、ロールと偏光子が接触した際に、偏光子表面の亜鉛が析出する懸念が少ないという観点から、非加熱式ロールであることが好ましい。
【0049】
前記第3ロールにおいて、少なくとも1つのロールは、当該ロールと前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムとの抱き角が90°以下である。前記抱き角の概略図を
図1に示す。前記抱き角は、亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムWが、ロールRを介して搬送されるときに形成される角度θ(°)である。より具体的には、ロールRの中心点を基準点として、亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムWがロールRと接している最始点と最終点により形成される角度である。亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムとロールとの接触時間を減らし、偏光子の外観異常(偏光ムラ)を抑制する観点から、前記抱き角は、90°よりも小さいほうが好ましく、例えば、80°以下であることが好ましく、70°以下であることがより好ましく、60°以下であることがさらに好ましく、50°以下であることがよりさらに好ましい。また、偏光子の外観異常(偏光ムラ)を抑制する観点から、前記抱き角の下限値はとくに限定されるものではないが、例えば、ロール回転不足による偏光子のキズの発生を抑制するなどの観点から、10°以上、30°以上が例示できる。
【0050】
前記第3ロールは、乾燥工程の温度や乾燥の時間の影響を受けるため一概には決定できないが、通常、前記乾燥処理部に、1〜30個程度設けることが好ましく、2〜20個程度設けることが好ましい。
【0051】
また、前記乾燥工程において、前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの前記第3ロールに対する接触距離と、前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの全搬送距離との比(接触距離/全搬送距離)が、0.1以下であることが好ましい。前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムとロールとの接触時間を減し、偏光子の外観異常(偏光ムラ)をより抑制する観点から、上記の接触距離/全搬送距離は、0.09以下であることが好ましい。また、ポリビニルアルコール系フィルムの搬送性を高める観点から、上記の接触距離/全搬送距離は、0.01以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましい。
【0052】
また、前記乾燥工程において、前記複数のロールにおけるロール間の最大距離(L
MAX)と、乾燥工程前の前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの幅(W
1)との比(L
MAX/W
1)が、2以下であることが好ましい。前記複数のロールにおけるロール間の最大距離とは、隣り合うロール間(上流側ロールと下流側ロールの間)において、上流側のロールから前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムが離れる位置から、下流側のロールに前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムが最初に接する位置までの搬送距離(空走距離)(L
1)のうち、最も長い距離を意味する。搬送中の亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムのたわみを小さくして、得られる偏光子の折れの発生を抑制する観点から、前記L
MAX/W
1は、1.5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。また、偏光子の折れの発生を抑制する観点から、前記L
MAX/W
1の下限値はとくに限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムの搬送性を高めるなどの観点から、0.1以上、0.2以上が例示できる。
【0053】
前記乾燥の温度は、得られる偏光子の厚さが20μm以下であり、かつ水分率が13重量%以上19重量%以下になれば、特に限定されるものではないが、例えば、15〜150℃程度であることが好ましく、20〜100℃程度であることがより好ましく、25〜50℃程度であることがよりさらに好ましい。また、前記乾燥の時間は、偏光子の乾燥の程度が乾燥の温度の影響を受けるため一概に決定できないが、30〜600秒間程度であることが好ましく、60〜300秒間程度であることがより好ましい。前記乾燥工程は1回だけ実施されてもよく、必要に応じて複数回実施されてもよい。
【0054】
本発明の製造方法によって得られる偏光子は、厚さが20μm以下であり、かつ水分率が13重量%以上19重量%以下である。前記偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムおよび偏光子の搬送性を考慮して、厚みが、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、そして、偏光フィルムの加熱耐久性を高める観点から、厚みが、19μm以下であることが好ましい。また、前記偏光子は、偏光子の表面変形による外観異常(偏光ムラ)を抑制する観点から、水分率が13.5重量%以上であることが好ましく、14重量%以上であることがより好ましく、そして、偏光フィルムの加熱耐久性を高める観点から、水分率が18.5重量%以下であることが好ましく、18重量%以下であることがより好ましい。なお、偏光子の水分率は、100mm角のサイズに切り出された試料(偏光子)の、初期重量、および120℃で2時間乾燥後の乾燥重量に基づいて、下記式により算出される。
水分率(重量%)={(初期重量−乾燥重量)/初期重量}×100
【0055】
