(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で表す場合がある。
【0010】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1を参照して、発泡壁紙1の構成について説明する。
図1中に表すように、発泡壁紙1は、基材2と、発泡樹脂層4を備える。
【0011】
(基材2)
基材2の材料としては、壁紙用の裏打紙等、紙基材として通常使用されている材料であれば、特に限定されずに使用可能である。
したがって、基材2の材料としては、水溶性難燃剤を含浸させたパルプ主体の難燃紙や、無機質剤を混抄した無機質紙等を用いることが可能である。また、難燃紙や無機質紙の秤量は、50[g/m
2]以上300[g/m
2]以下の範囲内であってもよく、60[g/m
2]以上160[g/m
2]以下の範囲内であってもよい。
【0012】
水溶性難燃剤としては、例えば、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等を用いることが可能である。
無機質剤としては、例えば、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を用いることが可能である。
基材2の表面のうち、発泡樹脂層4を積層する側の面(
図1中において、基材2の上側の面)には、易接着処理を施してもよく、また、易接着処理層を設けてもよい。
易接着処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等を用いることが可能である。
易接着処理層は、例えば、アクリル−ブチル共重合体や、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン等から形成する。
【0013】
(発泡樹脂層4)
発泡樹脂層4は、基材2上に積層されている。なお、「基材2上」とは、
図1中において、基材2の上側の面を表す。
また、発泡樹脂層4は、発泡壁紙用原反を含んで形成されている。
発泡壁紙用原反は、充填剤と、発泡剤と、発泡助剤と、樹脂分と、添加剤を含有している。
したがって、発泡壁紙用原反は、基材2と共に発泡壁紙1を形成し、且つ基材2上に設けられた発泡樹脂層4を形成する。
また、発泡樹脂層4の基材2とは反対側の面は、均一な面に形成されている。
以下、発泡壁紙用原反が含有している、充填剤と、発泡剤と、発泡助剤と、樹脂分と、添加剤について説明する。
【0014】
(充填剤)
充填剤としては、例えば、無機充填剤や有機充填剤を用いることが可能である。また、無機充填剤や有機充填剤は、一種を単独で用いることも、二種以上を併用して用いることも可能である。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン等を用いることが可能である。
有機充填剤としては、例えば、メラミンシアヌレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、木粉、セルロース及びその誘導体を用いることが可能である。
充填剤の含有量は、特に制限されないが、その合計量が、発泡壁紙用原反全量を基準として、10[%]以上60[%]以下の範囲内の質量であることが好ましい。
【0015】
発泡壁紙用原反に充填剤を添加する理由は、発泡壁紙1の隠蔽性の確保、単位面積当たりの燃焼カロリーの低減、嵩増しによる製造コストの低減等がある。
また、充填剤(特に、無機充填剤)の含有量が、発泡壁紙用原反全量を基準として20[%]以上40[%]以下の範囲内の質量%であると、良好な隠蔽性を確保することが可能であるとともに燃焼カロリーが低い発泡壁紙1を、低製造コストで製造することが可能となる。
上記の特性を有する無機充填剤(炭酸カルシウム)としては、例えば、備北粉化(株)製:「ソフトン1000」等、市販品を用いることが可能である。
上記の特性を有する有機充填剤(二酸化チタン)としては、例えば、石原産業(株)製:「タイペークCR−60−2」等、市販品を用いることが可能である。
【0016】
(発泡剤)
発泡剤としては、例えば、熱分解型発泡剤を用いることが可能である。
熱分解型発泡剤としては、アゾ系発泡剤、ヒドラジド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤等を用いることが可能である。また、熱分解型発泡剤は、一種を単独で用いることも、二種以上を併用して用いることも可能である。
アゾ系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等を用いることが可能である。
また、アゾジカルボンアミド系発泡剤としては、例えば、永和化成(株)製:「ビニホールAC#3C−K2」等、市販品を用いることが可能である。
【0017】
ヒドラジド系発泡剤としては、例えば、p−トルエンスルホニルヒドラジド等を用いることが可能である。
また、ヒドラジド系発泡剤としては、例えば、永和化成(株)製:「ネオセルボン SB#51」等、市販品を用いることが可能である。
ニトロソ系発泡剤としては、例えば、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等を用いることが可能である。
また、ニトロソ系発泡剤としては、例えば、永和化成(株)製:「セルラーD」等、市販品を用いることが可能である。
【0018】
上述した熱分解型発泡剤の中でも、特に、毒性が少なく、発泡開始温度の調節が容易で適用範囲が広いことを理由に、アゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが好適である。
発泡剤の含有量は、特に制限されないが、その合計量が、発泡壁紙用原反全量を基準として、1[%]以上20[%]以下の範囲内の質量%であることが好ましい。これは、発泡剤の含有量が上記の範囲内であると、過剰なガスの発生に起因した表面からのガス抜けが抑制されている発泡樹脂層を得ることが可能であることが理由である。
