特許第6772672号(P6772672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772672
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】表示装置および表示方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/84 20060101AFI20201012BHJP
   G01S 7/62 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   G01S3/84
   !G01S7/62 A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-166143(P2016-166143)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-31741(P2018-31741A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 亮輔
【審査官】 渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−097887(JP,A)
【文献】 特開平07−063839(JP,A)
【文献】 特開2014−235155(JP,A)
【文献】 特開2008−212678(JP,A)
【文献】 特開昭61−018885(JP,A)
【文献】 特開昭61−205880(JP,A)
【文献】 特開平04−143683(JP,A)
【文献】 特開2000−098016(JP,A)
【文献】 特開昭58−139084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00 − 3/86
7/00 − 7/64
13/00 − 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響信号から複数の異なるふ仰角の水平方位レベルを一定周期で出力する複数の出力部と、
前記複数の出力部から出力される水平方位毎の信号レベルを基に、前記水平方位レベル毎に表示情報を生成する表示処理部と、
前記表示処理部が生成した表示情報を表示する表示部と、
を有し、
前記表示処理部は、
前記表示情報として、複数の前記水平方位レベルのそれぞれについて、水平方位を横軸とし、時間を縦軸とし、信号レベルの強度を濃淡で表した方位レベル時系列情報を生成し、
前記表示部は、
前記表示情報として、複数の前記方位レベル時系列情報に互いに異なる前記ふ仰角を付して表示する、
表示装置。
【請求項2】
音響信号から複数の異なるふ仰角の水平方位レベルを一定周期で出力する複数の出力部と、
前記複数の出力部から出力される水平方位毎の信号レベルを基に、前記水平方位レベル毎に表示情報を生成する表示処理部と、
前記表示処理部が生成した表示情報を表示する表示部と、
複数の前記水平方位レベルをふ仰角順に並べ、水平方位を横軸とし、ふ仰角を縦軸とし、前記信号レベルの強度を濃淡で表示した方位ふ仰角情報を時系列で蓄積する蓄積部と、
複数の前記水平方位レベルのそれぞれについて、水平方位を横軸とし、時間を縦軸とし、前記信号レベルの強度を濃淡で表した方位レベル時系列情報から、表示させるふ仰角の時刻を指定する時刻指定部と、を有し、
前記表示処理部は、
前記表示情報として、前記方位ふ仰角情報を時系列で生成して前記蓄積部に蓄積し、
前記時刻指定部で指定された時刻に対応する前記方位ふ仰角情報を前記蓄積部から読み出して前記表示部に表示させる
表示装置。
【請求項3】
前記表示処理部は、
前記方位ふ仰角情報を生成する際、ふ仰角と水平方位との間で信号レベルの補間処理を行う、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示部は2以上の前記方位レベル時系列情報を同時に表示する、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記方位ふ仰角情報からふ仰角を選択する選択部を有し、
前記表示処理部は、
前記選択部で選択されたふ仰角の前記方位レベル時系列情報を前記表示部に表示させる、請求項2または3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記時刻指定部は、
前記表示部が表示する前記方位レベル時系列情報に対して、オペレータが行う操作にしたがって時刻指定を行う、請求項2または3に記載の表示装置。
【請求項7】
前記選択部は、
