特許第6772406号(P6772406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772406
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】口部天面の検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/90 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   G01N21/90 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-255956(P2015-255956)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120188(P2017-120188A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014661
【氏名又は名称】キリンテクノシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 武敏
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0039640(US,A1)
【文献】 特開2014−203032(JP,A)
【文献】 特開平08−122276(JP,A)
【文献】 特開2014−190811(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0126060(US,A1)
【文献】 特開昭61−234305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の口部の天面における天面だれを含んだ不良箇所の有無を検査する検査装置であって、
前記天面を当該天面と直交する方向から撮影するように設けられた撮影手段と、前記天面に対して当該天面と直交する光軸を有する照明光を照射するように設けられた照明手段とを備え、
前記照明手段は、平行光束の照明光を射出する光源と、前記光源と前記天面との間に介在し、前記光源からの照明光をその照明範囲が前記光軸から半径方向外側に広がるように拡散させる拡散手段とを有し、前記拡散手段にて拡散された照明光が前記天面に照射され、かつ前記拡散手段にて拡散された照明光以外の照明光は前記天面に照射されないように構成されている口部天面の検査装置。
【請求項2】
前記拡散手段として、多数の微小なレンズ要素がランダムに配置されることにより前記光軸を中心とした所定の範囲内で前記平行光束の照明光を拡散させるレンズタイプの拡散板が用いられている請求項1に記載の口部天面の検査装置。
【請求項3】
前記レンズタイプの拡散板は、前記光軸の回りに対称な照度分布が得られるように前記平行光束の照明光を拡散させる請求項2に記載の口部天面の検査装置。
【請求項4】
成形体の口部の天面における天面だれを含んだ不良箇所の有無を検査する検査方法であって、
前記天面に対して当該天面と直交する光軸を有する照明光を照射する手順と、照明光が照射された天面を当該天面と直交する方向から撮影する手順とを含み、
前記照射する手順では、光源から射出された平行光束の照明光を、前記光源と前記天面との間に介在する拡散手段にてその照明範囲が前記光軸から半径方向外側に広がるように拡散させ、前記拡散手段にて拡散された照明光を前記天面に照射し、かつ前記拡散手段にて拡散された照明光以外の照明光は前記天面に照射しない口部天面の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形ボトルやそのプリフォームといった成形体における口部の天面を検査する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形ボトル等の成形体に設けられた口部の天面を検査する装置として、照明装置から射出された平行光束の照明光をその光軸が天面と直交するように導いて天面を照明しつつ、その天面をこれと直交する方向から撮影し、得られた画像に基づいて天面を検査する検査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−48139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天面を平行光束の照明光で照明する従来の検査装置では、天面の照度を均一化して精度が高い検査を行なうことが可能である。しかしながら、照明光の直進性が高いため、金型の形状誤差等に起因して天面の一部に許容範囲内の形状誤差が存在する場合でも、その部分で反射光が乱れ、当該部分が暗部として撮影されることがある。口部天面の検査では、例えば天面の外周の一部に丸みを帯びたいわゆる天面だれと呼ばれる不良箇所が存在するか否かといった検査が行われるが、そのような不良箇所も暗部として撮影されるため、得られた画像中の暗部が不良箇所なのか許容範囲内の誤差を伴う箇所なのかを見分けることが困難となり、検査精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は成形体の口部の天面を精度よく検査することが可能な検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る口部天面の検査装置(1)は、成形体(2)の口部(3)の天面(3a)を当該天面と直交する方向から撮影するように設けられた撮影手段(5)と、前記天面に対して当該天面と直交する光軸を有する照明光を照射するように設けられた照明手段(6)とを備え、前記照明手段は、平行光束の照明光を射出する光源(10)と、前記光源と前記天面との間に介在し、前記光源からの照明光を拡散させる拡散手段(11)とを有し、前記拡散手段にて拡散された照明光が前記天面に照射されるように構成されたものである。
