【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度から平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「海洋エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー発電システム実証研究/水中浮遊式海流発電」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、発電を行わない等の場合には、水中浮遊式発電装置を海面に浮上させることがある。発電用タービンの回転が可能な状態で水中浮遊式発電装置を浮上させると、水中浮遊式発電装置が不安定な状態で浮上することがある。このため、本分野では、水中浮遊式発電装置を浮上させる際に発電用タービンの回転を簡素な構成で制御することが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、水中浮遊式発電装置を浮上させる際に発電用タービンの回転を簡素な構成で制御可能な水中浮遊式発電装置のタービン回転軸ブレーキシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、タービン翼を有する発電用タービンが設けられた水中浮遊式発電装置のタービン回転軸ブレーキシステムであって、水中で受ける水圧によって作動し、発電用タービンの回転軸に対してブレーキ力を付与するブレーキを備える。
【0007】
この水中浮遊式発電装置のタービン回転軸ブレーキシステムでは、水中で受ける水圧によって作動するブレーキによって、発電用タービンの回転軸に対してブレーキ力が付与される。これにより、ブレーキを作動させるための駆動機構を別途用いることなく、水中浮遊式発電装置の周りの水圧を用いて簡素な構成で発電用タービンの回転を制御できる。これにより、水中浮遊式発電装置を浮上させる際に発電用タービンの回転を簡素な構成で制御することができる。
【0008】
水中浮遊式発電装置のタービン回転軸ブレーキシステムは、回転軸及びブレーキを収容する筐体と、一方の端部がブレーキに接続され、他方の端部が筐体を貫通して筐体の外部に連通する注水管と、を更に備え、ブレーキは、回転軸に当接する当接部材と、注水管から注水された水の圧力によって作動し、当接部材を回転軸に押し付けるピストンと、を備えていてもよい。この場合には、水圧で作動するピストンによって当接部材を発電用タービンの回転軸に押し付けることによって、簡素な構成で回転軸にブレーキ力を付与することができる。
【0009】
水中浮遊式発電装置のタービン回転軸ブレーキシステムは、注水管における一方の端部と他方の端部との間に設けられたマスターシリンダを更に備え、マスターシリンダとブレーキとの間の注水管内には作動液が充填され、マスターシリンダは、注水管の他方の端部から注水された水の圧力を、作動液に伝達し、ピストンは、作動液の圧力によって作動してもよい。この場合、水中浮遊式発電装置の外部から注水された水は、ブレーキのピストンに直接作用しない。すなわち、ピストン周りには、外部から取り込まれた水が導入されない。このように、マスターシリンダを設けることで、外部から取り込まれた水の流通範囲を短くすることができる。外部から取り込まれた水の流通範囲を短くすることで、注水管内を流通する水が入れ替わり易くなる。また、例えば外部から取り込まれた水の中にゴミ等の異物が含まれていても、これらの異物がピストン周りに導入されない。このため、ブレーキの耐久性を向上させることができる。
【0010】