前記表示部が表示する前記方位ふ仰角情報に対して、オペレータが行う操作にしたがってふ仰角指定を行う、請求項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記複数の出力部のそれぞれは、
互いに異なるふ仰角について前記音響信号から水平方位および周波数を軸とした受波信号のレベルを整相出力する水平整相処理手段と、
前記整相出力に対して周波数方向に累加する周波数累加処理手段と、
を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示装置はソーナー装置に適用される、請求項1〜のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
表示部および表示処理部を有する表示装置による表示方法であって、
前記表示処理部が音響信号から複数の異なるふ仰角の水平方位レベルを一定周期で算出し、
前記表示処理部が、前記一定周期で算出した水平方位毎の信号レベルを基に、前記水平方位レベル毎に表示情報を生成し、
前記表示処理部が、生成した表示情報を前記表示部に表示させ
前記表示処理部が、前記表示情報として、複数の前記水平方位レベルのそれぞれについて、水平方位を横軸とし、時間を縦軸とし、信号レベルの強度を濃淡で表した方位レベル時系列情報を生成し、
前記表示処理部が、前記表示情報として、複数の前記方位レベル時系列情報に互いに異なる前記ふ仰角を付して前記表示部に表示させる、
表示方法。
【請求項11】
表示部、蓄積部、時刻指定部および表示処理部を有する表示装置による表示方法であって、
前記表示処理部が音響信号から複数の異なるふ仰角の水平方位レベルを一定周期で算出し、
前記表示処理部が、前記一定周期で算出した水平方位毎の信号レベルを基に、前記水平方位レベル毎に表示情報を生成し、
前記表示処理部が、生成した表示情報を前記表示部に表示させ、
前記表示処理部が、前記表示情報として、複数の前記水平方位レベルをふ仰角順に並べ、水平方位を横軸とし、ふ仰角を縦軸とし、前記信号レベルの強度を濃淡で表示した方位ふ仰角情報を時系列で前記蓄積部に蓄積し、
前記表示処理部は、複数の前記水平方位レベルのそれぞれについて、水平方位を横軸とし、時間を縦軸とし、前記信号レベルの強度を濃淡で表した方位レベル時系列情報から、表示させるふ仰角の時刻が前記時刻指定部を介して指定されると、前記時刻指定部で指定された時刻に対応する前記方位ふ仰角情報を前記蓄積部から読み出して前記表示部に表示させる、
表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーナー装置等で受信した音響信号の到来水平方位および到来ふ仰角を取得する表示装置および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーナー装置では、音響信号の到来水平方位を取得する方法として、水平方位毎の音響信号の強度を時系列に濃淡表示したBTR(Bearing Time Recording:水平方位毎の信号レベルの経時変化)表示から、注目する信号の水平方位を取得する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の表示装置におけるBTR表示方法を説明する。表示装置は、受波器アレイから受信する音響信号に対して一定の周期で水平整相処理を行う。水平整相処理では、表示装置は、入力された音響信号から任意のふ仰角について水平方位−周波数を軸とした受波信号のレベルを出力する。この整相出力に対し、表示装置は、周波数累加処理にて周波数方向の累加を行って、BL(Bearing Level:水平方位毎の信号レベル)を得る。表示装置は、一定の周期で取得するBLに対して表示処理を行うことで、水平方位毎の音響信号の強度を時系列に濃淡表示したBTR表示として出力する。オペレータは、BTR表示から注目信号の到来水平方位の情報を得ることができる。
【0004】
次に、BTR表示から音響信号の到来ふ仰角を取得する方法について簡単に説明する。オペレータがBTR表示から注目信号の水平方位を取得し、表示装置は、取得された水平方位に対してふ仰整相処理を行って、EL(Elevation Level:ふ仰角毎の信号レベル)を得る。続いて、表示装置は、取得したELに対して、ふ仰角推定処理を行ってELのレベルが最大となるふ仰角を推定することで、注目信号の到来ふ仰角を数値で取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−91300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した方法により、音響信号の到来水平方位および到来ふ仰角を取得することは可能である。しかしながら、BTR表示からふ仰整相処理を行う水平方位を取得する際、注目信号の到来ふ仰角と水平整相処理で指定するふ仰角とが大きく異なる場合がある。BTR表示上の注目信号が表示されず、または信号強度が弱くなり、注目信号の水平方位を取得できない。また、ふ仰角を取得するために、BTR表示で水平方位を取得した後に、改めてふ仰整相処理を行う手順が必要となる。その結果、注目信号のふ仰角取得までに時間がかかる。
