特許第6772421号(P6772421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6772421
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】熱硬化性塗料組成物及び塗装物品
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/06 20060101AFI20201012BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20201012BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20201012BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20201012BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20201012BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20201012BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20201012BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20201012BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C09D201/06
   C09D133/00
   C09D167/00
   C09D163/00
   C09D175/04
   C09D7/63
   C09D7/20
   C09D5/02
   C09D5/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-537675(P2020-537675)
(86)(22)【出願日】2020年2月5日
(86)【国際出願番号】JP2020004363
【審査請求日】2020年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2019-33925(P2019-33925)
(32)【優先日】2019年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 睦
(72)【発明者】
【氏名】山下 文男
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−141598(JP,A)
【文献】 特開2011−026320(JP,A)
【文献】 特開平05−051472(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/096780(WO,A1)
【文献】 特開2016−138202(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/047195(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)、ホスファゼン化合物(C)及び溶媒(D)を含有する熱硬化性塗料組成物であって、
前記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート硬化剤及び/又はブロック化ポリイソシアネート硬化剤である熱硬化性塗料組成物。
【請求項2】
前記ホスファゼン化合物(C)の数平均分子量が、400以上である請求項1に記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項3】
前記ホスファゼン化合物(C)の含有量が、前記熱硬化性塗料組成物の樹脂固形分100質量部を基準として、0.1質量部以上30質量部以下である請求項1又は2に記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項4】
前記水酸基含有樹脂(A)が、アクリル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、及びエポキシ樹脂(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1から3のいずれか一項に記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項5】
前記溶媒(D)が、水を70質量%以上含有する請求項1から4のいずれか一項に記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項6】
前記水酸基含有樹脂(A)が、水分散性又は水溶解性の水酸基含有樹脂である請求項5に記載の熱硬化性塗料組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性塗料組成物を被塗物に塗装して得られる塗装物品。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性塗料組成物を被塗物に塗装し、次いで上塗り塗料組成物を塗装して得られる複層塗膜を有する塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性塗料組成物及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート硬化剤は塗料等の硬化剤の一種であり、常温で活性のあるポリイソシアネート、常温において不活性化されたブロック化ポリイソシアネートなどが広く用いられている。
イソシアネート硬化剤の硬化反応を促進させる触媒として、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物が一般的に用いられている(特許文献1及び特許文献2参照)。
しかし、有機錫化合物は、その触媒性能は非常に高いものの、近年その毒性が問題となっているため、有機錫化合物に代わる触媒が求められている。その代替品として、ビスマス系、または亜鉛系の触媒が開発されている(特許文献3及び特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−307800号公報
【特許文献2】特開2005−139273号公報
【特許文献3】特開2000−290542号公報
【特許文献4】特開2012−152725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱硬化性塗料組成物は、金属触媒を含むため、環境面の問題がある。また、ビスマス系触媒及び亜鉛系触媒は、高価である、触媒効果が不十分である、又は塗料中で不安定であるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされてものであり、実質的に金属触媒を用いることなく、塗料安定性、塗膜硬化性、及び耐水性に優れる熱硬化性塗料組成物及びその熱硬化性塗料組成物が塗装された塗装物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水酸基含有樹脂、硬化剤としてのポリイソシアネート硬化剤及び/又はブロック化ポリイソシアネート硬化剤、ホスファゼン化合物、並びに溶媒を含有する熱硬化性塗料組成物によって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の熱硬化性塗料組成物及び塗料組成物が塗装された塗装物品を提供するものである。
【0007】
