特許第6772717号(P6772717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6772717画像処理装置、および、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772717
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】画像処理装置、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/405 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   H04N1/405
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-184947(P2016-184947)
(22)【出願日】2016年9月22日
(65)【公開番号】特開2018-50206(P2018-50206A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】特許業務法人鳳国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康成
【審査官】 野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−307756(JP,A)
【文献】 特開2006−186752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40−1/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置のための画像処理装置であって、
複数個の画素を含む元画像を表す元画像データであって前記複数個の画素の濃度を画素ごとに示す前記元画像データを取得する画像データ取得部と、
前記複数個の画素のうちの注目画素が特定のエッジ画素であるか否かを判定する第1の判定部であって、前記エッジ画素は、背景を構成するとともに、前記背景より濃度が低いオブジェクトとの間のエッジを構成する画素である、前記第1の判定部と、
前記注目画素の濃度と、前記注目画素に分配された誤差値と、を用いて、誤差拡散法の第1のドット形成条件が満たされるか否かを判定する第2の判定部と、
前記注目画素のドットの形成状態を示すドット値を決定するドット値決定部であって、
前記注目画素が前記エッジ画素でなく、かつ、前記第1のドット形成条件が満たされる場合に、前記ドット値を、第1のドットの形成を示す値に決定し、
前記注目画素が前記エッジ画素であることを含む第2のドット形成条件が満たされる場合に、前記ドット値を、第2のドットの形成を示す値に決定する、
前記ドット値決定部と、
未処理の画素に分配すべき分配誤差値を決定する誤差決定部であって、
前記注目画素が前記エッジ画素でなく、かつ、前記第1のドット形成条件が満たされる場合に、前記分配誤差値を、前記第1のドットの濃度に対応する値に決定し、
前記第2のドット形成条件が満たされる場合に、前記分配誤差値を、前記第2のドットの濃度に対応する値より小さな値に決定する、
前記誤差決定部と、
前記複数個の画素のそれぞれを前記注目画素として決定される前記複数個の画素の前記ドット値を含む印刷データを生成する印刷データ生成部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記誤差決定部は、前記第2のドット形成条件が満たされる場合に、前記分配誤差値を前記注目画素の濃度を有する仮想的なドットの濃度に対応する値に決定する、画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置であって、
前記印刷装置は、第1種のドットと、前記第1種のドットより小さな第2種のドットと、を形成可能であり、
前記ドット値決定部は、前記注目画素が前記エッジ画素であり、かつ、前記注目画素の濃度が、前記第1種のドットの濃度以上である場合に、前記第2のドット形成条件が満たされるとして、前記ドット値を、前記第2のドットとしての前記第2種のドットの形成を示す値に決定する、画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置であって、
前記誤差決定部は、前記注目画素が前記エッジ画素であり、かつ、前記注目画素の濃度が、前記第1種のドットの濃度以上である場合に、前記第2のドット形成条件が満たされるとして、前記分配誤差値を、前記第1種のドットの濃度に対応する値以下の値に決定する、画像処理装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の画像処理装置であって、
前記印刷装置は、さらに、前記第2種のドットより小さな第3種のドットを形成可能であり、
前記ドット値決定部は、前記注目画素が前記エッジ画素であり、かつ、前記注目画素の濃度が、前記第1種のドットの濃度未満で前記第2種のドットの濃度以上である場合に、前記第2のドット形成条件が満たされるとして、前記ドット値を、前記第2のドットとしての前記第3種のドットの形成を示す値に決定する、画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、
前記第3種のドットは、前記印刷装置が形成可能な最小のドットであり、
前記ドット値決定部は、前記注目画素が前記エッジ画素であり、かつ、前記注目画素の濃度が、前記第2種のドットの濃度未満で前記第3種のドットの濃度以上である場合に、前記第2のドット形成条件が満たされるとして、前記ドット値を、前記第3種のドットの形成を示す値に決定する、画像処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理装置であって、
前記ドット値決定部は、前記注目画素が前記エッジ画素であり、かつ、前記注目画素の濃度が、前記第3種のドットの濃度未満で、前記第3種のドットの濃度より小さな特定濃度以上である場合であるのドット形成条件が満たされるには、前記ドット値を、前記第3種のドットの形成を示す値に決定する、画像処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像処理装置であって、
前記誤差決定部は、前記第3のドット形成条件が満たされる場合に、前記分配誤差値を、前記第3種のドットの濃度に対応する値より大きな値に決定する、画像処理装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の画像処理装置であって、
前記印刷装置は、第1種のドットと、前記第1種のドットより小さな第2種のドットと、を形成可能であり、
前記第2の判定部は、
第1の閾値を用いて、前記第1種のドットの前記第1のドット形成条件が満たされるか否かを判断し、
前記第1の閾値より小さな第2の閾値を用いて、前記第2種のドットの前記第1のドット形成条件が満たされるか否かを判断し、
前記ドット値決定部は、
前記注目画素が前記エッジ画素でなく、かつ、前記第1のドットの前記第1のドット形成条件が満たされる場合に、前記ドット値を、前記第1のドットとしての前記第1種のドットの形成を示す値に決定し、
前記注目画素が前記エッジ画素でなく、かつ、前記第2種のドットの前記第1のドット形成条件が満たされる場合に、前記ドット値を、前記第1のドットとしての前記第2種のドットの形成を示す値に決定し、
前記注目画素が前記エッジ画素であり、かつ、前記注目画素の濃度が、第3の閾値以上である場合に、前記ドット値を、前記第2のドットとしての前記第1種のドットの形成を示す値に決定し、
前記注目画素が前記エッジ画素であり、かつ、前記注目画素の濃度が、前記第3の閾値未満で、前記第3の閾値より小さな第4の閾値以上である場合に、前記ドット値を、前記第2のドットとしての前記第2種のドットの形成を示す値に決定する、画像処理装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記ドット値決定部は、前記注目画素が前記エッジ画素である場合に、前記注目画素が前記第1のドット形成条件を満たすか否かに関わらず、前記注目画素の濃度に基づいて、前記第2のドット形成条件が満たされるか否かを判断する、画像処理装置。
【請求項11】
印刷装置のためのコンピュータプログラムであって、
複数個の画素を含む元画像を表す元画像データであって前記複数個の画素の濃度を画素ごとに示す前記元画像データを取得する画像データ取得機能と、
