(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
本実施形態の不燃化粧板10は、
図1に示すように、基材1の表面にシーラー層6、及び接着剤層5を介して化粧シート2が貼り付けられている。また、基材1の裏面に裏面接着剤層7によって防湿シート3が貼り付けられている。防湿シート3は設けなくても良い。
【0010】
<化粧シート2>
化粧シート2は、樹脂フィルム2Cの表面(基材1とは反対側の面)に印刷インキ層2B、及び表面保護層2Aがこの順に形成されている。また樹脂フィルム2Cの裏面(基材1側の面)に裏面プライマー層2Dが設けられている。
【0011】
「樹脂フィルム2C」
樹脂フィルム2Cは、例えば、質量比で、ポリエステル系樹脂が70.0質量部以上95.5質量部以下含有する。樹脂フィルム2Cには、公知の添加剤が添加されていても良い。例えば、無機系顔料を4.5質量部以上30.0質量部以下含有する。
樹脂フィルム2Cの厚さは、例えば0.05mm以上0.07mm以下であり、質量は、例えば、60.0g/m
2〜100.0g/m
2(有機質量58.2g/m
2〜71.6g/m
2)である。
樹脂フィルム2Cとしては、ポリブチレンテレフタレート製の樹脂フィルムが好ましい。ポリブチレンテレフタレート製の樹脂フィルムは、耐熱性に優れているため、より不燃性が向上する。
【0012】
「印刷インキ層2B」
印刷インキ層2Bは、化粧板10の意匠性を向上するために、樹脂フィルム2C上に形成される。
印刷インキ層2Bは、既知の印刷手法を用いて設けることが出来る。樹脂フィルム2Cは巻取りの状態で用意できるので、ロールツーロールの印刷装置で印刷インキ層形成のための印刷を行うことができる。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。
印刷インキ層2Bによって絵柄模様を付与出来る。絵柄模様は、壁装材としての意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採用すれば良い。
【0013】
印刷インキについては、特に限定するものではないが、印刷方式に対応したインキを適宜選ぶことができる。とくに樹脂フィルム2Cに対する密着性や印刷適性また壁装材としての耐候性を考慮して選択することが好ましい。
印刷インキ層2Bは、例えば、質量比で、ウレタン系樹脂78質量部以上100質量部以下含有し、更に、無機系顔料を0質量部以上22質量部以上含有するインキを使用する。印刷インキ層2Bの質量は、例えば、6.73g/m
2(固形量)以下(有機質量5.25g/m
2以下)とする。
【0014】
「表面保護層2A」
表面保護層2Aは、印刷インキ層2Bを覆うようにして設けられる。表面保護層2Aは単層でも良く、また複数の層を重ねて表面保護層としても良い。本実施形態では、表面保護層2Aが単層の場合を例示している。
表面保護層2Aは、熱硬化型や電磁放射硬化型などの硬化型樹脂層からなる。表面保護層2Aを設ける場合、材料としての硬化型樹脂の種類に応じて、既知のコーティング装置および熱乾燥装置および紫外線照射などの電離放射線装置を用いて塗布および塗膜の硬化を行うことができる。
【0015】
表面保護層2Aは、曲げ加工性、耐傷付性や清掃性に関してその優劣を左右する重要な役割をもつ。表面保護層2Aは、硬化型樹脂を主成分とする。すなわち樹脂成分が実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは、例えば樹脂全体を100質量部とした場合に80質量部以上を指す。表面保護層2Aには、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。
【0016】
本実施形態の表面保護層2Aは、紫外線硬化型樹脂を主成分とする。なお、60度鏡面光沢を所望の光沢度に調整するために、シリカその他のマット剤を添加しても良い。
表面保護層2Aには、更に熱硬化型樹脂を含んでいても良い。但しこの場合であっても、硬化型樹脂の含有割合として、電離放射線硬化型樹脂が樹脂全体の50%以上とする。
ここで特に清掃性を考慮して選択することが重要である。われわれはこの点に関して鋭意検討を重ねてきた結果、次の知見を見出すことができた。
【0017】
すなわち、表面保護層2Aの主成分が、紫外線硬化型樹脂および熱硬化型樹脂の混合物とすることで、耐傷つき性が向上すると共に曲げ加工においては表面保護層2Aの白化や割れが発生し難くなるとの知見を得た。
ここで電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0018】
例えば、表面保護層2Aは、質量比でアクリル系の硬化型樹脂80質量部以上86質量部以下含有し、更に無機系添加剤が14質量部以上20質量部以下含有する構成からなる。
また表面保護層2Aは、例えば、厚さが0.04mm以下で、質量が16.3g/m
2(固形量)以下(有機質量13.0g/m