【0019】
(発泡助剤)
発泡助剤は、脂肪酸金属塩の炭素鎖に活性プロトンを含む官能基を有する官能基含有脂肪酸金属塩を含む。
脂肪酸金属塩の炭素鎖とは、脂肪酸を構成する直鎖状の炭化水素基を表す。
直鎖状の炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよい。
直鎖状の炭化水素基の炭素数は、6以上30以下の範囲内が好ましいが、10以上24以下の範囲内がより好ましい。その理由は、炭素数が少なくなると、金属石鹸(脂肪酸金属塩)の融点が低下して液状になり、取り扱いが難しくなることと、炭素鎖が長すぎると、融点が高くなりすぎて、成型温度での分解性が低下するためである。
【0020】
炭化水素基を有する脂肪酸としては、飽和脂肪酸系、ジカルボン酸系、不飽和カルボン酸系等を用いることが可能である。
飽和脂肪酸系としては、例えば、ヘキサン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸等を用いることが可能である。
ジカルボン酸系としては、例えば、セバシン酸、アゼライン酸等を用いることが可能である。
不飽和カルボン酸系としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、ウンデシレン酸等を用いることが可能である。
【0021】
また、活性プロトンを含む官能基とは、直鎖状の炭化水素基に直接結合する有機基のうち、25[℃]の水中における酸解離定数が18以下であるものが挙げられる。
酸解離定数の下限値については、特に制限されないが、樹脂分の酸劣化、充填剤の凝集・酸変性、壁紙としての一般使用の観点から、9以上とすることが可能である。
また、同一分子中における官能基の個数については、特に制限されず、官能基を二個以上有する場合には、これらは互いに同一であっても、異なっていてもよい。
官能基としては、例えば、水酸基、ニトロメチル基、メルカプト基等が挙げられる。中でも、入手が容易であるため、官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0022】
第一実施形態では、官能基を、水酸基とした場合について説明する。
また、発泡助剤に、水酸基を含有した脂肪酸金属塩を用いることで、水酸基の強い分極に起因する電気的な分子間相互作用がより強固に働き、より効果的にブリードアウトが低減され、発泡性と印刷適性を、更に高水準で両立することが可能となる。
特に、樹脂分として、エチレン単独重合体や、エチレンと他のオレフィンとの共重合体と組み合わせて用いた場合には、ベース樹脂の表面エネルギーの差があるために、ブリードアウトの低減による、親インク性の向上効果がより大きく発揮される。このため、印刷適性の良好な壁紙用原反としての、樹脂シートや積層シートを得ることが可能となる。
【0023】
さらに、水酸基は、活性プロトンを有する官能基としては、酸解離定数が低いため、系中の活性プロトン濃度が抑えられることで、呈色物質の発生をより抑えることが可能となる。
官能基を含有する脂肪酸金属塩(以降の説明では、「官能基含有脂肪酸金属塩」と記載する場合がある)の官能基含有脂肪酸としては、例えば、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシラウリン酸等を用いることが可能である。
【0024】
官能基含有脂肪酸金属塩の金属としては、例えば、バリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等が挙げられるが、中でも亜鉛である場合は、発泡助剤としての活性が非常に強く、特に有用である。
上述した観点から、官能基含有脂肪酸金属塩として、ヒドロキシラウリン酸亜鉛塩、ヒドロキシステアリン酸亜鉛塩、ジヒドロキシステアリン酸亜鉛塩、ジヒドロキシラウリン酸亜鉛塩が好ましい。特に、入手の容易さやコストの観点から、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛がより好ましい。また、これらの官能基含有脂肪酸金属塩は、一種を単独で用いることも、二種以上を併用して用いることも可能である。
【0025】
官能基含有脂肪酸金属塩の含有量としては、樹脂分100質量部に対して、1以上10以下の範囲内の質量部であることが好ましく、1以上8以下の範囲内の質量部であることが、より好ましい。その理由を、以下に記載する。
官能基含有脂肪酸金属塩の含有量が、樹脂分100質量部に対して1以上10以下の範囲内の質量部であれば、より良好な印刷適性をもつ発泡壁紙用原反を得ることが可能となる。また、官能基含有脂肪酸金属塩の含有量が1質量部未満であると、官能基含有脂肪酸金属塩の発泡助剤としての効果が十分に得られにくく、発泡剤の分解効率が低下する傾向がある。さらに、官能基含有脂肪酸金属塩の含有量が10質量部より多いと、製膜した樹脂シートの表面に存在する官能基含有脂肪酸金属塩の影響により、印刷適性が低下する傾向がある。
【0026】
第一実施形態の発泡助剤としては、本願発明による効果が損なわれない範囲であれば、官能基含有脂肪酸金属塩以外の発泡助剤を用いてもよい。すなわち、発泡助剤としては、例えば、脂肪族系、脂肪酸アミド系、脂肪酸金属塩系、ビウレア等の尿素系、塩化亜鉛等の金属塩化物、酸化亜鉛等の金属酸化物等を用いてもよい。
脂肪族系としては、ステアリン酸、ラウリン酸等を用いてもよい。
脂肪酸アミド系としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等を用いてもよい。
脂肪酸金属塩系としては、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム等を用いてもよい。
また、第一実施形態において、官能基含有脂肪酸金属塩の含有量としては、発泡助剤の総量100質量部に対して、30以上100以下の範囲内の質量部であることが好ましく、50以上100以下の範囲内の質量部であることがより好ましい。これは、官能基含有脂肪酸金属塩の含有量が、発泡助剤の総量100質量部に対して30以上100以下の範囲内の質量部であれば、印刷適性を十分維持しつつ、より良好な施工性及び発泡倍率を有する発泡壁紙用原反を得ることが可能となるためである。
