(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
媒体を照明する照明光を出射する発光部と、前記媒体で反射した前記照明光を検出する光検出部と、を有し、前記照明光の検出結果に基づいて前記媒体に設けられた識別子を検知する検知装置と、
前記検知装置に対して前記媒体の搬送路を挟んで反対側に配置された、前記照明光を反射するリフレクタと、
前記検知装置での前記識別子の検知結果に基づいて、前記媒体の向きを判定する判定部と、
を備え、
前記リフレクタは、前記発光部から出射した前記照明光を前記媒体に導き、且つ、前記媒体で反射した前記照明光を前記光検出部に導くように、配置され、
前記判定部は、前記搬送路上の位置であって前記検知装置と前記リフレクタの間ではない第1の位置に前記媒体があるときの前記検知装置での前記識別子の第1の検知結果と、
前記搬送路上の位置であって前記検知装置と前記リフレクタの間である第2の位置に前記媒体があるときの前記検知装置での前記識別子の第2の検知結果と、の少なくとも一方の検知結果に基づいて、前記媒体の向きを判定する
ことを特徴とする媒体処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、構造物製造システム1の構成を示した図である。
図2は、媒体Mの構成を示した図である。
図3は、ロール紙Rの裁断範囲を例示した図である。
【0012】
構造物製造システム1は、
図1に示すように、コンピュータ10と、表示装置20と、入力装置30と、印刷装置40と、加熱装置50を備えている。なお、加熱装置50は、異常を検知するとその旨を利用者に報知する報知部51を備えている。構造物製造システム1は、濃度画像である濃淡パターンを、膨張層を含む媒体Mに印刷装置40で形成し、濃淡パターンが形成された媒体Mを加熱装置50で加熱することで、構造物を製造する。構造物製造システム1は、さらに、カラー画像であるカラーパターンを印刷装置40で媒体Mに形成することで、着色された構造物を製造する。
【0013】
媒体Mは、
図2に示すように、基材M1に膨張層M2とインク受容層M3が積層された多層構造を有する熱膨張性シートである。インク受容層M3は、印刷装置40から吐出されたインクを受容する層である。膨張層M2は、熱可塑性樹脂内に加熱により膨張する無数のマイクロカプセルを含む層であり、吸収した熱量に応じて膨張する。基材M1は、例えば、紙、キャンバス地などの布、プラスティックなどのパネル材などからなるが、その材質は特に限定されない。
【0014】
媒体Mは、所定のサイズに裁断されたカット紙であり、
図3に示す長尺媒体であるロール紙Rが裁断されることにより得られる様々な大きさ媒体(媒体M、媒体ML)のうちの一つである。例えば、媒体MはA4サイズのカット紙であり、媒体MLはA3サイズのカット紙である。ロール紙Rには、ロール紙Rの一方の面上であって、裁断機で裁断される位置又はロール紙Rの縁部の少なくとも一方にバーコードBが設けられる。これは、ロール紙Rを裁断して得られる媒体Mの少なくとも一辺にバーコードBを設けるためである。
【0015】
バーコードBは、媒体Mが加熱装置50に用いられる専用紙であることを示す識別子である。バーコードBは、専用紙であることに加えて、例えば、媒体Mを加熱装置50で加熱する際の設定情報などの他の情報を含んでもよい。また、バーコードBは、光学的に識別可能な識別子であるが、例えば、加熱によって消えるような機能性インクで印刷されてもよい。これにより、加熱装置50で加熱前は光学的に識別可能であるが、加熱装置50で加熱後は識別不能となるように、識別子を設けることができる。
【0016】
コンピュータ10は、
図1に示すように、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13を備える装置である。コンピュータ10は、プロセッサ11がプログラムを実行することにより画像データを生成し、画像データに応じた印刷データを印刷装置40へ出力する。また、コンピュータ10は、加熱装置50を制御してもよい。コンピュータ10は、例えば、加熱装置50に挿入された媒体Mの向きを判別する処理などを行い、その結果を加熱装置50に出力してもよい。
【0017】
表示装置20は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどであり、コンピュータ10からの信号に従って画像を表示する。入力装置30は、例えば、キーボード、マウスなどであり、コンピュータ10へ信号を出力する。
【0018】