【0007】
特許文献1に開示された装置では、注目信号の水平方位を得ることができるが、注目信号のふ仰角を得ることはできない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、音響信号の到来水平方位および到来ふ仰角をオペレータが一瞥して確認できる表示を行う表示装置および表示方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る表示装置は、音響信号から複数の異なるふ仰角の水平方位レベルを一定周期で出力する複数の出力部と、前記複数の出力部から出力される水平方位毎の信号レベルを基に、前記水平方位レベル毎に表示情報を生成する表示処理部と、前記表示処理部が生成した表示情報を表示する表示部と、を有し、前記表示処理部は、前記表示情報として、複数の前記水平方位レベルのそれぞれについて、水平方位を横軸とし、時間を縦軸とし、信号レベルの強度を濃淡で表した方位レベル時系列情報を生成し、前記表示部は、前記表示情報として、複数の前記方位レベル時系列情報に互いに異なる前記ふ仰角を付して表示するものである。
【0010】
本発明に係る表示方法は、表示部および表示処理部を有する表示装置による表示方法であって、前記表示処理部が音響信号から複数の異なるふ仰角の水平方位レベルを一定周期で算出し、前記表示処理部が、前記一定周期で算出した水平方位毎の信号レベルを基に、前記水平方位レベル毎に表示情報を生成し、前記表示処理部が、生成した表示情報を前記表示部に表示させ前記表示処理部が、前記表示情報として、複数の前記水平方位レベルのそれぞれについて、水平方位を横軸とし、時間を縦軸とし、信号レベルの強度を濃淡で表した方位レベル時系列情報を生成し、前記表示処理部が、前記表示情報として、複数の前記方位レベル時系列情報に互いに異なる前記ふ仰角を付して前記表示部に表示させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、表示装置が複数の異なるふ仰角の水平方位レベルから水平方位レベル毎に生成した情報を表示するため、音響信号のふ仰角と水平方位レベルとが組み合わされた情報が表示され、オペレータは、音響信号の到来水平方位および到来ふ仰角を一瞥して確認でき、信号の到来水平方位および到来ふ仰角をすばやく取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態1における表示装置の一構成例を示すブロック図である。
図2】本実施の形態1の表示装置の動作手順を示すフロー図である。
図3図2に示したステップS13の処理における複数ふ仰角BTR表示の画面の一例を示す図である。
図4】本実施の形態2における表示装置の一構成例を示すブロック図である。
図5】本実施の形態2の表示装置の動作手順を示すフロー図である。
図6図5に示したステップS22におけるELAZ表示生成処理の手順の一例を説明するための図である。
図7図5に示したステップS23の処理におけるELAZ表示の画面の一例を示す図である。
図8】本実施の形態3における表示装置の一構成例を示すブロック図である。
図9】本実施の形態3の表示装置の動作手順を示すフロー図である。
図10図8に示したELAZ表示蓄積部にELAZデータが蓄積される状態の一例を示す模式図である。
図11A図8に示した表示部において、BTR表示とELAZ表示とを組み合わせた画面のイメージの一例を示す図である。
図11B図11Aに示す画面の状態で、オペレータが時刻を指定する場合の画面のイメージの一例を示す図である。
図11C図11Aに示す画面の状態で、オペレータがふ仰角を指定する場合の画面のイメージの一例を示す図である。
図12】本実施の形態3の表示装置の他の動作手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
表示装置の実施の形態を、図を参照して説明する。以下に説明する実施の形態では、表示装置を含むソーナー装置がパッシブソーナー装置の場合で説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本実施の形態1の表示装置の構成を説明する。
