(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記昇圧部による昇圧開始から前記ピエゾ素子の駆動開始までの間に含まれる前記昇圧時間を、温度が高い場合よりも、温度が低い場合に長く設定する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の転がり軸受装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような給油ユニットは、例えば主軸とその外側のハウジングとの間の狭い環状空間に軸受部と共に設置されることから、この給油ユニットでは、保守・管理性向上のため、タンクへの潤滑油の補充頻度を可及的に少なくするのが好ましい。そのためにポンプによる潤滑油の無駄な吐出(消費)を抑える必要があり、また、ポンプから吐出する潤滑油の量を微量とするのが好ましい。
【0005】
吐出する潤滑油の量を微量とするために、ピエゾ素子の駆動により潤滑油を吐出するポンプ(ピエゾポンプ)が提案されている。しかし、このポンプの場合、潤滑油の粘度によって、吐出される潤滑油(油滴)の速度や量が変化する。潤滑油の粘度はその温度の影響を大きく受ける。つまり、潤滑油の粘度が高い(温度が低い)場合、吐出の速度は低く、更には、吐出されないこともある。これに対して、潤滑油の粘度が低い(温度が高い)場合、吐出の速度は高く、吐出量も多くなる傾向にあり、無駄に消費されることがある。このように、ピエゾポンプの場合、粘度(温度)に応じて潤滑油の吐出態様がばらつくという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、ポンプからの潤滑油の吐出態様が、潤滑油の粘度(温度)に応じてばらつくのを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の転がり軸受装置は、内輪、外輪、前記内輪と前記外輪との間に介在している複数の転動体、及び、前記複数の転動体を保持する保持器を有している軸受部と、前記軸受部の軸方向隣りに設けられ前記軸受部に潤滑油を供給するための給油ユニットと、を備え、前記給油ユニットは、ピエゾ素子の駆動により潤滑油を吐出するポンプと、前記ピエゾ素子に印加させる電圧を昇圧させる昇圧部と、前記昇圧部による昇圧開始から前記ピエゾ素子の駆動開始までの間に含まれる昇圧時間を変えて前記ポンプを動作させる制御部と、を有している。
【0008】
この転がり軸受装置によれば、給油ユニットの制御部は、昇圧部における昇圧時間を変えることができるので、ピエゾ素子に印加させる電圧を変えることができる。このため、潤滑油の粘度が高い場合(温度が低い場合)、長い昇圧時間とすることでピエゾ素子に印加させる電圧を高めて、所望の吐出がポンプによって行われる。これに対して、潤滑油の粘度が低い場合(温度が高い場合)、短い昇圧時間とすることでピエゾ素子に印加させる電圧を低くして、所望の吐出がポンプによって行われる。つまり、ポンプからの潤滑油の吐出態様が、潤滑油の粘度(温度)に応じてばらつくのを抑えることが可能となる。
【0009】
なお、前記昇圧時間は変更可能なパラメータであり、制御部がこの昇圧時間を設定(調整)することにより、前記昇圧時間を変えてポンプを動作させてもよく、又は、昇圧時間が異なる複数のパターンが予め設定されており、複数のパターンから所定の一つが選択され、その選択されたパターンに対応する昇圧時間について電圧を昇圧させ、その昇圧させた電圧をピエゾ素子に印加してポンプを駆動させてもよい。
【0010】
また、前記制御部は、温度情報に応じて、前記昇圧時間を変えて前記ポンプを動作させるのが好ましい。この構成によれば、ポンプからの潤滑油の吐出態様が、温度に応じてばらつくのを抑えることが可能となる。なお、温度情報は、給油ユニットが取得する情報であってもよく、その他において取得された情報であってもよい。
