(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(発泡壁紙1)
図1に示すように、本実施形態の発泡壁紙1は、紙基材2上に、発泡層3、及び絵柄模様層4がこの順に積層されて形成されている。なお、紙基材2と発泡層3との間、発泡層3と絵柄模様層4との間、及び絵柄模様層4の表面等には、必要に応じて、他の層を形成してもよい。例えば、絵柄模様層4の表面に、絵柄模様層4を保護する透明な保護層を設けてもよい。また、発泡壁紙1の表層には、エンボス加工によって凹凸5が形成されている。これにより、絵柄模様層4による意匠性に加え、凹凸5による意匠性を感じさせる。
【0010】
(紙基材2)
紙基材2としては、特に限定されず、公知の繊維質シートを使用できる。繊維質シートとしては、例えば、難燃紙、つまり、パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙等が挙げられる。紙基材2の坪量は、例えば、50〜300g/m
2程度が好ましく、50〜80g/m
2がより好ましい。このように、発泡壁紙1の基材に紙を用いたため、汎用的な壁紙として扱うことができる。
【0011】
(発泡層3)
発泡層3は、発泡剤含有樹脂層30(
図2参照)を発泡させてなる層である。発泡剤含有樹脂層30は、発泡剤を含有する樹脂組成物をTダイ押出機でシート状に溶融押出して得られる。樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリオレフィン系樹脂を含有する。これにより、脱塩ビ化を行うことができ、環境によい発泡壁紙1を形成できる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、密度0.91g/cm
3以上0.94g/cm
3以下の低密度なポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂の含有量は、発泡剤含有樹脂層30の全質量に対して、20質量%以上80質量%以下とする。これにより、発泡壁紙1に適したシート成形を行える。
【0012】
また、発泡剤含有樹脂層30は、発泡剤として、超臨界流体を含有する。超臨界流体としては、例えば、無害で環境に配慮したガスとすることを考慮すれば、超臨界状態の二酸化炭素、超臨界状態の窒素がより好ましい。特に、二酸化炭素は、31℃以上、7.3MPa以上の環境で超臨界状態となるため、取り扱いが比較的容易なものとなる。超臨界流体は、溶融可塑化した樹脂組成物に注入されて樹脂層生物に含浸されている。超臨界流体の注入量(含有量)は、所望の発泡倍率等に応じて適宜設定できる。例えば、樹脂成分の全質量(100質量%)に対して、1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。
【0013】
このように、本実施形態では、超臨界流体を発泡剤としたため、例えば、熱分解発泡剤を用いる方法と異なり、Tダイ押出機内での発泡剤の熱分解を防止することができる。また、樹脂内に発泡剤が均一に混ざりやすく、均一に発泡でき、発泡体(発泡壁紙1)の製品品質を向上できる。さらに発泡剤からアンモニアガス等が発生することを防止できる。
なお、発泡剤含有樹脂層30には、発泡核剤を更に含有する構成としてもよい。発泡核剤としては、例えば、無機フィラー等が挙げられる。これにより、発泡核剤が超臨界流体の発泡の起点となるため、超臨界流体の発泡を促進することができる。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、ゼオライト、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられる。無機フィラーの含有量は、発泡剤含有樹脂層30の全質量に対して、20質量%以上80質量%以下とする。これにより、発泡壁紙1に適したシート成形を行える。
【0014】
また、発泡剤含有樹脂層30の片面または両面には、発泡剤を含有していない非発泡層を有する構成としていてもよい。これにより、表面を平滑にし、さらに印刷適性を向上できる。非発泡層の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。非発泡層の厚さとしては、例えば、5μm以上50μm以下とすることが好ましい。