図1は、本実施の形態1における表示装置の一構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、表示装置1は、演算部2と、表示部6とを有する。演算部2は、複数の出力部100−1〜100−n(nは2以上の整数)と、表示処理部7とを有する。表示装置1は、受波器アレイ10と接続されている。受波器アレイ10は、音響信号を受信する受信器である。表示装置1と受波器アレイ10との通信接続は、有線であってもよく、無線であってもよい。表示装置1は、パーソナルコンピュータを含む情報処理装置である。
【0015】
出力部100−1〜100−nには、互いに異なるふ仰角が割り当てられている。図1に示す構成例では、出力部100−1〜100−nに、ふ仰角φ1〜φnが割り当てられている。出力部100−1〜100−nのそれぞれは、自部に割り当てられたふ仰角について、音波の方位と強度を算出する。出力部100−1〜100−nは同様な構成なため、以下では、出力部100−1の構成を詳しく説明する。
【0016】
各出力部100−1は、それぞれ水平整相処理手段2−1と周波数累加処理手段3−1とを有する。水平整相処理手段2−1は、受波器アレイ10に到来する複数の音波を一定の周期で受け取ると、ふ仰角φ1についての音波の方位と強度を算出する。周波数累加処理手段3−1は、水平整相処理手段2−1から受け取る出力値を周波数方向で累加する。
【0017】
表示処理部7は、水平方位レベルを示すBLデータからBTR表示の情報であるBTRデータを生成するBTR表示生成手段4を有する。BTR表示生成手段4は、周波数累加処理手段3−1〜3−nからBLデータを受け取ると、BLデータを用いてBTRデータを複数生成する。また、BTR表示生成手段4は、生成した複数のBTRデータをふ仰角の順に並べたデータを生成してもよい。以下では、複数のBTRデータをふ仰角の順に並べたデータを複数ふ仰角BTRデータと称し、複数のふ仰角BTRデータを表示したものを複数ふ仰角BTR表示と称する。
【0018】
次に、本実施の形態1の表示装置1の動作を説明する。図2は、本実施の形態1の表示装置の動作手順を示すフロー図である。図2に示すステップS10において、表示装置1が受波器アレイ10から音響信号を受信すると、出力部100−1〜100−nは、次のようにして、ふ仰角毎にBLデータを算出する処理を行う(ステップS11)。
【0019】
ステップS11−1の水平整相処理において、出力部100−1〜100−nは、ふ仰角φ1〜φnについて水平方位−周波数を軸とした受波信号のレベルとして出力する。続いて、ステップS11−2の周波数累加処理において、出力部100−1〜100−nは、ステップS11−1の整相出力に対して、周波数方向の累加を行って、BLデータを生成する。
【0020】
表示処理部7は、一定の周期で出力部100−1〜100−nから受け取るBLデータを用いてBTRデータを生成する(ステップS12)。そして、表示処理部7は、複数のふ仰角のBTRデータのそれぞれについて、信号レベルの強度を時系列の濃淡画像で表し、ふ仰角の順に並べた情報を生成して表示部6に表示させる(ステップS13)。BTRデータは、水平方位レベルの時系列変化を表す方位レベル時系列情報に相当する。
【0021】
本実施の形態1では、整相処理対象のふ仰角をφ1〜φnまで変化させ、ふ仰角φ1〜φnのそれぞれに対して音響信号の整相処理を同時に行うことにより、ふ仰角毎に異なるBTR表示が得られる。ステップS13の複数ふ仰角BTR表示において、表示装置1がふ仰角毎に異なるBTR表示を並べて表示することで、注目する音響信号の強度が最も強いBTR表示から、到来水平方向と到来ふ仰角を取得可能な画面をオペレータに提示する。
【0022】
図3は、図2に示したステップS13の処理における複数ふ仰角BTR表示の画面の一例を示す図である。図3に示すように、表示部6の画面61では、信号50Aはふ仰角φ1のBTR表示で濃く表示され、信号50Bはふ仰角φ3のBTR表示で濃く表示されている。これに対して、ふ仰角φ2のBTR表示では、信号50Aおよび信号50Bは薄く表示されている。表示内容から、信号50Aはふ仰角φ1のBTR表示で強度が強く、信号50Bはふ仰角φ3のBTR表示で強度が強いことがわかる。そのため、オペレータは、画面61の表示内容から、信号50Aはふ仰角φ1から到来し、信号50Bはふ仰角φ3から到来していると判断できる。
【0023】
なお、図3に示す画面例では、表示部6がふ仰角φ1〜φ3毎のBTR表示を示しているが、表示部6が一度に表示するBTR表示の数は3つに限らず、2以上あればよい。オペレータは2つ以上のBTR表示を相対比較することで、注目信号の到来ふ仰角を予測しやすくなる。
