(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンモニア吸着除去装置を、排気ガスに含まれるアンモニアを吸着するアンモニア吸着部と、該アンモニア吸着部より脱離したアンモニアを無酸素雰囲気下で窒素及び水素に分解するアンモニア分解部と、前記アンモニア吸着部及び前記アンモニア分解部を加熱する加熱部とで構成される請求項1に記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。
前記流路切替装置を、排気ガスを分流して、この分流した排気ガスを前記アンモニアスリップ触媒装置及び前記アンモニア吸着除去装置の両方に流通できる流量調整装置として構成して、
前記制御装置が、
前記アンモニア吸着除去装置のアンモニア吸着量が前記設定吸着量閾値未満であるときで、
さらに、前記温度検出装置の検出値が前記設定温度閾値の近傍にあるときは、前記流量調整装置を制御して、排気ガスが前記アンモニアスリップ触媒装置と前記アンモニア吸着除去装置の両方に流れるように制御し、
前記温度検出装置の検出値が前記設定温度閾値の近傍より小さいときは、前記流量調整装置を制御して、排気ガスが前記アンモニアスリップ触媒装置のみに流れるように制御し、
前記温度検出装置の検出値が前記設定温度閾値の近傍より大きいときは、前記流量調整装置を制御して、排気ガスが前記アンモニア吸着除去装置のみに流れるように制御を行うように構成される請求項4に記載の内燃機関の排気ガス浄化システム。
内燃機関の排気通路に選択還元型触媒装置を備え、該選択還元型触媒装置より下流側の前記排気通路に、吸着したアンモニアを酸素雰囲気下で浄化処理するアンモニアスリップ触媒装置と、吸着したアンモニアを無酸素雰囲気下で加熱して浄化処理するアンモニア吸着除去装置と、排気ガスが前記アンモニアスリップ触媒装置または前記アンモニア吸着除去装置のいずれか一方を通過するように排気ガスの流路を切り替える流路切替装置を備えて構成される内燃機関の排気ガス浄化方法において、
前記アンモニア吸着除去装置のアンモニア吸着量が予め設定された設定吸着量閾値未満であるときは、前記流路切替装置を制御して、排気ガスの流れを前記アンモニアスリップ触媒装置から前記アンモニア吸着除去装置に切り替えるとともに、
前記アンモニア吸着除去装置のアンモニア吸着量が前記設定吸着量閾値以上であるときは、前記流路切替装置を制御して、排気ガスの流れを前記アンモニア吸着除去装置から前記アンモニアスリップ触媒装置に切り替えて、前記アンモニア吸着除去装置への排気ガスの流入を停止するとともに、前記アンモニア吸着除去装置に吸着したアンモニアを無酸素雰囲気下で加熱して浄化処理することを特徴とする内燃機関の排気ガス浄化方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態の内燃機関の排気ガス浄化システム及び内燃機関の排気ガス浄化方法について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の排気ガス浄化システム1は、エンジン(内燃機関)(図示しない)の排気通路(排気管)11に、上流側(エンジン側)より順に、酸化触媒装置(DOC)12、微粒子捕集装置13、選択還元型触媒装置(SCR)14を備えて構成されるシステムである。
【0017】
酸化触媒装置12は、ハニカム構造を形成する基材に、排気ガスGの炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)等を酸化する貴金属触媒(酸化触媒)が担持されて構成される。貴金属触媒としては、炭化水素を水と二酸化炭素に、一酸化炭素を二酸化炭素にそれぞれ酸化する白金(Pt)系の触媒が好ましい。
【0018】
この貴金属触媒による炭化水素及び一酸化炭素の酸化反応は発熱反応であるので、この発熱により排気ガスGは昇温する。これを利用して、微粒子捕集装置13の強制PM再生制御時等、高温の排気ガスGが必要となるときには、酸化触媒装置12より上流側の排気通路11を通過する排気ガスGに含まれる炭化水素の量を一時的に増加させて、この増加分の炭化水素を酸化触媒装置12で酸化させることで、排気ガスGを高温化している。
【0019】
なお、炭化水素の量を一時的に増加させる方法としては、例えば、エンジンの気筒(シリンダ)(図示しない)内で燃料のポスト噴射を行う方法や、酸化触媒装置12より上流側の排気通路11に燃料噴射装置(図示しない)を備えて、この燃料噴射装置から燃料を噴射する方法がある。
【0020】
微粒子捕集装置13は、排気ガスG中の粒子状物質(PM)を捕集するために、その内部にフィルタを備えて構成される。このフィルタは、多孔質のセラミックのハニカムのセル(チャンネル)の入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型ウォールフロータイプのフィルタで構成される。