本発明の熱硬化性塗料組成物は、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)、ホスファゼン化合物(C)及び溶媒(D)を含有する熱硬化性塗料組成物であって、硬化剤(B)が、ポリイソシアネート硬化剤及び/又はブロック化ポリイソシアネート硬化剤である。
【0008】
ホスファゼン化合物(C)の重合平均分子量は、400以上であることが好ましい。
【0009】
ホスファゼン化合物(C)の含有量は、熱硬化性塗料組成物の樹脂固形分100質量部を基準として、0.01質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
【0010】
水酸基含有樹脂(A)は、アクリル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、及びエポキシ樹脂(A3)からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0011】
溶媒(D)は、水を70質量%以上含有することが好ましい。
【0012】
水酸基含有樹脂(A)は、水分散性又は水溶解性の水酸基含有樹脂であることが好ましい。
【0013】
本発明の塗装物品は、本発明の熱硬化性塗料組成物を被塗物に塗装して得られるものである。
【0014】
また、本発明の塗装物品は、本発明の熱硬化性塗料組成物を被塗物に塗装し、次いで上塗り塗料組成物を塗装して得られる複層塗膜を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱硬化性塗料組成物は、実質的に金属触媒を使うことなく、塗料安定性、塗膜硬化性、及び耐水性に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)、ホスファゼン化合物(C)及び溶媒(D)を含有する熱硬化性塗料組成物であって、記硬化剤(B)が、ポリイソシアネート硬化剤及び/又はブロック化ポリイソシアネート硬化剤である熱硬化性塗料組成物である。
以下、本発明について詳細に述べる。
【0017】
<1.水酸基含有樹脂(A)>
本発明の熱硬化性塗料組成物に用いることができる水酸基含有樹脂(A)としては、水酸基を有し、硬化剤(B)と架橋できる樹脂であれば、公知のものを特に制限なく使用できる。
ポリイソシアネート硬化剤及びブロック化ポリイソシアネート硬化剤と架橋できる水酸基以外の反応性官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、活性メチレン基等の活性水素を有する反応性官能基の他、エポキシ基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、これらは水酸基と併用して用いることができる。
【0018】
水酸基含有樹脂(A)の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、アクリル樹脂(A1)、ポリエステル樹脂(A2)、及びエポキシ樹脂(A3)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
水酸基含有樹脂(A)は、熱硬化性塗料組成物中で分散状態(例えば、水性溶媒中でエマルション状態)又は溶解状態であることが好ましい。また、分散状態の場合、架橋樹脂粒子であってもよい。
【0019】
<1−1.アクリル樹脂(A1)>
本発明の熱硬化性塗料組成物に用いることができるアクリル樹脂(A1)は、水酸基を有する樹脂であり、アクリルモノマーをラジカル共重合することによって得ることができる。
【0020】
上記アクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、又は2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加生成物(例えばダイセル株式会社製の商品名としてプラクセルFA−2、及びFM−3)などの水酸基含有アクリルモノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジ−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
アクリル樹脂(A1)は、上記のモノマーを公知の方法によりラジカル共重合反応することで製造することができる。
なお、アクリル樹脂(A1)の水酸基価は、通常0.1〜300mgKOH/gの範囲内であり、好ましくは10〜200mgKOH/gの範囲内である。アクリル樹脂(A1)の重量平均分子量は、通常1,000〜100,000の範囲内であり、好ましくは2,000〜30,000の範囲内である。
【0022】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。なお、後述のホスファゼン化合物(C)の分子量測定では、移動相として0.5質量%のトリエタノールアミンを添加したテトラヒドロフランを使用した。
【0023】
<1−2.ポリエステル樹脂(A2)>
本発明の熱硬化性塗料組成物に用いることができるポリエステル樹脂(A2)は、水酸基を有する樹脂であり、酸成分とアルコール成分をエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができる。
【0024】
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を特に制限なく使用することができる。上記酸成分としては、例えば、脂環族多塩基酸、脂肪族多塩基酸、芳香族多塩基酸、芳香族モノカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、これらの酸の低級アルキルエステル化物等を使用することができる。
脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造(主として4〜6員環)と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、この化合物の酸無水物及びこの化合物のエステル化物である。
脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、この化合物の酸無水物及びこの化合物のエステル化物である。
芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、この芳香族化合物の酸無水物及びこの芳香族化合物のエステル化物である。
【0025】
上記アルコール成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、アルコール成分として通常使用される化合物を特に制限なく使用することができ、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ジオールなどの2価アルコール及び3価以上の多価アルコールを含むものが好ましい。
【0026】
上記ポリエステル樹脂(A2)は、上記酸成分とアルコール成分を公知の方法で反応させることにより製造することができる。
また、上記ポリエステル樹脂(A2)は、ポリエステル樹脂(A2)の調製中、もしくはエステル化反応後及び/又はエステル交換反応後に、脂肪酸、油脂、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物等で変性することもできる。
ポリエステル樹脂(A2)の数平均分子量としては、仕上り性の観点から、通常1,000〜20,000であり、好ましくは1,050〜10,000、さらに好ましくは1,100〜5,000の範囲内である。
