特許第6772687号(P6772687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772687
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】電極積層体の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20201012BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20201012BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   !H01M10/0585
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-174705(P2016-174705)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-54813(P2017-54813A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2019年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-176592(P2015-176592)
(32)【優先日】2015年9月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
(72)【発明者】
【氏名】合田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隼人
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−011114(JP,A)
【文献】 特開2003−132935(JP,A)
【文献】 特開2004−022206(JP,A)
【文献】 特開2016−122634(JP,A)
【文献】 特開2015−103399(JP,A)
【文献】 特開平07−302616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/12
H01M 10/28
H01M 10/058
H01G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と前記第1電極とは極性が異なる第2電極とが前記第1電極及び前記第2電極よりも外形寸法が大きいセパレータを介して交互に積層されてなる電極積層体の検査方法であって、
前記電極積層体に対して前記電極積層体の積層方向にX線を照射し、前記X線の透過画像に基づいて前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方の積層ずれを検知するX線検知工程を含み、
前記第1電極は、前記セパレータに包まれており、
前記電極積層体は、前記セパレータに包まれた前記第1電極と前記第2電極とが交互に積層されてなり、
前記X線検知工程においては、前記電極積層体に対して前記電極積層体の積層方向にX線を照射し、前記X線の透過画像に基づいて前記第2電極の積層ずれを検知することを特徴とする電極積層体の検査方法。
【請求項2】
前記X線検知工程においては、前記電極積層体における前記セパレータのうち前記第2電極と重ならない領域に対応する領域全体に前記X線を照射することを特徴とする請求項記載の電極積層体の検査方法。
【請求項3】
前記X線検知工程においては、前記電極積層体における前記セパレータのうち前記第2電極と重ならない領域に対応する領域の両端部に前記X線を照射することを特徴とする請求項記載の電極積層体の検査方法。
【請求項4】
前記電極積層体の積層方向の一方側から前記電極積層体をカメラで撮像し、前記カメラの撮像画像に基づいて前記第1電極の積層ずれを検知するカメラ検知工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の電極積層体の検査方法。
【請求項5】
第1電極と前記第1電極とは極性が異なる第2電極とが前記第1電極及び前記第2電極よりも外形寸法が大きいセパレータを介して交互に積層されてなる電極積層体の検査方法であって、
前記電極積層体に対して前記電極積層体の積層方向にX線を照射し、前記X線の透過画像に基づいて前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方の積層ずれを検知するX線検知工程を含み、
前記第1電極は、前記セパレータに包まれており、
前記第2電極の外形寸法は、前記第1電極の外形寸法よりも大きくなっており、