前記偏光子は、乾燥工程前の前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの幅(W
1)と、乾燥工程後に得られた前記偏光子の幅(W
2)との比(W
2/W
1)が、0.9以上1未満であることが好ましい。乾燥工程での偏光子の端部のシワ等の発生を抑制するという観点から、前記W
2/W
1は、0.92〜0.98であることが好ましく、0.94〜0.98であることがより好ましい。
【0056】
<偏光フィルムの製造方法>
本発明の偏光フィルムの製造方法は、前記偏光子の少なくとも片面に接着剤層を介して透明保護フィルムを貼り合わせる工程を含む。
【0057】
前記透明保護フィルムは、特に制限されず、従来より偏光フィルムに用いられている各種の透明保護フィルムを用いることができる。前記透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロール等のセルロールエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、およびこれらの混合物があげられる。また、前記透明保護フィルムは、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂から形成される硬化層を用いることができる。これらの中でも、セルロールエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好適である。
【0058】
前記透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性等の観点から、1〜500μm程度であることが好ましく、1〜300μm程度あることがより好ましく、5〜100μm程度であることがさらに好ましい。また、前記透明保護フィルムの厚さは、当該透明保護フィルムの透湿度を低下させる観点から、10〜100μm程度であることが好ましく、20〜100μm程度あることがより好ましく、30〜100μm程度であることがさらに好ましい。
【0059】
前記透明保護フィルムは、高温または高温多湿環境下での偏光性能の低下を抑制する観点から、透湿度が800g/(m
2・24h)以下であることが好ましく、400g/(m
2・24h)以下であることがより好ましく、200g/(m
2・24h)以下であることがさらに好ましく、150g/(m
2・24h)以下であることがよりさらに好ましい。また、前記偏光子の片面の透明保護フィルムは、透湿度が200g/(m
2・24h)以下であることが好ましく、150g/(m
2・24h)以下であることがより好ましい。なお、透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じ、直径60mmに切断したサンプルを約15gの塩化カルシウムを入れた透湿カップにセットし、温度40℃、湿度90%R.H.の恒温機に入れ、24時間放置した前後の塩化カルシウムの重量増加を測定することで算出できる。
【0060】
前記透明保護フィルムを、前記偏光子の両面に貼り合わせる場合、その両面の透明保護フィルムは、同じものであってもよく、異なっていてもよい。
【0061】
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。前記透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0062】
前記位相差板としては、例えば、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したもの等が挙げられる。位相差板の厚さは特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。なお、位相差を有しない透明保護フィルムに前記位相板を貼り合わせて使用してもよい。
【0063】
前記透明保護フィルムは、表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、ケン化処理等が挙げられる。
【0064】
前記透明保護フィルムの偏光子を貼り合わせない面には、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。なお、ハードコート処理や反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレアを目的とした処理等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0065】
前記透明保護フィルムには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等の任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。
【0066】
前記接着剤としては、例えば、水系接着剤、溶剤型接着剤、エマルション系接着剤、無溶剤型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤(例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤)、熱硬化型接着剤等が挙げられる。所望の固化または硬化前粘度を有し、かつ、偏光子との接着性に優れる観点から、前記接着剤は、水系接着剤が好ましい。
【0067】
前記水系接着剤は、任意の適切な水系接着剤が採用され得るが、PVA系樹脂を含む水系接着剤が好適である。当該PVA系樹脂の平均重合度は、接着性の観点から、100〜5,500程度であることが好ましく、1,000〜4,500程度であることがより好ましい。また、当該PVA系樹脂の平均ケン化度は、接着性の観点から、85モル%〜100モル%程度であることが好ましく、90モル%〜100モル%程度であることがより好ましい。
【0068】