2以下)とする。
【0019】
ここで、表面保護層2Aの表面に、所与の意匠性を付与するために凹凸が形成されていてもよい。通常はエンボス加工によって凹凸模様を形成する。エンボス加工方法は特に限定されない。エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0020】
「裏面プライマー層2D」
基材1との接着性を向上させる目的で、樹脂フィルム2Cの裏面には、裏面プライマー層2Dが形成されている。
裏面プライマー層2Dの材料としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、エポキシ系など各種のポリマー材料が使用されるが、ポリオール成分とポリイソシアネートとを含有するウレタン系コート剤が好ましい。
【0021】
ウレタン系コート剤におけるポリオール成分としては、ポリエステル系ポリオールが好ましく、ポリエステル系ポリオールとしては、多価カルボン酸などとグリコール類とを反応させて得られるポリエステル系ポリオールが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが例示される。
【0022】
裏面プライマー層2Dの厚さは、適宜に設定すればよいが、0.01〜10μmの厚さであることが好ましく、より好ましくは0.05〜5μmである。0.01μm未満の厚さでは接合性不足となり、10μmを超えると生産性が低下する。
本実施形態の裏面プライマー層2Dは、例えば、質量比で、ウレタン系樹脂が62質量部、無機質系顔料が38質量部含有する構成とする。
【0023】
また、裏面プライマー層2Dは、例えば質量 1.3g/m
2(固形量)以下(有機質量0.8g/m
2以下)とする。
<接着剤層5、7>
接着剤層5、7を構成する接着剤としては、熱可塑性樹脂系、熱硬化型樹脂系、ゴム(エラストマー)系等の接着剤が例示できる。これらは、公知のもの、ないし、市販品を適宜選択して使用することができる。熱可塑性樹脂系接着剤としては、たとえば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、シアノアクリレート、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ニトロセルロース、酢酸セルロース、熱可塑性エポキシ、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等を挙げることができ、また、熱硬化型樹脂系接着剤としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリベンゾチアゾール等を挙げることができる。ゴム系接着剤としては、天然ゴム、再生ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ステレオゴム(合成天然ゴム)、エチレンプロピレンゴム、ブロックコポリマーゴム(SBS、SIS、SEBS等)等を挙げることができる。
【0024】
基材1と化粧シート2とを貼り付ける接着剤層5は、質量比で、エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂95.7質量部、有機系硬化剤(イソシアネート系)4.3質量部で構成すると良い。この場合、接着層の質量は、例えば11.9〜17.8g/m
2(固形量)となる。
【0025】
<シーラー層6>
シーラー層6は、基材1と化粧シート2との接着性を向上させるために、基材1の表面に設けられる。本実施形態のシーラー層6は、例えばイソシアネート系樹脂 100質量%からなる。またシーラー層6の質量は、例えば6.24g/m
2(固形量)以下となる。
【0026】
<基材1>
基材1は、ガラス酸化マグネシウム板1Cの表面(化粧シート2側の面)に第2のシーラー層1Bと、炭酸カルシウムを主成分とするパテ層1Aとがこの順に形成され、且つ上記ガラス酸化マグネシウム板1Cの裏面(化粧シート2側とは反対側の面)に、裏面シーラー層1Dが形成されている。裏面シーラー層1Dは第3のシーラー層を構成する。
【0027】
「ガラス酸化マグネシウム板1C」
ガラス酸化マグネシウム板1Cは、ネット状のガラス繊維をマトリックスとし、酸化マグネシウムを主成分とした板状の部材である。主成分とは50質量部以上とする。
具体的には、本実施形態のガラス酸化マグネシウム板1Cは、ネット状のガラス繊維をマトリックスとして、質量比で酸化マグネシウム 52〜57質量部、塩化マグネシウム 28質量部、パーライト 12質量部、木チップ(長さ5〜15mm) 0〜5質量%部、無機質系難燃剤(りん酸系) 3質量部含有して構成した。
【0028】
ネット状のガラス繊維は、例えば、糸太さが、縦1260d、横630dで、糸間隔が縦1.5mm、横1.5mmの間隔とする。
またガラス酸化マグネシウム板1Cは、例えば厚さが0.4mm、質量70g/m
2である。