【0027】
発泡助剤の総量としては、発泡剤100質量部に対して、20以上150以下の範囲内の質量部であることが好ましく、20以上100以下の範囲内の質量部であることがより好ましい。これは、発泡助剤の総量が、発泡剤100質量部に対して20以上100以下の範囲内の質量部であれば、発泡壁紙1の製造時における発泡温度を下げすぎることなく、発泡後の呈色をより効率的に抑えることが可能となり、印刷適性も良好に保つことが可能となるためである。また、発泡助剤の含有量が、発泡剤100質量部に対して150質量部以下であれば、発泡剤の分解温度が低下しすぎることによる、発泡壁紙1の製造時における、機械的制約及び材料的制約を小さくすることが可能となるためである。さらに、発泡助剤の含有量が、発泡剤100質量部に対して20質量部以上であれば、発泡工程における加熱を、過度に長期化、高温化することなく、十分な発泡性を得ることが可能となり、基材2の熱劣化や樹脂の酸化劣化による変色を抑制することが可能となるためである。
以上により、発泡助剤は、脂肪酸金属塩の炭素鎖に活性プロトンを含む官能基を有する官能基含有脂肪酸金属塩を含む。
【0028】
(樹脂分)
樹脂分は、燃焼時にダイオキシン等の有毒ガスの発生を防ぐ観点から、非塩素系の熱可塑性樹脂(以降の説明では、「非塩素系熱可塑性樹脂」と記載する場合がある)を含むことが好ましい。
非塩素系熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンと他のオレフィンとの共重合体、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、エチレンコポリマー等を用いることが可能である。また、非塩素系熱可塑性樹脂として用いる重合体、樹脂、ポリマーは、一種を単独で用いることも、二種以上を併用して用いることも可能である。
【0029】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等の単一オレフィン重合体、2種以上のオレフィンのランダム、ブロック共重合体等を用いることが可能である。
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等を用いることが可能である。
エチレンコポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等を用いることが可能である。
【0030】
上述した重合体、樹脂、ポリマーの中でも、樹脂分としては、エチレン単独重合体、または、エチレンと他のオレフィンとの共重合体を含むことが好ましい。これは、エチレン単独重合体、または、エチレンと他のオレフィンとの共重合体を用いると、ベース樹脂の表面エネルギーが大きいため、ブリードアウトの低減による親インク性の向上効果がより大きく発揮されるためである。また、エチレン単独重合体、及びエチレンと他のオレフィンとの共重合体は、無極性の非ハロゲン系熱可塑性樹脂であり、これらを用いることで、充填剤を増量した場合の粘度上昇が抑えられるため、高品質の壁紙を安定して生産することが可能となるためである。
【0031】
エチレン単独重合体としては、例えば、高圧法で合成された低密度ポリエチレン、中低圧法で合成されたコモノマーを含まない高密度ポリエチレン等を用いることが可能である。
なお、エチレン単独重合体としては、低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
また、低密度ポリエチレンは、例えば、密度0.91[g/cm
3]以上0.94[g/cm
3]以下の範囲内にあるものが挙げられる。
低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは、密度0.91[g/cm
3]以上0.93[g/cm
3]以下の範囲内であり、より好ましくは、密度0.92[g/cm
3]以上0.93[g/cm
3]以下の範囲内である。
【0032】
低密度ポリエチレンの分子量、融点、メルトフローレート(MFR)等については、特に制限されないが、融点については、50[℃]以上140[℃]以下の範囲内が好ましく、60[℃]以上110[℃]以下の範囲内がより好ましい。これは、低密度ポリエチレンの融点が140[℃]以下であれば、樹脂を溶融して成型する際に、より高温で溶融する必要がなく、発泡剤が成型中に分解してしまうという可能性が少ないためである。また、低密度ポリエチレンの融点が50[℃]以上であれば、実使用上の熱耐久性が十分に得られるためである。
【0033】
低密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)については、3以上150以下の範囲内のものが好ましく、4以上100以下の範囲内のものがより好ましい。これは、低密度ポリエチレンのMFRが3以上であれば、成型時に生じるせん断発熱を抑えることが可能であるため、加工温度の制御が容易になり、成型中に発泡剤が分解してしまうという可能性が少ないためである。また、低密度ポリエチレンのMFRが150以下であれば、製造された発泡壁紙1の機械強度が保たれて、施工性及び耐久性に優れるためである。
上記の特性を有する低密度ポリエチレンとしては、例えば、日本ポリエチレン(株)製:「ノバテックLD LC802A」や「ノバテックLD LC604」、宇部丸善ポリエチレン(株)製:「宇部ポリエチレン J2516」等、市販品を用いることが可能である。
【0034】
エチレンと他のオレフィンとの共重合体としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、コモノマーとの共重合で得られた高密度ポリエチレン等を用いることが可能である。また、エチレンと他のオレフィンとの共重合体として用いるポリエチレンは、一種を単独で用いることも、二種以上を併用して用いることも可能であるが、超低密度ポリエチレンを単独で用いることが好ましい。