前記PVA系樹脂は、偏光子および保護フィルムとの密着性に優れ、耐久性に優れ得る観点から、アセトアセチル基を含有することが好ましい。アセトアセチル基含有PVA系樹脂は、例えば、PVA系樹脂とジケテンとを任意の方法で反応させることにより得られる。アセトアセチル基含有PVA系樹脂のアセトアセチル基変性度は、代表的には0.1モル%以上であり、0.1モル%〜40モル%程度であることが好ましく、1モル%〜20モル%程度であることがより好ましく、2モル%〜7モル%程度であることがよりさらに好ましい。なお、アセトアセチル基変性度はNMRにより測定した値である。
【0069】
前記水系接着剤の樹脂(固形分)濃度は、0.1重量%〜15重量%程度であることが好ましく、0.5重量%〜10重量%程度であることがより好ましい。
【0070】
前記接着剤の塗布は、前記透明保護フィルム、前記偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。貼り合わせ後には、乾燥工程を施し、塗布乾燥層からなる接着剤層を形成する。前記偏光子と前記透明保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーター等により行うことができる。前記乾燥工程の後には、必要に応じ、紫外線や電子線を照射することができる。前記接着剤層の厚さは、特に制限されないが、30〜5000nm程度であることが好ましく、100〜1000nm程度であることがより好ましい。
【0071】
<積層偏光フィルムの製造方法>
本発明の積層偏光フィルム(光学積層体)の製造方法は、前記偏光フィルムに光学層を貼り合わせる工程を含む。
【0072】
前記光学層は特に限定はないが、例えば、反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。前記積層偏光フィルムとしては、特に、前記偏光フィルムに更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光フィルムまたは半透過型偏光フィルム、前記偏光フィルムに更に位相差板が積層されてなる楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルム、前記偏光フィルムに更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光フィルム、あるいは前記偏光フィルムに更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光フィルムが挙げられる。
【0073】
前記偏光フィルム、あるいは前記積層偏光フィルムの一方の面あるいは両方の面には、液晶セルや有機EL素子等の画像表示セルと、視認側における前面透明板やタッチパネル等の透明板等の他の部材を貼り合わせるための接着剤層が付設されてもよい。当該接着剤層としては、粘着剤層が好適である。前記粘着剤層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系重合体を含む粘着剤のように、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れるものが好ましく用いられる。
【0074】
前記偏光フィルムや前記積層偏光フィルムの片面又は両面への粘着剤層の付設は、適宜な方式で行いうる。粘着剤層の付設としては、例えば、粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗布方式等の適宜な展開方式で前記偏光フィルムや前記積層偏光フィルム上に直接付設する方式、あるいは、セパレータ上に粘着剤層を形成して、それを前記偏光フィルムや前記積層偏光フィルム上に移着する方式等が挙げられる。前記粘着剤層の厚さは、使用目的や接着力等に応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
【0075】
前記粘着剤層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着剤層の汚染等が防止できる。前記セパレータとしては、例えば、プラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したもの等が用いられる。
【0076】
<画像表示パネルの製造方法および画像表示装置の製造方法>
本発明の画像表示パネルの製造方法は、画像表示セルに、前記偏光フィルム、または前記積層偏光フィルムを貼り合わせる工程を含む。また、本発明の画像表示装置の製造方法は、前記画像表示パネルの偏光フィルムまたは積層偏光フィルム側(視認側)に、透明板を設ける工程を含む。
【0077】
前記画像表示セルとしては、例えば、液晶セルや有機ELセル等が挙げられる。前記液晶セルとしては、例えば、外光を利用する反射型液晶セル、バックライト等の光源からの光を利用する透過型液晶セル、外部からの光と光源からの光の両者を利用する半透過半反射型液晶セルのいずれを用いてもよい。前記液晶セルが光源からの光を利用するものである場合、画像表示装置(液晶表示装置)は、画像表示セル(液晶セル)の視認側と反対側にも偏光フィルムが配置され、さらに光源が配置される。当該光源側の偏光フィルムと液晶セルとは、適宜の接着剤層を介して貼り合せられていることが好ましい。前記液晶セルの駆動方式としては、例えば、VAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の任意なタイプのものを用いうる。
【0078】
前記有機ELセルとしては、例えば、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成したもの等が好適に用いられる。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、これらの発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体、あるいは正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々層構成が採用され得る。
【0079】
