(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772481
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】口腔関連圧力測定用プローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/22 20060101AFI20201012BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
A61B5/22 200
A61B5/00 101L
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-35011(P2016-35011)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-148325(P2017-148325A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 麻美
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 匠
【審査官】
佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0302924(US,A1)
【文献】
特表2002−503519(JP,A)
【文献】
特開2007−090054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/22
A61B 5/00
A61B 5/11
A63B 23/03
A61H 1/00−1/02
G01L 5/00−5/28
A61J 11/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔関連圧力を測定する被測定者の口腔内に挿入される弾性材からなるバルーンと、
上記バルーンが接続される中空管部とを備え、
上記中空管部が、上記バルーン内の気体の圧力変化を検知する圧力検知部を有する口腔関連圧力測定装置に接続されて使用される口腔関連圧力測定用プローブにおいて、
上記バルーンは、口腔内で押圧力を受ける受圧部と、上記中空管部に接続される接続筒部とを備え、
上記バルーンの上記接続筒部は、扁平な断面形状を有するとともに、当該接続筒部の端部に径方向外方へ突出する鍔部を有し、
上記バルーンの上記鍔部は、該鍔部の厚み方向一側へ向けて突出する係合部を有し、
上記中空管部は、上記バルーンの上記係合部を上記鍔部の厚み方向一側及び他側から挟むように保持する第1部材及び第2部材を有し、
上記第1部材には、上記バルーンの上記係合部が嵌合する嵌合凹部が形成され、
上記第2部材には、上記バルーンの上記接続筒部の端面に当接する当接面が形成されていることを特徴とする口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の口腔関連圧力測定用プローブにおいて、
上記バルーンの上記係合部は、上記鍔部の周方向に連続して形成されていることを特徴とする口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の口腔関連圧力測定用プローブにおいて、
上記中空管部の上記第1部材は、上記接続筒部の端部が挿入される外側筒部を有し、
上記中空管部の上記第2部材は、上記接続筒部の端部の内方へ挿入される内側筒部を有し、
上記接続筒部の端部は、上記外側筒部及び上記内側筒部により厚み方向に押圧されて弾性変形していることを特徴とする口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の口腔関連圧力測定用プローブにおいて、
上記当接面は、上記バルーンの上記接続筒部の径方向に延びていることを特徴とする口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の口腔関連圧力測定用プローブにおいて、
上記第1部材には、上記バルーンの上記接続筒部の径方向に拡大する段部が形成され、該段部の内面に上記バルーンの上記係合部が嵌合することを特徴とする口腔関連圧力測定用プローブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の口腔関連圧力測定用プローブにおいて、
