(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異物検出部は、前記共振回路に対して電圧を印加する駆動部と、前記ノイズ検出部によるノイズの検出結果により前記共振回路に生ずる振動信号に歪みが発生しないことが示されるタイミングで前記電圧を印加するよう前記駆動部を制御する制御部と、を有し、前記電圧に応じて前記共振回路に生ずる振動信号に対応する信号の1より大きい所定波数分の振動に要する時間の長さを示す振動時間長に基づき、金属異物の有無を検出するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
前記異物検出部は、前記ノイズ検出部によりノイズが検出されたことに応じて、前記共振回路に生ずる電圧又は電流の変化に基づいて実施した金属異物の有無の検出の結果を破棄するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス給電装置。
前記異物検出部は、前記共振回路に対して電圧を印加する駆動部と、前記ノイズ検出部によるノイズの検出結果により前記共振回路に生ずる振動信号に歪みが発生しないことが示されるタイミングで前記電圧を印加するよう前記駆動部を制御する制御部と、を有し、前記電圧に応じて前記共振回路に生ずる振動信号に対応する信号の1より大きい所定波数分の振動に要する時間の長さを示す振動時間長に基づき、金属異物の有無を検出するよう構成されることを特徴とする請求項6に記載のワイヤレス受電装置。
前記異物検出部は、前記ノイズ検出部によりノイズが検出されたことに応じて、前記共振回路に生ずる電圧又は電流の変化に基づいて実施した金属異物の有無の検出の結果を破棄するよう構成されることを特徴とする請求項6に記載のワイヤレス受電装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下で説明する内容により、本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、説明において同一要素または同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るワイヤレス電力伝送システム1の概略構成と、このワイヤレス電力伝送システム1に接続される負荷2とを示す図である。同図に示すように、ワイヤレス電力伝送システム1は、ワイヤレス給電装置10と、ワイヤレス受電装置20とを有して構成される。負荷2は、ワイヤレス受電装置20に接続される。
【0025】
ワイヤレス電力伝送システム1は、例えば、二次電池の電力を利用する電気自動車(EV: Electric Vehicle)やハイブリッド自動車(HV: Hybrid Vehicle)などの移動体への給電用に用いられるシステムである。この場合、ワイヤレス給電装置10は地上に配設される給電設備内に搭載され、ワイヤレス受電装置20は車両に搭載されることになる。以下では、ワイヤレス電力伝送システム1が電気自動車への給電用のものであるとして説明を続ける。
【0026】
図2は、ワイヤレス給電装置10及びワイヤレス受電装置20それぞれの内部回路構成を示す図である。以下、
図1に加えてこの
図2も適宜参照しながら、初めにワイヤレス電力伝送システム1の構成の概略を説明し、その後、本発明に特徴的な構成について詳しく説明する。
【0027】
ワイヤレス給電装置10は、
図1及び
図2に示すように、直流電源11、電力変換器12、給電コイル部13、金属異物検出装置14A、及びノイズ検出部15Aを有して構成される。
【0028】
直流電源11は、電力変換器12に直流電力を供給する役割を果たす。直流電源11の具体的な種類は、直流電力を供給できるものであれば特に限定されない。例えば、商用交流電源を整流・平滑した直流電源、二次電池、太陽光発電した直流電源、又はスイッチングコンバータなどのスイッチング電源を、直流電源11として好適に用いることが可能である。
【0029】
電力変換器12は、直流電源11から供給された直流電力を交流電力に変換し、それによって給電コイル部13に、
図2に示す交流電流I1を供給するインバータである。具体的には、
図2に示すように、複数のスイッチング素子SW1〜SW4がブリッジ接続されてなるスイッチング回路(フルブリッジ回路)と、スイッチ駆動部120とを有して構成される。なお、ここでは電力変換器12内のスイッチング回路をフルブリッジ回路により構成する例を示しているが、他の種類のスイッチング回路を用いることも可能である。
