(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772744
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】省燃費制御装置及び省燃費制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/182 20200101AFI20201012BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20201012BHJP
B60W 10/11 20120101ALI20201012BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20201012BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
B60W30/182
B60W10/00 106
B60W10/06
B60W10/11
F16H61/02
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-200897(P2016-200897)
(22)【出願日】2016年10月12日
(65)【公開番号】特開2018-62231(P2018-62231A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】大下 ワサンタ
(72)【発明者】
【氏名】竹田 友彦
(72)【発明者】
【氏名】菊池 勝倫
【審査官】
佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−061177(JP,A)
【文献】
特開2011−099394(JP,A)
【文献】
特開2008−115814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−60/00
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
余裕駆動力を演算するための余裕駆動力演算部と、
余裕駆動力が所定の閾値以上になった時にアクセル開度に応じた指示燃料噴射量を下降補正する省燃費制御を実行し、余裕駆動力が所定の閾値未満になった時に省燃費制御を停止するための省燃費制御部と、
を備えている省燃費制御装置であって、
車両位置を検出するための車両位置検出部と、
地図情報を格納するための地図情報格納部と、
シフトダウン操作を検出するためのシフトダウン操作検出部と、
車両位置と地図情報とに基づいて前方勾配を特定するための前方勾配特定部と、
を更に備えており、
前記省燃費制御部は、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出した時は前方勾配が大きくなるに連れて省燃費制御による車両の加速力の制限を段階的又は連続的に緩めていくように更に構成されている
ことを特徴とする省燃費制御装置。
【請求項2】
車両位置と地図情報とに基づいて車両位置と前方勾配との間の距離を演算する車両勾配間距離演算部を更に備えており、
前記省燃費制御部は、車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値以上である時は前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出しても省燃費制御を停止しないように更に構成されている
請求項1に記載の省燃費制御装置。
【請求項3】
余裕駆動力を演算するための余裕駆動力演算ステップと、
余裕駆動力が所定の閾値以上になった時にアクセル開度に応じた指示燃料噴射量を下降補正する省燃費制御を実行するための省燃費制御実行ステップと、
余裕駆動力が所定の閾値未満になった時に省燃費制御を停止するための第一省燃費制御停止ステップと、
を含んでいる省燃費制御方法であって、
車両位置を検出するための車両位置検出ステップと、
車両位置と地図情報とに基づいて前方勾配を特定するための前方勾配特定ステップと、
前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出した時は前方勾配が大きくなるに連れて省燃費制御による車両の加速力の制限を段階的又は連続的に緩めていくための第二省燃費制御停止ステップと、
を更に含んでいる
ことを特徴とする省燃費制御方法。
【請求項4】
車両位置と地図情報とに基づいて車両位置と前方勾配との間の距離を演算する車両勾配間距離演算ステップを更に含んでおり、
前記第二省燃費制御停止ステップにおいては、車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値以上である時は前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出しても省燃費制御を停止しない
請求項3に記載の省燃費制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省燃費制御装置及び省燃費制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
余裕駆動力が所定の閾値以上になった時にアクセル開度に応じた指示燃料噴射量を意図的に下降補正することによってエンジンの実燃料消費量を削減する省燃費制御が広く認知されている(例えば、特許文献1を参照)。省燃費制御を実行することによって車両の加速力は制限されるものの、余裕駆動力が所定の閾値未満になったりキックダウン操作を検出したりした時に省燃費制御は停止されることになる。従って、運転者は車両の加速力の制限の影響を受け難く、省燃費制御を実行することによって運転者の利便性を大きく損なうことは無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−061177号公報
【特許文献2】特開2010−280334号公報
【特許文献3】特開2012−076700号公報
【特許文献4】特開2015−102032号公報