上記第1部材には、上記バルーンの上記接続筒部を覆うように形成され、上記バルーンを構成する弾性材よりも硬質な材料からなる硬質カバー部が設けられていることを特徴とする口腔関連圧力測定用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などの口腔関連圧力の測定の際に使用する口腔関連圧力測定用プローブに関し、特に口腔内に挿入するバルーンに押圧力を加えることによって上記圧力を測定可能にする構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者のQOL(Quality of Life)の向上のために摂食・嚥下機能の維持・回復が求められており、その機能の解明が必要になってきている。摂食・嚥下機能には舌の動きが深く関与しており、食塊の形成および咽頭への送り込みには所定の舌圧が必要となる。このため、舌圧の測定とその解析は重要な意味を持つ。また、舌圧だけでなく、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などの口腔関連圧力の測定も同様に重要な意味を持っており、これら口腔関連圧力の被測定者としては高齢者以外にも障がい者等も対象となる。 口腔関連圧力の測定方法としては、口腔内に挿入するバルーンに押圧力を加えることによって上記圧力を測定可能にする、いわゆるバルーン式プローブを用いる方法が知られている(特許文献1〜3参照)。特許文献1〜3に開示された口腔関連圧力測定装置では、口腔内に挿入されたバルーンを被測定者が舌で押圧すると、バルーンと連通した圧力検知部においてバルーン内の空気圧変化が検出される。この空気圧変化を電気信号に変換することで舌圧を測定することができる。
【0003】
特許文献2のプローブは、バルーンと、該バルーンに連通する中空管部と、中空管部の外側に配設された摺動部材とを備えている。摺動部材はプローブの使用時に歯や唇で挟んで保持するためのものであり、プローブの口腔への挿入長に合わせて位置を変更することができるように構成されている。摺動部材の形状としては、扁平断面を有する形状が複数種開示されている。
【0004】
また、特許文献3では、プローブのバルーンの基端部に、外方へ突出する鍔部を設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−275994号公報
【特許文献2】特開2013−135728号公報
【特許文献3】特開2008−237366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、口腔関連圧力の測定精度を高めるためや、口腔関連圧力を測定し易くするために、口腔内でバルーンをできるだけ安定させたいという要求がある。そこで、特許文献1や3のバルーンの基端側の断面形状を、特許文献2の摺動部材の断面形状に近いような扁平断面形状にし、この扁平状部分を歯や唇で挟むようにして保持することが考えられる。これにより、バルーンの基端側が円形断面であるものに比べてバルーンを安定させることが可能になる。
【0007】
ここで、特許文献2、3に開示されているように、バルーンと、該バルーンに接続する中空管部とは別部材として構成されており、各部材の成形後に組み付けて一体化する必要がある。このとき、特許文献3に示すような鍔部をバルーンに設けておき、この鍔部を厚み方向に挟むようにしてバルーンを中空管部に組み付けることが想定される。
【0008】
ところが、バルーンの基端側の断面が扁平であると、その基端側の周壁部には、湾曲部分と平坦部分とができることになる。この周壁部の端部に特許文献3のような鍔部を形成した場合、その鍔部にも、湾曲部分と平坦部分とができる。鍔部がこのような形状になった場合に問題となるのが、バルーンの引抜強度である。すなわち、プローブの使用中等にはバルーンに対して引抜力が作用することがある。本発明者は、バルーンの鍔部に湾曲部分と平坦部分とができていると、バルーンに対して引抜力が作用したとき、鍔部の湾曲部分と平坦部分とでは耐引抜性に大きな差が出ることを見出した。具体的には、鍔部の平坦部分の方が湾曲部分に比べて耐引抜性が大きく低下してしまい、そのため、平坦部分を起点として鍔部が抜け出てしまい、ひいてはバルーンの耐引抜性が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、口腔関連圧力測定時のバルーンを安定させることができるようにするとともに、バルーンの中空管部からの抜けを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、バルーンにおける接続筒部の断面形状を扁平にして歯や唇で挟み易くするとともに、この接続筒部に形成した鍔部に係合部を設け、中空管部を構成する部材に係合部を嵌合させることによってバルーンの耐引抜性を向上させるようにした。
