(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体レーザや発光ダイオード等の半導体発光素子からなる負荷を駆動する場合、電源電圧の変化によって輝度が変化しないように、定電流回路により負荷に定電流を流している。
【0003】
定電流回路は、一般的に
図7に示すように、MOSFETからなる電流制御素子Q1と、電流制御素子Q1のソースに一端が接続された抵抗Rと、出力端子が電流制御素子Q1のゲートに接続され、反転入力端子(−)が抵抗Rの一端に接続され、非反転入力端子(+)にパルス信号が入力されるオペアンプOPと、から構成されている。この定電流回路は、オペアンプOPにパルス信号を入力して、電流制御素子Q1に印加される電圧値を変化させることにより、抵抗Rに流れる電流を一定電流に制御している。
【0004】
この場合、電流制御素子Q1には、定電圧源100の電圧から、半導体レーザLDの両端電圧と抵抗Rの両端電圧とを差し引いた電圧が印加される。このため、電流制御素子Q1は、発熱する。
【0005】
また、特許文献1に記載されたLED駆動回路が知られている。このLED駆動回路は、電流制御素子に印加される電圧が一定の電圧範囲になるように電源電圧を制御することにより、電流制御素子の発熱を抑えている。特許文献1では、パルス信号により電流制御素子をパルス駆動した時の電流制御がオフ時には電圧制御を停止させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
即ち、電流制御がオフした時には、LEDの順電圧が低下することに伴い、制御回路が電源電圧を低下させるため、再度、電流制御がオンした場合に、LEDの点灯に必要な電圧に対して電源電圧が不足する。このため、LED点灯初期時に本来流したい電流が流れず、LEDの輝度の低下を生じる。また、所望の輝度を得るために発光遅延が生じてしまう。
【0008】
また、電流制御が常時オンの状態においても、LED電流設定値を大きく変更した場合には、電源電圧の制御が負荷の順電圧の変化に追従せず、所望の輝度を得るまでに発光遅延が生じる場合がある。
【0009】
本発明の課題は、半導体発光素子への電源電圧が不足せず、所望の輝度を得るまでの発光遅延が少なくなり、電流制御素子の発熱を最小限に抑制することができる半導体発光素子駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る半導体発光素子駆動回路は、半導体発光素子に電圧を供給する定電圧源と、前記半導体発光素子に直列に接続される電流制御素子を有し、前記電流制御素子を制御することにより前記半導体発光素子に定電流を流す定電流回路と、前記半導体発光素子の順電圧を計測する順電圧モニタ回路と、前記順電圧モニタ回路で計測された前記順電圧が前記半導体発光素子の閾電流値に対応する順電圧値以下である場合に前記定電圧源の電圧値を回路で任意に設定される電源電圧設定最大値に設定し、前記順電圧が前記閾電流値に対応する順電圧値を超えた場合に前記定電圧源の電圧値を前記半導体発光素子を駆動するために必要で且つ前記電源電圧設定最大値より小さい電源電圧値に設定する制御回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る半導体発光素子駆動回路によれば、制御回路は、計測された順電圧が半導体発光素子の閾電流値に対応する順電圧値以下である場合には、定電圧源の電圧値を回路で任意に設定される電源電圧設定最大値に設定し、順電圧が閾電流値に対応する順電圧値を超えた場合に定電圧源の電圧値を半導体発光素子を駆動するために必要で且つ電源電圧設定最大値より小さい電源電圧値に設定する。このため、閾電流値の前後の順電圧の変化は、小さくなるため、電流制御素子への電源電圧が不足せず、発光遅延は発生しない。
【0012】
また、閾電流値以下の電流は、小さい電流であるので、定電流回路の電流制御素子の熱的負荷も小さい。電流が閾電流値を超える場合には電流制御素子に印加される電圧値が最低限で済むように定電圧源の電圧値を制御するため、電流制御素子の熱的な負荷は小さい。
【0013】
従って、半導体発光素子への電源電圧が不足せず、所望の輝度を得るまでの発光遅延が少なくなり、電流制御素子の発熱を最小限に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の半導体発光素子駆動回路の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この半導体発光素子駆動回路は、半導体レーザや発光ダイオード等の半導体発光素子を駆動するものである。
【0016】