前記画像表示セルの視認側に配置される透明板としては、例えば、前面透明板(ウインドウ層)やタッチパネル等が挙げられる。前記前面透明板としては、適宜の機械強度および厚みを有する透明板が用いられる。このような透明板としては、例えば、アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂のような透明樹脂板、あるいはガラス板等が用いられる。前記タッチパネルとしては、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等の各種タッチパネルや、タッチセンサー機能を備えるガラス板や透明樹脂板等が用いられる。前記透明板として静電容量方式のタッチパネルが用いられる場合、タッチパネルよりもさらに視認側に、ガラスや透明樹脂板からなる前面透明板が設けられることが好ましい。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
<実施例1>
<偏光子の製造>
平均重合度が2,400、ケン化度が99.9モル%、厚みが45μm、幅が2600mmであるポリビニルアルコールフィルムを用意した。ポリビニルアルコールフィルムを、周速比の異なるロール間で、28℃の膨潤浴(水浴)中に30秒間浸漬して膨潤しながら搬送方向に2.4倍に延伸し(膨潤工程)、続いて、25℃の染色浴(ヨウ素濃度が0.03重量%、ヨウ化カリウム濃度が0.3重量%である水溶液)中で45秒間浸漬して染色しながら元のポリビニルアルコールフィルム(搬送方向に全く延伸していないポリビニルアルコールフィルム)を基準にして搬送方向に3.7倍に延伸した(染色工程)。次いで、染色したポリビニルアルコールフィルムを、40℃の架橋浴(ホウ酸濃度が3.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が3.0重量%、硫酸亜鉛が3.6重量%(亜鉛イオン濃度が1.5重量%)である水溶液)中で20秒間浸漬して元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に4.2倍まで延伸した(架橋工程)。さらに、得られたポリビニルアルコールフィルムを、65℃の延伸浴(ホウ酸濃度が4.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が5.0重量%、硫酸亜鉛濃度が5.0重量%(亜鉛イオン濃度が2.0重量%)である水溶液)中で50秒間浸漬して元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に6.0倍まで延伸した(延伸工程)後、27℃の洗浄浴(ヨウ化カリウム濃度が2.5重量%である水溶液)中で5秒間浸漬した(洗浄工程)。洗浄したポリビニルアルコールフィルムを、
図2に示すようなロールの配置(ロールの全数が10個;第3ロール中、最大の抱き角が43°)を有するオーブンを用い、25℃で2分間乾燥して偏光子を作製した。ポリビニルアルコールフィルムの第3ロールに対する接触距離と、ポリビニルアルコールフィルムの全搬送距離との比(接触距離/全搬送距離)が0.09であった。また、オーブン内の複数のロールにおけるロール間の最大距離(L
MAX)と、乾燥工程前の前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの幅(W
1)との比(L
MAX/W
1)が0.21であった。得られた偏光子の厚みは18μmであり、偏光子の水分率は17.2重量%であり、W
2/W
1は0.97であった。
【0082】
<偏光フィルムの作製>
接着剤として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール樹脂(平均重合度が1,200、ケン化度が98.5モル%、アセトアセチル化度が5モル%)とメチロールメラミンとを重量比3:1で含有する水溶液を用いた。この接着剤を用いて、第2透明保護フィルムとして、上記で得られた偏光子の一方の面(画像表示セル側表面)に、(メタ)アクリル系樹脂(ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマー)からなる厚み30μmの透明保護フィルム(飽和吸水量が0.2g/m
2、透湿度が125g/(m
2・24h))、(以下、このフィルムを「透明フィルムA」と称する)、また、第1透明保護フィルムとして、他方の面(視認側)に、ハードコート層を有する厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(透湿度が342g/(m
2・24h)、コニカミノルタ製、商品名「KC4UYW」)(以下、このフィルムを「透明フィルムB」と称する)をロール貼合機で貼り合わせた後、引き続きオーブン内で加熱乾燥(温度が88℃、時間が10分間)させて、偏光子の両面に透明保護フィルムが貼り合わせられた偏光フィルムを作製した。
【0083】
<疑似画像表示装置の作製>
上記で得られた偏光フィルムを、偏光子の吸収軸が長辺となるように150×50cmのサイズに切断し、偏光フィルムの一方の面(透明フィルムA側の面)に、厚み20μmのアクリル系粘着剤層を介してガラス板(疑似画像表示セル)を貼り合わせ、偏光フィルムの他方の面(透明フィルムB側の面)に厚み200μmのアクリル酸モノマーフリー粘着剤(日東電工(株)製、商品名「LUCIACS CS9868」)を介して別のガラス板を貼り合わせて、疑似画像表示装置を作製した。
【0084】
[外観異常(偏光ムラ)の評価]
上記で得られた偏光フィルムの外観を目視にて以下の基準にて評価した。結果を表1に示す。
〇:外観に異常がない、もしくは10個/m
2未満の偏光ムラが発生する。
×:10個/m
2以上の偏光ムラが発生する。
【0085】
[偏光子の折れの評価]
上記で得られた偏光子の外観を目視にて以下の基準にて評価した。結果を表1に示す。
〇:視認可能な偏光子の折れが発生していない。
×:視認可能な偏光子の折れが発生している。
【0086】
[加熱耐久性の評価]
上記で得られた疑似画像表示装置を、温度95℃の熱風オーブン内に500時間静置し、投入(加熱)後の外観を目視で以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:外観に異常がない。
