特許第6772762号(P6772762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6772762-画像記録装置 図000002
  • 特許6772762-画像記録装置 図000003
  • 特許6772762-画像記録装置 図000004
  • 特許6772762-画像記録装置 図000005
  • 特許6772762-画像記録装置 図000006
  • 特許6772762-画像記録装置 図000007
  • 特許6772762-画像記録装置 図000008
  • 特許6772762-画像記録装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772762
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20201012BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20201012BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B41J29/38 205
   B41J29/38 350
   B41J29/38 102
   B41J2/165 203
   B41J2/01 401
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-212052(P2016-212052)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2018-69571(P2018-69571A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽一郎
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/030975(WO,A1)
【文献】 特開2006−167987(JP,A)
【文献】 特開平05−079667(JP,A)
【文献】 特開2003−182190(JP,A)
【文献】 特開2007−144882(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0153601(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度測定部と、
気温、及び、気温と相関を有するパラメータの少なくともいずれかである気温情報の1日の推移を示す参照気温データを記憶する記憶部と、
時間を計時する計時部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記温度測定部の測定結果に基づいて、前記気温情報を取得する気温情報取得処理と、
前記気温情報取得処理により取得した前記気温情報、及び、前記計時部により計時される時間に基づいて、所定時点から前記気温情報取得処理により取得した前記気温情報の推移を示す測定気温データを算出する気温データ算出処理と、
前記記憶部に記憶された前記参照気温データ、及び、前記気温データ算出処理により算出した前記測定気温データに基づいて、時刻を推定する時刻推定処理と、
前記時刻推定処理により推定した時刻に関連した、時刻関連処理と、
を実行することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記時刻関連処理は、前記時刻推定処理により推定した時刻に基づいて、前記画像記録装置の動作に関する制御を行う処理であることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記参照気温データは、1日を所定時間毎に分割して得られる複数の時間帯それぞれに対応する複数の前記気温情報を含むデータであり、
前記制御部は、
前記気温データ算出処理において、前記気温情報取得処理により取得した前記気温情報、及び、前記計時部により計時される時間に基づいて、前記所定時点から、前記所定時間と同じ時間幅を有する複数の測定期間それぞれに対応する複数の前記気温情報を、前記測定気温データとして算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記時刻推定処理において、
前記複数の時間帯のうちの1つの時間帯を注目時間帯と仮定し、当該注目時間帯に前記所定時点が属するとしたときの、前記複数の測定期間に対応する前記気温情報と、前記参照気温データにおいて前記複数の測定期間に係る前記時間帯に対応する前記気温情報とのズレ量に関する指標を、前記複数の時間帯それぞれを前記注目時間帯として仮定したそれぞれの場合について算出し、
前記複数の時間帯のうち、前記注目時間帯として仮定した際に算出された前記指標が示すズレ量が最も小さい時間帯に、前記所定時点が属すると推定することを特徴とする請求項3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記時刻推定処理において、
前記複数の時間帯をそれぞれ前記注目時間帯と仮定して算出された前記指標が示すズレ量のいずれもが、所定の閾値以上である場合には、時刻の推定を行わないことを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記気温データ算出処理により算出した前記測定気温データ、及び、前記時刻推定処理により推定した時刻に基づいて、前記記憶部に記憶された前記参照気温データを更新する更新処理をさらに実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、
外部から前記参照気温データを取得して、前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記時刻推定処理において、前記記憶部に記憶された前記参照気温データ、及び、前記気温データ算出処理により算出した前記測定気温データに基づいて、前記所定時点の時刻を推定し、その後、この推定した前記所定時点の時刻、及び、前記所定時点から現在までの間に前記計時部により計時された時間に基づいて、現在時刻をさらに推定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
駆動部をさらに備え、
前記制御部は、
前記時刻関連処理において、前記時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて、前記駆動部を制御することを特徴とする請求項8に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記駆動部の駆動モードとして、通常モードと、前記通常モードよりも駆動音が小さい静音モードとを有しており、
前記制御部は、
前記時刻関連処理において、前記時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて、前記通常モード及び前記静音モードのいずれの駆動モードで前記駆動部を駆動させるかを選択することを特徴とする請求項9に記載の画像記録装置。
【請求項11】
被記録媒体に画像を記録する画像記録部と、
前記画像記録部のメンテナンスを行うメンテナンス部と、
をさらに備え、
前記記憶部には、1日のうち、前記メンテナンス部による前記メンテナンスの実行を許可する時刻である許可時刻を規定した許可時刻情報がさらに記憶されており、
前記制御部は、
前記メンテナンス部による前記メンテナンスが必要か否かを判断する判断処理をさらに実行し、
前記判断処理により前記メンテナンスが必要であると判断した際において、前記時刻推定処理により推定した現在時刻が、前記記憶部に記憶された前記許可時刻情報が示す前記許可時刻になったときに、前記メンテナンス部に前記メンテナンスを実行させるメンテナンス処理を、前記時刻関連処理として実行することを特徴とする請求項8に記載の画像記録装置。
【請求項12】
被記録媒体に画像を記録する画像記録部と、
