(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動電圧をパルス状に出力する駆動部、前記駆動電圧がパルス状に印加されることによって繰り返し変形する圧電素子、および供給する流体を貯留する貯留部を有し、前記貯留部の容積が前記圧電素子の変形に伴って減少することによって前記流体を前記貯留部から吐出する流体供給装置における流体の吐出動作の異常を検出する吐出異常検出装置であって、
前記圧電素子の端子電圧を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された端子電圧の、1回の駆動電圧印加時における経時的な変化の有無に基づいて前記吐出動作の異常を判断する判断部と、を備え、
前記測定部は、前記1回の駆動電圧印加時の少なくとも2つの測定時の端子電圧を測定し、
前記判断部は、前記1回の駆動電圧印加時の第1の測定時における測定値である第1端子電圧と、前記第1の測定時より後の第2の測定時における測定値である第2端子電圧とを比較し、前記第2端子電圧が前記第1端子電圧より大きいか否かを判断することで前記吐出動作の異常を判断する、吐出異常検出装置。
前記判断部は、1回の駆動電圧印加時における単位時間あたりの端子電圧の変化率を予め記憶しておき、前記第1端子電圧から前記第2端子電圧への増加量が、前記第1の測定時から前記第2の測定時までの時間と前記変化率とから得られる増加量と一致するか否かを判断することで前記吐出動作の異常を判断する、請求項1に記載の吐出異常検出装置。
前記判断部は、前記1回の駆動電圧印加時の第1の測定時における測定値である第1端子電圧と、前記第1の測定時より後の第2の測定時における測定値である第2端子電圧とを比較し、前記第2端子電圧が前記第1端子電圧より大きいか否かを判断することで前記吐出動作の異常を判断する、請求項1に記載の吐出異常検出装置。
駆動電圧をパルス状に出力する駆動部、前記駆動電圧がパルス状に印加されることによって繰り返し変形する圧電素子、および供給する流体を貯留する貯留部を有し、前記貯留部の容積が前記圧電素子の変形に伴って減少することによって前記流体を前記貯留部から吐出する流体供給装置における流体の吐出動作の異常を検出する方法であって、
1回の前記駆動電圧の印加時に前記圧電素子の電圧を測定するステップと、
測定された端子電圧の経時的な変化の有無に基づいて前記吐出動作の異常を判断するステップと、を備え、
前記圧電素子の電圧を測定するステップでは、前記1回の駆動電圧印加時の少なくとも2つの測定時の端子電圧を測定し、
前記吐出動作の以上を判断するステップでは、前記1回の駆動電圧印加時の第1の測定時における測定値である第1端子電圧と、前記第1の測定時より後の第2の測定時における測定値である第2端子電圧とを比較し、前記第2端子電圧が前記第1端子電圧より大きいか否かを判断することで前記吐出動作の異常を判断する、吐出異常検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体供給装置に搭載されたポンプに異常が生じると、ポンプから流体が吐出されなくなるおそれがある。特に、流体供給装置が転がり軸受に一体型に搭載されている給油ユニットである場合には、転がり軸受は振動などによってポンプに異常が生じ、転がり軸受の潤滑不良を引き起こす場合もある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、流体供給装置における流体の吐出動作の異常を高精度に検出することができる吐出異常検出装置およびその検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる吐出異常検出装置は、駆動電圧をパルス状に出力する駆動部、駆動電圧がパルス状に印加されることによって繰り返し変形する圧電素子、および供給する流体を貯留する貯留部を有し、貯留部の容積が圧電素子の変形に伴って減少することによって流体を貯留部から吐出する流体供給装置における流体の吐出動作の異常を検出する吐出異常検出装置であって、圧電素子の端子電圧を測定する測定部と、測定部によって測定された端子電圧の、1回の駆動電圧印加時における経時的な変化の有無に基づいて吐出動作の異常を判断する判断部と、を備え
、前記測定部は、前記1回の駆動電圧印加時の少なくとも2つの測定時の端子電圧を測定し、前記判断部は、前記1回の駆動電圧印加時の第1の測定時における測定値である第1端子電圧と、前記第1の測定時より後の第2の測定時における測定値である第2端子電圧とを比較し、前記第2端子電圧が前記第1端子電圧より大きいか否かを判断することで前記吐出動作の異常を判断する。
