(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の生体情報取装置では、対象者と、該対象者に装着される装着品(例えばベルト等)のきつさの度合いを示す指標を計測することができなかった。本願発明者は、このような装着品のきつさの度合いを示す指標を生体情報取得装置で計測できれば、呼吸や心拍等の生体情報だけでなく、例えば対象者の肥満度等を客観的且つ簡便に評価できるという着想に至った。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、対象者に対する装着品のきつさの度合いを示す指標を簡便に計測できる生体情報取得装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、生体情報取得装置を対象とし、対象者(1)と、該対象者(1)に装着される装着品(6,7)との間に配置される中空状の感圧チューブ(20)と、該感圧チューブ(20)の内圧を検出する圧力センサ(31)と、該圧力センサ(31)の検出信号から上記対象者(1)の生体信号を抽出する生体信号抽出部(40)と、該生体信号の振幅に基づいて上記対象者(1)に対する上記装着品(6,7)のきつさの度合いを示す指標を求める導出部(60)とを備え
、上記生体信号抽出部(40)は、上記圧力センサ(31)の検出信号から上記対象者(1)の呼吸信号を抽出し、上記導出部(60)は、上記呼吸信号の振幅に基づいて上記きつさの度合いを示す指標を求めることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、対象者(1)と、該対象者(1)に装着される装着品(6,7)との間に感圧チューブ(20)が配置される。感圧チューブ(20)は、細長い形状であるため、対象者(1)と装着品(6,7)との間に感圧チューブ(20)を配置しても、対象者(1)が大きな異物感を覚えることはない。
【0009】
対象者(1)の体動(例えば対象者(1)の大きな体の動きに由来する粗体動や、呼吸や心拍に由来する微体動)が感圧チューブ(20)に伝達すると、感圧チューブ(20)の内圧が変化する。圧力センサ(31)は、この内圧を検出し、この内圧に応じた検出信号(圧力信号)を出力する。生体信号抽出部(40)は、この検出信号に基づいて対象者(1)の生体信号を抽出する。この生体信号により、例えば対象者(1)の呼吸や心拍等の生体情報を取得できる。
【0010】
加えて、本発明の生体情報取得装置は、生体信号の振幅に基づいて、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いを示す指標を求める。この点について具体例を挙げながら説明する。
【0011】
例えば対象者(1)に対して装着品であるベルト(6)が比較的きつい状態であるとする。この場合、対象者(1)とベルト(6)との間に挟まれる感圧チューブ(20)には、対象者(1)の腹部(厳密には、腹部に対応する着衣部分)が感圧チューブ(20)に密に接触する。この結果、対象者(1)の体動は感圧チューブ(20)に伝わり易くなるため、抽出された生体信号のレベルが大きくなり、ひいては生体信号の振幅も大きくなる。
【0012】
逆に対象者(1)に対してベルト(6)が比較的ゆるい状態であるとする。この場合、感圧チューブ(20)には、対象者(1)の腹部がさほど密に接触しない。この結果、対象者(1)の体動は感圧チューブ(20)に伝わりにくくなるため、抽出された生体信号のレベルが小さくなり、ひいては生体信号の振幅も小さくなる。
【0013】
このように、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いと、生体信号の振幅とには相関がある。そこで、本発明の導出部(60)は、生体信号の振幅に基づいて、装着品(6,7)のきつさの度合いを求める。
【0014】
第
1の発明では、生体信号抽出部(40)で抽出された呼吸信号の振幅に基づいて、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いを示す指標が求められる。特に対象者(1)の胴体部分からの生体信号には、呼吸信号の成分が重畳し易い。このため、呼吸信号の振幅を用いることで、例えば対象者(1)の腹部や胸部における装着品(6,7)のきつさの度合いを精度よく求めることができる。