【0007】
上記態様の検査装置においては、照明手段の光源から平行光束の照明光を射出させ、その照明光を拡散手段により拡散させているので、照明光の拡散範囲を適切に設定することにより、照明光に適度の直進性と拡散性とを与えつつ口部の天面に均一な照明光を導くことができる。したがって、口部の天面における形状誤差部分に関しては、照明光の拡散性を利用して撮像手段に十分な反射光を導いて当該部分の画像中における明度を増加させ、その一方、天面だれのような不良箇所に関しては、照明光の直進性を利用してその部分を画像中に暗部として映し出すことができる。これにより、天面の検査精度を向上させることができる。
【0008】
上記態様に係る検査装置においては、前記拡散手段として、多数の微小なレンズ要素がランダムに配置されることにより前記光軸を中心とした所定の範囲内で前記平行光束の照明光を拡散させるレンズタイプの拡散板が用いられてもよい。この形態によれば、拡散板を通過した照明光の照度の均一性を確保しつつ、適度な拡散性を照明光に付与することができる。
【0009】
さらに、前記レンズタイプの拡散板は、前記光軸の回りに対称な照度分布が得られるように前記平行光束の照明光を拡散させるものでもよい。これによれば、照明光の周方向における照度のばらつきを抑えて、天面をその全周に亘ってより均一な照度で照明することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る口部天面の検査方法は、成形体(2)の口部(3)の天面(3a)に対して当該天面と直交する光軸を有する照明光を照射する手順と、照明光が照射された天面を当該天面と直交する方向から撮影する手順とを含み、前記照明する手順では、光源(10)から射出された平行光束の照明光を、前記光源と前記天面との間に介在する拡散手段(11)にて拡散させ、前記拡散手段にて拡散された照明光を前記天面に照射するものである。
【0011】
上記態様の検査方法によれば、光源から平行光束の照明光を射出させ、その照明光を拡散手段により拡散させているので、照明光の拡散範囲を適切に設定することにより、照明光に適度の直進性と拡散性とを与えつつ口部の天面に均一な照明光を導くことができる。それにより、上記態様の検査装置と同様に、口部の天面における形状誤差部分に関しては、当該部分の画像中における明度を増加させ、その一方、天面だれのような不良箇所に関しては、その部分を画像中に暗部として映し出すことにより、天面の検査精度を向上させることができる。
【0012】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
以上に説明したように、本発明の検査装置及び検査方法においては、照明手段の光源から一旦平行光束の照明光を射出させ、その照明光を拡散手段により拡散させているので、適度の直進性と拡散性とが与えられた均一な照明光を天面に導き、それにより天面の検査精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一形態に係る検査装置の構成を示す図。
図2】拡散板の拡散特性の一例を示す図。
図3】配光角を説明するための図。
図4】本発明の一形態に係る検査装置にて取得された天面の画像の一例を示す図。
図5】拡散板が省略された比較例に係る検査装置にて取得された天面の画像の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図3を参照して本発明の一形態に係る口部天面の検査装置を説明する。図1に示すように、検査装置1は、成形体の一例としてのプリフォーム2における口部3の天面3aを検査するためのものである。プリフォーム2はPETボトル等の樹脂製ボトルをブロー成形するための原型となるべきものであるが、口部3はねじ部やサポートリング等が成形されてボトルと同形同大である。プリフォーム2の天面3aは、中心線CLと直交するように形成される。検査装置1は、その天面3aの外周に上述した天面だれが生じているか否かを検査する。
【0016】
検査装置1は、撮影手段としてのカメラ5と、照明手段としての照明装置6とを備えている。カメラ5は、その撮影光軸AXを口部3の中心線CLと一致させた状態で天面3aの真上に配置されている。したがって、カメラ5は天面3aをこれと直交する方向から撮影する。カメラ5は、CCDやCMOSのような固体撮像素子を含み、その固体撮像素子を利用して天面3aの光学的画像を画像信号に変換して出力する。
【0017】
照明装置6は、照明光を射出する光源10と、その光源10と天面3aとの間に介在して光源10からの照明光を拡散させる拡散手段としての拡散板11と、拡散板11を通過した照明光を、その光軸がカメラ5の撮影光軸AX及びプリフォーム2の口部3の中心線CLと一致するようにして天面3a側に反射させるハーフミラー12とを備えている。カメラ5には、天面3a上で反射してハーフミラー12を透過した光束が撮影光束として導かれる。
【0018】
照明装置6の光源10には、平行光束の照明光を射出するコリメートライトが用いられている。光源10から射出される照明光の光束は断面円形である。照明光の波長域は適宜でよいが、一例として可視域の白色光である。光源10は、その光軸がプリフォーム2の中心線CLと直交する方向を向くように配置されている。拡散板11は、光源10から射出された平行光束の照明光を、その光軸を中心とした所定の範囲内で拡散させる。ハーフミラー12は、拡散板11を通過した照明光を天面3aに向けて90°の角度で反射させるように配置されている。ハーフミラー12の反射率と透過率との比率は一例として1対1である。