また、ポリエステル樹脂(A2)の水酸基価としては、得られる塗膜の硬化性の観点から、通常20〜300mgKOH/gであり、好ましくは30〜250mgKOH/g、さらに好ましくは40〜180mgKOH/gの範囲内である。
【0027】
<1−3.エポキシ樹脂(A3)>
本発明の熱硬化性塗料組成物に用いることができるエポキシ樹脂(A3)は、水酸基を有する樹脂であり、エポキシ樹脂(A3−1)と変性剤(A3−2)とを反応させることで得ることができる。
【0028】
エポキシ樹脂(A3)の原料として用いることができるエポキシ樹脂(A3−1)は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、少なくとも180、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも90、好ましくは180〜2,500、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適している。かかるエポキシ樹脂(A3−1)としては、例えば、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン(例えば、エピクロルヒドリン等)との反応によって得られるものを使用することができる。
【0029】
上記エポキシ樹脂(A3−1)の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
【0030】
また、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂(A3−1)としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式の樹脂が好適である。
【0031】
【0032】
ここで、n=0〜8で示されるものが好適である。
【0033】
かかるエポキシ樹脂(A3−1)の市販品としては、例えば、三菱化学(株)からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0034】
エポキシ樹脂(A3)の原料として用いることができる変性剤(A3−2)としては、上記エポキシ樹脂(A3−1)との反応性を有する成分であれば特に限定されず、例えば、多価アルコール、一価アルコール、酸性化合物、フェノール類、アミン化合物、ラクトン類、イソシアネート化合物、キシレンホルムアルデヒド化合物などが挙げられる。
【0035】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,3−プロパンシオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなどの二価アルコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの三価アルコール;ペンタエリスリトールなどの四価アルコール;ポリエステルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。
【0036】
上記一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0037】
上記酸性化合物としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、アクリル酸、オレイン酸、グリコール酸、乳酸、安息香酸、没食子酸、脂肪酸、二塩基酸などの酸性化合物などが挙げられる。
【0038】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、パラ−tert−ブチルフェノール、ノニルフェノール、カテコール、レゾルシノール、4−tert−ブチルカテコールなどが挙げられる。
【0039】
上記アミン化合物としては、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個含有するアミン化合物であれば特に制限なく用いられ、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのアルキレンイミン;ピペラジン、モルホリン、ピラジンなどの環状アミンなどが挙げられる。また、これら上記のアミンと、1級アミンをケチミン化したアミンとを併せて用いることもできる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
上記エポキシ樹脂(A3)は、上記エポキシ樹脂(A3−1)、変性剤(A3−2)を公知の方法で反応させることにより製造することができる。
【0041】
また、エポキシ樹脂(A3)の数平均分子量は、塗料安定性、仕上がり性、防食性などの観点から、通常1,000〜50,000の範囲内であり、好ましくは1,300〜20,000の範囲内であり、より好ましくは1,600〜10,000の範囲内である。エポキシ樹脂(A3)の水酸基価は、得られる塗膜の硬化性の観点から、通常10〜300mgKOH/gであり、好ましくは20〜250mgKOH/g、さらに好ましくは30〜200mgKOH/gの範囲内である。
【0042】
<2.硬化剤(B)>
本発明の熱硬化性塗料組成物に用いることができる硬化剤(B)は、ポリイソシアネート硬化剤(B1)及び/又はブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B2)である。
ポリイソシアネート硬化剤(B1)は、公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0043】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B2)は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物である。
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤で使用されるポリイソシアネート化合物は、公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、上記(B1)で挙げた化合物等を使用することができる。
【0044】
イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加する化合物である。イソシアネートブロック剤が付加することで生成するブロック化ポリイソシアネート化合物は、常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約80〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生することが望ましい。
【0045】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B2)で使用されるイソシアネートブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系化合物;ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物;ジメチルピラゾールなどのピラゾール系化合物などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、解離温度と塗料安定性の観点から、アルコール系化合物、ピラゾール系化合物、オキシム系化合物、及びラクタム系化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、アルコール系化合物が特に好ましい。
【0046】
<3.ホスファゼン化合物(C)>