以下に説明する実施例1〜4では、半導体発光素子として半導体レーザを用いた半導体レーザ駆動回路について説明する。なお、半導体発光素子として発光ダイオードを用いたLED駆動回路についても、以下に説明する半導体レーザ駆動回路と同様である。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係る半導体レーザ駆動回路の構成を示す図である。
図1に示すように、半導体レーザ駆動回路は、半導体レーザLD、定電圧源11、定電流回路12、順電圧モニタ回路13、マイクロコンピュータ14、LD電流制御回路15を備えている。
【0018】
半導体レーザLDは、電流駆動によって注入された電子およびホールからなるキャリア注入によって励起され、注入された電子およびホールのキャリア対消滅の際に発生する誘導放出によって発生されたレーザ光を出力する。
【0019】
定電圧源11は、半導体レーザLDに接続され、半導体レーザLDに電圧を供給する。定電流回路12は、半導体レーザLDに直列に接続されMOSFETからなる電流制御素子Q1と、電流制御素子Q1のソースに一端が接続された抵抗Rと、出力端子が電流制御素子Q1のゲートに接続され、反転入力端子が抵抗Rの一端に接続され、非反転入力端子にLD電流制御回路15からのパルス信号が入力されるオペアンプOPと、から構成されている。
【0020】
定電流回路12は、オペアンプOPの出力端子から電流制御素子Q1のゲートにパルス信号を印加して、電流制御素子Q1のゲート-ソース間の電圧を変化させることにより、半導体レーザLDに流れる電流を定電流に制御する。
【0021】
順電圧モニタ回路13は、半導体レーザLDの両端間の順電圧を計測して、計測された順電圧をマイクロコンピュータ14に出力する。
【0022】
マイクロコンピュータ14は、本発明の制御回路に対応し、処理を実行する中央処理装置(CPU)141を有する。マイクロコンピュータ14は、順電圧モニタ回路13で計測された半導体レーザLDの順電圧が半導体レーザLDの閾電流値に対応する順電圧値以下である場合には、定電圧源11の電圧値を回路で任意に設定される電源電圧設定最大値に設定し、設定された電源電圧設定最大値を定電圧源11に出力する。
【0023】
マイクロコンピュータ14は、半導体レーザLDの順電圧が閾電流値に対応する順電圧値を超えた場合には、定電圧源11の電圧値を半導体レーザLDを駆動するために必要な電源電圧値で且つ電源電圧設定最大値より小さい電源電圧値に設定し、設定された電源電圧値を定電圧源11に出力する。
【0024】
定電圧源11は、電源電圧をマイクロコンピュータ14からの設定された電源電圧設定最大値又は設定された電源電圧値に変更する。
【0025】
マイクロコンピュータ14は、電流設定値をLD電流制御回路15に出力する。LD電流制御回路15は、マイクロコンピュータ14からの電流設定値をオペアンプOPの非反転入力端子に出力することで、定電流回路12による定電流を実現させる。
【0026】
次にこのように構成された実施例1の半導体レーザ駆動回路の動作を
図2に示す定電圧源の電圧値の設定方法及び
図3に示すフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0027】
まず、順電圧モニタ回路13は、半導体レーザLDの両端間の順電圧を計測する(ステップS11)。マイクロコンピュータ14は、順電圧モニタ回路13で計測されたLD順電圧計測値を取得する(ステップS12)。
【0028】
次に、マイクロコンピュータ14は、LD順電圧計測値がLD発光閾電流値Ithに対応するLD順電圧Vth以下かどうかを判定する(ステップS13)。
【0029】
ここで、
図2を参照して、LD発光閾電流値について説明する。
図2(a)は、半導体レーザLDのLD電流に対するLD光出力を示し、
図2(b)は、半導体レーザLDのLD電流に対する電圧を示す。
【0030】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、LD発光閾電流値Ithは、LD光出力Piがゼロでない最も小さい正値となる電流値である。LD発光閾電流値Ithに対応するLD順電圧値は、
図2(b)に示すように、Vthである。
【0031】
図2(b)に示すように、LD順電圧は、LD発光閾電流値Ith以下の場合には、急激に上昇した電圧V1となり、LD発光閾電流値Ithを超えた場合には、緩やかに上昇した電圧V2となる特徴がある。
【0032】
マイクロコンピュータ14は、LD順電圧計測値がLD発光閾電流値Ithに対応するLD順電圧Vth以下の場合には(ステップS13のYes)、定電圧源11の電圧値を回路で任意に設定される電源電圧設定最大値Vmaxに設定する(ステップS14)。
