(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配線回路基板、導電性接着剤層、および金属補強板を備え、前記導電性接着剤層は、前記配線回路基板および金属補強板に対してそれぞれ接着し、前記金属補強板は、金属板の表面に中間層と表面保護層とを有してなり、
前記中間層は、厚みが0.1〜3μmのニッケル層であり、
前記表面保護層は、厚みが0.05〜0.5μmの貴金属層であり、
前記表面保護層に対する前記中間層の露出率は2〜20%であることを特徴とするプリント配線板。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のプリント配線板について、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明のプリント配線板の構成を示す断面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図1中の上側を「上」、下側を「下」とする。
【0013】
《プリント配線板》
本発明のプリント配線板1は、
図1に示す通り、配線基板6と、金属補強板2とを接着する導電性接着剤層3を備えている。金属補強板2は、ステンレス等の金属板2aの表面に中間層2bを介して表面保護層2cを有している。
そして、前記中間層2bは、厚みが0.1〜3μmのニッケル層であり、前記表面保護層2cは、厚みが0.05〜0.5μmの貴金属層であることを特徴とする。
また、表面保護層2cに対する前記中間層2bの露出率が0.5〜20%であることが好ましい。
【0014】
プリント配線板1の実施態様をさらに説明する。配線基板6は、絶縁基材9と接する面であって金属補強板2と対向する面に電子部品10を実装することで、プリント配線板1に必要な強度が得られる。金属補強板2を備えることで、プリント配線板1に曲げ等の力が加わった際の半田接着部位ないし電子部品10に対するダメージを防止できる。また、導電性接着剤層3は、プリント配線板の上方向から下方向に対する電磁波をシールドすることができる。
【0015】
<金属補強板>
本発明の金属補強板は、金属板を備え、該金属板の表面に中間層と表面保護層とを有するものである。
すなわち、金属補強板2は、ステンレス等の金属板2aの表面に中間層2bを介して表面保護層2cを有している。
【0016】
[金属板]
金属補強板2の金属板2aは、例えば金、銀、銅、鉄およびステンレス等の導電性金属が挙げられる。これらの中で金属補強板としての強度、コストおよび化学的安定性の面でステンレスが好ましい。金属補強板2aの厚みは、一般的に0.04〜1mm程度である。
【0017】
[中間層]
本発明の中間層は、ニッケルを有する層であり、ニッケル、およびニッケル合金の少なくともいずれかにより形成されてなる層である。中間層2bは、金属補強板2の金属板2aに対し、全表面に形成されている。
中間層の厚みは、0.1〜3μmであり、0.5〜2μmがより好ましい。中間層2bの厚みを3μm以下にすることで、金属補強板の表面凹凸を最表面に投影できるため、剥離強度が向上する。また、中間層2bの厚みを0.1μm以上とすることで、接続抵抗値を良化することができる。
【0018】
中間層2bは、電解ニッケルメッキ法および無電解ニッケルメッキ法で形成することができるが、無電解ニッケルメッキ法が好ましい。無電解ニッケルメッキはメッキの硬度が高く、表面保護層の密着性が高いためハンダフロート試験が良好となる。
【0019】
また、中間層2bはリンを含有することが好ましく、中間層のリン原子(P)濃度が、中間層全体(100重量%)中、2〜20重量%であることが好ましく、5〜15重量%がより好ましい。中間層にリンを2〜20重量%含有することで、中間層と表面保護層の密着力を向上させ、ハンダフロート試験が向上する。
上記リン原子濃度は、中間層2bの全原子におけるリン原子の重量%である。
リン原子濃度は蛍光X線分析によって測定することができる。中間層及び表面保護層を有する金属補強板を蛍光X線を用いて定量分析を行い、得られたニッケル原子とリン原子の合計を100としたときのリン原子濃度である。
【0020】
上段で説明した中間層2bを有する金属補強板2は、中間層形成後の金属板2aをサンプリングして、これらの数値範囲を満たす中間層を有する金属補強板2を適宜選択して使用すれば良い。
【0021】
[表面保護層]
表面保護層2cは、中間層2bを介して金属補強板2の最表面に形成される貴金属層である。本発明の表面保護層は、貴金属を有する層であり、貴金属およびその合金の少なくともいずれかにより形成されてなる。