【0019】
拡散板11には、多数の微小なレンズ要素がランダムに配置されることにより、入射光をその光軸を中心とした所定の範囲内で拡散させる構造の拡散板が用いられている。以下、図2及び図3を参照して拡散板11の拡散特性を説明する。図2は、光源10から射出された照明光の平行光束LFが拡散板11にて拡散される様子を示している。拡散板11を透過した照明光を光軸LXと直交する仮想平面P上に投影したと仮定した場合、その仮想平面Pに対して照明光は光軸LXを中心とした円CRの範囲内に照射される。つまり、拡散板11は、照明光の光束LFを断面円形に整形しつつ拡散させるように構成されている。このような拡散板11は、レンズタイプの拡散板として市場に提供されており、本形態の検査装置1でもそのような市販の拡散板を拡散板11として適宜に使用することができる。例えば、株式会社オプティカルソリューションズがレンズ拡散板の名称で販売するレンズ拡散板を拡散板11として利用することができる。
【0020】
図3は、拡散板11によって拡散された照明光の照度分布を示している。例えば、図2の仮想平面Pを照射面とし、その照射面Pと光軸LXとの交点上の照度を1.0として照度を横軸に、拡散板11上における光軸LXの位置と照射面P上の任意の点とを結ぶ線分が光軸LXとなす角度αを縦軸に取れば、照明光の照度は光軸LX上で最大で、角度αが増加するにつれて低下する。さらに、その照度分布は光軸LXに関して対称である。照度が半分、すなわち横軸上で0.5まで低下したときの角度αxを2倍した値が拡散板11の拡散角θ(=2αx)であり、拡散板11の拡散範囲は、その拡散角θにて特定することができる。検査装置1において、照射面Pに照射される照明光の外形輪郭は円形CRであり、拡散角θは光軸LXの回りに一定である。したがって、拡散板11を通過した照明光は光軸LXの回りに対称な照度分布を有している。つまり、拡散板11を通過した照明光は、光軸LX上で最大照度を示し、光軸LXから離れるに従って照度が漸次減少する照度分布を有し、かつその照度の変化は光軸LXの回りに対称である。それにより、天面3aを全周に亘って均一な照度で照明することができる。
【0021】
図1の検査装置1において、拡散板11の拡散角θは、拡散板11から天面3aまでの光路長等に応じて適宜に設定されてよいが、天面3aの全面にて照明光の照度が十分に均一となるように拡散角θを選択することが望ましい。
【0022】
図1に戻って、検査装置1にはさらに処理ユニット7が設けられている。検査装置1における天面の検査では、照明装置6からの照明光が天面3aに照射され(照射する手順)、その照明光が照射された天面3aの画像がカメラ5にて撮影される(撮影する手順)。処理ユニット7は、カメラ5から画像信号を受け取り、その画像信号によって表現される電子的な画像に対して所定の画像処理を施した上で、天面3aにおける天面だれの有無を判別する。なお、ここでは天面だれの有無を検査するものとしたが、検査装置1による検査は、天面だれに代えて、又は加えて、他の不良箇所の有無を判別するようにして実施されてもよい。
【0023】
以上の検査装置1によれば、光源10から平行光束の照明光を射出させた後、これを拡散板11により所定範囲内に拡散させてから天面3aに導くようにしたので、照明光の拡散角θを適切に設定することにより、照明光に適度の直進性と拡散性とを与えつつ口部3の天面3aに均一な照明光を導くことができる。したがって、口部3の天面3aに許容範囲内の形状誤差が存在していても、照明光の拡散性を利用してその部分からカメラ5に十分な反射光を導いて当該部分の画像中における明度を増加させることができる。一方、天面だれのような不良箇所では、照明光の直進性を利用してその部分からの反射光に乱れを生じさせ、それにより不良箇所を画像中に暗部として映し出すことができる。これにより、天面の検査精度を向上させることができる。
【0024】
本発明は上述した形態に限定されることなく、種々の変更又は変形が施された形態にて実施されてよい。例えば、図1ではハーフミラー12にて照明光を反射させて天面3aに導き、ハーフミラー12を透過した光束をカメラ5に入射させているが、ハーフミラー12にて反射した光束をカメラ5に入射させ、光源10及び拡散板11を天面3aの真上に配置してハーフミラー12を透過した照明光を天面3aに導いてもよい。検査対象の成形体はプリフォームの天面に限定されず、成形済のボトルの天面が検査対象とされてもよい。その他にも各種の成形体の口部天面が検査対象とされてよい。
【0025】
上述した検査装置1を用いてプリフォーム2の天面3aを撮影した画像の一例を図4に示し、その比較例として、図1の検査装置1から拡散板11を省略した構成にて天面3aを撮影した画像の一例を図5に示す。ただし、撮影に使用したプリフォームは天面だれ等の欠陥がない良品である。図5の画像では、丸印で囲んだ箇所に暗部が生じている。その暗部は、口部の外周に形成されるねじ部の開始位置である。このような暗部が生じると、プリフォームが良品であるにも関わらず、天面だれが生じた不良品として誤って判定されるおそれがある。これに対して、同一のプリーフォームを本発明に係る検査装置で撮影した図4の画像では、丸印で囲んだ箇所も他の部分と同等の明部として映し出されている。したがって、良品を不良品として誤って判定するおそれを排除することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 検査装置
2 プリフォーム(成形体)
3 口部
3a 天面
5 カメラ(撮影手段)
6 照明装置(照明手段)
10 光源
11 拡散板(拡散手段)
θ 拡散角
図1
図2
図3
図4
図5