本発明で用いるホスファゼン化合物(C)は、ホスファゼン単位を分子中に有する化合物であり、モノマー、オリゴマー、ポリマー(樹脂)等を含む。なお、本発明において、ホスファゼン単位とは、N=Pの結合単位を表す。ホスファゼン単位は、複数つなげることも可能であり、一般的にホスファゼン単位が多くなるほど化合物の塩基性は高くなることが知られている。
【0047】
ホスファゼン化合物は、強塩基であることからシロキサン架橋反応等の触媒に用いられることもあるが、本発明の熱硬化性塗料組成物は、NCO−OH架橋系であるため、シロキサン架橋反応は対象としていない。
【0048】
本発明で用いるホスファゼン化合物(C)はNCO−OH架橋反応の強塩基触媒として作用する。ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B2)は、熱によってブロック剤が解離する。これにより遊離のイソシアネート基が再生し、水酸基含有樹脂(A)とイソシアネート基とが反応して架橋反応が進行する。ホスファゼン化合物(C)は強塩基であり、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B2)の解離触媒、及び水酸基含有樹脂(A)とイソシアネート基との反応触媒として機能すると考えられる。よって本発明の熱硬化性塗料組成物は従来のような金属触媒を使用せずとも、NCO−OH架橋反応が進行する。
【0049】
本発明の熱硬化性塗料組成物で用いるホスファゼン化合物(C)としては、ホスファゼン単位を有する化合物を特に制限なく使用することができ、具体的には、例えば、tert−ブチルイミノ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン及びその誘導体、tert−ブチルイミノ−トリ(ピロリジノ)ホスホラン及びその誘導体、1−tert−オクチル−4,4,4−トリス(ジメチルアミノ)−2,2−ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]−2λ,4λ−カテナジ(ホスファゼン)及びその誘導体等が挙げられる。
【0050】
本発明の熱硬化性塗料組成物で用いるホスファゼン化合物(C)は、水酸基を含んでもよい。水酸基を含む場合、水酸基が硬化剤(B)と架橋反応するため、塗膜の耐水性が向上する。
【0051】
本発明の熱硬化性塗料組成物で用いるホスファゼン化合物(C)は、塗膜性能(耐水性など)の観点から、数平均分子量が400〜1,000,000であることが好ましい。さらに好ましくは600〜500,000であり、特に好ましくは1,000〜100,000の範囲内である。
【0052】
本発明の熱硬化性塗料組成物で用いるホスファゼン化合物(C)としては、触媒性能、及び塗膜性能(耐水性など)の観点から、下記一般式(1)で示される有機基を分子中に1個以上有するホスファゼン化合物(C1)が好ましい。
【0053】
【化1】
【0054】
上記一般式(1)において、★★は結合手又は水素原子である。Xは炭素数1〜18の2価の有機基であり、有機基は酸素原子及び/又は窒素原子を含んでもよい。Rは水素原子又は炭素数1〜18の有機基を示し、有機基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。A、A及びAは1価の有機基を示し、有機基は炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよく、各々独立していても同一であってもよく、二種以上が連結して環状構造を形成していてもよい。
【0055】
上記一般式(1)で示される有機基を分子中に1個以上有するホスファゼン化合物(C1)は、化合物の安定性、触媒性能、及び塗膜性能(耐水性など)の観点から、一般式(1)におけるA、A及びAが、それぞれ少なくとも一つ以上の窒素原子を含有する有機基であり、有機基に隣接するリン原子と有機基内の窒素原子とが単結合していることが好ましい。
【0056】
上記一般式(1)で示される有機基を分子中に1個以上有するホスファゼン化合物(C1)は、A、A及び/又はAが下記式(2)で示される有機基であることが好ましい。
【0057】
【化2】
【0058】
上記式(2)において、★は結合手である。R〜Rは炭素数1〜12の有機基を示し、有機基は酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてもよく、各々独立していても同一であってもよく、二種以上が連結して環状構造を形成していてもよい。nは0以上10以下の整数を表す。
【0059】
ホスファゼン化合物(C1)は、ホスファゼン単位が多いほど塩基性が増し、塗料組成物に適用した際の触媒効果は向上するが、一方で塗料の安定性及び塗膜性能(耐水性など)は低下する。したがって、塗料の安定性及び塗膜性能(耐水性など)の観点から、ホスファゼン化合物(C1)は、上記式(2)におけるnが、0以上7以下であることが好ましく、0以上4以下であることがより好ましく、0または1であることがさらに好ましく、0であることが特に好ましい。nが0である場合、上記式(2)は下記式(3)で表される。
【0060】
【化3】
【0061】
上記式(3)において、★、R及びRは上記式(2)のものと同義である。
【0062】
上記式(3)で表される有機基としては、具体的には、例えば、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−プロピルアミノ基、N−メチル−N−ブチルアミノ基、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)アミノ基などのジアルキルアミノ基;ピロリル基、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、N−アルキルピペラジノ基などの環状アミノ基などが挙げられる。ホスファゼン化合物(C1)は、化合物自体の安定性、塗料の安定性及び塗膜性能(耐水性など)の観点から、上記一般式(1)のA、A及びAが環状アミノ基であることが特に好ましい。
【0063】
上記一般式(1)で示される有機基を分子中に1個以上有するホスファゼン化合物(C1)は、上記一般式(1)の★★が水素原子であるホスファゼン化合物(C2)と、上記一般式(1)の★★が結合手であり、有機基を分子中に1個以上有するホスファゼン化合物(C3)が挙げられる。それぞれのホスファゼン化合物の製造方法を以下で述べる。
【0064】
<3−1.ホスファゼン化合物(C2)の製造方法>
ホスファゼン化合物(C2)は、上記一般式(1)の★★が水素原子である化合物であり、下記式(1)’で表される。
【0065】
【化4】
【0066】
上記式(1)’において、X、R、A、A及びAは上記一般式(1)のものと同義である。
ホスファゼン化合物(C2)は、五塩化リンと反応性官能基を分子中に1個以上有する任意の有機化合物(A’)とを反応させた後、下記式(6)で表されるジアミン化合物(E)と反応させ、強塩基により脱プロトン化することで製造される。
【0067】
【化5】
【0068】
上記式(6)において、X、Rは上記一般式(1)のものと同義である。
【0069】
五塩化リンと反応性官能基を分子中に1個以上有する任意の有機化合物(A’)とをジクロロメタンの存在下で反応させることで、下記式(7)で表される中間体(α)が製造できる。
【0070】
【化6】
【0071】
上記式(7)において、A、A及びAは上記一般式(1)のものと同義である。
【0072】