【0033】
電源電圧設定最大値Vmaxは、
図2(b)に示すように、LD順電圧値Vthよりも大きく且つ半導体レーザLDを駆動するために必要な電圧値V3よりも大きい値である。
【0034】
一方、マイクロコンピュータ14は、LD順電圧計測値がLD発光閾電流値Ithに対応するLD順電圧Vthを超えた場合には(ステップS13のNo)、定電圧源11の電圧値を半導体レーザLDを駆動するために必要な電源電圧値で且つ電源電圧設定最大値Vmaxより小さい電源電圧値V3に設定する(ステップS15)。即ち、定電圧源11の電圧値を電流制御素子Q1が動作するドレイン−ソース電圧が確保できる程度の電源設定値に設定する。
【0035】
次に、マイクロコンピュータ14は、設定された電源電圧設定最大値Vmax又は設定された電源電圧値V3を定電圧源11に出力する(ステップS16)。すると、定電圧源11は、電源電圧をマイクロコンピュータ14からの設定された電源電圧設定最大値Vmax又は設定された電源電圧値V3に変更する。
【0036】
さらに、マイクロコンピュータ14は、電流設定値をLD電流制御回路15に出力する(ステップS17)。
【0037】
このように実施例1の半導体レーザ駆動回路によれば、マイクロコンピュータ14は、順電圧モニタ回路13で計測された順電圧が半導体レーザLDの閾電流値Ithに対応する順電圧値Vth以下である場合には、定電圧源11の電圧値を回路で任意に設定される電源電圧設定最大値Vmaxに設定する。
【0038】
また、順電圧が閾電流値Ithに対応する順電圧値Vthを超えた場合には、定電圧源11の電圧値を電源電圧値V3に設定する。
【0039】
また、閾電流値Ith以下の電流は、小さい電流であるので、定電流回路12のMOSFETQ1の熱的負荷も小さい。電流が閾電流値Ithを超える場合にはMOSFETQ1に印加される電圧値が最低限で済むように、定電圧源11の電圧値を制御するため、MOSFETQ1の熱的な負荷は小さい。
【0040】
従って、MOSFETQ1への電源電圧が不足せず、所望の輝度を得るまでの発光遅延が少なくなり、MOSFETQ1の発熱を最小限に抑制することができる。
【実施例2】
【0041】
図4は、本発明の実施例2に係る半導体レーザ駆動回路の構成を示す図である。
図4に示す実施例2に係る半導体レーザ駆動回路は、
図1に示す実施例1に係る半導体レーザ駆動回路に対して、さらに、ピークホールド回路16、DAC(デジタルアナログコンバータ)17、DC/DCコンバータ110を備えたことを特徴とする。
【0042】
ピークホールド回路16は、順電圧モニタ回路13で計測された半導体レーザLDの順電圧のピーク値を所定時間保持した後にマイクロコンピュータ14に出力する。
【0043】
DAC17は、マイクロコンピュータ14からの電源電圧設定値をデジタル電圧からアナログ電圧に変換する。DC/DCコンバータ110は、直流電圧をDAC17からのアナログ電圧の電源電圧設定値に応じた直流電圧に変換して、変換された直流電圧を半導体レーザLDに供給する。
【0044】
このように実施例2に係る半導体レーザ駆動回路によれば、ピークホールド回路16が順電圧モニタ回路13で計測された半導体レーザLDの順電圧のピーク値を所定時間ホールドするので、マイクロコンピュータ14は、ピークホールドされた順電圧とLD順電圧Vthとを比較するので、迅速な処理を行うことができる。
【0045】
また、DC/DCコンバータ110が、直流電圧をDAC17からのアナログ電圧の電源電圧設定値に応じた直流電圧に変換して、変換された直流電圧を半導体レーザLDに供給するので、MOSFETQ1への電源電圧が不足せず、所望の輝度を得るまでの発光遅延が少なくなり、MOSFETQ1の発熱を最小限に抑制することができる。
【実施例3】
【0046】
図5は、本発明の実施例3に係る半導体レーザ駆動回路の構成を示す図である。
図5に示す実施例3に係る半導体レーザ駆動回路は、同一種類の例えばGaNからなる半導体レーザLD1,LD2、半導体レーザLD1,LD2に電圧を供給する定電圧源11、定電流回路12a,12b、順電圧モニタ回路13a,13b、マイクロコンピュータ14a、LD電流制御回路15a,15bを備えている。
【0047】
定電流回路12aは、半導体レーザLD1に直列に接続される電流制御素子Q1を有し且つ電流制御素子Q1を制御することにより半導体レーザLD1に定電流を流す。定電流回路12aは、電流制御素子Q1とオペアンプOP1と抵抗R1とで構成されている。
【0048】