【0024】
本実施の形態1では、表示装置1が音響信号から異なるふ仰角のBTRデータを算出することで、音響信号のふ仰角と水平方位レベルとが組み合わされた情報を生成できる。表示装置1が2以上のBTR表示を同時に表示することで、オペレータは、信号のふ仰角とBTR表示との組み合わせから、異なるふ仰角から到来する音響信号を一度で確認可能となり、注目信号の検出機会が増加する。また、音響信号の到来水平方位および到来ふ仰角を一瞥して確認可能な表示方法を提供することができ、オペレータは、信号の到来水平方位および到来ふ仰角をすばやく取得できる。
【0025】
(実施の形態2)
本実施の形態2の表示装置の構成を説明する。図4は、本実施の形態2における表示装置の一構成例を示すブロック図である。実施の形態1と同様な構成についての詳細な説明を省略する。
【0026】
本実施の形態2においては、表示処理部7は、図1に示したBTR表示生成手段4の代わりに、ELAZ(Elevation−Azimuth:方位−ふ仰角)表示生成手段11を有する。ELAZ表示生成手段11は、出力部100−1〜100−nから受け取るBLデータをふ仰角順に並べ、水平方位を横軸とし、ふ仰角を縦軸とし、信号レベルの強度を濃淡で表示したELAZ表示情報を生成する。ELAZ表示情報を生成する際、ELAZ表示生成手段11は、ふ仰角と水平方位との間で補間処理を行う。
【0027】
次に、本実施の形態2の表示装置1の動作を説明する。図5は、本実施の形態2の表示装置の動作手順を示すフロー図である。実施の形態1と同様な動作についての詳細な説明を省略する。
【0028】
表示装置1は、図5に示すステップS10およびステップS11において、図2を参照して説明したステップS10およびステップS11と同様に処理を行い、出力部100−1〜100−nはふ仰角の異なるn個のBLデータを出力する。ステップS22において、ELAZ表示生成手段11は、ふ仰角の異なるn個のBLデータが入力されると、n個のBLデータをふ仰角順に並べて、ふ仰角−水平方位を軸とした音響信号のレベルを表す3次元データを生成する。そして、ELAZ表示生成手段11は、生成した3次元データに対して、バイリニア法またはバイキュービック法を用いてふ仰角−水平方位軸の補間を行う。
【0029】
図6は、図5に示したステップS22におけるELAZ表示生成処理の手順の一例を説明するための図である。ふ仰角毎のBLデータは、図6(a)に示すように、水平方位に対してレベルの強度を示すグラフである。ELAZ表示生成手段11は、ふ仰角の異なるn個のBLデータを、図6(b)に示すようにふ仰角の順に並べて3次元データを生成する。その際、ふ仰角はφ1〜φnの離散値であるため、ELAZ表示生成手段11は、ふ仰角および水平方位の間の信号レベルをバイリニア法またはバイキュービック法を用いて補間する。バイリニア法は、補間対象点の近傍の2箇所の値を用いて、補間対象点の値を算出する方法である。バイキュービック法は、補間対象点の近傍の2箇所だけでなく、その2箇所の隣の値も用いて、補間対象点の値を算出する方法である。
【0030】
ELAZ表示生成手段11は、補間後の3次元データを用いて、ふ仰角を縦軸とし、水平方位を横軸としたELAZ表示の情報であるELAZデータを生成し、ELAZデータを表示部6に表示させる(ステップS23)。ELAZ表示は、一定の周期で更新され、オペレータに提示される。ELAZデータは、ふ仰角に対する水平方位の信号レベルを表す方位ふ仰角情報に相当する。
【0031】
図7は、図5に示したステップS23の処理におけるELAZ表示の画面の一例を示す図である。図7に示す画面62では、ふ仰角φ1で信号50Aが濃く表示され、ふ仰角φ2で信号50Bが濃く表示されている。図7に示す例では、信号50Aと信号50Bの周囲に弱い信号レベルが分布している様子を淡く表示している。オペレータは、図7に示す画面62から、信号50Aと信号50Bの到来水平方位と到来ふ仰角を1つの表示で判断することができる。
【0032】
なお、本実施の形態2では、処理の一例として、ステップS21の処理で得られたふ仰角φ1〜φnのn個のふ仰角のBLデータをステップS22のELAZ表示処理への入力としたが、nの数は任意に設定可能である。
【0033】
本実施の形態2では、音響信号のふ仰角と水平方位とが組み合わされたELAZデータが表示されるため、オペレータは、実施の形態1よりも、信号の到来水平方位および到来ふ仰角をよりすばやく取得できる。また、ふ仰方向での補間処理を行っているため、オペレータは、実施の形態1の場合よりも、より詳細にふ仰角の情報を取得できる。
【0034】
(実施の形態3)
