(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炉内に設けられた複数のシリコン芯棒を通電加熱し、該炉内に供給した原料ガスを反応させて、前記シリコン芯棒表面に多結晶シリコンを生成させる多結晶シリコン反応炉であって、
炉内中央部に前記シリコン芯棒を加熱可能なヒータを備え、
前記ヒータよりも前記炉内の外周側に前記シリコン芯棒を備え、
前記ヒータは、前記シリコン芯棒の上下方向に沿って複数段のヒータ小棒を組み合わせて形成されたヒータ芯棒を有しており、
前記ヒータ芯棒において、下段側のヒータ小棒は、上段側に配置されるヒータ小棒よりも前記炉内の外周側に配置されていることを特徴とする多結晶シリコン反応炉。
前記下段側のヒータ小棒の長さ方向に対する垂直面の横断面積は、前記上段側のヒータ小棒の長さ方向に対する垂直面の横断面積と同等か又は小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコン反応炉。
【背景技術】
【0002】
半導体材料となる高純度の多結晶シリコンの製造方法として、シーメンス法が知られている。シーメンス法では、クロロシランと水素との混合ガスからなる原料ガスを、加熱したシリコン芯棒に接触させ、その表面に原料ガスの反応によって多結晶シリコンを析出させる製造方法である。この製造方法を実施する装置として、密閉した反応炉に多数のシリコン芯棒を立設した多結晶シリコン反応炉が用いられている。一般に、このシリコン芯棒は、上端部で連結部材により連結され、全体としてΠ字状に形成されており、その両下端部が反応炉の炉底に設置された電極に固定されている。
【0003】
そして、その両端に位置する電極からシリコン芯棒に通電され、そのジュール熱によってシリコン芯棒全体を原料ガスの加熱分解温度である、例えば900℃から1200℃程度に加熱される。炉内に供給された原料ガスは、このように加熱されたシリコン芯棒の表面に接触して熱分解または水素還元され、シリコン芯棒の表面に多結晶シリコンが析出される。この反応が連続して進行することによって、棒状多結晶シリコンに成長する。
【0004】
シリコン芯棒は、高純度の多結晶シリコン又は単結晶シリコン等により形成される。ところが、高純度のシリコン芯棒は高抵抗であり、このようなシリコン芯棒の通電は、常温では開始できない。このため、予めシリコン芯棒をある程度の温度まで加熱することにより比抵抗を下げ、シリコン芯棒へ通電することが行われている。そして、このような通電を行う前の加熱を行うために、例えば、特許文献1に開示されているように、反応炉内にカーボン製の長尺状のヒータを設けることが行われている。また、シリコン芯棒を加熱する別の方法として、特許文献2や特許文献3では、ヒータの材質に高融点の抵抗性材料やシリコンからなる材料を使用する方法が開示されている。さらに、シリコン芯棒の通電前の加熱方法として、反応炉内にヒータを設置する方法以外にも、例えば特許文献4には、反応炉外部から内部へ熱の供給を行う方法も開示されており、シリコン芯棒の加熱時のヒータからの汚染の低減が課題とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高純度多結晶シリコン製造においては、その製造過程においても不純物の低減が求められ、特許文献1では、カーボン製のヒータを反応炉の中央部に設置して使用し、シリコン芯棒を速やかに温度上昇させることで、析出するシリコンの生産性向上を図る方法が行われている。
特許文献2や特許文献3に開示されている方法においては、カーボン由来の汚染物は低減できるものの、特許文献2では高融点金属からの汚染が課題として残されている。一方、シリコンからなるヒータにおいても一定の品質向上の効果が認められるものの、その製造段階で極微量ではあるがリンやヒ素、ホウ素などの不純物を加えることから、特許文献3の方法においても、さらなる品質の向上には課題が残る。
【0007】
特許文献4においては、反応炉内部にシリコン芯棒の初期加熱時に汚染源となるヒータを設置しない方法であるが、多結晶シリコン反応炉自体に改造を施す必要があるため、設備費の増大や耐久性などに課題がある。また、この方法では、シリコン芯棒を加熱するヒータからの汚染の影響を排除できるが、炉壁も同時に加熱されやすくなるため、金属汚染を引き起こす可能性も考えられることから、更なる高純度化においては課題が残る。