水中浮遊式発電装置のタービン回転軸ブレーキシステムは、注水管に設けられ、注水管の他方の端部から注水された水の流通状態を切り替える注水バルブと、注水管に設けられ、注水管の他方の端部から注水バルブへの水の流通を許容し、注水バルブから注水管の他方の端部への水の流通を遮断する注水側逆止弁と、一方の端部が注水管に接続され、他方の端部が筐体を貫通して筐体の外部に連通し、注水管の他方の端部から注水された水を筐体外に排水する排水管と、排水管に設けられ、排水管内の水の流通状態を切り替える排水バルブと、排水管に設けられ、排水バルブから排水管の他方の端部への水の流通を許容し、排水管の他方の端部から排水バルブへの水の流通を遮断する排水側逆止弁と、を更に備え、注水バルブ及び排水バルブは、電力によって流通状態を切り替え、注水バルブは、非通電状態において、注水管の他方の端部から注水された水を注水管内で流通させ、排水バルブは、非通電状態において、排水管内の水の流通を遮断してもよい。この場合、注水バルブ及び排水バルブが非通電の状態において、ブレーキが発電用タービンの回転軸にブレーキ力を付与した状態となる。これにより、水中浮遊式発電装置を浮上させる際に発電用タービンの回転軸にブレーキ力を付与するために電力を用いることなく、水圧によってブレーキ力を付与することができる。
【0011】
ブレーキは、水圧の減少に伴ってブレーキ力を減少させ、タービン翼は、一つの発電用タービンに対して2枚設けられ、回転軸の軸方向に沿って見たときに、2枚のタービン翼のうち、一方のタービン翼における回転軸からの延び方向と、他方のタービン翼における回転軸からの延び方向とは、互いに逆方向となっていてもよい。ここで、水中浮遊式発電装置が水面に浮上した状態では水圧が掛からないため(ほぼ掛からないため)、発電用タービンの回転軸に対してブレーキ力も掛からない(ほぼ掛からない)。このため、水中浮遊式発電装置が水面に浮上すると、タービン翼の重力及び浮力によって回転軸が回転し、2枚のタービン翼が水面に浮かんだ状態又は水中に入った状態となる。すなわち、水中浮遊式発電装置が水面に浮上した状態で、タービン翼が水面から突き出た状態とならない。このように、水中浮遊式発電装置が水面に浮上した状態おいてタービン翼が水面から突き出た状態とならないため、波浪及び風等の影響を考慮したタービン翼の設計が不要となる。また、水中浮遊式発電装置のタービン回転軸ブレーキシステムでは、タービン翼の重力及び浮力によって回転軸が回転して、2枚のタービン翼が自然と水面に浮かんだ状態又は水中に入った状態となる。すなわち、浮上時に発電用タービンの回転角度の制御が不要となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、水中浮遊式発電装置を浮上させる際に発電用タービンの回転を簡素な構成で制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
以下の説明において、「上流」又は「下流」との語は、水の流れを基準として用いられる。また、「前」との語は、水の流れの上流側を意味し、「後」との語は、水の流れの下流側を意味する。例えば、ダウンウィンド型のタービンが用いられる場合には、ポッドの後部側にブレード(翼)が配置される。また、「左」又は「右」との語は、水の流れに対して垂直で且つ水平な方向を意味し、後方すなわち下流側から見た場合を基準として用いられる。「上」又は「下」との語は、水中浮遊式発電装置1の姿勢が安定した状態における鉛直方向線を基準とする。
【0016】
図1及び
図2を参照して、本実施形態のタービン回転軸ブレーキシステムSが適用された水中浮遊式発電装置1について説明する。
図1に示されるように、水中浮遊式発電装置1は、例えば海水中に設置されて浮遊し、海流を利用して発電を行う。水中浮遊式発電装置1は、左右に離間して配置された一対のポッドである第1ポッド2A及び第2ポッド2Bと、第1ポッド2A及び第2ポッド2Bを連結するクロスビーム3とを備える。第1ポッド2Aは右側に配置されたポッドであり、第2ポッド2Bは左側に配置されたポッドである。第1ポッド2Aの後部には、第1発電用タービン4Aが設けられている。第2ポッド2Bの後部には、第2発電用タービン4Bが設けられている。以下の説明では、水中浮遊式発電装置1を海流発電装置1という。また、第1発電用タービン4A及び第2発電用タービン4Bを、それぞれ、第1タービン4A及び第2タービン4Bという。