この構成によって、圧電体の端子電圧に基づいて流体供給装置における吐出動作が正常であるか否かが判断される。すなわち、吐出動作が正常である場合には端子電圧はのこぎり波を示し、吐出動作が異常である場合は矩形波を示すことが知られている。したがって、1回の駆動電圧印加時において端子電圧が経時的に変化するか否かを判断することによって、吐出動作が異常であるか否かを判断することができる。
また、この構成によって、1回の駆動電圧印加時に端子電圧が経時的な変化を有するか否かが簡易に判断され、それによって流体供給装置における吐出動作の正常/異常が簡易に判断される。
【0010】
好ましくは、判断部は、1回の駆動電圧印加時における単位時間あたりの端子電圧の変化率を予め記憶しておき、第1端子電圧から第2端子電圧への増加量が、第1の測定時から第2の測定時までの時間と変化率とから得られる増加量と一致するか否かを判断することで吐出動作の異常を判断する。
この構成によって、第1の測定時から第2の測定時までの時間および単位時間あたりの端子電圧の変化率に応じた増加量で1回の駆動電圧印加時に端子電圧が経時的に変化しているか否かが簡易に、かつ精度よく判断され、それによって流体供給装置における吐出動作の正常/異常が簡易に、かつ精度よく判断される。
より具体的に、前記判断部は、前記第1端子電圧に対する第1閾値と、前記第2端子電圧に対する、前記第1閾値よりも大きい第2閾値とを予め記憶しておき、前記第1端子電圧が前記第1閾値よりも大きく、かつ前記第2端子電圧が前記第2閾値よりも大きい場合に、前記吐出動作が正常であると判断し、それ以外の場合には前記吐出動作に異常があると判断するものであってもよい。
【0011】
好ましくは、判断部は、測定時ごとの電圧値の閾値を予め記憶しておき、少なくとも2つの端子電圧のそれぞれを、対応する閾値と比較することによって吐出動作の異常を判断する。
この構成によって、1回の駆動電圧印加時に端子電圧が経時的な変化を有するか否かが簡易に、かつ精度よく判断され、それによって流体供給装置における吐出動作の正常/異常が簡易に、かつ精度よく判断される。
【0012】
好ましくは、測定部は、さらに、駆動電圧の印加を停止した直後の圧電素子の端子電圧を測定し、判断部は、さらに、駆動電圧の印加を停止した直後に測定部によって測定された端子電圧が、駆動電圧と一致するか否かに基づいて吐出動作の異常を判断する。
この構成によって流体供給装置における吐出動作の正常/異常がより高精度に判断される。
【0013】
好ましくは、判断部は、1回の駆動電圧印加時に測定部によって測定された端子電圧が駆動電圧と一致する場合に、吐出動作が異常と判断する。
この構成によって、さらに、吐出動作の異常の原因を特定することができる。
【0014】
本発明にかかる吐出異常検出方法は、駆動電圧をパルス状に出力する駆動部、駆動電圧がパルス状に印加されることによって繰り返し変形する圧電素子、および供給する流体を貯留する貯留部を有し、貯留部の容積が圧電素子の変形に伴って減少することによって流体を貯留部から吐出する流体供給装置における流体の吐出動作の異常を検出する方法であって、1回の駆動電圧の印加時に圧電素子の電圧を測定するステップと、測定された端子電圧の経時的な変化の有無に基づいて吐出動作の異常を判断するステップと、を備え
、前記圧電素子の電圧を測定するステップでは、前記1回の駆動電圧印加時の少なくとも2つの測定時の端子電圧を測定し、前記吐出動作の以上を判断するステップでは、前記1回の駆動電圧印加時の第1の測定時における測定値である第1端子電圧と、前記第1の測定時より後の第2の測定時における測定値である第2端子電圧とを比較し、前記第2端子電圧が前記第1端子電圧より大きいか否かを判断することで前記吐出動作の異常を判断する。
この構成によって、圧電体の端子電圧に基づいて流体供給装置における吐出動作が正常であるか否かが判断される。すなわち、吐出動作が正常である場合には端子電圧はのこぎり波を示し、吐出動作が異常である場合は矩形波を示すことが知られている。したがって、1回の駆動電圧印加時において端子電圧が経時的に変化するか否かを判断することによって、吐出動作が異常であるか否かを判断することができる。