表面保護層の厚みは、0.05〜0.5μmであり、0.07〜0.3μmが好ましい。表面保護層の厚みを0.05〜0.5μmにすることで、剥離強度とハンダフロート試験とが良好となる。
【0022】
表面保護層2cの材料として使用可能な貴金属としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(0s)等があり、本例では金を使用して説明している。また、貴金属を主成分とする合金を材料として表面保護層2cを形成することができる。
また、表面保護層2cは、その表面粗さRaが0.2μm以上であることが好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.4μm以上がさらに好ましい。表面粗さRaの数値が大きいと、表面保護層2cの表面が粗面となるため、金属補強板2と導電性接着剤層3を熱圧着する際、導電性接着剤層3が表面保護層2cの表面の窪みに侵入して両者の接着力を強固にする。
【0023】
なお、表面粗さRaは、表面保護層2cの表面を接触式表面粗さ計を使用してJIS B 0601−2001に準拠して測定した数値である。
【0024】
また、本発明の金属補強板は、表面保護層を一定の厚みまで薄く形成した場合にピンホールが形成する場合がある。さらに、表面保護層を形成する際にマスキング等の工程をいれることで、表面保護層を薄くしなくとも、意図的にピンホールを形成することも可能である。上記ピンホールを有する表面保護層の表面をX線光電子分光分析(XPS)により測定すると、中間層のニッケルが確認される。本発明では、ここで確認された、表面保護層における中間層の検出量を、露出率として、定義した。
この中間層の露出率は、表面保護層に対して0.5〜20%であることが好ましい。前記露出率は1〜15%がより好ましく、2〜10%がさらに好ましい。表面保護層に対する前記中間層の露出率が0.5〜20%であることで、剥離強度とハンダフロート試験耐性が良化する。
露出率は、表面保護層の元素濃度に対する中間層の元素濃度の割合により、X線光電子分光分析(XPS)を用いて求めることができる。
【0025】
表面保護層2cに対する中間層2bの厚みの比は、表面保護層2cの厚みを
1としたときに、2〜30であることが好ましく、3〜20がより好ましい。前記厚みの比を2〜30とすることで、剥離強度と接続抵抗値をより向上できる。
【0026】
<導電性接着剤層>
導電性接着剤層3は、配線回路基板および金属補強板に対してそれぞれ接着している。また、熱硬化性樹脂および導電性成分を含む、等方導電性接着剤または異方導電性接着剤を使用して形成する。ここで等方導電性とは、X軸(
図1における左右方向)、Y軸(
図1における奥行き方)およびZ軸(
図1における上下方向)の3次元方向に導電する性質である。また異方導電性とはZ軸にのみ導電する性質である。これらの導電性はプリント配線板の使用態様に応じて適宜選択できる。
【0027】
熱硬化性樹脂は、水酸基およびカルボキシル基のうち少なくともいずれか一方を有することが好ましい。具体的には、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンウレア樹脂、シリコーン樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アミドイミド樹脂、エラストマー樹脂およびゴム樹脂等が挙げられる。上記樹脂は、単独または2種類以上を併用できる。
【0028】
熱硬化性樹脂は、硬化剤を使用して硬化することが好ましい。前記硬化剤は、熱硬化性樹脂の架橋性官能基と反応できる官能基を1つ以上有する化合物であれば良く、限定されない。架橋性官能基がカルボキシル基の場合、硬化剤は、エポキシ化合物、アリジリン化合物、イソシアネート化合物、ポリオール化合物、アミン化合物、メラミン化合物、シラン系、カルボジイミド系化合物、金属キレート化合物等が好ましい。
また、架橋性官能基が水酸基の場合、硬化剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、金属キレート化合物が好ましい。また、架橋性官能基がアミノ基の場合、硬化剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、金属キレート化合物が好ましい。これらの硬化剤は、1 種または2 種以上使用できる。
【0029】