【0011】
また、前記制御部は、温度情報に応じて、変更可能なパラメータである前記昇圧時間を設定するのが好ましい。この場合、温度に応じた制御が可能となり、適切な潤滑油の吐出が可能となる。
【0012】
また、前記制御部は、前記昇圧部による昇圧開始から前記ピエゾ素子の駆動開始までの間に含まれる前記昇圧時間を、温度が高い場合よりも、温度が低い場合に長く設定するのが好ましい。この構成により、温度が低い場合(第一の温度の場合)、長い昇圧時間とすることでピエゾ素子に印加させる電圧を高めて、所望の吐出がポンプによって行われ、また、温度が高い場合(第二の温度の場合)、短い昇圧時間とすることでピエゾ素子に印加させる電圧を低くして、所望の吐出がポンプによって行われる。
【0013】
また、前記制御部は、前記昇圧部による昇圧動作の時間を、温度が低い場合よりも、温度が高い場合に短く設定するのが好ましい。温度が高い場合、潤滑油の粘度は低くなることから、ピエゾ素子に印加させる電圧は低くてもよい。そこで、温度が高い場合、前記設定により昇圧時間を短くして消費電力を抑えることができる。
【0014】
また、本発明は、回転装置に設けられ当該回転装置において給油が必要となる給油領域に潤滑油を供給するための給油ユニットであって、ピエゾ素子の駆動により潤滑油を吐出するポンプと、前記ピエゾ素子に印加させる電圧を昇圧させる昇圧部と、前記昇圧部による昇圧開始から前記ピエゾ素子の駆動開始までの間に含まれる昇圧時間を変えて前記ポンプを動作させる制御部と、を有している。
【0015】
この給油ユニットによれば、制御部は、昇圧部における昇圧時間を変えることができるので、ピエゾ素子に印加させる電圧を変えることができる。このため、潤滑油の粘度が高い場合(温度が低い場合)、長い昇圧時間とすることでピエゾ素子に印加させる電圧を高めて、所望の吐出がポンプによって行われ、また、潤滑油の粘度が低い場合(温度が高い場合)、短い昇圧時間とすることでピエゾ素子に印加させる電圧を低くして、所望の吐出がポンプによって行われる。つまり、ポンプからの潤滑油の吐出態様が、潤滑油の粘度(温度)に応じてばらつくのを抑えることが可能となる。
【0016】
また、本発明は、回転装置において給油が必要となる給油領域に、給油ユニットが潤滑油を供給する方法であって、前記給油ユニットは、ピエゾ素子の駆動により潤滑油を吐出するポンプと、前記ピエゾ素子に印加させる電圧を昇圧させる昇圧部と、を有し、前記昇圧部による昇圧開始から前記ピエゾ素子の駆動開始までの間に含まれる昇圧時間を変えて前記ポンプを動作させる。この潤滑油の供給方法によれば、前記給油ユニットと同じ作用効果を奏することが可能となる。
【0017】
また、本発明は、回転装置において給油が必要となる給油領域に潤滑油を供給する給油ユニットを制御する制御部として、コンピュータを機能させるプログラムであって、前記給油ユニットは、ピエゾ素子の駆動により潤滑油を吐出するポンプと、前記ピエゾ素子に印加させる電圧を昇圧させる昇圧部と、を有し、前記制御部は、前記昇圧部による昇圧開始から前記ピエゾ素子の駆動開始までの間に含まれる昇圧時間を変えて前記ポンプを動作させる。このプログラムによれば、前記給油ユニットと同じ作用効果を奏することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ポンプからの潤滑油の吐出態様が、潤滑油の粘度(温度)に応じてばらつくのを抑えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、転がり軸受装置の実施の一形態を示す断面図である。
図1に示す転がり軸受装置10(以下、軸受装置10ともいう。)は、工作機械が有する主軸装置の主軸(軸7)を回転可能に支持するものであり、主軸装置の軸受ハウジング8内に収容されている。