前記複数個の画素のうちの注目画素が特定のエッジ画素であるか否かを判定する第1の判定機能であって、前記エッジ画素は、背景を構成するとともに、前記背景より濃度が低いオブジェクトとの間のエッジを構成する画素である、前記第1の判定機能と、
前記注目画素の濃度と、前記注目画素に分配された誤差値と、を用いて、誤差拡散法の第1のドット形成条件が満たされるか否かを判定する第2の判定機能と、
前記注目画素のドットの形成状態を示すドット値を決定するドット値決定機能であって、
前記注目画素が前記エッジ画素でなく、かつ、前記第1のドット形成条件が満たされる場合に、前記ドット値を、第1のドットの形成を示す値に決定し、
前記注目画素が前記エッジ画素であることを含む第2のドット形成条件が満たされる場合に、前記ドット値を、第2のドットの形成を示す値に決定する、
前記ドット値決定機能と、
未処理の画素に分配すべき分配誤差値を決定する誤差決定機能であって、
前記注目画素が前記エッジ画素でなく、かつ、前記第1のドット形成条件が満たされる場合に、前記分配誤差値を、前記第1のドットの濃度に対応する値に決定し、
前記第2のドット形成条件が満たされる場合に、前記分配誤差値を、前記第2のドットの濃度に対応する値より小さな値に決定する、
前記誤差決定機能と、
前記複数個の画素のそれぞれを前記注目画素として決定される前記複数個の画素の前記ドット値を含む印刷データを生成する印刷データ生成機能と、
をコンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、印刷のための画像処理に関し、特に、ドットの形成状態を示すドット値を画素ごとに決定する処理に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された画像処理では、黒ドット(印字ドット)と非印字ドットで表される画像において、黒ドットに囲まれた非印字ドット(白抜き部分)が存在する場合に、白抜き部分の上下に位置する黒ドットを通常より小さなドットに変更する。これによって、印刷される画像において、白抜き部分が狭く形成されることがなくなると、されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−138832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、複数個の画素の濃度を示す元画像データから、ドットの形成状態を示すドット値を決定する段階については、十分に考慮されていない。このために、上記技術では、元画像データから、ドットの形成状態を示すドット値を決定する段階で、印刷画像において、元画像の特定画素に対応する領域が狭くなる場合があった。このために、印刷画像の画質が低下する可能性があった。
【0005】
本明細書は、元画像データから、ドットの形成状態を示すドット値を決定する段階で、印刷画像において、元画像の特定画素に対応する領域が狭くなることを抑制できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]印刷装置のための画像処理装置であって、複数個の画素を含む元画像を表す元画像データであって前記複数個の画素の濃度を画素ごとに示す前記元画像データを取得する画像データ取得部と、前記複数個の画素のうちの注目画素が特定のエッジ画素であるか否かを判定する第1の判定部であって、前記エッジ画素は、背景を構成するとともに、前記背景より濃度が低いオブジェクトとの間のエッジを構成する画素である、前記第1の判定部と、前記注目画素の濃度と、前記注目画素に分配された誤差値と、を用いて、誤差拡散法の第1のドット形成条件が満たされるか否かを判定する第2の判定部と、前記注目画素のドットの形成状態を示すドット値を決定するドット値決定部であって、前記注目画素が前記エッジ画素でなく、かつ、前記第1のドット形成条件が満たされる場合に、前記ドット値を、第1のドットの形成を示す値に決定し、前記注目画素が前記エッジ画素であることを含む第2のドット形成条件が満たされる場合に、前記ドット値を、第2のドットの形成を示す値に決定する、前記ドット値決定部と、未処理の画素に分配すべき分配誤差値を決定する誤差決定部であって、前記注目画素が前記エッジ画素でなく、かつ、前記第1のドット形成条件が満たされる場合に、前記分配誤差値を、前記第1のドットの濃度に対応する値に決定し、前記第2のドット形成条件が満たされる場合に、前記分配誤差値を、前記第2のドットの濃度に対応する値より小さな値に決定する、前記誤差決定部と、前記複数個の画素のそれぞれを前記注目画素として決定される前記複数個の画素の前記ドット値を含む印刷データを生成する印刷データ生成部と、を備える、画像処理装置。
【0008】
上記構成によれば、注目画素が特定のエッジ画素でなく、かつ、誤差拡散法の第1のドット形成条件が満たされる場合には、ドット値は、第1のドットの形成を示す値に決定され、分配誤差値は第1のドットの濃度に対応する値に決定される。注目画素が特定のエッジ画素であることを含む第2のドット形成条件が満たされる場合には、ドット値は、第2のドットの形成を示す値に決定され、分配誤差値は、第2のドットの濃度に対応する値より小さな値に決定される。この結果、背景より濃度が低いオブジェクトとの間のエッジを構成する特定のエッジ画素から分配される分配誤差値が比較的小さくなるので、印刷画像において、特定のエッジ画素に対応する位置の近傍にドットが形成され難くなる。この結果、ドットの形成状態を示すドット値を決定する段階で、印刷画像において、元画像の特定画素に対応する領域が狭くなることを抑制できる。
【0009】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷装置、端末装置、サーバ、これら装置の機能を実現するための方法、コンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】印刷システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1実施例の印刷処理のフローチャートである。
図3】誤差拡散処理のフローチャートである。
図4】誤差拡散処理の説明図である。
図5】誤差マトリクスMTの一例およびフィルタ群FGの一例を示す図である。
図6】通常処理のフローチャートである。
図7】第1実施例の特別処理のフローチャートである。
図8】第2実施例の特別処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施例
A−1.印刷システム1000の構成
図1は、印刷システムの構成を示すブロック図である。印刷システム1000は、印刷装置のための画像処理装置としての端末装置100と、印刷装置としてのプリンタ200と、を備えている。端末装置100とプリンタ200とは、LAN(Local Area Networkの略称)やUSBケーブルなどによって、通信可能に接続されている。
【0012】
プリンタ200は、プリンタ200のコントローラとしてのCPU210と、DRAMなどの揮発性記憶装置220と、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置230と、ユーザインタフェース画面(以下、UI画面とも呼ぶ)を表示するための液晶ディスプレイなどの表示部240と、ユーザの操作を取得するためのタッチパネルやボタンなどの操作部250と、外部機器と通信を行う通信部270と、印刷機構290と、を備えている。例えば、通信部270は、LANなどのネットワークに接続するためのインタフェースや、外部装置と接続するためのUSBインタフェースを含んでいる。
【0013】
印刷機構290は、色材として複数種類のインクを用いて画像の印刷を実行するインクジェット方式の印刷機構である。印刷機構290は、印刷ヘッドのノズルからインクを吐出して用紙上にドットを形成することによって、用紙上に画像を形成する。印刷機構290は、各インクについて、複数種類のサイズのドット、具体的には、小ドット、小ドットより大きな中ドット、中ドットより大きな大ドットを形成することができる。小ドットは、プリンタ200が形成可能な最小のドットであり、大ドットはプリンタ200が形成可能な最大のドットである。複数種類のインクは、本実施例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4種類のインクである。
【0014】
