特許第6772750号(P6772750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772750
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】車両のステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/184 20060101AFI20201012BHJP
   B62D 1/181 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B62D1/184
   B62D1/181
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-202658(P2016-202658)
(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公開番号】特開2018-62315(P2018-62315A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼清 暁大
(72)【発明者】
【氏名】石橋 慶憲
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−223974(JP,A)
【文献】 特開2015−098203(JP,A)
【文献】 特開2003−327133(JP,A)
【文献】 特開2015−101200(JP,A)
【文献】 実開平06−075958(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0135882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に支持され一対の保持部を有する固定ブラケットと、該固定ブラケットに対し摺動可能に支持されると共に前記車体に対し揺動可能に支持されるステアリングコラムと、前記固定ブラケットの一対の保持部のうちの一方の保持部と前記ステアリングコラムとの間に介装される剛体と、前記一対の保持部のうちの他方の保持部に支持されるばね部材であって、平板部と、該平板部の一端から延出し前記他方の保持部に固定される第1の脚部と、当該平板部の他端から延出し前記他方の保持部に当接するように配置される第2の脚部を有する断面略コ字状のばね部材と、該ばね部材の変形量を規制する規制手段とを備えたことを特徴とする車両のステアリング装置。
【請求項2】
前記規制手段は、前記第2の脚部に形成される長穴と、該長穴に嵌合され前記他方の保持部に固定されるピンによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両のステアリング装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記他方の保持部に形成され、前記第2の脚部の摺動を規制する壁部によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両のステアリング装置。
【請求項4】
前記規制手段は、前記他方の保持部に形成され、前記第2の脚部の摺動を規制する粗面部によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両のステアリング装置。
【請求項5】
前記規制手段は、前記第1の脚部及び前記第2の脚部を囲繞するように配設される枠部材によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両のステアリング装置。
【請求項6】
前記ばね部材の前記ステアリングコラムとの当接面に支持される摺動部材を備えると共に、前記剛体の前記ステアリングコラムとの当接面に支持される摺動部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の車両のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング装置に関し、特に、車体に対しステアリングコラムが揺動可能に支持されるステアリング装置に係る。
【背景技術】
【0002】
車体に対しステアリングコラムが揺動可能に支持され、ステアリングホイールの操作位置を調整し得るチルト機構を備えたステアリング装置が知られており、例えば、下記の特許文献1には、「ステアリングコラムを容易に組み付け得ると共に、組付後は押圧機構によって確実にステアリングコラムを保持し得るステアリング装置を提供すること」を目的とし(特許文献1の段落〔0005〕に記載)、「ステアリングホイールを後端に支持し、車体に対する揺動中心を前方に配置すると共に、該揺動中心回りに揺動可能に支持するステアリングコラムと、下方に延出して対向する一対の保持部間に前記ステアリングコラムを保持し、上方を前記車体に固定する固定ブラケットと、該固定ブラケットの一対の保持部と前記ステアリングコラムとの間に夫々介装し、前記ステアリングコラムを摺動自在に押圧支持する一対の押圧機構を備え、前記車体に対する前記ステアリングホイールの操作位置を調整し得る車両のステアリング装置において、前記一対の押圧機構のうちの少なくとも一方が、前記固定ブラケットの保持部に移動可能に支持すると共に前記ステアリングコラムを摺動自在に保持する摺動部材と、該摺動部材と前記保持部との間に介装し当該摺動部材を前記ステアリングコラムに押圧するように付勢する付勢手段と、該付勢手段の付勢力に抗して前記摺動部材を前記保持部に係止する係止位置と、前記摺動部材の前記保持部への係止状態を解除する解除位置を選択し得る係脱手段とを備えることとした」ステアリング装置が提案されている(同段落〔0006〕に記載)。
