(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ブローボトルのような自立性があり、樹脂使用量が少ないフィルムで構成される自立性容器は、中間フィルムを底側、あるいは側面などに折り込んで設けることにより開発され、簡単な機構を組み込むことによって、製袋機械で生産が可能である。
特に、下側に折り込み部を設けた自立性容器は、自立性も高く、製造し易い上に、内容物を収納前ではコンパクトに畳められることから、ボトル代替用包装体として、積極的に利用されている。
【0003】
ところで、近年、フィルム製容器を、レトルトパウチとして使用し、電子レンジなどにより容易に加熱調理する利用が提案されて来ている。
このようなフィルム製容器は、食品が容器内部に収納した状態で加熱され、一定の圧力に上昇した時に、内部から発生する蒸気を逃がすことで、良好な調理をすることができる。このフィルム製容器をレトルトパウチとして使用した場合、加熱されたフィルム製容器は、非常に高温となる。特に蒸気を逃がす蒸気抜き部からは、100℃以上となった水蒸気が噴出するので、蒸気抜き部の周囲は手で取り扱おうとしても、火傷を負いやすい問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1では、電子レンジにより加熱するための袋において、胴部を構成する四角形からなる前面と後面の底部に、底面を逆V字状に折り畳んで挿入し、当該前面と当該後面と当該底面の周縁部をそれぞれヒートシールして、天部シール部、胴部シール部、および、底部シール部を形成し、充填した内容物により前記の底部が前後に拡張して自立できる形態の自立性包装袋であって、当該天部シール部、または胴部シール部と連結してコの字状シール部を設け、当該コの字状シール部に囲まれた未シール部に切込み、または、切欠を少なくとも一つ有することを特徴とする電子レンジ用包装袋を提案している。
【0005】
この電子レンジ用包装袋は、電子レンジで加熱された時に、内部圧力が上昇し、確実にコの字状シール部から剥離し、コの字状シール部で囲まれた未シール部の切込み、または、切欠で形成される通気孔が蒸気抜きの働きをして、一定の内部圧力を維持して調理することができる。
しかしながら、この通気孔周辺は非常に高温になるが、広幅シール部を少なくとも一つ設けるだけであると、フィルム製容器は傾きやすい。もし、通気孔が最も高い位置に保てないと、通気孔から内容物が噴出し、大きな火傷を負いやすいばかりでなく、容器があった周囲が汚れてしまうなどの問題が発生する恐れがあった。
また、加熱調理後、電子レンジ用の包装袋を開封するには、ノッチを胴部シール部の縁に形成して、このノッチを介して引き裂いて開封するとしているが、図で示されたノッチは、コの字状シール部よりも袋の上端側に記載されている。この場合、開口部はコの字状シール部により狭められて、内容物を取り出しにくくしていると共に、切込み、または、切欠によって切り欠きから内容物が漏れる恐れがある。
その為、加熱調理した内容物は、加熱調理後、他の容器に移すなどの対応が必要だった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のフィルム製容器の実施形態例について、図を用いて詳細に説明する。
図1は本発明のフィルム製容器の一例で、内容物を充填する前の形状を示す斜視図である。
フィルム製容器は、前面フィルム1と、その裏面側の背面フィルム2と、底面に折り込まれている底面フィルム3からなっている。
前面フィルム1と背面フィルム2は、上辺の幅が広い形状になっていて、下辺が狭く作成されている。
【0012】
そして、前面フィルム1と背面フィルム2は、互いに、左側面シール部61と右側面シール部62が融着されている。
また、底側には、前面・背面方向に折り畳まれた底面フィルム3があって、前面フィルム1と底面フィルム3が互いに、左側面シール部61と右側面シール部62と前底面シール部31などの周縁部でシールされ、底面形状を形成している。
同じように、背面フィルム2と底面フィルム3が互いに、左側面シール部61と右側面シール部62と背底面シール部32などの周縁部でシールされ、底面形状を形成している。折り畳まれた底面フィルム3の中央を広げると、底面近傍の前面フィルム1と背面フィルム2が離れ、底面30を形成する。
【0013】