図1では、上記構成のガラス酸化マグネシウム板1Cを1層設けた場合を図示しているが、上記構成のガラス酸化マグネシウム板1Cを例えば3層積層して、ガラス酸化マグネシウム板とする方が好ましい。ガラス酸化マグネシウム板を構成する積層数は1層や3層に限定されず、2層、又は4層以上であっても良い。
【0029】
「パテ層1A」
パテ層1Aは、炭酸カルシウムを主成分として構成される。主成分とは70質量部以上を指す。
本実施形態のパテ層1Aは、例えば質料比で、炭酸カルシウム 82.3質量部、ウレタン系樹脂 17.7質量部から構成される。このパテ層1Aは、例えば、厚さ0.05mm以下、質量35.4g/m
2(固形量)以下とする。
ここで、パテ層1Aは、塗布後、研磨して表面を平滑にする。
【0030】
「第2のシーラー層1B」
第2のシーラー層1Bは、ウレタン系樹脂 100質量%で構成される。第2のシーラー層1Bの質量は、7.99g/m
2(固形量)以下とする。
第2のシーラー層1Bは、ガラス酸化マグネシウム板1C表面の密着性を良くするために設けられる。
【0031】
「裏面シーラー層1D」
裏面シーラー層1Dは、ウレタン系樹脂 100質量%で構成される。裏面シーラー層1Dの質量は、6.86g/m
2(固形量)以下とする。
裏面シーラー層1Dは、ガラス酸化マグネシウム板1C裏面の密着性を良くするために設けられる。
【0032】
<裏面接着剤層7>
基材1と防湿シート3とを接着する裏面接着剤層7は、例えば、質量比でエチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂 95.9質量部、有機質系硬化剤(イソシアネート系) 4.1質量部で構成する。また例えば、裏面接着剤層7の質量を15.66g/m
2(固形量)以下とする。
【0033】
<防湿シート3>
防湿シート3は、例えば、水蒸気透過度が3.0g/m
2・day・atm以下、好ましくは1.0g/m
2・day・atm以下の防湿性能を有するシートである。防湿シート3を化粧板10に設けることで、環境の温度や湿度の変化による影響に対し、貼り付けた化粧板10の反りを抑制することが出来る。
【0034】
防湿シート3は、基材層3Dの表面に対して、無機酸化物からなる蒸着層3C、および樹脂層3Bがこの順に形成され、更に、防湿シート3の表面側である、樹脂層3Bの表面に接着用プライマー層3Aが形成されると共に、基材層3Dの裏面に対し表面の改質を行った表面濡れ性改質部3Eが形成されている。
この構成によって、防湿シート3は、シート全体の水蒸気透過度が1.0g/m
2・day・atm以下となる。
【0035】
「基材層3D」
合成樹脂製の基材層3Dの材料としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−ビニルアルコール共重合体,あるいは、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等のエステル系熱可塑性樹脂、ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、あるいは、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。
【0036】
基材層3Dは、一軸ないし二軸方向に延伸したシートであっても、未延伸であってもよいが、後述する蒸着層3Cが少なくとも一方の面に形成される基材1となるものであり、機械的強度が強く、寸法安定性に優れるなどの理由から二軸方向に延伸したシートが好ましい。特に、基材層3Dは、ポリブチレンテレフタレート樹脂フィルムが好ましい。
この基材層3Dの厚さは、例えば9〜100μmの範囲である。例えば基材層3Dの厚さは0.012mm ・質量16.8g/m
2(有機質量16.8g/m
2)とする。
【0037】
「蒸着層3C」
蒸着層3Cは、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物の薄膜、又はアルミニウムに代表される金属薄膜からなる。
ここで、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる無機物からなる蒸着層は金属光沢があるが、無機酸化物蒸着層は透明な蒸着膜となる。
【0038】
蒸着層3Cの厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、防湿シート3としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また、膜厚が300nmを越える場合は薄膜の残留応力によりフレキシビリティを保持させることができず、成膜後外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。より好ましくは、10〜150nmの範囲内にあることが好ましい。
【0039】