【特許文献5】特開2016−086612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の通り、省燃費制御は余裕駆動力が所定の閾値未満になった時に停止されることになる。しかしながら、例えば、登坂走行を開始することによって実際に余裕駆動力が小さくなった後に省燃費制御を停止しても、登坂走行を開始した後に失速するため、運転者の利便性を損なう虞が有る。
【0005】
従って、本発明の目的は、登坂走行を開始した後に失速し難く、車両の省燃費性能を維持したまま運転者の利便性を改善することができる省燃費制御装置及び省燃費制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
余裕駆動力を演算するための余裕駆動力演算部と、余裕駆動力が所定の閾値以上になった時にアクセル開度に応じた指示燃料噴射量を下降補正する省燃費制御を実行し、余裕駆動力が所定の閾値未満になった時に省燃費制御を停止するための省燃費制御部と、を備えている省燃費制御装置であって、車両位置を検出するための車両位置検出部と、地図情報を格納するための地図情報格納部と、シフトダウン操作を検出するためのシフトダウン操作検出部と、車両位置と地図情報とに基づいて前方勾配を特定するための前方勾配特定部と、を更に備えており、前記省燃費制御部は、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出した時は
前方勾配が大きくなるに連れて省燃費制御による車両の加速力の制限を段階的又は連続的に緩めていくように更に構成されている省燃費制御装置を提供する。
【0008】
車両位置と地図情報とに基づいて車両位置と前方勾配との間の距離を演算する車両勾配間距離演算部を更に備えており、前記省燃費制御部は、車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値以上である時は前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出しても省燃費制御を停止しないように更に構成されていても構わない。
【0009】
余裕駆動力を演算するための余裕駆動力演算ステップと、余裕駆動力が所定の閾値以上になった時にアクセル開度に応じた指示燃料噴射量を下降補正する省燃費制御を実行するための省燃費制御実行ステップと、余裕駆動力が所定の閾値未満になった時に省燃費制御を停止するための第一省燃費制御停止ステップと、を含んでいる省燃費制御方法であって、車両位置を検出するための車両位置検出ステップと、車両位置と地図情報とに基づいて前方勾配を特定するための前方勾配特定ステップと、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出した時は
前方勾配が大きくなるに連れて省燃費制御による車両の加速力の制限を段階的又は連続的に緩めていくための第二省燃費制御停止ステップと、を更に含んでいる省燃費制御方法を提供する。
【0011】
車両位置と地図情報とに基づいて車両位置と前方勾配との間の距離を演算する車両勾配間距離演算ステップを更に含んでおり、前記第二省燃費制御停止ステップにおいては、車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値以上である時は前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出しても省燃費制御を停止しないようにしても構わない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、登坂走行を開始した後に失速し難く、車両の省燃費性能を維持したまま運転者の利便性を改善することができる省燃費制御装置及び省燃費制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る省燃費制御装置の構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る省燃費制御方法の基本省燃費制御方法の流れ図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る省燃費制御方法の拡張省燃費制御方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に順って説明する。
【0015】
先ず、省燃費制御装置に関して説明する。
【0016】
省燃費制御装置は、エンジンの駆動力を車両の駆動輪に伝達することによって走行する自動車に実装される。
【0017】
図1に示す通り、本発明の実施の形態に係る省燃費制御装置100は、余裕駆動力を演算するための余裕駆動力演算部101と、余裕駆動力が所定の閾値以上になった時にアクセル開度に応じた指示燃料噴射量を下降補正する省燃費制御を実行し、余裕駆動力が所定の閾値未満になった時に省燃費制御を停止するための省燃費制御部102と、を備えている。余裕駆動力は、駆動輪の駆動力と車両の走行抵抗との差によって定義されている。また、省燃費制御を停止するとは、アクセル開度に応じた指示燃料噴射量の下降補正を停止して通常制御に復帰させることを意味している。
【0018】
余裕駆動力演算部101は、駆動輪の駆動力と車両の走行抵抗力との差を計算することによって余裕駆動力を演算するように構成されている。省燃費制御部102は、余裕駆動力が所定の閾値以上になった時にアクセル開度に応じた指示燃料噴射量を意図的に下降補正することでエンジンの実燃料消費量を削減して車両の加速力を制限するように構成されている。車両の加速力を制限するとは、エンジンのトルク、エンジンの出力及び/又は車両の加速度を制限することを意味している。コントローラ103は、エンジンを制御するためのあらゆる変数を各種計器類によって把握している。例えば、コントローラ103は、アクセルポジションセンサ104によってアクセル開度を把握している。また、コントローラ103は、アクセル開度に応じた指示燃料噴射量を演算するための指示燃料噴射量演算部105を実装しており、エンジンのシリンダ内に燃料を噴射するための燃料インジェクタ106を制御している。燃料インジェクタ106は、アクセル開度に応じた指示燃料噴射量に従ってエンジンのシリンダ内に燃料を噴射するように構成されている。