導電性成分は、導電性微粒子、導電性繊維、およびカーボンナノチューブ等から適宜選択して使用できる。導電性微粒子は、金、銀、銅、鉄、ニッケル、およびアルミニウム等の金属、ないしその合金、ないしカーボンブラック、フラーレン、および黒鉛等の無機材料等が挙げられる。また、銅粒子の表面を銀で被覆した銀被覆銅微粒子も挙げられる。
【0030】
導電性接着剤層3は、さらに、粘着付与樹脂、イオン捕集剤、無機フィラー、金属不活性化剤、難燃剤、光重合開始剤、帯電防止剤、および酸化防止剤等を適宜選択して含むことができる。導電性接着剤層3の厚みは、通常30〜80μm程度である。
【0031】
<配線回路基板>
配線回路基板6は、絶縁層4aおよび4b、接着剤層5aおよび5b、ならびにグランド配線回路7、ならびに配線回路8、ならびに絶縁基板9を備えている。また配線回路基板6は、グランド配線回路7上にビア11(Via)といわれる円柱状ないしすり鉢状の穴を備えている。
【0032】
絶縁層4aおよび4bは、カバーレイフィルムともいい、少なくとも樹脂を含む。樹脂は、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、イレタンウレア樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アミドイミド樹脂およびフェノール樹脂等が挙げられる。また、樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂から適宜選択して使用できるが、耐熱性の面で熱硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独または2種類以上を併用できる。絶縁層4aおよび4bの厚みは、通常5〜50μm程度である。
【0033】
接着剤層5aおよび5bは、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、およびアミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化樹脂に使用する硬化剤は、エポキシ硬化剤、イソシアネート硬化剤、およびアリジリン硬化剤等が挙げられる。接着剤層5aおよび5bは、絶縁層4aおよび4bと、グランド配線回路7および配線回路8を備えた絶縁基板9とを接着するために使用し、絶縁性を有する。接着剤層5aおよび5bの厚みは、通常1〜20μm程度である。
【0034】
グランド配線回路7および配線回路8は、銅等の導電性金属層をエッチングして形成する方法、ないし導電性ペーストを印刷することで形成する方法が一般的である。図示はしないが配線回路基板6は、グランド配線回路7および配線回路8を複数有することができる。グランド配線回路7は、グランド電位を保つ回路であり、配線回路8は、電子部品等に電気信号を送信する回路である。グランド配線回路7および配線回路8の厚みは、それぞれ通常5〜50μm程度である。
【0035】
絶縁基板9は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレート等の絶縁性を有するフィルムであり、配線回路基板6のベース材である。絶縁基板9は、リフロー工程を行なう場合、ポリフェレンサルファイドおよびポリイミドが好ましく、リフロー工程を行なわない場合、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。絶縁基板9の厚みは、通常5〜100μm程度である。
【0036】
ビア11は、グランド配線回路7および配線回路8から適宜選択した回路パターンの一部を露出するためにエッチングやレーザー等により形成される。
図1によるとビア11によりグランド配線回路7の一部が露出しており導電接着剤層3を介してグランド配線回路7と金属補強板2とが電気的に接続されている。ビア11の直径は、通常0.5〜2μm程度である。
【0037】
プリント配線板1は、通常、電磁波シールドシートを備える。電磁波シールドシートは、絶縁層101、金属膜102、および導電性接着剤層103を備えるのが一般的であり、配線回路8を流れる電気信号が高周波である場合は、特に好ましい。一方、図示しないが、配線回路8を流れる電気信号が比較的低周波である場合、電磁波シールドシートは、少なくとも絶縁層101および導電性接着剤層103を備えていれば良い。
【0038】
絶縁層101は、絶縁基板9で説明した絶縁性を有するフィルムを使用する他に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、およびアミド樹脂等の熱硬化性樹脂を適宜選択して形成することもできる。絶縁層101の厚みは、通常2〜20μm程度が好ましい
【0039】