前記画像記録部のメンテナンスを行うメンテナンス部と、
をさらに備え、
前記記憶部には、1日のうち、前記メンテナンス部による前記メンテナンスの実行を許可する時刻である許可時刻を規定した許可時刻情報がさらに記憶されており、
前記所定時点は、商用電源から前記画像記録装置に電力が供給されていない電源オフ状態から、電力が供給される電源オン状態に切り替わった時点であり、
前記制御部は、
前記時刻推定処理において、
前記複数の時間帯をそれぞれ前記注目時間帯と仮定して算出された前記指標が示すズレ量のいずれかが前記閾値未満である場合には、前記指標が示すズレ量が最も小さい時間帯に、前記所定時点が属すると推定し、この推定、及び、前記所定時点から現在時刻までの間に前記計時部により計時された時間に基づいて、現在時刻を推定し、
前記複数の時間帯をそれぞれ前記注目時間帯と仮定して算出された前記指標が示すズレ量のいずれもが前記閾値以上である場合には、現在時刻の推定は行わず、
さらに、前記制御部は、
前記メンテナンス部による前記メンテナンスが必要か否かを判断する判断処理を実行し、
前記判断処理により前記メンテナンスが必要であると判断した際において、前記時刻推定処理により現在時刻の推定を行った場合には、推定した現在時刻が前記記憶部に記憶された前記許可時刻情報が示す前記許可時刻になったときに、前記メンテナンス部に前記メンテナンスを実行させ、前記時刻推定処理により現在時刻の推定を行わなかった場合には、前記計時部により計時される時間に基づいて、前記所定時点から24時間の整数倍の時間が経過した時点において、前記メンテナンス部に前記メンテナンスを実行させるメンテナンス処理を、前記時刻関連処理として実行することを特徴とする請求項5に記載の画像記録装置。
【請求項13】
前記計時部は、商用電源から前記画像記録装置に電力が供給される電源オン状態において、内部時計として時刻の計時も行うものであり、
前記制御部は、
商用電源から前記画像記録装置に電力が供給されていない電源オフ状態から、前記電源オン状態に切り替わったときに、前記気温情報取得処理、前記気温データ算出処理、及び前記時刻推定処理を実行することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像記録装置の一例として、インクを吐出する印刷ヘッドと、印刷ヘッドのインクの吐出状態を回復する回復機構と、時刻を計時する計時回路と、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。一般的なインクジェットプリンタでは、計時回路により計時される時刻に基づいて、様々な制御を行っており、例えば、特許文献1のインクジェットプリンタでは、計測される時刻に基づいて回復機構が作動されている。また、計時回路は、商用電源から電力供給を受けていない電源オフの状態においても時刻の計時を継続するために、電池を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−144882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、計時回路は電池を備えているものの、電源オフの状態が長期間にわたると電池切れとなる。このため、電池が電池切れとなった以降においては、電源オンの状態になったとしても、計時回路により計時される時刻は不正確となる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電源オフの状態が長期間にわたったとしても、時刻を推定することが可能な画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、第1の発明の画像記録装置は、温度測定部と、気温、及び、気温と相関を有するパラメータの少なくともいずれかである気温情報の1日の推移を示す参照気温データを記憶する記憶部と、時間を計時する計時部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度測定部の測定結果に基づいて、前記気温情報を取得する気温情報取得処理と、前記気温情報取得処理により取得した前記気温情報、及び、前記計時部により計時される時間に基づいて、所定時点から前記気温情報取得処理により取得した前記気温情報の推移を示す測定気温データを算出する気温データ算出処理と、前記記憶部に記憶された前記参照気温データ、及び、前記気温データ算出処理により算出した前記測定気温データに基づいて、時刻を推定する時刻推定処理と、前記時刻推定処理により推定した時刻に関連した、時刻関連処理とを実行する。
【0007】
1日の気温の推移には規則性がある。このため、記憶部に記憶された1日の気温情報の推移を示す参照気温データと、所定時点から気温情報取得処理により取得した気温情報の推移を示す測定気温データとを用いることで、時刻を推定することができる。これにより、推定した時刻に関連した処理を適切に実行することができる。
【0008】
第2の発明の画像記録装置は、前記第1の発明において、前記時刻関連処理は、前記時刻推定処理により推定した時刻に基づいて、前記画像記録装置の動作に関する制御を行う処理である。この構成によれば、推定した時刻に基づいて、画像記録装置の動作に関する制御を適切に実行することができる。
【0009】
第3の発明の画像記録装置は、前記第1又は2の発明において、前記参照気温データは、1日を所定時間毎に分割して得られる複数の時間帯それぞれに対応する複数の前記気温情報を含むデータであり、前記制御部は、前記気温データ算出処理において、前記気温情報取得処理により取得した前記気温情報、及び、前記計時部により計時される時間に基づいて、前記所定時点から、前記所定時間と同じ時間幅を有する複数の測定期間それぞれに対応する複数の前記気温情報を、前記測定気温データとして算出する。この構成によれば、参照気温データが含む複数の気温情報それぞれに対応する時間帯の時間幅と、測定気温データが含む複数の気温情報それぞれに対応する測定期間の時間幅とが同じであるため、これら参照気温データ及び測定気温データに基づく、時刻推定処理を簡易化することができる。
【0010】
第4の発明の画像記録装置は、前記第3の発明において、前記制御部は、前記時刻推定処理において、前記複数の時間帯のうちの1つの時間帯を注目時間帯と仮定し、当該注目時間帯に前記所定時点が属するとしたときの、前記複数の測定期間に対応する前記気温情報と、前記参照気温データにおいて前記複数の測定期間に係る前記時間帯に対応する前記気温情報とのズレ量に関する指標を、前記複数の時間帯それぞれを前記注目時間帯として仮定したそれぞれの場合について算出し、前記複数の時間帯のうち、前記注目時間帯として仮定した際に算出された前記指標が示すズレ量が最も小さい時間帯に、前記所定時点が属すると推定する。この構成によれば、所定時点が属する時間帯を推定することができる。
【0011】
第5の発明の画像記録装置は、前記第4の発明において、前記制御部は、前記時刻推定処理において、前記複数の時間帯をそれぞれ前記注目時間帯と仮定して算出された前記指標が示すズレ量のいずれもが、所定の閾値以上である場合には、時刻の推定を行わない。ズレ量のいずれもが閾値以上の場合には、時刻の推定を精度よく行えない可能性が高い。従って、この場合には推定を行わないようにすることで、時刻推定処理による推定の信頼性を向上させることができる。
【0012】
第6の発明の画像記録装置は、前記第1〜第5のいずれかの発明において、前記制御部は、前記気温データ算出処理により算出した前記測定気温データ、及び、前記時刻推定処理により推定した時刻に基づいて、前記記憶部に記憶された前記参照気温データを更新する更新処理をさらに実行する。この構成によれば、参照気温データがより正確なデータとなるため、以降の時刻推定処理における時刻の推定精度を高めることができる。
【0013】
第7の発明の画像記録装置は、前記第1〜第6のいずれかの発明において、前記制御部は、外部から前記参照気温データを取得して、前記記憶部に記憶させる。この構成によれば、参照気温データがより正確なデータとなるため、以降の時刻推定処理における時刻の推定精度を高めることができる。