定電流回路12bは、半導体レーザLD2に直列に接続される電流制御素子Q2を有し且つ電流制御素子Q2を制御することにより半導体レーザLD2に定電流を流す。定電流回路12bは、電流制御素子Q2とオペアンプOP2と抵抗R2とで構成されている。
【0049】
順電圧モニタ回路13aは、半導体レーザLD1の順電圧を計測する。順電圧モニタ回路13bは、半導体レーザLD2の順電圧を計測する。
【0050】
マイクロコンピュータ14aは、順電圧モニタ回路13a,13bで計測された2つの順電圧の中から選択された順電圧が半導体レーザLD1,LD2の閾電流値に対応する順電圧値以下である場合に定電圧源11の電圧値を回路で任意に設定される電源電圧設定最大値に設定し、順電圧が閾電流値に対応する順電圧値を超えた場合に定電圧源の電圧値を半導体レーザLD1,LD2を駆動するために必要で且つ電源電圧設定最大値より小さい電源電圧値に設定する。
【0051】
LD電流制御回路15aは、マイクロコンピュータ14aからの電流設定値をオペアンプOP1の非反転入力端子に出力することで、定電流回路12aによる定電流を実現させる。LD電流制御回路15bは、マイクロコンピュータ14aからの電流設定値をオペアンプOP2の非反転入力端子に出力することで、定電流回路12bによる定電流を実現させる。
【0052】
なお、実施例3に係る半導体レーザ駆動回路では、半導体レーザ、定電流回路、順電圧モニタ回路、LD電流制御回路の各々を2個設けたが、2個に限定されることなく、これらの各々を3個以上設けても良い。
【0053】
このように構成された実施例3に係る半導体レーザ駆動回路によれば、マイクロコンピュータ14aは、順電圧モニタ回路13a,13bで計測された2つの順電圧を入力する。そして、マイクロコンピュータ14aは、入力された2つの順電圧の内のいずれかの順電圧、例えば、低い方の順電圧を選択する。
【0054】
さらに、選択された順電圧が半導体レーザLDの閾電流値Ithに対応する順電圧値Vth以下である場合には、定電圧源11の電圧値を回路で任意に設定される電源電圧設定最大値Vmaxに設定する。
【0055】
また、選択された順電圧が閾電流値Ithに対応する順電圧値Vthを超えた場合には、定電圧源11の電圧値を電源電圧値V3に設定する。このため、閾電流値Ith前後の順電圧値の変化は、電圧値Vmaxと電圧値V3との差であり、かなり小さい。このため、MOSFETQ1,Q2への電源電圧が不足せず、発光遅延は発生しない。
【0056】
従って、実施例3に係る半導体レーザ駆動回路においても、実施例1に係る半導体レーザ駆動回路の効果と同様な効果が得られる。
【実施例4】
【0057】
図6は、本発明の実施例4に係る半導体レーザ駆動回路の構成を示す図である。
図6に示す実施例4に係る半導体レーザ駆動回路は、GaNからなる半導体レーザLD1、GaAsからなる半導体レーザLD2、半導体レーザLD1に電圧を供給する第1定電圧源11a、半導体レーザLD3に電圧を供給する第2定電圧源11b、定電流回路12a,12b、順電圧モニタ回路13a,13b、マイクロコンピュータ14b、LD電流制御回路15a,15bを備えている。
【0058】
マイクロコンピュータ14bは、順電圧モニタ回路13aで計測された順電圧が半導体レーザLD1の閾電流値に対応する順電圧値以下である場合に順電圧に対応する第1定電圧源11aの電圧値を回路で任意に設定される電源電圧設定最大値に設定し、順電圧が閾電流値に対応する順電圧値を超えた場合に順電圧に対応する第1定電圧源11aの電圧値を半導体レーザLD1を駆動するために必要で且つ電源電圧設定最大値より小さい電源電圧値に設定する。
【0059】
マイクロコンピュータ14bは、順電圧モニタ回路13bで計測された順電圧が半導体レーザLD3の閾電流値に対応する順電圧値以下である場合に順電圧に対応する第2定電圧源11bの電圧値を回路で任意に設定される電源電圧設定最大値に設定し、順電圧が閾電流値に対応する順電圧値を超えた場合に順電圧に対応する第2定電圧源11bの電圧値を半導体レーザLD1を駆動するために必要で且つ電源電圧設定最大値より小さい電源電圧値に設定する。
【0060】
このように、異なる種類の半導体レーザを用いる場合には、定電圧源、順電圧モニタ回路、LD電流制御回路を個別に設けることで、実施例1の半導体レーザ駆動回路の効果と同様な効果が得られる。
【0061】
なお、実施例1〜4の半導体レーザ駆動回路においては、電流制御素子Q1に接続される半導体レーザLDは、1個としたが、複数個の半導体レーザLDが直列に接続されて構成されても良い。この場合には、順電圧モニタ回路13は、直列に接続された複数個の半導体レーザLDの両端の順電圧を計測してマイクロコンピュータ14に出力する。