特許第6772531号(P6772531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6772531制御システム、制御方法、制御プログラム、および記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772531
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】制御システム、制御方法、制御プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20201012BHJP
   G01R 31/08 20200101ALI20201012BHJP
【FI】
   G05B23/02 302S
   G01R31/08
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-91822(P2016-91822)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-199307(P2017-199307A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 敏之
(72)【発明者】
【氏名】土田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 公洋
(72)【発明者】
【氏名】都築 良介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大中 頌一
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−204048(JP,A)
【文献】 特開2012−225692(JP,A)
【文献】 特開平07−110652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00−23/02
G05B 19/04−19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置との間で所定の通信プロトコルに従って通信を行う通信部と、
前記外部装置から出力される出力信号を受信する信号受信部と、
前記通信部において受信したデータと、前記信号受信部において受信した出力信号値とに基づいて、前記信号受信部と前記外部装置とを接続する信号線に生じている異常の有無を判定する判定部とを備えており、
前記出力信号値は、二値化されたデジタル信号値であり、
前記通信部において受信したデータは、前記出力信号値に対応する出力データを含んでおり、
前記出力データの変化を検出する検出部を備え、
前記判定部は、
前記検出部により前記出力データが変化したことを検出すると、検出した第2時刻と、該第2時刻から所定時間前の時刻である第1時刻との間において、前記出力信号値が変化したかを確認し、
前記出力信号値が変化したことを確認した場合に前記信号線に異常が無いと判定し、前記出力信号値が変化しなかったことを確認した場合に前記信号線に異常が有ると判定することを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記出力データは、アナログ出力値であり、
前記検出部は、前記出力データが閾値以下であるか、または該閾値よりも大きいかによって、前記出力データを二値化し、二値化された出力データの変化を検出することにより、前記出力データが変化したことを検出することを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記所定時間は、前記通信部における通信周期の2倍の時間であることを特徴とする請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記外部装置が、所定の状態を検出する検出装置であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記外部装置がIO−Link(登録商標)デバイスであり、当該制御システムがIO−Linkマスタとして機能することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
外部装置との間で所定の通信プロトコルに従って通信を行う通信ステップと、
前記外部装置から出力される出力信号を受信する信号受信ステップと、
前記通信ステップにおいて受信したデータと、前記信号受信ステップにおいて受信した出力信号値とに基づいて、前記信号受信ステップにおいて受信される出力信号が伝送される信号線に生じている異常の有無を判定する判定ステップとを有しており、
前記出力信号値は、二値化されたデジタル信号値であり、
前記通信ステップにおいて受信したデータは、前記出力信号値に対応する出力データを含んでおり、
前記出力データの変化を検出する検出ステップを有しており、
前記判定ステップでは、
前記検出ステップにて前記出力データが変化したことを検出すると、検出した第2時刻と、該第2時刻から所定時間前の時刻である第1時刻との間において、前記出力信号値が変化したかを確認し、
前記出力信号値が変化したことを確認した場合に前記信号線に異常が無いと判定し、前記出力信号値が変化しなかったことを確認した場合に前記信号線に異常が有ると判定することを特徴とする制御方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の制御システムとしてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記判定部および前記検出部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FA(Factory Automation)システムにおいて、異なるプロトコルで接続したユニット間における信号線の異常を検知する制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なFAシステムは、マスタ装置とスレーブ装置とセンサなどのデバイスとを含み、マスタ装置がスレーブ装置を介してデバイスの動作制御やデバイスの出力データの受信を行う。スレーブ装置とデバイスとの間は信号線で接続され、デバイスからのデジタル出力信号やアナログ出力信号が信号線を介してスレーブ装置に送信される。