超低密度ポリエチレンとしては、例えば、密度0.88[g/cm
3]以上0.91[g/cm
3]未満の範囲内にあるものを用いることが可能である。
【0035】
超低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは、密度0.88[g/cm
3]以上0.90[g/cm
3]以下の範囲内であり、より好ましくは、密度0.89[g/cm
3]以上0.90[g/cm
3]以下の範囲内である。
超低密度ポリエチレンの分子量、融点、MFR等については、特に制限されないが、融点については、50[℃]以上140[℃]以下の範囲内が好ましく、60[℃]以上110[℃]以下の範囲内がより好ましい。これは、超低密度ポリエチレンの融点が140[℃]以下であれば、樹脂を溶融して成型する際に、より高温で溶融する必要がなく、発泡剤が成型中に分解してしまうという可能性が少ないためである。また、超低密度ポリエチレンの融点が50[℃]以上であれば、実使用上の熱耐久性が十分に得られるためである。
【0036】
超低密度ポリエチレンのMFRについては、3以上150以下の範囲内のものが好ましく、4以上100以下の範囲内のものがより好ましい。これは、超低密度ポリエチレンのMFRが3以上であれば、成型時に生じるせん断発熱を抑えることが可能となるため、加工温度の制御が容易になり、成型中に発泡剤が分解してしまうという可能性が少ないためである。また、超低密度ポリエチレンのMFRが150以下であれば、製造された発泡壁紙1の機械強度が保たれ、施工性及び耐久性に優れるためである。
【0037】
上記の特性を有する超低密度ポリエチレンとしては、例えば、三井化学(株)製:「タフマー DF140、DF940、DF7350」や、日本ポリエチレン(株)製:「カーネル KJ−640T」等、市販品を用いることが可能である。同様に、超低密度ポリエチレンとしては、例えば、住友化学(株)製:「エクセレンFX CX5508」や、ダウ・ケミカル社(株)製:「エンゲージ 8400/8407」等、市販品を用いることが可能である。さらに、超低密度ポリエチレンとしては、例えば、プライムポリマー(株)製:「エボリューP SP90100」や、東ソー(株)製:「ルミタック09L54A」等、市販品を用いることが可能である。
樹脂分の含有量は、樹脂の合計量が、発泡壁紙用原反全量を基準として、20質量[%]以上80質量[%]以下の範囲内であることが好ましく、40質量[%]以上75質量[%]以下の範囲内であることがより好ましく、50質量[%]以上70質量[%]以下の範囲内であることが更に好ましい。なお、この場合、樹脂分は架橋されていてもよい。
以上により、発泡壁紙用原反は、樹脂分を含有する。
【0038】
(添加剤)
添加剤は、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体を含有する。
トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートまたは多量体の含有量としては、樹脂分100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内であり、1質量部以上8質量部以下の範囲内であることがより好ましい。これは、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートまたは多量体の含有量が、樹脂分100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下の範囲内であれば、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートまたは多量体によるブリードアウトを制限しながら、発泡工程での呈色物質の発生をより効率的に抑えることが可能となるためである。
【0039】
また、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートまたは多量体の含有量としては、官能基含有脂肪酸金属塩100質量部に対して、30質量部以上200質量部以下の範囲内であることが好ましく、50質量部以上120質量部以下の範囲内であることがより好ましい。これは、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートまたは多量体の含有量が、官能基含有脂肪酸金属塩100質量部に対して30質量部以上200質量部以下の範囲内であれば、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートまたは多量体によるブリードアウトを制限しながら、発泡工程での呈色物質の発生をより効率的に抑えることが可能であり、印刷適性も良好に保つことが可能となるためである。
【0040】
なお、多価アルコールの含有量が、官能基含有脂肪酸金属塩100質量部に対して30質量部以上であれば、呈色抑制効果が得られやすくなり、200質量部以下であれば、多価アルコールによるブリードアウトを制限することが可能となる。
また、第一実施形態に係る発泡壁紙用原反には、必要に応じて顔料等を添加して着色してもよい。
顔料の添加による着色は、透明であってもよいし、半透明であってもよいし、不透明であってもよい。
【0041】
顔料としては、例えば、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料、アニリンブラック、フタロシアニンブルー等の有機顔料等を用いることが可能である。
顔料の添加量は、発泡壁紙用原反全量を基準として、好ましくは5[質量%]以上50[質量%]以下の範囲内、より好ましくは、10[質量%]以上30[質量%]以下の範囲内である。
また、発泡壁紙用原反には、必要に応じて、難燃剤、セル調整剤、安定剤、滑剤等の周知の添加剤を用いることが可能である。
【0042】