【0030】
スイッチング素子SW1〜SW4は、スイッチ駆動部120からそれぞれのゲートに供給される制御信号SG1〜SG4によって、互いに独立してオンオフ動作を行うよう構成される。スイッチング素子SW1〜SW4の具体的な種類としては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることが好適である。
【0031】
スイッチ駆動部120は、スイッチング素子SW1〜SW4からなるスイッチング回路の出力電圧O1が所定周期で振動する矩形の交流電圧信号となるよう、制御信号SG1〜SG4の生成を行う信号生成部である。したがって、後述する給電コイルL1には、この所定周期で振動する矩形の交流電圧信号が供給されることになる。以下では、この所定周期の逆数を電力伝送周波数fpと称する。電力伝送周波数fpの具体的な値は、例えば20〔kHz〕〜200〔kHz〕に設定される。
【0032】
図3(a)〜
図3(e)はそれぞれ、制御信号SG1,SG4,SG3,SG2及び出力電圧O1の波形を示す図である。なお、同図において各信号が「ON」となっている期間は、対応するスイッチング素子が閉状態となっている期間に対応し、各信号が「OFF」となっている期間は、対応するスイッチング素子が開状態となっている期間に対応する。これらの図に示すように、制御信号SG1〜SG4はいずれも電力伝送周波数fpで振動する矩形波信号であり、制御信号SG1,SG4と制御信号SG2,SG3とでは位相が180度異なっている。その結果、出力電圧O1も、電力伝送周波数fpで振動する矩形波信号となる。
【0033】
図2に戻り、給電コイル部13は、直列に接続された給電側コンデンサC1及び給電コイルL1によって構成される共振回路(給電側共振回路)であり、電力変換器12から供給される交流電圧に基づいて交番磁界を生成する役割を果たす。給電コイル部13を構成する給電側共振回路の共振周波数は、上述した電力伝送周波数fpと同一又はそれに近い周波数に設定される。なお、給電側コンデンサC1は、給電コイルL1と並列に接続してもよい。
【0034】
給電コイルL1は、例えばφ0.1(mm)の絶縁された銅線を2千本程度撚り合わせたリッツ線を数ターンから数十ターン程度、平面状に巻回することによって形成されたスパイラル構造のコイルであり、例えば地中または地面近傍に配置される。電力変換器12から給電コイルL1に交流電圧が供給されると、給電コイルL1に
図2に示す交流電流I1が流れ、それによって交番磁界が発生する。この交番磁界は、給電コイルL1と後述する受電コイルL2との間の相互インダクタンスM12によって受電コイルL2内に起電力を発生させ、それによって電力の伝送が実現される。
【0035】
図3(f)及び
図3(g)はそれぞれ、給電コイルL1の両端間の電圧V1、及び、給電コイルL1に流れる電流I1の波形を示す図である。これらの図に示すように、電圧V1及び電流I1はそれぞれ、電力伝送周波数fpで振動する略正弦波信号となる。これは、給電側コンデンサC1及び給電コイルL1が構成する共振回路によって、高周波成分がフィルタリングされるためである。
【0036】
図4(a)は、電流I1の周波数スペクトラムを示す図である。同図に示すように、電流I1においては、電力伝送周波数fpよりも高い周波数帯域に多数のピークが認められる。つまり、電流I1は完全な正弦波ではなく、多数の高周波成分を含んでいる。これは主として、
図3(f)に示すように、スイッチング素子SW1〜SW4のスイッチングのタイミングで電圧V1に高周波成分が発生していることに対応するものである。これらの高周波成分は、給電コイル部13により生成される交番磁界に重畳され、金属異物検出装置14Aの共振回路RC(後述)に現れる信号波形に影響を与える。本発明の目的の一つは、この影響によって生ずる金属異物検出装置14Aによる検出精度の低下を抑制することにある。
【0037】
図2に戻る。金属異物検出装置14Aは、給電コイルL1に接近する金属異物の有無を検出する機能を有する装置であり、それぞれアンテナコイルL3及び金属異物検出装置用コンデンサC3を含む複数の共振回路RCと、各共振回路RCに接続された異物検出部140とを有して構成される。なお、
図2に示した抵抗R3は、アンテナコイルL3の直列抵抗を明示したものである。
【0038】
金属異物検出装置14Aを設置する目的は、給電コイルL1と受電コイルL2との間にある金属異物を検出することにある。そこで金属異物検出装置14Aの少なくとも一部(より具体的には各アンテナコイルL3)は、