【0003】
この信号線に断線や短絡などの異常が発生した場合、スレーブ装置は正常にデバイスからの出力信号を検知できなくなるので、この異常が発生したことを検出する必要がある。
【0004】
例えば、デジタル信号が送受信される信号線の場合、該信号線に漏れ電流を検知するための漏れ電流検知装置を実装し、漏れ電流検知装置により直接信号の通信のOFF時に流れる微弱電流値を監視することにより、断線を検知できるようにしている。また、所定の温度以上になるとスイッチが切れるように構成されているポリスイッチを実装し、ポリスイッチにより信号線の短絡時に伴い発生する温度上昇を検知することにより、短絡を検知できるようにしている。
【0005】
例えば、特許文献1には、このような技術を備える断線検出回路が開示されている。特許文献1に開示されている断線検出回路では、リード線(信号線)の断線が発生した旨を出力するためフォトカプラーを備えている。具体的には、該フォトカプラーが漏れ電流を検知しない場合(OFF状態となった場合)に、リード線(信号線)の断線が発生したことを検知するようになっている。これにより、リード線(信号線)の断線を検知できるようになっている。
【0006】
また、アナログ信号が送受信される信号線の場合、信号線に流れている電圧値がアナログ信号の測定レンジの下限値よりも小さい値であると断線が生じている、と判断する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−285914号公報(1996年11月1日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている断線検出回路のように、上記したデジタル信号が送受信される信号線の異常を検知する技術では、漏れ電流検出装置やポリスイッチなどのハードウェアを実装する必要があるため、ユニット(スレーブ装置、またはデバイス)のサイズの大型化やユニットを設置するためのコストの増大が生じてしまうという問題があった。
【0009】
また、上記したアナログ信号が送受信される信号線の異常を検知する技術では、測定レンジが0を含む場合には、信号線に断線が発生しているかどうかを検知することができないという問題があった。
【0010】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の大型化やコストの増大を生じさせることなく、信号線の異常検知を実現することができる制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の制御システムは、外部装置との間で所定の通信プロトコルに従って通信を行う通信部と、前記外部装置から出力される出力信号を受信する信号受信部と、前記通信部において受信したデータと、前記信号受信部において受信した出力信号値とに基づいて、前記信号受信部と前記外部装置とを接続する信号線に生じている異常の有無を判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記の特徴によれば、通信部において受信したデータと、信号受信部において受信した出力信号値とに基づいて、前記信号受信部と前記外部装置とを接続する信号線に生じている異常の有無を判定することができる。また、判定部は、制御システムにおいてソフトウェアとして実装可能であるので、漏れ電流検出装置やポリスイッチなどのハードウェアを実装することなく、信号線に生じている異常の有無を判定することができる。その結果、ユニットの大型化やコストの増大を生じさせることなく、信号線の異常の検知を実現することができる。
【0013】
本発明の制御システムにおいて、前記出力信号値は、二値化されたデジタル信号値であり、前記通信部において受信したデータは、前記出力信号値に対応する出力データを含んでおり、前記出力データの変化を検出する検出部を備え、前記判定部は、前記検出部により前記出力データが変化したことを検出すると、検出した第2時間と、該第2時間から所定時間前の時間である第1時間との間において、前記出力信号値が変化したかを確認し、前記出力信号値が変化したことを確認した場合に前記信号線に異常が有ると判定し、前記出力信号値が変化しなかったことを確認した場合に前記信号線に異常が無いと判定する構成であってもよい。
【0014】
上記の構成によれば、出力信号値が二値化されたデジタル信号値であるため、判定部は、第1時間と第2時間との間において、出力信号値が変化したかどうかを確認することにより、信号線に異常が有るかどうかを判定することができる。
【0015】
本発明の制御システムにおいて、前記出力データは、アナログ出力値であり、前記検出部は、前記出力データが閾値以下であるか、または該閾値よりも大きいかによって、前記出力データを二値化し、二値化された出力データの変化を検出することにより、前記出力データが変化したことを検出する構成であってもよい。
【0016】
上記の構成によれば、外部装置から信号受信部においてアナログ出力値を受信し、通信部から二値化されたデジタル出力値を受信する場合であっても、出力データの変化を検出することができるため、判定部は、信号線に異常が有るかどうかを判定することができる。
【0017】
本発明の制御システムにおいて、前記所定時間は、前記通信部における通信周期の2倍の時間である構成であることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、第1時間と第2時間との差が、通信部の通信周期の2倍よりも短い場合には、信号線に異常が無い場合であっても、検出部が検出した出力データの変化に対応する、出力信号値の変化を検出できない可能性がある。したがって、第1時間と第2時間との差は、IO−Link通信の通信周期の2倍よりも短く設定することはできない。また、第1時間と第2時間との差を通信部の通信周期の2倍よりも長くすると、異常の検知が遅くなる。すなわち、第1時間と第2時間との差が通信部の通信周期の2倍に設定することにより、信号線の異常の有無を最も早く検出することができる。
【0019】