【0011】
第1の発明は、
口腔関連圧力を測定する被測定者の口腔内に挿入される弾性材からなるバルーンと、
上記バルーンが接続される中空管部とを備え、
上記中空管部が、上記バルーン内の気体の圧力変化を検知する圧力検知部を有する口腔関連圧力測定装置に接続されて使用される口腔関連圧力測定用プローブにおいて、
上記バルーンは、口腔内で押圧力を受ける受圧部と、上記中空管部に接続される接続筒部とを備え、
上記バルーンの上記接続筒部は、扁平な断面形状を有するとともに、
当該接続筒部の端部に径方向外方へ突出する鍔部を有し、
上記バルーンの上記鍔部は、該鍔部の厚み方向一側へ向けて突出する係合部を有し、
上記中空管部は、上記バルーンの
上記係合部を上記鍔部の厚み方向一側及び他側から挟むように保持する第1部材及び第2部材を有し、
上記第1部材には、上記バルーンの上記係合部が嵌合する
嵌合凹部が形成され、
上記第2部材には、上記バルーンの上記接続筒部の端面に当接する当接面が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、バルーンにおける接続筒部の断面形状が扁平になるので、バルーンの受圧部を口腔内に挿入した状態でプローブを歯や唇によって容易に、かつ、確実に保持することが可能になり、口腔関連圧力測定時のバルーンが安定する。
【0013】
そして、バルーンの接続筒部の鍔部が、中空管部を構成する第1部材及び第2部材によって厚み方向両側から挟まれ、これにより、バルーンが中空部材と一体化する。このとき、バルーンの鍔部の係合部が中空管部の第1部材に嵌合しているので、バルーンに引抜力が作用した場合に、バルーンの係合部が第1部材から離脱しにくくなり、これにより、バルーンの鍔部が第1部材及び第2部材の間から抜け出にくくなる。したがって、バルーンの耐引抜性が向上する。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
上記バルーンの上記係合部は、上記鍔部の周方向に連続して形成されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、バルーンの鍔部が全周に亘って第1部材及び第2部材の間から抜け出にくくなるので、バルーンの耐引抜性がより一層向上する。
【0016】
第3の発明は、第1または2の発明において
、
上記中空管部の上記第1部材は、上記接続筒部の端部が挿入される外側筒部を有し、
上記中空管部の上記第2部材は、上記接続筒部の端部の内方へ挿入される内側筒部を有し、
上記接続筒部の端部は、上記外側筒部及び上記内側筒部により厚み方向に押圧されて弾性変形していることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、バルーンの接続筒部の端部が、中空管部の第1部材の外側筒部と、中空管部の第2部材の内側筒部とによって厚み方向に押圧されて弾性変形しているので、接続筒部の端部が強固に保持されることになる。この接続筒部の端部に鍔部が形成されているので、バルーンに対して引抜力が作用した際に鍔部が動きにくくなり、その結果、鍔部の係合部が第1部材からより一層離脱しにくくなる。
【0018】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において
、
上記当接面は、上記バルーンの上記接続筒部の径方向に延びていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、中空管部の第2部材の当接面がバルーンの接続筒部の端面に対して当接する。この当接面が径方向に延びているので、鍔部を第1部材及び第2部材で確実に挟んで保持することが可能になり、鍔部の係合部が第1部材からより一層離脱しにくくなる。
【0020】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、
上記第1部材には、上記バルーンの上記接続筒部の径方向に拡大する段部が形成され、該段部の内面に上記バルーンの上記係合部が嵌合することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、バルーンの鍔部が第1部材の段部の内面に係合するので、バルーンの耐引抜性がより一層向上する。
【0022】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、