図1に示すように、給電コイルL1の受電コイルL2との対向面上に、すなわち給電コイルL1と受電コイルL2の間に配置される。なお、金属異物検出装置14Aと給電コイルL1とは、一体のユニットとして構成してもよいし、別々のユニットとして構成してもよい。
【0039】
ノイズ検出部15Aは、電力伝送周波数fpよりも高い周波数の信号(以下、「ノイズ」と称する)を検出可能に構成される。ノイズ検出部15Aの具体的な構成は特に限定されないが、例えば、給電コイルL1に流れる電流波形を検出する電流検出回路と、その出力信号から高周波数成分のみを取り出すハイパスフィルタと、ハイパスフィルタの出力信号の振幅が所定値を上回っている場合に、すなわち高周波成分の発生期間に同期信号を発する同期信号生成部とによって、ノイズ検出部15Aを構成することが挙げられる。電流検出回路に代え、抵抗分圧回路などの電圧検出回路を用いてもよい。また、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、電力伝送周波数fpよりも高い周波数に設定することが好ましい。他に、給電コイルL1と受電コイルL2の間にホール素子や磁気抵抗効果素子等の磁気センサを配置することによって、ノイズ検出部15Aを構成することも可能である。
【0040】
次に、ワイヤレス受電装置20は、
図1及び
図2に示すように、受電コイル部21と、整流器22とを有して構成される。
【0041】
受電コイル部21は、
図2に示すように、直列に接続された受電側コンデンサC2と受電コイルL2とによって構成される共振回路(受電側共振回路)を有して構成され、給電コイルL1から伝送された交流電力をワイヤレスにて受電する受電部としての役割を果たす。受電コイル部21を構成する受電側共振回路の共振周波数も、上述した電力伝送周波数fpと同一又はそれに近い周波数に設定される。なお、受電側コンデンサC2は、受電コイルL2と並列に接続してもよい。
【0042】
受電コイルL2は、給電コイルL1と同様に、例えばφ0.1(mm)の絶縁された銅線を2千本程度撚り合わせたリッツ線を数ターンから数十ターン程度、平面状に巻回することによって形成されたスパイラル構造のコイルである。一方、受電コイルL2の設置位置は、給電コイルL1とは異なり、例えば電気自動車の車両下部となる。給電コイルL1によって生成される磁束が受電コイルL2に鎖交すると、電磁誘導作用による起電力が受電コイルL2に生じ、
図2に示す交流電流I2が流れる。この交流電流I2は、整流器22により直流電流に変換されたうえで、負荷2に供給される。これにより、負荷2に対して直流電力を供給することが実現される。
【0043】
整流器22は、受電コイル部21から出力された交流電流を直流電流に整流することにより、負荷2に対して直流電力を供給する機能を有する回路である。具体的には、
図2に示すように、4つのダイオードD1〜D4がブリッジ接続されてなるブリッジ回路と、このブリッジ回路と並列に接続された平滑用キャパシタC0とによって構成される。
【0044】
図3(h)及び
図3(i)はそれぞれ、受電コイルL2の両端間の電圧V2、及び、受電コイルL2に流れる電流I2の波形を示す図である。これらの図に示すように、電圧V2及び電流I2はそれぞれ、電圧V1及び電流I1と同様、電力伝送周波数fpで振動する略正弦波信号となる。これは、受電側コンデンサC2と受電コイルL2が構成する共振回路によって、高周波成分がフィルタリングされるためである。ただし、電圧V2及び電流I2はそれぞれ、電圧V1及び電流I1に対して若干(
図3の例では1/4周期強)遅延した信号となる。
【0045】
図4(b)は、電流I2の周波数スペクトラムを示す図である。同図に示すように、電流I2においても、電流I1と同様、電力伝送周波数fpよりも高い周波数帯域に多数のピークが認められる。つまり、電流I2も完全な正弦波ではなく、多数の高周波成分を含んでいる。これは主として、
図3(h)に示すように、ダイオードD1〜D4を流れる電流経路の切り替わりに起因する高周波成分が電圧V2に発生していることに対応するものである。これらの高周波成分も、給電コイル部13により生成される交番磁界に重畳され、金属異物検出装置14Aの共振回路RC(後述)に現れる信号波形に影響を与える。この影響によって生ずる金属異物検出装置14Aによる検出精度の低下を抑制することも、本発明の目的の一つである。
【0046】