【0021】
排気ガスGは、微粒子捕集装置13の目封じされていないセルの入口より流入し、隣接する出口を目封じされていないセルとの境界に形成されたPM捕集用の壁を通過した後、出口を目封じされていないセルの出口より流出する。排気ガスGに含まれるPMはPM捕集用の壁で捕集されるが、捕集量には限界がある。したがって、PM捕集量が限界値に到達する前に、微粒子捕集装置13の内部に高温の排気ガスGを通過させて、この排気ガスGの熱により微粒子捕集装置13の内部に捕集されたPMを燃焼除去する強制PM再生制御を定期的に行っている。
【0022】
選択還元型触媒装置14は、その上流側の排気通路11に備えた尿素水供給装置20より噴射される尿素水Uを排気ガスGの熱により加水分解して生成されたアンモニア(NH
3)を還元剤として、排気ガスGに含まれる窒素酸化物(NOx)を窒素(N
2)に浄化する装置である。
【0023】
なお、排気ガスGに含まれるNOxの浄化に使用されないアンモニアは、選択還元型触媒装置14の内部に吸蔵されるか、または、選択還元型触媒装置14より下流側の排気通路11に流出(スリップ)する。また、選択還元型触媒装置14のアンモニア吸蔵容量(アンモニアを吸蔵可能な上限量)は、選択還元型触媒装置14の温度が高くなるにつれて、少なくなる。
【0024】
また、尿素水供給装置20には、尿素水供給ポンプ21により尿素水タンク22に貯留した尿素水Uが供給される。排気通路11への尿素水Uの供給量(噴射量)は、後述する尿素水供給制御装置(DCU)40により尿素水供給ポンプ21の出力を調整制御することにより、制御される。なお、尿素水Uの供給量を、尿素水供給装置20の弁開度を調整制御することにより、制御してもよい。
【0025】
また、選択還元型触媒装置14より上流側の尿素水供給装置20と微粒子捕集装置13の間の排気通路11に上流NOx濃度センサ23を備えるとともに、尿素水供給装置20と選択還元型触媒装置14の間の排気通路11に、好ましくは選択還元型触媒装置14の入口の排気通路11に温度センサ(温度検出装置)24を備える。また、選択還元型触媒装置14より下流側の排気通路11に下流NOx濃度センサ25を備えるとともに、後述する第1分岐通路31及び第2分岐通路33の合流点より下流側の排気通路11にアンモニア濃度センサ26を備える。
【0026】
また、本発明の内燃機関の排気ガス浄化システム1を制御する尿素水供給制御装置(DCU、制御装置)40が備えられる。この尿素水供給制御装置40は、エンジンの運転状態を制御するエンジン制御装置(ECU)41より、エンジンへの吸気流量等、エンジンの運転状態に関わるデータを受信するとともに、上流NOx濃度センサ23、温度センサ24、下流NOx濃度センサ25及びアンモニア濃度センサ26の各検出値のデータを受信して、これらの受信したデータを基に、尿素水供給ポンプ21の出力を調整制御して、尿素水供給装置20からの尿素水Uの供給量を制御する装置である。
【0027】
本発明の排気ガス浄化システム1は、選択還元型触媒装置14より下流側の排気通路11にアンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32を備えるとともに、排気ガスGがアンモニアスリップ触媒装置30またはアンモニア吸着除去装置32のいずれか一方を通過するように排気ガスGの流路を切り替える流路切替装置34を備えて構成する。アンモニアスリップ触媒装置30及びアンモニア吸着除去装置32については後述する。
【0028】
図1では、選択還元型触媒装置14より下流側の排気通路11の一部を2つの分岐通路31、33として、第1分岐通路31にアンモニアスリップ触媒装置30を、第2分岐通路33にアンモニア吸着除去装置32を備えるとともに、第1分岐通路31と第2分岐通路33の分岐点に、排気ガスGの流れをアンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32の間で切り替える三方弁(流路切替装置)34を備えて構成する。このように構成した上で、尿素水供給制御装置40により三方弁34を切り替えることで、排気ガスGがアンモニアスリップ触媒装置30またはアンモニア吸着除去装置32のいずれか一方を通過することとなる。
【0029】
なお、
図1に示す本発明の排気ガス浄化システム1のように、アンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32を並列に配置する構成とする代りに、