前記電極積層体は、前記セパレータに包まれた前記第1電極と前記第2電極とが交互に積層されてなると共に、ケース内に収容されており、
前記X線検知工程においては、前記ケース内に収容された前記電極積層体に対して前記電極積層体の積層方向にX線を照射し、前記X線の透過画像に基づいて前記第1電極及び前記第2電極の積層ずれを検知することを特徴とする電極積層体の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極積層体の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置としては、電極であるシート状の正極及び負極がセパレータを介して交互に積層された積層型の電極組立体を有する装置がある。積層型の電極組立体においては、個々の正極、負極及びセパレータが正しい位置に配置されていることが重要である。例えば、正極と負極とが短絡しないように、セパレータの面積を正極又は負極の面積よりも大きくすることが知られている。電極又はセパレータのずれにより、電極がセパレータに覆われていない領域を有していると、電極の短絡の一因となる。また、正極及び負極が互いに対向していない領域を有していると、蓄電装置の容量の低下を招く。蓄電装置がリチウムイオン二次電池の場合、既知のリチウム析出の対策として、負極の面積を大きくし、正極が負極に覆われるようにすることが知られている。この場合、正極が負極に覆われない領域を有していると、リチウム析出の要因となる。このため、蓄電装置の製造工程において、電極の積層ずれの有無を検査する検査手段を設けることが提案されている。例えば特許文献1には、電極を積層する過程で電極の積層ずれの有無を検査することが記載されている。特許文献1に記載の検査方法は、極箔及びセパレータが2枚1組で一度に積み上げられると、可視光照射手段より可視光が側方から照射されて、セパレータが可視光用カメラにより撮像されると共に、赤外光照射手段より赤外光が上方から照射されて、極箔が赤外光用カメラにより撮像される。そして、可視光用カメラにより撮像された可視光画像と赤外光用カメラにより撮像された赤外光画像とに基づき、基準位置に対する位置ズレ量が演算される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−257861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層型の電極組立体は、正極、負極及びセパレータを積層して積層体を形成した後、積層体をテープ等で固定することにより組み立てられる。上記従来技術においては、極箔及びセパレータが2枚1組で積み上げられる度に、極箔及びセパレータの積層ずれの有無が検査される。しかし、正極、負極及びセパレータを積層する過程で、振動により最上部以外の極箔又はセパレータに積層ずれが生じることがある。また、正極、負極及びセパレータの積層後、テープ貼り等のような積層体の固定のための次工程に移動させる過程で、積層体の内部を含む一部の電極に積層ずれが生じることがある。上記従来技術では、正極、負極及びセパレータの積層後に発生する電極の積層ずれを検出することができない。
【0005】
本発明の目的は、電極積層体における電極の積層ずれを確実に検知することができる電極積層体の検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1電極と第1電極とは極性が異なる第2電極とが第1電極及び第2電極よりも外形寸法が大きいセパレータを介して交互に積層されてなる電極積層体の検査方法であって、電極積層体に対して電極積層体の積層方向にX線を照射し、X線の透過画像に基づいて第1電極及び第2電極の少なくとも一方の積層ずれを検知するX線検知工程を含むことを特徴とする。なお、本発明における電極積層体は、第1電極、第2電極及びセパレータが積層された積層体と、積層体がテープ等で固定された電極組立体とを含む。
【0007】
このような電極積層体の検査方法においては、第1電極及び第2電極の外形寸法がセパレータの外形寸法よりも小さいため、電極積層体の内部における第1電極及び第2電極の少なくとも一方の積層ずれを外観により確認することはできない。そこで、電極積層体に対して電極積層体の積層方向にX線を照射し、X線の透過画像に基づいて第1電極及び第2電極の少なくとも一方の積層ずれを検知する。ここで、X線は、セパレータを透過しやすいが、第1電極及び第2電極を透過しにくい。このため、第1電極及び第2電極の積層ずれの有無によってX線の透過画像の濃度が異なる。従って、X線の透過画像から第1電極及び第2電極の少なくとも一方の積層ずれの有無が分かる。これにより、電極積層体における第1電極及び第2電極の少なくとも一方の積層ずれを確実に検知することができる。