図1では、軸7及び軸受ハウジング8を2点鎖線で示している。なお、この軸受装置10は工作機械以外においても適用可能である。また、以下の説明において、軸受装置10の中心線Cに平行な方向を軸方向と呼び、この軸方向に直交する方向を径方向と呼ぶ。
【0021】
軸受装置10は、軸受部20と給油ユニット40とを備えている。軸受部20は、内輪21、外輪22、複数の玉(転動体)23、及び、これら複数の玉23を保持する保持器24を有しており、玉軸受(転がり軸受)を構成している。更に、この軸受装置10は、円筒状である内輪間座17及び外輪間座18を備えている。
【0022】
給油ユニット40は、全体として円環状であり、外輪間座18の径方向内側に取り付けられており、軸受部20の軸方向について隣りに位置している。給油ユニット40は、軸受部20に潤滑油を供給する機能を有している。給油ユニット40の詳細な構成及び機能については後に説明する。本実施形態では、給油ユニット40(本体部41)と外輪間座18とは別体であるが、これらは一体であってもよい。この場合、給油ユニット40は、給油を行う機能と共に、外輪間座としての機能も有する。
【0023】
本実施形態では、外輪22、外輪間座18及び給油ユニット40が軸受ハウジング8に回転不能として取り付けられており、内輪21及び内輪間座17が軸7と共に回転する。したがって、外輪22が、回転しない固定輪となり、内輪21が、軸7と共に回転する回転輪となる。
【0024】
内輪21は、軸7に外嵌する円筒状の部材であり、その外周に軌道(以下、内輪軌道25という。)が形成されている。本実施形態では、内輪21と内輪間座17とは別体であるが、図示しないが、これらは一体(一体不可分)であってもよい。
外輪22は、軸受ハウジング8の内周面に固定される円筒状の部材であり、その内周に軌道(以下、外輪軌道26という。)が形成されている。本実施形態では、外輪22と外輪間座18とは別体であるが、図示しないが、これらは一体(一体不可分)であってもよい。
【0025】
玉23は、内輪21と外輪22との間に介在しており、内輪軌道25及び外輪軌道26を転動する。保持器24は、環状であり、周方向に沿ってポケット27が複数形成されている。玉23及び保持器24は、内輪21と外輪22との間に形成されている環状空間11に設けられている。
【0026】
保持器24は、全体として環状であり、玉23の軸方向一方側の環状部28aと、玉23の軸方向他方側の環状部28bと、これら環状部28a,28bを連結している複数の柱部29とを有している。環状部28a,28bの間であって周方向で隣り合う柱部29,29の間がポケット27となり、各ポケット27に一つの玉23が収容されている。この構成により、保持器24は、複数の玉23を周方向に間隔をあけて保持することができる。
【0027】
保持器24は、樹脂製(例えば、フェノール樹脂製)であり、内輪21及び外輪22は、軸受鋼等の鋼製である。玉23は、軸受鋼等の鋼製であってもよく、セラミックスであってもよい。
【0028】
図2は、給油ユニット40を軸方向から見た断面図である。給油ユニット40は、全体として円環形状を有している。給油ユニット40は、タンク42及びポンプ43を備えている。タンク42及びポンプ43は、給油ユニット40が有している環状の本体部41に設けられている。給油ユニット40は、制御ユニット44及び電源部45を備えており、更に、温度センサ55も備えている。
【0029】
本体部41は、外輪間座18の内周側に取り付けられており、ポンプ43等を保持するフレームとしての機能を有している。本体部41は円環状の部材であるが中空空間が形成されており、この中空空間にポンプ43、制御ユニット44、電源部45、及び、温度センサ55が設けられている。また、前記中空空間の一つがタンク42となっている。これにより、本体部41、タンク42、ポンプ43、制御ユニット44、電源部45、及び温度センサ55等を含む給油ユニット40は、一体として構成される。