図2に示す本発明の排気ガス浄化システム1Aのように、アンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32を直列に配置する構成としてもよい。すなわち、選択還元型触媒装置14より下流側の排気通路11に、アンモニアスリップ触媒装置30及びアンモニア吸着除去装置33を備えるとともに、アンモニアスリップ触媒装置30をバイパスする第1バイパス通路35と、アンモニア吸着除去装置32をバイパスする第2バイパス通路36とを備えて、排気通路11と第1バイパス通路35の分岐点に第1三方弁34aを、排気通路11と第2バイパス通路36の分岐点に第2三方弁34bを備えて構成してもよい。このように構成した上で、尿素水供給制御装置40により第1三方弁34a及び第2三方弁34bを切り替えることで、排気ガスGがアンモニアスリップ触媒装置30またはアンモニア吸着除去装置32のいずれか一方を通過することとなる。なお、以下の記載では、
図1に示すアンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32を並列に配置する構成を例として説明する。
【0030】
アンモニアスリップ触媒装置30について説明する。アンモニアスリップ触媒装置30は、酸化触媒装置11の構造と同じ構造で、白金(Pt)等の貴金属触媒を担持して構成される装置である。そして、この装置30は、貴金属触媒の機能により選択還元型触媒装置14より下流側の排気通路11に流出(スリップ)したアンモニアを吸着しつつ、この吸着したアンモニアを酸素雰囲気下で無害な窒素(N
2)に化学変化させて浄化処理する装置である。ただし、このアンモニアスリップ触媒装置15では、
図3に示すように、触媒の高温時においては、アンモニアを窒素にだけ化学変化させるのではなく窒素酸化物(NOx)や亜酸化窒素(N
2O)等のNOxに化学変化させる虞がある。
【0031】
アンモニア吸着除去装置32について説明する。アンモニア吸着除去装置32は、吸着したアンモニアを低酸素雰囲気下(無酸素雰囲気下を含む)で加熱して浄化処理する装置で、
図4に示すように、アンモニア吸着部32Aと、アンモニア分解部32Bと、ヒーター(加熱部)32Cとで構成される装置である。アンモニア吸着部32Aは、排気ガスGに含まれるアンモニアを吸着する部材である。アンモニア分解部32Bは、アンモニア吸着部32Aより脱離したアンモニアを無酸素雰囲気下(低酸素雰囲気下を含む)で窒素及び水素に分解する部材である。ヒーター32Cは、アンモニア吸着部32A及びアンモニア分解部32Bの両方を加熱する部材である。
【0032】
アンモニア吸着部32Aは、より詳細には、低温ではアンモニアを吸着し、ヒーター32Cによる加熱により高温化すると吸着したアンモニアを脱離する性質を有する材料で構成される部材である。この材料として、例えば、ゼオライト、ゼオライト様化合物、メソポーラスシリカ、活性炭、MOF、PCP、金属酸化物等のように、アンモニアを吸着及び脱離する性質に加えて、大きな比面積を有してアンモニアを吸着させ易い性質を有する材料を用いると好ましい。
【0033】
また、アンモニア分解部32Bは、より詳細には、無酸素雰囲気下(低酸素雰囲気下を含む)でアンモニアを窒素と水素に分解する活性を有する材料で構成される部材である。この材料として、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、金(Au)を構成要素とする貴金属触媒、金属酸化物、遷移金属イオン交換ゼオライト等の材料が好ましい。また、アンモニア吸着部32Aを構成する材料が有する性質も兼ね備えた材料を用いても良い。
【0034】
なお、アンモニア吸着除去装置32の内部構成は、
図4に示すように、排気ガスGの上流側より順に、ヒーター32C、アンモニア吸着部32A及びアンモニア分解部32Bの混合部を備える構成としてもよいし、
図5に示すように、排気ガスGの上流側より順に、ヒーター32C、アンモニア吸着部32A、アンモニア分解部32Bを備える構成としてもよい。また、図示しないが、ヒーター32Cをアンモニア吸着除去装置32の最上流側に備えるのではなく、アンモニア吸着部32A及びアンモニア分解部32Bの外周にヒーター32Cを隣接して備える構成としてもよい。また、図示しないが、ヒーター32Cをアンモニア吸着部32A及びアンモニア分解部32Bの混合部に内蔵する形で備える構成としてもよい。
【0035】
また、アンモニア吸着部32Aは低温時にアンモニアを吸着する能力が増加するため、選択還元型触媒装置14とアンモニア吸着除去装置32の間の排気通路11または第2分岐通路33に、アンモニア吸着除去装置32に流入する排気ガスGの温度を冷却する構成を加えると好ましい。この構成は、例えば、選択還元型触媒装置14とアンモニア吸着除去装置32の間の排気通路11または第2分岐通路33に冷却装置(図示しない)を備えて、この冷却装置により排気ガスGを冷却する構成であったり、または、排気通路11を構成する排気管や第2分岐通路33を構成する分岐管を外気との接触面積が大きくなる形状として、大量の外気が排気管または分岐管に接触することで排気ガスGを冷却する構成であったりする。