【0008】
第1電極は、セパレータに包まれており、電極積層体は、セパレータに包まれた第1電極と第2電極とが交互に積層されてなり、X線検知工程においては、電極積層体に対して電極積層体の積層方向にX線を照射し、X線の透過画像に基づいて第2電極の積層ずれを検知してもよい。セパレータの外形寸法は第2電極の外形寸法よりも大きいため、セパレータに包まれた第1電極の積層ずれを外観により確認することができるが、電極積層体の内部における第2電極の積層ずれを外観により確認することはできない。従って、電極積層体に対してX線を照射することにより、電極積層体における第2電極の積層ずれを確実に検知することができる。
【0009】
X線検知工程においては、電極積層体におけるセパレータのうち第2電極と重ならない領域に対応する領域全体にX線を照射してもよい。この場合には、第2電極の積層ずれの状態を正確に検知することができる。
【0010】
X線検知工程においては、電極積層体におけるセパレータのうち第2電極と重ならない領域に対応する領域の両端部にX線を照射してもよい。この場合には、X線の照射領域を狭くしても、第2電極の積層ずれを検知することができる。
【0011】
また、電極積層体の積層方向の一方側から電極積層体をカメラで撮像し、カメラの撮像画像に基づいて第1電極の積層ずれを検知するカメラ検知工程を更に含んでもよい。上述したように、セパレータに包まれた第1電極の積層ずれを外観により確認することができる。従って、電極積層体をカメラで撮像することにより、電極積層体における第1電極の積層ずれを確実に検知することができる。
【0012】
また、第1電極は、セパレータに包まれており、第2電極の外形寸法は、第1電極の外形寸法よりも大きくなっており、電極積層体は、セパレータに包まれた第1電極と第2電極とが交互に積層されてなると共に、ケース内に収容されており、X線検知工程においては、ケース内に収容された電極積層体に対して電極積層体の積層方向にX線を照射し、X線の透過画像に基づいて第1電極及び第2電極の積層ずれを検知してもよい。この場合には、電極積層体がケース内に収容されている状態でも、電極積層体における第1電極及び第2電極の積層ずれを確実に検知することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電極積層体における電極の積層ずれを確実に検知することができる電極積層体の検査方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る電極積層体の検査方法を適用して製造される蓄電装置の内部構成を示す断面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図2に示されたセパレータ付き正極及び負極の平面図である。
図4図3に示されたセパレータ付き正極及び負極を積層する積層工程において使用される電極積層装置を示す概略構成図である。
図5】本発明の一実施形態に係る電極積層体の検査方法を実施する際に使用される電極検査装置を示す概略構成図である。
図6図3に示されたセパレータ付き正極の積層ずれを検知する概念を示す平面図である。
図7図3に示された負極の積層ずれが発生していない状態及び発生している状態を示す平面図である。
図8図3に示された負極の積層ずれが発生している他の状態を示す平面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る電極積層体の検査方法を実施する際に使用される電極検査装置を示す概略構成図である。
図10図3に示されたセパレータ付き正極及び負極の積層ずれが発生している状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る電極積層体の検査方法を適用して製造される蓄電装置の内部構成を示す断面図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図1及び図2において、蓄電装置1は、積層型の電極組立体を有するリチウムイオン二次電池である。
【0017】
蓄電装置1は、例えば略直方体形状をなすケース2と、このケース2内に収容された電極組立体3とを備えている。ケース2は、開口部を有する筐体2aと、この筐体2aの開口部を塞ぐように筐体2aに溶接された蓋体2bとを有している。電極組立体3は、筐体2a内に配置されている。ケース2は、例えばアルミニウム等の金属により形成されている。ケース2の筐体2aの内部には、例えば非水系(有機溶媒系)の電解液(図示せず)が注液されている。ケース2の蓋体2b上には、正極端子4及び負極端子5が互いに離間して配置されている。正極端子4は、絶縁リング6を介して蓋体2bに固定され、負極端子5は、絶縁リング7を介して蓋体2bに固定されている。