上記第1部材には、上記バルーンの上記接続筒部を覆うように形成され、上記バルーンを構成する弾性材よりも硬質な材料からなる硬質カバー部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、バルーンの接続筒部が硬質カバー部によって覆われるので、歯や唇で挟んで保持する場合に接続筒部の変形が抑制される。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によれば、バルーンにおける接続筒部の断面形状を扁平にしたのでプローブを歯や唇で挟み易くすることができ、口腔関連圧力測定時のバルーンを安定させることができる。そして、バルーンの接続筒部に形成した鍔部に係合部を設け、中空管部を構成する第1部材に係合部を嵌合させるようにしたので、バルーンの耐引抜性を向上させることができる。
【0025】
第2の発明によれば、バルーンの係合部を鍔部の周方向に連続して形成したので、バルーンの耐引抜性をより一層向上させることができる。
【0026】
第3の発明によれば、バルーンの接続筒部の端部を、中空管部の第1部材の外側筒部と、第2部材の内側筒部とにより厚み方向に押圧して弾性変形させているので、接続筒部の端部を強固に保持することができ、これにより、バルーンに対して引抜力が作用した際に鍔部が動きにくくなる。その結果、鍔部の係合部が第1部材からより一層離脱しにくくすることができる。
【0027】
第4の発明によれば、中空管部の第2部材の当接面がバルーンの接続筒部の端面に対して当接した際、その当接面が径方向に延びているので、鍔部を第1部材及び第2部材で確実に挟んで保持することができる。これにより、鍔部の係合部が第1部材からより一層離脱しにくくすることができる。
【0028】
第5の発明によれば、中空管部の第1部材に、バルーンの接続筒部の径方向に拡大する段部を形成し、該段部の内面にバルーンを嵌合させるようにしたので、バルーンの耐引抜性をより一層向上させることができる。
【0029】
第6の発明によれば、バルーンの接続筒部を硬質カバー部によって覆うことができるので、歯や唇で挟んで保持する場合に接続筒部の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態に係る口腔関連圧力測定用プローブの平面図である。
【
図2】口腔関連圧力測定用プローブを口腔関連圧力測定装置に接続した状態の平面図である。
【
図3】口腔関連圧力測定用プローブの側面図である。
【
図4】口腔関連圧力測定用プローブの分解斜視図である。
【
図7】
図4におけるVII−VII線断面図である。
【
図8】バルーンの引抜試験の要領を説明する図である。
【
図9】本発明と比較例1、2のバルーンの引抜力を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る口腔関連圧力測定用プローブ1の平面図である。口腔関連圧力測定用プローブ1は、口腔関連圧力を測定する被測定者の口腔内に挿入される弾性材からなるバルーン2と、バルーン2が接続される中空管部3とを備えている。口腔関連圧力とは、例えば、舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などであるが、これらに限られるものではなく、口腔関連の各種圧力を測定する際に使用することができる。舌圧とは舌を口蓋に押し付ける力であり、舌下筋圧とは舌を下に押し付ける力であり、口唇圧とは上唇と下唇とを閉じる力であり、頬圧力とは頬を口腔内側へ向けて押す力である。また、被測定者としては、例えば高齢者、障がい者等を挙げることができるが、健常者であってもよい。また、口腔関連圧力測定用プローブ1は、口腔機能回復のための訓練用具として用いることもできる。
【0033】
口腔関連圧力測定用プローブ1は、中空管部3が口腔関連圧力測定装置100(
図2に示す)に接続されて使用される。口腔関連圧力測定装置100は、例えば特許文献1〜3に開示されている装置を用いることができ、具体的には、圧力検知部101と、表示部102と、電源部103と、これらを収容するケーシング104とを備えている。圧力検知部101は、周知の圧力センサ等で構成されており、空気圧を得ることができるように構成されている。表示部102は、例えば液晶表示パネルやLED等で構成することができ、圧力検知部101で得られた空気圧を具体的に数値で表示したり、圧力検知部101で得られた空気圧を高、中、低といった多段階で表示することができるように構成されている。電源部103は、例えば電池等であり、上記圧力検知部101と表示部102に電力を供給する。また、ケーシング104は、口腔関連圧力測定用プローブ1の中空管部3が接続される接続管105を備えている。接続管105は、圧力検知部101に連通している。
【0034】
(バルーンの構成)
図4、