【0036】
そして、本発明の排気ガス浄化システム1では、尿素水供給制御装置40が、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが予め設定された設定吸着量閾値A1未満であるときは、三方弁34を制御して、排気ガスGの流れをアンモニアスリップ触媒装置30からアンモニア吸着除去装置32に切り替えて、アンモニア吸着除去装置32に排気ガスGbに含まれるアンモニアを吸着させる制御を行うように構成する。
【0037】
一方、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1以上であるときは、尿素水供給制御装置40が、三方弁34を制御して、排気ガスGの流れをアンモニア吸着除去装置32からアンモニアスリップ触媒装置30に切り替えて、アンモニアスリップ触媒装置30に排気ガスGaに含まれるアンモニアを吸着しつつ浄化処理するとともに、アンモニア吸着除去装置32への排気ガスGbの流入を停止する制御を行うように構成する。そして、尿素水供給制御装置40が、ヒーター32Cによりアンモニア吸着部32A及びアンモニア分解部32Bを加熱して、アンモニア吸着部32Aに吸着したアンモニアを脱離させ、この脱離したアンモニアをアンモニア分解部32Bに移動させて、アンモニア分解部32Bで無酸素雰囲気下で窒素及び酸素に分解することで、アンモニア吸着部32Aを再生する制御(アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御)を行うように構成する。
【0038】
ここで、このとき、アンモニア分解部32Bが無酸素雰囲気下となる理由を説明する。アンモニア吸着除去装置32への排気ガスGの流入を停止すると、排気ガスGに含まれる酸素がアンモニア吸着除去装置32に流入されることなく、また、アンモニア吸着除去装置32の内部に在留する酸素もアンモニア吸着部32Aに吸着したアンモニアのごく一部により消費し尽くす。その結果、アンモニア吸着除去装置32の内部は無酸素雰囲気下(低酸素雰囲気下を含む)に移行していくこととなる。
【0039】
なお、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御時の化学反応式は、「2NH
3→N
2+3H
2」が主となり、その他の化学反応は殆ど発生しない。すなわち、アンモニア吸着除去装置32は、アンモニア分解部32Bを無酸素雰囲気下かつ高温にすることで、アンモニア(NH
3)を窒素酸化物(NOx)や亜酸化窒素(N
2O)等のNOxに化学変化させることなく、窒素(N
2)及び水素(H
2)のみに化学変化させる装置である。
【0040】
また、ヒーター32Cによるアンモニア分解部32Bの加熱は、三方弁34による流路切替時点より実験等により予め設定された設定時間が経過してアンモニア吸着除去装置32の内部に無酸素雰囲気が形成されたときから開始してもよいが、アンモニア吸着部32Aの加熱開始時点と同時期に開始することで、アンモニア吸着除去装置32の内部が無酸素雰囲気に移行したときに、アンモニア分解部32Bが高温化しており、アンモニアの窒素及び水素への分解除去反応を速やかに行うことができるので好ましい。
【0041】
また、
図4、
図5では、アンモニア吸着部32A及びアンモニア分解部32Bの加熱をヒーター32Cにより行っているが、この加熱方法に限定されない。例えば、高温の排気ガスGの廃熱を利用した加熱方法を用いたり、または、選択還元型触媒装置14とアンモニア吸着除去装置32の間の排気通路11または第2分岐通路33に上流側より順に燃料供給装置及び酸化触媒装置(図示しない)を備えて、燃料供給装置より供給した燃料を下流側の酸化触媒装置で酸化発熱させたりすることで、アンモニア吸着除去装置32を加熱するための熱量を発生させる方法を用いてもよい。
【0042】
ここで、アンモニア吸着部32Aへのアンモニアの吸着量Aの算出方法について説明する。ここでは、この算出方法として2つの方法について説明する。1つ目の方法は、尿素水供給制御装置40により、エンジンの運転状態と、上流NOx濃度センサ23の検出値と、選択還元型触媒装置14へのアンモニアの吸着量と、温度センサ24の検出値とに基づいて、選択還元型触媒装置14より下流側の排気通路11に流出するアンモニア量を推定し、この推定したアンモニア量の時間積分値に基づいてアンモニア吸着部32Aへのアンモニアの吸着量Aを推定算出する方法である。2つ目の方法は、排気ガスGの全量がアンモニア吸着除去装置32を通過しているときにおけるアンモニア濃度センサ26の検出値と、アンモニア吸着除去装置32の温度に基づいて、アンモニア吸着部32Aへのアンモニアの吸着量Aを推定算出する方法である。これら2つの方法のいずれかを用いることで、アンモニア吸着部32Aへのアンモニアの吸着量Aを高精度で算出することができる。