【0018】
電極組立体3は、複数の正極8と複数の負極9とが袋状のセパレータ10を介して交互に積層された構造を有している。正極8は第1電極である。負極9は、第1電極とは極性が異なる第2電極である。正極8は、袋状のセパレータ10に包まれている。袋状のセパレータ10に包まれた状態の正極8は、セパレータ付き正極11として構成されている。従って、電極組立体3は、複数のセパレータ付き正極11と複数の負極9とが交互に積層された構造を有している。また、電極組立体3は、絶縁フィルム(図示せず)で覆われた状態で、ケース2内に収容されている。
【0019】
セパレータ10は、図3(a)に示されるように、平面視矩形状を呈している。セパレータ10の横幅(図示X方向の幅)は、セパレータ10の縦幅(図示Y方向の幅)よりも大きい。正極8は、図3(a)に示されるように、平面視矩形状の正極本体8aと、この正極本体8aと一体化されたタブ8bとを有している。正極8の外形寸法は、セパレータ10の外形寸法よりも小さい。具体的には、正極本体8aの横幅は、正極本体8aの縦幅よりも大きい。正極本体8aの横幅は、セパレータ10の横幅よりも小さく、正極本体8aの縦幅は、セパレータ10の縦幅よりも小さい。タブ8bは、正極本体8aにおける横方向(長手方向)の一端部近傍の縁から突出して、セパレータ10を突き抜けている。タブ8bは、図1に示されるように、導電部材12を介して正極端子4に接続されている。
【0020】
負極9は、図3(b)に示されるように、平面視矩形状の負極本体9aと、この負極本体9aと一体化されたタブ9bとを有している。負極本体9aの横幅は、負極本体9aの縦幅よりも大きい。負極9の外形寸法は、正極8の外形寸法よりも大きく、セパレータ10の外形寸法よりも小さい。具体的には、負極本体9aの横幅は、セパレータ10の横幅と等しく、正極本体8aの横幅よりも大きい。負極本体9aの縦幅は、セパレータ10の縦幅よりも小さく、正極本体8aの縦幅よりも大きい。タブ9bは、負極本体9aにおける横方向(長手方向)の他端部(タブ8bとは反対側の端部)近傍の縁から突出している。タブ9bは、図1に示されるように、導電部材13を介して負極端子5に接続されている。
【0021】
なお、セパレータ10、正極8及び負極9の形状としては、特に上記の形状には限られず、例えば縦横の大小関係が逆であってもよい。また、負極9の外形寸法は、正極8の外形寸法と同等であってもよい。
【0022】
正極8は、図2に示されるように、例えばアルミニウム箔からなる金属箔14と、この金属箔14の両面に形成された正極活物質層15とを有している。正極活物質層15は、金属箔14における正極本体8aのタブ8b側の縁部及びタブ8bを除いた領域に形成されている。なお、図2では、便宜上タブ8bを省略している。正極活物質層15は、正極活物質とバインダとを含んで形成された多孔質の層である。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウムまたは硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとが含まれる。
【0023】
負極9は、図2に示されるように、例えば銅箔からなる金属箔16と、この金属箔16の両面に形成された負極活物質層17とを有している。負極活物質層17は、金属箔16における負極本体9aのタブ9b側の縁部及びタブ9bを除いた領域に形成されている。なお、図2では、便宜上タブ9bを省略している。負極活物質層17は、負極活物質とバインダとを含んで形成された多孔質の層である。負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物またはホウ素添加炭素等が挙げられる。
【0024】
セパレータ10の形成材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、或いはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布または不織布等が例示される。
【0025】
以上のように構成された蓄電装置1を製造する際には、まずセパレータ付き正極11及び負極9を作製した後、セパレータ付き正極11と負極9とを積層する。その後、積層されたセパレータ付き正極11及び負極9を複数のテープ50(図1参照)で固定して一体化することで、電極組立体3を得る。そして、電極組立体3をケース2内に収容した状態で、正極8のタブ8bを導電部材12を介して正極端子4に接続すると共に、負極9のタブ9bを導電部材13を介して負極端子5に接続する。