×:偏光子に視認可能なムラが発生する。
【0087】
<実施例2>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
偏光子の作製において、乾燥工程での乾燥温度を35℃にしたこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を作製した。得られた偏光子の厚みは17μmであり、偏光子の水分率は14.3重量%であり、W
2/W
1は0.95であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。
【0088】
<実施例3>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
平均重合度が2,400、ケン化度が99.9モル%、厚みが30μm、幅が2600mmであるポリビニルアルコールフィルムを用意した。ポリビニルアルコールフィルムを、周速比の異なるロール間で、20℃の膨潤浴(水浴)中に30秒間浸漬して膨潤しながら搬送方向に2.4倍に延伸し(膨潤工程)、続いて、25℃の染色浴(ヨウ素濃度が0.045重量%、ヨウ化カリウム濃度が0.45重量%である水溶液)中で45秒間浸漬して染色しながら元のポリビニルアルコールフィルム(搬送方向に全く延伸していないポリビニルアルコールフィルム)を基準にして搬送方向に3.7倍に延伸した(染色工程)。次いで、染色したポリビニルアルコールフィルムを、40℃の架橋浴(ホウ酸濃度が3.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が3.0重量%、硫酸亜鉛が3.6重量%(亜鉛イオン濃度が1.5重量%)である水溶液)中で20秒間浸漬して元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に4.2倍まで延伸した(架橋工程)。さらに、得られたポリビニルアルコールフィルムを、65℃の延伸浴(ホウ酸濃度が4.0重量%、ヨウ化カリウム濃度が5.0重量%、硫酸亜鉛濃度が5.0重量%(亜鉛イオン濃度が2.0重量%)である水溶液)中で50秒間浸漬して元のポリビニルアルコールフィルムを基準にして搬送方向に6.0倍まで延伸した(延伸工程)後、20℃の洗浄浴(ヨウ化カリウム濃度が3.0重量%である水溶液)中で5秒間浸漬した(洗浄工程)。洗浄したポリビニルアルコールフィルムを、
図2に示すようなロールの配置(ロールの全数が10個;第3ロール中、最大の抱き角が43°)を有するオーブンを用い、18℃で2分間乾燥して偏光子を作製した。ポリビニルアルコールフィルムの第3ロールに対する接触距離と、ポリビニルアルコールフィルムの全搬送距離との比(接触距離/全搬送距離)が0.09であった。また、オーブン内の複数のロールにおけるロール間の最大距離(L
MAX)と、乾燥工程前の前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの幅(W
1)との比(L
MAX/W
1)が0.20であった。得られた偏光子の厚みは12μmであり、偏光子の水分率は17.6重量%であり、W
2/W
1は0.97であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。
【0089】
<実施例4>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
偏光子の作製において、乾燥工程での乾燥温度を25℃にしたこと以外は、実施例3と同様の操作にて、偏光子を作製した。得られた偏光子の厚みは12μmであり、偏光子の水分率は14.5重量%であり、W
2/W
1は0.95であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。
【0090】
<実施例5>
偏光子の作製において、乾燥工程で
図5に示すようなロールの配置(ロールの全数が8個;第3ロール中、最大の抱き角が88°)を有するオーブンを用い、28℃で3分間乾燥して偏光子を作製したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を作製した。ポリビニルアルコールフィルムの第3ロールに対する接触距離と、ポリビニルアルコールフィルムの全搬送距離との比(接触距離/全搬送距離)が0.09であった。得られた偏光子の厚みは18μmであり、偏光子の水分率は15.0重量%であり、W
2/W
1は0.92であった。また、オーブン内の複数のロールにおけるロール間の最大距離(L
MAX)と、乾燥工程前の前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの幅(W
1)との比(L
MAX/W
1)が0.82であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。
【0091】
<比較例1>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
偏光子の作製において、乾燥工程での乾燥温度を45℃にしたこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を作製した。得られた偏光子の厚みは17μmであり、偏光子の水分率は12.5重量%であり、W
2/W
1は0.91であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。
【0092】
<比較例2>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
偏光子の作製において、乾燥工程での乾燥温度を17℃にしたこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を作製した。得られた偏光子の厚みは18μmであり、偏光子の水分率は19.1重量%であり、W
2/W