印刷装置40は、媒体Mの表面(例えば、表面FS、裏面BS)に、電磁波熱変換材料を用いて面積階調による濃淡パターンを形成する。電磁波熱変換材料は、電磁波エネルギーを熱エネルギーに変換する材料であり、例えば、カーボンブラックを含むブラックKのインクである。従って、印刷装置40で濃淡パターンが形成された媒体Mに、加熱装置50で電磁波を照射すると、電磁波熱変換材料でパターンが形成されている部分では、電磁波熱変換材料でパターンが形成されていない部分に比べて、より効率良く電磁波が熱エネルギーに変換される。このため、膨張層M2のうち電磁波熱変換材料でパターンが形成された部分が主に加熱されて、その結果、膨張層M2は電磁波熱変換材料で形成されたパターンに対応する形状に膨張する。
【0019】
図4は、印刷装置40の構成を示した図である。印刷装置40は、例えば、入力された印刷データに基づいて媒体Mに印刷を行うインクジェットプリンタである。印刷装置40は、
図4に示すように、媒体搬送方向(副走査方向D1)に直交する両方向矢印で示す方向(主走査方向D2)に往復移動可能に設けられたキャリッジ41を備える。
【0020】
キャリッジ41には、印刷を実行する印刷ヘッド42と、インクを収容したインクカートリッジ43(43k、43c、43m、43y)が取り付けられている。カートリッジ43k、43c、43m、43yには、それぞれ、ブラックK、シアンC、マゼンタM、イエローYの色インクが収容されている。各色のインクは、印刷ヘッド42の対応するノズルから吐出される。
【0021】
キャリッジ41は、ガイドレール44に滑動自在に支持され、駆動ベルト45に狭持されている。モータ45mの回転により駆動ベルト45を駆動することで、キャリッジ41は、印刷ヘッド42とインクカートリッジ43とともに、主走査方向D2に移動する。フレーム47の下部には、印刷ヘッド42と対向する位置に、主走査方向D2に延在したプラテン48が配設されている。さらに、給紙ローラ対49a(下のローラは不図示)と排紙ローラ対49b(下のローラは不図示)は、プラテン48に支持された媒体Mを副走査方向D1に搬送するように配設されている。
【0022】
フレキシブル通信ケーブル46を介して印刷ヘッド42に接続された印刷装置40の制御部は、コンピュータ10からの印刷データ及び印刷制御データに基づいて、モータ45m、印刷ヘッド42、給紙ローラ対49a、及び排紙ローラ対49bを制御する。これにより、媒体Mに、濃淡パターンが形成され、更に必要に応じてカラーパターンが形成される。換言すると、少なくとも上述の濃度画像が印刷され、更に必要に応じてカラー画像が印刷される。
【0023】
加熱装置50は、挿入された媒体Mに対して処理(媒体処理)を行う媒体処理装置の一種である。加熱装置50は、例えば、媒体Mに一様に電磁波を照射することで、濃淡パターンが形成された媒体Mに対して加熱処理を行う装置である。なお、濃淡パターンがカーボンブラックを含むブラックKのインクで印刷される場合には、電磁波は赤外領域の波長を含むことが望ましい。
【0024】
図5は、加熱装置50の構成を示した図である。
図6は、挿入装置60の構成を示した図である。加熱装置50は、
図5に示すように、加熱部53とコントローラ54を含む加熱装置本体52と、加熱装置本体52に媒体Mを挿入する挿入装置60と、を備える。
【0025】
加熱部53は、搬送路の上方に設けられていて、媒体Mが加熱部53の直下を搬送されている間、媒体Mを上方から加熱する。コントローラ54は、加熱装置50の動作を制御する。例えば、搬送路上に設けられた搬送部(搬送部55を含む)の駆動を制御することで、媒体Mの搬送を制御する。また、コントローラ54は、後述するバーコードリーダ56でのバーコードBの検知結果に基づいて、媒体Mの向きを判定する判定部である。なお、コントローラ54は、媒体Mに設けられたバーコードBを検知することで、媒体Mが加熱装置50に用いられる専用紙であるか否かを判定するように構成されてもよい。
【0026】
挿入装置60は、挿入口60aから挿入された媒体Mを加熱装置本体52へ向けて搬送し、加熱装置本体52へ挿入する装置である。挿入装置60は、媒体Mを搬送する搬送部55に加えて、バーコードリーダ56とリフレクタ57を備えている。
【0027】
バーコードリーダ56は、
図6に示すように、媒体Mを照明する照明光を出射する発光部56aと、媒体Mで反射した照明光を検出する光検出部56bを備える。バーコードリーダ56は、光検出部56bでの照明光の検出結果に基づいて、媒体Mに設けられた識別子であるバーコードBを検知する検知装置である。
【0028】
リフレクタ57は、照明光を反射するミラーであり、バーコードリーダ56に対して媒体Mの搬送路を挟んで反対側に配置されている。リフレクタ57は、媒体Mが
図6に示すような位置にあるときに、発光部56aから出射した照明光を媒体Mに導き、且つ、媒体Mで反射した照明光を光検出部56bに導くように、配置されている。