【0014】
第8の発明の画像記録装置は、前記第1〜第7のいずれかの発明において、前記制御部は、前記時刻推定処理において、前記記憶部に記憶された前記参照気温データ、及び、前記気温データ算出処理により算出した前記測定気温データに基づいて、前記所定時点の時刻を推定し、その後、この推定した前記所定時点の時刻、及び、前記所定時点から現在までの間に前記計時部により計時された時間に基づいて、現在時刻をさらに推定する。この構成によれば、現在時刻を推定することができる。
【0015】
第9の発明の画像記録装置は、前記第8の発明において、駆動部をさらに備え、前記制御部は、前記時刻関連処理において、前記時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて、前記駆動部を制御する。この構成によれば、推定した現在時刻に基づいて、駆動部の制御を適切に行うことができる。
【0016】
第10の発明の画像記録装置は、前記第9の発明において、前記駆動部の駆動モードとして、通常モードと、前記通常モードよりも駆動音が小さい静音モードとを有しており、前記制御部は、前記時刻関連処理において、前記時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて、前記通常モード及び前記静音モードのいずれの駆動モードで前記駆動部を駆動させるかを選択する。この構成によれば、推定した現在時刻に基づいて、駆動部の駆動モードを適切に選択することができる。
【0017】
第11の発明の画像記録装置は、前記第8の発明において、被記録媒体に画像を記録する画像記録部と、前記画像記録部のメンテナンスを行うメンテナンス部と、をさらに備え、前記記憶部には、1日のうち、前記メンテナンス部による前記メンテナンスの実行を許可する時刻である許可時刻を規定した許可時刻情報がさらに記憶されており、前記制御部は、前記メンテナンス部による前記メンテナンスが必要か否かを判断する判断処理をさらに実行し、前記判断処理により前記メンテナンスが必要であると判断した際において、前記時刻推定処理により推定した現在時刻が、前記記憶部に記憶された前記許可時刻情報が示す前記許可時刻になったときに、前記メンテナンス部に前記メンテナンスを実行させるメンテナンス処理を、前記時刻関連処理として実行する。この構成によれば、推定した現在時刻に基づいて、メンテナンス部によるメンテナンスを、許可時刻に実行することができる。
【0018】
第12の発明の画像記録装置は、前記第5の発明において、被記録媒体に画像を記録する画像記録部と、前記画像記録部のメンテナンスを行うメンテナンス部と、をさらに備え、前記記憶部には、1日のうち、前記メンテナンス部による前記メンテナンスの実行を許可する時刻である許可時刻を規定した許可時刻情報がさらに記憶されており、前記所定時点は、商用電源から前記画像記録装置に電力が供給されていない電源オフ状態から、電力が供給される電源オン状態に切り替わった時点であり、前記制御部は、前記時刻推定処理において、前記複数の時間帯をそれぞれ前記注目時間帯と仮定して算出された前記指標が示すズレ量のいずれかが前記閾値未満である場合には、前記指標が示すズレ量が最も小さい時間帯に、前記所定時点が属すると推定し、この推定、及び、前記所定時点から現在時刻までの間に前記計時部により計時された時間に基づいて、現在時刻を推定し、前記複数の時間帯をそれぞれ前記注目時間帯と仮定して算出された前記指標が示すズレ量のいずれもが前記閾値以上である場合には、現在時刻の推定は行わず、さらに、前記制御部は、前記メンテナンス部による前記メンテナンスが必要か否かを判断する判断処理を実行し、前記判断処理により前記メンテナンスが必要であると判断した際において、前記時刻推定処理により現在時刻の推定を行った場合には、推定した現在時刻が前記記憶部に記憶された前記許可時刻情報が示す前記許可時刻になったときに、前記メンテナンス部に前記メンテナンスを実行させ、前記時刻推定処理により現在時刻の推定を行わなかった場合には、前記計時部により計時される時間に基づいて、前記所定時点から24時間の整数倍の時間が経過した時点において、前記メンテナンス部に前記メンテナンスを実行させるメンテナンス処理を、前記時刻関連処理として実行する。電源オフ状態から電源オン状態に切り替わった時点は、メンテナンスの実行が許可される許可時刻である可能性が高い。従って、時刻推定処理により現在時刻の推定を行わなかった場合には、この時点から24時間の整数倍の時間が経過した時点においてメンテナンス部にメンテナンスを実行させることで、メンテナンスが許可時刻に実行される可能性を高くすることができる。
【0019】
第13の発明の画像記録装置は、前記第1〜第12のいずれかの発明において、前記計時部は、商用電源から前記画像記録装置に電力が供給される電源オン状態において、内部時計として時刻の計時も行うものであり、前記制御部は、商用電源から前記画像記録装置に電力が供給されていない電源オフ状態から、前記電源オン状態に切り替わったときに、前記気温情報取得処理、前記気温データ算出処理、及び前記時刻推定処理を実行する。この構成によれば、電源オフ状態となることで計時部が内部時計として時刻を計時することができない場合でも、時刻を推定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、電源のオフ状態が長期間にわたったとしても、時刻を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
図2】インクジェットプリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
図3】(a)は参照気温データを示す図であり、(b)は測定気温データを示す図である。
図4】時刻推定処理について説明する図である。
図5】時刻推定処理について説明する図である。
図6】時刻推定処理に係るプリンタの動作について説明する図である。
図7】メンテナンスに係るプリンタの動作について説明する図である。
図8】変形例に係るメンテナンスに係るプリンタの動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好適な実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。尚、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、屋内のみならず屋外にも設置され得るプリンタである。
【0023】
図1に示すように、プリンタ1は、画像記録部2、メンテナンス装置6、ユーザインターフェース90(図2参照)、温度測定センサ91、スキャナユニット92(図2参照)、電源回路95(図2参照)、及び、制御装置100等が収容されている。尚、以下では、図1の紙面手前側をプリンタ1の「上方」、紙面向こう側をプリンタ1の「下方」と定義する。また、図1に示す前後方向及び左右方向を、プリンタ1の「前後方向」及び「左右方向」と定義する。以下、前後、左右、上下の各方向語を適宜使用して説明する。
【0024】
画像記録部2は、プラテン21、左右方向(以下、走査方向ともいう)に往復移動可能なキャリッジ22、キャリッジ22に搭載されたインクジェットヘッド23、及び、被記録媒体である記録用紙Pを水平面に沿って前方(以下、搬送方向ともいう)に搬送する搬送機構24を備えている。
【0025】
プラテン21の上面には、記録用紙Pが載置される。また、プラテン21の上方には、走査方向に平行に延びる2本のガイドレール25,26が設けられる。キャリッジ22は、2本のガイドレール25,26に取り付けられ、プラテン21上の記録用紙Pと対向する領域において2本のガイドレール25,26に沿って走査方向に移動可能である。また、キャリッジ22には、駆動ベルト41が取り付けられている。駆動ベルト41は、2つのプーリ42,43に巻き掛けられた無端状のベルトである。一方のプーリ42は、キャリッジ駆動モータ31(図2参照)に連結されている。キャリッジ駆動モータ31によってプーリ42が回転駆動されることで駆動ベルト41が走行し、これにより、キャリッジ22が走査方向に移動する。