負荷2は、図示しない充電器及びバッテリーを含んで構成される。このうち充電器は、整流器22から出力された直流電力に基づいてバッテリーを充電する機能を有する回路である。この充電は、例えば定電圧定電流充電(CVCC充電)により実行される。バッテリーの具体的な種類は、電力を蓄える機能を有するものであれば特に限定されない。例えば、二次電池(リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケル電池など)や容量素子(電気二重層キャパシタなど)を、負荷2を構成するバッテリーとして好適に用いることが可能である。
【0047】
次に、
図5及び
図6を参照しながら、金属異物検出装置14Aの詳細について説明する。
図5(a)は、給電コイルL1とアンテナコイルL3の位置関係を示す平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のA−A線に対応する給電コイルL1及びアンテナコイルL3の断面図であり、
図6は、金属異物検出装置14Aの機能ブロックを示す略ブロック図である。
【0048】
初めに
図5(a)及び
図5(b)を参照すると、金属異物検出装置14Aに設けられる複数の共振回路RCは、平面的に見て給電コイルL1の内側に相当する領域内にマトリクス状に並べて配置される。このような共振回路RCの配置は、表面に導電性のコイルパターンが形成されたプリント基板(図示せず)を給電コイルL1上に設置することによって、実現できる。
【0049】
この配置により、給電コイルL1において上述した交番磁界(電力伝送周波数fpで振動する磁界)が発生すると、
図2に示した給電コイルL1と各アンテナコイルL3との間の相互インダクタンスM13、及び、受電コイルL2と各アンテナコイルL3との間の相互インダクタンスM23によって、各アンテナコイルL3に起電力が誘起される。この起電力は、各アンテナコイルL3に振動信号Vb(
図6参照)を発生させる。つまり、本実施の形態によるアンテナコイルL3は、磁界を受けて振動信号Vbを発生するものとなっている。
【0050】
各アンテナコイルL3に発生する振動信号Vbは、交番磁界の周波数である電力伝送周波数fpの成分に加え、各共振回路RCの共振周波数frの成分を含む信号となる。共振周波数frの具体的な値は、アンテナコイルL3のインダクタンスとコンデンサC3のキャパシタンスとを調整することにより、電力伝送周波数fpよりも桁違いに高い単一の値に設定される。具体的な例では、fr=3,000〔kHz〕とすることが好ましい。なお、コンデンサC3のキャパシタンスは、数百から数千〔pF〕程度の値とすることが好ましい。
【0051】
次に
図6を参照すると、異物検出部140は機能的に、検出切替スイッチ141、フィルタ回路142、二値化回路143、カウンタ回路144、振動時間長計測回路145、判定回路146、及び制御回路147Aを有して構成される。このうち検出切替スイッチ141及びフィルタ回路142は、各共振回路RCとともにセンサ部Sを構成する。
【0052】
検出切替スイッチ141は、フィルタ回路142に接続された共通端子と、各共振回路RCに接続された複数の選択端子とを有する1回路多接点のスイッチであり、制御回路147Aから供給されるコイル選択信号CSに応じて、いずれか1つの選択端子を共通端子に接続するよう構成される。検出切替スイッチ141として具体的には、半導体スイッチやマルチプレクサを使用することが好適である。
【0053】
制御回路147Aは、コイル選択信号CSを生成して検出切替スイッチ141に供給するとともに、選択したアンテナコイルL3を含む共振回路RCに生ずる電圧又は電流の変化と、ノイズ検出部15Aによるノイズの検出結果とに基づき、金属異物の有無の検出を行う回路(制御部)である。金属異物の有無の検出を行うに当たり、制御回路147Aは、カウンタ回路144にカウント開始信号STを、振動時間長計測回路145に参照期間指示信号RPをそれぞれ供給する処理も行う。
【0054】
コイル選択信号CSは、複数のアンテナコイルL3のうちの1つを示す信号である。制御回路147Aは、等しい時間間隔で1つずつ順次各アンテナコイルL3を選択し、選択したアンテナコイルL3を示すコイル選択信号CSを検出切替スイッチ141に供給するよう構成される。これにより、フィルタ回路142には、各アンテナコイルL3が1つずつ順次接続されていくことになる。制御回路147Aは、最後のアンテナコイルL3を選択した後には、最初のアンテナコイルL3に戻って選択動作を繰り返す。
【0055】