本発明の制御システムにおいて、前記出力信号値は、アナログ出力値であり、前記通信部において受信したデータは、前記出力信号値に対応する出力データを含んでおり、前記出力データは、アナログ出力値であり、前記判定部は、前記出力信号値と前記出力データとの差を算出し、算出した差が所定値よりも大きい場合に前記信号線に異常が有ると判定し、算出した差が所定値以下の場合に前記信号線に異常が無いと判定する構成であってもよい。
【0020】
上記の構成によれば、出力信号値および出力データが共にアナログ出力値であるため、出力信号値と出力データとの差を算出することにより、判定部は、信号線に異常が有るかどうかを判定することができる。
【0021】
本発明の制御システムにおいて、所定時間における前記出力信号値の移動平均値である第1移動平均値を算出する第1移動平均値算出部と、所定時間における前記出力データの移動平均値である第2移動平均値を算出する第2移動平均値算出部とを備え、前記判定部は、前記第1移動平均値と前記第2移動平均値との差を算出し、算出した差が所定値よりも大きい場合に前記信号線に異常が有ると判定し、算出した差が所定値以下の場合に前記信号線に異常が無いと判定する構成であることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、第1移動平均値算出部および第2移動平均値算出部において、それぞれ、出力信号値の移動平均値および出力データの移動平均値を算出し、これら移動平均値の差を算出することにより、判定部は信号線の異常の有無を判定している。これにより、出力信号値および出力データに入るノイズの影響を小さくすることができるため、判定部が、より確実に信号線の異常の有無を判定することができる。
【0023】
本発明の制御システムにおいて、前記第1移動平均値算出部により算出された前記第1移動平均値が上限値、下限値、または0になったことを検知する検知部を備え、前記判定部は、前記検知部により、前記第1移動平均値が上限値、下限値、または0になったことを検知すると、前記第1移動平均値と前記第2移動平均値との差を算出し、前記信号線に生じている異常の有無を判定する構成であることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、検知部により第1移動平均値が0になったことを検知した場合には、判定部は、信号線が断線または短絡していると判定することができる。さらに、外部装置の測定レンジが0を含まない構成である場合には、検知部により第1移動平均値が0になったことを検知した場合には、判定部は、信号線が断線していると判定することができる。
【0025】
また、検知部により第1移動平均値が下限値(ただし、外部装置の測定レンジが0を含まない場合)、または上限値になったことを検知した場合には、判定部は、信号線が短絡していると判定することができる。
【0026】
本発明の制御システムにおいて、前記外部装置が、所定の状態を検出する検出装置である構成であってもよい。
前記外部装置がIO−Link(登録商標)デバイスであり、当該制御システムがIO−Linkマスタとして機能する構成であってもよい。
【0027】
また、本発明の制御方法は、外部装置との間で所定の通信プロトコルに従って通信を行う通信ステップと、前記外部装置から出力される出力信号を受信する信号受信ステップと、前記通信ステップにおいて受信したデータと、前記信号受信ステップにおいて受信した出力信号値とに基づいて、前記信号受信ステップにおいて受信される出力信号が伝送される信号線に生じている異常の有無を判定する判定ステップとを有することを特徴とする。該制御方法によれば、前記中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0028】
また、前記判定部としてコンピュータを機能させることにより、該コンピュータを前記制御システムとして機能させる制御プログラム、および該制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、装置の大型化やコストの増大を生じさせるとなく、信号線の異常検知を実現するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態1に係るIO−Linkマスタの要部構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係るIO−Linkシステムの概要を示す図である。
図3】本実施形態における、IO−Link通信を介してIO−Linkデバイスから出力されるデータフォーマットを示す図である。
図4】本実施形態におけるデジタル入力線の異常の有無の判定方法の手順を示すフローチャートである。
図5】本実施形態におけるIO−Linkデバイスから出力される第1信号値および第2信号値を示す図である。
図6】本発明の実施形態2に係るIO−Linkマスタの要部構成を示すブロック図である。
図7】本実施形態におけるアナログ入力線の異常の有無の判定方法の手順を示すフローチャートである。
図8】本実施形態におけるIO−Linkデバイスから出力される第1信号値および第2信号値、第1移動平均値算出部によって算出された第1移動平均値、並びに第2移動平均値算出部によって算出された第2移動平均値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、図1図5に基づいて説明する。
【0032】
(システム概要)
まず、本実施形態の制御システムの概要を図2に基づいて説明する。図2は、マスタースレーブ制御システム1Aの概要を示す図である。図2に示すように、制御システム1Aは、コントローラ2と、IO−Linkマスタ3Aと、IO−Linkデバイス(外部装置)4と、サポートツール5と、HMI(Human Machine Interface)6とを備えている。
【0033】
マスタースレーブ制御システム1Aは、マスタ装置としてのコントローラ2と、コントローラ2にネットワーク(フィールドネットワーク7)を介して接続される1つ以上のスレーブ装置としてのIO−Linkマスタ3Aとを含むマスタースレーブ制御システムである。コントローラ2は、フィールドネットワーク7を介したデータ伝送を管理しているという意味で「マスタ装置」と呼ばれ、一方、IO−Linkマスタ3Aは「スレーブ装置」と呼ばれる。