【0026】
インクジェットヘッド23は、プラテン21との間に隙間を有する状態でキャリッジ22の下部に取り付けられている。このインクジェットヘッド23の下面は複数のノズル30が開口したインク吐出面(不図示)となっている。また、複数のノズル30は搬送方向に沿って配列されて、4色のインク(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)をそれぞれ吐出する4列のノズル列を構成している。インクジェットヘッド23は、ホルダ27と4本のチューブ28で接続されている。これにより、ホルダ27に装着された4つのインクカートリッジ29の4色のインクが、4本のチューブ28を介してインクジェットヘッド23にそれぞれ供給される。
【0027】
インクジェットヘッド23は、複数のノズル30内のインクにそれぞれ吐出エネルギーを付与する複数の駆動素子(図示省略)と、複数の駆動素子を駆動する駆動IC35(図2参照)を有する。駆動素子としては、圧電素子や、インクを加熱して膜沸騰を生じさせる発熱体などを好適に採用できる。駆動IC35は、各駆動素子に対して、所定の波形を有する駆動信号を供給することにより、各駆動素子を駆動する。
【0028】
インクジェットヘッド23は、キャリッジ22とともに、プラテン21上を搬送される記録用紙Pと対向する領域だけでなく、この対向領域に対して左右両側の位置まで移動可能である。上記対向領域よりも右側には、後述するメンテナンス装置6が配置されている。また、上記対向領域よりも左側には、フラッシング受け70が配置されている。インクジェットヘッド23は、フラッシング受け70と対向している状態で、各ノズル30からインクを吐出させることで、各ノズル30内で増粘したインクを排出する。以下、インク増粘抑制のための、上記のインクの吐出動作を、「フラッシング」と言う。
【0029】
搬送機構24は、プラテン21及びキャリッジ22を挟むように前後に配置された2つの搬送ローラ32,33を有する。2つの搬送ローラ32,33は、搬送モータ34(図2参照)により同期して回転駆動され、インクジェットヘッド23とプラテン21の間において記録用紙Pを前方(搬送方向)へ搬送する。
【0030】
以上の構成において、画像記録部2は、搬送機構24によって記録用紙Pを搬送方向に搬送しつつ、キャリッジ22とともにインクジェットヘッド23を走査方向に移動させながらインクを吐出させることにより、記録用紙Pに所望の画像等を印刷する。即ち、本実施形態のプリンタ1は、シリアル式のインクジェットプリンタである。
【0031】
メンテナンス装置6は、インクジェットヘッド23の吐出特性の維持、回復のためのメンテナンスを行うためのものであり、キャップ部材61、吸引ポンプ62、廃液タンク63等を有する。メンテナンス装置6は、先に触れたように、インクジェットヘッド23がプラテン21上を搬送される記録用紙Pと対向する対向領域よりも右側に配置されている。そして、インクジェットヘッド23が上記対向領域よりも右側に配置されたときに、インクジェットヘッド23とキャップ部材61とが上下に対向する。また、キャップ部材61は、キャップ駆動モータ64(図2参照)によって上下に駆動される。これにより、キャップ部材61は、インクジェットヘッド23のインク吐出面に密着してノズル30を覆うキャップ位置と、インク吐出面から離れたアンキャップ位置との間で移動可能である。
【0032】
吸引ポンプ62は、キャップ部材61に接続されている。キャップ部材61がキャップ位置にあるときに、吸引ポンプ62によりキャップ部材61内を減圧することで、複数のノズル30からキャップ部材61内へインクが強制的に排出される。一般に、このインク排出動作は、吸引パージと呼ばれる。この吸引パージによって、インクに混入している気泡や塵、あるいは、増粘したインク等を排出することが可能である。また、吸引パージによりインクジェットヘッド23から排出されたインクは、廃液タンク63に送られる。
【0033】
ユーザインターフェース90は、ユーザに対する情報の出力、及び、ユーザから情報を取得するためのインターフェースであり、本実施形態では、図2に示すように、操作キー90a及びディスプレイ90bを備えている。操作キー90aは、ユーザからの入力を受け付けて、制御装置100に出力する。ディスプレイ90bは、制御装置100からの指示に従い、種々の情報を表示する。
【0034】
温度測定センサ91は、その周辺温度を測定する、サーミスタ等のセンサであり、周辺温度に応じた電圧信号を制御装置100に出力する。この温度測定センサ91は、プリンタ1内において、測定する温度が、気温の変化に応じて変化する位置に配置されている。本実施形態では、温度測定センサ91は、駆動中に熱を発生するインクジェットヘッド23や搬送機構24などの駆動部から離れた、ホルダ27近傍に配置されている。これにより、制御装置100は、温度測定センサ91からの電圧信号を受けることで、気温と相関を有するパラメータである気温情報を取得することができる。パラメータは、具体的には、気温値が大きくなるとパラメータの値が大きくなるものであってもよいし、気温値が大きくなるとパラメータの値が小さくなるものであってもよい。尚、温度測定センサ91が気温を直接測定できるのであれば、制御装置100は、上記気温情報として気温値そのものを取得してもよい。また、温度測定センサ91の配置箇所は、ホルダ27近傍に限られない。例えば、ホルダ27に、カートリッジ29の残量検知などを行うセンサが取り付けられた基板が設けられ、その基板に温度測定センサ91が取り付けられていてもよい。また、温度測定センサ91は、プリンタ1の廃液タンク63の右側や後ろ側などに配置されていてもよい。
【0035】
スキャナユニット92は、CCDやCIS等を有し、制御装置100からの指示に従い、記録用紙Pに印刷された画像を読み取って、当該画像に係る画像データを生成する。
【0036】
電源回路95は、商用電源(不図示)から電力を受電するための回路である。具体的には、電源回路95は電源プラグを有しており、この電源プラグを商用電源に接続されたコンセントに挿入することで、商用電源から電力を受電することが可能である。また、電源回路95は、商用電源から受電した電力を適宜必要な電圧に変換してプリンタ1内の各部に供給する。
【0037】
図2に示すように、制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、不揮発性メモリ104、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)105、計時回路106、及び計時回路用の充電池107等を備える。制御装置100には、スキャナユニット92、インクジェットヘッド23、キャリッジ駆動モータ31、搬送モータ34、吸引ポンプ62、ユーザインターフェース90等が電気的に接続されている。
【0038】
また、制御装置100には、ローカル接続インターフェース111、及びネットワーク接続インターフェース112が接続されている。ローカル接続インターフェース111は、USBやIEEE1394等により周辺機器とローカル接続(直接接続)するためのインターフェースである。制御装置100は、このローカル接続インターフェース111を介して、PC等の外部装置121aとの間で印刷対象となる画像データの送受信を行うことが可能である。ネットワーク接続インターフェース112は、インターネット115を介して、PC等の外部装置121bとネットワーク接続するためのインターフェースである。制御装置100は、このネットワーク接続インターフェース112を介して、外部装置121bとの間で印刷対象となる画像データの送受信を行うことが可能である。
【0039】
ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。不揮発性メモリ104には、許可時刻情報104a、参照気温データ104b、及び測定気温データ104cなどが記憶される。これらのデータについては後述する。
【0040】
計時回路106は、RTC(リアルタイムクロック:Real time Clock)等の回路であり、時刻の計時を行う内部時計としての機能と、時間の計時を行うタイマーとしての機能を有している。この計時回路106により計時される現在時刻は、ネットワーク接続インターフェース112を介して、インターネット115上にあるNTP(Network Time Protocol)サーバや、NTPサーバに接続された外部装置121bから取得した日時に基づいて補正される。
【0041】
また、計時回路106には充電池107が接続されている。充電池107は、電源回路95が商用電源から電力を受けている電源オン状態のときには電源回路95から供給された電力を充電し、電源回路95が商用電源から電力を受けていない電源オフ状態のときには、計時回路106に充電した電力を出力する。これにより、計時回路106は、充電池107から供給される電力により、電源オフ状態においても所定時間(本実施形態では15時間)の間は、時刻や時間の計時を継続することができる。
【0042】
CPU101は、ROM102に格納されたプログラムを実行することにより、ASIC105を介して、画像記録部2、及び、メンテナンス装置6等の動作を制御する。尚、以下では、CPUによって印刷等の処理を行うものとして説明するが、制御装置100が複数のCPUを備え、複数のCPUによって処理を分担して行ってもよい。また、制御装置100が複数のASICを備え、複数のASICによって処理を分担してもよい。あるいは、1つのASIC単独で処理を行ってもよい。
【0043】
CPU101は、記録用紙Pに対する印刷に関して、以下のような処理を実行する。まず、PC等の外部装置121a,121b、あるいは、ユーザインターフェース90から画像の印刷指令が入力されると、画像記録部2においては、搬送モータ34を制御して記録用紙Pを搬送方向に搬送する。また、画像記録部2のキャリッジ駆動モータ31を制御してインクジェットヘッド23を走査方向に移動させながら、インクジェットヘッド23から記録用紙Pへ向けてインクを吐出させる。
【0044】
さらに、CPU101は、インクジェットヘッド23の吐出特性の維持、回復のために、吸引ポンプ62による吸引パージなどのメンテナンスを自動的に行う。
【0045】
ところで、メンテナンス実行中は、吸引ポンプ62等から駆動音が発生する。このメンテナンスが深夜に実行されると不快に感じるユーザもいる。また、メンテナンス実行中は印刷を行うことができないため、メンテナンスがユーザの使用頻度が高い時間帯に行われると、ユーザの使い心地を損なう虞がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、不揮発性メモリ104には、メンテナンスの実行を許可する許可時刻を規定した許可時刻情報104aが記憶されている。許可時刻は、例えば、深夜の時間帯を避けた12時(正午)等である。尚、この許可時刻情報104aは、ユーザインターフェース90を介してユーザにより設定されてもよく、不揮発性メモリ104に予め設定された固定情報であってもよい。また、許可時刻情報104aが示す許可時刻は、1日の或る一時点の時刻であってもよく、1日のうちの或る時点から或る時点までの間の時間帯であってもよい。
【0047】
そして、CPU101は、メンテナンスが必要となった以降、計時回路106により計時された現在時刻が、許可時刻情報104aが示す許可時刻になったときに、メンテナンス装置6にメンテナンスを実行させる。これにより、メンテナンスは許可時刻に実行されることになるため、ユーザの使い心地を向上させることができる。
【0048】
ところで、計時回路106は、電源オフ状態においても、充電池107から電力が供給されるため、時刻や時間の計時を継続することができる。しかしながら、電源オフ状態が長期間にわたると充電池107が電池切れとなる。このため、充電池107が電池切れとなった以降において電源オン状態に復帰したとしても、計時回路106により計時される現在時刻は不正確となる。例えば、充電池107が計時回路106に電力を供給可能な時間が15時間の場合において、平日はコンセントに電源プラグを1日中挿入しているが、休日はコンセントから電源プラグを1日中取り外されると、休日明けにコンセントに電源プラグが挿入されたとしても、計時回路106により計時される現在時刻は不正確となる。
【0049】
ここで、制御装置100が、ネットワーク接続インターフェース112を介してNTPサーバや外部装置121bに接続されていれば、これらの装置から正確な日時を取得するができるため、計時回路106が計時する現在時刻を補正することは可能である。しかしながら、プリンタ1は、インターネット115に接続されずにスタンドアローンとして使用される場合もあり得る。この場合には、計時回路106が計時する現在時刻を補正することができないため、その時刻は不正確となる。その結果として、計時回路106により計時される現在時刻が実際の時刻と異なることで、上記メンテナンスが許可時刻以外の時刻(例えば、深夜の時間帯)に実行される虞がある。
【0050】
そこで、本実施形態では、CPU101は、電源オフ状態であり充電池107の電池が切れた状態から、電源オン状態になったときに、温度測定センサ91の測定結果に基づいて取得した気温情報を用いて、現在時刻を推定する処理を行うように構成されている。以下、具体的に説明する。
【0051】
1日の気温の推移には規則性がある。具体的には、気温は、通常、5時頃が最も低くなり、14時頃が最も高くなる。また、5時から14時までは気温が上昇し続け、14時から次の日の5時までは気温が下降し続ける。温度測定センサ91の測定結果に基づいて取得した気温情報についても、気温と同様に1日の推移に規則性がある。従って、この取得した気温情報の推移から、時刻を推定することも可能である。
【0052】
不揮発性メモリ104には、気温情報の1日の推移を示す参照気温データ104bが記憶されている。参照気温データ104bは、図3(a)に示すように、1日を1時間毎に分割して得られる24の時間帯それぞれに対応する24の気温情報を含むデータである。本実施形態では、参照気温データ104bの各時間帯に対応した気温情報は、その時間帯において、温度測定センサ91の測定結果に基づいて過去に取得した気温情報の直近10日分の平均値(平均温度)である。尚、この参照気温データ104bは、計時回路106により計時される現在時刻が正確な期間(例えば、NTPサーバから取得した日時に基づいて計時回路106により計時される現在時刻を補正して以降、計時回路106に対して電源回路95又は充電池107からの電力供給が継続されている期間)、又は、後述するようにCPU101により現在時刻の推定が可能な期間において、温度測定センサ91の測定結果に基づいて取得した気温情報を用いて算出される。
【0053】
そして、CPU101は、ユーザによってコンセントに電源プラグが挿入されたとき、つまり、電源オフ状態から電源オン状態に切り替わったときに、以下のような処理を実行する。
【0054】
まず、CPU101は、温度測定センサ91の測定結果に基づいて、気温情報を取得する気温情報取得処理を実行する。そして、CPU101は、この気温情報取得処理により取得した気温情報、及び、計時回路106により計時される時間に基づいて、コンセントに電源プラグが挿入された時点(以下、コンセント挿入時点と称す)から取得した10時間分の気温情報の推移を示す測定気温データ104cを算出する気温データ算出処理を実行する。
【0055】