【0043】
以上のように、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aに応じた流路切替装置34の制御を行うことで、排気ガスGがアンモニアスリップ触媒装置30を通過するのは、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが多く、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生が必要なときに限られるので、アンモニアスリップ触媒装置30での窒素酸化物や亜酸化窒素等のNOxの生成量を低減することができる。その結果、大気へ排出されるアンモニアの量を低減しつつ、大気へ排出されるNOxの量を低減することができる。
【0044】
なお、図示しないが、アンモニアスリップ触媒装置30を備えずにアンモニア吸着除去装置32のみを備えて、アンモニア吸着除去装置32に排気ガスGを通過させるか否かで排気ガスGの流れを切り替える構成も考えられる。しかし、この構成の場合は、
図1及び
図2に示す構成と比較して、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生中に排気ガスGがアンモニアスリップ触媒装置30を通過することがないので、アンモニアスリップ触媒装置30でのNOx生成が発生することはない。一方、
図1及び
図2に示す本発明の構成では、排気ガスGがアンモニアスリップ触媒装置30またはアンモニア吸着除去装置32の何れかを必ず通過することとなるので、大気へ排出されるアンモニアの量を低減することができる。
【0045】
また、本発明の排気ガス浄化システム1では、尿素水供給制御装置40が、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1未満であるときに、さらに、温度センサ24の検出値に応じて次のような三方弁34の制御を行ってもよい。すなわち、尿素水供給制御装置40が、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1以上であるときは、アンモニアスリップ触媒装置30に排気ガスGを流すとアンモニアスリップ触媒装置30におけるNOx生成量が大きくなる懸念があるため、三方弁34を制御して、アンモニア吸着除去装置32に排気ガスGの流路を切り替える。一方、尿素水供給制御装置40が、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1未満であるときは、アンモニアスリップ触媒装置30に排気ガスGを流してもアンモニアスリップ触媒装置30におけるNOx生成量が少ないため、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aの増加の抑制を考慮して、三方弁34を制御して、アンモニアスリップ触媒装置30に排気ガスGの流路を切り替える。なお、設定温度閾値T1は、アンモニアスリップ触媒装置30に担持する触媒の材質にもよるが、200℃〜300℃の温度範囲内の値に設定される。
【0046】
ここで、本発明の内燃機関の排気ガス浄化システム1における、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aと選択還元型触媒装置14に流入する排気ガスGの温度(温度センサ24の検出値)Tに応じた制御を、制御フローの形で示すと
図6に示す制御フローのようになる。
図6の制御フローは、エンジンの運転中に実験等により予め設定した制御時間毎に、上級の制御フローより呼ばれてスタートする制御フローである。
【0047】
図6の制御フローがスタートすると、ステップS10にて、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1以上であるか否かを判定する。アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1以上である場合(YES)には、ステップS20に進み、ステップS20にて、三方弁34を制御して、排気ガスGの流れをアンモニア吸着除去装置32からアンモニアスリップ触媒装置30に切り替えるとともに、アンモニア吸着除去装置32への排気ガスGbの流入を停止して、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御を行う。
【0048】