【0017】
第1ポッド2Aは、第1タービン4Aを回転可能に支持しつつ、第1タービン4Aに適正な浮力を付与する。第2ポッド2Bは、第2タービン4Bを回転可能に支持しつつ、第2タービン4Bに適正な浮力を付与する。第1ポッド2A及び第2ポッド2Bは、円筒状をなしており、例えば、同じ大きさ及び構造を有している。
【0018】
第1ポッド2A及び第2ポッド2Bの間には、これらを連結する構造体であるクロスビーム3が延在している(すなわち横断するように延びている)。クロスビーム3は、前後方向に所定の長さを有し、所定の厚みを有する。クロスビーム3は、浮遊する海流発電装置1の姿勢を安定させるべく、例えば翼形状をなしている。クロスビーム3の左右の両端は、例えば、第1ポッド2A及び第2ポッド2Bの胴部の略中央にそれぞれ固定されている。なお、クロスビーム3が固定される位置は、上記の位置に限られない。クロスビーム3は、ポッドの上部又は下部に固定されてもよいし、ポッドの前部又は後部に固定されてもよい。クロスビーム3は、その延在方向(すなわち横断方向)において等しい断面形状を有してもよく、延在方向において変化する断面形状を有してもよい。クロスビーム3の中央付近に、1又は複数の物体が設けられてもよい。また、この物体から係留索が接続されていてもよい。
【0019】
海流発電装置1は、海底に固定されたシンカー14に対して、第1係留ロープ11A及び第2係留ロープ11Bを介して接続されている。第1係留ロープ11A及び第2係留ロープ11Bは、これらの分岐点13(
図2参照)がシンカー14に設けられた、いわゆるV字状の係留索である。第1係留ロープ11Aの下端(他端)及び第2係留ロープ11Bの下端(他端)は、例えば、シンカー14に対して360度回転可能であるように接続されている。シンカー14に対する第1係留ロープ11A及び第2係留ロープ11Bの接続部は、例えばシャックル等を用いた締結構造であってもよい。なお、分岐点13がシンカー14と海流発電装置1との間の途中部分に設けられることで、第1係留ロープ11A及び第2係留ロープ11BがY字状をなしてもよい。なお、係留ロープの他端を海底に固定する固定部として、シンカー14に代えて、アンカーが用いられてもよい。
【0020】
海流発電装置1は、例えば、第1係留ロープ11A及び第2係留ロープ11Bによって、異なる2点で係留されている。より詳細には、第1係留ロープ11Aの上端(一端)は、クロスビーム3の右側に接続されている。第2係留ロープ11Bの上端(一端)は、クロスビーム3の左側に接続されている。クロスビーム3に対する第1係留ロープ11Aの係留点12Aと、クロスビーム3に対する第2係留ロープ11Bの係留点12Bとは、例えば、クロスビーム3の延在方向(
図2の左右方向)に所定の長さ離間している。クロスビーム3の中央付近に、1又は複数の物体が設けられる場合、この物体から係留索が接続されていてもよい。
【0021】
図1に示されるように、第1係留ロープ11A及び第2係留ロープ11Bに沿うようにして、第1タービン4A及び第2タービン4Bにおいて発電された電力を送電するための送電ケーブル10が設けられている。より詳細には、第1タービン4Aで発電された電力を送電する第1ケーブル10Aが、第1係留ロープ11Aに沿って設けられており、第2タービン4Bで発電された電力を送電する第2ケーブル10Bが、第2係留ロープ11Bに沿って設けられている。第1ケーブル10Aの一端は、第1ポッド2A内の発電機17(
図3参照)に接続されている。第2ケーブル10Bの一端は、第2ポッド2B内の発電機に接続されている。送電ケーブル10の他端は、例えばシンカー14内に設けられた中継器(または変圧器等)に接続されている。中継器には、海底に敷設されて地上まで延びる送電ケーブルが接続されており、これらの送電ケーブルを介して、第1タービン4A及び第2タービン4Bにおいて発電された電力が地上に送電されるようになっている。