難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属酸化物系難燃剤、リン酸エステル系等のリン系難燃剤、テトラブロモビスフェノールA等の臭素系難燃剤等を用いることが可能である。
セル調整剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂等を用いることが可能である。また、セル調整剤としては、例えば、ADEKA(株)製:「アデカスタブHP−10」や、B.A.S.F. Japan(株)製:「Irgafos 38」や、城北化学工業(株)製:「JPP−2000」等、市販品を用いることが可能である。
【0043】
安定剤としては、例えば、フェノール/アミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等のラジカル捕捉剤、リン系、イオウ系等の過酸化物分解剤、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等を用いることが可能である。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸系、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド系、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、オクチル酸亜鉛等の脂肪酸金属塩系の滑剤等を用いることが可能である。
以上により、発泡壁紙用原反は、複数種類の添加剤と、発泡剤と、発泡助剤を含有する。
【0044】
また、発泡壁紙用原反が含有する複数種類の添加剤のうち少なくとも一種は、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体である。
また、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの含有量、または、多量体の含有量が、樹脂分の100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内である。
さらに、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの含有量、または、多量体の含有量は、官能基含有脂肪酸金属塩の100質量部に対して30質量部以上200質量部以下の範囲内である。
【0045】
(発泡壁紙1の製造方法)
以下、
図1を参照しつつ、
図2を用いて、第一実施形態の発泡壁紙1の製造方法を説明する。
発泡壁紙1の製造方法は、第一工程と、第二工程を有する。
第一工程では、
図2中に表すように、樹脂シート6を基材2上にラミネートして、積層シート8を形成する。なお、樹脂シート6及び積層シート8の詳細な説明は、後述する。
第二工程では、第一工程で形成した積層シート8に対し、樹脂シート6が含有する発泡剤を発泡させることで発泡樹脂層4を形成するとともに、発泡樹脂層4を基材2上に積層して、発泡壁紙1を製造する(
図1参照)。
【0046】
発泡剤の発泡は、樹脂シート6を加熱することで行う。
樹脂シート6を加熱する条件としては、樹脂シート6を構成する成分によって適宜設定することが可能であり、特に制限は無い。具体的には、160[℃]以上280[℃]以下の範囲内で10秒〜120秒の間で加熱することが好ましく、220[℃]以上240[℃]以下の範囲内で20秒〜40秒の間で加熱することがより好ましく、220[℃]で40秒間加熱することが更に好ましい。
以上により、発泡壁紙1は、積層シート8を用いて形成されている。また、発泡壁紙1は、樹脂シート6が含有する発泡剤を発泡させて形成されている。すなわち、積層シート8は、発泡剤が発泡した樹脂シート6を備える。
【0047】
(樹脂シート6の詳細な説明)
樹脂シート6は、発泡壁紙用原反を用いて形成されている。
第一実施形態では、樹脂シート6を、発泡壁紙用原反を押出製膜して形成した場合について説明する。
押出製膜の方法としては、例えば、Tダイ押出法、Tダイ押出同時ラミネーション法、Tダイ押出タンデムラミネーション法、円形ダイ押出法、円形ダイインフレーション押出法等の押出成形を用いることが可能である。
【0048】
また、樹脂シート6を形成する方法としては、押出成形以外に、射出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形等、公知の成形方法を用いることも可能である。
樹脂シート6を形成する発泡壁紙用原反としては、各成分を押出機で溶融・混練・分散させた後に、適宜ペレット化したものを用いることが可能である。
押出機は、単軸押出機でも二軸押出機でもよいが、生産性や品質への影響を考慮した場合、二軸押出機が望ましい。
【0049】
押出製膜の条件としては、押出温度が100[℃]以上160[℃]以下の範囲内、押出圧力が2[MPa]以上50[MPa]以下の範囲内が挙げられる。
なお、発泡剤成分の分解を抑制しつつ、ポリエチレン成分の融点以上とする観点から、押出温度は、110[℃]以上150[℃]以下の範囲内、120[℃]以上140[℃]以下の範囲内がより好ましい。また、押出安定性の観点から、押出圧力は、3[MPa]以上40[MPa]以下の範囲内が好ましく、3[MPa]以上30[MPa]以下の範囲内がより好ましい。
【0050】
樹脂シート6の厚さは、用途に応じて適宜設定することが可能であるが、第一実施形態のように、発泡壁紙1を製造する用途であれば、50[μm]以上200[μm]以下の範囲内とすることが可能である。
また、第一実施形態では、樹脂シート6に架橋処理が施されている場合について説明する。すなわち、第一実施形態では、樹脂シート6が架橋している場合について説明する。
架橋処理としては、例えば、電子線照射処理、過熱蒸気処理等の加熱処理を用いることが可能である。
【0051】
電子線照射処理は、例えば、製膜した樹脂シート6の片面側、または、両面から電子線を照射する処理により、樹脂シート6に架橋処理を施す処理である。