蒸着層3Cを基材層3Dに積層する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることができる。ただし、生産性を考慮すれば、真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式または抵抗加熱方式を用いることがより好ましい。また蒸着層3Cと基材層3Dの密着性及び蒸着層3Cの緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素等の各種ガスなど吹き込む反応蒸着を用いても一向に構わない。
【0040】
「樹脂層3B」
樹脂層3Bは、主成分がポリビニルアルコール系樹脂からなる。主成分とは、全体を100質量部とした場合に70質量部以上を指す。樹脂層3Bは、ポリビニルアルコールに無機酸化物を含有した組成物であっても良い。樹脂層3Bは、蒸着層3Cを保護すると共に、蒸着層3Cのガスバリア性を向上させるために設けられる。
例えば樹脂層3Bは、蒸着層3C上にポリビニルアルコールあるいはポリビニルアルコールに酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物を添加した組成物をロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布方法で形成される。
【0041】
「接着用プライマー層3A」
接着用プライマー層3Aは、化粧板10の基材1との接着を良くするために設けられるものであって、具体的にはエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独ないし混合して接着組成物とし、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。
【0042】
「表面濡れ性改質部3E」
表面濡れ性改質部3Eは、リアクティブエッチング処理やコロナ処理などの物理的処理によって表面をナノレベルで粗面として、表面濡れ性を改質することで形成される。改質処理としては、コロナ処理よりもリアクティブエッチング処理の方が好ましい。リアクティブエッチング処理の方が、コロナ処理に比べて、経時的な接着強度の維持性が高いことを確認したためである。リアクティブエッチング処理は、プラズマを利用したエッチング処理である。
【0043】
<作用その他>
以上の構成の不燃化粧板10は、基材1がガラス酸化マグネシウム板1Cを有することで化粧板10は不燃性を持たせることが可能となり、更に、そのような不燃性を有する基板を使用しても、その基板の上にシーラー層6を設けて化粧シート2を接着することで密着性能が向上する。
【0044】
特に、ガラス酸化マグネシウム板1Cを3層以上積層することで、確実に不燃性が向上する。
ここで、本実施形態でいう不燃性は、ISO5660−1に準拠したコーンカロリ燃焼試験に準拠し、上記不燃化粧板10の時間に対する総発熱量及び時間に対する発熱速度を求めた際に、(i)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m
2以下であり、(ii)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えず、かつ(iii)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないことを満たす不燃性である。
【0045】
更に、基材1に炭酸カルシウムを主成分とするパテ層1Aを設けることで、更に化粧板10の不燃性が向上すると共に、基材1と化粧シート2との密着性も向上する。
また、化粧シート2の樹脂フィルム2Cとしてポリブチレンテレフタレート樹脂フィルムを使用すると耐熱性が向上して、更に不燃性が良好となる。
【実施例1】
【0046】
次に、本願発明に基づく不燃化粧板10に実施例について説明する。
<実施例1>
下記の構成で実施例1の不燃化粧板10を作成した。
・化粧シート2
樹脂フィルム2Cとしてポリブチレンテレフタレート樹脂フィルムを使用した。
【0047】
この樹脂フィルム2Cの組成は、質量部でポリエステル系樹脂95.5/無機系顔料4.5の構成となっている。樹脂フィルム2Cの厚さは、0.06mmで、質量は75.0g/m
2(有機質量71.6g/m
2)とした。
その樹脂フィルム2Cの表面に印刷により印刷インキ層2Bを設けた。印刷に使用したインキの組成は、質量部でウレタン系樹脂85/無機系顔料15の構成とした。印刷インキ層2Bは、質量が6.73g/m
2(固形量)(有機質量5.25g/m
2)となっている。
【0048】
印刷インキ層2Bの上に表面保護層2Aを設けた。表面保護層2Aは、質量比でアクリル系紫外線硬化樹脂80/無機系添加剤20の構成とした表面保護層2Aは、厚さ0.04mmで質量が16.3g/m
2(固形量)(有機質量13.0g/m
2)である。
また、樹脂フィルム2Cの裏面に裏面プライマー層2Dを形成した。