なお、制御回路147Aは、ユーザによる設定等に応じて、複数のアンテナコイルL3のうちのいくつかを上記選択の対象から外せるように構成されてもよい。こうすれば、金属異物の検出対象となる領域を限定することが可能になるとともに、すべてのアンテナコイルL3を用いる場合に比べ、1つ1つのアンテナコイルL3による金属異物の検出時間を長くすることができる。
【0056】
以下、制御回路147Aが行う金属異物の有無の検出について、異物検出部140内の他の回路の動作説明も含めて、詳しく説明する。なお、以下で説明する異物検出のための動作は、1つのアンテナコイルL3が選択されている間に、制御回路147Aによって1回以上繰り返し実行される。
【0057】
選択中のアンテナコイルL3において発生した振動信号Vbは、検出切替スイッチ141を介して、フィルタ回路142に入力される。フィルタ回路142は、振動信号Vbから電力伝送周波数fpの成分を取り除くことにより、振動信号Vcを生成する回路である。具体的には、共振周波数frと同じ帯域の周波数を取り出すバンドパスフィルタによりフィルタ回路142を構成してもよいし、電力伝送周波数fpより高周波数の成分のみを取り出すハイパスフィルタによりフィルタ回路142を構成してもよい。また、フィルタ回路142は、アクティブフィルタで構成されてもよいし、パッシブフィルタで構成されてもよい。
【0058】
二値化回路143は、フィルタ回路142から出力される振動信号Vcの電圧値と、予め設定された基準電圧値とを比較することにより、二値信号Vdを生成する機能を有する。二値信号Vdは、振動信号Vcの電圧値が基準電圧値以上である場合にハイレベルとなり、振動信号Vcの電圧値が基準電圧値より小さい場合にローレベルとなる二値の信号となる。
【0059】
カウンタ回路144は、二値化回路143から出力される二値信号Vdの波数をカウントすることにより、振動信号Vcの波数をカウントする機能を有する。カウンタ回路144がカウントを開始するタイミングは、制御回路147Aから供給されるカウント開始信号STによって指示される。
【0060】
振動時間長計測回路145は、1より大きい所定波数分の振動信号Vc(共振回路に生ずる振動信号Vbに対応する信号)の振動に要する時間の長さを示す振動時間長TLを計測する回路である。なお、ここでいう波数は、周期と言い換えることも可能である。具体的には、カウンタ回路144のカウント値が第1のカウント値に達した時点から、カウンタ回路144のカウント値が第2のカウント値に達した時点までの時間長を計測し、振動時間長TLとして出力するよう構成される。第1及び第2のカウント値は、制御回路147Aから供給される参照期間指示信号RPによって指示される。振動時間長計測回路145により振動時間長TLは、判定回路146に供給される。
【0061】
判定回路146は、振動時間長計測回路145から供給される振動時間長TLと、制御回路147Aに予め設定される基準時間長CTLとを比較し、その結果に基づいて、給電コイルL1と受電コイルL2の間における金属異物の有無を検出する機能部である。具体的な例では、振動時間長TLと基準時間長CTLの差が所定値以上である場合に金属異物が検出されたと判定し、それ以外の場合に金属異物が検出されていないと判定する。判定の結果は、制御回路147Aを通じて、ワイヤレス電力伝送システム1内のシステム全体を制御する制御部(図示せず)に送信される。この制御部は、金属異物が検出されたとの判定結果が供給された場合、
図2に示した電力変換器12による電力の変換を停止させる動作を行う。すなわち、電力変換器12から交流電力が出力されないよう、
図2に示したスイッチ駆動部120による制御信号SG1〜SG4の生成を制御する。これにより、ワイヤレス給電装置10による給電動作が停止するので、給電コイルL1と受電コイルL2の間に生ずる交番磁界に起因して金属異物に渦電流が発生し、それによって金属異物が発熱することを防止することが可能になる。
【0062】
制御回路147Aは、ノイズ検出部15Aによるノイズの検出結果に基づき、カウント開始信号STを活性化することによってカウンタ回路144にカウント開始を指示するタイミングと、参照期間指示信号RPによって振動時間長計測回路145に通知する第1及び第2のカウント値の内容とを決定する。本実施の形態では、この決定により、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度の向上が実現される。以下、
図7も参照しながら詳しく説明する。
【0063】
図7は、電圧V1,V2、電流I1,I2、及び振動信号Vbの波形を示す図である。なお、同図には電力伝送周波数fpの1周期分を示している。上述したように、振動信号Vbは共振回路RCの共振周波数frの成分を含む信号であるが、