【0034】
コントローラ2は、マスタースレーブ制御システム1Aの全体を統括して制御するマスタ装置であり、PLC(Programmable Logic Controller)とも呼ばれる。
【0035】
IO−Linkマスタ3Aは、コントローラ2などを含むフィールドネットワーク7とIO−Linkデバイス4との間でデータを中継する中継装置であり、マスタースレーブ制御システム1Aにおいてコントローラ2のスレーブ装置として動作する。図示の例では、IO−Linkマスタ3Aには、それぞれ、2つのIO−Linkデバイス4が接続されているが、各IO−Linkマスタ3Aに接続されるIO−Linkデバイス4は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、IO−Linkマスタ3Aは、IO−Linkデバイス4と双方向に通信することができる。
【0036】
IO−Linkデバイス4は、IO−Linkマスタ3Aと通信接続されて、コントローラ2の制御対象となる装置(外部装置、検出装置)である、IO−Linkデバイス4としては、入力系のデバイスを適用できる。入力系のデバイスとしては、例えば、光電センサや近接センサなどの各種センサが挙げられる。
【0037】
IO−Linkデバイス4は、データ取得部41と、A/D(アナログ/デジタル)変換部42と、IO−Link通信部43とを備えている(図1参照)。
【0038】
データ取得部41は、センシング対象の状態のアナログデータを取得するためのものである。
【0039】
A/D変換部42は、データ取得部41において取得したアナログデータをデジタルデータに変換するためのものである。具体的には、A/D変換部42では、データ取得部41において取得したアナログデータを二値(すなわち、0または1)に変換する機能と、データ取得部41において取得したアナログデータをIO−Link通信のためにデジタル変換する機能とを有している。
【0040】
IO−Link通信部43は、IO−Linkマスタ3AとIO−Link通信を行うためのものである。
【0041】
サポートツール5は、マスタースレーブ制御システム1Aに対して各種のパラメータを設定するための情報処理装置である。例えば、状態値の取得(入力リフレッシュ)のタイミングおよび出力値の更新(出力リフレッシュ)のタイミングは、サポートツール5によって算出および設定されてもよい。サポートツール5は、典型的には、汎用のコンピュータで構成される。
【0042】
HMI6は、タッチパネル式の表示入力装置であり、マスタースレーブ制御システム1Aのユーザは、HMI6を介してコントローラ2を操作したり、HMI6にてマスタースレーブ制御システム1Aの動作状態を確認したりすることができる。
【0043】
(IO−Linkについて)
IO−Linkについて、以下に補足説明する。IO−Linkは、IEC61131−9において「Single-drop digital communication interface for small sensors and actuators」(SDCI)という名称で規格化されており、制御装置であるマスタ(前記コントローラ2がこれに該当)と、センサおよびアクチュエータ等のデバイスとの間の通信のための標準化技術である。IO−Linkは、マスタとデバイスとの通信に使用する新しいポイント・ツー・ポイントシリアル通信プロトコルである。なお、前記デバイスの一例として、光電センサと近接スイッチとを挙げることができる。
【0044】
IO−Linkは、デバイスからマスタへのオン/オフ信号(1ビット)の発信のみが可能であった従来のプロトコルとは異なり、32バイト(256ビット)のデータの受発信(双方向通信)が可能な通信プロトコルである。マスタとデバイスとの間をIO−Linkでつなぐことによって、従来、オン/オフ情報などの二値化データしか受信できなかったデバイスからの信号について、32バイトの数値データとして取得できるようになる。したがって、例えば、光電センサの場合、受光量、検出余裕度、内部温度などの情報を取得することができるようになり、不具合原因の究明に役立つほか、製品寿命の診断、経年劣化に応じた閾値の変更などが可能になる。
【0045】
IO−Linkを利用することにより、例えば、デバイスの設定およびメンテナンス等を自動化することができる。また、IO−Linkを利用することにより、マスタのプログラミングが大幅に簡易化でき、さらに、配線ケーブルのコスト削減等を実現することができる。
【0046】
続いて、以上説明したIO−Linkを利用したIO−Linkシステムについて説明する。IO−Linkシステムは、IO−Linkデバイス(一般に、センサ、アクチュエータ、またはその組み合わせであり、前記IO−Linkデバイス4がこれに該当)と、標準のセンサ/アクチュエータケーブルと、IO−Linkマスタ(上記IO−Linkマスタ3Aがこれに該当)と、によって構成される。
【0047】
IO−Linkマスタは、1つまたは複数のポート(後述のデバイス通信ポート120Aがこれに該当)を備え、各ポートには1台のIO−Linkデバイスが接続可能である。IO−Linkマスタは、IO−Linkデバイスとポイントツーポイント通信を行う。IO−Linkマスタは、従来のオン/オフ情報などの二値化データ(1ビットのデータ)だけでなく、デバイスの識別情報、デバイスの通信プロパティ、デバイスパラメータ、および、プロセス・診断データの情報などの、オン/オフ情報などの二値化データ以外の情報(1ビットよりも大きなデータ)を、IO−Linkデバイスとの間で送受信することができる。
【0048】
なお、IO−Link通信を行うためのケーブル(以下、IO−Link通信線と呼ぶ)に異常(断線、または短絡)が発生した場合には、IO−Link通信が行うことができないため、通信のリトライをカウントすることにより、IO−Link通信線に異常が発生したことを検知することができる。
【0049】
(IO−Linkマスタ3Aの詳細)
次に、マスタースレーブ制御システム1AにおけるIO−Linkマスタ3Aの詳細について、図1を参照しながら説明する。
【0050】