電子線照射の条件としては、発泡樹脂層4の厚さにもよるが、加速電圧が150[kV]以上300[kV]以下の範囲内、照射線量が10[kGy]以上100[kGy]以下の範囲内が好ましい。これは、加速電圧が上記の範囲内であれば、電子線を樹脂シート6の厚さ方向深くまで十分に到達させることが可能であり、なおかつ、裏打紙への電子線による劣化を抑制することが可能となるためである。また、照射線量が上記の範囲内であれば、樹脂シート6の黄変や機械物性の変化を抑制しつつ、樹脂シート6に所望の架橋処理を施すことが容易となるためである。
【0052】
過熱蒸気処理としては、例えば、温度が130[℃]以上280[℃]以下の範囲内の環境下で、20秒から15分の間、過熱蒸気(過熱水蒸気ともいう)処理する方法等を用いることが可能である。
また、過熱蒸気処理としては、例えば、過熱蒸気雰囲気下にシート状の物体を配置し、シート状の物体に過熱蒸気を接触させる方法が挙げられる。また、水架橋させる方法としては、湿度が60[%]以上の環境下において、温度が40[℃]以上70[℃]以下の範囲内の温度域で、1日〜1ヶ月の間、養生させて水架橋させる方法を用いることが可能である。具体的には、温度が40[℃]であるとともに、湿度が90[%]の恒温恒湿槽の環境下で養生させて、水架橋させる方法が挙げられる。
なお、発泡壁紙用原反がシラン架橋性樹脂を含む場合には、架橋処理として、例えば、過熱蒸気処理、水架橋処理を用いることが可能である。
また、樹脂シート6の架橋処理は、発泡壁紙用原反を製膜したものに施してもよく、積層シート8に対して施してもよい。
【0053】
(積層シート8の詳細な説明)
積層シート8は、基材2と、基材2上に設けられた樹脂シート6を備えている。
また、積層シート8は、樹脂シート6を、基材2上にラミネートして形成されている。
樹脂シート6を基材2上にラミネートする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂シート6と基材2とを、熱プレス機等を用いて熱圧着を行う方法や、過熱蒸気を用いて圧着を行う方法等を用いることが可能である。
過熱蒸気を用いて圧着を行う方法によれば、過熱蒸気によって、樹脂シート6の表面の溶融状態を保ったまま、基材2上へラミネートすることが可能となる。このため、レベリング効果によって、密着させる基材2の表面の凹凸が、樹脂シート6に転写されることを抑制することが可能となる。また、樹脂シート6がシラン架橋性樹脂を含む場合は、過熱蒸気によって、シラン架橋性樹脂を効率良く架橋させることが可能となる。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0054】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の発泡壁紙1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)発泡壁紙用原反が、複数種類の添加剤と、発泡剤と、発泡助剤を含有する。これに加え、複数種類の添加剤のうち少なくとも一種が、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体である。さらに、発泡助剤が、脂肪酸金属塩の炭素鎖に活性プロトンを含む官能基を有する官能基含有脂肪酸金属塩を含む。
その結果、良好な発泡性及び十分な印刷適性を有するとともに、発泡過程での変色が発生しにくい発泡樹脂層を形成することが可能となる。
【0055】
以下、良好な発泡性及び十分な印刷適性を有するとともに、発泡過程での変色が発生しにくい発泡樹脂層を形成することが可能となる理由について説明する。
まず、従来の脂肪酸金属塩が配合された樹脂シート6の印刷適性が低下する要因としては、脂肪酸金属塩の界面活性作用が非常に強く、印刷が施される表面、または、印刷後の印刷界面にブリードアウトした脂肪酸金属塩が、表面の濡れ性や親インク性を低下させたり、インキの密着性を低下させたりすることが考えられる。
【0056】
これに対し、第一実施形態では、発泡助剤が官能基含有脂肪酸金属塩を含むことで、良好な発泡性を得ることが可能となる。これに加え、脂肪酸金属塩の炭素鎖に付加している活性プロトンを含む官能基が周囲の樹脂と相互作用し、印刷が施される表面、または、印刷後の印刷界面へのブリードアウトを低減することが可能となる。これにより、印刷適性が維持される。
また、発泡助剤が官能基含有脂肪酸金属塩を含む場合、系中の活性プロトンが発泡剤と相互作用することで分解過程が変化し、呈色物質が発生することで、得られる発泡壁紙1が変色する場合がある。
【0057】
これに対し、第一実施形態では、複数種類の添加剤のうち少なくとも一種が、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体である。このため、発泡剤と相互作用する活性プロトンが、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体と水素結合する。これにより、呈色物質の生成を抑制することが可能となるため、得られる発泡壁紙1の変色を抑制することが可能となる。
【0058】
ところで、近年、消費者の化学物質に対する意識の高まりから、住宅に使われる発泡壁紙の印刷層には、水系のインキが使用されている。
しかしながら、水系のインキは、樹脂に対する親和性の低さから、密着性を確保しにくい。また、従来の脂肪酸金属塩は強い界面活性効果を持っているために、発泡壁紙の表面へのブリードアウトが生じてしまった場合には、そのインキ密着性を、著しく低下させることがあった。
【0059】
これに対し、第一実施形態の発泡壁紙用原反であれば、発泡壁紙1の表面へのブリードアウトが生じにくいため、印刷層に水系のインキを用いた場合であっても、インキ密着性を、十分に確保することが可能となる。
また、第一実施形態の発泡壁紙用原反によれば、例えば、積層シート8の表面に非発泡層を設けて発泡助剤のブリードアウトをブロックする等の処置を必要とせずに、十分な印刷適性を確保することが可能となる。これにより、より簡便なシート構造で、十分な印刷適性と、良好な発泡性とを兼ね備える樹脂シート6を形成することが可能となる。