この時、底面フィルム3の左周縁と右周縁には、底面フィルム3の一部を開孔し、前面フィルム1と背面フィルム2が互いに融着した左下融着部610と右下融着部620を設けている。その為、底面周縁部の腰を強くして、かつ、安定した自立性を確保できるようにしている。
【0014】
左右側面シール部の一方には、蒸気抜き部5を設けている。
この蒸気抜き部5は、フィルム製容器の内側に飛び出した融着部を形成している。そして、その先端の融着幅を小さくし、融着外縁部51が、他の融着部の内縁位置よりも内側に位置するように設定されている。
【0015】
さらに、左側面シール部61と右側面シール部62の外側周縁両端において、蒸気抜き部5より底面側で、かつ、底面に平行に左ノッチ71と右ノッチ72を有している。
この左ノッチ71と右ノッチ72を直線で結ぶ線状に脆弱線73が走っていると、より確実にフィルム製容器を開封しやすい。
脆弱線73は、炭酸ガスレーザーを走査して基材フィルムを部分的に脆弱化したり、ビク刃などで、基材フィルムを半抜きにしたりして、引き裂きし易くすることで、対応できる。
【0016】
また、左ノッチ71の上面側における左側面シール部61には、上広幅シール部611を有し、右ノッチ72の上面側における右側面シール部62には、上シール部621を有している。
さらに、蒸気抜き部5のある側面シール部のノッチより底面側にも下広幅シール部622が形成されている。
【0017】
図1では、フィルム製容器の上面側をシールせず、開口している状態であるが、通常、この開口部4から内容物を充填してから、上面シール部63を融着して、フィルム製容器を完成させる。
この時、内容物は、蒸気抜き部5よりも底面側にだけ充填できる量に抑える必要がある。
【0018】
図2は、本発明のフィルム製容器の一例で、内容物を充填・シール後、電子レンジ加熱している状態を示す斜視図である。
電子レンジで加熱すると、内容物の水分が沸騰し、フィルム製容器内部の圧力が上昇する。
フィルム製容器内部の圧力が上昇すると、フィルム製容器は、丸く、球状に近い形状になるように膨らもうとする。
この時、左側面シール部61の左ノッチ71近傍や、右側面シール部62の右ノッチ72近傍は、側面シール部の内側で収納部である左右側面の未シール部が、外側に膨らんだ形状となっている。その為、脆弱部であるノッチ近傍の側面シール部内側では、剥離することはない。
【0019】
すなわち、フィルム製容器を加熱する時に発生する融着部の剥離は、容器の中心から球状の形状に逆らうシール部の内側から、徐々に剥離を開始する。その為、一番中央に飛び出た状態で融着している蒸気抜き部5の内側から剥離し始める。
本発明のフィルム製容器では、特に、蒸気抜き部5の融着外縁部51が、他の融着部の内縁位置よりも内側に位置するように設定されているので、蒸気抜き部5の先端が、容器の中で一番先に容器外側に貫通する。
【0020】
容器周縁のシール部において、一番先に剥離した蒸気抜き剥離部50は、内部の圧力に
応じて融着外縁部51の外側にまで剥離し、蒸気抜き部5から、容器内部の水蒸気8などの沸騰した蒸気が噴出する。
この時、内容物は、蒸気抜き部5よりも底面側にだけ充填しているので、フィルム容器を自立しておくと、内容物の水蒸気のみ噴出し、液体等の噴出を抑えることができる。
もし、蒸気抜き部5の内側に内容物が来ると、液体内容物自身が噴出し、火傷を負いかねないので、容器が傾かないようにする必要がある。
【0021】
上広幅シール部611、下広幅シール部622などの広幅シール部は、収納部から離れているので、フィルム製容器を加熱しても、高温にはならず、かつ、持ちやすい。
また、高温の蒸気は上側に向って流れるので、上シール部621は熱くなるが、蒸気抜き部側の下広幅シール部622は高温にならない。
その為、電子レンジから加熱したフィルム製容器を取り出す時に、上記広幅シール部を持って容器を取り出すことができる。
この時、蒸気抜き部側には下広幅シール部611、蒸気抜き部反対側には上広幅シール部622と、左右に広幅シール部があるので、左右の広幅シール部を同時につかんで持上げれば、容器を傾けないで、底面を水平に持つことが可能である。加熱して水蒸気が発生している状態では、蒸気抜き部5が内容物の液面より下がっていると、一気に内容物が噴出する恐れがある。
【0022】
フィルム製容器内部の蒸気が完全に放出されると、内部の気圧は外気圧と同じになり、フィルム製容器はしぼむ。そして、底面に平行な左ノッチ71と右ノッチ72との間を、いずれか一方のノッチを基点にして前面フィルムとを背面フィルムを引き裂き、開封することができる。脆弱線73が加工されているようであれば、引き裂かれる破断線がずれないで、脆弱線に沿って破断しやすい。