揮発性記憶装置220は、CPU210が処理を行う際に生成される種々のデータを一時的に格納するバッファ領域を提供する。不揮発性記憶装置230には、コンピュータプログラムPG1が格納されている。コンピュータプログラムPG1は、プリンタ200の製造時に不揮発性記憶装置230に予め格納されて提供される。これに代えて、コンピュータプログラムPG1は、例えば、インターネットを介して接続されたサーバからダウンロードされる形態、あるいは、DVD−ROMなどに記録された形態で提供され得る。
【0015】
CPU210は、コンピュータプログラムPG1を実行することにより、プリンタ200の制御を実行する。例えば、CPU210は、端末装置100からの指示に従って、印刷機構290を制御して印刷を実行する。
【0016】
端末装置100は、プリンタ200のユーザが利用する公知の計算機であり、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォンである。端末装置100は、端末装置100のコントローラとしてCPU110と、DRAMなどの揮発性記憶装置120と、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置130と、UI画面を含む画像を表示するための液晶ディスプレイなどの表示部140と、ユーザの操作を取得するためのキーボードやマウスなどの操作部150と、プリンタ200などの外部機器と通信を行う通信部170と、を備えている。例えば、通信部170は、LANなどのネットワークに接続するためのインタフェースや、外部装置と接続するためのUSBインタフェースを含んでいる。
【0017】
揮発性記憶装置120は、CPU110が処理を行う際に生成される種々のデータを一時的に格納するバッファ領域を提供する。不揮発性記憶装置130には、コンピュータプログラムPG2が格納されている。コンピュータプログラムPG2は、例えば、プリンタ200の製造者によって提供されるプリンタドライバプログラムである。コンピュータプログラムPG2は、例えば、インターネットを介して接続されたサーバからダウンロードされる形態で提供される。これに代えて、コンピュータプログラムPG2は、DVD−ROMなどに記録された形態で提供されても良い。
【0018】
CPU110は、コンピュータプログラムPG2を実行することにより、プリンタ200用のプリンタドライバとしての処理、例えば、後述する印刷処理を実行する。
【0019】
A−2.印刷処理
図2は、第1実施例の印刷処理のフローチャートである。この印刷処理は、例えば、端末装置100において、文書作成ソフトや画像作成ソフトなどのアプリケーションプログラムを介して、プリンタドライバ(コンピュータプログラムPG2)が起動され、該プリンタドライバに、印刷指示が入力された場合に、開始される。本実施例では、印刷指示は、印刷に用いられる対象画像データを指定する指示を少なくとも含んでいる。
【0020】
S10で、CPU110は、印刷指示において指定された対象画像データを取得する。対象画像データは、例えば、アプリケーションプログラムによって作成された画像データ(ベクトルデータ)である。
【0021】
S20では、CPU110は、取得された対象画像データに対してラスタライズ処理を実行する。ラスタライズ処理は、対象画像データを、ビットマップデータに変換する処理である。ビットマップデータは、例えば、画素ごとの色をRGB値で表すRGB画像データである。1個の画素のRGB値は、赤(R)と緑(G)と青(B)との3個の色成分の階調値(例えば、0〜255の256階調の階調値)を含んでいる。S30では、CPU110は、RGB画像データに対して解像度変換処理を実行して、RGB画像データを印刷解像度に対応する画素数の画像データに変換する。
【0022】
S40では、CPU110は、RGB画像データに対して色変換処理を実行して、画素ごとの色をCMYK値で表すCMYK画像データを生成する。CMYK値は、印刷機構290にて用いられる複数種類のインク(C、M、Y、K)に対応する複数種類の成分値(C値、M値、Y値、K値)を含んでいる。CMYK値の各成分値は、本実施例では、0〜255の256階調の値である。色変換処理は、RGBの階調値とCMYKの階調値との対応関係を定める図示しないルックアップテーブルを用いて行われる。
【0023】
S50では、CPU110は、CMYK画像データに対して誤差拡散処理を実行して、ドットの形成状態を、画素ごと、かつ、インクの種類ごとに、表すドットデータを生成する。ドットの形成状態は、本実施例では、ドット無、小ドット、中ドット、大ドットのいずれかである。すなわち、ドットデータに含まれる複数個の画素の値(ドット値とも呼ぶ)は、ドットを形成しないことを示す値と、小ドットの形成を示す値と、中ドットの形成を示す値と、大ドットの形成を示す値と、のいずれかである。
【0024】
S60では、CPU110は、ドットデータを印刷に用いられる順序で並び替えて、印刷コマンドなどの制御データを付加することによって、印刷データを生成する。S70では、CPU110は、生成された印刷データを、プリンタ200に供給して、印刷処理を終了する。プリンタ200のCPU210は、端末装置100から供給された印刷データに従って、印刷機構290を制御して、用紙に画像を印刷する。
【0025】
A−3.誤差拡散処理
図2のS50の誤差拡散処理について説明する。図3は、誤差拡散処理のフローチャートである。CMYK画像データは、C、M、Y、Kのインクに対応する4つの成分画像データを含んでいる。各成分画像データに含まれる複数個の画素の値は、対応するインクの濃度を画素ごとに示す。図3の処理は、1つのインクに対応する1つの成分画像データに対する処理を示している。図3の処理は、4つの成分画像データに対して、それぞれ実行される。図4は、誤差拡散処理の説明図である。図4(A)には、1個の成分画像データによって表される画像(元画像OIとも呼ぶ)の一例が示されている。
【0026】
S100では、CPU110は、元画像OIに含まれる複数個の画素の中から、以下のS110〜S160の処理の対象となる1個の注目画素を選択する。例えば、図4(A)の元画像OIでは、複数の画素は、X方向(横方向)とY方向(縦方向)とにマトリクス状に並んで配置されている。CPU110は、+X方向に沿って1画素ずつ注目画素として処理を実行することによって、X方向に延びる1つの画素ラインについて処理を実行する。1つの画素ラインの処理が完了されると、+Y方向に隣接する別の画素ラインについて、1画素ずつ注目画素として処理が実行される。
【0027】
S110では、CPU110は、注目画素の濃度Vを取得する。S120では、CPU110は、誤差マトリクスMTを用いて、近傍の処理済みの画素から注目画素に分配される誤差値Etを取得する。図5(A)には、誤差マトリクスMTの一例が示されている。誤差マトリクスMTは、注目画素の近傍の所定の相対位置に配置された画素に、ゼロより大きい重みを割り当てている。図5(A)の例では、注目画素の近傍の6個の画素に重みa〜fが割り当てられている。重みa〜fの合計は1である。誤差マトリクスMTに示される注目画素の近傍の6個の画素は、現在の注目画素より先に、注目画素として処理されており、当該処理において、これらの画素に対応する誤差値が算出されている。CPU110は、誤差マトリクスMTに規定された重みを用いて、注目画素の近傍の6個の画素に対応する誤差値の重み付き和を、誤差値Etとして算出する。
【0028】
S130では、CPU110は、注目画素の濃度Vと誤差値Etとを用いて、補正済濃度Vaを算出する。具体的には、注目画素の濃度Vと誤差値Etとの和が、補正済濃度Vaとして算出される。
【0029】
S140では、CPU110は、注目画素が特定エッジ画素であるか否かを判断する。特定エッジ画素は、右側エッジ画素と、左側エッジ画素と、下側エッジ画素と、上側エッジ画素と、のいずれかである。特定エッジ画素であるか否かは、図5(B)に示すフィルタ群FGを用いて実行される。
【0030】
フィルタ群FGは、注目画素が、右側エッジ画素であるか否かを判定するための3個のフィルタFR1〜FR3(図5(B1))を含んでいる。フィルタFR1は、注目画素と、注目画素の左側(−X方向)に隣接する画素を含み、X方向に並ぶ2個の画素と、を含む計3個の画素を、チェック対象画素としている。フィルタFR2は、注目画素と、注目画素の左側(−X方向)に隣接する画素を含み、X方向に並ぶ3個の画素と、を含む計4個の画素を、チェック対象画素としている。フィルタFR3は、注目画素と、注目画素の左側(−X方向)に隣接する画素を含み、X方向に並ぶ4個の画素と、を含む計5個の画素を、チェック対象画素としている。これらの3個のフィルタFR1〜FR3のうちのいずれか1個のフィルタのチェック対象画素が、以下の(1)、(2)の条件を共に満たす場合に、注目画素は、右側エッジ画素であると、判断される。