【0060】
(2)発泡壁紙用原反が、樹脂分を含有する。これに加え、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの含有量、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体の含有量が、樹脂分の100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下の範囲内である。
その結果、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの含有量、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体によるブリードアウトを制限しながら、発泡工程での呈色物質の発生を、より効率的に抑制することが可能となる。
【0061】
(3)トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの含有量、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体の含有量が、官能基含有脂肪酸金属塩の100質量部に対して、30質量部以上200質量部以下の範囲内である。
その結果、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの含有量、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体によるブリードアウトを制限しながら、発泡工程での呈色物質の発生を、より効率的に抑制することが可能となるとともに、印刷適性も良好に保つことが可能となる。
【0062】
詳細には、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの含有量、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体の含有量が、官能基含有脂肪酸金属塩100質量部に対して30質量部以上であれば、呈色抑制効果が得られやすくなる。これに加え、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの含有量、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体の含有量が、官能基含有脂肪酸金属塩100質量部に対して200質量部以下であれば、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの含有量、または、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの持つ水酸基が脱水縮合した多量体によるブリードアウトを制限することが可能となる。
【0063】
(4)官能基が、水酸基である。
その結果、脂肪酸金属塩の炭素鎖に水酸基を有する水酸基含有脂肪酸金属塩を用いることととなり、発泡壁紙用原反の発泡性及び印刷適性を高水準で両立させるとともに、発泡工程での呈色物質の発生をより効率的に抑えることが可能となる。
これは、水酸基が、活性プロトンを有する官能基としては酸解離定数が低いため、系中の活性プロトン濃度が抑えられることで呈色物質の発生をより抑えることが可能となり、なおかつ、炭素−水素結合に比べて強い分極に起因する電気的な分子間相互作用がより強固に働き、より効果的にブリードアウトを低減することが可能となるためである。
また、第一実施形態の樹脂シート6であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0064】
(5)樹脂シート6が、発泡壁紙用原反を用いて形成されている。
その結果、良好な発泡性及び十分な印刷適性を有するとともに、発泡過程での変色が発生しにくい樹脂シート6を形成することが可能となる。
(6)樹脂シート6が、架橋している。
その結果、発泡時のガス抜けを抑制することが可能となるため、均一且つ表面からのガス抜けが少ない発泡樹脂層4を形成することが可能となる。
また、第一実施形態の積層シート8であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0065】
(7)積層シート8が、基材2と、基材2上に設けられた樹脂シート6を備える。
その結果、良好な発泡性及び十分な印刷適性を有するとともに、発泡過程での変色が発生しにくい積層シート8を形成することが可能となる。
また、第一実施形態の発泡壁紙1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(8)発泡壁紙1が、積層シート8を用いて形成されている。これに加え、積層シート8は、発泡剤が発泡した樹脂シート6を備える。
その結果、良好な発泡性及び十分な印刷適性を有するとともに、発泡過程での変色が発生しにくい発泡壁紙1を形成することが可能となる。これに加え、発泡壁紙1を、効率よく形成することが可能となる。
【0066】
(変形例)
(1)第一実施形態では、発泡樹脂層4の基材2とは反対側の面を、均一な面に形成したが、これに限定するものではない。すなわち、発泡樹脂層4の基材2とは反対側の面が、凹凸形状を有していてもよい。
この場合、発泡樹脂層4の基材2とは反対側の面に凹凸形状を設ける方法としては、例えば、加熱発泡の際の熱を利用して、表面側を冷却エンボスロールとし、基材側をゴムロールとしておき、2つのトールでニップし(エンボス加工し)冷却することにより、表面に凹凸形状を形成する方法等を用いることが可能である。
また、発泡樹脂層4の基材2とは反対側の面に設ける凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャー、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等を用いることが可能であり、目的とする意匠により、適宜選択可能である。
