特許第6772684号(P6772684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6772684-ゴム押出物の製造方法および装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772684
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ゴム押出物の製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20201012BHJP
   B29C 48/355 20190101ALI20201012BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   B29C48/92
   B29C48/355
   B29K21:00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-172703(P2016-172703)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-39122(P2018-39122A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】郷原 櫻子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 城司
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−321186(JP,A)
【文献】 特開平06−182854(JP,A)
【文献】 特開2003−154552(JP,A)
【文献】 特開2010−099905(JP,A)
【文献】 特開平05−305647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム押出機から押し出されたゴム押出物を搬送手段により引き取りつつ搬送し、前記ゴム押出機に内設されているスクリューの回転速度を所定値から目標値まで増速または減速する際に、押出直後の前記ゴム押出物の形態を特定する形態特定項目をセンサにより逐次測定し、前記センサによる測定値を予め設定された規格範囲内に維持するように前記搬送手段の搬送速度を変速させるゴム押出物の製造方法であって、
前記回転速度を前記所定値から前記目標値まで所定の一定ピッチで複数段階で変化させ、現ロットでの前記複数段階のうちの第1段階では、以前のロットにおける前記第1段階での現ロットと同じゴム物性の前記ゴム押出物を前記形態特定項目を前記規格範囲の範囲内にして押した時の前記搬送手段の搬送速度に基づいて前記搬送手段の搬送速度を設定し、
現ロットの前記第1段階の完了直後における前記測定値が前記規格範囲外の場合は、前記スクリューの回転速度を一定に維持しながら前記搬送手段の搬送速度をPID制御して変化させることにより前記測定値を前記規格範囲内して、その後、前記複数段階のうちの第2段階に進み、現ロットの前記第1段階の完了直後における前記測定値が前記規格範囲内の場合は、前記搬送速度をPID制御することなく引き続き第2段階に進み、
現ロットでの前記複数段階のうちの第2段階以降では現ロットでの1段階前の段階の完了直後における前記測定値と前記規格範囲との偏差に基づいて前記搬送手段の搬送速度を前記測定値を前記規格範囲の範囲内に入れるために適切な速度になるように設定し、
前記回転速度が前記目標値に到達した後は、前記測定値を前記規格範囲内に維持するように、前記回転速度を前記目標値に維持しながら前記搬送速度をPID制御することを特徴とするゴム押出物の製造方法。
【請求項2】
現ロットの前記第1段階では、直前の1ロットまたは直前の複数ロットにおける前記第1段階での前記ゴム押出物を前記形態特定項目を前記規格範囲の範囲内にして押した時の前記搬送手段の搬送速度の平均値に基づいて前記搬送手段の搬送速度を設定する請求項1に記載のゴム押出物の製造方法。
【請求項3】
ゴム押出機と、このゴム押出機から押し出された直後のゴム押出物の形態を特定する形態特定項目を逐次測定するセンサと、前記ゴム押出物を引き取りつつ搬送する搬送手段とを備えて、前記ゴム押出機に内設されているスクリューの回転速度を所定値から目標値まで増速または減速する際に、前記センサによる測定値を予め設定された規格範囲内に維持するように前記搬送手段の搬送速度を変速させる制御部を有するゴム押出物の製造装置であって、
前記制御部に指令を入力する演算部を有し、前記制御部により前記回転速度を前記所定値から前記目標値まで所定の一定ピッチで複数段階で変化させて、現ロットでの前記複数段階のうちの第1段階では、以前のロットにおける前記第1段階での現ロットと同じゴム物性の前記ゴム押出物を前記形態特定項目を前記規格範囲の範囲内にして押した時の前記搬送手段の搬送速度に基づいて前記演算部により前記搬送手段の搬送速度を設定し、この設定した搬送速度が前記指令として前記制御部に入力され、