【0031】
(1)3〜5個のチェック対象画素のうちの両端の画素(以下、両端画素とも呼ぶ)、すなわち、注目画素、および、注目画素の反対側の端の画素(図にて黒丸が付された画素)と、の両方の濃度が、基準濃度Th1以上である。
(2)該両端画素の間に並ぶ1〜3個のチェック対象画素(以下、中間画素とも呼ぶ)、すなわち、図にて白丸が付された画素の濃度が、基準濃度Th2以下である。
【0032】
ここで、基準濃度Th1は、本実施例では、後述する小ドットの濃度VSdotであっても良く、小ドットの濃度VSdotより小さな値であっても良い。基準濃度Th2は、本実施例では、最低濃度であり、0〜255の256階調で濃度を示す場合は、例えば、「0」である。
【0033】
左側エッジ画素についても同様に判断される。具体的には、フィルタ群FGは、注目画素が左側エッジ画素であるか否かを判定するための3個のフィルタFL1〜FL3(図5(B2))を含んでいる。フィルタFL1〜FL3は、注目画素と、注目画素の右側(+X方向)に隣接する画素を含み、X方向に並ぶ2〜4個の画素と、を含む計3〜5個の画素を、それぞれチェック対象画素としている。これらの3個のフィルタFL1〜FL3のうちのいずれか1個のフィルタのチェック対象画素が、上記(1)、(2)の条件を共に満たす場合に、注目画素は、左側エッジ画素であると、判断される。
【0034】
下側エッジ画素についても同様に判断される。具体的には、フィルタ群FGは、注目画素が下側エッジ画素であるか否かを判定するための3個のフィルタFB1〜FB3(図5(B3))を含んでいる。フィルタFB1〜FB3は、注目画素と、注目画素の上側(−Y方向)に隣接する画素を含み、Y方向に並ぶ2〜4個の画素と、を含む計3〜5個の画素を、それぞれチェック対象画素としている。これらの3個のフィルタFB1〜FB3のうちのいずれか1個のフィルタのチェック対象画素が、上記(1)、(2)の条件を共に満たす場合に、注目画素は、下側エッジ画素であると、判断される。
【0035】
上側エッジ画素についても同様に判断される。具体的には、フィルタ群FGは、注目画素が上側エッジ画素であるか否かを判定するための3個のフィルタFU1〜FU3(図5(B4))を含んでいる。フィルタFU1〜FU3は、注目画素と、注目画素の下側(+Y方向)に隣接する画素を含み、Y方向に並ぶ2〜4個の画素と、を含む計3〜5個の画素を、それぞれチェック対象画素としている。これらの3個のフィルタFU1〜FU3のうちのいずれか1個のフィルタのチェック対象画素が、上記(1)、(2)の条件を共に満たす場合に、注目画素は、上側エッジ画素であると、判断される。
【0036】
以上の説明から解るように、特定エッジ画素は、一対の両端画素のうちの1個の画素である。両端画素は、中間画素の特定方向(本実施例ではX方向またはY方向)の両端に位置し、中間画素との間にエッジを構成し、かつ、中間画素よりも濃度が高い一対の画素である。中間画素は、該特定方向にならぶ1個以上N個以下の画素である(Nは、1以上の整数、図5(B)の例では、N=3)。
【0037】
例えば、図4(A)の元画像OIにおいて、ハッチングされた複数個の画素PX1は、濃度が基準濃度Th1以上の画素であり、背景を構成している。ハッチングされていない複数個の画素PX2は、濃度が基準濃度Th2以下の中間画素(例えば、濃度が0の画素)であり、背景より濃度が低い細線を構成している。この細線は、例えば、高さ4ポイント(約1.4mm)程度の小さな文字の一部分である。ハッチングされた複数個の画素PX1のうち、内部に破線の矩形を伏した画素EPは、特定エッジ画素を示している。このように、このように、特定エッジ画素は、背景を構成するとともに、背景より濃度が低いオブジェクト(例えば、白い文字などの低濃度の文字)との間のエッジを構成する画素、とも呼ぶことができる。
【0038】
注目画素が特定エッジ画素でない場合には(S140にてNO)、CPU110は、S150にて、通常処理を実行する。注目画素が特定エッジ画素である場合には(S140にてYES)、CPU110は、S160にて、特別処理を実行する。通常処理および特別処理のいずれかが実行されることで、注目画素のドット値DVが決定されるとともに、注目画素に対応する分配誤差値Edが決定される。注目画素に対応する分配誤差値Edは、注目画素から未処理の画素に分配すべき誤差値を意味する。通常処理および特別処理については後述する。
【0039】
S170では、CPU110は、元画像OI内の全ての画素を注目画素として選択したか否かを判断する。未処理の画素がある場合には(S170にてNO)、CPU110は、S100に戻って、未処理の画素を選択する。全ての画素が注目画素として選択された場合には(S170にてYES)、CPU110は、誤差拡散処理を終了する。
【0040】
A−4.通常処理
図6は、通常処理のフローチャートである。S210では、CPU110は、補正済濃度Vaが、大ドット用の判定閾値TH_L以上であるか否かを判断する。補正済濃度Vaが判定閾値TH_L以上である場合には(S210にてYES)、S220にて、CPU110は、ドット値DVを、大ドットの形成を示す値に決定する。S225では、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaから大ドットの濃度VLdotを減じた値に決定する。この場合の分配誤差値Ed=(Va−VLdot)は、印刷画像において注目画素に大ドットが形成される場合に注目画素から分配すべき誤差値(大ドットの濃度に対応する誤差値とも呼ぶ)である。大ドットの濃度VLdotは、本実施例では、最大濃度であり、0〜255の256階調で濃度を示す場合は、例えば、「255」である。大ドット用の判定閾値TH_Lは、大ドットの濃度VLdotより小さな値であり、0〜255の256階調で濃度を示す場合は、例えば、「128」である。
【0041】
補正済濃度Vaが判定閾値TH_L未満である場合には(S210にてNO)、S230にて、CPU110は、補正済濃度Vaが、中ドット用の判定閾値TH_M以上であるか否かを判断する。補正済濃度Vaが判定閾値TH_M以上である場合には(S230にてYES)、S240にて、CPU110は、ドット値DVを、中ドットの形成を示す値に決定する。S245では、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaから中ドットの濃度VMdotを減じた値に決定する。この場合の分配誤差値Ed=(Va−VMdot)は、印刷画像において注目画素に中ドットが形成される場合に注目画素から分配すべき誤差値(中ドットの濃度に対応する誤差値とも呼ぶ)である。中ドットの濃度VMdotは、0〜255の256階調で濃度を示す場合は、例えば、「128」である。中ドット用の判定閾値TH_Mは、中ドットの濃度VMdotより小さな値であり、0〜255の256階調で濃度を示す場合は、例えば、「64」である。
【0042】
補正済濃度Vaが判定閾値TH_M未満である場合には(S230にてNO)、S250にて、CPU110は、補正済濃度Vaが、小ドット用の判定閾値TH_S以上であるか否かを判断する。補正済濃度Vaが判定閾値TH_S以上である場合には(S250にてYES)、S260にて、CPU110は、ドット値DVを、小ドットの形成を示す値に決定する。S265では、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaから小ドットの濃度VSdotを減じた値に決定する。この場合の分配誤差値Ed=(Va−VSdot)は、印刷画像において注目画素に小ドットが形成される場合に注目画素から分配すべき誤差値(小ドットの濃度に対応する誤差値とも呼ぶ)である。小ドットの濃度VSdotは、0〜255の256階調で濃度を示す場合は、例えば、「64」である。小ドット用の判定閾値TH_Lは、小ドットの濃度VSdotより小さな値であり、0〜255の256階調で濃度を示す場合は、例えば、「1」である。
【0043】