【0030】
図2において、タンク42は、潤滑油(オイル)を溜めるためのものであり、潤滑油をポンプ43へ流すために配管46を通じてポンプ43と繋がっている。
【0031】
図1において、ポンプ43は、軸受部20に潤滑油を供給する機能を有している。この機能を発揮するために、ポンプ43は、潤滑油を吐出するノズル(噴出口)50が設けられているポンプ本体48を有しており、ポンプ本体48は、ノズル50と繋がりかつ潤滑油を溜める空間である油室(内部空間)43bと、ピエゾ素子(圧電素子)43aとを有している。本実施形態のノズル50は、ポンプ本体48が有する壁部49に形成された微小の貫通孔により構成されており、ノズル50は、壁部49の側面において開口している。ポンプ本体48内には、油室43bの壁の一部を構成する弾性変形可能な振動板47が設けられており、この振動板47にピエゾ素子43aが取り付けられている。ピエゾ素子43aに電圧が印加され、ピエゾ素子43aが振動板47を変形させることで、油室43bの容積が変化する。
【0032】
前記のとおり、ピエゾ素子43aが動作することで油室43bの容積が変化し、これにより、油室43bの潤滑油をノズル50から軸受部20の環状空間11に吐出させることができる。特に、ピエゾ素子43aが動作することにより、ノズル50から潤滑油が油滴Pとなって初速を有して吐出される。つまり、ノズル50から油滴Pは飛翔する。ノズル50は、内輪軌道25に向かって開口しており、ノズル50から吐出させた油滴Pは、玉23に当たる、又は、隣り合う玉23,23の間を通過したとしても内輪軌道25に当たることができる。ポンプ43の動作用の電力は電源部45(
図2参照)から供給される。ポンプ43を動作させるタイミング等は制御ユニット44によって制御される。ポンプ43の動作制御については後に説明する。
【0033】
以上より、ポンプ43は、ピエゾ素子43aの駆動により潤滑油を吐出するピエゾポンプであり、タンク42の潤滑油を油室43bにおいて受けると共に、この油室43bの潤滑油をノズル50から油滴Pとして軸受部20のターゲットに向けて噴出させる(飛翔させる)構成となっている。潤滑油の効率的利用の観点から、ポンプ43において一回の吐出動作で定められた量の油滴Pを噴出させ、この油滴Pを軸受部20のターゲットに到達させる。ポンプ43の一回の動作で、ノズル50から数ピコリットル〜数ナノリットルの潤滑油が油滴Pとして噴出される。本実施形態における前記ターゲットは、玉23及び内輪軌道25である。
図1に示す給油ユニット40は、ノズル50から噴出させた油滴Pの通過領域を覆う風防部51を有している。風防部51は、軸受部20が回転することで環状空間11において発生するエアの流れの影響を油滴Pに及ぼすのを防いでいる。
【0034】
図3は、給油ユニット40のブロック図である。給油ユニット40は、タンク42、ポンプ43、制御ユニット44、電源部45、及び温度センサ55を有している。電源部45は、バッテリを含み、所定電圧の電力を出力する。温度センサ55は、給油ユニット40における温度を計測し、計測結果を温度情報として制御ユニット44(演算処理部56)に出力する。温度センサ55は、タンク42内の潤滑油の温度を測定するのが好ましい。制御ユニット44は、演算処理部(制御部)56、昇圧部57、ポンプ駆動部58、及び電圧信号入力部59を有している。
【0035】
演算処理部56は、マイコン(マイクロコンピュータ)からなり、各種演算処理を行う機能を有する。マイコンの内部メモリにプログラムが記憶されており、このプログラムによって前記マイコン(演算処理部56)を、給油ユニット40を制御する制御部として機能させる。すなわち、前記プログラムが演算処理部56において実行されることで、昇圧部57及びポンプ駆動部58の各種制御が行われ、後に説明するが、温度センサ55によって得られた温度情報に基づいて昇圧部57による昇圧時間を変えてポンプ43を動作させる。