【0008】
特許文献5においては、多結晶シリコン反応炉(多結晶シリコンの製造装置)に逆U字からなるヒータを設置しており、ヒータの水平方向の配置が容易に変更できることで、シリコン芯線棒(シリコン芯棒)の初期加熱の具合、シリコン芯線棒へのシリコンの析出への影響、およびヒータへのシリコンの析出の具合、の3つの観点からの最適配置が容易なものとなる等、シリコン析出への効果は認められるものの、シリコン品質への言及はなされていない。
以上のように、多結晶シリコン製造におけるシリコン芯棒の初期加熱方法においては、多方面からの検討が行われているが、不純物の影響を低減する方法としては未だ課題は解決されていない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ヒータによるシリコン芯棒の加熱を短時間に行うことができ、高純度の多結晶シリコンを生成可能な多結晶シリコン反応炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
多結晶シリコン反応炉においては、反応炉を構成する炉壁からのアウトガスの影響による不純物汚染等を避けるため、炉壁や基台、金属製の電極等の冷却が行われる。一般的には、ベルジャ型の反応炉の場合、ベルジャの炉壁にも冷却用の冷媒を流通させるが、ベルジャ下部側から上部側への流通が行われる場合、反応炉内の基台側、すなわち反応炉の下部側は上部側に比べて温度が低い傾向になる。また、反応炉の炉壁側は中央部と比べて温度が低い傾向になる。このため、シリコン芯棒を加熱するためのヒータは、炉壁側よりは炉の中央部側に配置する方が加熱効率がよく、炉の上部側よりも下部側のシリコン芯棒を効率的に加熱することが望ましい。また、シリコン芯棒を加熱するヒータとしては、高温領域において安定した加熱ができることから、カーボン材を原料としたヒータが使用される。このカーボンヒータは、一般的には使用時の汚染を低減するため、使用する前に塩素雰囲気等での高温処理において不純物の除去等が行われるが、ヒータ由来の汚染を低減することは困難を要する。このため、ヒータの使用はなるべく短時間で行われることが望ましい。
【0011】
本発明は、炉内に設けられた複数のシリコン芯棒を通電加熱し、該炉内に供給した原料ガスを反応させて、前記シリコン芯棒表面に多結晶シリコンを生成させる多結晶シリコン反応炉であって、炉内中央部に前記シリコン芯棒を加熱可能なヒータを備え、前記ヒータよりも前記炉内の外周側に前記シリコン芯棒を備え、前記ヒータは、前記シリコン芯棒の上下方向に沿って複数段のヒータ小棒を組み合わせて形成されたヒータ芯棒を有しており、前記ヒータ芯棒において、下段側のヒータ小棒は、上段側に配置されるヒータ小棒よりも、前記炉内の外周側に配置されている。
【0012】
このようにヒータ小棒を複数段組み合わせることにより、下段側のヒータ小棒を炉内の最内周位置のシリコン芯棒に近い位置に配置することが可能となり、反応炉下部側のシリコン芯棒の加熱を促進するとともに、シリコン芯棒の上部側は、下部側と比べて下段側のヒータ小棒よりもシリコン芯棒から離して配置できる。これにより、従来のような長尺状のヒータに比べ、短時間でシリコン芯棒を通電可能な温度まで加熱できるとともに、ヒータ由来の汚染の程度を低減できる。
【0013】
この際、炉内中央部(基台中心部から最内周位置のシリコン芯棒の内側までの領域)に配置されたヒータにより、ヒータに近い位置(最内周位置)のシリコン芯棒から徐々に加熱が行われ、このシリコン芯棒が通電可能となる状態までに温度上昇し、予め所定の電圧をシリコン芯棒の電極に印加しておくことで、シリコン芯棒は自身の通電によって抵抗発熱状態となる。そして、発熱状態となったシリコン芯棒の輻射熱が周囲のシリコン芯棒を加熱することにより、反応炉の外側のシリコン芯棒が加熱されて通電され、抵抗発熱状態となる。ヒータへの通電は、少なくともヒータの近くのシリコン芯棒に通電がなされて発熱状態となった後に、切断することができる。そして、ヒータへの通電は短時間で行われることから、ヒータが必要以上の高温に加熱されることはなく、ヒータの損傷を防止でき、ヒータ由来の不純物が多結晶シリコン中に取り込まれることを抑制できる。
【0014】