図1は、IO−Linkマスタ3Aの要部構成を示すブロック図である。図1に示すように、IO−Linkマスタ3Aは、IO−Linkデバイス4と通信するためのデバイス通信ポート120Aを備えている。また、IO−Linkマスタ3Aは、前述のコントローラ2と通信するための上位通信ポート130を備えている。さらに、IO−Linkマスタ3Aは、IO−Linkマスタ3Aの各部を統括して制御する制御部10Aを備えている。
【0051】
デバイス通信ポート120Aは、IO−Link通信ポート(通信部)121と、デジタル入力ポート(信号受信部)122とを備えている。
【0052】
IO−Link通信ポート121は、IO−Linkマスタ3AとIO−Linkデバイス4との間でIO−Link通信するためのケーブル(IO−Link通信線)が接続されるポートである。ここで、本実施形態において、IO−Link通信を介してIO−Linkデバイス4から出力されるデータについて図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態において、IO−Link通信を介してIO−Linkデバイス4から出力されるデータフォーマットを示す図である。図3に示すように、IO−Link通信を介してIO−Linkデバイス4から出力されるデータは、IO−Linkデバイス4のステータス、IO−Linkデバイス4が取得したアナログ値をデジタル変換した数値データ、およびIO−Linkデバイス4が取得したオン/オフ情報の二値化データ(DI)を含んでいる。
【0053】
デジタル入力ポート122は、IO−Linkデバイス4のA/D変換部42によりオン/オフ情報などの二値化に変換されたデータを、IO−Linkマスタ3Aに送信するためのデジタル入力線(信号線)50が接続されるポートである。
【0054】
ここで、IO−Link通信のみによってIO−Linkマスタ3AとIO−Linkデバイス4との間で通信を行うIO−Linkシステムでは、IO−Link通信がシリアル通信であるため、直接デジタルまたはアナログ信号を通信する場合と比べて、通信サイクルタイムの遅延が入るため、通信の応答性に劣る。
【0055】
一方、本実施形態におけるマスタースレーブ制御システム1Aでは、IO−Linkマスタ3AがIO−Link通信のためのIO−Link通信ポート121に加えて、IO−Linkデバイス4から直接出力されたデータを受信するためのデジタル入力ポート122を備えている。デジタル入力ポート122によるIO−Linkデバイス4からのデータの取得は、IO−Link通信に比べて応答性に優れている。これにより、マスタースレーブ制御システム1A全体としてのIO応答性能を向上させている。
【0056】
制御部10Aは、デバイス通信制御部101と、上位通信制御部102と、第1トリガ検出部103と、第2トリガ検出部(検出部)104と、判定部105Aとを備えている。
【0057】
デバイス通信制御部101は、IO−Linkデバイス4との通信に係るIO−Linkマスタ3Aの機能を統括して制御するものである。
【0058】
上位通信制御部102は、フィールドネットワーク7を介してコントローラ2との通信を統括して制御するものである。
【0059】
第1トリガ検出部103は、IO−Linkデバイス4のA/D変換部42により二値化され、デジタル入力ポート122を介してIO−Linkデバイス4から出力されたデジタル信号値(出力信号値。以下では、第1信号値と呼ぶ)のON/OFFの変化(ON/OFFトリガ)を検出するためのものである。
【0060】
第2トリガ検出部104は、IO−Linkデバイス4のA/D変換部42により二値化され、IO−Link通信ポート121を介してIO−Linkデバイス4から受信したデータ内に格納されているデジタル信号値(出力データ。以下では、第2信号値と呼ぶ)のON/OFFの変化(ON/OFFトリガ)を検出するためのものである。
【0061】
判定部105Aは、第1信号値と第2信号値とに基づいて、デジタル入力ポート122とIO−Linkデバイス4とを接続するデジタル入力線50に生じている異常の有無を判定するためのものである。詳細については後述する。
【0062】
(デジタル入力線50の異常の有無の判定方法)
次に、本実施形態におけるデジタル入力線50の異常の有無の判定方法の手順について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態におけるデジタル入力線50の異常の有無の判定方法の手順を示すフローチャートである。
【0063】
本実施形態におけるデジタル入力線50の異常の有無の判定方法は、図4に示すように、第1トリガ検出部103および第2トリガ検出部104により、それぞれ、第1信号値および第2信号値のON/OFFトリガを監視する(S1)。
【0064】
ここで、IO−Linkデバイス4から出力される第1信号値および第2信号値について図5を参照しながら説明する。図5は、IO−Linkデバイス4から出力される第1信号値および第2信号値を示す図である。図5に示すように、第1信号値および第2信号値は、IO−Linkデバイス4のA/D変換部42において二値化された同一のデータである。そのため、デジタル入力線50およびIO−Link通信線に異常が無い場合、IO−Linkマスタ3Aは、第1信号値および第2信号値として同じデータを取得する。ただし、第2信号値は、IO−Link通信によって出力されるため、デジタル入力線50によって直接出力される第1信号値と比べてIO−Link通信の通信サイクルタイムによる遅延が入る。
【0065】
デジタル入力線50に異常が発生した場合、具体的には、デジタル入力線50が断線または短絡した場合、それ以降、IO−Linkマスタ3Aは、第1信号値として二値のうち一方の値だけを受信する。すなわち、第1信号値が変化しなくなる。具体的には、デジタル入力線50が断線した場合、それ以降、第1信号値としてOFFの値だけを受信する。また、デジタル入力線50が短絡した場合、それ以降、第1信号値としてOFFの値、または、ONの値だけを受信する。一方、IO−Link通信によって取得した第2信号値は、正常に信号が送信されているため、ON/OFFの変化が発生する。
【0066】