現ロットの前記第1段階の完了直後における前記測定値が前記規格範囲外の場合は、前記スクリューの回転速度を一定に維持しながら前記搬送手段の搬送速度をPID制御して変化させることにより前記測定値を前記規格範囲内して、その後、前記複数段階のうちの第2段階に進み、現ロットの前記第1段階の完了直後における前記測定値が前記規格範囲内の場合は、前記搬送速度をPID制御することなく引き続き第2段階に進む構成にして、
現ロットでの前記複数段階のうちの第2段階以降では、現ロットでの1段階前の段階の完了直後における前記測定値と前記規定範囲との偏差に基づいて前記演算部により前記搬送手段の搬送速度を前記測定値を前記規格範囲の範囲内に入れるために適切な速度になるように設定し、この設定した搬送速度が前記指令として前記制御部に入力され
前記回転速度が前記目標値に到達した後は、前記測定値を前記規格範囲内に維持するように、前記回転速度を前記目標値に維持しながら前記搬送速度をPID制御する構成にしたことを特徴とするゴム押出物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム押出物の製造方法および装置に関し、さらに詳しくは、ゴム物性が変化した場合であっても迅速にゴム押出物の形態を安定化させることができるゴム押出物の製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品を製造する工程では、ゴム押出機によって長尺の未加硫のゴム押出物を押出し、このゴム押出物を適宜加工して使用している。ゴム押出機に内設されているスクリューの回転速度を変化させることにより、ゴム押出物の押出速度は変化する。ゴム押出物の寸法(例えば幅寸法)を規格範囲内にするため、ゴム押出物を引き取るコンベヤの引取り速度を調整することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の発明では、スクリューの回転速度を変化させた場合のゴム押出量の変化の応答遅れを是正する対策が講じられている。この発明では、実際の押出工程とは別にテスト等を行って予め把握したデータに基づいて、スクリューの回転速度を変化させる。その際に、上記の応答遅れを考慮してスクリューの回転速度をリニアに増速または減速させている(段落0017〜0018等)。
【0004】
しかしながら、実際の押出工程では、予め把握したデータとは大きく外れた条件になることもある。このような場合、特許文献1に記載の発明では、ゴム押出物の寸法を早期に安定化させることができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−321186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ゴム物性が変化した場合であっても迅速にゴム押出物の形態を安定化させることができるゴム押出物の製造方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のゴム押出物の製造方法は、ゴム押出機から押し出されたゴム押出物を搬送手段により引き取りつつ搬送し、前記ゴム押出機に内設されているスクリューの回転速度を所定値から目標値まで増速または減速する際に、押出直後の前記ゴム押出物の形態を特定する形態特定項目をセンサにより逐次測定し、前記センサによる測定値を予め設定された規格範囲内に維持するように前記搬送手段の搬送速度を変速させるゴム押出物の製造方法であって、前記回転速度を前記所定値から前記目標値まで所定の一定ピッチで複数段階で変化させ、現ロットでの前記複数段階のうちの第1段階では、以前のロットにおける前記第1段階での現ロットと同じゴム物性の前記ゴム押出物を前記形態特定項目を前記規格範囲の範囲内にして押した時の前記搬送手段の搬送速度に基づいて前記搬送手段の搬送速度を設定し、現ロットの前記第1段階の完了直後における前記測定値が前記規格範囲外の場合は、前記スクリューの回転速度を一定に維持しながら前記搬送手段の搬送速度をPID制御して変化させることにより前記測定値を前記規格範囲内して、その後、前記複数段階のうちの第2段階に進み、現ロットの前記第1段階の完了直後における前記測定値が前記規格範囲内の場合は、前記搬送速度をPID制御することなく引き続き第2段階に進み、現ロットでの前記複数段階のうちの第2段階以降では現ロットでの1段階前の段階の完了直後における前記測定値と前記規格範囲との偏差に基づいて前記搬送手段の搬送速度を前記測定値を前記規格範囲の範囲内に入れるために適切な速度になるように設定し、前記回転速度が前記目標値に到達した後は、前記測定値を前記規格範囲内に維持するように、前記回転速度を前記目標値に維持しながら前記搬送速度をPID制御することを特徴とする。