【0026】
本発明の電極積層体の検査方法は、電極及びセパレータを積層した後の積層体、及び積層体をテープ等で固定して一体化した電極組立体のいずれにも適用可能であるが、以下に詳述する一実施形態では、セパレータ付き正極11と負極9とを積層する積層工程を実施することにより得られる積層体に対して行われる。積層工程では、図4に示されるような電極積層装置18を用いてセパレータ付き正極11と負極9とを積層することで、積層体19が得られる。
【0027】
電極積層装置18は、搬送路20と、この搬送路20の下方に配置された積層部21と、搬送路20と積層部21との間に配置されたスライダ22とを備えている。搬送路20は、例えばベルトコンベアである。搬送路20は、セパレータ付き正極11及び負極9を水平方向に沿って搬送する。
【0028】
積層部21は、積層台23と、この積層台23の上面に立設された断面U字状の位置決め壁部24とを有している。積層台23には、セパレータ付き正極11及び負極9が積層される。積層台23は、後側(スライダ22側)が高く、前側(スライダ22の反対側)が低くなるように傾斜して配置されている。位置決め壁部24は、セパレータ付き正極11及び負極9の底縁(タブ8b,9bの反対側の縁)に接触して、セパレータ付き正極11及び負極9の縦方向(搬送方向)の位置を揃えると共に、セパレータ付き正極11及び負極9の側縁に接触して、セパレータ付き正極11及び負極9の横方向(搬送方向と直交する方向)の位置を揃える。
【0029】
スライダ22は、搬送路20により搬送されたセパレータ付き正極11及び負極9を積層部21に向けて滑走させることで、セパレータ付き正極11及び負極9を積層部21に落下させるように案内する。なお、そのようなスライダ22を使用せずに、搬送路20により搬送されたセパレータ付き正極11及び負極9を積層部21に直接落下させてもよい。
【0030】
このような電極積層装置18を用いてセパレータ付き正極11と負極9とを積層部21に積層するときは、まず搬送路20によりセパレータ付き正極11及び負極9を交互に所定間隔を空けて搬送する。このとき、セパレータ付き正極11のタブ8b及び負極9のタブ9bを搬送路20の上流側に向けた状態で、セパレータ付き正極11及び負極9が搬送される。そして、搬送されたセパレータ付き正極11及び負極9は、スライダ22を滑走して積層部21に落下し、積層部21の積層台23に積層される。これにより、セパレータ付き正極11と負極9とが交互に積層された積層体19が得られる。
【0031】
なお、電極積層手段の一例として電極積層装置18を記載したが、電極積層手段としては、特にそれには限定されない。例えば、電極積層手段として前述の如く落下を利用する場合は、セパレータ付き正極11と負極9とを別々の搬送路より積層部に落下させて積層してもよい。また、電極積層手段としては、例えば吸着装置を備えたロボットハンドにより順次積層を行う、いわゆるP&P(ピック・アンド・プレース)方式を用いてもよい。
【0032】
その後、本発明の一実施形態に係る積層体19の検査方法が実施される。積層体19の検査方法は、図5に示されるような電極検査装置25を用いて行われる。電極検査装置25は、積層体19におけるセパレータ付き正極11及び負極9の積層ずれが発生しているかどうかを検査する。なお、積層体19は、電極積層体を構成している。
【0033】
図5は、本発明の一実施形態に係る電極積層体の検査方法を実施する際に使用される電極検査装置を示す概略構成図である。図5において、電極検査装置25は、カメラ26と、X線照射器27と、X線検出器28と、コントローラ29と、表示器30とを有している。
【0034】
カメラ26は、積層体19の積層方向の一方側に配置される。カメラ26は、積層体19の積層方向の一方側から積層体19を全体的に撮像し、その撮像画像をコントローラ29に送出する。
【0035】
X線照射器27は、積層体19の積層方向の一方側(カメラ26と同じ側)に配置される。X線照射器27は、積層体19に対して積層体19の積層方向にX線を照射する。具体的には、X線照射器27は、積層体19におけるセパレータ10のうち負極9と重ならない領域(図6中の領域A)に対応する領域全体を含むように、積層体19に全体的にX線を照射する。なお、セパレータ10のうち負極9と重ならない領域とは、負極9の積層ずれが発生していない状態においてセパレータ10のうち負極9と重ならない領域のことである。
【0036】
X線検出器28は、積層体19の積層方向の他方側に配置される。つまり、X線検出器28は、積層体19を挟んでX線照射器27の反対側に配置される。X線検出器28は、X線照射器27から照射されたX線を透過画像として検出し、その透過画像をコントローラ29に送出する。