金属膜102は、金、銀、銅、アルミニウム、および鉄等の導電性金属、ならびにこれらの合金から形成した被膜が好ましく、コスト面から銅がより好ましい。また金属膜102は、圧延金属箔、電解金属箔、スパッタ膜ならびに蒸着膜から適宜選択できるが、コスト面から圧延金属箔が好ましく、圧延銅箔がより好ましい。金属膜102の厚さは、金属箔の場合、0.1〜20μm程度が好ましく、スパッタ膜の場合、0.05〜5.0μm程度が好ましく、蒸着膜の場合、10〜500nm程度が好ましい。なお、スパッタ膜を形成する場合は、ITO(酸化インジウムスズ)またはATO(三酸化アンチモン)を使用することが好ましく、蒸着膜を形成する場合は、金、銀、銅、アルミニウムまたはニッケルを使用することが好ましい。
【0040】
導電性接着剤層103は、導電性接着剤層3で説明した原料を含むことが好ましい。導電性接着剤層103の厚みは、2〜20μm程度が好ましい。
【0041】
本発明のプリント配線板の製造方法は、少なくとも配線回路基板6、導電性接着剤層3、および金属補強板2を圧着する工程を備えていることが必要である。圧着は、例えば、配線回路基板6と電磁波シールドシートと圧着した後、導電性接着剤層3および金属補強板2を重ね圧着を行い、次いで電子部品を実装する方法が挙げられるが、圧着の順序は限定されない。本発明では配線回路基板6、導電性接着剤層3、および金属補強板2を圧着する工程を備えていれば良く、他の工程は、プリント配線板の構成ないし使用態様に応じて適宜変更できる。
前記圧着は、導電性接着剤層3が熱硬化型樹脂を含む場合、硬化促進の観点から同時に加熱することが特に好ましい。一方、導電性接着剤層3が熱可塑性樹脂を含む場合であっても密着が強固になり易いため加熱することが好ましい。加熱は150〜180℃程度が好ましく、圧着は、3〜30kg/cm
2程度が好ましい。圧着装置は、平板圧着機またはロール圧着機を使用できるが、平板圧着機を使用する場合、一定の圧力を一定の時間かけることができるため好ましい。圧着時間は、配線回路基板6、導電性接着剤層3、および金属補強板2が十分密着すればよいので特に限定されないが、通常30分〜2時間程度である。
【0042】
本発明のプリント配線板は、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートPC、デジタルカメラ、液晶ディスプレイ等の電子機器に搭載する(備える)ことはもとより、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送機器にも好適に搭載できる(備える)ことができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0044】
評価に使用した部材は、下記の通りである。
【0045】
<導電性接着シートA>
熱硬化性ポリアミド樹脂(酸価=10mgKOH/g、トーヨーケム社製)を100部、導電性微粒子(核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子D50 平均粒子径=12μm、福田金属箔粉工業社製) を400部容器に仕込み、不揮発分濃度が40重量%になるようトルエン: イソプロピルアルコール(重量比=2:1)の混合溶剤を加えて混合した。次いでビスフェノールA型エポキシ樹脂(「JER828」(エポキシ当量=189g/eq)三菱化学社製)を40部、およびアミン系エポキシ硬化剤(「YN100」三菱化学社製)15部を加えディスパーで10分攪拌して導電性樹脂組成物を作製した。得られた導電性樹脂組成物を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように剥離性フィルムの離形処理された面上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで導電性接着シートAを得た。
【0046】
<導電性接着シートB>
熱硬化性ポリアミド樹脂(酸価=10mgKOH/g、トーヨーケム社製)を100部、導電性微粒子(核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子D50 平均粒子径=12μm、福田金属箔粉工業社製) を400部容器に仕込み、不揮発分濃度が40重量%になるようトルエン: イソプロピルアルコール(重量比=2:1)の混合溶剤を加えて混合した。次いでビスフェノールA型エポキシ樹脂(「JER828」(エポキシ当量=189g/eq)三菱化学社製)を40部、およびイミダゾール系エポキシ硬化剤(「EMI24」三菱化学社製)15部を加えディスパーで10分攪拌して導電性樹脂組成物を作製した。得られた導電性樹脂組成物を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように剥離性フィルムの離形処理された面上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで導電性接着シートBを得た。