また、この構成によって、1回の駆動電圧印加時に端子電圧が経時的な変化を有するか否かが簡易に判断され、それによって流体供給装置における吐出動作の正常/異常が簡易に判断される。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、流体供給装置に搭載されているポンプの異常を高精度に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しつつ、好ましい実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0018】
<全体構成>
図1は、本実施の形態にかかる吐出異常検出装置を搭載した軸受装置100を、軸の中心線を含む平面に沿って切断した断面図である。
図2は、軸受装置100の
図1のA−A位置における断面図である。
図1および
図2を参照して、軸受装置100は、電源部10と、軸受本体20と、流体供給装置の一例である給油ユニット40と、駆動部70と、制御部80とを備えている。軸受装置100は、たとえば工作機械の主軸(軸7)を回転可能に支持するために、軸受ハウジング8内に収容された状態にある。
【0019】
軸受本体20は、内輪21、外輪22、複数の転動体(玉)23、および環状の保持器24を有している。保持器24は複数の転動体23を保持する。内輪21は、軸7に外嵌する円筒状の部材である。内輪21の外周に、軌道溝(以下、内輪軌道溝25という。)が形成されている。外輪22は、軸受ハウジング8の内周面に固定される円筒状の部材である。外輪22の内周に軌道溝(以下、外輪軌道溝26という。)が形成されている。内輪21と外輪22とは同心状に配置されている。同心状に配置された内輪21と外輪22との間には環状空間28が形成されている。本実施の形態では、外輪22に対して内輪21が軸7と共に回転する。
複数の転動体23は、内輪21と外輪22との間の環状空間28に介在しており、内輪軌道溝25および外輪軌道溝26を転動する。
【0020】
保持器24は、環状空間28に設けられている。保持器24は、環状の部材からなり、複数の転動体23それぞれを保持する複数のポケット27が周方向に沿って一定間隔ごとに形成されている。保持器24は、各転動体23の軸方向両側に設けられている一対の環状部31,32と、これら環状部31,32を連結している複数の柱部33とを有している。複数の柱部33は、周方向に間隔をあけて設けられている。これら環状部31,32と周方向で隣り合う2つの柱部33とによって囲まれる領域がポケット27となる。各ポケット27に一つの転動体23が収容され、これにより、保持器24は、複数の転動体23を周方向に並べて保持することができる。
【0021】
軸受本体20の環状空間28の軸方向一方側の隣に流体供給装置としての給油ユニット40が設けられている。給油ユニット40は、環状空間28に対して、流体の一例である潤滑油(オイル)を供給可能である。給油ユニット40は、ケース41と、当該ケース41から軸方向に延びて設けられているノズル42とを有している。
【0022】
給油ユニット40に含まれるケース41内部の空間には、さらに、潤滑油を貯留するためのタンク62およびポンプ61が設けられている。ポンプ61は、潤滑油を内部に貯留可能であって、貯留された潤滑油が供給される圧力室63と、圧力室63に面して配置されたダイヤフラム(振動板)64(
図3)と、ダイヤフラム64に接して圧力室63の裏面側に配置された、電圧の印加によって変形する圧電体65とを有する。圧電体65の変形に伴って、当該圧電体65に接して配置されたダイヤフラム64が変形する。ダイヤフラム64の変形に伴って、ポンプ61の圧力室63の容積が減少する。つまり、ダイヤフラム64は、圧電体65の変形を圧力室63に伝える。
【0023】
圧力室63の容積が減少することによって、圧力室63内の微量の潤滑油がノズル42を経て環状空間28へ吐出される。圧力室63から吐出されて環状空間28に供給される潤滑油の量は、たとえばピコリットル単位の流量よりも少ない超微小な流量である。圧力室63の容積が増加することによって、ポンプ61はタンク62から潤滑油を吸引し、圧力室63に潤滑油が補充される。
【0024】
図2を参照して、ケース41内部の空間には、電源部10と、駆動部70と制御部80とが設けられている。
駆動部70は、給油ユニット40に搭載されたポンプ61を駆動する。制御部80は駆動部70に接続されて、駆動部70によるポンプ61の駆動を制御する。したがって、給油ユニット40は制御部80の制御にしたがって給油動作を行う。電源部10は図示しないバッテリを含み、制御部80に電力を供給する。
【0025】
<ポンプの構成>