反応性官能基を分子中に1個以上有する任意の有機化合物(A’)は、五塩化リンと反応することで、上記式(7)におけるA、A及びAの有機基となる。有機化合物(A’)は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも一種を含み、分子中に1個以上の反応性官能基を有する有機化合物であれば特に制限なく使用できるが、反応性官能基としてアミンを有する有機化合物であることが好ましい。具体的には、例えば、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N−メチル−N−プロピルアミン、N−メチル−N−ブチルアミン、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)アミンなどのジアルキルアミン;ピロール、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、N−アルキルピペラジンなどの環状アミンなどが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。有機化合物(A’)は、ホスファゼン化合物(C2)の安定性、塗料の安定性及び塗膜性能(耐水性など)の観点から、環状アミンであることが特に好ましい。
【0073】
上記中間体(α)に上記式(6)で表されるジアミン化合物(E)を加えると、ジアミン化合物(E)のアミノ基と中間体(α)が反応することで、下記式(8)で表される中間体(β)が製造できる。
【0074】
【化7】
【0075】
上記式(8)において、X、R、A、A及びAは上記式(1)のものと同義である。
上記式(6)のジアミン化合物(E)においてRが水素原子である場合、すなわちジアミン化合物(E)の2つのアミノ基がいずれも1級アミンである場合、中間体(α)と2つのアミノ基が反応して二置換体が生成される可能性が高い。したがって、ジアミン化合物(E)は、1級アミノ基と2級アミノ基を1つずつ有することが好ましい。具体的には、上記式(6)のジアミン化合物(E)において、Rが炭素数1〜18の1価の有機基であることが好ましく、さらに炭素数1〜10の1価の有機基であることが好ましい。ジアミン化合物(E)が1級アミノ基と2級アミノ基の双方を含有する場合、上記中間体(α)はより反応性の高い1級アミノ基と優先的に反応するため、中間体(β)の収率が向上する。
【0076】
上記中間体(β)に強塩基を加え、脱プロトン化することで、上記式(1)’のホスファゼン化合物(C2)を製造することができる。
【0077】
上記一般式(1)’のホスファゼン化合物(C2)は、それ自体でも、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤の解離触媒、及び水酸基含有樹脂とイソシアネート基との反応触媒として使用することができるが、塗膜性能(耐水性など)の観点から、ホスファゼン化合物(C2)と反応性官能基を分子中に1個以上有する化合物とを反応させ、ホスファゼン化合物(C3)とすることが好ましい。
【0078】
<3−2.ホスファゼン化合物(C3)の製造方法>
ホスファゼン化合物(C3)は、上記一般式(1)の★★が結合手であり、有機基を分子中に1個以上有するホスファゼン化合物であり、上記ホスファゼン化合物(C2)のアミノ基と反応性官能基を分子中に1個以上有する化合物(F)とを反応させることで製造される。
反応性官能基を分子中に1個以上有する化合物(F)は、活性水素基と反応する反応性官能基を1個以上有するものであれば、化合物の種類に特に制限は無く、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート化合物等を用いることができる。
【0079】
反応性官能基を分子中に1個以上有する化合物(F)は、塗膜性能(耐水性など)の観点から、数平均分子量が150以上であることが好ましく、150〜1,000,000がより好ましく、400〜500,000がさらに好ましく、800〜100,000が特に好ましい。
【0080】
反応性官能基を分子中に1個以上有する化合物(F)における反応性官能基としては、具体的には、例えば、グリシジル基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、カルボニル基、カルボキシル基などが挙げられるが、中でも、グリシジル基、イソシアネート基、及びブロック化イソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
グリシジル基を含有する化合物とホスファゼン化合物(C2)と反応させると、下記式(4)で表される有機基を有するホスファゼン化合物(C3−1)が製造できる。なお、下記式(4)の有機基は、一部または全部が電離していてもよい。
【0081】
【化8】
【0082】
上記式(4)において、★は結合手である。X、R、A、A及びAは上記一般式(1)のものと同義である。
【0083】
イソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を含有する化合物とホスファゼン化合物(C2)と反応させると、下記式(5)で表される有機基を有するホスファゼン化合物(C3―2)が製造できる。なお、下記式(5)の有機基は、一部または全部が電離していてもよい。
【0084】
【化9】
【0085】
上記式(5)において、★は結合手である。X、R、A、A及びAは上記一般式(1)のものと同義である。
【0086】
<4.溶媒(D)>
本発明の溶媒(D)としては、水や有機溶剤など、公知のものを制限なく使用することができる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、イソブチルメチルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0087】
一方で、溶媒(D)としては、環境面への配慮等から特に水が好ましく、塗料組成物に対して70質量%以上含有することが好ましい。
【0088】
水酸基含有樹脂(A)は、塗料組成物中で分散状態又は溶解状態であることが好ましいため、溶媒(D)に水を用いる場合、水酸基含有樹脂(A)は水分散性又は水溶解性の水酸基含有樹脂であることが好ましい。
【0089】
<5.熱硬化性塗料組成物>
本発明の熱硬化性塗料組成物における水酸基含有樹脂(A)及び硬化剤(B)の配合割合は、仕上がり性、硬化性に優れた塗装物品を得る観点から、塗料組成物の樹脂固形分合計質量を基準にして、成分(A)が、通常10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%であり、成分(B)が、通常10〜60質量%であり、好ましくは15〜55質量%である。上記範囲内であることにより、塗料特性及び塗膜性能に優れる。
【0090】
ホスファゼン化合物(C)の含有量は、硬化性の観点から、ホスファゼン構造部位の質量で換算する場合、塗料組成物の樹脂固形分合計質量を基準にして、通常0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは1〜15質量%の範囲内である。
【0091】
本発明の熱硬化性塗料組成物は、特に限定されるものではないが、例えば、成分(A)〜(D)に加え、必要に応じて、水酸基を含有しない樹脂、顔料分散ペースト、中和剤、界面活性剤、表面調整剤、増粘剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、解離触媒、可塑剤などを含有することができる。
【0092】
上記顔料分散ペーストは、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などの顔料をあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、中和剤、溶媒及び顔料を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理することにより、調製することができる。