【0022】
なお、各ケーブルが設けられる形態は上記形態に限られない。例えば、送電ケーブル10、第1ケーブル10A及び第2ケーブル10Bが、始動時のための給電ケーブルと一体になっていてもよい。第1タービン4Aに接続された第1ケーブル10Aが給電ケーブルであり、第2タービン4Bに接続された第2ケーブル10Bが送電ケーブルであってもよい。中継器は、シンカー14外の海底又は海流発電装置1内に設定されてもよい。
【0023】
海流発電装置1に適用される第1タービン4A及び第2タービン4Bは、いわゆるダウンウィンド型のタービンである。第1ポッド2A及び第2ポッド2Bは、海流の向きに対向した姿勢で浮遊する。この浮遊状態において、第1タービン4A及び第2タービン4Bの回転軸線は、互いに平行をなしており、略水平に維持される。なお、第1タービン4A及び第2タービン4Bは、アップウィンド型のタービンであってもよい。
【0024】
第1タービン4Aは、第1ハブ5Aと、第1ハブ5Aに設けられた2枚の第1ブレード(タービン翼)6Aとを含んでいる。第2タービン4Bは、第2ハブ5Bと、第2ハブ5Bに設けられた2枚の第2ブレード(タービン翼)6Bとを含んでいる。第1ハブ5Aは、第1ポッド2Aの後端部に配置されている。第2ハブ5Bは、第2ポッド2Bの後端部に配置されている。ダウンウィンド型のタービンを採用した海流発電装置1においては、海流の向きを基準として、第1ポッド2Aの下流側に第1ブレード6Aが配置され、第2ポッド2Bの下流側に第2ブレード6Bが配置される(
図1参照)。
【0025】
第1タービン4Aと第2タービン4Bとにおいて、ブレードのピッチは逆向きとされている。すなわち、第2ブレード6Bのピッチは、第1ブレード6Aのピッチとは逆向きである。これにより、第1タービン4Aと第2タービン4Bとは、海流を受けて互いに逆向きに回転する。
図2に示されるように、例えば、第1タービン4Aは、上流側から見て時計回りの回転方向R
Aに回転し、第2タービン4Bは、上流側から見て反時計回りの回転方向R
Bに回転するが、互いに逆回転の場合でも可能である。
【0026】
言い換えれば、第1タービン4Aと第2タービン4Bとは、第1ブレード6A及び第2ブレード6Bが第1ポッド2A及び第2ポッド2Bの間の領域(クロスビーム3が配置された領域)で上から下に向けて通過するような回転方向で回転する。すなわち、第1ブレード6A及び第2ブレード6Bは、上流側から見て、クロスビーム3を上から下に向けて通過する。
【0027】
次に、
図3を用いて、第1ポッド2A及び第2ポッド2Bの内部構成の詳細について説明する。以下、第1ポッド2Aの構成について説明する。第2ポッド2Bも第1ポッド2Aと同様の構成を有するため、第2ポッド2Bに関する説明を省略する。
【0028】
図3に示されるように、第1ポッド2Aの後端部の第1ハブ5Aには、2枚の第1ブレード6Aが取り付けられている。第1ブレード6Aは、第1ハブ5Aと一体的に回転可能になっている。第1ポッド2Aの筐体15内には、回転軸16及び発電機17等が収容されている。筐体15は、海流発電装置1が海水中に浮遊した状態であっても、内部に海水が入り込まない構造となっている。すなわち、筐体15内は空気で満たされている。
【0029】
第1タービン4Aの回転は、回転軸16を介して発電機17に伝達される。回転軸16は、たとえば第1ポッド2Aの中心軸線に沿って設けられている。回転軸16は、ベアリング18によって筐体15に対して回転可能に支持されている。回転軸16の軸方向に沿って見たときに、2枚の第1ブレード6Aのうち、一方の第1ブレード6Aにおける回転軸16からの延び方向と、他方の第1ブレード6Aにおける回転軸16からの延び方向とは、互いに逆方向となっている。
【0030】