【0015】
(絵柄模様層4)
絵柄模様層4は、発泡壁紙1に絵柄を付加するための層である。絵柄としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形がある。絵柄は、発泡壁紙1が使用される場所に応じて選択できる。
【0016】
絵柄模様層4の形成方法としては、例えば、フレキソ印刷やグラビア印刷、シルクスクリーン印刷等も使用できるが、凹凸5の凹部の深部にまでインキを適切に乗せることを考慮すれば、インクを吹き付ける印刷法がより好ましい。インクを吹き付ける印刷法としては、例えば、インクを液滴化し、被印刷媒体に吹き付けるインクジェット印刷法が挙げられる。インクジェットインキとしては、例えば、水系顔料インク、溶剤系顔料インクを使用できる。これらのインクジェットインキは、公知のものを使用してもよい。なお、絵柄模様層4を形成する際には必要に応じて予めプライマー層を形成するようにしてもよい。
【0017】
(発泡壁紙1の製造方法)
次に、上記構成を有する発泡壁紙1の製造方法について説明する。
(第1工程)
まず、Tダイ押出機のシリンダ内で溶融可塑化した樹脂組成物に超臨界流体を注入し、溶融可塑化した樹脂組成物に超臨界流体を含浸させる。次に、
図2に示すように、超臨界流体が含浸している樹脂組成物、つまり、超臨界流体を含有する樹脂組成物をTダイ押出機でシート状に押出成形し、超臨界流体を発泡剤として含有する発泡剤含有樹脂層30を連続的に形成する。そして、形成した発泡剤含有樹脂層30を大気圧で減圧し、二酸化炭素や窒素等の超臨界状態が維持されない条件下とし、発泡剤含有樹脂層30内の超臨界流体を発泡させて発泡層3を連続的に形成し、帯状の発泡層3を形成する(第1工程)。
【0018】
ここで、発泡剤含有樹脂層30は、一対の冷却ロール(不図示)の間を通過させる。そして、発泡剤含有樹脂層30の内部の温度を含有樹脂の軟化点以上の温度に保持しつつ、表面の温度を含有樹脂の軟化点未満の温度に冷却する。これにより、発泡剤含有樹脂層30の内部での発泡を進行させつつ、発泡剤含有樹脂層30からのガス抜けを抑制する。
また、発泡層3の形成と同時に、繰り出しロールから繰り出されて搬送される紙基材2の一方の面を、発泡層3の発泡直後の部分に次々と貼り合わせる。このように、発泡層3の発泡直後(押出直後)の部分に紙基材2を貼り合わせるようにしたため、押出成形で樹脂組成物に付与された熱によって、発泡層3と紙基材2とを直接に貼り合わせることができ、別途アンカーコート剤を用いる必要がない。それゆえ、製造コストを低減できる。
【0019】
(第2工程)
次に、発泡層3の紙基材2に貼り合わせた部分を、対向配置された一対の予熱ヒータ6間を通過させて次々に加熱する。これにより、発泡層3の表面及び内部をエンボス加工による凹凸5を形成可能な温度(以下、「エンボス加工温度」とも呼ぶ)とする。エンボス加工温度としては、例えば、発泡層3の含有樹脂の軟化点の温度を使用できる。例えば、発泡層3の含有樹脂がポリエチレンである場合には、110℃以上150℃以下が好ましい。ちなみに、150℃以上である場合、紙基材2が熱で変色する可能性がある。
【0020】
次に、発泡層3の加熱した部分に、エンボス加工によって凹凸5を次々に形成する(第2工程)。これにより、発泡層3の搬送方向の端部側、一端側から順に凹凸11が形成される。
図2の例では、エンボス加工として、金属製のエンボスロール7と、ゴム製のバックロール8との間を通過させることにより、発泡層3にエンボスロール7を押し当てて凹凸5を形成する加工を行っている。エンボスロール7としては、例えば、版深が100μm以上800μm以下のものが好ましい。これにより、
図1に示すように、凹凸5の高低差を、100μm以上800μm以下とすることができる。エンボスロール7の版深としては、例えば、凹部の谷底と凸部の山頂との間の距離を使用できる。
また、エンボスロール7を押し当てることにより、発泡セルを圧縮して、発泡剤含有樹脂層30を厚さ方向に圧縮するとともに、紙基材2と発泡層3との密着性を向上させる。
【0021】
(第3工程)
次に、発泡層3の凹凸5が形成された部分に、インクを吹き付ける印刷法によって絵柄模様層4を次々に形成することで、発泡壁紙1を形成する(第3工程)。