【0008】
本発明のゴム押出物の製造装置は、ゴム押出機と、このゴム押出機から押し出された直後のゴム押出物の形態を特定する形態特定項目を逐次測定するセンサと、前記ゴム押出物を引き取りつつ搬送する搬送手段とを備えて、前記ゴム押出機に内設されているスクリューの回転速度を所定値から目標値まで増速または減速する際に、前記センサによる測定値を予め設定された規格範囲内に維持するように前記搬送手段の搬送速度を変速させる制御部を有するゴム押出物の製造装置であって、前記制御部に指令を入力する演算部を有し、前記制御部により前記回転速度を前記所定値から前記目標値まで所定の一定ピッチで複数段階で変化させて、現ロットでの前記複数段階のうちの第1段階では、以前のロットにおける前記第1段階での現ロットと同じゴム物性の前記ゴム押出物を前記形態特定項目を前記規格範囲の範囲内にして押した時の前記搬送手段の搬送速度に基づいて前記演算部により前記搬送手段の搬送速度を設定し、この設定した搬送速度が前記指令として前記制御部に入力され、現ロットの前記第1段階の完了直後における前記測定値が前記規格範囲外の場合は、前記スクリューの回転速度を一定に維持しながら前記搬送手段の搬送速度をPID制御して変化させることにより前記測定値を前記規格範囲内して、その後、前記複数段階のうちの第2段階に進み、現ロットの前記第1段階の完了直後における前記測定値が前記規格範囲内の場合は、前記搬送速度をPID制御することなく引き続き第2段階に進む構成にして、現ロットでの前記複数段階のうちの第2段階以降では、現ロットでの1段階前の段階の完了直後における前記測定値と前記規定範囲との偏差に基づいて前記演算部により前記搬送手段の搬送速度を前記測定値を前記規格範囲の範囲内に入れるために適切な速度になるように設定し、この設定した搬送速度が前記指令として前記制御部に入力され、前記回転速度が前記目標値に到達した後は、前記測定値を前記規格範囲内に維持するように、前記回転速度を前記目標値に維持しながら前記搬送速度をPID制御する構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スクリューの回転速度を単純にリニアに変化させるのではなく、所定値から目標値まで所定の一定ピッチで複数段階で変化させる。そして、現ロットでの複数段階のうちの第1段階では、以前のロットにおける第1段階でのゴム押出物を押した時の搬送手段の搬送速度に基づいて、その搬送速度を設定する。したがって、現ロットと以前のロットとのゴム物性が同等であれば、ゴム押出物の形態(幅寸法、厚さ寸法および単位長さ当たりの重量の少なくとも1項目)を早期に安定化させることができる。
【0010】
一方、現ロットと以前のロットとのゴム物性が大きく変化した場合は、以前のロットにおける搬送速度を参考にしていると、ゴム押出物の形態を早期に安定させることが困難になる。そこで、現ロットでの第2段階以降では現ロットでの1段階前の段階の完了直後におけるセンサによる測定値と規格範囲との偏差に基づいて搬送速度を設定する。即ち、ロット間でゴム物性が大きく変化した場合であっても、この偏差に基づいて、ゴム押出物の形態を迅速に安定化させることが可能な現ロットのゴム物性により適した搬送速度に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のゴム押出物の製造装置を側面視で例示する説明図である。
図2図1の搬送手段で搬送されるゴム押出物を横断面視で例示する説明図である。
図3】本発明におけるスクリューの回転速度、搬送手段による搬送速度およびゴム押出物の幅寸法の測定値の経時変化を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のゴム押出物の製造方法および装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1、2に例示する本発明のゴム押出物の製造装置1(以下、製造装置1という)は、長尺の未加硫のゴム押出物Rを製造する。ゴム押出物Rは後工程において、適宜加工されてタイヤのトレッドゴムやサイドゴム等として使用される。この製造装置1は、同じ仕様のゴム押出物Rを複数ロット連続して製造することも、1つの仕様のゴム押出物Rを製造した後、異なる仕様のゴム押出物Rを製造することもある。
【0014】
製造装置1は、ゴム押出機2、制御部7、搬送手段8、センサ10および演算部11を備えている。ゴム押出物2により押し出されたゴム押出物Rは、搬送手段8により引き取られつつ下流側に搬送される。
【0015】
ゴム押出機2は、筒状のシリンダ3と、シリンダ3の内部に配置されるスクリュー4と、シリンダ2の先端に設置されるヘッド5とを備えている。ヘッド5の先端にはダイ5aが取り付けられている。ダイ5aには押出口が形成されている。