海流発電装置1において、第1ブレード6Aのピッチ角度は可変になっている。各第1ブレード6Aの基端部のブレード軸には、駆動装置19が連結されている。駆動装置19は、例えば第1ハブ5A内に油圧機構とともに搭載される。駆動装置19は、例えば、歯車機構を含んでいる。駆動装置19としては、公知の機構を用いることができる。なお、第1ブレード6Aのピッチ角度を変化させる機構として、油圧による駆動装置19に限られず、サーボモータ等が用いられてもよい。第1ブレード6A(および第2ブレード6B)のピッチ角度は可変でなく、固定されていてもよい。
【0031】
第1ポッド2Aには、第1タービン4Aの回転軸16にブレーキ力を付与するタービン回転軸ブレーキシステムSが設けられている。タービン回転軸ブレーキシステムSは、筐体15内に設けられている。タービン回転軸ブレーキシステムSは、マスターシリンダ20、ブレーキ21、注水管L、排水管L3、注水バルブB10、注水側逆止弁B11、排水バルブB20、及び排水側逆止弁B21を有している。
【0032】
注水管Lの一方の端部は、ブレーキ21に接続されている。注水管Lの他方の端部は、筐体15を貫通して筐体15の外部と連通している。注水管Lの他方の端部は、筐体15の外部から注水管L(第1配管L1)内に海水を注水する注水口L1aとなる。マスターシリンダ20は、注水管Lにおける一方の端部(ブレーキ21側の端部)と他方の端部(注水口L1a側の端部)との間に設けられている。
【0033】
ここで、注水管Lにおいて、マスターシリンダ20と注水口L1aとの間の部分を第1配管L1と呼び、マスターシリンダ20とブレーキ21との間の部分を第2配管L2呼ぶ。マスターシリンダ20は、シリンダ20a、及びピストン20bを有している。ピストン20bは、シリンダ20a内を、第1空間Aと、第2空間Bとに区画している。第1空間Aは、第1配管L1と連通している。第2空間Bは、第2配管L2と連通している。第1空間A及び第1配管L1内には、注水口L1aから海水が注水される。第2配管L2及び第2空間B内には、作動油(作動液)が充填されている。なお、作動油に限定されず、第2配管L2及び第2空間B内に海水以外の他の液体が充填されていてもよい。
【0034】
ピストン20bは、注水口L1aから第1配管L1内に注水された海水の水圧に応じてシリンダ20a内をスライドし、第1空間A及び第2空間Bの体積を変化させる。すなわち、マスターシリンダ20は、ピストン20bをスライドさせることにより、注水口L1aから注水された海水の水圧を作動油に伝達する。
【0035】
ブレーキ21は、海流発電装置1が海水中に浮遊しているときに、海水中で受ける水圧によって作動し、第1タービン4Aの回転軸16に対してブレーキ力を付与する。より詳細には、ブレーキ21は、一対のピストン21a、及び一対のブレーキパッド(当接部材)21bを有している。ブレーキパッド21bは、回転軸16に固定されたブレーキディスク22を挟み込むように配置されている。一対のピストン21aは、第2配管L2内の作動油の油圧によって作動(スライド)する。一対のピストン21aは、一対のブレーキパッド21bによってブレーキディスク22が挟み込まれるように、油圧に応じて一対のブレーキパッド21bをそれぞれブレーキディスク22に押し付ける。
【0036】
このように、ブレーキ21は、注水口L1aから注水された海水の圧力に応じて、回転軸16にブレーキ力を付与する。すなわち、海流発電装置1が海水中の深い位置で浮遊しているときには、ブレーキ21が回転軸16に与えるブレーキ力が強くなる。海流発電装置1が浮上するにしたがって海水中の水圧が弱まるため、ブレーキ21が回転軸16に与えるブレーキ力が弱くなる。海流発電装置1が海面に浮上したときには、ブレーキ21によるブレーキ力の付与が解除される。このように、ブレーキ21は、海水中の水圧の減少に伴ってブレーキ力を減少させる。
【0037】