本発明の多結晶シリコン反応炉において、前記下段側のヒータ小棒の長さ方向に対する垂直面の横断面積は、前記上段側のヒータ小棒の長さ方向に対する垂直面の横断面積と同等か又は小さく形成されているとよい。
また、本発明の多結晶シリコン反応炉において、前記下段側のヒータ小棒の抵抗率は、前記上段側のヒータ小棒の抵抗率と同等か又は高く形成されているとよい。
【0015】
ヒータを構成する各段のヒータ小棒の長さ方向に対する垂直面の横断面積や、抵抗率を上記のように調整することで、下段側のヒータ小棒の発熱量を大きくして、上段側のヒータ小棒の発熱量を小さくすることができる。したがって、シリコン芯棒の下部側から上部側にかけてより効果的に短時間で加熱を行うことができる。
また、本発明の多結晶シリコン反応炉において、シリコン芯棒を加熱するヒータを、複数のヒータ小棒で構成し、上段側のヒータ小棒を下段側のヒータ小棒よりもシリコン芯棒から離して(遠くに)配置することで、シリコン芯棒へのシリコン析出により径が太くなることでシリコン芯棒の上部がヒータに接触することによる汚染の発生や通電トラブルの発生などを防止でき、さらに、シリコン析出後のシリコンロッドの反応炉からの取り出しにおいて、取り扱い上のハンドリングの負荷や破損などの危険性なども低減できる。また、本発明の多結晶シリコン反応炉は、ヒータ使用前のヒータ由来の不純物低減のための加熱処理などにおいて、ヒータ小棒の構成とすることで、長尺状のヒータの熱処理を行う場合と比べて、大型の加熱処理設備を必要とせず、比較的小型の処理設備で処理が可能であるので、設備の初期投資やランニングコストの点でメリットが大きい。
【0016】
本発明の多結晶シリコン反応炉において、前記ヒータは、前記炉内の中央部に複数配置されているとよい。
複数のヒータを配置する構成とすることで、単位時間当たりのヒータ全体の発熱量が増えることから、さらに短時間でのシリコン芯棒の加熱が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数段のシリコン小棒からなるヒータにより、シリコン芯棒を比較的温度が低くなりやすいその下部側を上部側よりも優先的に短時間で加熱できるので、シリコン芯棒通電までの時間が短縮でき、ヒータ由来の不純物が多結晶シリコン中に取り込まれることを抑制でき、高純度の多結晶シリコンを生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る多結晶シリコン反応炉の一実施形態について説明する。
図1は、本発明が適用される多結晶シリコン反応炉を模式的に表した全体図である。この多結晶シリコン反応炉100は、炉底を構成する基台1と、この基台1上に着脱自在に取り付けられた釣鐘形状のベルジャ2とを備え、炉内に設けられた複数のシリコン芯棒31を通電加熱することにより、炉内に供給した原料ガスを反応させて、シリコン芯棒31の表面に多結晶シリコンを生成する。また、多結晶シリコン反応炉100には、シリコン芯棒31の通電を行うための加熱用のヒータ4が基台1の中央部(基台1中心部から最内周位置のシリコン芯棒31の内側までの領域)に設けられ、ヒータ4よりも基台1(炉内)の外周側にシリコン芯棒31が配置されている。
【0020】
基台1の上面10は、ほぼ平坦な水平面に形成されており、その上面10には、
図1又は
図2に示すように、生成される多結晶シリコンの種棒となるシリコン芯棒31が取り付けられる接続用部材5Aと、ヒータ4が取り付けられる接続用部材5Bと、クロロシランガスと水素ガスとを含む原料ガスを炉内に供給するためのガス供給口と、反応後のガスを炉外に排出するためのガス排出口とが、それぞれ複数設けられている。
【0021】
原料ガスのガス供給口は、各シリコン芯棒31に対して均一に原料ガスを供給することができるように、基台1の上面10の中央部を除いてほぼ全域に分散して適宜の間隔をあけて複数設置されている。また、ガス供給口は、ヒータ4の加熱に影響を与えないように、例えば、炉内の基台中央部のヒータ4が取り付けられる接続用部材5Bから離れた位置に設置されている。なお、図示は省略するが、これらガス供給口は、炉外の原料ガス供給源に接続されている。また、ガス排出口は、適宜の間隔をあけて複数設置され、図示は省略するが、外部の排ガス処理系に接続されている。
【0022】