【0047】
<導電性接着シートC>
熱硬化性ポリウレタンウレア樹脂(酸価=5mgKOH/g、トーヨーケム社製)を100部、導電性微粒子(核体に銅、被覆層に銀を使用した樹枝状粒子D50 平均粒子径=12μm、福田金属箔粉工業社製) を400部容器に仕込み、不揮発分濃度が40重量%になるようトルエン: イソプロピルアルコール(重量比=2:1)の混合溶剤を加えて混合した。次いでビスフェノールA型エポキシ樹脂(「JER828」(エポキシ当量=189g/eq)三菱化学社製)を40部、およびアミン系エポキシ硬化剤(「YN100」三菱化学社製)15部を加えディスパーで10分攪拌して導電性樹脂組成物を作製した。得られた導電性樹脂組成物を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように剥離性フィルムの離形処理された面上に塗工し、100℃の電気オーブンで2分間乾燥することで導電性接着シートCを得た。
【0048】
<配線回路基板>
銅張積層板;エスパーフレックス(厚さ8μm銅箔/厚さ38μmポリイミド 住友金属鉱山社製)
【0049】
<金属補強板>
市販ステンレス板に対して、それぞれ無電解メッキを行なうことでステンレス板表面にニッケルからなる中間層を形成した後、電解メッキによって貴金属からなる表面保護層を形成した。無電解メッキの条件を公知の方法で調整してサンプリングを行ない中間層及び表面保護層の厚みと、露出率および表面粗さRaがそれぞれ異なる中間層と表面保護層を有するステンレス板(以下、単にSUS板という)1〜8、11、12(SUS1〜8、11、12)を得た。ステンレス板表面に無電解メッキを行わずに、直接貴金属層を形成することで、ステンレス板9(SUS9)を得た。また、ステンレス板表面に無電解メッキのみを行うことで、ニッケル層のみ有するステンレス板10(SUS10)を得た。そして各SUS板を、厚さ0.2mm・幅30mm・長さ150mmの試験板A、および厚さ0.2mm・幅30mm・長さ50mmの大きさの試験板Bに準備した。なお分析用試験板は別途準備した。
【0050】
得られたSUS板(SUS1〜12)について、それぞれ下記に示す方法により分析を行った。結果は、表1、および表2に記した。
【0051】
<リン原子濃度(P濃度)>
リン原子濃度はセイコーインスツル株式会社製の蛍光X線分析装置「SII SEA5120」によって測定した。測定条件は、真空とし、コリメーター径1.8mmとした。バルクFPアプリケーションによる定量分析を行い、得られた定量結果のニッケル原子とリン原子の合計を100としたときのリン原子の重量%をリン原子濃度とした。
【0052】
<中間層/表面保護層厚み比率>
それぞれの膜厚値より、表面保護層の厚みを
1としたときの、中間層の厚みの比率を求めた。
【0053】
<露出率>
露出率は、得られた試験板表面についてXPS分析を次の条件で行ない、算出した。
【0054】
専用台座に両面粘着テープを貼り、SUS板を固定したものを測定試料とした。測定試料を下記条件で、3箇所場所を変えて測定した。
装置:AXIS−HS(島津製作所社製/Kratos)
試料チャンバー内真空度:1×10
−8Torr以下
X線源:Dual(Al)15kV,5mA Pass energy 80eV
Step:0.1 eV/Step
Speed:120秒/元素
Dell:300、積算回数:5
光電子取り出し角:試料表面に対して90度
結合エネルギー:C1s主ピークを284.6eVとしてシフト補正
Au(4f)ピーク領域:80〜92eV
Ni(2p)ピーク領域:880〜845eV
Ag(3d)ピーク領域:376〜362eV
Pd(3d)ピーク領域:330〜350eV
【0055】
上記ピーク領域に出現したピークをスムージング処理し、直線法にてベースラインを引き、ニッケルと貴金属の原子濃度「Atomic Conc」を求めた。
得られた金原子濃度およびニッケル原子濃度の合計100%中のニッケル原子濃度について、3箇所の値の平均値を求め、露出率とした。
ニッケル、または貴金属がその合金である場合には合金のピークも加味して原子濃度を求め、中間層の露出率を算出した。