【0015】
第
2の発明は、
対象者(1)と、該対象者(1)に装着される装着品(6,7)との間に配置される中空状の感圧チューブ(20)と、上記感圧チューブ(20)の内圧を検出する圧力センサ(31)と、上記圧力センサ(31)の検出信号から上記対象者(1)の生体信号を抽出する生体信号抽出部(40)と、上記生体信号の振幅に基づいて上記対象者(1)に対する上記装着品(6,7)のきつさの度合いを示す指標を求める導出部(60)とを備え、上記感圧チューブ(20)は、上記装着品であるベルト(6)、ズボン、スカート、及びシートベルト(7)のいずれかと、上記対象者(1)の間に配置される。
【0016】
第
2の発明では、対象者(1)に対する、ベルト(6)、ズボン、スカート、又はシートベルト(7)のきつさの度合いを示す指標が求められる。
【0017】
第
3の発明は、第
2の発明において、上記生体信号抽出部(40)は、上記圧力センサ(31)の検出信号から上記対象者(1)の呼吸信号を抽出し、上記導出部(60)は、上記呼吸信号の振幅に基づいて上記きつさの度合いを示す指標を求める。
【0018】
第
3の発明では、生体信号抽出部(40)で抽出された呼吸信号の振幅に基づいて、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いを示す指標が求められる。特に対象者(1)の胴体部分からの生体信号には、呼吸信号の成分が重畳し易い。このため、呼吸信号の振幅を用いることで、例えば対象者(1)の腹部や胸部における装着品(6,7)のきつさの度合いを精度よく求めることができる。
【0019】
第
4の発明は、第1の発明
または第3の発明において、上記導出部(60)は、上記呼吸信号から求められる上記対象者(1)の呼吸の速さを示す指標に基づいて上記きつさの度合いを示す指標を補正する。
【0020】
第
4の発明では、呼吸信号から呼吸数等の呼吸の速さを示す指標が求められる。例えば呼吸数が大きくなると、呼吸信号の振幅は増大し、呼吸数が小さくなると、呼吸信号の振幅は小さくなる。つまり、呼吸の速さを示す指標と、呼吸信号の振幅とには相関があるため、呼吸の速さを示す指標に応じて、きつさの度合いを示す指標に誤差が生じてしまう。そこで、本発明の導出部(60)は、呼吸の速さを示す指標に基づいて、きつさの度合いを示す指標を補正する。
【0021】
第
5の発明は、第
2の発明において、上記生体信号抽出部(40)は、上記圧力センサ(31)の検出信号から上記対象者(1)の心拍信号を抽出し、上記導出部(60)は、上記心拍信号の振幅に基づいて上記きつさの度合いを示す指標を求める。
【0022】
第
5の発明では、生体信号抽出部(40)で抽出された心拍信号の振幅に基づいて、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いを示す指標が求められる。心拍信号は、生体信号のうち比較的安定して得られる成分である。このため、心拍信号の振幅を用いることで、対象者(1)に対する装着品(6,7)にきつさの度合いを確実に求めることができる。
【0023】
第
6の発明は、第
5の発明において、上記導出部(60)は、上記心拍信号から求められる上記対象者(1)の心拍の速さを示す指標に基づいて上記きつさの度合いを示す指標を補正する。
【0024】
第
6の発明では、心拍信号から心拍数等の心拍の速さを示す指標が求められる。例えば心拍数が大きくなると、心拍信号の振幅は増大し、心拍数が大きくなると、心拍信号の振幅の振動幅は減少する。つまり、心拍の速さを示す指標と、心拍信号の振幅とには相関があるため、心拍の速さを示す指標に応じて、きつさの度合いを示す指標に誤差が生じてしまう。そこで、本発明の導出部(60)は、心拍の速さを示す指標に基づいて、きつさの度合いを示す指標を補正する。
【0025】
第
7の発明は、第1乃至第
6のいずれか1つの発明において、上記導出部(60)は、上記対象者(1)の性別、年齢、肥満度の少なくとも1つを含む個体情報に基づいて、上記きつさの度合いを示す指標を補正する。
【0026】
第