前述したように、多結晶シリコン反応炉100の基台1の上面10には、シリコン芯棒31を保持および通電するための接続用部材5Aが複数設けられており、これらの接続用部材5Aを介して複数のシリコン芯棒31が電源ケーブル(図示略)に接続され、電流が流れるようになっている。
また、多結晶シリコン反応炉100の基台1の上面10には、シリコン芯棒31を加熱するためのヒータ4を保持するための接続用部材5Bが設けられており、これら接続用部材5Bを介してヒータ4に電流が流れるようになっている。
【0023】
シリコン芯棒31が取り付けられる接続用部材5Aは、
図2に示すように、基台1に形成された電極(図示略)に取り付けられ、その電極とシリコン芯棒31との間を接続するホルダ部51と、このホルダ部51の上部に取り付けられてシリコン芯棒31の下端部を保持する保持部52とを備えている。
【0024】
また、ヒータ4が取り付けられる接続用部材5Bは、
図2及び
図3に示すように、基台1に形成され、基台1とは絶縁された電極55と、電極55に取り付けられてヒータ4の下端部を保持する保持部56とを備えており、保持部56を介して、電極55とヒータ4との間が接続されている。また、保持部56は、略円柱状に形成された導電材からなり、その上部に、ヒータ4が挿入される保持穴が形成され、下部には、電極55を螺合可能な雌ねじ孔が形成されている。
【0025】
ヒータ4は、カーボンを基材としたヒータであり、前述したように、炉内の中央部に配設された接続用部材5Bによって保持されることで基台1の上面10に立設されており、本実施形態の多結晶シリコン反応炉100には、ヒータ芯棒40が、その上端部で連結部材44により接続されることで、逆U字状に形成されたヒータ4が1組設けられている。なお、各ヒータ4(ヒータ芯棒40)は、近接した周辺のシリコン芯棒31の全長に輻射熱が伝えられるように、シリコン芯棒31の全長に見合う高さに設定されている。
ヒータ4を構成するヒータ芯棒40は、各シリコン芯棒31の上下方向に沿って、複数段のヒータ小棒を組み合わせて構成されるものであり、本実施形態の多結晶シリコン反応炉100では、
図2に示すように、ヒータ芯棒40は、下段側のヒータ小棒41と、上段側のヒータ小棒42とが組み合わされて、二段のヒータ小棒41,42により構成されている。そして、下段に配置される下段側のヒータ小棒41は、上段側に配置されるヒータ小棒42よりも、炉内(基台1)の中央部の外周側に配置され、シリコン芯棒31に近い位置に設けられている。
【0026】
具体的には、
図2に示すように、下段側のヒータ小棒41は、接続用部材5Bによって保持される。例えば、
図3に示すように、下段側のヒータ小棒41の下端部が接続用部材5Bの保持部56に挿入され、この下段側のヒータ小棒41は、保持部56の外側面側から固定ビス58により押圧されることで固定され、基台1の上方に延びて立設されている。そして、
図4に示すように、下段側のヒータ小棒41の上端部に、接続部材43を介して、上段側のヒータ小棒42の下端部が取り付けられており、下段側のヒータ小棒41の軸心と上段側のヒータ小棒42の軸心とが、水平方向にずれて配置されている。
【0027】
接続部材43には、
図4に示すように、下段側のヒータ小棒41の上端部と、上段側のヒータ小棒42の下端部とを挿通可能な2つの挿通孔43aが設けられており、それぞれのヒータ小棒41,42はナット46が螺合可能な状態で接続部材43とともに固定されている。
【0028】
また、前述したように、2本のヒータ芯棒40の上段側のヒータ小棒42の間が、連結部材44により接続されることにより、ヒータ4が逆U字状に形成されている。連結部材44には、
図5に示すように、各ヒータ芯棒40の上段側のヒータ小棒42の上端部を挿通可能な2つの挿通孔44aが設けられ、それぞれのヒータ小棒はナット47が螺合可能な状態で連結部材44とともに固定されている。
【0029】
なお、ヒータ4を構成する各ヒータ小棒41,42及び接続部材43、ナット46、連結部材44、ナット47は、カーボンにより形成されており、ヒータ小棒41,42の長さ方向に対する垂直面の横断面積は、略同一の大きさで形成されている。
【0030】
このように構成されるヒータ4では、シリコン芯棒31の上部側において、上段側のヒータ小棒42が下段側のヒータ小棒41よりもシリコン芯棒31から離れた位置に配置される。これにより、多結晶シリコン反応炉100の下部側に位置するシリコン芯棒31の下部側は、上部側と比べてその近い位置に配置された下段側のヒータ小棒41により加熱されることにより、シリコン芯棒31の下部側を上部側よりも短時間で加熱させることができる。