【0056】
<表面粗さ(Ra)>
表面粗さRaは、JISB0601‘2001に準じて、次の条件で測定した。
Raは算術平均粗さRaを指し、規定された中心線平均粗さであり、その基準粗さを1mmとした場合の中心線平均粗さを言う。上記のSUS板を、接触式表面粗さ計(「SURFCOM480A」東京精密社製)を使用し、測定速度0.03mm/s、測定長さ2mm、カットオフ値0.8mmの条件で表面粗さRaを測定した。測定場所を変えて得られた5 か所のRaの平均値をRaとした。
【0057】
「実施例1〜10、および比較例1〜4」
<試験用積層体の作製>
導電性接着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに準備した。次いで一方の剥離性シートを剥がし露出した導電性接着剤層を表1に示す金属補強板から得られた試験板Aの上に載せ、ロールラミネーター(SA−1010 小型卓上テストラミネーター テスター産業株式会社)90℃、3kgf/cm2、1m/minで仮止めした。そして、他の剥離性シートを剥がして、露出した導電性接着剤層にエスパーフレックスのポリイミド面が導電性接着剤層と接するように載せ、上記同様のロールラミネート条件で仮止した。そして、これらを170℃、2MPa、5分の条件で圧着をした後、160℃の電気オーブンで60分間加熱を行なうことで積層体を得た。
ただし、実施例5、7および8は参考例である。
【0058】
<剥離強度>
得られた積層体について、導電性接着剤層と試験板との剥離強度を測定するために23℃相対湿度50%の雰囲気下で、引っ張り速度50mm/minでTピール剥離試験をおこない、常温(23℃)の剥離強度(N/cm)を測定した。試験機は小型卓上試験機(EZ−TEST 島津製作所社製)を用いた。なお、剥離強度は、接着力ともいう。
【0059】
リフロー後の剥離強度を測定するために得られた積層体を小型リフロー機(SOLSYS−62501RTP アントム社製)を使用してピーク温度を260℃にしてリフロー処理を行なった。前記積層体を23℃相対湿度50%の雰囲気下で1時間放置した後、同雰囲気下、上記同様の方法でリフロー後の剥離強度(N/cm)を測定した。なお、剥離強度は以下の基準で評価した。
○:剥離強度が8N/cm以上
△:剥離強度が3N/cm以上、8N/cm未満
×:剥離強度が3N/cm未満
【0060】
<ハンダフロート試験>
得られた積層体について金属補強板を下にして260℃の溶融ハンダに1分浮かべた。次いで、溶融ハンダから取り出した直後の積層体について、積層体の側面から導電性接着剤層の外観を目視で確認し、次の基準で評価した。なお、評価には角型ハンダ槽(POT100C 太洋電機産業社製)を使用した。評価は、1サンプルあたり5回評価した。
○:5評価中、全てのサンプルに異常が見られなかった。優れている
△:5評価中、1または2評価に気泡が発生した。実用可
×:5評価中、3評価以上に気泡が発生した。実用不可
【0061】
<接続抵抗値>
上記<試験用積層体の作製>で使用した導電性接着シートの大きさを幅10mm・長さ50mmの大きさに換え、試験板Aを試験板Bに換えた以外は、<試験用積層体の作製>と同様に行うことで積層体を得た。得られた積層体について得られた積層体について、抵抗率計(ロレスターGP MCP−T600 三菱化学社製)を用い、2端子法で接続抵 抗値を測定した。なお、接続抵抗値は以下の基準で評価した。
○:接続抵抗値が20mΩ/□未満
△:接続抵抗値が20mΩ/□以上、40mΩ/□未満
×:接続抵抗値が40mΩ/□以上
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1、2の結果から、実施例1〜10の、配線回路基板、導電性接着剤層、および金属補強板を備えるプリント配線基板は、リフロー工程を経た後にも気泡が生じ難く、導電性接着剤層と金属板とが良好な接着力を有し、グランド回路と金属板との導電性が良好であった。
これに対し、比較例のプリント配線基板は、グランド回路と金属板との導電性、剥離強度、およびハンダフロート性のすべてを満足することはできなかった。
【0065】
そのため、本発明の、機械的強度および導電性に優れるプリント配線板を備える電子機器は、内部に実装された電子部品が発する電磁波ノイズまたは外部から侵入する電磁波ノイズを原因とした誤作動を、長期にかつ安定に防止することが可能である。
また、上記プリント配線板は導電性接着剤層と金属板とが良好な接着力を有しているため、これを使用した電子機器は、振動や落下に強く、長期にわたって安定した動作を保つことができる。