この気温情報取得処理では、図3(b)に示すように、1時間の時間幅を有する10の測定期間それぞれに対応する10の気温情報を、測定気温データ104cとして算出する。各測定期間に対応する気温情報は、その測定期間において気温情報取得処理により取得した気温情報の平均値でもよく、その測定期間の一時点において気温情報取得処理により取得した気温情報であってもよい。この算出した測定気温データ104cは、不揮発性メモリ104に記憶される。尚、測定気温データ104cは、RAM103などのバッファに記憶してもよい。
【0056】
尚、測定期間の時間幅を、参照気温データ104bが含む気温情報それぞれに対応する時間帯の時間幅と同じにする必要は特にはないが、時間幅を同じにすることで、後述する時刻推定処理を簡易化することができる。また、測定気温データ104cが有する測定期間の数は、10には限定されず複数であればよいが、後述する時刻推定処理における時刻の推定の精度を向上させるためには、測定期間の数は多い方が好ましい。
【0057】
次に、CPU101は、不揮発性メモリ104に記憶された参照気温データ104b、及び、気温データ算出処理により算出した測定気温データ104cに基づいて、現在時刻を推定する時刻推定処理を実行する。具体的には、上記の24の時間帯のうちの1つの時間帯を注目時間帯と仮定し、当該注目時間帯にコンセント挿入時点が属するとしたときの、10の測定期間に対応する気温情報と、参照気温データ104bにおいて10の測定期間に係る時間帯に対応する気温情報とのズレ量に関する指標である評価値Eを、24の時間帯それぞれを注目時間帯として仮定したそれぞれの場合について算出する。本実施形態では、各評価値Eは、以下の式1により算出する。
【0058】
E=√(Σ(M−L)^2/Y)・・・・(式1)
M:測定気温データ104cの或る測定期間の気温情報
L:参照気温データ104bの上記或る測定期間に対応する時間帯の気温情報
Y:測定期間の数
【0059】
以下、1時台の時間帯を注目時間帯とした場合に、上記式1を用いた評価値Eの算出方法について、図4を参照しつつ説明する。尚、図4は、24の時間帯それぞれを注目時間帯と仮定し場合の、各測定期間についての、測定気温データ104cの気温情報から参照気温データ104bの気温情報を減算した温度差、及び、この温度差を用いて算出される評価値Eを示す図である。
【0060】
1時台の時間帯を注目時間帯とした場合、測定気温データ104cの最初の1時間分の測定期間(0〜1時間の測定期間)は、参照気温データ104bの1時台の時間帯に対応する。まず、この測定気温データ104cの最初の1時間分の測定期間の気温情報から、参照気温データ104bの1時台の時間帯の気温情報を減算した温度差(=28.80−28.08=0.78)を算出する。また、測定気温データ104cの次の1時間分の測定期間(1〜2時間の測定期間)は、参照気温データ104bの2時台の時間帯に対応するため、この次の1時間分の測定期間の気温情報から、参照気温データ104bの2時台の時間帯の気温情報を減算した温度差(=29.80−27.83=1.97)を算出する。以下、同様にして、測定気温データ104cの測定期間の気温情報から、参照気温データ104bの測定期間に対応する時間帯の気温情報を減算した温度差を、全測定期間に関して算出する。この後、算出した各温度差を2乗した値の合算値を、測定期間の数で除算した値を、1時台の時間帯を注目時間帯とした場合の評価値E(=5.10)として算出する。
【0061】
以上のように式1を用いて算出される評価値Eは、参照気温データ104bの10の測定期間の気温情報と、参照気温データ104bにおいてこれら測定期間に対応する時間帯の気温情報とのズレ量が小さいほど、小さな値をとる。
【0062】
この評価値Eの算出を、24の時間帯を注目時間帯と仮定したそれぞれの場合について行う。その後、24の時間帯のうち、注目時間帯として仮定した際に算出された評価値Eが最も小さい時間帯に、コンセント挿入時点が属すると推定する。図4に示す例では、8時台を注目時間帯と仮定した場合の評価値E(=0.85)が最も小さい。従って、コンセント挿入時点の時刻は8時台の時間帯であると推定する。このように、24の時間帯それぞれを注目時間帯と仮定した場合の評価値Eをそれぞれ算出することで、コンセント挿入時点が属する時間帯を推定することができる。
【0063】
ここで、図5に、参照気温データ104bが示す1日の気温情報をプロットとするとともに、4時台、6時台、8時台、10時台、12時台それぞれを注目時間帯と仮定した場合それぞれの測定気温データ104cが示す気温情報をプロットしたグラフを図示する。この図5からも分かるように、8時台を注目時間帯と仮定した場合における測定気温データ104cが示す気温情報をプロットした形状は、参照気温データ104bが示す1日の気温情報の推移を示すプロットの形状に最も近似している。このように、この図5からも、コンセント挿入時点の時刻は8時台の時間帯であることが分かる。
【0064】
次に、CPU101は、推定したコンセント挿入時点の時刻、及び、コンセント挿入時点から計時回路106により計時された時間に基づいて、現在時刻の時間帯を推定する。例えば、コンセント挿入時点から計時回路106により計時された時間が10時間である場合には、現在時刻は18時台の時間帯であると推定する。
【0065】
以上のように、CPU101は、温度測定センサ91の測定結果に基づいて取得した気温情報を用いて、現在時刻を推定することができる。その結果として、CPU101は、推定した現在時刻が、不揮発性メモリ104に記憶された許可時刻情報104aが示す許可時刻になったときに、メンテナンス装置6にメンテナンスを実行させることで、メンテナンスが許可時刻に実行される可能性を高くすることができる。
【0066】
ところで、1日の気温の推移に規則性があるとはいえ、その日の天候によっては規則通りに気温が推移しない場合がある。例えば、5時を過ぎても、雨が降っている場合には気温が下降し続けることがある。このように、規則通りに気温が推移しない日に取得した気温情報に基づき測定気温データ104cを算出して、各時間帯を注目時間帯と仮定して評価値Eを算出した場合、算出される評価値Eはいずれもその値が大きくなる。つまり、いずれの時間帯を注目時間帯と仮定して場合においても、測定気温データ104cの10の測定期間に対応する気温情報と、参照気温データ104bにおいて10の測定期間に係る時間帯に対応する気温情報とのズレ量が大きい。従って、これら算出した評価値Eから、最も小さな評価値Eを選択して、コンセント挿入時点の時刻等を推定したとしても、その推定が誤っている可能性が高い。
【0067】
そこで、本実施形態では、CPU101は、時刻推定処理において、各時間帯について算出した評価値Eのいずれもが所定の閾値(例えば、2.0)以上である場合には、コンセント挿入時点の時刻や現在時刻の推定が不可能であると判断して、これらの時刻の推定を行わない。このようにすることで、時刻推定処理により時刻の推定を行ったときの、当該推定の信頼性を向上させることができる。
【0068】
尚、現在時刻の推定を行わなかった場合には、CPU101は、不揮発性メモリ104に記憶された許可時刻情報104aに基づいては、メンテナンス装置にメンテナンスを実行させることができない。ここで、コンセント挿入時点は、ユーザが電源プラグをコンセントに挿入した時点であり、深夜の時間帯である可能性が少なく、メンテナンスの実行が許可される許可時刻である可能性が高い。そこで、本実施形態では、CPU101は、コンセント挿入時点をメンテナンスの実行を許可する許可時刻とする。そして、CPU101は、メンテナンスが必要となった以降、計時回路106により計時される時間に基づいて、コンセント挿入時点から24時間の整数倍の時間が経過した時点において、メンテナンス装置6にメンテナンスを実行させる。これにより、メンテナンス装置6によるメンテナンスが許可時刻に実行される可能性を高くすることができる。
【0069】
(時刻の推定処理)
次に、時刻の推定処理に係るプリンタ1の処理動作の一例について、図6を参照しつつ説明する。なお、以下では、プリンタ1は、インターネット115に接続されておらず、NTPサーバ等から日時の取得を行うことができない状態にあるものとして説明する。また、動作フローの開始時点において、充電池107の電池は切れているものとする。