【0029】
図7は、加熱装置50で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図8は、
図7の処理で使用される媒体Mを例示した図である。
図9は、媒体Mが第1の位置にある様子を示した図である。
図10は、媒体Mが第2の位置にある様子を示した図である。以下、
図7から
図10を参照しながら、加熱装置50で行われる処理について具体的に説明する。ここでは、
図8に示すように、濃淡パターンが形成された裏面の四辺のうち、搬送方向の前方と後方に位置する一対の辺にバーコードBが設けられた媒体Mを用いた場合を例に説明する。
【0030】
利用者が挿入口60aに媒体Mが挿入すると、
図9に示すように、媒体Mは、媒体Mの先端が搬送部55を構成するローラ対に接する位置(第1の位置P1)にセットされる。その後、
図7に示す処理が開始されると、加熱装置50のコントローラ54は、まず、バーコードリーダ56を制御して、第1の検知処理を行う(ステップS101)。
【0031】
第1の検知処理では、媒体Mがバーコードリーダ56とリフレクタ57の間ではない搬送路上の第1の位置P1にある。即ち、搬送路上の位置であって、発光部56aから出射した照明光の光路Lのうち当該発光部56aからリフレクタ57までの間に媒体Mが介在しないような第1の位置P1に、当該媒体Mがある。このため、
図9に示すように、発光部56a(バーコードリーダ56)から出射した照明光は、搬送路を通過してリフレクタ57に入射し、リフレクタ57で反射した照明光が、媒体Mの先端に照射される。さらに、媒体Mで反射した照明光の一部は、リフレクタ57で反射して光検出部56b(バーコードリーダ56)で検出される。
【0032】
バーコードリーダ56は、光検出部56bで検出された照明光に基づいてバーコードBを検知する。なお、バーコードリーダ56の視野Fは、
図8に示すように、バーコードBの2つ分以上の大きさを有しているため、少なくとも1つのバーコードB全体を視野内に収めることができる。従って、媒体Mの裏面がリフレクタ57側を向いた状態(裏面が上向き)で媒体Mが加熱装置50にセットされた場合には、バーコードBがバーコードリーダ56によって検知される。一方、媒体Mの表面がリフレクタ57側を向いた状態(表面が上向き)で媒体Mが加熱装置50にセットされた場合には、バーコードBはバーコードリーダ56によって検知されない。この第1の検知処理によって得られるバーコードBの検知結果(以降、第1の検知結果と記す)は、バーコードリーダ56からコントローラ54へ出力される。
【0033】
第1の検知処理が終了すると、コントローラ54は、搬送部55を制御して、媒体Mを所定距離だけ搬送する(ステップS102)。これにより、媒体Mは、バーコードリーダ56とリフレクタ57の間の搬送路上の第2の位置P2まで搬送される。
媒体Mが第2の位置まで搬送されると、コントローラ54は、再びバーコードリーダ56を制御して、第2の検知処理を行う(ステップS103)。
【0034】
第2の検知処理では、
図10に示すように、媒体Mがバーコードリーダ56とリフレクタ57の間の第2の位置P2にある。即ち、搬送路上の位置であって、発光部56aから出射した照明光の光路Lのうち当該発光部56aからリフレクタ57までの間に媒体Mが介在するような第2の位置P2に、当該媒体Mがある。このため、リフレクタ57には照明光は入射しない。発光部56a(バーコードリーダ56)から出射した照明光は、搬送路上に位置する媒体Mの先端に入射する。そして、媒体Mで反射した照明光の一部が、光検出部56b(バーコードリーダ56)で検出される。
【0035】
バーコードリーダ56は、光検出部56bで検出された照明光に基づいてバーコードBを検知する。ここでは、媒体Mの裏面がバーコードリーダ56側を向いた状態(表面が上向き)で媒体Mが加熱装置50にセットされた場合には、バーコードBがバーコードリーダ56によって検知される。一方、媒体Mの表面がバーコードリーダ56側を向いた状態(裏面が上向き)で媒体Mが加熱装置50にセットされた場合には、バーコードBはバーコードリーダ56によって検知されない。この第2の検知処理によって得られるバーコードBの検知結果(以降、第2の検知結果と記す)は、バーコードリーダ56からコントローラ54へ出力される。
【0036】
第2の検知処理が終了すると、コントローラ54は、バーコードリーダ56から出力された第1の検知結果と第2の検知結果に基づいて、媒体Mの向きを判定する判定処理を行う(ステップS104)。
【0037】