【0031】
シリコン芯棒31は、ヒータ4の周囲に配設された接続用部材5Aによって保持され、各シリコン芯棒31の下端部が接続用部材5Aの保持部52に挿入されることで固定され、
図1に示すように、基台1の上方に延びて立設されている。各シリコン芯棒31の上端部は、シリコンで形成された両端に円筒状の貫通孔が形成された連結部材34が取り付けられ、全体としてΠ字状をなすシード組み立て体が構成されている。
【0032】
また、各シード組み立て体は、例えば、基台1の中心から概略同心円状に配置されているが、必ずしも全てが同心円状でなくてもよく、一部のシード組み立て体のシリコン芯棒31を半径方向等に並べて配置したものを含む構成としてもよい。
【0033】
なお、多結晶シリコン反応炉100では、炉自体の温度上昇を抑制するために、ベルジャ2や基台1等の冷却が行われる。
【0034】
以上のように構成される多結晶シリコン反応炉100において、ヒータ4に接続されている各接続用部材5Bに所定の電圧を印加することで、ヒータ4を電気抵抗により発熱させることができる。これにより、ヒータ4の下段側のヒータ小棒41を上段側のヒータ小棒42よりも最内周位置のシリコン芯棒31に近い位置に配置しているので、シリコン芯棒31の下部側は、その近い位置に配置された下段側のヒータ小棒41により加熱が促進される。その結果、シリコン芯棒31の上部側とともに下部側の加熱も進み、シリコン芯棒31を全長にわたって短時間で加熱させることができ、それに伴いシリコン芯棒31の抵抗値が下がってくる。この際、シリコン芯棒31の接続用部材5Aにも一定の電圧を印加しておくことで、シリコン芯棒31は短時間で通電状態とすることができる。
【0035】
そして、ヒータ4に近い位置に配置されている最内周位置のシリコン芯棒31が通電可能となる状態までに加熱されて温度上昇すると、シリコン芯棒31が通電されることによって抵抗発熱状態となり、その輻射熱が隣接する周囲のシリコン芯棒31に伝わって加熱される。その伝熱現象は、多結晶シリコン反応炉100の半径方向等に徐々に伝播して、最終的に炉内の全てのシリコン芯棒31が通電され、発熱状態となる。そして、これらのシリコン芯棒31が、原料ガスの熱分解温度又は水素還元温度まで加熱されると、ガス供給口から導入された原料ガスがシリコン芯棒31の表面上で反応し、多結晶シリコンが生成される。
なお、ヒータ4への通電は、少なくともヒータ4に近い最内周位置のシリコン芯棒31に通電がなされてシリコン芯棒31が通電状態となった後に、切断することができる。
【0036】
このように、本実施形態の多結晶シリコン反応炉100では、シリコン芯棒31の上部側の加熱とともに下部側の加熱も進み、その結果、シリコン芯棒31の全長にわたって短時間で加熱できるので、ヒータ4からの不純物による汚染が抑制でき、高純度の多結晶シリコンを生成できる。
【0037】
なお、上記実施形態の多結晶シリコン反応炉100では、ヒータ4を構成する各段のヒータ小棒41,42の長さ方向に対する垂直面の横断面積を略同一(同等)の大きさで形成していたが、下段側のヒータ小棒41の長さ方向に対する垂直面の横断面積を、上部側のヒータ小棒42の長さ方向に対する垂直面の横断面積よりも小さく形成することとしてもよい。また、下段側のヒータ小棒41の抵抗率を上段側のヒータ小棒42と同等か又は高く形成することとしてもよい。
このように、ヒータ4を構成する各段のヒータ小棒41,42の長さ方向に対する垂直面の横断面積や、抵抗率を上記のように調整して、下段側のヒータ小棒41の発熱量を上段側のヒータ小棒42の発熱量よりも大きくすることで、比較的温度が低い反応炉下部側に位置するシリコン芯棒31を短時間で加熱することができる。
【0038】
また、本実施形態では、ヒータ4を1組設けているが、ヒータ4のセット数を2組又は3組等のように、複数のヒータを配置する構成としてもよい。ヒータ4の組数を増やして配置する構成とすることで、単位時間当たりのヒータ全体の発熱量が増えることから、さらに短時間でのシリコン芯棒の加熱が可能となる。
なお、炉内の中央部に複数のヒータを配置する際は、ヒータに近接する各シリコン芯棒の位置に対して均等位置に配置することが望ましい。