そして、ステップS20の制御実施後、ステップS30に進み、ステップS30にて、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御が完了したか否かを判定する。この判定は、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1より低い値として予め設定された第2設定吸着量閾値A2以下となったか否かにより行う。アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが第2設定吸着量閾値A2より大きい場合(NO)には、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御が未だ必要として、引き続き加熱再生制御を行った後、再度ステップS30の判定を行う。アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが第2設定吸着量閾値A2以下の場合(YES)には、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御が不要であるとして、ステップS40に進み、ステップS40にて、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御を終了する。ステップS40の制御実施後、リターンに進んで、本制御フローを終了する。
【0049】
一方、ステップS10にて、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1未満である場合(NO)には、ステップS50に進み、ステップS50にて、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1以上であるか否かを判定する。温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1以上である場合(YES)には、ステップS60に進み、ステップS60にて、三方弁34を制御して、排気ガスGの流れをアンモニアスリップ触媒装置30からアンモニア吸着除去装置32に切り替える。ステップS60の制御実施後、リターンに進んで、本制御フローを終了する。
【0050】
また、ステップS50にて、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1未満である場合(NO)には、ステップS70に進み、ステップS70にて、三方弁34を制御して、排気ガスGの流れをアンモニア吸着除去装置32からアンモニアスリップ触媒装置30に切り替える。ステップS70の制御実施後、リターンに進んで、本制御フローを終了する。
【0051】
この構成及び方法によれば、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aに加え、選択還元型触媒装置14を通過する排気ガスGの温度Tに応じても、三方弁34の制御を行うことで、次のような効果を奏することができる。すなわち、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1未満で少なく、アンモニア吸着除去装置32でのアンモニアの吸着が可能なときでも、選択還元型触媒装置14に流入する排気ガスGの温度Tが設定温度閾値T1未満で低いときには、アンモニアスリップ触媒装置30に排気ガスGを通過させてもNOx生成量が少ないため、アンモニアスリップ触媒装置30に排気ガスGを通過させることで、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御の頻度を低減することができる。その結果、アンモニア吸着除去装置32の使用不可期間を短くすることができるので、排気ガスGの温度Tが設定温度閾値T1以上のときにおけるアンモニア吸着除去装置32へのアンモニアの吸着頻度を増加させて、アンモニアスリップ触媒装置30でのNOx生成量を低減することができる。
【0052】
なお、
図1及び
図2では、流路切替装置として三方弁34(
図2の場合は第1三方弁34a及び第2三方弁34b)を備えたが、流路切替機能だけでなく流路調整機能も備えた流量調整弁(流量調整装置)34(
図2の場合は第1流量調整弁34a及び第2流量調整弁34b)を代わりに備えてもよい。この場合は、三方弁34のようにアンモニアスリップ触媒装置30またはアンモニア吸着除去装置32のいずれか一方に排気ガスGを流通させるのではなく、アンモニアスリップ触媒装置30またはアンモニア吸着除去装置32のいずれか一方または両方に排気ガスGを流通させることができる。
【0053】