図2の例では、インクを吹き付ける印刷法として、インクジェットヘッド9からインク滴を吹き付けるインクジェット印刷法を使用している。これにより、凹部の深部にインキを乗せることができ、より適切な絵柄模様層4を形成でき、より意匠性の高い発泡壁紙1を形成できる。
【0022】
なお、発泡剤含有樹脂層30の樹脂成分としてポリエチレンを用いている場合には、絵柄模様層4の形成前に、発泡層3の表面に電子線(EB:electric beam)または紫外線(UV:ultra violet)を照射してポリエチレンを架橋させて硬化させるようにしてもよい。これにより、発泡層3(発泡壁紙1)の表面において、EB硬化またはUV硬化しているポリエチレンを樹脂成分とすることができ、発泡壁紙1の耐傷性を向上できる。
【0023】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る発明は、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態に係る発泡壁紙1の製造方法は、超臨界流体を含有する樹脂組成物を押出成形して発泡層3を形成する第1工程と、形成した発泡層3にエンボス加工によって凹凸5を形成する第2工程と、発泡層3に形成した凹凸5上にインクを吹き付ける印刷法によって絵柄模様層4を形成する第3工程とする。
このような構成によれば、インクを吹き付ける印刷法によって絵柄模様層4を形成するため、凹部の深部にインキを乗せることができ、より適切な絵柄模様層4を形成できる。これにより、より意匠性の高い発泡壁紙1を製造することができる。
【0024】
(2)本実施形態に係る発泡壁紙1の製造方法は、第1工程では、押出成形によって発泡層3を連続的に形成し、第2工程では、発泡層3の一端側から順に凹凸5を次々に形成し、第3工程では、発泡層3の凹凸5が形成された部分に絵柄模様層4を次々に形成する。
このような構成によれば、発泡壁紙1を連続的に製造することができる。
【0025】
(3)本実施形態に係る発泡壁紙1の製造方法では、超臨界流体は、超臨界状態の二酸化炭素または窒素である。
このような構成によれば、無害で環境に配慮したガスを用いることができる。
(4)本実施形態に係る発泡壁紙1の製造方法では、押出成形で樹脂組成物に付与された熱によって、発泡層3に紙基材2を直接貼り合わせる。
このような構成によれば、発泡層3と紙基材2との貼り合わせに、アンカーコート剤を用いる必要がない。それゆえ、製造コストを低減することができる。
【0026】
(5)本実施形態に係る発泡壁紙1の製造方法では、樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を樹脂成分として含有し、無機フィラーを発泡核剤として含有する。
このような構成によれば、ポリオレフィン系樹脂を樹脂成分として含有するため、脱塩ビ化を行うことができ、より環境によい発泡壁紙1を形成することができる。また、無機フィラーを発泡核剤として含有するため、超臨界流体の発泡を促進することができる。
【0027】
(6)本実施形態に係る発泡壁紙1の製造方法では、発泡層3の表面に、電子線または紫外線を照射してポリエチレンを架橋させて硬化させる。
このような構成によれば、発泡壁紙1の耐傷性を向上することができる。
【0028】
(変形例)
(1)なお、本実施形態では、押出成形で樹脂組成物に付与された熱によって、発泡層3に紙基材2を直接貼り合わせる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、エンボス加工の実行時に、発泡層3に紙基材2をアンカーコート剤10を介して貼り合わせる構成としてもよい。具体的には、
図3に示すように、エンボス加工の実行時に、発泡層3と紙基材2との間にアンカーコート剤10をTダイを用いて押し出し、発泡層3、アンカーコート剤10及び紙基材2の積層体を形成する。そして、形成した積層体をエンボスロール7とバックロール8との間を通過させ、紙基材2に発泡層3を張り合わせる。
【0029】
この変形例によれば、アンカーコート剤10を介して貼り合わせるため、発泡層3の温度が低下しても、発泡層3と紙基材2とを適切に貼り合わせることができる。また、エンボス加工で付与される押圧力によって、紙基材2と発泡層3との密着性を向上できる。
(2)また、例えば、予熱ヒータ6を省略してもよい。この場合、押出成形直後の発泡層3をエンボス加工温度まで冷却した後、冷却した発泡層3にエンボス加工を行う。