7の発明では、対象者(1)の性別、年齢、肥満度の少なくとも1つを含む個体情報が考慮され、きつさの度合いを示す指標が求められる。具体的には、例えば対象者(1)が男性である場合、成人である場合、肥満度が大きい場合には、生体信号の振幅の振動幅は比較的大きくなり易い。また、例えば対象者(1)が女性である場合、未成人である場合、肥満度が小さい場合には、生体信号の振幅の振動幅は比較的小さくなり易い。従って、このような個体の属性に応じて、きつさの度合いを示す指標に誤差が生じてしまう。そこで、本発明の導出部(60)は、このような個体情報に基づいて、きつさの度合いを示す指標を補正する。
【0027】
第
8の発明は、第1乃至第
7のいずれか1つの発明において、上記導出部(60)は、上記きつさの度合いを示す指標に基づいて上記対象者の肥満の度合いを示す指標を求める。
【0028】
第
8の発明では、生体信号の振幅から求められたきつさの度合いに基づいて、対象者(1)の肥満の度合いを示す指標が求められる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、対象者(1)と装着品(6,7)の間に中空状の感圧チューブ(20)を設けているため、対象者(1)が異物感を覚えることなく、対象者(1)の生体情報を取得できる。感圧チューブ(20)であれば、袋体と比較すると破れたり損傷したりしにくいため、長期間に亘り装着品(6,7)に取付け可能である。
【0030】
本発明では、生体信号の振幅に基づいて、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いを示す指標を求めている。つまり、生体信号は、対象者(1)の何らかの生体情報の評価だけでなく、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いの評価にも兼用できる。従って、装置の複雑化を招くことなく、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いを評価できる。
【0031】
生体信号の振幅を用いることで、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いを高精度に検出できる。即ち、例えば対象者(1)から感圧チューブ(20)に作用する圧力(例えば腹囲圧)を感圧チューブ(20)の内圧変化から検出し、この圧力に基づいてきつさの度合いを評価することも可能である。しかし、この場合、感圧チューブ(20)に作用する圧力は、きつさの度合いに応じて大きく変化するため、計測に用いられる信号レベルのオーダは、例えば呼吸信号や心拍信号のレベルのオーダと比較して極めて大きくなってしまう。この結果、1つの圧力センサ(31)で、きつさの度合いと、呼吸や心拍等の生体情報とを精度よく同時に検出することには限界がある。これに対し、本発明では、生体信号の振幅に基づいて、きつさの度合いを求めるため、その信号レベルの変動幅も極めて小さくなる。従って、本発明では、1つの低周波型の圧力センサ(31)により、装着品(6,7)のきつさの度合いと、呼吸や心拍等の生体情報とを同時に高精度に計測できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0034】
《発明の実施形態1》
実施形態1に係る生体情報取得装置(10)は、装着品であるベルト(6)に対応している。生体情報取得装置(10)は、対象者(1)の生体情報として、対象者(1)の呼吸・心拍・粗体動等の情報や、対象者(1)のストレスの度合いを取得する。加えて、生体情報取得装置(10)は、対象者(1)に対するベルト(6)のきつさの度合いを求め、ひいては対象者(1)の肥満の度合いを判定する。
【0035】
〈全体の構成〉
図1〜
図3に示すように、生体情報取得装置(10)は、感圧チューブ(20)、ケーシング(30)、圧力センサ(31)、及び回路基板(32)を有している。圧力センサ(31)及び回路基板(32)は、ケーシング(30)の内部に収容される。
【0036】
〈感圧チューブ〉
感圧チューブ(20)は、細長い中空のチューブ状に構成される。感圧チューブ(20)は、例えば塩化ビニル等の樹脂材料で構成される。感圧チューブ(20)の内径は約4mm以下であり、感圧チューブ(20)の外径は6mm以下であることが好ましい。感圧チューブ(20)の長さは100mm以下であることが好ましい。
【0037】