注水バルブB10は、第1配管L1に設けられている。注水バルブB10は、第1配管L1の注水口L1aから注水された海水の流通状態を切り替える。注水バルブB10は、電力によって流通状態を切り替える。例えば、注水バルブB10として、電磁弁を用いることができる。注水バルブB10は、非通電状態において、注水口L1aから注水された海水を第1配管L1内で流通させる(注水バルブB10が開状態)。注水バルブB10は、通電状態において、注水口L1aから注水された海水の第1配管L1内での流通を遮断する(注水バルブB10が閉状態)。なお、注水バルブB10は、非通電状態で開状態を維持できるバルブであれば、種々の構成のバルブを採用できる。
【0038】
注水側逆止弁B11は、第1配管L1において注水バルブB10と注水口L1aとの間に設けられている。注水側逆止弁B11は、注水口L1aから注水バルブB10への海水の流通を許容し、注水バルブB10から注水口L1aへの海水の流通を遮断する。
【0039】
排水管L3の一方の端部は、第1配管L1における注水バルブB10とマスターシリンダ20との間に接続されている。排水管L3の他方の端部は、筐体15を貫通して筐体15の外部と連通している。排水管L3は、第1配管L1の注水口L1aから第1配管L1内に注水された海水を筐体15外に排水する。排水管L3の他方の端部は、筐体15の外部に海水を排水する排水口L3aとなる。
【0040】
排水バルブB20は、排水管L3に設けられている。排水バルブB20は、排水管L3内の海水の流通状態を切り替える。排水バルブB20は、電力によって流通状態を切り替える。例えば、排水バルブB20として、電磁弁を用いることができる。排水バルブB20は、非通電状態において、排水管L3内の海水の流通を遮断する(排水バルブB20が閉状態)。すなわち、排水バルブB20は、非通電状態において、排水管L3の排水口L3aから海水の排出を停止させる。排水バルブB20は、通電状態において、排水管L3内で海水を流通させる(排水バルブB20が開状態)。すなわち、排水バルブB20は、通電状態において、第1配管L1内に注水された海水を、排水管L3の排水口L3aから筐体15外に排水する。なお、排水バルブB20は、非通電状態で閉状態を維持できるバルブであれば、種々の構成のバルブを採用できる。
【0041】
排水側逆止弁B21は、排水管L3において排水バルブB20と排水口L3aとの間に設けられている。排水側逆止弁B21は、排水バルブB20から排水口L3aへの水の流通を許容し、排水口L3aから排水バルブB20への水の流通を遮断する。
【0042】
次に、第1タービン4Aの発電時におけるタービン回転軸ブレーキシステムSの状態について説明する。第1タービン4Aの発電時には、回転軸16を回転させる必要がある。このため、図示しない制御部等が注水バルブB10及び排水バルブB20に電力を供給し、注水バルブB10及び排水バルブB20を通電状態にする。これにより、注水バルブB10が閉状態となり、排水バルブB20が開状態となる。従って、海水の圧力がマスターシリンダ20に作用せず、ブレーキ21が解放状態となる。
【0043】
次に、海流発電装置1を浮上させる場合におけるタービン回転軸ブレーキシステムSの状態について説明する。海流発電装置1を浮上させる場合、図示しない制御部等が注水バルブB10及び排水バルブB20への電力の供給を遮断し、注水バルブB10及び排水バルブB20を非通電状態にする。これにより、注水バルブB10が開状態となり、排水バルブB20が閉状態となる。すなわち、海流発電装置1の浮上中において、注水バルブB10の開状態を維持、及び排水バルブB20の閉状態を維持するための電力は不要である。
【0044】
注水バルブB10が開状態となり、且つ排水バルブB20が閉状態となると、注水口L1aから第1配管L1内に注水された海水の水圧が、マスターシリンダ20に伝達される。マスターシリンダ20は、伝達された海水の水圧を第2配管L2内の作動油を介してブレーキ21に伝達する。ブレーキ21は、作動油の油圧によってピストン21aを作動させ、ブレーキパッド21bをブレーキディスク22に押し付ける。これにより、ブレーキ21は、海流発電装置1の周りの海水の水圧に応じたブレーキ力を回転軸16に付与する。回転軸16にブレーキ力が付与されると、