裏面プライマー層2Dの組成は、質量比でウレタン系樹脂62/無機質系顔料38で構成した。裏面プライマー層2Dの質量は、1.3g/m
2(固形量)(有機質量0.8g/m
2以下)とした。
【0049】
・接着剤層5
接着剤層5の組成は、質量比でエチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂 95.7/有機系硬化剤(イソシアネート系)4.3の構成とした。接着剤層5の質量は、16.2g/m
2(固形量)とした。
・シーラー層6
シーラー層6の組成は、イソシアネート系樹脂 100質量%から構成した。そのシーラー層6の質量は6.24g/m2(固形量)とした。
【0050】
・基材1
パテ層1Aの組成は、質量比で炭酸カルシウム82.3/ウレタン系樹脂の構成とした。パテ層1Aの厚さは0.05mmで有り、質量は35.4g/m
2(固形量)である。
第2のシーラー層1Bの組成は、ウレタン系樹脂 100質量%で構成し、質量を7.99g/m
2(固形量)とした。
【0051】
ガラス酸化マグネシウム板1Cとして、ガラス酸化マグネシウム板1Cを3層積層した。
各ガラス酸化マグネシウム板1Cは、ネット状のガラス繊維をマトリックスとして、質量比で、酸化マグネシウム 52/塩化マグネシウム 28/パーライト 12/木チップ(長さ5〜15mm)5質量/無機質系難燃剤(りん酸系) 3の組成で構成した。
【0052】
また上記の各ネット状のガラス繊維は、厚さ0.4mm、質量70g/m
2で、糸太さが縦1260d、横630dで、糸間隔が縦1.5mm、横1.5mmで構成した。
そして、この3層のガラス酸化マグネシウム板1Cの上に第2のシーラー層1B及びパテ層1Aが積層し、裏面が裏面シーラー層1Dを積層した。
裏面シーラー層1Dは、ウレタン系樹脂 100質量%で構成し、質量が6.86g/m
2(固形量)とした。
【0053】
・裏面接着剤層7
裏面接着剤層7の組成は、質量比でエチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂 95.9/有機質系硬化剤(イソシアネート系) 4.1で構成した。裏面接着剤層7の質量は15.66g/m
2(固形量)とした。
・防湿シート3
防湿シート3として、厚さ 0.012mmで・質量 19.2g/m
2(有機質量17.8g/m
2)のシートを使用した。
【0054】
その防湿シート3の構成は次の通りである。
プライマー層は、組成として質量比でウレタン系樹脂 33.9/無機質系添加剤 66.1の構成とし、質量を1.9g/m
2(固形量)(有機質量0.64g/m
2)とした。
樹脂層3Bは、ポリビニルアルコール系樹脂から構成し、質量を0.4g/m
2(固形量)(有機質量0.4g/m
2)とした。
【0055】
蒸着層3Cは、無機酸化物としてアルミナを使用した薄膜とし、質量を0.1g/m
2(固形量)とした。
基材層3Dは、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムから構成し、厚さが0.012mmで質量を16.8g/m
2(有機質量16.8g/m
2)とした。
その基材層3Dの裏面に対しプラズマ処理を行って、表面濡れ性改質部3Eを形成した。
【0056】
<評価>
「不燃試験」
上記構成の実施例1の不燃化粧板10に対し、コーンカロリーメーターを用いた試験方法(ISO5660−1に準拠)にて、燃焼性を確認した。試験は3つのサンプルにて実施した。
【0057】
その3回のサンプルの試験とも、総発熱量が5.3MJ/m
2以下であり、最大発熱速度の最大値が45.8kW/m
2であり、またいずれも10秒以上継続して200kW/m
2を超える事が無かった。又、加熱開始後20分間、裏面に達する亀裂が発生しなかった。このように、本発明に基づく不燃化粧板10は、不燃材の規格を満足していることが確認できた。
【0058】
ここで、化粧シートの構成として、樹脂フィルムにPET製の樹脂フィルムを使用し、表面保護層として、有機質量54.3g/m
2のウレタンコート層とその上に形成した有機質量6.4g/m
2のウレタン系紫外線硬化樹脂層とに変更して、上記の不燃性試験を行ったところ、ISO5660−1の不燃試験には合格したが、総発熱量が7.4MJ/m
2となったものが存在した。
このことから、化粧シート2の構成として、樹脂フィルムをポリブチレンテレフタレート樹脂フィルムとし、表面保護層の有機質量を13.0g/m
2以下に抑えた方が、より確実に不燃性を有する化粧板を提供可能となる。
【0059】
「ピーリング試験」
上記構成の実施例1の不燃化粧板10に対し、化粧シート2の密着性を確認すべく、180°ピーリング強度を測定したところ、40.4N/25cmと十分なピーリング強度が確保されていることを確認した。
また、平面引張強さについても評価したところ、1.19N/mm
2と十分な平面引張強さとなっていることを確認した。
このように、本発明の不燃化粧板10は十分な密着性能を有することが確認できた。