【0036】
昇圧部57は、スイッチング素子やトランジスタ等による昇圧回路によって構成されている。昇圧部57は、スイッチング素子等のオン/オフ制御を行って、電源部45の電圧を昇圧する。つまり、昇圧部57は、ポンプ43のピエゾ素子43aに印加させる電圧を昇圧させる機能を有している。
ポンプ駆動部58は、スイッチング素子やトランジスタによって構成されている。ポンプ駆動部58は、スイッチング素子を切り替えることで、昇圧部57によって昇圧させた所定電圧の信号を所定のタイミングでピエゾ素子43aに出力する。前記タイミングは演算処理部56によって制御される。
電圧信号入力部59は、実際のポンプ駆動電圧を取得し、ポンプ43が所定の電圧で動作しているか否かの監視(演算処理部56による監視)に用いられる。
【0037】
ここで、潤滑油の温度と、ポンプ43のノズル50から吐出される油滴Pの吐出速度との関係(従来例)を、
図6により説明する。前記のとおり、ポンプ43の一回の動作で、ノズル50から吐出させる潤滑油(油滴P)は微量(数ピコリットル〜数ナノリットル)であることから、油滴Pの吐出速度は潤滑油の温度の影響を大きく受ける。つまり、温度が高くなると潤滑油の粘性は低下することから、
図6に示すように吐出速度が高くなり、油滴Pの吐出速度が過剰となることがある。これに対して、温度が低くなると潤滑油の粘性は高くなることから、
図6に示すように吐出速度は低くなる。温度が低い場合、油滴Pの吐出速度は不足し、油滴Pが軸受部20の所定のターゲットに到達しないおそれがある。
図6において目標速度を一点鎖線で示しており、この目標速度又はこの目標速度よりも少し高い速度で油滴Pを吐出するのが好ましい。
【0038】
そこで、本実施形態では、温度センサ55によって得られた温度情報に応じて、ポンプ43のピエゾ素子43aに印加する電圧(ポンプ駆動電圧)の大きさを変えるための制御を制御ユニット44が行う。以下、この制御について具体的に説明する。
【0039】
図4及び
図5は、給油ユニット40の機能を説明する説明図であり、それぞれにおいて、(A)は昇圧部57において行われる昇圧オン/オフ制御を示し、(B)は昇圧部57によって昇圧させている電圧の様子(電圧の時間変化)を示し、(C)はポンプ駆動部58から出力されピエゾ素子43aに印加させる電圧(ポンプ駆動電圧)を示している。
図4は、温度が高い場合の説明図であり、
図5は、温度が低い場合の説明図である。
【0040】
昇圧オン/オフ制御を行う昇圧部57が、時刻T1(
図4)でオン状態となると、そのオン状態にある時間帯(時刻T1〜T3)において、電源部45の電源電圧(V1)を昇圧させ、時刻T3において昇圧部57がオフ状態となることで昇圧が停止される。時刻T1の後、所定時間tについて経過すると所定のタイミング(時刻T2)で、ポンプ駆動部58を通じて、電源電圧から昇圧した電圧をピエゾ素子43aに与える。ピエゾ素子43aは昇圧電圧が印加されると、その昇圧電圧に応じた駆動(変形)を開始し、ポンプ43内の油室43bの容積を変化させ、潤滑油を油滴Pとしてノズル50から吐出する。なお、前記タイミング(時刻T2)は、本実施形態の場合、所定時間tの経過直後のタイミングであるが、所定時間tの経過後、(微小)時間を経た後のタイミングであってもよい。
【0041】
前記時刻T1から開始される前記所定時間tは、昇圧部57による昇圧開始からピエゾ素子43aの駆動開始までの間の昇圧時間に相当する。以下、この所定時間tを「昇圧時間t」と呼んで説明する。昇圧時間tが長くなるとポンプ駆動電圧は高くなり、これとは反対に、昇圧時間tが短くなるとポンプ駆動電圧は低くなる。本実施形態の制御ユニット44では、この昇圧時間tを、変更可能なパラメータとしている。
【0042】