図3は、ポンプ61の構成を説明するための概略図である。ポンプ61はダイヤフラム式ポンプである。詳しくは、ポンプ61に含まれる圧力室63には、タンク62に向けて貫通する吸入口63aと、ノズル42に連通する吐出口63bとが設けられる。ポンプ61は、圧力室63に面して配置されたダイヤフラム64と、ダイヤフラム64に接して圧力室63の裏面側に配置された圧電体65と、圧電体65に電圧を供給する一対の電極66とを含む。圧電体65と電極66とで圧電素子69が構成される。
【0026】
駆動部70は電力線67によって圧電素子69の端子68に接続されており、この電力線67を介して端子68に対して一定の駆動電圧をパルス状に出力する。端子68は電極66に接続されている。圧電体65は、たとえばピエゾ素子であり、電極66に駆動電圧が印加されることによって、圧電体65は変形する。
【0027】
駆動部70から電極66に駆動電圧が印加されると、圧電体65は、変形(伸長)して、ダイヤフラム64を圧力室63に向かう方向に押圧する。ダイヤフラム64による押圧によって圧力室63の容積が減少し、圧力室63内の微量の潤滑油がノズル42を経て環状空間28へ吐出される。この動作を吐出動作とも称する。
【0028】
駆動部70が電極66へ駆動電圧を印加している状態から駆動電圧の印加を中止し、低下させると、伸長していた圧電体65は、収縮して元の位置に戻り、ダイヤフラム64に対する押圧を解消する。ダイヤフラム64による押圧が解消することにより、圧力室63の容積が元の体積に戻り、タンク62から潤滑油が流入する。つまり、ポンプ61がタンク62から潤滑油を吸引する。この動作を吸入動作とも称する。
【0029】
駆動部70は圧電素子69に一定の駆動電圧をパルス状に印加するので、ポンプ61では、吐出動作と吸入動作とが交互に繰り返して行われる。これにより、給油ユニット40から軸受本体20に潤滑油を供給する動作(給油動作)が繰り返される。
【0030】
<検出装置の構成>
制御部80は、さらに、給油ユニット40における吐出動作の異常を検出する吐出異常検出装置として機能する。
図4は、当該吐出異常検出装置の構成を表したブロック図である。
図4を参照して、吐出異常検出装置は、制御部80に加えて、駆動部70と電極66とを接続する電力線67に接続され、一対の電極66間の電圧(端子電圧)を測定する測定部13をさらに含む。測定部13は図示しないコンバータなどを含んで測定された電圧(端子電圧)を制御部80に適した電圧に降圧して、制御部80に入力する。制御部80はマイコン等を含み、測定された端子電圧の、駆動電圧印加時の経時的な変化の有無に基づいて吐出動作の異常を判断する判断部として機能する。
【0031】
<異常検出原理>
図5および
図6を用いて、検出装置での給油ユニット40の異常を検出する原理について説明する。
図5は、圧電素子69の故障等により圧電素子69を駆動できないときの、1回の駆動電圧印加時Tの端子電圧の波形、つまり、駆動部70の出力波形の概略を表した図である。
図6は、圧電素子69が正常であるときの、1回の駆動電圧印加時Tの端子電圧の波形の概略を表した図である。
図5および
図6を参照して、駆動部70は一定周期ごとに電圧を出力して、パルス状に圧電体65に電圧Eを印加する。
図6に示すように、圧電体65の端子電圧は、初期電圧E0が1回の駆動電圧印加時Tに経時的に増加し、駆動電圧印加時Tの直後に初期電圧E0まで戻る。
【0032】
1回の駆動電圧印加時の端子電圧が
図6に示された経時的な変化を有する場合、判断部として機能する制御部80は、吐出動作が正常に行われていると判断する。つまり、この場合、電極66に対する圧電体65の接触や、圧電素子69の機構が正常であると言える。このことより、
図6の波形は、吐出動作が正常であることを判断するための基準波形であると言える。
【0033】
1回の駆動電圧印加時の端子電圧が
図6に示された経時的な変化を有しない場合、制御部80は、吐出動作が正常ではない(異常である)と判断する。この場合、さらに、制御部80は、1回の駆動電圧印加時の端子電圧の波形に基づいて、異常を次の2つに分類する。
【0034】
1回の駆動電圧印加時の端子電圧が
図6に示された経時的な変化を有しない場合であり、かつ、
図5に示されたように経時的な変化を有する場合、制御部80は、吐出動作の異常を、ポンプ61内の回路異常や接続部の異常によるものと判断する。ポンプ61内の回路異常や接続部の異常は、たとえば、電極66と圧電体65との接触不良、電極66と端子68との接続不良、端子68と駆動部70との接続不良、および圧電素子69の機械的故障、などを原因とする異常である。
【0035】
1回の駆動電圧印加時の端子電圧が
図6に示された基準波形でも