補正済濃度Vaが判定閾値TH_S未満である場合には(S250にてNO)、S280にて、CPU110は、ドット値DVを、ドットを形成しないことを示す値に決定する。S285では、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaに決定する。
【0044】
注目画素のドット値DVと、分配誤差値Edと、が決定されると、通常処理は、終了される。
【0045】
通常処理におけるドット形成条件は、一般的な誤差拡散法のドット形成条件であり、上述した通常処理のフローチャートから解るように、以下のとおりである。大ドットのドット形成条件は、補正済濃度Vaが、大ドット用の判定閾値TH_L以上であることである(Va≧TH_L)。中ドットのドット形成条件は、補正済濃度Vaが、大ドット用の判定閾値TH_L未満であり、かつ、中ドット用の判定閾値TH_M以上であることである(TH_M≦Va<TH_L)。小ドットのドット形成条件は、補正済濃度Vaが、中ドット用の判定閾値TH_M未満であり、かつ、小ドット用の判定閾値TH_S以上であることである(TH_S≦Va<TH_M)。以下では、上記の一般的な誤差拡散法のドット形成条件を、第1のドット形成条件とも呼ぶ。
【0046】
A−5.特別処理
図7は、第1実施例の特別処理のフローチャートである。図7の特別処理では、通常処理で判断される第1のドット形成条件については、判断されない。図7の特別処理では、第1のドット形成条件とは異なるドット形成条件について判断される。
【0047】
S310では、CPU110は、注目画素の濃度Vが、大ドットの濃度VLdot以上であるか否かを判断する。注目画素の濃度Vが大ドットの濃度VLdot以上である場合には(S310にてYES)、S320にて、CPU110は、ドット値DVを、中ドットの形成を示す値に決定する。
【0048】
S325では、CPU110は、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaから注目画素の濃度Vを減じた値に決定する。この場合の分配誤差値Ed=(Va−V)は、印刷画像において、元画像の注目画素に対応する位置に、元画像の注目画素の濃度Vを有する仮想的なドットが形成されると仮定した場合に、注目画素から分配すべき誤差値(注目画素の濃度を有する仮想的なドットの濃度Vに対応する誤差値、または、注目画素の濃度に対応する誤差値とも呼ぶ)である。S310にてYESであるので、注目画素の濃度Vは、大ドットの濃度VLdot以上である。したがって、この場合には、濃度Vを有する仮想的なドットは、大ドットの濃度VLdot以上の濃度を有するドットであり、当然に、中ドットの濃度VMdotより高い濃度を有するドットである(V≧VLdot>VMdot)。このために、この場合の分配誤差値Ed(=Va−V)は、大ドットの濃度VLdotに対応する値(Va−VLdot)以下の値であり、形成されるべき中ドットの濃度VMdotに対応する値(Va−VMdot)より小さな値である。
【0049】
注目画素の濃度Vが大ドットの濃度VLdot未満である場合には(S310にてNO)、S330にて、CPU110は、注目画素の濃度Vが、中ドットの濃度VMdot以上であるか否かを判断する。注目画素の濃度Vが中ドットの濃度VMdot以上である場合には(S330にてYES)、S360にて、CPU110は、ドット値DVを、小ドットの形成を示す値に決定する。
【0050】
S365では、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaから注目画素の濃度Vを減じた値に決定する。すなわち、S325と同様に、分配誤差値Edは、印刷画像において、注目画素の濃度Vを有する仮想的なドットの濃度に対応する値(Va−V)に決定される。S310にてNO、S330にてYESであるので、注目画素の濃度Vは、中ドットの濃度VMdot以上であり、かつ、大ドットの濃度VLdot未満である。したがって、この場合には、濃度Vを有する仮想的なドットは、中ドットの濃度VMdot以上で大ドットの濃度VMdot未満の濃度を有するドットであり、当然に、小ドットの濃度VSdotより高い濃度を有するドットである(VLdot>V≧VMdot>VSdot)。このために、この場合の分配誤差値Ed(=Va−V)は、中ドットの濃度VMdotに対応する値(Va−VMdot)以下の値であり、形成されるべき小ドットの濃度VSdotに対応する値(Va−VSdot)より小さな値である。
【0051】
注目画素の濃度Vが中ドットの濃度VMdot未満である場合には(S330にてNO)、S340にて、CPU110は、注目画素の濃度Vが、小ドットの濃度VSdot以上であるか否かを判断する。注目画素の濃度Vが小ドットの濃度VSdot以上である場合には(S340にてYES)、S360にて、CPU110は、ドット値DVを、小ドットの形成を示す値に決定する。
【0052】
S365では、CPU110は、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaから注目画素の濃度Vを減じた値に決定する。すなわち、分配誤差値Edは、印刷画像において、注目画素の濃度Vを有する仮想的なドットの濃度に対応する値(Va−V)に決定される。S330にてNO、S340にてYESであるので、注目画素の濃度Vは、小ドットの濃度VSdot以上であり、かつ、中ドットの濃度VMdot未満である。したがって、この場合には、濃度Vを有する仮想的なドットは、小ドットの濃度VSdot以上で中ドットの濃度VMdot未満の濃度を有するドットである(VMdot>V≧VSdot)。このために、この場合の分配誤差値Ed(=Va−V)は、形成されるべき小ドットの濃度VSdotに対応する値(Va−VSdot)以下の値である。換言すれば、注目画素の濃度Vが小ドットの濃度VSdotに等しい場合(V=VSdot)を除けば、分配誤差値Ed(=Va−V)は、形成されるべき小ドットの濃度VSdotに対応する値(Va−VSdot)より小さな値である。
【0053】
注目画素の濃度Vが小ドットの濃度VSdot未満である場合には(S340にてNO)、S350にて、CPU110は、注目画素の濃度Vが、特定濃度VSS以上であるか否かを判断する。特定濃度VSSは、小ドットの濃度VSdotより低い濃度であり、例えば、小ドットの濃度VSdotの半分の濃度である(VSS=(VSdot/2))。注目画素の濃度Vが特定濃度VSS以上である場合には(S350にてYES)、S360にて、CPU110は、ドット値DVを、小ドットの形成を示す値に決定する。
【0054】
S365では、CPU110は、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaから注目画素の濃度Vを減じた値に決定する。すなわち、分配誤差値Edは、印刷画像において、注目画素の濃度Vを有する仮想的なドットの濃度に対応する値(Va−V)に決定される。S340にてNO、S350にてYESであるので、注目画素の濃度Vは、特定濃度VSS以上であり、かつ、小ドットの濃度VSdot未満である。したがって、この場合には、濃度Vを有する仮想的なドットは、特定濃度VSS以上で小ドットの濃度VSdot未満の濃度を有するドットである(VSdot>V≧VSS)。このために、この場合の分配誤差値Ed(=Va−V)は、例外的に、形成されるべき小ドットの濃度VSdotに対応する値(Va−VSdot)より大きな値である。
【0055】
注目画素の濃度Vが、特定濃度VSS未満である場合には(S350にてNO)、S370にて、CPU110は、ドット値DVを、ドットを形成しないことを示す値に決定する。S375では、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaに決定する。すなわち、分配誤差値Edは、濃度がゼロのドットの濃度に対応する値(ドットを形成しないことに対応する値)に決定される。
【0056】
ここで、図7の特別処理のS320、S360にて、ドット値DVが、小ドットまたは中ドットの形成を示す値に決定される条件を、第2のドット形成条件とも呼ぶ。特別処理は、注目画素が、特定エッジ画素である場合(図3のS140にてYES)にのみ行われるので、第2のドット形成条件は、注目画素が特定エッジ画素であることを含んでいる。本実施例では、第2のドット形成条件は、注目画素の濃度Vが、特定濃度VSS以上であること(S310、S330、S340、S350のいずれかにてYES)を含んでいる。
【0057】