図4に示すように、温度が高い場合、昇圧時間tが短く、
図5に示すように、温度が低い場合、昇圧時間tが長い。このように、演算処理部56は昇圧時間tを変える制御を行う。特に本実施形態では、温度センサ55が取得した温度情報に基づいて昇圧時間tを変える制御が行われる。つまり、演算処理部56は、温度情報に応じて、変更可能なパラメータである昇圧時間tを長くしたり短くしたりその長さを設定する。このように、演算処理部56は、昇圧部57における昇圧時間tを変えることができるので、ピエゾ素子43aに印加させる電圧(ポンプ駆動電圧)を変えることができる。
【0043】
昇圧時間tの長さを設定する制御について具体的に説明する。演算処理部56は、昇圧部57による昇圧開始(時刻T1)からピエゾ素子43aの駆動開始(時刻T2)までの間に含まれる昇圧時間tを、温度が高い場合(
図4参照)よりも、温度が低い場合(
図5参照)に長く設定する。この制御により、温度が低い場合(第一の温度の場合、
図5参照)に、長い昇圧時間tとすることでピエゾ素子43aに印加させる電圧(ポンプ駆動電圧)を高めて、所望の吐出がポンプ43によって行われる。つまり、潤滑油の粘性は高いが、ポンプ駆動電圧を高くして、ポンプ43の動作量(ピエゾ素子43aの動作量)を大きくすることで、吐出速度不足を防ぎ、所望の吐出速度で油滴Pを飛ばすことができる。これにより、軸受部20の所望のターゲットに潤滑油(油滴P)を供給することが可能となる。
【0044】
これに対して、温度が高い場合(第一の温度よりも高い第二の温度の場合、
図4参照)に、短い昇圧時間tとすることでピエゾ素子43aに印加させる電圧(ポンプ駆動電圧)を第一の温度の場合よりも低くして、所望の吐出がポンプ43によって行われる。つまり、第一の温度の場合と比較して潤滑油の粘性が低いことから、ポンプ駆動電圧を低くして、ポンプ43の動作量(ピエゾ素子43aの動作量)を小さくする。これにより、速度過剰となって油滴Pが飛ぶのを防ぎ、所望の吐出速度で油滴Pを飛ばすことができる。
このように、本実施形態の給油ユニット40によれば、潤滑油の粘度(温度)に応じてポンプ駆動電圧を最適化し、油滴Pの吐出速度を好ましい値とすることが可能となる。
【0045】
演算処理部56の内部メモリに記憶されているプログラムでは、前記昇圧時間tが可変パラメータとされており、演算処理部56は、この可変パラメータである昇圧時間tを設定して、ポンプ43を動作させるための前記プログラムを実行する。そして、この昇圧時間tは多段階に又は無段階に変更可能となっている。したがって、温度が刻々と変化する場合であってもこの温度の変化に応じて、昇圧時間tを刻々と変更することで、
図7に示すように、低温状態から高温状態までの全範囲において、目標速度近傍の吐出速度で油滴Pを吐出することが可能となる。
【0046】
また、昇圧部57がオン状態にある継続時間が、昇圧部57による昇圧動作の時間L(
図4、
図5参照)となることから、演算処理部56は、温度が高い場合(
図4)の昇圧部57による昇圧動作の時間Lを、温度が低い場合(
図5)の昇圧部57による昇圧動作の時間Lよりも、短く設定する。この制御によれば、電源部45の電力消費を抑えることができる。つまり、温度が高い場合(第一の温度よりも高い第二の温度の場合)、潤滑油の粘度は低くなることから、ピエゾ素子43aに印加させる電圧は低くてもよい。そこで、前記設定により昇圧時間tを短くして、電源部45の消費電力を抑えることができる。特に本実施形態では(
図2参照)、電源部45が有するバッテリは、給油ユニット40に内蔵されていることから、前記制御によって消費電力を抑えることで、バッテリ切れとなるまでの時間を長くすることができる。この結果、給油ユニット40のメンテナンス頻度の低下に貢献できる。
この制御によれば、油滴Pの吐出速度の最適化と、消費電力抑制とを両立させることができる。
【0047】