【0003】
更に、下記の特許文献2においては、特許文献1を従来技術とし「ステアリングコラムの中心位置を容易に設定し得ると共に、左右振動剛性の一層の向上を可能とするステアリング装置を提供すること」を目的とし(特許文献2の段落〔0005〕に記載)、「ステアリングコラムを摺動自在に支持する支持機構が、一対の保持部の一方とステアリングコラムとの間に介装されるばね部材と、一対の保持部の他方とステアリングコラムとの間に介装される剛体で構成されている」ステアリング装置が提案されている(同段落〔0009〕に記載)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−81809号公報
【特許文献2】特開2015−223974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の押圧機構は二つのばね部材で構成されているのに対し、特許文献2に記載の支持機構(前記押圧機構に対応)は一つのばね部材と剛体及び摺動部材で構成されており、剛体によってステアリングコラムの中心位置を容易に設定することができると共に、ばね部材によって安定した保持圧力を確保することができ、左右振動剛性の一層の向上が可能となり、ステアリングコラムを適切に保持することができる。然し乍ら、特許文献2に記載の機構においては車体の左右間で剛性に差が生ずるため、この差を極力小さくすることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、車体に対しステアリングコラムが揺動可能に支持される車両のステアリング装置において、固定ブラケットに支持されステアリングコラムを押圧保持する剛体及びばね部材に起因する車体左右間の剛性の差を極力小さくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、本発明は、車体に支持され一対の保持部を有する固定ブラケットと、該固定ブラケットに対し摺動可能に支持されると共に前記車体に対し揺動可能に支持されるステアリングコラムと、前記固定ブラケットの一対の保持部のうちの一方の保持部と前記ステアリングコラムとの間に介装される剛体と、前記一対の保持部のうちの他方の保持部に支持されるばね部材であって、平板部と、該平板部の一端から延出し前記他方の保持部に固定される第1の脚部と、当該平板部の他端から延出し前記他方の保持部に当接するように配置される第2の脚部を有する断面略コ字状のばね部材と、該ばね部材の変形を規制する規制手段とを備えたステアリング装置である。
【0008】
上記のステアリング装置において、前記規制手段を、前記第2の脚部に形成される長穴と、該長穴に嵌合され前記他方の保持部に固定されるピンによって構成するとよい。また、前記規制手段を、前記他方の保持部に形成され、前記第2の脚部の摺動を規制する壁部によって構成してもよい。あるいは、前記規制手段を、前記他方の保持部に形成され、前記第2の脚部の摺動を規制する粗面部によって構成してもよい。更に、前記規制手段を、前記第1の脚部及び前記第2の脚部を囲繞するように配設される枠部材によって構成してもよい。
【0009】
上記のステアリング装置において、更に、前記ばね部材の前記ステアリングコラムとの当接面に支持される摺動部材を備えると共に、前記剛体の前記ステアリングコラムとの当接面に支持される摺動部材を備えたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のステアリング装置においては、車体に支持され一対の保持部を有する固定ブラケットと、固定ブラケットに対し摺動可能に支持されると共に車体に対し揺動可能に支持されるステアリングコラムと、固定ブラケットの一対の保持部のうちの一方の保持部とステアリングコラムとの間に介装される剛体と、一対の保持部のうちの他方の保持部に支持されるばね部材であって、平板部と、その一端から延出し他方の保持部に固定される第1の脚部と、平板部の他端から延出し他方の保持部に当接するように配置される第2の脚部を有する断面略コ字状のばね部材と、ばね部材の変形を規制する規制手段とを備えたものであり、この規制手段によってばね部材の変形量が制限されるので、車体左右間の剛性の差を極力小さくすることができる。この場合において、剛体のみでなく、ばね部材が用いられるので、良好な組付性を維持することができる。
【0011】
上記のステアリング装置において、規制手段を、第2の脚部に形成される長穴と、長穴に嵌合され他方の保持部に固定されるピンによって構成し、また、他方の保持部に形成され、第2の脚部の摺動を規制する壁部によって構成し、あるいは、他方の保持部に形成され、第2の脚部の摺動を規制する粗面部によって構成し、あるいは、第1の脚部及び第2の脚部を囲繞するように配設される枠部材によって構成すれば、第1の脚部及び/又は第2の脚部の撓みが適切に規制され、ばね部材の変形量が制限される。しかも、何れのばね部材についても、規制手段を含め、良好な組付性を確保することができる。
【0012】
上記のステアリング装置において、更に、ばね部材のステアリングコラムとの当接面に支持される摺動部材を備えると共に、剛体のステアリングコラムとの当接面に支持される摺動部材を備えたものとすれば、ステアリングコラムの円滑な揺動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るステアリング装置の一部の組み付け状態を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における固定ブラケット部の正面図である。
図3】本発明の一実施形態に供されるばね部材の平面図である。