図7に示すように、振動信号Vbにはその他の周波数成分も多数含まれている。特に、電圧V1,V2に高周波成分が重畳するタイミング(
図7の例では、時刻t
1,t
2,t
3,t
4)で、振動信号Vbの波形に大きな歪み(電力伝送のための交番磁界に起因する歪み)が発生する。このような歪みは異物検出の精度の低下を招くことから、制御回路147Aは、このような歪みができるだけ発生しないタイミングで金属異物の検出が行われることとなるよう、カウント開始信号STの活性化タイミング並びに第1及び第2のカウント値の内容を決定する。
【0064】
より具体的に説明すると、制御回路147Aは、ノイズ検出部15Aによるノイズの検出結果の履歴から、電力伝送のための交番磁界に起因する大きな歪みが振動信号Vbに発生しないタイミングを予測する。
図7の例では、時刻t
2と時刻t
3の間の期間(以下、「ノイズレス期間NLP」と称する)が、電力伝送のための交番磁界に起因する大きな歪みが振動信号Vbに発生しないタイミングである。ノイズレス期間NLPは、スイッチング素子SW1〜SW4のスイッチングによって生じているものであるから、定期的に出現する。制御回路147Aは、このような定期的に出現するノイズレス期間NLPの出現周期をノイズ検出結果の履歴から取得することにより、次のノイズレス期間NLPの出現タイミングを予測する。そして、その予測結果に基づき、次のノイズレス期間NLPの中で金属異物の検出が行われることとなるよう、カウント開始信号STの活性化タイミング及び第1及び第2のカウント値の内容を決定する。
【0065】
具体的な例では、制御回路147Aは、ノイズレス期間NLPの開始直後にカウント開始信号STを活性化すればよい。また、第1のカウント値は例えば2とすればよい。第1のカウント値を1ではなく2とするのは、ノイズレス期間NLPが開始した直後の振動信号Vbには歪みが残っている可能性があるからである。さらに、第2のカウント値は、金属異物の検出期間がノイズレス期間NLPを超えてしまうことのないように決定すればよい。具体的には、ノイズレス期間NLPの時間長と共振回路RCの共振周波数frとからノイズレス期間NLP内に含まれることが期待される振動信号Vcの波数を算出し、算出結果を超えない値を第2のカウント値とすればよい。例えば
図7の例であれば、ノイズレス期間NLP内に含まれることが期待される振動信号Vcの波数は6(丸数字の1〜6に対応)となるので、第2のカウント値としては、6を超えない数字を用いればよい。
【0066】
制御回路147Aがこのようにしてカウント開始信号STの活性化タイミング及び第1及び第2のカウント値の内容を決定することにより、電力伝送のための交番磁界に起因する大きな歪みが振動信号Vbに発生しないノイズレス期間NLP内に、金属異物の検出が行われることになる。したがって、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度を向上することが可能となる。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態によるワイヤレス給電装置10によれば、異物検出部140がノイズ検出部15Aによるノイズの検出結果にも基づいて金属異物の有無を検出しているので、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度を向上することが可能となる。より具体的に言えば、制御回路147Aが、電力伝送のための交番磁界に起因する大きな歪みが振動信号Vbに発生しないノイズレス期間NLP内に金属異物の検出が行われることとなるよう、カウント開始信号STの活性化タイミング及び第1及び第2のカウント値の内容を決定しているので、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度を向上することが可能となる。
【0068】
また、本実施の形態によるワイヤレス給電装置10によれば、制御回路147Aがノイズの検出結果の履歴からノイズレス期間NLPを予測しているので、仮にスイッチング素子SW1〜SW4のスイッチング以外の要因によるノイスが発生したとしても、そのノイズが周期的なものである限り、そのノイズを避けて金属異物の検出を行うことが可能になる。