以上の構成を備えた本実施形態の転がり軸受装置10では、給油ユニット40が有する演算処理部56(制御部)は、昇圧部57による昇圧開始からピエゾ素子43aの駆動開始までの間に含まれる昇圧時間tを変えてポンプ43を動作させる機能を有している。この機能により行われる潤滑油の供給方法によれば、ポンプ43からの潤滑油の吐出態様が、潤滑油の粘度(温度)に応じてばらつくのを抑えることが可能となり、適切な吐出速度で油滴Pを吐出することができる。
【0048】
本実施形態では、給油ユニット40が温度センサ55を有しており、演算処理部56は、温度センサ55によって得られた温度情報(潤滑油の温度)に応じて、昇圧時間tを変えてポンプ43を動作させる。具体的に説明すると、演算処理部56は、前記温度情報に応じて、変更可能なパラメータである昇圧時間tを設定する構成である。このため、温度に応じた制御が可能となり、温度の影響を受けないで、適切な吐出速度で油滴Pを吐出することができる(
図7参照)。
【0049】
前記実施形態では、昇圧時間tは変更可能なパラメータであり、演算処理部56がこの昇圧時間tを設定(調整)することにより、この昇圧時間tを変えてポンプ43を動作させている。
これに対して、他の形態として、昇圧時間tが異なる複数のパターン(プログラム)が予め設定されており、(温度に応じて)複数のパターンから所定の一つが選択され、その選択されたパターンに対応する昇圧時間tについて電圧を昇圧させ、その昇圧させた電圧をピエゾ素子43aに印加してポンプを駆動させてもよい。つまり、低温用の第一(サブ)プログラムと、高温用の第二(サブ)プログラムとが、ポンプ43を動作させる制御プログラムに設定されており、第一(サブ)プログラムと第二(サブ)プログラムとで前記昇圧時間tについて異なる値が設定されており、そして、給油ユニット40を機能させる際、その時の温度に応じて(又は、時間帯に応じて)いずれかを一方の(サブ)プログラムを選択して実行する構成としてもよい。この場合においても、演算処理部56(制御部)は、昇圧部57による昇圧開始からピエゾ素子43aの駆動開始までの間に含まれる昇圧時間tを変えてポンプ43を動作させている構成となる。
【0050】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の転がり軸受装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では、温度センサ55は潤滑油の温度を取得し、温度情報を得る場合について説明したが、その他の温度であってもよく、転がり軸受装置10の周囲の温度であってもよい。また、温度センサ55を用いる場合について説明したが、潤滑油の粘度を測定可能なセンサであってもよい。
【0051】
前記実施形態では、軸受部20がアンギュラ玉軸受である場合について説明したが、軸受の形式はこれに限らず、深溝玉軸受であってもよく、また、円すい転がり軸受や、円筒ころ軸受であってよい。また、この転がり軸受装置10を、工作機械の主軸用以外の用途に用いることができる。
【0052】
更に、前記給油ユニット40は、軸受部20の潤滑用途以外であってもよく、例えば、減速機等のギヤ機構(回転装置)の潤滑に用いることができる。つまり、給油ユニット40は、回転装置に設けられこの回転装置において給油が必要となる給油領域に潤滑油を供給するための装置であって、(
図3を参考に説明すると)この給油ユニット40は、ピエゾ素子43aの駆動により潤滑油を吐出するポンプ(ピエゾポンプ)43と、このピエゾ素子43aに印加させる電圧を昇圧させる昇圧部57と、この昇圧部57による昇圧開始からピエゾ素子43aの駆動開始までの間に含まれる昇圧時間を変えてポンプ43を動作させる演算処理部(制御部)56とを有している。この給油ユニット40に対して、前記実施形態で説明した給油ユニット40が備えている各構成を適用することができる。