感圧チューブ(20)は、対象者(1)の例えばズボン(5)に装着されるベルト(6)に取り付けられる。感圧チューブ(20)は、ベルト(6)に形成された貫通穴(6a)に挿通される。感圧チューブ(20)は、本体部(21)と延長部(22)とを有している。本体部(21)は、ベルト(6)と対象者(1)の腹部(2)との間に配置される。本体部(21)は、ベルト(6)の裏側において、例えばベルト(6)の長手方向に沿って延びている。本体部(21)は、ベルト(6)の裏側において、例えばベルト(6)の長手方向と交差する方向(例えばベルト(6)の幅方向)に延びていてもよい。延長部(22)は、ベルト(6)の表側に配設されている。延長部(22)は、ベルト(6)の長手方向に沿って延び、ケーシング(30)の内部まで配設されている。
【0038】
感圧チューブ(20)の先端(本体部(21)の先端)には、封止部材(23)が設けられる。感圧チューブ(20)の基端(延長部(22)の基端)は、ケーシング(30)の内部の圧力センサ(31)に接続される。つまり、本実施形態の感圧チューブ(20)は、空気が封止される密閉状に構成される。なお、封止部材(23)に開口を形成する、あるいは封止部材(23)を省略することで感圧チューブ(20)を内部と外部(大気)とを連通させる構成としてもよい。
【0039】
図2に示すように、感圧チューブ(20)の本体部(21)は、対象者(1)の腹部(2)とベルト(6)の間に位置する。これにより、本体部(21)には、対象者(1)の体動(体の大きな動きに由来する粗体動や、心拍・呼吸に由来する微体動)が作用する。この体動に伴い、感圧チューブ(20)の内圧が変化する。
【0040】
〈ケーシング〉
ケーシング(30)は、中空の箱状に構成される。ケーシング(30)は、該ケーシング(30)の本体をベルトに保持するための保持具を有している。なお、ケーシング(30)は、例えばベルト(6)のバックルに一体化される構成であってもよいし、該バックルと別部材であり且つバックルに固定される構成であってもよい。
【0041】
〈圧力センサ〉
圧力センサ(31)は、ケーシング(30)の内部に収容され、感圧チューブ(20)に接続される。圧力センサ(31)は、感圧チューブ(20)の内圧が作用する受圧部を構成している。感圧チューブ(20)の内圧が変化すると、圧力センサ(31)は、この内圧変化に応じた検出信号(圧力信号)を出力する。
【0042】
〈回路基板〉
回路基板(32)は、ケーシング(30)の内部に収容される。ケーシング(30)の内部には、回路基板(32)に電力を供給する電源部(図示省略)が収容される。電源部は、使い捨て式、あるいは充電式のバッテリーで構成される。また、電源部は、太陽光、振動、熱等によって発電を行うものであってもよい。
【0043】
図3に示すように、回路基板(32)には、生体信号抽出部(40)、記憶部(50)、導出部(60)、及び通信部(70)を構成するための電子部品が実装される。また、回路基板(32)には、圧力センサ(31)が接続される。
【0044】
生体信号抽出部(40)は、CPU及びメモリからなるマイクロコンピュータで構成されている。生体信号抽出部(40)は、圧力センサ(31)から出力された信号に基づいて、対象者(1)の生体信号を抽出する。具体的に、生体信号抽出部(40)は、対象者(1)の心拍に由来する心拍信号を抽出する心拍信号抽出部(41)と、対象者(1)の呼吸に由来する呼吸信号を抽出する呼吸信号抽出部(42)とを含んでいる。
【0045】
記憶部(50)は、フラッシュメモリ等の半導体メモリで構成されている。記憶部(50)は、生体信号抽出部(40)で検出した生体情報を時系列データとして漸次記憶していく。記憶部(50)は、生体情報に対応する検出時刻を記憶してもよいし、導出部(60)で計測した他の指標(詳細は後述する)を記憶してもよい。
【0046】
記憶部(50)に記憶された情報は、外部機器(スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等の各種端末)からの要求に応じて、該外部機器に送信されてもよい。また、記憶部(50)に記憶された情報は、対象者(1)の操作等により、適宜消去される
ものであってもよい。
【0047】
〈通信部〉