以上説明した第1実施例では、CPU110は、注目画素が、特定エッジ画素であるか否かを判定する(図3のS140)。また、CPU110は、第1のドット形成条件(一般的な誤差拡散法のドット形成条件)が満たされるか否かを判定する(図6のS210、S230、S250)。注目画素が特定エッジ画素でなく(図3のS140にてNO)、かつ、第1のドット形成条件が満たされる場合に(図6のS210、S230、S250のいずれかにてYES)、ドット値DVを、ドットの形成を示す値に決定する(図6のS220、S240、S260)。注目画素が特定エッジ画素でない場合に、印刷画像にて注目画素に対応する位置に形成されるべきドットを第1のドットとも呼ぶ。図6から解るように、第1のドットは、大ドット、中ドット、小ドットのいずれかである。
【0058】
さらに、CPU110は、注目画素が特定エッジ画素でなく(図3のS140にてNO)、かつ、第1のドット形成条件が満たされる場合に(図6のS210、S230、S250のいずれかにてYES)、分配誤差値Edを、第1のドットの濃度Vに対応する値(例えば、Va−VLdot、Va−VMdot、Va−VSdotのいずれか)に決定する(図6のS225、S245、S265)。
【0059】
また、CPU110は、注目画素が特定エッジ画素であることを含む第2のドット形成条件が満たされる場合に(図3のS140にてYES、かつ、図7のS310、S330、S340、S350のいずれかにてYES)、ドット値を、ドットの形成を示す値に決定する(図7のS320、S360)。注目画素が特定エッジ画素である場合に、印刷画像にて注目画素に対応する位置に形成されるべきドットを第2のドットとも呼ぶ。図7から解るように、第2のドットは、中ドット、小ドットのいずれかである。
【0060】
さらに、CPU110は、第2のドット形成条件が満たされる場合に(図3のS140にてYES、かつ、図7のS310、S330、S340のいずれかにてYES)、分配誤差値Edを、第2のドットの濃度に対応する値(Va−VMdot、Va−VSdotのいずれか)より小さな値(Va−V)に決定する(S325、S365)。
【0061】
この結果、第1実施例によれば、中間画素との間にエッジを構成する特定エッジ画素EPの近傍に分配される分配誤差値Edが比較的小さくなるので、印刷画像において、特定エッジ画素EPに対応する位置の近傍にドットが形成され難くなる。この結果、図2のS50の誤差拡散処理にてドットデータを生成する段階で、すなわち、ドットの形成状態を示すドット値DVを決定する段階で、中間画素に対応する領域(オブジェクト)、具体的には、背景より濃度が低い細線(以下、低濃度の細線とも呼ぶ)が狭くなることを抑制できる。したがって、例えば、白抜きの文字などを構成する細線が過度に細くなる不具合や該細線が途切れる不具合(細線の欠けとも呼ぶ)を抑制できる。
【0062】
例えば、図4(A)の元画像OIにおいて、上述したように、複数個の画素PX1は、濃度Vが基準濃度Th1以上の画素であり、背景を構成している。画素PX1の濃度Vは、VMdot≦V<VLdotを満たす濃度である。複数個の画素PX2は、濃度Vが基準濃度Th2以下の中間画素であり、細線を構成している。この細線は、例えば、高さ4ポイント(約1.4mm)程度の小さな文字の一部分である。複数個の画素EPは、特定エッジ画素を示している。
【0063】
図4(B)には、第1実施例の誤差拡散処理(図3)によって生成されるドットデータによって表される印刷画像PIが示されている。図4(C)には、比較例の誤差拡散処理によって生成されるドットデータによって表される印刷画像PIxが示されている。比較例の誤差拡散処理は、図3のフローチャートからS140およびS160を削除した処理である。すなわち、比較例の誤差拡散処理は、全ての注目画素について図3のS150の通常処理が実行される一般的な誤差拡散処理である。印刷画像PI、PIxの太い実線ELは、元画像OIにおいて、背景を構成する複数個の画素PX1と、細線を構成する複数個の画素PX2と、の間のエッジを示している。印刷画像PI、PIx内のハッチングされた丸印LD、MD、SDは、それぞれ、大ドット、中ドット、小ドットを示している。
【0064】
図4(C)の比較例の印刷画像PIxでは、元画像OIのエッジELに沿った複数個の画素PX2に対応する位置、すなわち、特定エッジ画素EPに対応する位置に、大ドットが形成される場合がある。例えば、元画像OIにおける細線の周囲の背景や他のオブジェクトの状態等によって、誤差拡散処理の際に、特定エッジ画素EPから分配される分配誤差値Edが過度に大きな値になる場合がある。その場合には、特定エッジ画素EPの近傍の画素、例えば、該特定エッジ画素EPの近傍の別の特定エッジ画素EPや中間画素に対応する印刷画像上の位置に、ドットが形成されやすくなる。この結果、例えば、該特定エッジ画素EPの近傍の別の特定エッジ画素EPに対応する位置に、大ドットが形成される可能性や、中間画素に対応する位置に小ドットが形成される可能性が、第1実施例と比較して高くなる。例えば、図4(C)の印刷画像PIxでは、特定エッジ画素EPに対応する位置に、比較的多数の大ドットが形成されている。この結果、細線が過度に狭くなり、矢印で示す部分P1、P2において、細線の欠けが発生している。
【0065】
これに対して、図4(B)の第1実施例の印刷画像PIでは、特定エッジ画素EPから近傍の画素に分配される分配誤差値Edが過度に大きな値になることが抑制されるので、比較例の印刷画像PIxと比較して、細線が過度に狭くなる不具合や細線の欠けが抑制される。
【0066】
さらに、第1実施例では、第2のドット形成条件が満たされる場合に(図3のS140にてYES、かつ、図7のS310、S330、S340、S350のいずれかにてYES)、分配誤差値Edを注目画素の濃度Vを有する仮想的なドットの濃度に対応する値(Va−V)に決定する(図7のS325、S365)。この結果、分配誤差値Edは、注目画素の濃度Vに応じた適切な値に決定される。この結果、分配誤差値Edが不適切な値である場合に発生し得る不具合を抑制できる。例えば、比較として、分配誤差値Edが過度に大きい場合には、印刷画像において、特定エッジ画素EPの周囲の画素に対応する位置にドットが形成されにくくなる。このために、印刷画像PIにおいて、細線の周囲の濃度が元画像OIより低くなる不具合が発生し得る。また、例えば、比較として、分配誤差値Edが過度に小さい場合には、印刷画像PIにおいて、特定エッジ画素EPに対応する位置にドットが形成されやすくなるので、細線の周囲の濃度が元画像より高くなる不具合が発生し得る。また、元画像OIにおいて細線を構成する中間画素PX2に対応する位置にドットが形成されて細線が狭くなる不具合が発生し得る。
【0067】
さらに、第1実施例では、注目画素が特定エッジ画素であり(図3のS140にてYES)、かつ、注目画素の濃度Vが、大ドットの濃度VLdot以上である場合に(図7のS310にてYES)、第2のドット形成条件が満たされるとして、ドット値DVが、中ドットの形成を示す値に決定される(図7のS320)。この結果、特定エッジ画素EPの濃度Vが、大ドットの濃度VLdot以上の濃度であっても、特定エッジ画素EPのドット値DVは、大ドットよりも小さな中ドットの形成を示す値に決定される。したがって、印刷画像PIにおいて、特定エッジ画素EPに対応する位置に、プリンタ200が形成し得る最大サイズのドットである大ドットが形成されることはないので、細線が狭くなることを抑制できる。
【0068】
さらに、この場合には、注目画素の濃度Vが大ドットの濃度VLdot以上である(V≧VLdot)ので、ドット値DVが中ドットの形成を示す値に決定される(図7のS320)にも関わらずに、分配誤差値Edは、大ドットの濃度VLdotに対応する値(Va−VLdot)以下の値(Va−V)に決定される((Va−VLdot)≧(Va−V))。この結果、特定エッジ画素EPから近傍の画素に分配される分配誤差値Edが過度に大きくなることが抑制されるので、印刷画像PIにおいて、細線が狭くなる不具合や、細線の周囲の濃度が高くなる不具合を抑制できる。
【0069】
さらに、第1実施例では、注目画素が特定エッジ画素であり(図3のS140にてYES)、かつ、注目画素の濃度Vが、中ドットの濃度VMdot以上である場合に(図7のS330にてYES)、第2のドット形成条件が満たされるとして、ドット値DVが、小ドットの形成を示す値に決定される(図7のS360)。この結果、特定エッジ画素EPの濃度Vが、中ドットの濃度VMdot以上の濃度であっても、特定エッジ画素EPのドット値DVは、中ドットよりも小さな小ドットの形成を示す値に決定される。したがって、印刷画像PIにおいて、特定エッジ画素EPに対応する位置に、比較的小さな小ドットが形成されやすくなるので、細線が狭くなることを抑制できる。