図4に示すように、第1タービン4A及び第2タービン4Bの回転が停止する。海流発電装置1は、第1タービン4A及び第2タービン4Bの回転が停止した状態で浮上を続ける。なお、海流発電装置1の浮上中において第1タービン4A及び第2タービン4Bの回転が停止されていれば、タービンの回転角度に関わらず、海流発電装置1を安定して浮上させることができる。
【0045】
また、海流発電装置1を浮上させる際に、第1ブレード6A及び第2ブレード6Bが潮流の影響を受けることを抑制するために、周知のように、駆動装置19が第1ブレード6A及び第2ブレード6Bのピッチ角度を変更してもよい。
【0046】
図5に示すように、海流発電装置1が海面Wに浮上すると、注水口L1aからマスターシリンダ20に注水される海水の水圧が無くなる(低くなる)ため、ブレーキ21が解放状態となる。ブレーキ21によるブレーキ力の付与が解除されると、第1タービン4A及び第2タービン4Bは回転可能となる。これにより、2枚の第1ブレード6Aの重力及び浮力によって第1タービン4Aの回転軸16が回転し、2枚の第1ブレード6Aが海面W上に浮かんだ状態又は水中に入った状態となる。同様に、2枚の第2ブレード6Bの重力及び浮力によって第2タービン4Bの回転軸が回転し、2枚の第2ブレード6Bが海面W上に浮かんだ状態又は水中に入った状態となる。
【0047】
具体的には、例えば、2枚の第1ブレード6Aのうちの一方の第1ブレード6Aが海面Wから突き出た状態となり、他方の第1ブレード6Aが海水中に沈み込んだ状態とする。この場合、海面Wから突き出た第1ブレード6Aには重力が作用し、水中に沈みこんだ第1ブレード6Aには浮力が作用するため、
図5に示すように2枚の第1ブレード6Aが海面W上に浮かんだ状態となるように、回転軸16が回転する。これにより、海流発電装置1が海面Wに浮上した状態で、第1ブレード6A及び第2ブレード6Bが海面Wから突き出た状態とならない。
【0048】
本実施形態は以上のように構成され、このタービン回転軸ブレーキシステムSでは、海水中で受ける水圧によって作動するブレーキ21によって、第1タービン4Aの回転軸16に対してブレーキ力が付与される。同様に、海水中で受ける水圧によって作動するブレーキによって、第2タービン4Bの回転軸に対してブレーキ力が付与される。これにより、ブレーキ21を作動させるための駆動機構を別途用いることなく、海流発電装置1の周りの水圧を用いて簡素な構成で第1タービン4A及び第2タービン4Bの回転を制御できる。これにより、海流発電装置1を浮上させる際に第1タービン4A及び第2タービン4Bの回転を簡素な構成で制御することができる。
【0049】
第1タービン4Aの回転軸16の回転を停止させるブレーキ21は、海水の水圧によって作動してブレーキパッド21bをブレーキディスク22に押し付けるピストン21aを備えている。この場合には、海水の水圧で作動するピストン21aによってブレーキパッド21bをブレーキディスク22に押し付けることによって、簡素な構成で第1タービン4Aの回転軸16にブレーキ力を付与することができる。第2タービン4Bの回転軸の回転を停止させるブレーキも同様の構成を有しており、簡素な構成で第2タービン4Bの回転軸にブレーキ力を付与することができる。
【0050】
注水口L1aから注水された海水の水圧は、マスターシリンダ20によって第2配管L2内の作動油に伝達される。第1タービン4Aの回転軸16に回転力を付与するブレーキ21には、作動油の油圧が作用する。この場合、海流発電装置1の外部から注水された海水は、ブレーキ21のピストン21aに直接作用しない。すなわち、ピストン21a周りには、外部から取り込まれた海水が導入されない。このように、マスターシリンダ20を設けることで、外部から取り込まれた海水の流通範囲を短くすることができる。外部から取り込まれた海水の流通範囲を短くすることで、第1配管L1内を流通する水が入れ替わり易くなる。これにより、第1配管L1内において不純物が堆積すること等を抑制できる。また、例えば外部から取り込まれた海水の中にゴミ等の異物が含まれていても、これらの異物がピストン21a周りに導入されない。このため、ブレーキ21の耐久性を向上させることができる。第2タービン4Bの回転軸に回転力を付与するブレーキには、第1タービン4Aの場合と同様に作動油の油圧が作用する。これにより、第2タービン4Bの回転軸に回転力を付与するブレーキの耐久性を向上させることができる等、第1タービン4Aの場合と同様の効果を奏する。