【0070】
まず、ユーザによってコンセントに電源プラグが挿入される(S1)と、CPU101は、このコンセント挿入時点から、温度測定センサ91の測定結果に基づく気温情報の取得を開始する(S2)。また、計時回路106にコンセント挿入時点を開始点とした時間の計時を開始させる。
【0071】
この後、CPU101は、コンセント挿入時点から10時間経過するまで、温度測定センサ91の測定結果に基づく気温情報の取得を継続する(S3)。そして、コンセント挿入時点から10時間経過したときに(S3:YES)、CPU101は、コンセント挿入時点から取得した気温情報の推移を示す測定気温データ104cを算出して、不揮発性メモリ104に記憶する(S4)。
【0072】
次に、CPU101は、不揮発性メモリ104に記憶された、参照気温データ104b及び測定気温データ104cに基づいて、24の時間帯それぞれを注目時間帯と仮定した場合の評価値Eをそれぞれ算出する(S5)。その後、CPU101は、算出した全ての評価値Eが閾値以上であるか否かを判断する(S6)。算出した少なくともいずれかの評価値Eが閾値未満であると判断した場合(S6:NO)には、CPU101は、24の時間帯のうち、注目時間帯として仮定した際に算出された評価値Eが最も小さい時間帯に、コンセント挿入時点が属すると推定する(S7)。そして、CPU101は、コンセント挿入時点の推定した時刻と、コンセント挿入時点から現在までの間に計時回路106により計時された時間に基づいて、現在時刻を推定する(S8)。なお、この現在時刻の推定については、計時回路106により計時される現在時刻がNTPサーバ等から取得した日時に基づいて補正されるまで継続して実行される。
【0073】
次に、CPU101は、推定したコンセント挿入時点の時刻、コンセント挿入時点から計時回路106により計時された時間、及び、コンセント挿入時点から取得した気温情報に基づいて、不揮発性メモリ104に記憶された参照気温データ104bを更新する(S9)。これにより、参照気温データ104bが、より直近に取得した気温情報に基づいたデータに更新されるため、以降の時刻推定処理における時刻の推定精度を高めることができる。このS9の処理が終了すると、本処理動作を終了する。
【0074】
一方、S6の処理で、算出した全ての評価値Eが閾値以上であると判断した場合(S6:YES)には、CPU101は、時刻の推定が不可能であると判断し、コンセント挿入時点の時刻をメンテナンスの実行を許可する許可時刻とし、コンセント挿入時点からの計時回路106による経過時間の計時を継続する(S10)。このS10の処理が終了すると、本処理動作を終了する。
【0075】
(メンテナンスに係る処理)
次に、メンテナンスに係るプリンタ1の処理動作の一例について、図7を参照しつつ説明する。
【0076】
まず、CPU101は、メンテナンス装置6によるメンテナンスが必要か否かを判断する(S51)。例えば、CPU101は、前回のメンテナンスから一定時間経過しているときに、メンテナンスが必要であると判断する。そして、メンテナンスが必要であると判断した場合(S51:YES)には、CPU101は、時刻推定処理により、現在時刻の推定が可能であるか否かを判断する(S52)。現在時刻の推定が可能であると判断した場合(S52:YES)には、時刻推定処理により推定された現在時刻が、不揮発性メモリ104に記憶された許可時刻情報104aが示す許可時刻であるか否かを判断する(S53)。推定された現在時刻が許可時刻ではないと判断した場合(S53:NO)は、時刻推定処理により推定された現在時刻が許可時刻となるまで待機する。
【0077】
一方で、推定された現在時刻が許可時刻であると判断した場合(S53:YES)には、CPU101は、メンテナンス装置6にメンテナンスを実行させる(S54)。具体的には、まず、CPU101は、キャップ駆動モータ64を制御してキャップ部材61をキャップ位置に移動させる。この後、吸引ポンプ62を制御して、吸引パージを実行する。この吸引パージが終了すると、CPU101は、キャップ駆動モータ64を制御してキャップ部材61をアンキャップ位置に移動させる。以上、メンテナンスを実行することにより、インクジェットヘッド23の吐出特性を回復することができる。このS54の処理が終了すると、S51の処理に戻る
【0078】
一方で、時刻推定処理による現在時刻の推定が不可能であると判断した場合(S52:NO)は、コンセント挿入時点から計時回路106により計時された経過時間が24時間の整数倍であるか否かを判断する(S55)。コンセント挿入時点からの経過時間が24時間の整数倍ではないと判断した場合(S55:NO)は、当該経過時間が24時間の整数倍となるまで待機する。一方で、コンセント挿入時点からの経過時間が24時間の整数倍であると判断した場合(S55:YES)には、メンテナンスを実行すべく、S54の処理に移る。
【0079】
以上、本実施形態によると、不揮発性メモリ104に記憶された参照気温データ104bと、コンセント挿入時点から取得した気温情報の推移を示す測定気温データとを用いることで、コンセント挿入時刻、及び現在時刻を推定することができる。これにより、推定した現在時刻に基づいて、メンテナンス装置6によるメンテナンスを適切に実行することができる。
【0080】
また、電源オフ状態が長時間にわたり、計時回路106が現在時刻を正確に計時することができない場合でも、メンテナンス装置6によるメンテナンスを、時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて適切に実行することができる。
【0081】
以上説明した実施形態において、温度測定センサ91が「温度測定部」に相当し、不揮発性メモリ104が「記憶部」に相当する。計時回路106が「計時部」に相当し、CPU101が「制御部」に相当する。メンテナンス装置6が「メンテナンス部」に相当する。また、CPU101が、時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて、メンテナンス装置6を制御する処理が、「時刻関連処理」に相当する。
【0082】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。
【0083】
上記の実施形態では、メンテナンスは許可時刻においてのみ実行されるように構成されていたが、許可時刻以外の時刻においても実行されるように構成されていてもよい。以下、この変形例について説明する。
【0084】
本変形例では、吸引パージの際の吸引ポンプ62の駆動モードとして、通常モードと、通常モードよりも駆動音が小さい静音モードとの2種類ある。静音モードは、通常モードと比べて、吸引ポンプ62の駆動時間は長いが、吸引ポンプ62の回転速度は遅い駆動モードである。このため、静音モードにおいて、吸引ポンプ62から発生する駆動音は、通常モードのときよりも小さい。
【0085】
そして、CPU101は、計時回路106により計時される現在時刻、又は時刻推定処理により推定した現在時刻が、許可時刻情報104aが示す許可時刻の場合のみ、メンテナンス装置6に通常モードで吸引パージを実行させ、それ以外の場合には静音モードで吸引パージを実行させる。
【0086】
次に、本変形例に係るメンテナンスに係るプリンタ1の処理動作の一例について、図7を参照しつつ説明する。尚、以下では、上述の図6を参照して説明した処理動作との相違点のみ説明する。
【0087】
S53の処理において、推定した現在時刻が許可時刻であると判断した場合(S53:YES)には、CPU101は、吸引ポンプ62の駆動モードとして通常モードを選択し、メンテナンス装置6に通常モードでの吸引パージを実行させる(S60)。このS60の処理が終了すると、S51の処理に戻る。
【0088】