【0070】
さらに、この場合には、注目画素の濃度Vが中ドットの濃度VMdot以上である(V≧VMdot)ので、ドット値DVが小ドットの形成を示す値に決定される(図7のS365)にも関わらずに、分配誤差値Edは、中ドットの濃度VMdotに対応する値(Va−VMdot)以下の値(Va−V)に決定される((Va−VMdot)≧(Va−V))。この結果、特定エッジ画素EPから近傍の画素に分配される分配誤差値Edが過度に大きくなることが抑制されるので、印刷画像PIにおいて、細線が狭くなる不具合や、細線の周囲の濃度が高くなる不具合を抑制できる。
【0071】
このように、第1実施例では、印刷画像PIにおいて、特定エッジ画素EPに対応する位置には、特定エッジ画素EPの濃度Vよりも小さな濃度を有するドットが形成されやすい。例えば、VLdot≦Vであれば、中ドットが形成され、VMdot≦V<VLdotであれば、小ドットが形成される。この結果、印刷画像PIにおいて、細線が狭くなることを抑制できる。例えば、図5(B)の印刷画像PIでは、図5(C)の印刷画像PIxとは異なり、特定エッジ画素EPに対応する位置に形成されるドットは、全て小ドットである。このために、印刷画像PIでは、印刷画像PIxと比較して、元画像OIの複数個の画素PX2に対応する細線の幅が広くなっていることが解る。
【0072】
さらに、第1実施例によれば、注目画素が特定エッジ画素であり(図3のS140にてYES)、かつ、注目画素の濃度Vが、中ドットの濃度VMdot未満で(図7のS330にてNO)、小ドットの濃度VSdot以上である(図7のS340にてYES)場合に、第2のドット形成条件が満たされるとして、ドット値DVを、小ドットの形成を示す値に決定する。この結果、元画像OIにおいて、特定エッジ画素EPの濃度Vが、中ドットの濃度VMdot未満で、形成可能な最小のドットである小ドットの濃度VSdot以上である場合には、印刷画像PIにおいて、特定エッジ画素EPに対応する位置に、小ドットが形成される。したがって、元画像OIにてVSdot≦V<VMdotを満たす濃度の背景に囲まれた細線のエッジが、印刷画像PIにおいてがたつくことを抑制できる。
【0073】
さらに、第1実施例によれば、注目画素が特定エッジ画素であり(図3のS140にてYES)、かつ、注目画素の濃度Vが、小ドットの濃度VSdot未満で(図7のS340にてNO)、特定濃度VSS以上である(図7のS350にてYES)場合に、第2のドット形成条件が満たされるとして、ドット値DVを、小ドットの形成を示す値に決定する(図7のS360)。この結果、元画像OIにおいて小ドットの濃度VSdotより低く、特定濃度VSS以上の濃度を有するエッジ画素に囲まれた領域のエッジが、印刷画像PIにおいてがたつくことを抑制できる。例えば、比較例のように通常の誤差拡散処理のみが行われる場合には、印刷画像において、複数個の特定エッジ画素EPに対応する複数個の位置には、ドットが形成される位置と、ドットが形成されない位置と、が発生して、当該エッジががたつきやすい。本実施例では、このような不具合が抑制できる。
【0074】
さらに、第1実施例によれば、注目画素が特定エッジ画素EPでない場合に(図3のS140にてNO)、図6の通常処理にて、第1のドット形成条件は、複数種類のドットに対応する複数個の判定閾値TH_S、TH_M、TH_Lを用いて、判断される(図6のS210、230、S250)。そして、該判断結果に基づいて、複数種類のドットのいずれかが形成される(図6のS220、S240、S260)。そして、注目画素が特定エッジ画素EPである場合も(図3のS140にてYES)、図7の通常処理にて、第2のドット形成条件は、複数種類のドットに対応する複数個の閾値VLdot、VMdot、VSdot、VSSを用いて、判断される(図7のS310、330、S340、S350)。該判断結果に基づいて、中ドット、または、小ドットのいずれかが形成される(図7のS325、S365)。この結果、注目画素が特定エッジ画素EPである場合も、画素EPでない場合のいずれであっても、複数個の閾値を用いて、適切なドット値DVが決定される。
【0075】
さらに、第1実際例によれば、注目画素が特定エッジ画素EPである場合に(図3のS140にてYES)、注目画素が第1のドット形成条件を満たすか否かに関わらず、注目画素の濃度Vに基づいて、第2のドット形成条件が満たされるか否かが判断される。換言すれば、注目画素が特定エッジ画素EPである場合には、処理済みの画素から注目画素に分配された誤差値Etとは無関係に、注目画素の濃度Vのみを用いて、第2のドット形成条件が満たされるか否かが判断される。この結果、元画像OIにおいて、細線を囲む背景の濃度(すなわち、特定エッジ画素EPの濃度)が均一であれば、印刷画像PIにおいて、該背景の濃度Vに応じた一種類のドットで、細線のエッジが形成される。例えば、背景の濃度が、特定濃度VSS以上で、かつ、大ドットの濃度VLdot未満であれば、印刷画像PIにおいて細線のエッジは、小ドットのみを用いて形成される。例えば、図4(B)の例では、細線のエッジを構成する全ての特定エッジ画素EPに対応する位置に、小ドットが形成されている。この結果、印刷画像PIにおいて、細線のエッジががたつくことを抑制することができる。例えば、比較例の印刷画像PIxでは、特定エッジ画素EPに分配される誤差値Etによって、特定エッジ画素EPに対応する位置に、大ドットが形成される場合や、中ドットが形成される場合や、ドットが形成されない場合が、生じ得る。本実施例では、そのような不具合を抑制できる。
【0076】
B.第2実施例
第2実施例では、特別処理の内容が第1実施例とは異なる。第2実施例の特別処理以外の処理は、第1実施例と同一であるので、説明を省略する。
【0077】
図8は、第2実施例の特別処理のフローチャートである。図8の第2実施例の特別処理が、図7の第1実施例の特別処理と異なる点は、図7のS320と、S325と、が実行されない点である。
【0078】
第2実施例の特別処理では、S310にて、注目画素の濃度Vが、大ドットの濃度VLdot以上である場合に(S310にてYES)、S360にて、CPU110は、注目画素のドット値DVを、小ドットの形成を示す値に決定する。続くS365では、CPU110は、分配誤差値Edを、補正済濃度Vaから注目画素の濃度Vを減じた値に決定する。
【0079】
このように、第2実施例の特別処理では、印刷画像PIにおいて、特定エッジ画素EPに対応する位置に形成されるドットは、全て小ドットである。印刷画像PIにおいて、特定エッジ画素EPに対応する位置に、中ドットおよび大ドットは形成されない。
【0080】
そして、S310にてYESである場合に、S365にて決定される分配誤差値Edは、第1実施例と同様に、補正済濃度Vaから注目画素の濃度Vを減じた値(Va−V)、すなわち、注目画素の濃度Vを有する仮想的なドットの濃度に対応する値である。S310にてYESである場合には、注目画素の濃度Vは、大ドットの濃度VLdot以上である。したがって、この場合には、第1実施例と同様に、濃度Vを有する仮想的なドットは、大ドットの濃度VLdot以上の濃度を有するドットであり、当然に、小ドットの濃度VSdotより高い濃度を有するドットである(V≧VLdot>VSdot)。このために、この場合の分配誤差値Ed(=Va−V)は、大ドットの濃度VLdotに対応する値(Va−VLdot)以下の値であり、形成されるべき小ドットの濃度VSdotに対応する値(Va−VSdot)より大幅に小さな値になる。
【0081】
以上説明した第2実施例によれば、特定エッジ画素EPの濃度Vが、特定濃度VSS以上であれば、印刷画像PIにおいて特定エッジ画素EPに対応する位置には、常に、小ドットが形成される。したがって、元画像OIにおいて、細線を囲む背景の濃度(すなわち、特定エッジ画素EPの濃度)が、特定濃度VSS以上であれば、常に小ドットのみで、細線のエッジが形成される。この結果、印刷画像PIにおいて、細線が狭くなることをより確実に抑制できる。また、印刷画像PIにおいて、細線のエッジががたつくことをより確実に抑制することができる。
【0082】
C.変形例