【0037】
コントローラ29は、カメラ26の撮像画像とX線検出器28により検出されたX線の透過画像とに基づいて、セパレータ付き正極11及び負極9の積層ずれを検知する。コントローラ29は、セパレータ付き正極11及び負極9の積層ずれが発生していると判断したときは、その旨を表示器30に表示させる。
【0038】
コントローラ29は、正極積層ずれ検知部31と、負極積層ずれ検知部32とを有している。正極積層ずれ検知部31は、カメラ26の撮像画像に基づいてセパレータ付き正極11(セパレータ10に包まれた正極8)の積層ずれを検知する。
【0039】
上述したように、セパレータ付き正極11のセパレータ10の縦幅は、負極9の負極本体9aの縦幅よりも大きい。このため、セパレータ付き正極11の積層ずれを外観により確認することができる。
【0040】
そこで、正極積層ずれ検知部31は、カメラ26の撮像画像からセパレータ10の縦幅W(図6参照)を測定し、その測定値が予め決まっている縦幅正規値よりも大きいときに、セパレータ付き正極11の積層ずれが発生していると判断する。
【0041】
負極積層ずれ検知部32は、X線検出器28により検出されたX線の透過画像に基づいて負極9の積層ずれを検知する。
【0042】
上述したように、負極9の負極本体9aの縦幅は、セパレータ付き正極11のセパレータ10の縦幅よりも小さい。このため、積層体19の内部における負極9の積層ずれを外観により確認することはできない。従って、カメラ26によって負極9の積層ずれを検知することはできない。
【0043】
他方、負極9の負極本体9aの縦幅は、正極8の正極本体8aの縦幅よりも大きい。このため、正極8の積層ずれが発生していない状態において、負極本体9aのタブ9b側の縁部が正極本体8aに覆われることはない。
【0044】
また、X線照射器27から照射されるX線は、セパレータ10を透過しやすいが、負極9を透過しにくい。このため、図7(a)に示されるように、積層体19の内部における負極9の積層ずれが発生していない場合には、X線の透過画像において、負極9に対応する領域Pとセパレータ10に対応する領域Qとで濃度が異なる。例えば、負極9に対応する領域Pは濃く写り、セパレータ10に対応する領域Qは写らないか、若しくは薄く写る場合がある。一方、図7(b)に示されるように、積層体19の内部における負極9の積層ずれが発生している場合には、X線の透過画像において、負極9の積層ずれが発生している領域Rの濃度は、負極9に対応する領域Pの濃度とセパレータ10に対応する領域Qの濃度との中間程度となる。
【0045】
そこで、負極積層ずれ検知部32は、X線検出器28により検出されたX線の透過画像において、負極9に対応する領域Pの濃度とセパレータ10に対応する領域Qの濃度との中間程度である濃度の領域Rが存在するときは、積層体19の内部における負極9の積層ずれが発生していると判断する。
【0046】
以上において、X線照射器27、X線検出器28及びコントローラ29の負極積層ずれ検知部32によって、負極9の積層ずれを検知するX線検知工程が実施される。カメラ26及びコントローラ29の正極積層ずれ検知部31によって、セパレータ付き正極11の積層ずれを検知するカメラ検知工程が実施される。
【0047】
以上のように本実施形態によれば、積層体19に対して積層体19の積層方向にX線を照射し、X線の透過画像に基づいて負極9の積層ずれを検知する。ここで、X線は、セパレータ10を透過しやすいが、負極9を透過しにくい。このため、負極9の積層ずれの有無によってX線の透過画像の濃度が異なる。従って、X線の透過画像から負極9の積層ずれの有無が分かる。これにより、セパレータ付き正極11と負極9とが交互に積層されてなる積層体19における負極9の積層ずれを確実に検知することができる。また、積層ずれを生じた負極9は、積層方向の位置に依存しないので、積層体19の積層方向内側で積層ずれを生じている場合も、支障無く検知することができる。
【0048】
このとき、積層体19におけるセパレータ10のうち負極9と重ならない領域に対応する領域全体にX線を照射するので、負極9の積層ずれの発生状態、例えば負極9がセパレータ付き正極11に対して長手方向に沿って均等にずれている状態(図7(b)参照)、或いは負極9がセパレータ付き正極11に対して斜めに曲がってずれている状態(図8参照)等を正確に検知することができる。
【0049】
また、積層体19の積層方向の一方側から積層体19をカメラ26で撮像し、カメラ26の撮像画像に基づいてセパレータ付き正極11(セパレータ10に包まれた正極8)の積層ずれを検知するので、積層体19におけるセパレータ付き正極11の積層ずれを確実に検知することができる。