【0019】
前述の通り、省燃費制御は余裕駆動力が所定の閾値未満になった時に停止されることになる。しかしながら、例えば、登坂走行を開始することによって実際に余裕駆動力が小さくなった後に省燃費制御を停止しても、登坂走行を開始した後に失速するため、運転者の利便性を損なう虞が有る。
【0020】
従って、省燃費制御装置100は、車両位置を検出するための車両位置検出部107と、地図情報を格納するための地図情報格納部108と、シフトダウン操作を検出するためのシフトダウン操作検出部109と、車両位置と地図情報とに基づいて前方勾配を特定するための前方勾配特定部110と、を更に備えている。前方勾配とは、車両が近い将来に走行すると予測される地点の道路の勾配を意味している。車両位置検出部107は、例えば、グローバルポジショニングシステム受信機によって構成されている。地図情報格納部108は、例えば、コントローラ103と別体の記憶媒体によって構成されている。シフトダウン操作検出部109は、例えば、シフト(ギヤ)ポジションセンサ111と、シフト(ギヤ)ポジションの変更を監視するためのシフト(ギヤ)ポジション監視部112と、によって構成されている。
【0021】
省燃費制御装置100においては、省燃費制御部102は、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出した時は余裕駆動力が所定の閾値未満にならなくても省燃費制御を停止するように更に構成されている。前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であることを省燃費制御を停止するための条件としている理由は、前方勾配が所定の閾値未満の上り勾配である時は登坂走行を開始することによって余裕駆動力が小さくなり難いため、登坂走行を開始した後に失速し難く、運転者の利便性を損ない難いからである。また、前方勾配が下り勾配である時は降坂走行を開始することによって余裕駆動力が小さくならないため、降坂走行を開始した後に失速することが無く、運転者の利便性を損なう虞が無いからである。シフトダウン操作を検出したことを省燃費制御を停止するための条件としている理由は、登坂走行を開始した後に失速したくないとの意思が運転者に有るか否かを確認し、運転者の意思に背いて迄も不要に省燃費制御を停止することを防止するためである。運転者の意思を考慮せずに前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配である時に無条件に省燃費制御を停止すると、車両の省燃費性能を低下させるばかりか運転者が意図していない車両挙動の変動を招く虞が有るため、運転者の利便性と安全性とを損なう虞が有る。
【0022】
また、省燃費制御部102は、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出した時は前方勾配が大きくなるに連れて省燃費制御を段階的又は連続的に停止していくように更に構成されていても構わない。例えば、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配でも前方勾配が小さい場合は、車両の加速力の制限を少し緩めるだけで登坂走行を開始した後の失速を十分に回避することができるからである。また、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配でも前方勾配が大きい場合は、車両の加速力の制限を多く緩めたり停止したりしないと、登坂走行を開始した後の失速を十分に回避することができないからである。従って、前方勾配が大きくなるに連れて省燃費制御を段階的又は連続的に停止していくことによって、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配でも出来る限り省燃費制御を継続することができるようになるため、車両の省燃費性能を向上させることができる。
【0023】
また、省燃費制御装置100は、車両位置と地図情報とに基づいて車両位置と前方勾配との間の距離を演算するための車両勾配間距離演算部113を更に備えており、省燃費制御部102は、車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値以上である時は前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出しても省燃費制御を停止しないように更に構成されていても構わない。例えば、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出しても車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値以上である時は、無駄に省燃費制御を停止することになり、車両の省燃費性能を低下させるからである。なお、前方勾配が大きくなるに連れて車両位置と前方勾配との間の距離の閾値を長くするようにしても構わない。前方勾配が大きくなるに連れて長い助走距離が必要になると考えられるからである。
【0024】
次に、省燃費制御方法に関して説明する。
【0025】
図2に示す通り、本発明の実施の形態に係る省燃費制御方法は、イグニッションキーオン後に省燃費制御装置100によって実行される基本省燃費制御方法M100を含んでいる。基本省燃費制御方法M100は、余裕駆動力演算ステップS101と、余裕駆動力判定ステップS102と、省燃費制御実行ステップS103と、第一省燃費制御停止ステップS104と、を含んでいる。
【0026】
余裕駆動力演算ステップS101においては、余裕駆動力演算部101によって余裕駆動力を演算する。余裕駆動力判定ステップS102においては、省燃費制御部102によって余裕駆動力が所定の閾値以上になったか否かを判定し、余裕駆動力が所定の閾値以上になった時は省燃費制御実行ステップS103に進み、余裕駆動力が所定の閾値未満である時は第一省燃費制御停止ステップS104に進む。省燃費制御実行ステップS103においては、省燃費制御部102によってアクセル開度に応じた指示燃料噴射量を下降補正する省燃費制御を実行する。第一省燃費制御停止ステップS104においては、省燃費制御部102によって省燃費制御を停止する。