判定処理では、第1の位置でバーコードBが検知された場合には、媒体Mの裏面が上向きであると判定する。第2の位置でバーコードBが検知された場合には、媒体Mの表面が上向きであると判定する。また、第1の位置と第2の位置のいずれでもバーコードBが検知されない場合などそれ以外の場合には、媒体Mの向きは不定であると判定する。
【0038】
判定処理が終了すると、コントローラ54は、判定結果と予め指定された媒体の正しい向きに基づいて、媒体Mの向きが正しい向きであるか否かを判定する(ステップS105)。加熱装置50では、例えば、加熱部53で濃淡パターンが形成された媒体Mの裏面に電磁波が照射されるように、裏面が上を向いた状態が正しい向きとして指定されている。
【0039】
コントローラ54は、媒体Mの向きが正しいと判定すると、搬送部55を制御して媒体Mを加熱装置本体52に向けて搬送し(ステップS106)、加熱装置本体52内の加熱部53で媒体Mを加熱する媒体処理を実行する(ステップS107)。これにより、媒体Mに形成された濃淡パターンに応じた構造物が製造されて、加熱装置50から排紙トレーへ排出される。
【0040】
一方、コントローラ54は、媒体Mの向きが正しくない又は不定であると判定すると、搬送部55を制御して媒体Mの搬送を停止する(ステップS108)。さらに、報知部51を制御して、利用者に判定結果に応じた情報を報知する(ステップS109)。例えば、コントローラ54が媒体Mの向きが正しくないと判定した場合であれば、報知部51は、利用者に媒体Mの向きに誤りがあることを報知してもよい。また、コントローラ54が媒体Mの向きが不定であると判定した場合であれば、報知部51は、利用者に媒体Mが既定の媒体ではないことを報知してもよい。これにより、利用者は、加熱装置50での媒体Mの処理が中止された理由を把握することができる。
【0041】
本実施形態に係る加熱装置50によれば、媒体処理装置である加熱装置50に挿入された媒体Mの表裏の向きを判定することができる。このため、媒体処理を実行する前に、媒体の向きの誤りを検知して処理を中止することができる。また、加熱装置50では、媒体Mに設けられた識別子の検知結果に基づいて媒体Mの向きを判定する。このため、媒体Mの向きに加えて、媒体Mが既定の媒体であるか否かについても判定することが可能である。これにより、加熱装置50に用いられる媒体を制限することができるため、媒体処理に適さない媒体の使用を防止することができる。また、加熱装置50では、媒体Mの表裏の一方に設けられた識別子を1つの検知装置だけで確実に検知することができる。このため、装置の小型化、及び、コスト低減に大きく貢献することができる。
【0042】
図11は、加熱装置50で行われる処理の別の例を示すフローチャートである。
図7では、第1の検知処理と第2の検知処理の両方が行われた後に媒体の向きを判定する例を示したが、媒体の向きは、
図11に示すように、検知処理が行われる度に判定されてもよい。以下、
図11に示す処理について
図7との相違点に着目して説明する。
【0043】
利用者が挿入口60aに媒体Mが挿入すると、コントローラ54がバーコードリーダ56を制御して、第1の検知処理を行う(ステップS201)。この点は、
図7のステップS101と同様である。
【0044】
その後、コントローラ54は、バーコードリーダ56から出力された第1の検知結果に基づいて、媒体Mの向きを判定する判定処理を行う(ステップS202)。ここでは、第1の位置で識別子が検知された場合には、媒体Mの裏面が上向きであると判定する。検知されない場合には、向きが特定されないと判定する。
【0045】
ステップS202で向きが特定されない場合には、ステップS207へ進み、以降、
図7と同様の処理が行われる。なお、ステップS207からステップS214の各処理は、
図7のステップS102からステップS109の処理と同様である。
【0046】
ステップS202で向きが特定された場合、つまり、媒体Mの裏面が上向きであると判定された場合には、コントローラ54は、さらに、ステップS202の判定結果と予め指定された媒体の正しい向きに基づいて、媒体Mの向きが正しい向きであるか否かを判定する(ステップS204)。
【0047】
コントローラ54は、媒体Mの向きが正しいと判定すると、搬送部55を制御して媒体Mを加熱装置本体52に向けて搬送し(ステップS205)、加熱装置本体52内の加熱部53で媒体Mを加熱する媒体処理を実行する(ステップS206)。
【0048】
一方、コントローラ54は、媒体Mの向きが正しくないと判定すると、搬送部55を制御して媒体Mの搬送を停止し(ステップS213)、報知部51を制御して、利用者に判定結果に応じた情報を報知する(ステップS214)。
【0049】
加熱装置50は、
図11に示す処理を行うことによっても、