通信部(70)は、生体情報取得装置(10)の通信インターフェースである。通信部(70)は、生体情報取得装置(10)を通信ネットワークに有線又は無線によって接続する。これにより、生体情報取得装置(10)は、通信ネットワークを介して外部機器と通信可能になる。生体情報取得装置(10)で取得された生体情報や他の指標は、通信部(70)を介して外部機器へ送信される。
【0048】
〈導出部〉
導出部(60)は、CPU及びメモリからなるマイクロコンピュータで構成されている。導出部(60)は、対象者(1)のストレス度と、対象者(1)に対するベルト(6)のきつさの度合いを示す指標と、対象者(1)の肥満の度合いを示す指標とを求める。導出部(60)は、ストレス度判定部(61)、きつさ判定部(62)、及び肥満判定部(63)を有している。
【0049】
ストレス度判定部(61)は、心拍信号に基づいて対象者(1)のストレス度を算出する。本実施形態のストレス度判定部(61)は、ストレス指標としてLF/HF値を算出する。具体的には、ストレス度判定部(61)は、フィルタ処理された後の信号から、心拍成分のうち振幅の大きなR波を導出し、所定の区間毎に心拍の間隔(拍動間隔)を求める。ストレス度判定部(61)は、この拍動間隔の変化(拍動間隔のゆらぎ)の周波数分析を行うために、拍動間隔データを直線補間して等時間間隔データに変換する。その後、この等時間間隔の拍動間隔データについて高速フーリエ変換(FFT、Fast Fourier Transform)を行って、拍動間隔のゆらぎの低周波数成分LF(例えば0.04〜0.15Hz)と高周波成分HF(例えば0.15Hz以上)との比を得る。この比(L
F/HF値)は、ストレス度や自律神経活動を示す指標であり、LF/HFが高いほどストレス度が高いことを意味する。記憶部(50)には、ストレス度判定部(61)で算出されたLF/HF値や、この値に対応したストレス度が時系列データとして記憶される。
【0050】
きつさ判定部(62)は、対象者(1)に対するベルト(6)のきつさの度合いを示す指標として、対象者(1)の腹囲圧を求める。この腹囲圧は、対象者(1)の腹部(2)からベルト(6)に作用する圧力に相当する。きつさ判定部(62)は、呼吸信号抽出部(42)で抽出した呼吸信号の振幅に基づいて対象者(1)の腹囲圧を算出する。具体的に、きつさ判定部(62)には、呼吸信号の振幅と対象者(1)の腹囲圧との関係式(1)が記憶されている(例えば
図4を参照)。きつさ判定部(62)は、この関係式(1)に基づいて対象者(1)の腹囲圧を求める。
【0051】
きつさ判定部(62)は、対象者(1)の呼吸の速さを示す指標に基づいて腹囲圧を補正するように構成される。具体的に、きつさ判定部(62)は、呼吸信号から求められる対象者(1)の呼吸数に基づいて腹囲圧を補正する。きつさ判定部(62)は、例えば
図5示すように、対象者(1)の呼吸数が小さくなると、腹囲圧を減少方向に補正し、対象者(1)の呼吸数が大きくなると、腹囲圧を増大方向に補正する。この補正は、例えば
図4の破線でしめすように、対象者(1)の呼吸数に応じて上記関係式(1)の切片を大小させることで実現できる。
【0052】
きつさ判定部(62)は、対象者(1)の個体情報に基づいて、腹囲圧を補正するように構成される。
図5に示すように、対象者(1)の個体情報としては、例えば対象者(1)の性別、年齢、肥満度等があげられる。これらの個体情報は、生体情報取得装置(10)の入力部に入力可能である。具体的には、例えば対象者(1)は、外部機器に性別、年齢、肥満度等を入力する。入力されたデータは、通信部(70)を介して生体情報取得装置(10)の入力部に入力され、腹囲圧の補正に利用される。
【0053】
きつさ判定部(62)は、例えば対象者(1)が女性である場合、対象者(1)が未成人である場合、対象者(1)が非肥満である場合、腹囲圧を増大方向に補正する。また、きつさ判定部(62)は、例えば対象者(1)が男性である場合、対象者(1)が成人である場合、対象者(1)が肥満である場合、腹囲圧を減少方向に補正する。
【0054】
肥満判定部(63)は、きつさ判定部(62)で求められた腹囲圧に基づいて、対象者(1)の肥満度を求める。つまり、肥満判定部(63)は、例えば腹囲圧の絶対値が比較的大きい場合、対象者(1)の肥満度が大きいと判定する。また、例えば腹囲圧の絶対値が比較的小さい場合、対象者(1)の肥満度が小さいと判定する。なお、肥満判定部(63)は、所定時間における腹囲圧の変化量に応じて対象者(1)の肥満度を判定してもよい。