一方で、S53の処理において、推定した現在時刻が許可時刻ではないと判断した場合(S53:NO)には、CPU101は、吸引ポンプ62の駆動モードとして静音モードを選択し、メンテナンス装置6に静音モードでの吸引パージを実行させる(S61)。このS61の処理が終了すると、S51の処理に戻る。
【0089】
また、S55の処理において、コンセント挿入時点からの経過時間が24時間の整数倍であると判断した場合(S55:YES)には、吸引ポンプ62の駆動モードとして通常モードを選択して、S60の処理に移る。一方で、コンセント挿入時点からの経過時間が24時間の整数倍ではないと判断した場合(S55:NO)には、吸引ポンプ62の駆動モードとして静音モードを選択して、S61の処理に移る。以上、本変形例によると、時刻推定処理により推定した現在時刻が、許可時刻である場合には通常モードで吸引パージが実行されるため、メンテナンス時間を短くすることができる。一方で、推定した現在時刻が、許可時刻以外の時刻である場合には静音モードで吸引パージが実行されるため、吸引ポンプ62から発生する駆動音を低減させることができる。
【0090】
以下、その他の変更形態について説明する。
【0091】
上記の実施形態では、時刻関連処理は、時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて、メンテナンス装置6を制御する処理であったが、特にこれに限定されるものではなく、時刻推定処理により推定した時刻に関連した処理であればよい。例えば、時刻関連処理は、時刻推定処理により推定した時刻を、不揮発性メモリ104等のメモリに記憶する処理であってもよい。この場合、後にNTPサーバ等の外部から正確な日時を取得したときに、このメモリに記憶された、時刻推定処理により推定した時刻と、外部から取得した日時に基づいて算出された実際の時刻との間の誤差を求め、この誤差に基づいて、以降の時刻推定処理における評価値Eの上記閾値等を変更してもよい。つまり、メモリに記憶された、時刻推定処理により推定した時刻を、以降の時刻推定処理のためのフィードバックとして利用してもよい。
【0092】
上記の実施形態では、時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて制御される駆動部は、メンテナンス装置6であったが、特にこれに限定されるものではなく、画像記録部2であってもよい。例えば、キャリッジ駆動モータ31によるキャリッジ22の駆動モードとして、上記の変形例と同様に、通常モードと、通常モードよりもキャリッジ22の移動速度が遅い静音モードとを設ける。そして、印刷の際において、CPU101は、時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて、通常モード及び静音モードのいずれの駆動モードでキャリッジ22を駆動させるかを選択してもよい。静音モードとしては、上記以外に、例えば、通常モードよりもエラー時の警告音やユーザインターフェース90の操作音を小さくしたり、通常モードよりも用紙の搬送を遅くして搬送モータ34の駆動音を小さくするモードであってもよい。
【0093】
また、上記メンテナンス装置6を有しておらず、インクジェットヘッド23のメンテナンスは、フラッシングのみで行うように構成されていてもよい。この構成においても、インクジェットヘッド23が、プラテン21上を搬送される記録用紙Pと対向する対向領域から、フラッシング受け70と対向する位置に移動する際に、キャリッジ駆動モータ31から駆動音が発生する。従って、このフラッシングによるメンテナンスについても、上記吸引パージによるメンテナンスと同様に、時刻推定処理により推定した現在時刻に基づいて制御することは、意義がある。
【0094】
また、上記の実施形態では、メンテナンス装置6のメンテナンス対象はインクジェットヘッド23であったが、搬送機構24などの画像記録部2の他の部材であってもよい。
【0095】
また、CPU101は、インターネット115を介してベンダーなどの外部から参照気温データ104bを取得して、不揮発性メモリ104に記憶してもよい。この場合、参照気温データ104bがより正確なデータとなるため、以降の時刻推定処理における時刻の推定精度を高めることができる。なお、CPU101は、外部から参照気温データ104bを取得した際に、この取得時において温度測定センサ91の測定結果に基づいて取得された気温情報を用いて、外部から取得した参照気温データ104bを補正してもよい。この場合、参照気温データ104bを、プリンタ1の設置環境に応じたデータにすることができるため、時刻の推定をより精度よく行うことができる。
【0096】
また、上記の実施形態では、時刻推定処理により推定した時刻に基づいて、不揮発性メモリ104に記憶された参照気温データ104bを更新する構成にされているが、計時回路106により正確に現在時刻が計時されているときに取得した気温情報のみに基づいて参照気温データ104bを更新するように構成されていてもよい。また、参照気温データ104bは、工場出荷時において不揮発性メモリ104に予め記憶された固定データであってもよい。参照気温データ104bを地域毎に不揮発性メモリ104に記憶し、ユーザがセットアップ時にプリンタ1の使用言語を設定したときに、設定した使用言語から地域を推測し、推測した地域に対応する参照気温データ104bを時刻推定処理において使用するデータとして設定してもよい。また、CPU101が、月日や季節に応じて参照気温データ104bを補正するように構成されてもよい。
【0097】
また、時刻推定処理において、現在時刻を推定せずに、コンセント挿入時点のみ推定してもよい。例えば、不揮発性メモリ104に、過去に算出した測定気温データ104cと、種々の駆動部を駆動した、コンセント挿入時点を基準とした時間を記憶しておき、CPU101が、当該測定気温データ104cに基づく時刻推定処理を行うことで、駆動部が駆動された時刻を推定する。そして、推定された駆動部の過去の駆動時刻に基づいて、駆動部を制御するように構成されていてもよい。
【0098】
また、測定気温データ104cは、コンセント挿入時点以外の時点から気温情報取得処理により取得した気温情報に基づいて算出されたデータであってもよい。また、時刻推定処理において、算出した測定気温データ104cが示す気温情報が、一日の気温情報の推移の規則性から明らかに外れていると判断することができる場合には、各時間帯の評価値Eを算出する前に、時刻の推定が不可能であると判断してもよい。例えば、算出した測定気温データ104cが示す気温情報が、1時間単位で高低を繰り返す場合には、時刻の推定が不可能であると判断してもよい。また、時刻推定処理において、24の時間帯全てについての評価値Eを算出する前において、24未満の時間帯についての評価値Eを算出した時点で、コンセント挿入時刻を推定することが可能ならば、全ての時間帯についての評価値Eを算出する必要はない。また、評価値Eは、上記式1以外の方法で求めてもよい。
【0099】
参照気温データ104bが含む気温情報それぞれに対応する時間帯の時間幅、及び、測定気温データ104cに係る測定期間の時間幅は、1時間である必要はなく、例えば15分であってもよい。また、充電池107は必須ではない。充電池107がない場合、コンセントが取り外されると、計時回路106は停止する。その為、本発明のように、現在時刻を推定する時刻推定処理があれば、時刻推定処理が無い場合に比べて、おおよその時刻が分かり、時刻に関連した処理を実行することが可能となる。
【0100】
また、本発明は、インクジェットヘッドを固定した状態で、搬送機構により搬送される用紙に画像を印刷する、所謂ライン式のインクジェットプリンタにも適用されうる。また、レーザプリンタ、サーマルプリンタ、コピー機、FAX等の画像記録装置にも適用されうる。
【符号の説明】
【0101】
1 インクジェットプリンタ(画像記録装置)
2 画像記録部
91 温度測定センサ(温度測定部)
101 CPU(制御部)
104 不揮発性メモリ(記憶部)
106 計時回路(計時部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8