図7に示す処理を行った場合と同様に、加熱装置50に挿入された媒体Mの表裏の向きを判定することができる。このため、媒体処理を実行する前に、媒体の向きの誤りを検知して処理を中止することができる。また、
図11に示す処理では、第1の検知処理で識別子が検知された場合には、第2の検知処理が省略される。このため、媒体処理をより早期に開始することが可能となる。
【0050】
以上では、搬送方向を基準にした媒体Mの先端に設けられた識別子を検出する例を示したが、加熱装置50は、搬送方向を基準にした媒体Mの後端に設けられた識別子を検出するように構成されてもよい。このような構成は、例えば、リフレクタ57の向きを調整することで実現できる。従って、加熱装置50では、コントローラ54は、第1の検知結果と第2の検知結果の少なくとも一方に基づいて、媒体Mの向きを判定してもよい。
【0051】
[第2の実施形態]
図12は、本実施形態に係る加熱装置で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図13は、
図12の処理で使用される媒体Maを例示した図である。
図14から
図16は、それぞれ、媒体Maが第1の位置、第2の位置、第3の位置にある様子を示した図である。以下、
図12から
図16を参照しながら、加熱装置で行われる処理について具体的に説明する。ここでは、
図13に示すように、濃淡パターンが形成された裏面の四辺のうち、搬送方向の前方又は後方に位置する一辺にバーコードBが設けられた媒体Maを用いた場合を例に説明する。
【0052】
なお、本実施形態に係る加熱装置は、リフレクタ57の代わりに、回動自在に挿入装置60に設置されたリフレクタ57aとリフレクタ57aの向きを変更するための動力源であるモータ58を備える点が、加熱装置50とは異なる。その他の点は、加熱装置50と同様である。
【0053】
利用者が挿入口60aに媒体Maが挿入し、
図12に示す処理が開始されると、コントローラ54は、まず、バーコードリーダ56を制御して、第1の検知処理を行う(ステップS301)。
【0054】
第1の検知処理では、媒体Maはバーコードリーダ56とリフレクタ57aの間ではない搬送路上の第1の位置P1にあり、即ち、搬送路上の位置であって、発光部56aから出射した照明光の光路Lのうち当該発光部56aからリフレクタ57までの間に媒体Mが介在しないような第1の位置P1に、当該媒体Mがある。また、リフレクタ57aは
図14において実線で示す向き(以降、第1の向きと記す)に向けられている。このため、バーコードリーダ56から出射した照明光がリフレクタ57aで反射し、媒体Maの先端に照射される。そして、媒体Maで反射した照明光の一部は、リフレクタ57aで反射してバーコードリーダ56で検出される。バーコードリーダ56は、検出された照明光に基づいて識別子を検知する。この第1の検知処理によって得られる第1の検知結果は、バーコードリーダ56からコントローラ54へ出力される。
【0055】
第1の検知処理が終了すると、コントローラ54は、モータ58を制御してリフレクタ57aを駆動し、リフレクタ57aを
図14において破線で示す向き(以降、第2の向きと記す)に向ける(ステップS302)。その後、バーコードリーダ56を制御して、第2の検知処理を行う(ステップS303)。
【0056】
第2の検知処理では、媒体Maはバーコードリーダ56とリフレクタ57aの間ではない搬送路上の第1の位置P1にあり、且つ、リフレクタ57aは第2の向きに向けられている。第2の検知処理は、バーコードリーダ56から出射した照明光がリフレクタ57aで反射し媒体Maの後端に照射される点が、第1の検知処理とは異なる。この第2の検知処理によって得られる第2の検知結果は、バーコードリーダ56からコントローラ54へ出力される。
【0057】
第2の検知処理が終了すると、コントローラ54は、搬送部55を制御して、媒体Maを
図15に示す第2の位置P2まで所定距離だけ搬送する(ステップS304)。なお、ステップS303は、
図7のステップS102と同様である。
【0058】
媒体Maがバーコードリーダ56とリフレクタ57aの間の第2の位置P2まで搬送されると、コントローラ54は、再びバーコードリーダ56を制御して、第3の検知処理を行う(ステップS305)。
【0059】
第3の検知処理では、媒体Maがバーコードリーダ56とリフレクタ57aの間の第2の位置P2にある。即ち、搬送路上の位置であって、発光部56aから出射した照明光の光路Lのうち当該発光部56aからリフレクタ57までの間に媒体Mが介在するような第2の位置P2に、当該媒体Mがある。このため、リフレクタ57aには照明光は入射しない。バーコードリーダ56から出射した照明光は、