図5及び
図7に示すように、バルーン2は、被測定者の口腔内で押圧力を受ける受圧部20と、中空管部3に接続される接続筒部21とを備えており、受圧部20及び接続筒部21とは一体成形されている。バルーン2を構成する弾性材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム等のゴムやエラストマー等の気密性及び水密性を有する材料を使用することができる。
【0035】
受圧部20は被測定者の口腔内に挿入される部分であり、口腔内において測定したい部位に配置される。受圧部20の形状は、
図1、
図2及び
図5等に示すように、楕円形に近い断面を有する中空状をなしており、全体として
図1の左右方向、即ち、被測定者の口腔への挿入方向に長い形状となっている。この受圧部20を押圧して弾性変形させることによって口腔関連圧力を測定することができるようになっているので、押圧後、外力を除くと元の形状に復元する形状復元性を有している。尚、接続筒部21を開放した状態で受圧部20を押圧した場合、受圧部20を極めて小さい力で弾性変形させることができるように、上記弾性材の硬度が低硬度に設定されている。
【0036】
図7に示すように、接続筒部21は、受圧部20の長手方向の一側(口腔への挿入方向基端側)の端部から該受圧部20の外方へ突出するように形成されている。接続筒部21の突出方向は、受圧部20の長手方向に沿う方向である。接続筒部21の内部は受圧部20の内部と連通している。
図1、
図2及び
図6に示すように、接続筒部21は、扁平な断面形状を有している。具体的には、接続筒部21の長手方向に直交する方向の断面は、口腔関連圧力測定用プローブ1の幅方向(
図1、
図2、
図6、
図7等における上下方向)に長い形状となっており、接続筒部21は、その幅方向に延びる一対の平坦壁部21a、21aと、平坦壁部21a、21aに連続する湾曲壁部21b、21bとで構成されている。平坦壁部21a、21aは、口腔関連圧力測定用プローブ1の幅方向に延びており、互いに略平行である。一方、湾曲壁部21b、21bは、接続筒部21の外方へ向けて湾曲した壁部である。尚、平坦壁部21a、21aの代わりに、接続筒部21の外方へ向けて緩やかに湾曲した壁部であってもよく、例えば、楕円形状等であってもよい。
【0037】
バルーン2の接続筒部21の端部には、該接続筒部21の径方向外方へ突出して周方向に連続して延びる鍔部23が形成されている。接続筒部21の断面形状が扁平形状であることに対応するように、鍔部23は接続筒部21の断面形状と略相似形となっている。鍔部23の厚み方向は、接続筒部21の長手方向であり、この実施形態では、鍔部23の厚み方向一側を
図5、
図7等における左側とし、鍔部23の厚み方向他側を
図5、
図7等における右側と定義する。
【0038】
バルーン2の鍔部23には係合部23aが形成されている。すなわち、係合部23aは、鍔部23における厚み方向一側の面から該厚み方向一側へ向けて突出し、かつ、鍔部23の周方向の全周に亘って連続する突条をなすように形成されている。係合部23aは、鍔部23の最外周部に位置しており、この係合部23aと、接続筒部21の外周面との間には隙間が設けられており、この隙間が、係合部23aと、接続筒部21の外周面との間で溝を構成することになる。
【0039】
(中空管部の構成)
図4に示すように、中空管部3は、外筒部材(第1部材)30と、内筒部材(第2部材)40とを有しており、外筒部材30と内筒部材40とでバルーン2の鍔部23を該鍔部23の厚み方向一側及び他側から挟むようにして保持するように構成されている。外筒部材30は、バルーン2を構成する弾性材よりも硬質な樹脂材料からなるものであり、該樹脂材料による一体成形品である。外筒部材30を構成する硬質樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等を挙げることができる。また、内筒部材40もバルーン2を構成する弾性材よりも硬質な樹脂材料からなるものであり、該樹脂材料による一体成形品である。内筒部材40を構成する硬質樹脂材料としては、例えばポリカーボネート等を挙げることができる。
【0040】