【0027】
また、
図3に示す通り、本発明の実施の形態に係る省燃費制御方法は、イグニッションキーオン後に省燃費制御装置100によって実行される拡張省燃費制御方法M200を含んでいる。拡張省燃費制御方法M200は、車両位置検出ステップS201と、前方勾配特定ステップS202と、前方勾配判定ステップS203と、シフトダウン操作判定ステップS204と、第二省燃費制御停止ステップS205と、を含んでいる。
【0028】
車両位置検出ステップS201においては、車両位置検出部107によって車両位置を検出する。前方勾配特定ステップS202においては、前方勾配特定部110によって車両位置と地図情報とに基づいて前方勾配を特定する。前方勾配判定ステップS203においては、省燃費制御部102によって前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であるか否かを判定し、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配である時はシフトダウン操作判定ステップS204に進み、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配でない時は車両位置検出ステップS201に戻る。シフトダウン操作判定ステップS204においては、シフトダウン操作検出部109によってシフトダウン操作を検出したか否かを判定し、シフトダウン操作を検出した時は第二省燃費制御停止ステップS205に進み、シフトダウン操作を検出しなかった時は車両位置検出ステップS201に戻る。第二省燃費制御停止ステップS205においては、省燃費制御部102によって余裕駆動力が所定の閾値未満にならなくても省燃費制御を停止する。また、第二省燃費制御停止ステップS205を実行している間は基本省燃費制御方法M100の制御ループを停止し、拡張省燃費制御方法M200を優先することができる。なお、第二省燃費制御停止ステップS205においては、前方勾配が大きくなるに連れて省燃費制御を段階的又は連続的に停止していくようにしても構わない。
【0029】
また、拡張省燃費制御方法M200は、車両位置と地図情報とに基づいて車両位置と前方勾配との間の距離を演算するための車両勾配間距離演算ステップを更に含んでおり、第二省燃費制御停止ステップS205においては、車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値以上である時は前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であると共にシフトダウン操作を検出しても省燃費制御を停止しないようにしても構わない。車両勾配間距離演算ステップは、第二省燃費制御停止ステップS205を実行する前に実行する必要がある。車両勾配間距離演算ステップを実行した後であって第二省燃費制御停止ステップS205を実行する前に車両勾配間距離判定ステップを実行する必要がある。車両勾配間距離判定ステップにおいては、車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値未満であるか否かを判定し、車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値未満である時は後のステップに進み、車両位置と前方勾配との間の距離が所定の閾値以上である時は余裕駆動力演算ステップS101に戻る。
【0030】
以上の通り、前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配であるために登坂走行を開始した後に失速する虞が高く、登坂走行を開始した後に失速したくないとの意思が運転者に有る場合は、余裕駆動力の大小と無関係に登坂走行を開始する前でも省燃費制御を停止している。従って、登坂走行を開始することによって実際に余裕駆動力が小さくなる前に省燃費制御を停止することになるため、登坂走行を開始した後に失速し難く、運転者の利便性を損ない難い。また、登坂走行を開始した後に失速したくないとの意思が運転者に無い場合は、たとえ前方勾配が所定の閾値以上の上り勾配でも省燃費制御を停止しないため、車両の燃費性能を犠牲にすること無く、運転者の利便性を確保することができる。更に、登坂走行に必要となる十分な駆動力によって登坂路を失速せずにスムーズに走行することができるようになるため、運転者がアクセルペダルを無駄に踏み込むことが無くなり、車両の省燃費性能を向上させることができる。
【0031】
なお、シフトダウン操作を検出したことを省燃費制御を停止するための条件としているため、原則的にマニュアルトランスミッション車両を対象としている。但し、運転者の意思によってシフトダウン操作をすることができるオートマチックトランスミッション車両(例えば、パドルシフトを搭載したオートマチックトランスミッション車両又は地図情報を使用して先を見据えた変速制御を行うセミオートマチックトランスミッション車両)に実装することもできる。特に、マニュアルトランスミッション車両にあっては、車両の加速力を制限することによって運転者に早め早めのシフトアップを促すことができるため、省燃費制御を実行することによって車両の省燃費性能を大きく向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
100 省燃費制御装置
101 余裕駆動力演算部
102 省燃費制御部
103 コントローラ
104 アクセルポジションセンサ
105 指示燃料噴射量演算部
106 燃料インジェクタ
107 車両位置検出部
108 地図情報格納部
109 シフトダウン操作検出部
110 前方勾配特定部
111 シフト(ギヤ)ポジションセンサ
112 シフト(ギヤ)ポジション監視部
113 車両勾配間距離演算部
M100 基本省燃費制御方法
S101 余裕駆動力演算ステップ
S102 余裕駆動力判定ステップ
S103 省燃費制御実行ステップ
S104 第一省燃費制御停止ステップ
M200 拡張省燃費制御方法
S201 車両位置検出ステップ
S202 前方勾配特定ステップ
S203 前方勾配判定ステップ
S204 シフトダウン操作判定ステップ
S205 第二省燃費制御停止ステップ