そこで、第2トリガ検出部が第2信号値のON/OFFトリガを検出する(S2)と、判定部105Aは、第2信号値のON/OFFトリガを検出した時間(以下では、第2時間と呼ぶ)と、該時間よりもIO−Link通信の通信周期(データリフレッシュ時間、例えば、2ms)の2倍の時間(4ms)前の時間(以下では、第1時間と呼ぶ)との間において、第1トリガ検出部103が第1信号値のON/OFFトリガを検出したかを確認する(S3)。
【0067】
第1時間と第2時間との間において、第1トリガ検出部103が第1信号値のON/OFFトリガを検出した場合(S3でYes)、判定部105Aは、ステップS2において第2トリガ検出部104が検出したON/OFFトリガに対応するON/OFFトリガを第1トリガ検出部103が検出したと判定し、デジタル入力線50に異常が無いと判定する(S4)。そして、ステップS2に戻る。
【0068】
一方、第1時間と第2時間との間において、第1信号値のON/OFFトリガを検出しなかった場合(S3でNo)、判定部105Aは、ステップS2において第2トリガ検出部104が検出したON/OFFトリガに対応するON/OFFトリガを第1トリガ検出部103が検出しなかったと判定し、デジタル入力線50に異常が有ると判定する(S5)。
【0069】
なお、本実施形態におけるIO−Linkマスタ3Aでは、ステップS3における第1時間と第2時間との差は、IO−Link通信の通信周期の2倍であったが、本発明のIO−Linkマスタは、これに限られない。すなわち、第1時間と第2時間との差は、IO−Link通信の通信周期の2倍よりも長い時間に設定してもよい。ただし、第1時間と第2時間との差を短くすることにより、異常の検知を早く行うことができる。また、第1時間と第2時間との差が、IO−Link通信の通信周期の2倍よりも短い場合には、デジタル入力線50に異常が無い場合であっても、第2トリガ検出部104が検出した第2信号値のON/OFFトリガに対応する、第1信号値のON/OFFトリガを第1トリガ検出部103が検出できない可能性がある。したがって、第1時間と第2時間との差は、IO−Link通信の通信周期の2倍よりも短く設定することはできない。すなわち、第1時間と第2時間との差がIO−Link通信の通信周期の2倍に設定することにより、デジタル入力線50の異常の有無を最も早く検出することができる。
【0070】
以上のように、本実施形態のIO−Linkマスタ3Aは、IO−Linkデバイス4との間で所定の通信プロトコルにしたがって通信を行うIO−Link通信ポート121と、IO−Linkデバイス4から出力される第1信号値を受信するデジタル入力ポート122とを備えている。また、IO−Link通信ポート121において受信した第2信号値、およびデジタル入力ポート122において受信した第1信号値に基づいて、デジタル入力ポート122とIO−Linkデバイス4とを接続するデジタル入力線50に生じている異常の有無を判定する判定部105Aとを備えている。詳細には、判定部105Aは、第2トリガ検出部104により第2信号値が変化したことを検出すると、第1時間と第2時間の間において、第1トリガ検出部103により第1信号値が変化したことを検出したかどうかを確認することにより、デジタル入力線50に生じている異常の有無を判定する。
【0071】
第1トリガ検出部103、第2トリガ検出部104、および判定部105Aは、IO−Linkマスタ3Aの制御部10Aが備えるソフトウェアである。したがって、IO−Linkマスタ3Aは、従来のように漏れ電流検出装置やポリスイッチなどのハードウェアを実装することなく、デジタル入力線50に生じている異常の有無を判定することができる。その結果、装置の大型化やコストの増大を生じさせることなく、デジタル入力線50の異常の検知を実現することができるようになっている。
【0072】
なお、本実施形態のIO−Linkマスタ3Aでは、IO−Link通信ポート121を介してIO−Linkデバイス4から受信したデータ内に格納されているデジタル信号値(図3におけるDI値)を第2信号値として利用し、IO−Link通信によって送られるIOデータの変化を検出していたが、本発明の制御システムは、これに限られない。例えば、IO−Link通信ポート121を介してIO−Linkデバイス4から受信したデータ内に格納されているアナログ信号値(図3におけるアナログ値)を利用して第2信号値を検出してもよい。
【0073】
第2信号値としてIO−Linkデバイス4から受信したデータ内に格納されているアナログ信号値を利用する場合には、アナログ信号値が或る閾値以下であるか、または該閾値よりも大きいかによって、アナログ信号値を二値化し、二値化されたアナログ信号の変化を検出することにより、第2信号値が変化したことを検出するように構成してもよい。
【0074】
また、本実施形態のマスタースレーブ制御システム1Aでは、判定部105Aは、IO−Linkマスタ3Aに備えられる構成であったが、本発明の制御システムはこれに限られない。例えば、マスタ装置としてのコントローラが、デジタル入力線50に生じている異常の有無を判定する判定部を備える構成であってもよい。具体的には、コントローラが第1トリガ検出部、第2トリガ検出部、および判定部を備え、IO−Linkデバイス4から受信した第1信号値および第2信号値を、フィールドネットワーク7を介してコントローラに送信し、コントローラにおいて、上述したデジタル入力線50の異常検出を行う構成としてもよい。
【0075】
あるいは、コントローラが判定部を備え、IO−Linkマスタ3Aの第1トリガ検出部103、および第2トリガ検出部104において検出した結果を、フィールドネットワーク7を介してコントローラに送信し、コントローラが備える判定部によりデジタル入力線50の異常検出を行う構成としてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、制御システムが、マスタ装置としてのコントローラ2と、コントローラ2にネットワーク(フィールドネットワーク7)を介して接続される1つ以上のスレーブ装置としてのIO−Linkマスタ3Aとを含むマスタースレーブ制御システムであるシステムについて説明したが、本発明の制御システムは、これに限られない。すなわち、外部装置との間で所定の通信プロトコルに従って通信を行う通信部と、外部装置から出力される出力信号を受信する信号受信部とを備えるシステムであれば、どのようなシステムには適用することができる。