口腔への挿入方向を基準としたとき、外筒部材30の基端部にはフランジ31が形成されている。外筒部材30の先端部には、バルーン2の接続筒部21が挿入される外側筒部32が形成されている。外側筒部32の断面形状は、バルーン2の接続筒部21の断面形状と同様に長手方向両端に亘る全体が扁平形状である。外側筒部32は、その基端側を構成する基端側筒部32aと、先端側を構成する先端側筒部32bとを有している。基端側筒部32aは先端側筒部32bよりも大径に形成されており、従って、外側筒部32には、基端側筒部32aと先端側筒部32bとの境界部分に、バルーン2の接続筒部21の径方向に拡大する段部32cが形成されることになる。先端側筒部32bは、バルーン2の接続筒部21を覆うように形成された硬質カバー部であり、この先端側筒部32bの内周面は、バルーン2の接続筒部21の外周面に対して全周に亘って密着するように形成されている。先端側筒部32bは、後述する使用時に被測定者が歯や唇で挟んだときに潰れないように、所定以上の剛性を有している。
【0041】
図5にのみ示すが、先端側筒部32bの先端部は、バルーン2の接続筒部21における受圧部20側の端部近傍に位置しており、接続筒部21の大部分が先端側筒部32bによって覆われるようになっている。先端側筒部32bの先端部には環状凸部32dが形成されている。環状凸部32dは、先端側筒部32bの外周面から径方向外方へ突出して該先端側筒部32bの周方向に連続して延びている。環状凸部32dは、口腔関連圧力測定用プローブ1の使用時に被測定者の歯や唇が引っ掛かるように形成されており、口腔関連圧力測定用プローブ1の脱落防止用凸部である。尚、環状凸部32dの突出高さは低く設定されており、口腔内への挿入時には邪魔にならないように設定されている。
【0042】
基端側筒部32aには、バルーン2の接続筒部21における鍔部23が挿入されるようになっている。基端側筒部32aの内周面は、鍔部23の外周面に対して全周に亘って密着するように形成されている。
【0043】
図5に示すように、外側筒部32の段部32cの内面には、バルーン2の係合部23aが嵌合する嵌合凹部32eが形成されている。嵌合凹部32eは、外側筒部32の内面の周方向全周に亘って環状に延びている。
【0044】
図4に示すように、口腔への挿入方向を基準としたとき、内筒部材40の基端部には、口腔関連圧力測定装置100の接続管105に接続される筒状の基端側接続部41が設けられている。内筒部材40の基端側接続部41よりも先端側には、径方向外方へ突出する突出板部42が設けられている。内筒部材40の先端部には、バルーン2の接続筒部21の内方へ挿入される内側筒部43が形成されている。
図5に示すように、内側筒部43の長さは、外側筒部32の先端側筒部32bの長さよりも短く設定されており、内側筒部43の先端部は、バルーン2の接続筒部21の長手方向中央部近傍に位置している。内側筒部43の断面形状は、バルーン2の接続筒部21の断面形状と同様に扁平形状とされている。そして、内側筒部43の外径は、バルーン2の接続筒部21の内径よりも大きめに設定されており、これにより、内側筒部43の外周面の全周がバルーン2の接続筒部21の内周面を全周に亘って径方向外方へ押圧する。従って、接続筒部21の少なくとも端部は、外側筒部32及び内側筒部43により厚み方向に押圧されて弾性変形することになる。
【0045】
内筒部材40の外周面には、バルーン2の接続筒部21の端面に当接する当接面44が形成されている。当接面44は、内筒部材40の周方向全周に亘って形成されており、バルーン2の接続筒部21の径方向に延びている。
【0046】
内筒部材40の当接面44よりも基端側は、内側筒部43よりも大径の大径部45が設けられている。この大径部45は、外筒部材30の基端側筒部32aに挿入されて該基端側筒部32aの内周面に密着した状態で固定される。
【0047】
(口腔関連圧力測定用プローブの組立要領)
上記のように構成された口腔関連圧力測定用プローブ1を組み立てる際には、まず、バルーン2の接続筒部21を、外筒部材30の外側筒部32に挿入する。このとき、バルーン2の接続筒部21を弾性変形させながら外筒部材30の外側筒部32に押し込むようにすればよい。そして、バルーン2の鍔部23を外筒部材30の外側筒部32の基端側筒部32aに挿入し、バルーン2の係合部23aを外筒部材30の嵌合凹部32eに嵌合させて係合部23aと嵌合凹部32eとを係合させる。
【0048】
その後、内筒部材40を外筒部材30に挿入していき、内筒部材40の大径部45を外筒部材30の基端側筒部32aに挿入するとともに、内側筒部43をバルーン2の接続筒部21に挿入する。これにより、バルーン2の接続筒部21の端部から長手方向中央部近傍までの範囲が、外側筒部32及び内側筒部43により厚み方向に押圧されて弾性変形し、他の部分に比べて薄肉化し、十分なシール性が得られる。
【0049】
内筒部材40を外筒部材30に完全に挿入すると、内筒部材40の当接面44がバルーン2の接続筒部21の端面に当接する。従って、バルーン2の鍔部23が、外筒部材30及び内筒部材40によって厚み方向一側及び他側から挟まれた状態で保持される。