図15に示すように、搬送路上に位置する媒体Maの先端に直接入射し、媒体Maで反射した照明光の一部がバーコードリーダ56で検出される。なお、ステップS305の第3の検知処理は、
図7のステップS103の第2の検知処理と同様である。この第3の検知処理によって得られる第3の検知結果も、バーコードリーダ56からコントローラ54へ出力される。
【0060】
第3の検知処理が終了すると、コントローラ54は、搬送部55を制御して、媒体Maを
図16に示す第3の位置P3まで所定距離だけ搬送し(ステップS306)、さらにバーコードリーダ56を制御して、第4の検知処理を行う(ステップS307)。
【0061】
第4の検知処理では、媒体Maが第2の位置P2とは異なるバーコードリーダ56とリフレクタ57aの間の第3の位置にある。即ち、搬送路上の位置であって、上述の第2の位置P2とは異なり、発光部56aから出射した照明光の光路Lのうち当該発光部56aからリフレクタ57までの間に媒体Mが介在するような第3の位置P3に、当該媒体Mがある。このため、リフレクタ57aには照明光は入射しない。バーコードリーダ56から出射した照明光は、
図16に示すように、搬送路上に位置する媒体Maの後端に直接入射し、媒体Maで反射した照明光の一部がバーコードリーダ56で検出される。この第4の検知処理によって得られる第4の検知結果も、バーコードリーダ56からコントローラ54へ出力される。
【0062】
第4の検知処理が終了すると、コントローラ54は、バーコードリーダ56から出力された第1の検知結果から第4の検知結果に基づいて、媒体Maの向きを判定する判定処理を行う(ステップS308)。
【0063】
判定処理では、第1の検知処理で識別子が検知された場合には、媒体Maの裏面が上向きであり、且つ、識別子が媒体Maの先端側にあると判定する。第2の検知処理で識別子が検知された場合には、媒体Maの裏面が上向きであり、且つ、識別子が媒体Maの後端側にあると判定する。第3の検知処理で識別子が検知された場合には、媒体Maの表面が上向きであり、且つ、識別子が媒体Maの先端側にあると判定する。第4の検知処理で識別子が検知された場合には、媒体Maの表面が上向きであり、且つ、識別子が媒体Maの後端側にあると判定する。また、第1の検知処理から第4の検知処理のいずれにおいても識別子が検知されない場合などそれ以外の場合には、媒体Maの表裏の向き及び前後の向きは不定であると判定する。
【0064】
判定処理が終了すると、コントローラ54は、判定結果と予め指定された媒体の正しい向きに基づいて、媒体Maの向きが正しい向きであるか否かを判定する(ステップS309)。
【0065】
コントローラ54は、媒体Maの向きが正しいと判定すると、搬送部55を制御して媒体Maを加熱装置本体52に向けて搬送し(ステップS310)、加熱装置本体52内の加熱部53で媒体Maを加熱する媒体処理を実行する(ステップS311)。これにより、媒体Maに形成された濃淡パターンに応じた構造物が製造されて、加熱装置から排紙トレーへ排出される。
【0066】
一方、コントローラ54は、媒体Maの向きが正しくない又は不定であると判定すると、搬送部55を制御して媒体Maの搬送を停止し(ステップS312)、報知部51を制御して、利用者に判定結果に応じた情報を報知する(ステップS313)。
【0067】
本実施形態に係る加熱装置によれば、挿入された媒体Maの表裏の向きに加えて、前後の向きについても判定することができる。このため、媒体処理を実行する前に、媒体の向きの誤りを検知して処理を中止することができる。また、媒体Maに設けられた識別子の検知結果に基づいて媒体Maの向きを判定する点は、加熱装置50と同様である。このため、加熱装置に用いられる媒体を制限して、媒体処理に適さない媒体の使用を防止することができる。
【0068】
なお、本実施形態に係る加熱装置においても、媒体の向きは、検知処理が行われる度に判定されてもよく、向きが判定できた時点で以降の検知処理及び判定処理を省略してもよい。従って、加熱装置では、コントローラ54は、第1の検知結果から第4の検知結果の少なくとも一つに基づいて、媒体Mの向きを判定してもよい。
【0069】
[第3の実施形態]
図17は、本実施形態に係る加熱装置で行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図18は、
図17の処理で使用される媒体Mbを例示した図である。
図19は、媒体Mbの搬送路上に設けられた一対のフォトインタラプタ59a、59bを例示した図である。以下、
図17から
図19を参照しながら、加熱装置で行われる処理について具体的に説明する。ここでは、
図18に示すように、濃淡パターンが形成された裏面の四辺のうちの搬送方向の前方と後方に位置する一対の辺にバーコードBが設けられ、且つ、四隅のうちの一つに切欠きNが設けられた媒体Mbを用いた場合を例に説明する。
