(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772824
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20201012BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20201012BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
H05K7/20 D
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-251439(P2016-251439)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-103757(P2018-103757A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 利昭
【審査官】
坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−104086(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/180178(WO,A1)
【文献】
特開2016−218391(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102014206586(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00−37/06,
G02B 27/00−30/60,
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面側に光源を有する光源基板と、前記光源基板の背面側に配置され射出成形により成形された高熱伝導樹脂製の放熱器と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記放熱器は、前記光源基板から離れる方向に向かって延びるフィン部を有し、ゲート部が前記フィン部の先端に配置され、
前記光源基板は前記光源を複数有し、
前記ゲート部は複数設けられ、
前記複数のゲート部から射出された前記高熱伝導樹脂が合流して形成されるウエルドラインは、前記光源を区分けするように形成される、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記ウエルドラインは、前記光源を等分に区分けするように形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記ゲート部は前記複数の光源のいずれかの直下に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源が発する熱を効率良く放熱する放熱器を有するヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドアップディスプレイ装置として、特許文献1に開示されたものがある。このヘッドアップディスプレイ装置は、発光ダイオード(光源)を有する硬質配線板(光源基板)が発した熱をアルミなどの金属製ヒートシンク(放熱器)により放熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−104086
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、放熱器を金属製にする場合においては、費用が高く重量も重いという課題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、光源が発した熱を安価で軽量な放熱器を用いて効率的に放熱するヘッドアップディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
前面側に光源を有する光源基板と、前記光源基板の背面側に配置され射出成形により成形された高熱伝導樹脂製の放熱器と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記放熱器は、前記光源基板から離れる方向に向かって延びるフィン部を有し、ゲート部が前記フィン部の先端に配置され
、
前記光源基板は前記光源を複数有し、
前記ゲート部は複数設けられ、
前記複数のゲート部から射出された前記高熱伝導樹脂が合流して形成されるウエルドラインは、前記光源を区分けするように形成される。
【0007】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置の
前記ウエルドラインは、前記光源を等分に区分けするように形成される、
ように構成することが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置の
前記ゲート部は前記複数の光源のいずれかの直下に設けられる、
ように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光源が発した熱を安価で軽量な放熱器を用いて効率的に放熱するヘッドアップディスプレイ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態であるヘッドアップディスプレイ装置の構成概略図。
【
図2】同ヘッドアップディスプレイ装置のフィン部および光源基板の位置関係を示す図。
【
図3】同ヘッドアップディスプレイ装置の光源からフィン部への放熱の流を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態であるヘッドアップディスプレイ装置Hを添付図面を参照して説明する。
【0012】
ヘッドアップディスプレイ装置Hは、
図1に示すように、光源基板1と、レンズ2と、表示パネル3と、反射鏡4と、下ケース5と、上ケース6と、から主に構成される。
【0013】
光源基板1は、発光ダイオードなどの光源10が複数設けられた回路基板である。光源基板1は、図示しない制御手段に制御されて光源10から光を発する。
【0014】