【0050】
(実施形態の作用効果)
以上のようにして得られた口腔関連圧力測定用プローブ1を使用する際には、口腔関連圧力測定用プローブ1を口腔関連圧力測定装置100に接続した後、口腔関連圧力測定用プローブ1のバルーン2を被測定者の口腔内に挿入する。このとき、口腔関連圧力測定用プローブ1の幅方向が測定者の左右方向と一致するように、口腔関連圧力測定用プローブ1の姿勢を設定しておく。被測定者の歯や唇がバルーン2の接続筒部21と対応する位置となるまで受圧部20を挿入する。そして、被測定者の歯や唇で口腔関連圧力測定用プローブ1の接続筒部21に対応する部位、即ち、先端側筒部32bを上下方向に挟むようにして保持する。このとき、プローブ1の接続筒部21の断面形状及び先端側筒部32bの断面形状が扁平形状で、先端側筒部32bの上面及び下面が略平坦であることから、歯や唇で挟み易くすることができ、口腔関連圧力測定時のバルーン2を安定させることができる。
【0051】
また、口腔関連圧力測定用プローブ1に対してバルーン2の引抜試験を行うと、バルーン2の耐引抜性が十分に高いレベルにあることが実証された。バルーン2の引抜試験要領について
図8に基づいて説明する。バルーン2の引抜試験に際し、引張試験器200と、支持治具201とを用意する。引張試験器200は、従来から周知のものを使用することができ、ロードセル202とチャック203とを少なくとも有し、ロードセル202によって引張荷重をリアルタイムで得ることができるようになっている。また、最大引張荷重を記憶することができるようになっている。チャック203は、バルーン2を掴むことができるように構成されている。また、支持治具201は、口腔関連圧力測定用プローブ1の中空管部3を上下方向に延びる姿勢で固定することができるように構成されている。
【0052】
そして、支持治具201を固定したまま、チャック203を白抜きの矢印で示すように上方へ移動させていき、バルーン2に対して抜き方向に引っ張り負荷をかけ、バルーン2が破断または中空管部3から抜ける直前の最大引張荷重を得る。
【0053】
図9は本発明及び比較例1、2の最大引張荷重を示すグラフである。本発明は、上記実施形態のように構成された口腔関連圧力測定用プローブ1である。一方、比較例1は、バルーンの接続筒部が円形断面となっていて、上記実施形態の構成から係合部23a及び嵌合凹部32eを省いた構造の場合であり、比較例2は、上記実施形態の構成から係合部23a及び嵌合凹部32eを省いた構造の場合である。
図9から明らかなように、本発明のものでは、比較例1、2に比べて大幅に引張荷重が向上している。即ち、バルーン2の耐引抜性が向上している。
【0054】
つまり、バルーン2の接続筒部21に形成した鍔部23に係合部23aを設け、中空管部3を構成する外筒部材30の嵌合凹部32eに係合部23aを嵌合させるようにしたので、バルーン3の耐引抜性を向上させることができる。
【0055】
また、バルーン2の係合部23aを鍔部23の周方向に連続して形成したので、バルーン2の耐引抜性をより一層向上させることができる。
【0056】
また、バルーン2の接続筒部21の端部を、外側筒部32及び内側筒部43により厚み方向に押圧して弾性変形させているので、接続筒部21の端部を強固に保持することができる。これにより、バルーン2に対して引抜力が作用した際に鍔部23が動きにくくなるので、鍔部23の係合部23aが嵌合凹部32eからより一層離脱しにくくすることができる。
【0057】
また、中空管部3の内筒部材40の当接面44がバルーン2の接続筒部21の端面に対して当接した際、その当接面44が径方向に延びているので、鍔部23を外筒部材30と内筒部材40とで確実に挟んで保持することができる。これにより、鍔部23の係合部23aが嵌合凹部32eからより一層離脱しにくくすることができる。
【0058】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明に係る口腔関連圧力測定用プローブは、例えば、舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などの口腔関連圧力を測定する際に使用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 口腔関連圧力測定用プローブ
2 バルーン
3 中空管部
20 受圧部
21 接続筒部
23 鍔部
23e 係合部
30 外筒部材(第1部材)
32 外側筒部
32b 先端側筒部(硬質カバー部)
32c 段部
40 内筒部材(第2部材)
43 内側筒部
44 当接面