本実施の形態3の表示装置の構成を説明する。図8は、本実施の形態3における表示装置の一構成例を示すブロック図である。なお、実施の形態1および実施の形態2と同様な構成についての詳細な説明を省略する。
【0035】
図8に示すように、本実施の形態3の表示装置1は、演算部2と、表示部6と、ELAZ表示蓄積部12と、操作部17とを有する。本実施の形態3における表示処理部7は、図1に示したBTR表示生成手段4および図4に示したELAZ表示生成手段11の他に、BTR表示選択手段14およびELAZ表示蓄積処理手段16を有する。
【0036】
操作部17は、表示部6が表示するBTR表示からオペレータが表示させるELAZ表示を指示するために時刻を指定する時刻指定部15と、オペレータが複数のふ仰角のBTR表示からBTR表示を選択する選択部13とを有する。操作部17は、例えば、マウスおよびキーボード等の入力デバイスである。ELAZ表示蓄積部12は、ELAZ表示生成手段11が生成するELAZ表示を保存する。ELAZ表示蓄積部12は、例えば、ハードディスクおよび不揮発性メモリ等の記憶装置である。
【0037】
ELAZ表示蓄積処理手段16は、時系列で蓄積したELAZデータを管理し、オペレータが指定した時刻のELAZデータを表示部6に表示させる。BTR表示選択手段14は、異なるふ仰角の複数のBTRデータを管理し、オペレータが指定したふ仰角のBTRデータを表示部6に表示させる。
【0038】
次に、本実施の形態3の表示装置1の動作を説明する。図9は、本実施の形態3の表示装置の動作手順を示すフロー図である。実施の形態1および実施の形態2と同様な動作についての詳細な説明を省略する。
【0039】
表示装置1は、図9に示すステップS10およびステップS11において、図2を参照して説明したステップS10およびステップS11と同様に処理を行い、出力部100−1〜100−nはふ仰角の異なるn個のBLデータを出力する。また、表示処理部7は、実施の形態1と同様にしてふ仰角毎のBTRデータを生成し(ステップS12)、実施の形態2と同様にしてELAZデータを生成する(ステップS22)。
【0040】
ELAZ表示蓄積処理手段16は、ELAZ表示生成手段11が出力するELAZデータをELAZ表示蓄積部12に格納する(ステップS33)。図10は、図8に示したELAZ表示蓄積部にELAZデータが蓄積される状態の一例を示す模式図である。図10に示すように、ELAZデータは周期毎に時系列にELAZ表示蓄積部12に蓄積される。オペレータが操作部17の時刻指定部15を介して時刻を指定すると(ステップS34)、ELAZ表示蓄積処理手段16は、指定された時刻のELAZデータをELAZ表示蓄積部12から読み出して表示部6に表示させる(ステップS35)。
【0041】
オペレータが操作部17の選択部13を介してふ仰角を指定すると(ステップS36)、BTR表示選択手段14は、ステップS12で生成された異なるふ仰角のBTRデータから、指定されたふ仰角のBTRデータを表示部6に表示させる(ステップS38)。その後、オペレータが表示部6に表示されたBTR表示から時刻を指定した場合、表示装置1は、上述のステップS34〜ステップS35と同様に処理を行う。また、オペレータが表示部6に表示されたELAZ表示からふ仰角を指定した場合、表示装置1は、上述のステップS36〜ステップS38と同様に処理を行う。
【0042】
次に、本実施の形態3の表示装置1に対するオペレータの操作方法について図面を参照して説明する。図11Aは、図8に示した表示部において、BTR表示とELAZ表示とを組み合わせた画面のイメージの一例を示す図である。図11Bは、図11Aに示す画面の状態で、オペレータが時刻を指定する場合の画面のイメージの一例を示す図である。図11Cは、図11Aに示す画面の状態で、オペレータがふ仰角を指定する場合の画面のイメージの一例を示す図である。
【0043】
なお、初期状態として、図9に示したステップS12およびステップS22の後、表示処理部7は、予め設定された時刻およびふ仰角にしたがって、BTR表示とELAZ表示を選択して表示部6に表示させる場合で説明する。
【0044】
初期状態として、表示装置1は、BTR表示とELAZ表示を組み合わせた、図11Aに示す画面63を表示部6に表示させる。図11Aに示す画面63では、BTR表示とELAZ表示の両方がオペレータに提示されている。BTR表示には、時刻の軸方向に垂直なラインカーソル71と、ラインカーソル71と信号との交点を通り、水平方位の軸方向に垂直なライン72とが表示されている。図11Aに示す画面63では、ライン72はラインカーソル71と信号50Aとの交点を通っている。
【0045】