【0023】
図3は、以上のように左ノッチ71から右ノッチ72にかけて開封部70を引き裂いたフィルム製容器の斜視図である。
開封部70を引き裂かれた本発明のフィルム製容器は、開封部70の内側に蒸気抜き部がないので、大きく開口し、さえぎる形状がない。さらに、開封部70近傍は、未シール部である収納部が外側に膨らんだ形状となっているので、お椀のように先端が一番広がる形状になっている。その為、非常に内容物を取り出しやすい形状となっている。
特に、左下融着部610と右下融着部620によって、底面周縁部の腰を強く、かつ、安定した自立性を確保しやすくなっている。
さらに、開封後も、蒸気抜き部があった側面には下広幅シール部622があるので、下広幅シール部622をつかんでいれば、持つ手も熱くならず、内容物を取り出しやすい。
【0024】
本発明のフィルム製容器に用いる前面フィルムや背面フィルムは、少なくとも一定の腰がある基材フィルムと、融着性の高いシーラントフィルムがあり、ノッチから引き裂くことが可能なフィルムを使用する。
また、レトルト適性があって、電子レンジ加熱で溶けたりしないで、形状を保つことができる必要がある。特に、電子レンジの中で、高温になっても自立した状態を保つことができる剛性が必要である。
【0025】
例えば、外側から延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、バリアフィルム、シーラント層の構成例である。
バリアフィルムには、酸化珪素や酸化アルミニウムなどの酸化金属を金属蒸着した延伸ポリアミドフィルムが考えられ、アルミニウムなどの純金属を蒸着したものや金属箔などは、電子レンジで高温に発熱してしまうので使用しない。
ポリアミドフィルムを使用するのは、破断しにくいと共に、耐衝撃性も高く、かつ、柔軟性が高い為に使用する。
シーラントには、融着強度や耐熱性が高い直鎖状低密度ポリエチレンが良好である。
これらのフィルムは、通常のドライラミネーション機、エクストルーダーラミネート機などで貼り合わせるなどして製造することができる。
【0026】
また、開封部の左右のノッチの間は、イットリウム・アルミニウム・ガーネットを用いた固体レーザーであるYAGレーザーなどのレーザー光を使用して、レーザー照射加工を行なって、脆弱化して、より直線状に引き裂き易くしても良い。
また、フィルム製容器の左右方向に基材の延伸をより強くしたフィルムを使用しても良い。
【0027】
底面フィルムに使用するフィルムは、前面フィルムや背面フィルムの構成であってもかまわない。しかし、エンボスやハーフカットをする必要が無いので、
2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、
2軸延伸ポリアミド/ポリエチレン/無機酸化物蒸着ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、
2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/エチレン酢酸ビニル共重合体鹸化物/ポリエチレン、
2軸延伸ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/接着樹脂/ポリアミド/接着樹脂/ポリエチレン、
2軸延伸ポリプロピレン/ポリアミド/接着樹脂//ポリエチレン、
などの一般的な構成が考えられる。
これらのフィルムも、通常のドライラミネーション機、エクストルーダーラミネート機などで貼り合わせるなどして製造することができる。
【0028】
本発明のフィルム製容器は、以上のようなもので、蒸気抜き部から噴出する水蒸気が掛からない蒸気抜き部底面側の下広幅シール部と、他方の上方側の上広幅シール部との左右の広幅シール部を有するので、傾けないように安全に加熱した電子レンジ等からフィルム製容器を取り出すことができる。
また、底面側に底面とほぼ平行な開封部を有するので、大きく開口でき、わざわざ、他の容器に移すことも無く、そのまま、熱い内に加熱調理した内容物を食べることができ、非常に扱いしやすいフィルム製容器である。
さらに、従来の製造ラインを使用して製造できるので、設備費を特に掛けることなく製造可能であり、本発明のメリットは大きい。