レンズ2は、レンズアレイやフィールドレンズなどの種々のレンズであり、光源10から発せられた点光源を略平行光にして表示パネル3を背面から照明する。
【0015】
表示パネル3は、液晶パネルであり、図示しない制御手段に制御されて表示面に画像を形成する。表示パネル3は背面から照明されることにより表示面に形成した画像を表示光Lとして反射鏡4に向けて発する。
【0016】
反射鏡4は、平面鏡や凹面鏡であり、ヘッドアップディスプレイ装置Hが搭載される車両のウィンドシールドWSに向けて表示光Lを反射する。ウィンドシールドWSに投射された表示光Lは虚像Vとして運転者に視認される。
【0017】
下ケース5は、光源基板1とレンズ2と表示パネル3と反射鏡4とを収容する筐体である。下ケース5は、セラミックスフィラーなどの熱伝導性フィラーを添加した樹脂(高熱伝導樹脂)を射出成形により成形される。この高熱伝導樹脂は、熱伝導率1.0[W/mK:ワット毎メートル毎ケルビン]以上を有し、ポリプロピレンやABS樹脂などの一般的な樹脂の熱伝導率に比べ高い。また、下ケース5は、筐体外部に向けて延びるフィン部5fを有し、このフィン部5fの裏面側に光源基板1が固定されている。これにより、下ケース5は、光源基板1の光源10が発した熱はフィン部5fを伝わって筐体外部に放出する放熱器として機能する。
【0018】
上ケース6は、アクリル樹脂などの透光性樹脂で形成された窓部6aと、この窓部6aをポリプロピレンなどの不透過樹脂で支持した蓋体である。
【0019】
次に、下ケース5のフィン部5fと光源基板1の配置について
図2および
図3を参照して説明する。
【0020】
フィン部5fの先端には、複数のゲート部5g1,5g2が配置されている。下ケース5を射出成形するにあたり、この複数のゲート部5g1,5g2から射出された樹脂はウエルドラインWLで合流する。このウエルドラインWLによって、フィン部5fは、第1フィン部5f1と第2フィン部5f2に区分けされる。
【0021】
また、ウエルドラインWLは、第1フィン部5f1,第2フィン部5f2に対応する光源10の数が均等になるように形成されている。ウエルドラインWLによって光源10は、第1フィン部5f1に対応する第1光源群10aと第2フィン部5f2に対応する第2光源群10bに区分けされる。これにより、第1光源群10aが発した熱は第1フィン部5f1によって放熱され、第2光源群10bが発した熱は第2フィン部5f2によって放熱される。
【0022】
また、ゲート部5g1,5g2は、光源10のいずれかの直下に配置されている。
【0023】
以上のように、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置Hは、前面側に光源10を有する光源基板1と、光源基板1の背面側に配置され射出成形により成形された高熱伝導樹脂製の放熱器5と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置であって、放熱器5は、光源基板1から離れる方向に向かって延びるフィン部5fを有し、射出成形される際のゲート部5g1,5g2がフィン部5fの先端に配置される。
射出成形に熱伝導性フィラーを含有した高熱伝導樹脂を用いる場合においては、樹脂の流動方向に沿って熱伝導性フィラーの向きが揃い、この熱伝導性フィラーの向きに沿って熱が伝わりやすい。そのため、ゲート部5g1,5g2をフィン部5fの先端に配置することにより光源基板1が発した熱を効率よくフィン部5fの先端に向かって伝えることができる。また、高熱伝導樹脂は一般的な樹脂に比べて流動性が悪いためフィン部5fのような尖端形状を射出成形する場合においても確実に先端まで樹脂を充填することができ、製造性が向上する。
【0024】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置Hの光源基板1は光源10を複数有し、ゲート部5g1,5g2は複数設けられ、複数のゲート部5g1,5g2から射出された高熱伝導樹脂が合流して形成されるウエルドラインWLは、光源10を等分に区分けするように形成される。
射出成形に熱伝導性フィラーを含有した高熱伝導樹脂を用いる場合においては、ウエルドラインWLを横切る方向(ウエルドラインWLに対して垂直方向)への熱の伝達性が悪くなる。つまり、この複数のゲート部5g1,5g2から射出された樹脂の流動方向に沿って熱の伝達方向を制御でき、ウエルドラインWLによって熱の伝達を遮断することができる。これにより、第1光源群10aと第2光源群10bは、ウエルドラインWLで区分けされた第1フィン部5f1と第2フィン部5f2にそれぞれ熱を伝えるように構成される。そのため、第1光源群10aが発した熱がフィン部5fを介して第2光源群10bに伝わる虞が低減する。
【0025】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置Hのゲート部5g1,5g2は複数の光源10のいずれかの直下に設けられる。
このように構成することで、光源10が発した熱がゲート部5g1,5g2が設けられたフィン部5fの先端に向かって伝達しやすくなる。
【0026】
以上、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置Hを説明した。本発明は上述した実施形態(図面の内容も含む)によって限定されず、本発明の主旨に従う範囲で上述の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えてもよい。
【0027】
例えば、ゲート部を3つ以上設けて、フィン部5fと光源10を3つ以上に区分けして構成してもよい。また、区分けするにあたっては、光源10のそれぞれが発する熱量を考慮して、熱量が多い光源群ほどフィン部の面積を大きく割り当てるように区分けすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置に好適である。
【符号の説明】
【0029】
H…ヘッドアップディスプレイ装置
1…光源基板
10…光源
10a…第1光源群
10b…第2光源群
5…下ケース(放熱器)
5f…フィン部
5f1…第1フィン部
5f2…第2フィン部
5g1,5g2…ゲート部
WL…ウエルドライン