【0077】
(変形例)
次に、実施形態1のマスタースレーブ制御システム1Aの変形例について説明する。
【0078】
マスタースレーブ制御システム1Aでは、IO−Linkデバイス4が入力系のデバイスである構成、すなわち、IO−Linkデバイス4が取得したデータをIO−Linkマスタ3Aを介してコントローラに出力する構成であった。これに対して、本変形例のIO−Linkシステムは、デバイスが出力系のIO−Linkデバイス(例えば、アクチュエータやモータ)であり、コントローラからの指示をIO−Linkマスタを介してIO−Linkデバイスへ出力する構成である。
【0079】
本変形例のIO−Linkシステムでは、IO−Linkデバイスが、IO−Linkマスタとの間で所定の通信プロトコルにしたがって通信を行うIO−Link通信ポートと、IO−Linkマスタから出力される第1信号値を受信するデジタル入力ポートとを備えている。また、IO−Link通信ポートにおいて受信した第2信号値、およびデジタル入力ポートにおいて受信した第1信号値に基づいて、デジタル入力ポートとIO−マスタとを接続するデジタル入力線に生じている異常の有無を判定する判定部とを備えている。詳細には、判定部は、第2トリガ検出部により第2信号値が変化したことを検出すると、第1時間と第2時間の間において、第1トリガ検出部により第1信号値が変化したことを検出したかどうかを確認することにより、デジタル入力線に生じている異常の有無を判定する。
【0080】
第1トリガ検出部、第2トリガ検出部、および判定部は、IO−Linkデバイスが備えるソフトウェアである。したがって、IO−Linkデバイスは、漏れ電流検出装置やポリスイッチなどのハードウェアを実装することなく、デジタル入力線50に生じている異常の有無を判定することができる。その結果、IO−Linkデバイスの大型化やコストの増大を生じさせることなく、デジタル入力線の異常の検知を実現することができるようになっている。
【0081】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図6図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0082】
本実施形態のマスタースレーブ制御システム1BにおけるIO−Linkマスタ3Bについて、図6を参照しながら説明する。図6は、IO−Linkマスタ3Bの要部構成を示すブロック図である。
【0083】
IO−Linkマスタ3Aは、図6に示すように、IO−Linkデバイス4と通信するためのデバイス通信ポート120Bと、制御部10Bとを備えている。
【0084】
デバイス通信ポート120Bは、IO−Link通信ポート121と、アナログ入力ポート123とを備えている。
【0085】
アナログ入力ポート123は、IO−Linkデバイス4のデータ取得部41が取得したアナログデータを、IO−Linkマスタ3Bに送信するためのアナログ入力線(信号線)60が接続されるポートである。
【0086】
制御部10Bは、第1移動平均値算出部106と、第2移動平均値算出部107と、検知部108と、判定部105Bとを備えている。
【0087】
第1移動平均値算出部106は、IO−Linkデバイス4のデータ取得部41により取得され、アナログ入力ポート123を介してIO−Linkデバイス4から出力されたアナログ信号値(第1信号値)の、所定時間(例えば、1秒間)における移動平均値(以下では、第1移動平均値と呼ぶ)を算出するためのものである。
【0088】
第2移動平均値算出部107は、IO−Link通信ポート121を介してIO−Linkデバイス4から受信したデータ内に格納されているアナログ信号値(以下では、第2信号値と呼ぶ)の、所定時間(例えば、1秒間)における移動平均値(以下では、第2移動平均値と呼ぶ)を算出するためのものである。
【0089】
検知部108は、第1移動平均値算出部106により算出された第1移動平均値が、IO−Linkデバイス4の測定レンジの上限値、下限値、または0になったことを検知するためのものである。
【0090】
判定部105Bは、第1信号値(第1移動平均値)と第2信号値(第2移動平均値)とに基づいて、アナログ入力ポート123とIO−Linkデバイス4とを接続するアナログ入力線60に生じている異常の有無を判定するためのものである。詳細については後述する。
【0091】
(アナログ入力線60の異常の有無の判定方法)
次に、本実施形態におけるアナログ入力線60の異常の有無の判定方法の手順について、図7を参照しながら説明する。図7は、本実施形態におけるアナログ入力線60の異常の有無の判定方法の手順を示すフローチャートである。
【0092】
本実施形態におけるアナログ入力線60の異常の有無の判定方法は、図7に示すように、まず、第1移動平均値算出部106がアナログ入力ポート123を介してIO−Linkデバイス4から出力された第1信号値の、所定時間における移動平均値(第1移動平均値)を算出する(S11)。
【0093】
次に、第2移動平均値算出部107がIO−Link通信ポート121を介してIO−Linkデバイス4から受信したデータ内に格納されているアナログ信号値(第2信号値)の、所定時間における移動平均値(第2移動平均値)を算出する(S12)。
【0094】
ここで、IO−Linkデバイス4から出力される第1信号値および第2信号値、第1移動平均値算出部106によって算出された第1移動平均値、並びに第2移動平均値算出部107によって算出された第2移動平均値について図8を参照しながら説明する。図8は、IO−Linkデバイス4から出力される第1信号値および第2信号値、第1移動平均値算出部106によって算出された第1移動平均値、並びに第2移動平均値算出部107によって算出された第2移動平均値を示す図である。
【0095】
図8に示すように、第1信号値および第2信号値は、IO−Linkデバイス4のデータ取得部41において取得された同一のデータである。そのため、アナログ入力線60およびIO−Link通信線に異常が無い場合、IO−Linkマスタ3Bは、第1信号値および第2信号値として同じデータを取得する。
【0096】