【0070】
本実施形態に係る加熱装置は、搬送路上にフォトインタラプタ59aとフォトインタラプタ59bが設けられている点が、加熱装置50とは異なる。フォトインタラプタ59aとフォトインタラプタ59bは、各々が媒体Mbを検知する媒体Mbの幅方向に沿って設けられた一対の媒体センサである。その他の点は、加熱装置50と同様である。なお、フォトインタラプタ59aとフォトインタラプタ59bは、搬送路上に設けられていればよいが、ここでは、第2の位置P2よりも
図6に示す挿入装置60の排出口60b側に設けられている例で説明する。
【0071】
利用者が挿入口60aに媒体Maが挿入し、
図17に示す処理が開始されると、コントローラ54は、第1の検知処理、搬送処理、第2の検知処理を順に行う(ステップS401からステップS403)。なお、ステップ401からステップS403の各処理は、
図7のステップS101からステップS103の処理と同様である。
【0072】
第2の検知処理が終了すると、コントローラ54は、搬送部55を制御して、
図18に示すように、媒体Mbがフォトインタラプタ59a、59bを通過するような距離だけ媒体Mbを搬送する(ステップS404)。さらに、コントローラ54は、搬送中に媒体検出処理を行う(ステップS405)。
【0073】
媒体検出処理では、コントローラ54は、フォトインタラプタ59aとフォトインタラプタ59bからの出力を比較する。フォトインタラプタ59aとフォトインタラプタ59bは搬送方向に対して直交する方向に整列しているため、切欠きNの部分を通過するときのみ出力(ON/OFF)が異なる。このため、フォトインタラプタ59aとフォトインタラプタ59bからの出力を比較することで、切欠きNが四隅のうちのどこに位置するかを特定することができる。
【0074】
媒体検出処理が終了すると、コントローラ54は、バーコードリーダ56から出力された第1の検知結果及び第2の検知結果と媒体検出処理の結果とに基づいて、媒体Mbの向きを判定する判定処理を行う(ステップS406)。
【0075】
判定処理では、バーコードリーダ56での識別子の検知結果(つまり、第1の検知結果と第2の検知結果)に基づいて媒体Mbの表裏の向きを判定する。また、フォトインタラプタ59aとフォトインタラプタ59bでの媒体Mbの検知結果(つまり、媒体検出処理の結果)に基づいて、媒体Mbの前後の向きを判定する。
【0076】
判定処理が終了すると、コントローラ54は、判定結果と予め指定された媒体の正しい向きに基づいて、媒体Mbの向きが正しい向きであるか否かを判定する(ステップS407)。
【0077】
コントローラ54は、媒体Mbの向きが正しいと判定すると、搬送部55を制御して媒体Mbを加熱装置本体52に向けて搬送し(ステップS408)、加熱装置本体52内の加熱部53で媒体Mbを加熱する媒体処理を実行する(ステップS409)。これにより、媒体Mbに形成された濃淡パターンに応じた構造物が製造されて、加熱装置から排紙トレーへ排出される。
【0078】
一方、コントローラ54は、媒体Mbの向きが正しくない又は不定であると判定すると、搬送部55を制御して媒体Mbの搬送を停止し(ステップS410)、報知部51を制御して、利用者に判定結果に応じた情報を報知する(ステップS411)。
【0079】
本実施形態に係る加熱装置によっても、第2の実施形態に係る加熱装置と同様に、挿入された媒体Mbの表裏の向きに加えて、前後の向きについても判定することができる。従って、第2の実施形態に係る加熱装置と同様の効果を得ることができる。
【0080】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。媒体処理装置、長尺媒体、及び、媒体は、特許請求の範囲に記載される本発明を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0081】
上述した実施形態では、コンピュータ10、表示装置20、入力装置30、印刷装置40、加熱装置50がそれぞれ別体で構成された構造物製造システム1を例示したが、構造物製造システム1は、これらを単一の筐体にまとめた構造物製造装置として構成されてもよい。
【0082】
上述した実施態様では、媒体処理装置として加熱装置を例示したが、媒体処理装置は加熱装置に限らない。例えば、媒体に対して印刷を行う印刷装置が媒体処理装置として構成されてもよい。
【0083】