【0093】
上記顔料としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩アゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、モノアゾレッド、キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレット等の着色顔料;バリタ粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、マイカ粉などの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛(亜鉛華)等の防錆顔料などを添加することができる。
【0094】
また、イソシアネートブロック剤の解離触媒としては、本願で用いるホスファゼン化合物(C)以外にビスマス系化合物、亜鉛系化合物、チタン系化合物、アミジン系化合物、4級塩系化合物、プロアザホスファトラン系化合物などを好適に使用することができるが、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドなどの有機錫化合物は、環境面への配慮から実質的に使用しないことが好ましい。
【0095】
<6.塗膜形成方法>
本発明で用いる塗膜形成方法としては、刷毛塗り、ローラー塗装、ディッピング塗装、バーコーダー塗装、アプリケーター塗装、カーテン塗装、スプレー塗装、回転霧化塗装、電着塗装など、公知の塗装方法を特に制限なく用いることができる。
【0096】
塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5〜60μm、好ましくは10〜40μmの範囲内とすることができる。
【0097】
また、塗膜の焼き付け乾燥は、塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で60〜300℃、好ましくは80〜200℃にて、時間としては3〜180分間、好ましくは10〜50分間、加熱して行う。上記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
【0098】
本発明の被塗物としては、自動車ボディ、自動車部品、二輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、素材としては、金属、プラスティック、無機材料、木材、繊維材料など、特に制限はない。金属素材の場合は、例えば、必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄した後、さらに必要に応じてリン酸塩化成処理、クロメート処理等の表面処理を行ったものが用いることができ、下塗り塗料等を塗装した被塗物でもよい。
【0099】
本発明の熱硬化性塗料組成物を被塗物に塗装した後、次いで上塗り塗料組成物を塗装することができる。上記上塗り塗料組成物としては、公知のものを特に制限無く使用することができ、例えば、熱硬化性水性塗料、熱硬化性溶剤系塗料、常乾型水性塗料、常乾型溶剤系塗料などを用いることができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに説明する。
各種樹脂の重合方法、塗料の製造方法、評価試験方法などは、この技術分野で従来公知の方法を用いている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能である。
各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0101】
<水酸基含有樹脂の製造>
製造例1(アクリル樹脂)
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル31部を仕込み、窒素ガス通気下で110℃に昇温した。110℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、2−ヒドロキシエチルアクリレート22部、メチルメタクリレート30部、2−エチルへキシルアクリレート22部、スチレン25部、アクリル酸1部、及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)4部からなる混合物を4時間かけて滴下した。ついで、110℃で窒素ガスを通気しながら2時間熟成させた後、100℃まで冷却し、プロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈することにより、固形分60%のアクリル樹脂(A−1)溶液を得た。アクリル樹脂(A−1)は、重量平均分子量15,000、水酸基価106mgKOH/gであった。
【0102】
製造例2(エポキシ樹脂)
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER828EL(商品名、三菱化学社製、エポキシ当量190、数平均分子量350)1200部に、ビスフェノールA 500部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。次に、ジエタノールアミン189部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル480gを加え、固形分80%のアミノ基を含有するエポキシ樹脂(A−2)を得た。エポキシ樹脂(A−2)はアミン価53mgKOH/g、数平均分子量1900であった。
【0103】
製造例3 (ポリエステル樹脂)
加熱装置、攪拌機、窒素導入管及び分留塔を有する反応装置に、無水フタル酸335部、ヘキサヒドロフタル酸357部、グリセリン42部、エチレングリコール190部、ネオペンチルグリコール159部を仕込み、乾燥窒素下で加熱を開始し、230℃まで徐々に昇温してエステル化反応を行った。230℃を保持し、樹脂酸価5mgKOH/gとなるまでエステル化反応を行った後、170℃まで冷却し、エチレングリコールモノブチルエーテルを加えて、樹脂固形分60質量%のポリエステル樹脂(A−3)溶液を得た。得られたポリエステル樹脂(A−3)は、樹脂固形分の酸価5mgKOH/g、水酸基価81mgKOH/g、数平均分子量1,840であった。
【0104】
<硬化剤の製造>
製造例4(ブロック化ポリイソシアネート硬化剤)
攪拌機、加熱装置、冷却装置、減圧装置を備えた4つ口フラスコにヘキサメチレンジイソシアネート(B−1)272部及びメチルエチルケトン214部を仕込み、60℃に加熱した。次いで、メチルエチルケトオキシム169部を攪拌しながら1時間かけて徐々に添加した。その後、60℃で2時間反応させた後、トリメチロールプロパン59部を温度が70℃以上にならないように徐々に添加した。攪拌下、その反応混合物を赤外分光法によって、遊離のイソシアネート基が検出されなくなるまで60℃にて反応させた。反応終了後、固形分70%のブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B―2)を得た。得られたブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B―2)のNCO量は16.4%であった。
【0105】
<ホスファゼン化合物(C)の製造>
製造例5 ホスファゼン化合物(C−1)