図5の波形でもない場合、制御部80は、吐出動作の異常をポンプ61内の回路異常以外の異常によるものと判断する。ポンプ61内の回路異常以外の異常は、たとえば、電極66に電圧を印加する回路の不良、図示しないバッテリの充電不足、電極66自体の異常、などを原因とする異常、つまり制御部の異常である。このように、1回の駆動電圧印加時の端子電圧が
図6に示された基準波形でなく、吐出動作が異常であると判断したときに、さらに、
図5の波形であるか否かを判断することによって、異常の原因を推測することができるようになる。
【0036】
制御部80は、1回の駆動電圧印加時の少なくとも2つの測定時にそれぞれ測定された少なくとも2つの端子電圧に基づいて、1回の駆動電圧印加時に端子電圧が経時的に増加しているか否かを判断する。一例として、制御部80には、1回の駆動電圧印加時Tを概ね三等分した測定時t1,t2が予め設定されている(t1<t2)。好ましくは、さらに、駆動電圧印加時T直後の測定時t3も設定されている(t2<t3)。そして、制御部80は、測定部13によって測定時t1,t2それぞれで測定された端子電圧E1,E2が測定時t1から測定時t2の間に経時的に変化(増加)しているか否かを判断する。
【0037】
図7および
図8は、吐出異常検出装置において吐出動作の異常を検出する方法の一例を説明するための図である。一例として、制御部80は、測定時t1,t2それぞれに対応した電圧値の閾値TA,TBを予め記憶しておく。閾値TAは、初期電圧E0よりも大きく、かつ、
図6に示された基準波形における測定時t1での端子電圧よりも小さい値である。閾値TBは、閾値TAよりも大きく、かつ、
図6の基準波形における測定時t2での端子電圧よりも小さい値である。そして、制御部80は、端子電圧E1,E2を閾値TA,TBと比較することで、端子電圧E1,E2が測定時t1から測定時t2までに経時的に増加しているか否かを判断する。
【0038】
図7は、端子電圧が
図6に示された経時的な変化を有する場合の、端子電圧と閾値TA,TBとの関係を表している。
図7を参照して、この場合、端子電圧E1は閾値TAよりも大きく閾値TBよりも小さい。また、端子電圧E2は閾値TBよりも大きい。さらに、端子電圧E3は初期電圧であって、閾値TAよりも小さい。以上の関係より、端子電圧が
図6に示された経時的な変化を有する場合、端子電圧E1〜E3は下の式(1),(2)を満たす。式(1)、(2)を第1の条件と称する。
E3≦TA≦E1 …(1)
TB≦E2 …(2)
【0039】
図8は、端子電圧が経時的な変化を有さず、
図5に示されたような矩形波形である場合の、端子電圧と閾値TA,TBとの関係を表している。
図8を参照して、端子電圧E1および端子電圧E2が概ね等しく、ともに閾値TBよりも大きい。また、端子電圧E3は閾値TAよりも小さい。以上の関係より、端子電圧が
図5に示されたような矩形波形である場合、端子電圧E1〜E3は下の式(3)〜(6)を満たす。式(3)〜(6)を第2の条件と称する。
TB≦E1 …(3)
TB≦E2 …(4)
E3≦TA …(5)
E1≒E2 …(6)
【0040】
なお、上記第1の条件および第2の条件は、吐出動作の異常を検出するために用いる条件の一例である。すなわち、1回の駆動電圧印加時の端子電圧が経時的な変化を有するか否かを判断する方法の一例である。上記のように、制御部80が予め閾値を記憶しておいて該閾値を用いることで、1回の駆動電圧印加時の端子電圧が経時的な変化を有するか否かの判断を容易な処理で実現することができる。なお、制御部80は、上記した方法において、駆動電圧印加時直後の端子電圧E3を用いた判断を行わなくてもよい。これにより、より容易な処理にて判断を行うことができる。
【0041】
<動作フロー>
図9は、吐出異常検出装置での検出動作の流れの一例を表したフローチャートである。
図9を参照して、制御部80は、測定部13から測定された端子電圧を示す電圧信号の入力を受け付ける(ステップS101)。制御部80は、電圧信号から端子電圧E1,E2,E3を読み出し、予め記憶している閾値T1,TBと比較する。その結果、端子電圧E1〜E3が上の式(1),(2)を満たす、つまり上記第1の条件を満たす場合(ステップS103でYES)、制御部80は吐出動作が正常と判断する(ステップS105)。
【0042】
端子電圧E1〜E3が上の式(1),(2)を満たさず、かつ、上の式(3)〜(6)を満たす、つまり上記第2の条件を満たす場合(ステップS103でNO、かつステップS107でYES)、制御部80はポンプ61内の回路や接続部が異常であると判断する(ステップS109)。
【0043】