【0050】
以上により、電極組立体3におけるセパレータ付き正極11または負極9の積層ずれを防止することができる。その結果、蓄電装置1の電池容量を向上させることが可能となる。また、リチウムの析出及び電極間の短絡を防止することが可能となる。
【0051】
なお、本実施形態では、積層体19に全体的にX線を照射しているが、特にその形態には限られず、積層体19におけるセパレータ10のうち負極9と重ならない領域(図6中の領域A)に対応する領域全体にX線を照射すれば、積層体19に全体的にX線を照射しなくてもよい。
【0052】
また、図8に示されるように、負極9がセパレータ付き正極11に対して斜めに曲がってずれている状態では、負極9の長手方向一端部の積層ずれ量が負極9の長手方向他端部の積層ずれ量よりも大きくなる。従って、積層体19におけるセパレータ10のうち負極9と重ならない領域に対応する領域の両端部にX線を照射してもよい。この場合には、X線の照射領域を狭くしても、負極9の積層ずれを検知することができる。
【0053】
また、本実施形態では、電極積層体の検査を、セパレータ付き正極11及び負極9を積層して積層体19とした後に行っているが、より先の工程、具体的には積層体19をテープ50(図1参照)等で固定して電極組立体3とした後、電極組立体3をケース2に収容する迄に行ってもよい。本実施形態では、セパレータ付き正極11及び負極9の積層時に積層体19の内部で生じた積層ずれを検知するため、積層体19を次工程に送ること無く、該当する積層体19を取り除くことができる。一方で、積層体19をテープ50等で固定して電極組立体3とした後に検査を行う場合には、固定作業時等において発生した積層ずれも検知することができる。
【0054】
図9は、本発明の他の実施形態に係る電極積層体の検査方法を実施する際に使用される電極検査装置を示す概略構成図である。図9において、電極検査装置40は、電極組立体3をケース2内に収容した後に、電極組立体3におけるセパレータ付き正極11及び負極9の積層ずれが発生しているかどうかを検査する。なお、電極組立体3も、電極積層体を構成している。図9では、テープ50(図1参照)は省略している。
【0055】
電極検査装置40は、上記のX線照射器27と、上記のX線検出器28と、コントローラ41と、上記の表示器30とを有している。電極組立体3はケース2内に収容されているため、セパレータ付き正極11の積層ずれを外観により確認することができない。このため、電極検査装置40は、上記のカメラ26を有していない。
【0056】
X線照射器27は、ケース2内に収容された電極組立体3に対して電極組立体3の積層方向にX線を照射する。このとき、X線照射器27は、上記の実施形態と同様に、電極組立体3に全体的にX線を照射してもよいし、或いは電極組立体3におけるセパレータ10のうち負極9と重ならない領域(図6中の領域A)に対応する領域全体にX線を照射してもよい。
【0057】
コントローラ41は、正極積層ずれ検知部42と、負極積層ずれ検知部43とを有している。正極積層ずれ検知部42は、X線検出器28により検出されたX線の透過画像に基づいてセパレータ付き正極11(セパレータ10に包まれた正極8)の積層ずれを検知する。
【0058】
上述したように、正極8の正極本体8aの横幅は、負極9の負極本体9aの横幅よりも小さい。このため、図10(a)に示されるように、電極組立体3の内部におけるセパレータ付き正極11の積層ずれが発生しても、正極8がセパレータ付き正極11の長手方向両端部まで延びることはなく、積層ずれが発生したセパレータ付き正極11の長手方向両端部はセパレータ10となる。
【0059】
また、X線照射器27から照射されるX線は、セパレータ10を透過しやすいが、正極8を透過しにくい。このため、電極組立体3の内部における正極8の積層ずれが発生していない場合には、X線の透過画像において、正極8に対応する領域Oとセパレータ10に対応する領域Qとで濃度が異なる。例えば、正極8に対応する領域Oは濃く写り、セパレータ10に対応する領域Qは写らないか、若しくは薄く写る場合がある。一方、電極組立体3の内部における正極8の積層ずれが発生している場合には、X線の透過画像において、正極8の積層ずれが発生している領域Sの濃度は、正極8に対応する領域Oの濃度とセパレータ10に対応する領域Qの濃度との中間程度となる。
【0060】
そこで、正極積層ずれ検知部42は、X線検出器28により検出されたX線の透過画像において、正極8に対応する領域Oの濃度とセパレータ10に対応する領域Qの濃度との中間程度である濃度の領域Sがセパレータ付き正極11の長手方向両端部を除く部分に存在するときは、電極組立体3の内部におけるセパレータ付き正極11の積層ずれが発生していると判断する。