温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに窒素雰囲気下でジクロロメタン101.5gと五塩化りん20.8g(0.1mol)の懸濁液を−30℃前後に保持し、攪拌した。ここにピロリジン21.3g(0.3mol)とトリエチルアミン40.5g(0.4mol)を滴下した。これを室温まで戻した。得られた反応物を0℃付近に保持し、N−エチルエチレンジアミン26.5g(0.3mol)を滴下した。その後、反応物を室温20℃から35℃に保持した。生成した不溶物を濾過し、その後得られた濾液をジクロロメタンと脱イオン水を用いて洗浄し、得られた有機相を濃縮した。得られた反応物にカリウムメトキシド/メタノール溶液(カリウムメトキシドを6.3g(0.09mol)含む)を加え、室温で攪拌した。生成した不溶物を濾過し、濃縮して、分子量327のホスファゼン化合物(C−1)を得た。精製後の収率は約80%であった。
1H−NMR(DMSO)δ(ppm): 0.99(dd,J=7.0 Hz,3H),1.73(m,13H),2.42(t,J=5.6 Hz,2H),2.51(dd,J1=14.4Hz,J2=7.2Hz,2H),3.06(m,14H)。
【0106】
製造例6 ホスファゼン化合物(C−2)
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、製造例5で得られたホスファゼン化合物(C−1)327部、jER1001(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量475、数平均分子量900)475部、メチルイソブチルケトン537部を加え、反応を行ない、エポキシ基量の99%以上を反応させた。
エチレングリコールモノブチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分50%のホスファゼン化合物(C−2)溶液を得た。ホスファゼン化合物(C−2)の数平均分子量は1,500であった。
【0107】
製造例7 ホスファゼン化合物(C−3)
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、製造例5で得られたホスファゼン化合物(C−1)327部、jER1004(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量925、数平均分子量1650)925部、メチルイソブチルケトン537部を加え、反応を行ない、エポキシ基量の99%以上を反応させた。
エチレングリコールモノブチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分50%のホスファゼン化合物(C−3)溶液を得た。ホスファゼン化合物(C−3)の数平均分子量は2,300であった。
【0108】
製造例8 ホスファゼン化合物(C−4)
温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに窒素雰囲気下でジクロロメタン101.5gと五塩化りん20.8g(0.1mol)の懸濁液を−30℃前後に保持し、攪拌した。ここにジメチルアミン13.5g(0.3mol)を通気し、トリエチルアミン40.5g(0.4mol)を滴下した。これを室温まで戻した。得られた反応物を0℃付近に保持し、N−エチルエチレンジアミン26.5g(0.3mol)を滴下した。その後、反応物を室温20℃から35℃に保持した。生成した不溶物を濾過し、その後得られた濾液をジクロロメタンと脱イオン水を用いて洗浄し、得られた有機相を濃縮した。得られた反応物にカリウムメトキシド/メタノール溶液(カリウムメトキシドを6.3g(0.09mol)含む)を加え、室温で攪拌した。生成した不溶物を濾過し、濃縮して、分子量249のホスファゼン化合物(C−4’)を得た。
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、上記ホスファゼン化合物(C−4’)249部、jER1001(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量475、数平均分子量900)475部、メチルイソブチルケトン537部を加え、反応を行ない、エポキシ基量の99%以上を反応させた。
エチレングリコールモノブチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分50%のホスファゼン化合物(C−4)溶液を得た。ホスファゼン化合物(C−4)の数平均分子量は1,400であった。
【0109】
後述の熱硬化性塗料組成物を製造する際に用いたホスファゼン化合物の一覧を下記表1に示す。なお、製造例5〜8により製造したホスファゼン化合物については、表1中の化合物の他に副生成物や未反応物などが存在する場合がある。
【0110】
【表1】
【0111】
なお、上記表1中の略号は、それぞれ下記の意味を有する。
C−5:79432−5ML(製品番号、Aldrich社製、ホスファゼン化合物)、
C−6:79416−5ML(製品番号、Aldrich社製、ホスファゼン化合物)、
EP1:jER1001(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量475、数平均分子量900)、
EP2:jER1004(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量925、数平均分子量1650)。
【0112】
<顔料分散ペーストの製造>
製造例9(溶剤系顔料分散ペースト)
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)1010部、ビスフェノールA 390部、プラクセル212(商品名、ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1,090になるまで反応させた。次に、ジメチルエタノールアミン134部及び乳酸150部を加え、120℃で4時間反応させた。次いで、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%の4級アンモニウム塩型顔料分散用樹脂溶液を得た。
続いて、上記顔料分散用樹脂溶液8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー8.0部、カーボンブラック0.3部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル24.5部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分50%の顔料分散ペースト(E−1)を得た。
【0113】
製造例10(水性顔料分散ペースト)
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828(商品名、三菱化学社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量370)1010部、ビスフェノールA 390部、プラクセル212(商品名、ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1,090になるまで反応させた。
次に、ジメチルエタノールアミン134部及び90%の乳酸水溶液150部を加え、120℃で4時間反応させた。次いで、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%の4級アンモニウム塩型顔料分散用樹脂溶液を得た。