【0055】
図6に示すように、肥満判定部(63)は、対象者(1)が装着する装着品(ベルト(6))の情報に基づいて、肥満度を補正してもよい。ベルト(6)に関する情報は、生体情報取得装置(10)の入力部に入力可能である。具体的には、例えば対象者(1)は、使用状態のベルト(6)が自分にとって「きつめ」であるか、「
ゆるめ」であるか、「ちょうど」であるかを外部機器に入力する。入力されたデータは、通信部(70)を介して生体情報取得装置(10)の入力部に入力され、肥満度の補正に利用される。
【0056】
例えばベルト(6)の締め付け状態が対象者(1)に対して「きつめ」であったとする。この場合、きつさ判定部(62)で求められる腹囲圧は大きくなる傾向にある。従って、肥満判定部(63)は、ベルト(6)が「きつめ」に設定される場合、肥満度を減少方向に補正する。逆に、例えばベルト(6)の締め付け状態が対象者(1)に対して「ゆるめ」であったとする。この場合、きつさ判定部(62)で求められる腹囲圧は小さくなる傾向にある。従って、肥満判定部(63)は、ベルト(6)が「ゆるめ」に設定される場合、肥満度を増大方向に補正する。
【0057】
〈動作〉
生体情報取得装置(10)の動作について
図1〜
図7を参照しながら説明する。
【0058】
対象者(1)の体動が感圧チューブ(20)の本体部(21)に作用すると、感圧チューブ(20)の内圧が変化する。圧力センサ(31)は、感圧チューブ(20)に作用した体動に対応する圧力信号を出力する(ステップSt11)。次いで、呼吸信号抽出部(42)は、前処理後の圧力信号(体動信号)から呼吸に由来する成分(呼吸信号)を抽出する(ステップSt12)また、心拍信号抽出部(41)は、前処理後の圧力信号(体動信号)から心拍に由来する成分(心拍信号)を抽出する(ステップSt13)。ここで得られた心拍信号は、上述したように、対象者(1)のストレス度の判定に用いられる。
【0059】
次いで、きつさ判定部(62)は、
図4に示す関係式(1)に基づいて、呼吸信号の振幅から腹囲圧を算出する(ステップSt14)。また、きつさ判定部(62)は、
図5に示すように、対象者(1)の呼吸数、及び属性に基づいて対象者(1)の腹囲圧を補正する。
【0060】
次いで、肥満判定部(63)は、きつさ判定部(62)で判定された腹囲圧に基づいて、対象者(1)の肥満度を算出する。この際、肥満判定部(63)は、ベルト(6)の情報(例えば
図6を参照)に基づいて、対象者(1)の肥満度を適宜補正する。
【0061】
以上のようにして得られた腹囲圧や肥満度は、通信部(70)を介して所定の外部機器へ送信される。これにより、対象者(1)は、腹囲圧や肥満度を適宜確認することができる。
【0062】
〈呼吸信号の振幅と腹囲圧との関係について〉
上述したように、きつさ判定部(62)は、呼吸信号の振幅に基づいて、対象者(1)の腹囲圧を求めるようにしている。そこで、呼吸信号の振幅と、対象者(1)の腹囲圧とを検証した結果について
図8を参照しながら説明する。
【0063】
図8は、対象者(1)のベルト(6)のきつさを変更しながら、対象者(1)の呼吸信号を測定した結果の一例である。T1は、対象者(1)に対するベルト(6)のきつさをゆるくした期間である。T2は、対象者(1)に対するベルト(6)のきつさをきつくした期間である。T3は、対象者(1)に対するベルト(6)のきつさをT1とT2の中間とした期間である。
図8から明らかなように、対象者(1)に対するベルト(6)のきつさがゆるい期間T1では、呼吸信号の振幅σ1も比較的小さくなる。対象者(1)に対するベルト(6)のきつさがきつい期間T2では、呼吸信号の振幅σ2も比較的大きくなる。対象者(1)に対するベルト(6)のきつさが中間となる期間T3では、呼吸信号の振幅σ3は中間になる。
【0064】
このように、対象者(1)に対するベルト(6)のきつさ(腹囲圧に相当)と、呼吸信号の振幅には明らかな相関がある。対象者(1)に対するベルト(6)のきつさが大きくなると(即ち、腹囲圧が大きくなると)、対象者(1)の体動が感圧チューブ(20)に伝達し易くなるからである。そこで、本実施形態では、呼吸信号の振幅に基づいて、対象者(1)の腹囲圧を求めている。
【0065】
−実施形態の効果−