三方弁34のように、アンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32の間の排気ガスGの流れを即時に切り替える構成であると、流路切替装置の制御が簡単となる。これに対して、流量調整弁34を備えると、大気へ流出するアンモニア量を即時に低減させる必要はないものの、アンモニア量がやや高く、かつ、アンモニア吸着除去装置32にアンモニアが吸着可能であるときにも、排気ガスGの一部をアンモニアスリップ触媒装置30に流して、一部のアンモニアをアンモニア吸着除去装置32に吸着させることで、大気へ流出するアンモニア量を低減させることができる。
【0054】
本発明の内燃機関の排気ガス浄化システム1では、この流量調整弁34を用いることで、例えば、次のような制御を行うことが可能となる。すなわち、尿素水供給制御装置40が、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1の近傍(T1−α≦T1≦T1+α、αは30≦α≦50の範囲に設定すると好ましい)にあるときは、流量調整弁34を制御して、排気ガスGがアンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32の両方に流れるように制御する。また、尿素水供給制御装置40が、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1の近傍より小さい場合は、流量調整弁34を制御して、排気ガスGがアンモニアスリップ触媒装置30のみに流れるように制御する。また、尿素水供給制御装置40が、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1の近傍より大きい場合は、流量調整弁34を制御して、排気ガスGがアンモニア吸着除去装置32のみに流れるように制御する。
【0055】
なお、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1の近傍にあるときにおける、アンモニアスリップ触媒装置30を流れる排気ガスGaの量とアンモニア吸着除去装置32を流れる排気ガスGbの量の比は、温度センサ24の検出値Tと設定温度閾値T1の大小関係と、温度センサ24の検出値Tと設定温度閾値T1の差に基づいて設定される。
【0056】
ここで、本発明の内燃機関の排気ガス浄化システム1における、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aと選択還元型触媒装置14に流入する排気ガスGの温度(温度センサ24の検出値)Tに応じた制御について、流量調整弁34を用いた場合の制御を制御フローの形で示すと
図7に示す制御フローのようになる。
図7の制御フローは、エンジンの運転中に実験等により予め設定した制御時間毎に、上級の制御フローより呼ばれてスタートする制御フローである。
【0057】
図7の制御フローがスタートすると、ステップS10にて、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1以上であるか否かを判定する。アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1以上である場合(YES)には、ステップS20に進み、ステップS20にて、流量調整弁34を制御して、排気ガスGの流れをアンモニア吸着除去装置32からアンモニアスリップ触媒装置30に切り替えるとともに、アンモニア吸着除去装置32への排気ガスGbの流入を停止して、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御を行う。
【0058】
そして、ステップS20の制御実施後、ステップS30に進み、ステップS30にて、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御が完了したか否かを判定する。この判定は、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1より低い値として予め設定された第2設定吸着量閾値A2以下となったか否かにより行う。アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが第2設定吸着量閾値A2より大きい場合(NO)には、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御が未だ必要として、引き続き加熱再生制御を行った後、再度ステップS30の判定を行う。アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが第2設定吸着量閾値A2以下の場合(YES)には、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御が不要であるとして、ステップS40に進み、ステップS40にて、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御を終了する。ステップS40の制御実施後、リターンに進んで、本制御フローを終了する。