続いて、上記顔料分散用樹脂溶液8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー8.0部、カーボンブラック0.3部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル24.5部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分50%の顔料分散ペースト(E−2)を得た。
【0114】
<熱硬化性塗料の製造>
<1.顔料を含む熱硬化性塗料>
[実施例1 熱硬化性塗料(X−1)]
製造例1で得られたアクリル樹脂(A−1)溶液を58.3部(固形分35部)、製造例2で得られたエポキシ樹脂(A−2)溶液を58.3部(固形分35部)、製造例4で得られたブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B−2)を42.9部(固形分30部)、製造例5で得られたホスファゼン化合物(C−1)5.5部を配合して均一に攪拌し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを46.0部添加して固形分50%の熱硬化性塗料(X−1)を製造した。
【0115】
[実施例2〜6、8〜16、比較例1〜2]
下記表2、表3で示される以外は実施例1と同様にして、固形分50%の熱硬化性塗料(X−2)〜(X−6)、(X−8)〜(X−18)を製造した。
【0116】
[実施例7 熱硬化性塗料(X−7)]
製造例1で得られたアクリル樹脂(A−1)溶液を58.3部(固形分35部)、製造例2で得られたエポキシ樹脂(A−2)溶液を58.3部(固形分35部)、製造例4で得られたブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B−2)を42.9部(固形分30部)、製造例6で得られたホスファゼン化合物(C−2)30部、酢酸2.4部を配合して均一に攪拌し、さらに脱イオン水を添加して固形分30%の熱硬化性塗料(X−7)を製造した。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
表2および表3中の(注1)は、以下のものを示す。
(注1)GP600:商品名、三洋化成社製、ポリオキシプロピレングリセリンエーテル、分子量600
【0120】
<2.顔料を除いた熱硬化性塗料>
[実施例17 熱硬化性塗料(Y−1)]
製造例1で得られたアクリル樹脂(A−1)溶液を50部(固形分30部)、製造例2で得られたエポキシ樹脂(A−2)溶液を58.3部(固形分35部)、製造例4で得られたブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B−2)を42.9部(固形分30部)、製造例9で得られた顔料分散ペースト(E−1)を55.6部(固形分27.8部、樹脂固形分5部)、製造例5で得られたホスファゼン化合物(C−1)5.5部を配合して均一に攪拌し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを49.8部添加して固形分50%の熱硬化性塗料(Y−1)を製造した。
【0121】
[実施例18〜22、24〜32、比較例3〜4]
下記表4及び表5で示される以外は実施例17と同様にして、固形分50%の熱硬化性塗料(Y−2)〜(Y−6)、(Y−8)〜(Y−18)を製造した。
【0122】
[実施例23 熱硬化性塗料(Y−7)]
製造例1で得られたアクリル樹脂(A−1)溶液を50部(固形分30部)、製造例2で得られたエポキシ樹脂(A−2)溶液を58.3部(固形分35部)、製造例4で得られたブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B−2)を42.9部(固形分30部)、製造例10で得られた顔料分散ペースト(E−2)を55.6部(固形分27.8部、樹脂固形分5部)、製造例6で得られたホスファゼン化合物(C−2)30部、酢酸2.4部を配合して均一に攪拌し、さらに脱イオン水を206.8部添加して固形分30%の熱硬化性塗料(Y−7)を製造した。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
<評価方法>
上記の、顔料を含む熱硬化性塗料(Y−1)〜(Y−18)及び硬化性評価のために顔料を除いた熱硬化性塗料(X−1)〜(X−18)について、耐水性と硬化性を評価した。本発明においては、硬化性と耐水性の両方に優れることが好ましい。
【0126】
評価試験
下記の方法で、硬化性及び耐水性の評価を行った。顔料を除いた熱硬化性塗料(X−1)〜(X−18)の評価結果を上記表2及び表3に合わせて示し、顔料を含む熱硬化性塗料(Y−1)〜(Y−18)の評価結果を表4及び表5に示す。
【0127】
<硬化性(ゲル分率)>
ガラス板に実施例及び比較例で得られた熱硬化性塗料(X−1)〜(X−18)を硬化膜厚約30μmとなるようにアプリケーターを用いてガラス板上に塗装し、140℃の温度で30分間加熱硬化させ、ガラス板から塗膜を剥離した。次に金網の中に入れた塗膜をセパレート型丸底フラスコの中に設置し、塗膜1gに対してアセトン100gを加え5時間還流した。取り出した塗膜を105℃×30分で乾燥後、塗膜重量を測定し、以下の式によりゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=還流後の塗膜重量/還流前の塗膜重量×100
【0128】
以下の基準で硬化性の評価を行なった。S〜Cが合格であり、Dが不合格である。
S:ゲル分率が70%以上である。
A:ゲル分率が60%以上、且つ70%未満である。
B:ゲル分率が50%以上、且つ60%未満である。
C:ゲル分率が40%以上、且つ50%未満である。
D:ゲル分率が40%未満である。
【0129】
<耐水性(光沢保持率)>
「パルボンド#3020」(日本パーカライジング社製、りん酸亜鉛処理)を施した冷延鋼板(大きさ400×300×0.8mm)に、「エレクロンGT−10」(関西ペイント社製、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させ、該塗膜上に「TP−65」(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル・メラミン樹脂系自動車中塗塗料)を乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間加熱硬化させた。
次いでその上に、実施例及び比較例で得られた熱硬化性塗料(Y−1)〜(Y−18)を硬化塗膜約20μmとなるようにアプリケーターを用いて塗装し、140℃の温度で30分間加熱硬化させた。
得られた試験板を純水に浸漬させ40℃で240時間放置し、浸漬後の光沢度を測定して光沢保持率を算出した。
【0130】
光沢保持率は、その表面(試験面)をJIS Z 8741−1997に基づく方法で、鏡面光沢度を入射角60度で測定した値に基づいて、光沢保持率を以下の式により算出したものである。
光沢保持率(%)=(耐水試験後の光沢度/初期光沢度)×100
【0131】
以下の基準で、耐水性の評価を行なった。S〜Cが合格であり、Dが不合格である。
S:光沢保持率が95%以上であり、耐水性が非常に優れている。
A:光沢保持率が90%以上、且つ95%未満であり、耐水性がやや優れている。
B:光沢保持率が80%以上、且つ90%未満であり、耐水性が優れている。
C:光沢保持率が70%以上、且つ80%未満であり、耐水性は普通である。
D:光沢保持率が70%未満であり、耐水性が劣っている。
【要約】
水酸基含有樹脂(A)、硬化剤(B)、ホスファゼン化合物(C)及び溶媒(D)を含有する熱硬化性塗料組成物であって、硬化剤(B)がポリイソシアネート硬化剤及び/又はブロック化ポリイソシアネート硬化剤である熱硬化性塗料組成物である。