図4】本発明の一実施形態に供されるばね部材及び固定ブラケット部の正面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るばね部材及び固定ブラケット部の正面図である。
図6】本発明の更に他の実施形態に係るばね部材及び固定ブラケット部の正面図である。
図7】本発明の更に他の実施形態に係るばね部材及び枠部材の斜視図である。
図8】本発明の別の実施形態に係るばね部材及び固定ブラケット部の正面図である。
図9】本発明の更に別の実施形態に係るばね部材及び固定ブラケット部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係るステアリング装置の一部を示すもので、本実施形態においては、車体(図示せず)に対しステアリングコラム1が揺動可能に支持され、ステアリングホイール(図示せず)の操作位置を調整し得るように構成されている。ステアリングコラム1は機械的あるいは電気的に転舵機構(図示せず)に連結されており、この転舵機構はステアリングホイールの操作に応じて駆動され、車輪操舵機構(図示せず)を介して操舵輪(図示せず)を転舵するように構成されている。
【0015】
固定ブラケット2は、図2に示すように、車両の下方に延出して対向する一対の保持部21、22を有し、一方の保持部21とステアリングコラム1との間に剛体3が介装されると共に、他方の保持部22にばね部材4が支持されている。剛体3は、その頂面に合成樹脂製の摺動部材33がステアリングコラム1に当接するように支持され、その本体部は保持部21に固定されている。本実施形態の剛体3は金属製であるが、ばね部材4に比し十分に高いばね定数を有する硬質材料で形成された部材としてもよい。尚、剛体3に相当する部分を保持部21と一体的に形成することとしてもよく、これによって部品点数を低減することができる。
【0016】
保持部22に支持されるばね部材4は、図3及び図4に示すように、平板部40と、この平板部の一端から延出し保持部22に固定される第1の脚部41と、平板部40の他端から延出し保持部22に当接するように配置される第2の脚部42を有し、断面略コ字状に形成されている。図4に示すように、第1の脚部41は固定ブラケット2の保持部21にリベットRによって固定されているが、第2の脚部42はその先端部が保持部22に対して摺動可能に支持されている。
【0017】
そして、ばね部材4の変形を規制する規制手段として、本実施形態においては第2の脚部42に形成された長穴42aに、保持部22に固定されたピンPが嵌合されており、これらによって第2の脚部42の撓みが規制され、ばね部材4の変形量が制限されるように構成されている。即ち、長穴42aの長手方向端部がピンPに当接すると第2の脚部42の保持部22に対する摺動が阻止されるので、第2の脚部42の撓みが規制される。このとき、長穴42aとピンPとの間の摺動抵抗を調整することによって、第2の脚部42の撓み特性を適宜設定することができる。更に、平板部40の頂面には合成樹脂製の摺動部材43が支持されている。
【0018】
而して、図2に示すように、固定ブラケット2の保持部21、22とステアリングコラム1との間に夫々、剛体3(及び摺動部材33)とばね部材4(及び摺動部材43)が介装された状態となり、これらによってステアリングコラム1が摺動自在に支持され、規制手段(長穴42a及びピンP)によってばね部材4の変形量が適切に制限されるので、車体左右間の剛性の差を極力小さくすることができる。しかも、上記のばね部材4の付勢力によってステアリングコラム1が摺動部材33(ひいては剛体3)に押接された状態で保持されるので、剛体3によってステアリングコラム1の中心位置を容易に設定することができる。尚、図1に示す駆動機構5は従前の電動チルト機構と同様であるので説明は省略するが、その制御に応じてステアリングコラム1が揺動し、チルト作動が行われる。
【0019】
規制手段としては、上記の長穴42a等に代えて、図5に示すように、保持部22に形成され、第2の脚部42の摺動を規制する壁部22aによって構成することができ、これによって第2の脚部42の撓みが規制される。即ち、第2の脚部42は、その先端部が壁部22aに当接するまでの微小距離(s)の摺動に制限されるので、第2の脚部42の撓みが規制される。
【0020】
あるいは、上記の規制手段として、図6及び図7に示すように、第1の脚部41及び第2の脚部42を囲繞するように配設される剛体の枠部材6によって構成することができ、この枠部材6によって第1及び第2の脚部41、42の撓みが規制される。
【0021】
また、上記の規制手段としては、図8に示すように、保持部22に形成され、第2の脚部42の摺動を規制する粗面部22bによって構成することができ、第2の脚部42の先端部の摺動時に生ずる摺動抵抗によって第2の脚部42の撓みが規制される。あるいは、図9に示すように保持部22に傾斜面22cを形成することとしてもよく、この傾斜面22cに対し第2の脚部42の先端部が摺動する際に生ずる摺動抵抗によって第2の脚部42の撓みが規制される。更に、上記の粗面部22bを傾斜面22c上に形成することとしてもよい。
【0022】
尚、前述の摺動部材33、43によってステアリングコラム1に対する円滑な移動を確保することができるが、これらに代えて、あるいは、これらに加えて、剛体3及びばね部材4(又は摺動部材33、43)とステアリングコラム1との当接面のうち少なくとも一方に対しコーティング処理を行うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 ステアリングコラム
2 固定ブラケット
21、22 保持部
3 剛体
4 ばね部材
5 駆動機構
6 枠部材
40 平板部
41 第1の脚部
42 第2の脚部
33、43 摺動部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9