【0016】
シリンダ3の後端部には、スクリュー4を回転駆動させるスクリュー駆動モータ4aが配置されている。スクリュー4の回転速度r(回転数)は制御部7により制御される。したがって、ゴム押出物Rの押出速度は制御部7により制御される。シリンダ3の上部にはホッパ6が設けられている。ゴム押出物Rを構成する原料ゴム等は、ホッパ6を通じてシリンダ3の内部に投入される。
【0017】
搬送手段8は、ヘッド5の前方に配置されている。搬送手段8としては例えば、プーリ8b、8cと、これらプーリ8b、8c間に張設されているコンベヤベルト8aとを有するコンベヤ装置が用いられる。一方のプーリ8bがプーリ用駆動モータ9により回転駆動され、他方のプーリ8cはフリーに回転する。プーリ用駆動モータ9の回転速度は制御部7により制御される。したがって、搬送手段8による搬送速度Vは制御部7により制御される。
【0018】
センサ10は、押出直後のゴム押出物Rの形態を特定する形態特定項目を測定する。本発明において形態特定項目とは、ゴム押出物Rの幅寸法、厚さ寸法および単位長さ当たりの重量のうちの少なくとも1項目を意味する。
【0019】
このセンサ10は、ゴム押出機5と搬送手段8との間に配置されている。詳述すると、ヘッド5の直前で押出口の上方にセンサ10が配置されている。センサ10としては、例えばレーザ光を用いた非接触の距離センサ等が採用される。センサ10はこれに限らず、押出直後のゴム押出物Rを上下に挟むように配置される距離センサ等を用いることもできる。或いは、押出直後のゴム押出物Rの単位長さ当たりの重量を連続的に測定する重量計等をセンサ10として用いることもできる。センサ10による測定データは制御部7に入力される。
【0020】
この実施形態では、ゴム押出物Rの幅寸法を測定する1つのセンサ10が備わっている。複数のセンサ10が備わることもある。図2に例示するように、厚さ寸法がゴム押出物Rの幅方向で異なっているプロファイル部材に対して厚さ寸法を測定する場合は、複数のセンサ10をゴム押出物Rの幅方向に間隔をあけて並列させるとよい。これより、それぞれのセンサ10が配置された位置でのゴム押出物Rの厚さ寸法が測定できるので、ゴム押出物Rのプロファイル形状を把握できる。
【0021】
演算部11と制御部7とは有線通信または無線通信により接続されている。演算部11と制御部7との間では様々なデータや指令が送信される。演算部11では入力されたデータが記憶され、また、入力されたデータに基づいて演算が実施される。
【0022】
例えば、演算部11には、現時点で押し出しているロットにおけるスクリュー4の回転速度rのデータ、搬送手段8の搬送速度Vのデータ、センサ10による測定データが逐次入力、記憶される。演算部11には、現ロットのこれらデータだけでなく、以前のロットにおけるこれらデータも記憶されている。即ち、演算部11には製造装置1によってゴム押出物Rを製造した際の過去の実績データが蓄積されている。
【0023】
また、演算部11には、ゴム押出物Rの仕様毎に、押出直後のゴム押出物Rの形態を特定する形態特定項目(この実施形態では幅寸法)の規格範囲が記憶されている。ゴム押出物Rの形態を規格範囲Nの範囲内にするために適した回転速度rと搬送速度Vとの関係を示すデータも予め把握されて演算部11に記憶されている。
【0024】
この実施形態では、制御部7と演算部11とが分離した別体として記載しているが、両者を一体化させることもできる。例えば、各種コンピュータを制御部7および演算部11の一体物として用いることもできる。
【0025】
次に、本発明のゴム押出物の製造方法の手順の一例を説明する。
【0026】
生産ラインでこのゴム押出装置1によってゴム押出物Rを製造する際には、所定量の未加硫ゴムおよび配合剤をホッパ6を通じてゴム押出機2のシリンダ3に投入する。これら材料は回転するスクリュー4により混合、混練される。混合、混練された未加硫ゴムは、ある程度柔らかくなってダイス5aに形成された押出口から押出口の断面形状に型付けされて、未加硫のゴム押出物Rとしてシート状に押し出される。押し出されたゴム押出物Rは、搬送手段8によって引き取られて搬送される。
【0027】
本発明では図3に例示するように、スクリュー4の回転速度rを所定値から目標値まで所定の一定ピッチで複数段階で増速または減速させる。回転速度rの変化とともに、ゴム押出物Rの幅寸法のセンサ10による測定値Mを予め設定された規格範囲Nの範囲内に維持するように搬送手段8の搬送速度Vを変速させる。この実施形態では、回転速度rを所定値から目標値まで2段階で増速させている。
【0028】
押出当初からある時間が経過するまでは、スクリュー4の回転速度rを所定値に維持する。センサ10では押出直後のゴム押出物Rの幅寸法を逐次測定する。この期間では、演算部11に記憶されているデータに基づいて、搬送速度Vに対してPID制御を行う。