アナログ入力線60に異常が発生した場合、具体的には、アナログ入力線60が断線または短絡した場合、それ以降、IO−Linkマスタ3Bは、第1信号値としてIO−Linkデバイス4の測定レンジの上限値、下限値、または0を受信する。すなわち、第1信号値が変化しなくなる。具体的には、アナログ入力線60が断線した場合、それ以降、第1信号値として0の値だけを受信する。また、アナログ入力線60が短絡した場合、それ以降、第1信号値としてIO−Linkデバイス4の測定レンジの上限値または下限値
を受信する。一方、IO−Link通信によって取得した第2信号値は、正常に信号が送信されているため、変化をする。
【0097】
そこで、図7に示すように、判定部105Bは、検知部108により、第1移動平均値がIO−Linkデバイス4の測定レンジの上限値、下限値、または0になったことを検知したかどうかを確認する(S13)。
【0098】
検知部108により第1移動平均値がIO−Linkデバイス4の測定レンジの上限値、下限値、または0になったことを検知していない場合(S13でNo)、判定部105Bはアナログ入力線60に異常が無いと判定し、ステップS13に戻る。
【0099】
一方、検知部108により、第1移動平均値がIO−Linkデバイス4の測定レンジの上限値、下限値、または0になったことを検知した場合(S13でYes)、アナログ入力線60に異常が発生した可能性があるため、判定部105Bは、第1移動平均値と第2移動平均値との差を算出し、算出した差が所定値よりも大きいかどうかを判定する(S14)。
【0100】
第1移動平均値と第2移動平均値との差を算出し、算出した差が所定値以下であった場合(S14でNo)、判定部105Bは、第1信号値が正常な値であると判定し、アナログ入力線60に異常がないと判定する(S15)。
【0101】
一方、第1移動平均値と第2移動平均値との差を算出し、算出した差が所定値よりも大きかった場合(S14でYes)、判定部105Bは、第1信号値が正常な値でないと判定し、アナログ入力線60に異常があると判定する(S16)。
【0102】
より詳細には、検知部108により第1移動平均値が0になったことを検知した場合には、判定部105Bは、アナログ入力線60が断線または短絡していると判定することができる。さらに、IO−Linkデバイス4の測定レンジが0を含まない構成である場合には、検知部108により第1移動平均値が0になったことを検知した場合には、判定部105Bは、アナログ入力線60が断線していると判定することができる。
【0103】
また、検知部108により第1移動平均値が下限値(ただし、IO−Linkデバイス4の測定レンジが0を含まない場合)、または上限値になったことを検知した場合には、判定部105Bは、アナログ入力線60が短絡していると判定することができる。
【0104】
なお、IO−Linkデバイス4において検出された特定の信号が、アナログ入力ポート123を介して第1信号値として取得されるタイミングと、IO−Link通信ポート121を介して第2信号値として取得されるタイミングとのどちらが早いかは不定である。これは、IO−Link通信における通信サイクルタイムの遅延時間と、第1信号値をアナログ−デジタル変換するための処理時間とで、どちらが長いかが不確定であるからである。これに対して、本実施形態では、上記のように移動平均値を用いて第1信号値と第2信号値とを比較しているので、上記の時間差を吸収することが可能となっている。
【0105】
以上のように、本実施形態におけるマスタースレーブ制御システム1Bでは、判定部105Bは、第1移動平均値算出部106および第2移動平均値算出部107によりそれぞれ算出された第1平均値と第2平均値との差を算出することにより、アナログ入力線60の異常の有無を判定する構成であったが、本発明の制御システムは、これに限られない。例えば、第1信号値と第2信号値との差を算出することにより、アナログ入力線60の異常の有無を判定する構成であってもよい。ただし、第1平均値と第2平均値との差を用いる構成にすることにより、上記した時間差を吸収できることや、アナログ値に入るノイズの影響を小さくすることができるため、判定部105Bが、より確実にアナログ入力線60の異常の有無を判定することができる。
【0106】
また、本実施形態におけるマスタースレーブ制御システム1Bでは、検知部108によって、第1移動平均値が上限値、下限値、または0になったことを検知した場合に、判定部105Bは、アナログ入力線60の異常の有無を判定する構成であったが、本発明の制御システムは、これに限られない。例えば、常時第1平均値と第2平均値との差を算出することにより、アナログ入力線60の異常の有無を判定する構成であってもよい。この構成であっても、判定部は、アナログ入力線60の異常の有無を判定することができる。ただし、この場合には、第1信号値を把握していないため、判定部は、アナログ入力線60の異常が断線なのか、短絡であるのかについて判定することができない。
【0107】
〔ソフトウェアによる実現例〕
IO−Linkマスタ3AおよびIO−Linkマスタ3Bの制御ブロック(特に制御部10Aおよび制御部10Bに含まれる各部)は、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現される。
【0108】
IO−Linkマスタ3AおよびIO−Linkマスタ3Bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0109】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
1A、1B マスタースレーブ制御システム
2 コントローラ(制御システム)
3A、3B IO−Linkマスタ(制御システム、外部装置)
4 IO−Linkデバイス(制御システム、外部装置、検出装置)
50 デジタル入力線(信号線)
60 アナログ入力線(信号線)
104 第2トリガ検出部(検出部)
105A、105B 判定部
106 第1移動平均値算出部
107 第2移動平均値算出部
108 検知部
121 IO−Link通信ポート(通信部)
122 デジタル入力ポート(信号受信部)
123 アナログ入力ポート(信号受信部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8