【0059】
一方、ステップS10にて、アンモニア吸着除去装置32のアンモニア吸着量Aが設定吸着量閾値A1未満である場合(NO)には、ステップS50に進み、ステップS50にて、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1の近傍にあるのか否かを判定する。温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1の近傍にある場合(YES)には、ステップS60に進み、ステップS60にて、流量調整弁34を制御して、排気ガスGがアンモニアスリップ触媒装置30及びアンモニア吸着除去装置32の両方の装置に流れるようにする。ステップS60の制御実施後、リターンに進んで、本制御フローを終了する。
【0060】
また、ステップS50にて、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1の近傍に無い場合(NO)には、ステップS70に進み、ステップS70にて、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1以上であるか否かを判定する。温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1以上である場合(YES)には、ステップS80に進み、ステップS80にて、流量調整弁34を制御して、排気ガスGの流れをアンモニアスリップ触媒装置30からアンモニア吸着除去装置32に切り替える。ステップS80の制御実施後、リターンに進んで、本制御フローを終了する。
【0061】
また、ステップS70にて、温度センサ24の検出値Tが設定温度閾値T1未満である場合(NO)には、ステップS90に進み、ステップS90にて、流量調整弁34を制御して、排気ガスGの流れをアンモニア吸着除去装置32からアンモニアスリップ触媒装置30に切り替える。ステップS90の制御実施後、リターンに進んで、本制御フローを終了する。
【0062】
この構成及び方法によれば、選択還元型触媒装置14に流入する排気ガスGの温度Tが設定温度閾値T1の近傍にある場合に、アンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32の両方に排気ガスGを流すことで、アンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32の間の流路切替を滑らかに行うことができるので、大気へのアンモニアの排出量及び大気へのNOxの排出量の急変動を抑制することができる。
【0063】
本発明の内燃機関の排気ガス浄化システム1及び内燃機関の排気ガス浄化方法によれば、選択還元型触媒装置14より下流側の排気通路11に、アンモニアからNOxへの化学変化の虞はあるが、アンモニアの吸着と浄化処理を同時に行うことができるアンモニアスリップ触媒装置30に加え、アンモニアの吸着と浄化処理を同時に行うことはできないが、吸着したアンモニアをNOxに変化させることなく浄化処理できるアンモニア吸着除去装置32を備えたので、アンモニアスリップ触媒装置30でNOxが生成される虞があるときでも、アンモニア吸着除去装置32に排気ガスGを通過させることでアンモニアスリップ触媒装置30でのNOxの生成を抑制することができる。その結果、大気へ排出されるアンモニアの量を低減しつつ、大気へ排出されるNOxの量を低減することができる。
【0064】
また、本発明の内燃機関の排気ガス浄化システム1のように、選択還元型触媒装置14より下流側の排気通路11に、アンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32を備えるかわりに、アンモニア吸着除去装置32を2つ備えて、排気ガスGがこの2つのアンモニア吸着除去装置32の内、いずれか一方を通過するように構成することも考えられる。この構成と比較して、本発明では、アンモニア吸着除去装置32を一つ備えるのみであるので、イニシャルコストを低減することができるとともに、アンモニア吸着除去装置32の加熱再生制御に必要なエネルギー量を低減させることができる。
【0065】
なお、本発明の制御において、流路切替装置(または流量調整装置)34を制御して、排気ガスGの流れをアンモニアスリップ触媒装置30とアンモニア吸着除去装置32の間で切り替える場合で、既に切り替えたい側の装置に切り替わっているときには、流路切替装置(または流量調整装置)34を新たに操作する必要はない。