【0067】
(2)第一実施形態では、発泡壁紙1の構成を、基材2と、発泡樹脂層4を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、発泡壁紙1の構成を、基材2と発泡樹脂層4に加え、模様層及び表面保護層を設けた構成としてもよい。
この場合、模様層及び表面保護層は、公知の材料を使用して適宜設けることが可能である。また、模様層及び表面保護層は、グラビアコーティング等、公知の印刷技術を用いて設けることが可能である。なお、模様層及び表面保護層は、発泡剤を発泡させる前に設けることが可能である。
【実施例】
【0068】
第一実施形態の
図1及び
図2を参照しつつ、以下に記載する実施例により、本発明例1から3の発泡壁紙と、比較例1から3の発泡壁紙について説明する。
(発泡壁紙の製造)
コートハンガータイプのマニュホールドを有するTダイを用いて、スクリュー径(D)が65[mm]、L/D=32のバリアタイプスクリューを用い、表1中に表す組成(表1中の数値は、質量部を表す)を有する発泡壁紙用原反を、押出温度を125[℃]とし、厚さを100[μm]として製膜し、本発明例及び比較例の樹脂シートをそれぞれ形成した。
なお、本発明例及び比較例の樹脂シートは、それぞれ、加速電圧を200[kV]とし、照射線量を50[kGy]として電子線を照射し、樹脂分を架橋させた。
【0069】
次に、重量が65[g/cm
2]の裏打紙(KJ特種紙(株)製:「WK−6651HT」)上に、本発明例及び比較例の樹脂シートを置き、温度が110[℃]で加熱した熱プレス機で、プレス圧力が5[MPa]の条件で2分間プレスして熱融着させ、積層シートを形成した。
さらに、積層シートのうち、樹脂シート側の表面にコロナ放電処理を施した後、グラビア印刷機により、水性インキ(大日精化工業(株)製:「ハイドリックWP」)を用いて絵柄模様を印刷した。
次に、本発明例及び比較例の積層シートを、温度を240[℃]に設定したオーブンで25秒間加熱し、発泡剤を発泡させて、本発明例及び比較例の発泡壁紙を製造した。
【0070】
【表1】
【0071】
表1中に表す各成分としては、以下の材料を用いた。
・樹脂A:密度が0.918[g/cm
3]の低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製:「ノバテックLD LC604」)
・樹脂B:密度が0.905[g/cm
3]の超低密度ポリエチレン(三井化学(株)製:「タフマー DF140」)
・充填剤A:炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製:「ソフトン1000」)
・充填剤B:二酸化チタン(石原産業(株)製:「タイペークCR−60−2」)
・発泡剤:アゾジカルボンアミド系発泡剤(永和化成工業(株)製:「ビニホールAC#3C−K2」)
・発泡助剤A:12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛(日東化成工業(株)製:「ZS−6」)
・発泡助剤B:ステアリン酸亜鉛等脂肪酸金属塩及び炭酸カルシウムの、重量比1:1混合物(ADEKA(株)製:「アデカスタブ OF−101」)
・添加剤A:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(四国化成工業(株)製:「セイク」)
・添加剤B:リン酸エステル(ADEKA(株)製:「HP-10」)
・安定剤:フェノール系酸化防止剤(ADEKA(株)製:「AO−50」)
・耐候剤:ヒンダードアミン系光安定剤(ADEKA(株)製:「アデカスタブ LA-63P」)
・滑剤:(ADEKA(株)製:「アデカスタブAP−546」)
【0072】
(発泡壁紙の性能評価)
本発明例1から3の発泡壁紙と、比較例1から3の発泡壁紙に対し、以下に記載する方法を用いて、発泡倍率と、インキの密着性と、変色を評価した。評価結果は、表2中に表す。
(発泡倍率)
まず、発泡前であり乾燥している発泡樹脂層の厚さ(a)を測定し、これを初期値とした。
次に、発泡炉にて発泡した後の発泡壁紙が備える発泡樹脂層の厚さ(b)を測定し、(b)/(a)を、発泡倍率として算出した。
【0073】
(インキ密着性)
織物絵柄を印刷した積層シートに対して、テープ(ニチバン(株)製:「CT−24」)による絵柄層の密着試験を行った。
インキ密着性に関しては、試験前と比較して絵柄層が99%以上残留しているものを「◎」とし、絵柄層の残留率が50%以上99%未満のものを「○」とし、50%未満のものを「×」とした。
【0074】
(変色)
発泡後の発泡壁紙の色調を、目視にて評価した。
変色に関しては、比較例1の発泡壁紙と比較して差異がみられないものを「◎」とし、ほとんど黄変がみられないものを「○」とし、黄変しているものを「×」とした。
(積層シートの性能評価)
本発明例1から3の積層シートと、比較例1から3の積層シートに対し、以下に記載する方法を用いて、コロナ処理後の濡れ性と、インキに対する接触角を評価した。評価結果は、表2中に表す。
【0075】
(濡れ性)
まず、積層シートの、樹脂シート側の表面に対し、コロナ放電処理を施した。
次に、コロナ放電処理を施した面に対し、濡れ張力試験用の混合液(和光純薬(株)製:「濡れ張力試験用混合液No.30〜No.42」)を用いて、JIS K6768に記載の通りに試験を行い、樹脂シートの濡れ張力(mN/m=N/mm)を測定した。
(接触角)
マツボー(株)製:「携帯式接触角計PG−3」を用いて、ハイドリックインキ(大日精化工業(株)製:「ハイドリックWP」)に対する接触角を測定した。
【0076】
【表2】
【0077】
(評価結果)
表2中に表されるように、本発明例1から3の発泡壁紙及び樹脂シートは、比較例1から3の発泡壁紙及び樹脂シートと比較して、良好な発泡性と、十分な印刷適性を有するとともに、発泡過程での変色が発生しにくいことが確認された。