BTR表示のライン72は、ELAZ表示にも表示されており、ELAZ表示における信号50Aの点を通っている。BTR表示には、ライン72と信号50Aとの交点を通るラインカーソル73が表示されている。ラインカーソル73は、水平方位の軸方向と平行にふ仰角の軸まで延びている。そのため、オペレータは、ラインカーソル73がふ仰角の軸と接する点を見ることで、信号50Aのふ仰角を知ることができる。なお、図11Aに示すように、信号50Bも、BTR表示およびELAZ表示に表示されている。
【0046】
オペレータは、画面63が表示された状態で、時刻指定部15を操作して、図11Bの画面64に示すようにBTR表示上でラインカーソル71を時間軸方向に移動させることで、時刻を指定することができる。オペレータが時刻を指定すると、指定された時刻に連動して、ELAZ表示が切り替わる。画面64では、BTR表示において、ラインカーソル71の移動に伴ってライン72が移動し、ELAZ表示では、ライン72の移動に伴ってラインカーソル73が移動している。オペレータは、画面64のELAZ表示において、ラインカーソル73がふ仰角軸と接する点を参照することで、指定した時刻で、信号50Bの到来ふ仰角が信号50Aの到来ふ仰角に近いことを確認できる。
【0047】
一方、オペレータは、画面63が表示された状態で、選択部13を操作して、図11Cの画面65に示すようにELAZ表示上でラインカーソル73をふ仰角の軸方向に移動させることで、ふ仰角を指定することができる。オペレータがふ仰角を指定すると、指定されたふ仰角に連動して、BTR表示が切り替わる。画面65では、ELAZ表示上でラインカーソル73が信号50Bのふ仰角に指定され、BTR表示が信号50BのBTR表示に切り替わっている。画面65では、ELAZ表示において、ラインカーソル73の移動に伴ってライン72が移動し、BTR表示では、ライン72の移動に伴ってラインカーソル71が移動している。オペレータは、画面65のBTR表示において、ラインカーソル71が時間軸と接する点を参照することで、指定したふ仰角における信号50Bの強度と到来時刻を確認できる。
【0048】
実施の形態1では、複数のBTRを同一画面内に表示するため、表示するBTR数が多いほど縦軸を短くする必要があり、表示できる時間長が短くなる場合がある。実施の形態2では、オペレータは、ある瞬時の音響信号に対するELAZ表示しか確認することができず、信号の水平方位およびふ仰角の時間変化を確認できない。
【0049】
これに対して、本実施の形態3では、実施の形態2と同様な効果の他に、オペレータは、ELAZ表示を過去に遡って確認可能となり、信号の到来水平方位および到来ふ仰角の時間変化を容易に取得することができる。また、オペレータは、ELAZ表示からBTR表示させたいふ仰角を選択できるため、同時に処理するふ仰角が増えたとしても表示できる時間長を保ったまま、注目信号の到来ふ仰角に合わせたBTR表示をすばやく確認することができる。
【0050】
なお、本発明について、上述の実施の形態3では、1つのBTR表示とELAZ表示を組み合わせた例を説明したが、BTR表示を複数ふ仰角BTR表示とすることも可能である。
【0051】
図12は、本実施の形態3の表示装置の他の動作手順を示すフロー図である。図12に示す表示方法は、複数ふ仰角BTR表示とELAZ表示とを組み合わせるものである。ステップS38において、表示処理部7がm個のBTR表示を表示部6に表示させるものである。表示部6が表示するBTRデータの個数m(m≦n)は、1以上の任意の整数を設定可能である。複数ふ仰角BTRとELAZ表示を組み合わせることで、オペレータは、ふ仰角の異なる複数の信号について、水平方位とふ仰角の時間変化を同時に確認できる。
【0052】
なお、上述の実施の形態1〜3では、表示装置をパッシブソーナー装置に適用する場合で説明したが、表示装置が実行する処理をアクティブソーナー装置およびレーダー装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 表示装置、2 演算部、2−1〜2−n 水平整相処理手段、3−1〜3−n 周波数累加処理手段、4 BTR表示生成手段、6 表示部、7 表示処理部、10 受波器アレイ、11 ELAZ表示生成手段、12 ELAZ表示蓄積部、13 選択部、14 BTR表示選択手段、15 時刻指定部、16 ELAZ表示蓄積処理手段、17 操作部、50A、50B 信号、61〜65 画面、71 ラインカーソル、72 ライン、73 ラインカーソル、100−1〜100−n 出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12