1は0.98であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。
【0093】
<比較例3>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
偏光子の作製において、乾燥工程で
図3に示すようなロールの配置(ロールの全数が18個;第3ロール中、最大の抱き角が176°)を有するオーブンを用い、28℃で5分間乾燥して偏光子を作製したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を作製した。また、オーブン内の複数のロールにおけるロール間の最大距離(L
MAX)と、乾燥工程前の前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの幅(W
1)との比(L
MAX/W
1)が0.82であった。得られた偏光子の厚みは17μmであり、偏光子の水分率は14.3重量%であり、W
2/W
1は0.84であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。なお、ポリビニルアルコールフィルムの第3ロールに対する接触距離と、ポリビニルアルコールフィルムの全搬送距離との比(接触距離/全搬送距離)が0.13であった。
【0094】
<比較例4>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
偏光子の作製において、乾燥工程で
図4に示すようなロールの配置(ロールの全数が6個;第3ロール中、最大の抱き角が134°)を有するオーブンを用い、31℃で3分間乾燥して偏光子を作製したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を作製した。得られた偏光子の厚みは17μmであり、偏光子の水分率は14.3重量%であり、W
2/W
1は0.88であった。また、オーブン内の複数のロールにおけるロール間の最大距離(L
MAX)と、乾燥工程前の前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの幅(W
1)との比(L
MAX/W
1)が0.98であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。なお、ポリビニルアルコールフィルムの第3ロールに対する接触距離と、ポリビニルアルコールフィルムの全搬送距離との比(接触距離/全搬送距離)が0.08であった。
【0095】
<比較例5>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
偏光子の作製において、乾燥工程でロールを有しないオーブンにて、25℃で2分間乾燥したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を作製した。得られた偏光子の厚みは18μmであり、偏光子の水分率は17.4重量%であり、W
2/W
1は0.81であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。
【0096】
<比較例6>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
偏光子の作製において、架橋浴および延伸浴中に硫酸亜鉛を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を作製した。得られた偏光子の厚みは18μmであり、偏光子の水分率は17.2重量%であり、W
2/W
1は0.96であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。
【0097】
<比較例7>
<偏光子、偏光フィルム、疑似画像表示装置の作製>
平均重合度が2,700、ケン化度が99.9モル%、厚みが75μm、幅が2600mmであるポリビニルアルコールフィルムを用意し、染色浴の濃度を、ヨウ素濃度が0.02重量%、ヨウ化カリウム濃度が0.2重量%に調整し、乾燥工程で
図3に示すようなロールの配置(ロールの全数が18個;第3ロール中、最大の抱き角が176°)を有するオーブンを用い、45℃で5分間乾燥して偏光子を作製したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、偏光子を作製した。また、オーブン内の複数のロールにおけるロール間の最大距離(L
MAX)と、乾燥工程前の前記亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムの幅(W
1)との比(L
MAX/W
1)が0.82であった。得られた偏光子の厚みは28μmであり、偏光子の水分率は14.5重量%であり、W
2/W
1は0.86であった。得られた偏光子を用い、実施例1と同様な操作にて、偏光フィルム、疑似画像表示装置を作製した。
【0098】
上記で得られた実施例2〜5および比較例1〜7の偏光子および疑似画像表示装置を用い、上記の[外観異常(偏光ムラ)の評価]、[偏光子の折れの評価]および[加熱耐久性の評価]における評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも、染色工程、架橋工程、および延伸工程を施した後に、乾燥工程を施して得られる偏光子の製造方法であって、少なくとも1つの処理浴は、亜鉛イオンを含有し、前記乾燥工程は、亜鉛を含有するポリビニルアルコール系フィルムを複数のロールにより搬送しながら乾燥させて、厚さが20μm以下であり、かつ水分率が13重量%以上19重量%以下である偏光子を製造する工程であり、前記複数のロールは、最上流側に設けられた第1ロールと最下流側に設けられた第2ロールの間に設けられた1つ以上の第3ロールを含み、前記1つ以上の第3ロールのうち、少なくとも1つのロールは、当該ロールと前記ポリビニルアルコール系フィルムとの抱き角が90°以下である偏光子の製造方法。当該製造方法は、乾燥工程で発生する外観異常(偏光ムラ)および折れが抑制され、かつ加熱耐久性を有する薄型の偏光子が得られる。