上述した実施形態では、媒体に設けられた識別子としてバーコードを例示したが、媒体を識別できる限り、任意の識別子を採用し得る。媒体に設けられる識別子は、バーコードのように光学的に検出可能なマークであってもよいが、光学的に検出可能な識別子に限れない。例えば、磁気的に検出可能な識別子であってもよい。また、識別子は、媒体に形成された微細な凹凸や孔であってもよい。さらに、媒体に複数種類の識別子を設けてもよく、例えば、搬送方向に対して前方の辺と後方の辺に異なる識別子を設けることで、媒体の前後の向きを判定してもよい。
【0084】
上述した実施形態では、媒体に設けられた識別子を検知する検知装置としてバーコードリーダを例示したが、検知装置はバーコードリーダに限らない。任意のフォトセンサを採用し得る。
【0085】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
媒体を照明する照明光を出射する発光部と、前記媒体で反射した前記照明光を検出する光検出部と、を有し、前記照明光の検出結果に基づいて前記媒体に設けられた識別子を検知する検知装置と、
前記検知装置に対して前記媒体の搬送路を挟んで反対側に配置された、前記照明光を反射するリフレクタと、
前記検知装置での前記識別子の検知結果に基づいて、前記媒体の向きを判定する判定部と、を備える
ことを特徴とする媒体処理装置。
[付記2]
付記1に記載の媒体処理装置において、
前記リフレクタは、前記発光部から出射した前記照明光を前記媒体に導き、且つ、前記媒体で反射した前記照明光を前記光検出部に導くように、配置された
ことを特徴とする媒体処理装置。
[付記3]
付記1または付記2に記載の媒体処理装置において、
前記判定部は、前記搬送路上の位置であって前記検知装置と前記リフレクタの間ではない第1の位置に前記媒体があるときの前記検知装置での前記識別子の第1の検知結果と、前記搬送路上の位置であって前記検知装置と前記リフレクタの間である第2の位置に前記媒体があるときの前記検知装置での前記識別子の第2の検知結果と、の少なくとも一方の検知結果に基づいて、前記媒体の向きを判定する
ことを特徴とする媒体処理装置。
[付記4]
付記1または付記2に記載の媒体処理装置において、
前記判定部は、前記搬送路上の位置であって前記検知装置と前記リフレクタの間ではない第1の位置に前記媒体があり且つ前記リフレクタが第1の向きに向いているときの前記検知装置での前記識別子の第1の検知結果と、前記第1の位置に前記媒体があり且つ前記リフレクタが前記第1の向きとは異なる第2の向きに向いているときの前記検知装置での前記識別子の第2の検知結果と、前記搬送路上の位置であって前記検知装置と前記リフレクタの間である第2の位置に前記媒体があるときの前記検知装置での前記識別子の第3の検知結果と、前記搬送路上の位置であって前記第2の位置とは異なる前記検知装置と前記リフレクタの間である第3の位置に前記媒体があるときの前記検知装置での前記識別子の第4の検知結果と、のうちの少なくとも一つの検知結果に基づいて、前記媒体の向きを判定する
ことを特徴とする媒体処理装置。
[付記5]
付記1乃至付記4のいずれか1つに記載の媒体処理装置において、
前記判定部は、前記検知装置での前記識別子の検知結果に基づいて、前記媒体の表裏の向き、または、前記媒体の前後の向きの少なくとも一方を判定する
ことを特徴とする媒体処理装置。
[付記6]
付記1乃至付記4のいずれか1つに記載の媒体処理装置において、さらに、
各々が前記媒体を検知する、前記媒体の幅方向に沿って設けられた一対の媒体センサを備え、
前記判定部は、
前記検知装置での前記識別子の検出結果に基づいて、前記媒体の表裏の向きを判定し、
前記一対の媒体センサでの前記媒体の検知結果に基づいて、前記媒体の前後の向きを判定する
ことを特徴とする媒体処理装置。
[付記7]
付記1乃至付記6のいずれか1つに記載の媒体処理装置において、
前記判定部は、検知した前記識別子に基づいて、前記媒体が既定の媒体であるか否かを判定する
ことを特徴とする媒体処理装置。
[付記8]
付記1乃至付記7のいずれか1つに記載の媒体処理装置において、さらに、
前記媒体を前記搬送路に沿って搬送する搬送機構と、
前記媒体に対して処理を実行する媒体処理部と、を備え、
前記搬送機構は、前記判定部の判定結果に応じて前記媒体を前記媒体処理部へ搬送する
ことを特徴とする媒体処理装置。
[付記9]
付記1乃至付記8のいずれか1つに記載の媒体処理装置において、さらに、
前記判定部の判定結果に基づいて、利用者に情報を報知する報知部を備える
ことを特徴とする媒体処理装置。
[付記10]
裁断されることにより請求項1に記載の媒体処理装置で用いられる前記媒体が得られる長尺媒体であって、
前記長尺媒体の一方の面上であって、裁断機で裁断される位置又は前記長尺媒体の縁部の少なくとも一方に、光学的に識別可能な識別子であって加熱により識別不能となる識別子が設けられた長尺媒体。
[付記11]
付記10に記載の長尺媒体を裁断して得られる媒体。