【0039】
また、図示は省略するが、炉内に複数のヒータを配置する場合、複数組のヒータ同士は、絶縁部材を用いて一定の距離をあけた状態で互いに連結されていることが望ましい。複数組のヒータ同士を一定の距離をあけて互いに連結された状態としておくことで、反応炉への原料ガス供給時のガス流の勢いによりヒータに揺れが生じた場合でも、ヒータ同士、又は、ヒータとシリコン芯棒との接触を防止できる。また、ヒータとシリコン芯棒との間に一定の距離をあけておくことで、ヒータやシリコン芯棒の通電トラブルや折損などの破損を防止でき、シリコン芯棒の加熱を安定した状態で行うことができる。この場合、例えば各ヒータの連結部材44に、ヒータ同士の接触を防止する絶縁部材が取り付けられるように貫通孔を設けておくとよい。
【0040】
また、上記実施形態の多結晶シリコン反応炉100では、ヒータ芯棒40を下段側のヒータ小棒41と上段側のヒータ小棒42とにより二段で構成していたが、三段以上の複数段のヒータ小棒を組み合わせて構成してもよい。
例えば、
図6に示すように、三段(最下段、中段、最上段)のヒータ小棒75〜77を有するヒータ芯棒40Sを構成した場合には、最下段に配置されるヒータ小棒75が、それよりも上段側に配置される中段のヒータ小棒76及び最上段のヒータ小棒77よりも炉内の外周側に配置され、さらに中段のヒータ小棒76が最上段のヒータ小棒77よりも炉内の外周側に配置される。
【0041】
また、上記実施形態の多結晶シリコン反応炉100では、ヒータ4が取り付けられる接続用部材5Bは、基台1の電極に取り付けられた保持部56にヒータ4の下端部を保持し、固定ビス58で固定する構成としたが、ヒータ4の固定手段はこれに限定されない。図示は省略するが、例えば保持部56にヒータ4(ヒータ小棒41)の下端部を保持可能な保持穴を形成しておくことにより、ヒータ4を、保持部56の保持穴に螺合し、保持する構成としてもよい。
【0042】
また、上記実施形態の多結晶シリコン反応炉100では、
図4に示すように、下段側のヒータ小棒41と、上段側のヒータ小棒42との間を接続する接続部材43をナット46で締め付けることにより、基端側のナット46と先端側のナット46の間に接続部材43を挟んで固定することとしていたが、接続部材43とヒータ小棒41,42との固定手段はこれに限定されない。図示は省略するが、例えば固定ビスを用いて、接続部材43の側面より、挿通孔43aの内周面に、ヒータ小棒41,42の側面を押圧することにより、接続部材43とヒータ小棒41,42とを接触させた状態を維持し、固定することにしてもよい。
【0043】
なお、下段側のヒータ小棒41の上端部と上段側のヒータ小棒42の下端部の先端部の断面は、円形や角形でも良いが、接続部材43の挿通孔43aは、先端部の形状に合わせて円形や角形(例えば、四角孔)で形成され、強固に固定される。なお、固定ビスを2個以上使用して、接続部材43の異なる側面側から固定ビスでヒータ小棒41,42の先端側面部を押圧して固定してもよい。
【0044】
また、上記実施形態の多結晶シリコン反応炉100では、
図5に示すように、各ヒータ芯棒40の間を接続する連結部材44を、ナット47で締め付けることにより、基端側のナット47と先端側のナット47の間に連結部材44を挟んで固定することとしていたが、連結部材44とヒータ芯棒40との固定手段はこれに限定されない。図示は省略するが、例えば固定ビスを用いて、連結部材44の挿通孔44aの内周面に、連結部材44の側面より上段側のヒータ小棒42の側面を押圧することにより、連結部材44と上段側のヒータ小棒42とを接触させた状態を維持し、固定することにしてもよい。
【0045】
この場合、上段側のヒータ小棒42の先端部は、中腹部よりも縮小された円形または角形(例えば、四角形)に形成されており、連結部材44の挿通孔44aは、ヒータ小棒42の先端部の形状に合わせて円形や角形(例えば、四角孔)で形成され、強固に固定される。なお、固定ビスを2個以上使用して、連結部材44の異なる側面側から固定ビスでヒータ小棒42の先端側面部を押圧して固定してもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態である多結晶シリコン反応炉について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。