【0029】
その後、第1段階としてスクリュー4の回転速度rを一定の所定ピッチで増速させる。この第1段階では、以前のロットにおける第1段階でのゴム押出物Rの幅寸法を規格範囲Nの範囲内で押した時の搬送手段8の搬送速度Vに基づいて、搬送手段8の搬送速度Vを設定する。ロットが異なっていても同じゴム物性であれば、以前のロットでの搬送速度Vの正常な実績データを用いることで、幅寸法の測定値Mを規格範囲Nの範囲内に維持し易い。
【0030】
例えば、第1段階では、直前の1ロットまたは直前の複数ロットにおける第1段階でのゴム押出物Rを規格範囲Nの範囲内で押した時の搬送手段8の搬送速度Vの平均値に基づいて、演算部11により搬送手段8の搬送速度Vを演算して設定する。具体的には、直前の1ロットでの搬送速度Vや直前複数ロットでの搬送速度Vの平均値をそのまま、現ロットの搬送速度Vとして採用する。或いは、直前の1ロットでの搬送速度Vや直前複数ロットでの搬送速度Vの平均値に対して、若干の補正をした搬送速度Vを、現ロットの搬送速度Vとして採用することもできる。
【0031】
図3に例示するように、現ロットの第1段階の完了直後における測定値Mが規格範囲Nから外れた場合は、スクリュー4の回転速度rを一定に維持しながら搬送手段8の搬送速度VをPID制御して変化させる。これにより、測定値Mを規格範囲Nの範囲内に維持し、その後、第2段階に進む。現ロットの第1段階の完了直後における測定値Mが規格範囲Nの範囲内であれば、搬送速度VをPID制御することなく、引き続き第2段階に進む。
【0032】
現ロットでの第2段階では現ロットでの1段階前の段階(即ち、第1段階)の完了直後における測定値Mと規格範囲Nとの偏差に基づいて搬送手段8の搬送速度Vを設定する。即ち、演算部11では、第1段階の完了直後での回転速度rと搬送速度Vとの関係による結果(測定値M)を反映させて、測定値Mと規格範囲Nとの偏差を小さくする搬送速度Vを演算して設定する。
【0033】
この実施形態では、第1段階の完了直後における幅寸法の測定値Mが規格範囲Nよりも大きくなっている。そこで、第2段階では、回転速度rに対する搬送速度Vの比率を第1段階よりも大きくして搬送速度Vを設定し、ゴム押出物Rの幅寸法が小さくなるようにする。
【0034】
第1段階の完了直後における測定値Mが規格範囲Nの範囲内の場合は、測定値Mと規格範囲Nとの偏差がゼロになる。そこで、この偏差(ゼロ)に基づいて、例えば、第2段階では、回転速度rに対する搬送速度Vの比率を第1段階と同じに設定する。
【0035】
このように本発明では、第2段階以降において1段階前の段階での回転速度rと搬送速度Vとの関係による結果(測定値M)を反映させることによって、測定値Mを規格範囲Nの範囲内に入れるために適切な搬送速度V(回転速度rに対する搬送速度Vの比率)を演算部11で演算する。そして、演算した搬送速度Vになるように制御部7によって制御する。
【0036】
したがって、ロット間で突発的にゴム物性が大きく変化した場合であっても、ゴム押出物Rの幅寸法(ゴム押出物Rの形態)を迅速に安定化させて規格範囲Nの範囲内にすることが可能になっている。ロット間でゴム物性の変化がない場合も、勿論、ゴム押出物Rの幅寸法を迅速に安定化させて規格範囲Nの範囲内にすることができる。
【0037】
回転速度rが目標値に到達した第2段階の完了後は、回転速度rを目標値に維持しながら搬送手段8の搬送速度VをPID制御して変化させる。これにより、幅寸法の測定値Mを規格範囲Nの範囲内に維持する。
【0038】
回転速度rを所定値から目標値まで所定に一定ピッチで3段階以上で増速させる場合は、第1段階および第2段階では、上述した実施形態と同様に搬送手段8の搬送速度Vを設定する。第3段階以降も上述した第2段階と同様に、現ロットでの1段階前の段階の完了直後における測定値Mと規格範囲Nとの偏差に基づいて搬送手段8の搬送速度Vを設定する。
【0039】
スクリュー4の回転速度rを所定値から目標値まで所定の一定ピッチで複数段階で減速させる場合も、上記実施形態と同様の手順で搬送速度Vを変化させればよい。
【0040】
形態特定項目をゴム押出物Rの幅寸法ではなく、厚さ寸法、単位長さ当たりの重量にした場合はそれぞれセンサ10により、厚さ寸法、単位長さ当たりの重量を逐次測定する。そして、上述した手順で搬送速度Vを変速させて、厚さ寸法の測定値M、単位長さ当たりの重量の測定値Mを規格範囲Nの範囲内に維持するように制御する。
【符号の説明】
【0041】
1 製造装置
2 ゴム押出機
3 シリンダ
4 スクリュー
4a スクリュー駆動モータ
5 ヘッド
5a ダイス
6 ホッパ
7 制御部
8 搬送手段
8a コンベヤベルト
8b、8c プーリ
9 プーリ駆動モータ
10 センサ
11 演算部
R ゴム押出物
図1
図2
図3