【0051】
注水バルブB10は、非通電状態において、開状態を維持する。排水バルブB20は、非通電状態において、閉状態を維持する。この場合、注水バルブB10及び排水バルブB20が非通電の状態において、ブレーキ21が第1タービン4Aの回転軸16にブレーキ力を付与した状態となる。これにより、海流発電装置1を浮上させる際に第1タービン4Aの回転軸16にブレーキ力を付与するために電力を用いることなく、海水の水圧によってブレーキ力を付与することができる。第2タービン4B側も同様に、海流発電装置1を浮上させる際に第2タービン4Bの回転軸にブレーキ力を付与するために電力を用いることなく、海水の水圧によってブレーキ力を付与することができる。
【0052】
海流発電装置1が海面Wに浮上した状態では海水の水圧が掛からないため(ほぼ掛からないため)、第1タービン4Aの回転軸16に対してブレーキ力も掛からない(ほぼ掛からない)。このため、海流発電装置1が海面Wに浮上すると、2枚の第1ブレード6Aの重力及び浮力によって回転軸16が回転し、2枚の第1ブレード6Aが海面Wに浮かんだ状態又は海水中に入った状態となる。すなわち、海流発電装置1が海面Wに浮上した状態で、2枚の第1ブレード6Aが海面Wから突き出た状態とならない。第2ブレード6B側も同様に、海流発電装置1が海面Wに浮上した状態で、2枚の第2ブレード6Bが海面Wから突き出た状態とならない。このように、海流発電装置1が海面Wに浮上した状態おいて第1ブレード6A及び第2ブレード6Bが海面Wから突き出た状態とならないため、波浪及び風等の影響を考慮した第1ブレード6A及び第2ブレード6Bの設計が不要となる。また、海流発電装置1のタービン回転軸ブレーキシステムSでは、海流発電装置1が海面Wに浮上した際にブレーキ21が解放されるため、2枚の第1ブレード6Aの重力及び浮力によって回転軸16が回転して、2枚の第1ブレード6Aが自然に海面Wに浮かんだ状態又は水中に入った状態となる。すなわち、浮上時に第1タービン4Aの回転角度の制御が不要となる。第2タービン4B側も同様に、2枚の第2ブレード6Bの重力及び浮力によって回転軸が回転して、2枚の第2ブレード6Bが自然に海面Wに浮かんだ状態又は水中に入った状態となる。すなわち、浮上時に第2タービン4Bの回転角度の制御が不要となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ブレーキ21は、水圧によってブレーキ力を付与するものであれば、ピストン21a及びブレーキパッド21bを用いた構成に限定されない。ブレーキ21は、回転軸16に固定されたブレーキディスク22をブレーキパッド21bで挟み込むことでブレーキ力を付与したが、回転軸16をブレーキパッド21bによって直接挟み込んでブレーキ力を付与してもよい。マスターシリンダ20を設けることは必須では無い。この場合、海水の水圧を注水管Lを介してブレーキ21に直接作用させてもよい。
【0054】
第1タービン4A及び第2タービン4Bは、それぞれ2枚のブレードを有する場合を例に説明したが、3枚以上のブレードを有していてもよい。海流発電装置1を海水中で浮遊させる場合を例に説明したが、海水に限定されず、水中であればよい。海流発電装置1を浮上させる場合に第1タービン4Aの回転軸16等にブレーキ力を付与する場合を例に説明したが、海流発電装置1の潜航時にブレーキ力を付与することもできる。この場合、海流発電装置1を安定して潜航させることができる。