(1)上記実施例では、図3のS140にて、注目画素が、特定エッジ画素であるか否かを、図5に示すフィルタ群FGを用いて、判断している。これに代えて、別の方法で、注目画素が、特定エッジ画素であるか否かを判断しても良い。例えば、CPU110は、元画像OIを示す元画像データに対して、文字認識処理を実行することによって、元画像OIに所定サイズ以下の文字、例えば、6ポイント以下の文字を含むか否かを判断する。元画像OIが6ポイント以下の文字を含む場合には、CPU110は、認識された6ポイント以下の文字の色が、白などの背景より濃度の低い色であるか否かを判断する。CPU110は、認識された6ポイント以下の文字の色が、背景より濃度の低い色である場合には、当該文字を構成する画素に隣接する背景画素を特定する。CPU110は、このように特定された背景画素を特定エッジ画素としても良い。この場合であっても、特定エッジ画素は、少なくとも上記第1実施例における特定エッジ画素、すなわち、一対の両端画素のうちの1個の画素であり、かつ、該両端画素は、中間画素の特定方向(本実施例ではX方向またはY方向)の両端に位置し、かつ、該中間画素との間にエッジを構成し、かつ、中間画素よりも濃度が高い一対の画素を含む、と考えられる。
【0083】
(2)上記第1実施例では、実施例の理解のために、図7において、S330と、S340と、の判断処理を行っている。これに代えて、実際の特別処理では、S330と、S340と、の判断処理は、省略されて、S350の判断処理のみが実行されてもよい。S330およびS340にてYESである場合には、必ずS350にてYESであると判断され、S330およびS340にてYESである場合に実行されるべき処理(S360およびS365)は、S350にてYESである場合に実行されるべき処理と同じであるからである。同様に、図8において、実際の特別処理では、S310、S330、S340の判断処理は省略され、S350の判断処理のみが実行されても良い。
【0084】
(3)上記実施例の特別処理では、誤差拡散法に従う第1のドット形成条件については、判断されない。これに代えて、特別処理においても、第1のドット形成条件を満たすか否かが判断されても良い。例えば、CPU110は、第2実施例の図8の特別処理において、中ドットの第1のドット形成条件(すなわち、注目画素の補正済濃度Vaが中ドット用の判定閾値TH_M以上であること)を満たすか否かを判断しても良い。CPU110は、中ドットの第1のドット形成条件が満たされる場合には、ドット値DVを、中ドットの形成を示す値に決定しても良い。そして、CPU110は、中ドットの第1のドット形成条件が満たされない場合には、図8のS310〜S350に示すように、注目画素の濃度Vに基づいて、ドット値DVを、小ドットの形成を示す値に決定するか否かを判断しても良い。
【0085】
(4)上記各実施例の図7図8のS325、S365では、分配誤差値Edは、注目画素の濃度Vを有する仮想的なドットの濃度に対応する誤差値(Va−V)に決定される。これに代えて、分配誤差値Edは、注目画素の濃度Vとは無関係に、注目画素に対応する位置に形成すべきドットより小さな値に決定されても良い。例えば、注目画素のドット値DVが小ドットの形成を示す値に決定された場合には、分配誤差値Edは、小ドットの濃度に対応する誤差値(Va−VSdot)より所定値(例えば、50)だけ小さな値(Va−VSdot−50)に決定されても良い。
【0086】
(5)上記各実施例のプリンタ200は、大、中、小の3種類のサイズのドットを形成可能である。これに代えて、特大、大、中、小の4種類のサイズのドットを形成可能なプリンタが採用されても良く、大と小の2種類のサイズのドットが形成可能なプリンタが採用されても良い。4種類のサイズのドットが形成可能な場合には、通常処理では、特大、大、中、小の4種類のサイズのドット用の4種類の閾値と、注目画素の補正済濃度Vaと、の比較によって、注目画素について、4種類のドットのそれぞれのドット形成条件が満たされるか否かが判定される。そして、いずれかのドット形成条件が満たされる場合には、注目画素のドット値は、該ドット形成条件が満たされるサイズのドットの形成を示す値に、決定される。また、第1実施例の特別処理では、例えば、注目画素の濃度Vが特大ドットの濃度以上である場合には、ドット値DVは、大ドットの形成を示す値に決定されても良い。そして、注目画素の濃度Vが特大ドットの濃度未満である場合には、図7のS310〜S375の処理に従って、ドット値DVの値が決定されても良い。
【0087】
また、プリンタ200は、1種類のサイズのドットのみを形成可能であっても良い。この場合には、例えば、通常処理では、1種類のサイズのドット用の閾値と、注目画素の補正済濃度Vaと、の比較によって、注目画素について、ドット形成条件が満たされるか否かが判定される。そして、注目画素のドット値は、該ドット形成条件が満たされる場合には、ドットの形成を示す値に、決定される。また、特別処理では、注目画素の濃度Vが、所定値以上(例えば、ドットの濃度Vdot以上)である場合には、注目画素のドット値は、ドットの形成を示す値に決定される。そして、通常処理にて、ドット値DVがドットの形成を示す値に決定された場合には、注目画素に対応する分配誤差値Edは、形成すべきドットの濃度Vdotに対応する値(Va−Vdot)に決定される。そして、特別処理にて、ドット値DVがドットの形成を示す値に決定された場合には、注目画素に対応する分配誤差値Edは、形成すべきドットの濃度Vdotに対応する値(Va−Vdot)より小さな値に決定される。
【0088】
(6)上記各実施例において、図7図8の特別処理のS350は、省略されても良い。この場合には、注目画素の濃度Vが小ドットの濃度VSdot未満である場合には(S340にてNO)、S370に処理が進められる。
【0089】
(7)上記各実施例のプリンタ200の印刷機構290は、C、M、Y、Kの4種類のインクを用いて画像を形成するが、例えば、Kインクのみを用いて、画像を形成する単色のプリンタであっても良い。また、印刷機構290は、C、M、Yの3種類のインクだけを用いても良く、C、M、Y、Kに加えて、別の1種類以上のインク(例えば、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)など)を用いても良い。また、印刷機構290は、他の方式の印刷機構でも良く、例えば、色材として複数種類のトナーを用いて画像を印刷するレーザ方式の印刷機構であっても良い。
【0090】
(8)上記各実施例において端末装置100によって実行される印刷処理は、例えば、プリンタ200のCPU210によって実行されても良い。この場合には、端末装置100は、無くても良く、端末装置100は、単に、印刷指示に基づく印刷ジョブをプリンタ200に送信するだけでも良い。この場合には、プリンタ200の筐体内の印刷機構290が印刷装置の例であり、プリンタ200の筐体内のCPU210が、印刷装置のための画像処理装置の例である。
【0091】
また、端末装置100に代えて、プリンタ200とインターネットなどのネットワークを介して接続されたサーバが、各実施例の印刷処理を実行しても良い。この場合には、端末装置100またはプリンタ200から印刷ジョブが、サーバに送信されたときに、各実施例の印刷処理が実行される。そして、サーバは、図2の70では、印刷データをプリンタ200に送信することによって、プリンタ200に印刷を実行させる。この場合には、サーバが、印刷装置のための画像処理装置の例である。該サーバは、1つの計算機であっても良く、互いに通信可能な複数個の計算機を含むいわゆるクラウドサーバであっても良い。
【0092】
(9)上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0093】
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
【0094】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0095】
100...端末装置、110...CPU、120...揮発性記憶装置、130...不揮発性記憶装置、140...表示部、150...操作部、170...通信部、200...プリンタ、210...CPU、220...揮発性記憶装置、230...不揮発性記憶装置、240...表示部、250...操作部、270...通信部、290...印刷機構、1000...印刷システム、PG1...コンピュータプログラム、PG2...コンピュータプログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8