【0061】
負極積層ずれ検知部43は、X線検出器28により検出されたX線の透過画像に基づいて負極9の積層ずれを検知する。上述したように、負極9の負極本体9aの横幅は、セパレータ10の横幅と等しい。このため、図10(b)に示されるように、電極組立体3の内部における負極9の積層ずれが発生している場合には、負極9の長手方向一端部から長手方向他端部まで負極9の長手方向全体にわたって負極9がずれることになる。
【0062】
そこで、負極積層ずれ検知部43は、X線検出器28により検出されたX線の透過画像において、負極9に対応する領域Pの濃度とセパレータ10に対応する領域Qの濃度との中間程度であるの濃度の領域Rが負極9の長手方向全体にわたって存在するときは、電極組立体3の内部における負極9の積層ずれが発生していると判断する。
【0063】
以上において、X線照射器27、X線検出器28及びコントローラ41によって、セパレータ付き正極11及び負極9の積層ずれを検知するX線検知工程が実施される。
【0064】
このような本実施形態においては、電極組立体3がケース2内に収容されている状態でも、電極組立体3におけるセパレータ付き正極11及び負極9の積層ずれを確実に検知することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、正極8が袋状のセパレータ10に包まれた状態であるセパレータ付き正極11と負極9とが交互に積層されてなる積層体19又は電極組立体3において、セパレータ付き正極11及び負極9の積層ずれを検知しているが、本発明は、正極と負極が袋状のセパレータに包まれた状態であるセパレータ付き負極とが交互に積層されてなる積層体又は電極組立体の検査にも適用可能である。この場合、例えば正極の外形寸法は、負極の外形寸法と同等であるか、或いは負極の外形寸法よりも大きく設定される。ただし、リチウム析出を抑制するため、負極活物質層は正極活物質層より大きく設定され、積層状態において正極活物質層が負極活物質層で覆われることが好ましい。従って、正極の外形寸法が大きい場合、正極本体には、正極活物質層の外周に金属箔が露出する未塗工部が存在する。
【0066】
また、本発明は、正極と負極とがシート状のセパレータを介して交互に積層されてなる積層体又は電極組立体の検査にも適用可能である。このとき、セパレータの外形寸法は、正極及び負極の外形寸法よりも大きく設定される。この場合には、積層体又は電極組立体に対してX線を照射し、X線の透過画像に基づいて正極及び負極の少なくとも一方の積層ずれを検知する。
【0067】
また、上記実施形態では、蓄電装置1において、電極組立体3が金属製のケース2内に収容されているが、蓄電装置の外装体の構成については、特に限定されない。例えば、外装としてのラミネートフィルムに、積層型の電極組立体が収容されてもよい。本発明は、積層型の電極組立体を有する蓄電装置であれば適用可能である。
【0068】
さらに、上記実施形態では、蓄電装置1がリチウムイオン二次電池であるが、本発明は、特にリチウムイオン二次電池には限られず、例えばニッケル水素電池等の他の二次電池、電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタ等の蓄電装置の製造工程における積層体又は電極組立体の検査にも適用可能である。例えば、他の蓄電装置であって、短絡を防止する手段として、セパレータの外形寸法が正極及び負極の外形寸法よりも大きく設定されている場合も、積層体又は電極組立体の内部における電極の積層ずれを検知することができないので、本発明が有効である。なお、電極とは別個にシート状のセパレータを用い、正極及び負極の外形寸法がセパレータの外形寸法より小さい場合の積層手段・方法としては、例えば吸着装置を備えたロボットハンドにより順次積層を行う、いわゆるP&P(ピック・アンド・プレース)方式で積層を行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
3…電極組立体(電極積層体)、8…正極(第1電極)、9…負極(第2電極)、10…セパレータ、11…セパレータ付き正極、19…積層体(電極積層体)、25…電極検査装置、26…カメラ、27…X線照射器、28…X線検出器、29…コントローラ、31…正極積層ずれ検知部、32…負極積層ずれ検知部、40…電極検査装置、41…コントローラ、42…正極積層ずれ検知部、43…負極積層ずれ検知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10