端子電圧E1〜E3が上の式(1)〜(6)を満たさない場合、つまり上記第1の条件も第2の条件も満たさない場合(ステップS103でNO、かつステップS107でNO)、制御部80は、上記の制御部の異常(駆動部70の回路異常など)と判断する(ステップS111)。
【0044】
好ましくは、吐出異常検出装置は情報を出力するための発信部を含む。発信部は、無線通信であってもよいし、LED(Light Emitting Diode)やブザーなどであってもよい。これら発信部が吐出異常検出装置に含まれる場合、制御部80は発信部とも接続されて、発信部での発信を制御する。上記ステップS109またはステップS111で吐出動作の異常が検出された場合、好ましくは、制御部80は、発信部に発信させることでエラー通知する(ステップS113)。エラー通知は、ステップS109の判断結果とステップS111の判断結果とを区別した通知であってもよい。
【0045】
<実施の形態の効果>
たとえば給油ユニット40である流体供給装置での吐出動作の異常を検出するための吐出異常検出装置が、端子電圧の、1回の駆動電圧印加時における経時的な変化の有無に基づいて吐出動作の異常を判断することによって、センサ等の特別な装置を不要として、簡易に高精度で吐出動作の異常を検出することができる。これによって、流体の供給異常に迅速に対処することができる。
【0046】
吐出異常検出装置が1回の駆動電圧印加時の少なくとも2つの測定時t1、t2の端子電圧を測定し、少なくとも2つの端子電圧E1,E2に基づいて1回の駆動電圧印加時に端子電圧が経時的な変化を有するか否かを判断することによって、吐出動作の正常/異常を容易に判断することができる。
【0047】
吐出異常検出装置が測定時ごとの電圧値の閾値TA,TBを予め記憶しておき、少なくとも2つの端子電圧E1,E2のそれぞれを、対応する閾値と比較することによって、1回の駆動電圧印加時に端子電圧が経時的な変化を有するか否かを簡易に、かつ精度よく判断することができる。それによって吐出動作の正常/異常を簡易に、かつ精度よく判断することができる。
【0048】
なお、上記第1の条件および第2の条件は、吐出動作の異常を検出するために用いる条件の一例である。すなわち、1回の駆動電圧印加時の端子電圧が経時的な変化を有するか否かを判断する方法の一例である。上記のように、制御部80が予め閾値を記憶しておいて該閾値を用いることで、1回の駆動電圧印加時の端子電圧が経時的な変化を有するか否かの判断を容易な処理で実現することができる。なお、制御部80は、上記した方法において、駆動電圧印加時直後の端子電圧E3を用いた判断を行わなくてもよい。これにより、より容易な処理にて判断を行うことができる。
【0049】
[変形例1]
1回の駆動電圧印加時の端子電圧が経時的な変化を有するか否かを判断する他の方法として、制御部80は、端子電圧E1,E2を比較し、これらがE1≦E2を満たすか否かを判断してもよい。このようにすることで、1回の駆動電圧印加時の端子電圧が経時的な変化を有するか否かの判断を容易な処理で実現することができる。これによって、吐出動作の正常/異常を簡易に判断することができる。
【0050】
[変形例2]
1回の駆動電圧印加時の端子電圧が経時的な変化を有するか否かを判断する他の方法として、制御部80は、単位時間当たりの端子電圧の変化率αを予め記憶しておく。変化率αは、
図6の基準波形に示された端子電圧の変化率(傾き)に相当する。そして、制御部80は、端子電圧E1から端子電圧E2への増加量(E2−E1)が、測定時t1から測定時t2までの時間(t2−t1)と変化率αとから得られる増加量α(t2−t1)であるか否かを判断する。このようにすることで、駆動電圧印加時の端子電圧の増加率が、
図6の基準波形である増加率に一致するか否かを簡易に、かつ精度よく判断することができる。つまり、1回の駆動電圧印加時の端子電圧が経時的な変化を有するか否かを簡易に、かつ精度よく判断することができる。これによって、吐出動作の正常/異常を簡易に、かつ精度よく判断することができる。
【0051】
なお、以上の説明では、流体供給装置の一例として、軸受装置100に搭載された給油ユニット40が挙げられているが、流体供給装置は軸受けに対して給油するための給油ユニットに限定されない。たとえば、油圧モータやギアなどに対して給油するための給油ユニットなど、流体供給装置は、ピエゾ素子などの圧電体を用いて流体を供給するどのような装置であってもよい。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。