本実施形態では、対象者(1)とベルト(6)との間に中空状の感圧チューブ(20)を設けているため、対象者(1)が異物感を覚えることなく、対象者(1)の生体情報を取得できる。感圧チューブ(20)であれば、袋体と比較すると破れたり損傷したりしにくいため、長期間に亘り装着品(6,7)に取付け可能である。
【0066】
本実施形態では、感圧チューブ(20)によって検出された生体信号に基づいて、対象者(1)のストレス度と対象者(1)の肥満度とを求めている。つまり、感圧チューブ(20)は、これらの双方の指標を求めるためのセンサとして兼用される。従って、生体情報取得装置(10)の簡素化を図ることができる。
【0067】
本実施形態では、呼吸信号の振幅に基づいて、対象者(1)の腹囲圧を求めている。呼吸信号の振幅と、腹囲圧とには、
図4に示すような明らかな相関がある。このため、特別なセンサを設けることなく対象者(1)の腹囲圧を確実に計測できる。
【0068】
また、例えば感圧チューブ(20)により、対象者(1)の腹囲圧を直接的に計測する
ことも考えられる。この場合には、腹囲圧を求めるための圧力のレンジは、例えば1Kpaオーダとなる。これに対し、呼吸信号の振幅のレンジは、例えば0.1Paオーダであり、腹囲圧の約1万分の1である。従って、仮に心拍信号に基づくストレス度と、腹囲圧との双方を計測しようとすると、1つの圧力センサ(31)で両者を精度よく検出することが困難となる。これに対し、本実施形態の腹囲圧は、呼吸信号の振幅に基づいて計測されるため、腹囲圧の検出に要するレンジは極めて低くなる。従って、例えば1つの低周波型の圧力センサ(31)により、呼吸信号と心拍信号とを高精度に検出・抽出でき、ストレス度と腹囲圧とのそれぞれを高精度に計測できる。
【0069】
呼吸信号は、特に対象者(1)の腹部(2)の周囲において大きくなる傾向にある。このため、呼吸信号を用いることで、対象者(1)の腹囲圧を確実に計測できる。
【0070】
きつさ判定部(62)は、対象者(1)の呼吸数に応じて腹囲圧を補正する。このため、例えば対象者(1)の呼吸数が早くなり、呼吸信号の振幅が大きくなるような状況下において、腹囲圧や肥満度が過剰に大きくなってしまうのを防止できる。
【0071】
きつさ判定部(62)は、対象者(1)の属性に応じて腹囲圧を補正する。このため、対象者(1)の属性の影響により、腹囲圧や肥満度に誤差が生じてしまうことも防止できる。
【0072】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る生体情報取得装置(10)は、車両である自動車に適用されている。生体情報取得装置(10)の基本的な構成は、上記実施形態1と同様である。実施形態2の感圧チューブ(20)は、対象者(1)(例えば運転手)と、対象者(1)に装着される装着品であるシートベルト(7)との間に配置される。例えば感圧チューブ(20)は、対象者(1)の腹部に対応する腹部側シートベルト(7)と、対象者(1)の間に配置される。しかし、感圧チューブ(20)は、対象者(1)の旨部に対応する胸部側シートベルト(8)と、対象者(1)との間に配置されてもよい。
【0073】
実施形態2では、実施形態1と同様にして、対象者(1)に対するシートベルト(7)のきつさの度合いを示す指標が求められる。また、このきつさの度合いに基づいて、対象者(1)の肥満度の判定が行われる。
【0074】
《その他の実施形態》
対象者(1)に装着される装着品は、ベルトやシートベルトに限られない。具体的に、装着品は、ズボン、スカート等を含む衣類や、乳幼児等が装着する紙おむつ(使い捨てパンツ)、靴などであってもよい。
【0075】
きつさ判定部(62)は、心拍信号の振幅に基づいて、対象者(1)に対する装着品(6,7)のきつさの度合いを示す指標を求めるようにしてもよい。心拍信号の振幅と、きつさの度合いを示す指標も十分な相関があり、該きつさの度合いを示す指標を精度よく計測できる。
【0076】
この場合、きつさ判定部(62)は、心拍の速さを示す指標に基づいて、きつさの度合いを示す指標を補正するものであってもよい。具体的には、きつさ判定部(62)は、例えば心拍数が大きい場合に腹囲圧を小さく補正し、心拍数が小さい場合に腹囲圧を大きく補正する。この場合にも、きつさ判定部(62)は、対象者(1)の性別、年齢、肥満度などの個体情報に基づいて腹囲圧を補正してもよい。