【0069】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るワイヤレス電力伝送システム1について、説明する。本実施の形態に係るワイヤレス電力伝送システム1は、金属異物検出装置14Aに代えて金属異物検出装置14Bを用いる点で、第1の実施の形態によるワイヤレス電力伝送システム1と相違する。その他の点では第1の実施の形態によるワイヤレス電力伝送システム1と同様であるので、以下では、第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、第1の実施の形態との相違点にのみ着目して説明する。
【0070】
図8は、本実施の形態による金属異物検出装置14Bの機能ブロックを示す略ブロック図である。同図に示すように、金属異物検出装置14Bは、第1の実施の形態による金属異物検出装置14Aの異物検出部140に駆動回路148を追加するとともに、制御回路147Aを制御回路147Bに置き換えたものとなっている。駆動回路148は、各共振回路RCに対して電圧を供給する回路(駆動部)であり、各アンテナコイルL3は、駆動回路148から供給される電圧を受けて、振動信号Vbを発生するように構成される。
【0071】
駆動回路148について、より詳しく説明する。駆動回路148は、
図8に示すように、スイッチング回路148a及び電源148bを有して構成される。
【0072】
スイッチング回路148aは、電源148bに接続された端子と、検出切替スイッチ141の共通端子に接続された端子とを有する1回路1接点のスイッチであり、制御回路147Bから供給されるパルス印加信号PAに応じて、開閉動作を行うよう構成される。スイッチング回路148aとして具体的には、バイポーラトランジスタ又はMOSFETを使用することが好適である。
【0073】
電源148bは、アンテナコイルL3に電流を流すための電源であり、直流電源、交流電源のいずれであってもよい。以下では、電源148bが直流電源であるとして説明を続ける。電源148bの一端はスイッチング回路148aに接続され、他端は接地される。
【0074】
本実施の形態による制御回路147Bは、コイル選択信号CSによる検出切替スイッチ141の制御、カウント開始信号STによるカウンタ回路144の制御、及び、参照期間指示信号RPによる振動時間長計測回路145の制御に加え、パルス印加信号PAによるスイッチング回路148aの制御を行う。以下、
図9も参照しながら詳しく説明する。
【0075】
図9は、
図8に示したパルス印加信号PA、振動信号Vb,Vc、及び二値信号Vdの波形を示す図である。制御回路147Bは、金属異物の検出を実行するにあたり、まず初めに、同図に示す期間P1の間、パルス印加信号PAを活性状態とする。すると、コイル選択信号CSによって選択中の共振回路RCに対し、期間P1の間、駆動回路148から電圧が供給される。この電圧によってアンテナコイルL3にエネルギーが蓄積され、こうして蓄積されたエネルギーにより、パルス印加信号PAが非活性に戻った後、振動信号Vbに周波数frの減衰振動が発生する。
【0076】
減衰振動を含む振動信号Vbに対する処理は、第1の実施の形態で説明したものと同様である。すなわち、フィルタ回路142により、振動信号Vbから電力伝送周波数fpの成分を取り除いてなる振動信号Vcが生成され、二値化回路143により、振動信号Vcの電圧値と予め設定された基準電圧値とを比較してなる二値信号Vdが生成され、カウンタ回路144により、二値信号Vdの波数がカウントされる。カウンタ回路144がカウントを開始するタイミングは、第1の実施の形態と同様、制御回路147Bから供給されるカウント開始信号STによって制御される。なお、制御回路147Bは、パルス印加信号PAを非活性に戻すと同時にカウント開始信号STを活性化すればよい。その後の振動時間長計測回路145及び制御回路147Bの処理については、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0077】
本実施の形態による制御回路147Bは、第1の実施の形態による制御回路147Aと同様の処理により、電力伝送のための交番磁界に起因する大きな歪みが振動信号Vbに発生しないタイミング(
図7に示したノイズレス期間NLP)を取得する。そして、このノイズレス期間NLPの中で異物検出を行えるよう、パルス印加信号PAの活性化タイミングと、参照期間指示信号RPにより振動時間長計測回路145に通知する第1及び第2のカウント値の内容とを決定する。
【0078】
具体的な例では、制御回路147Bは、ノイズレス期間NLPの開始直後にパルス印加信号PAを活性化すればよい。こうすることで制御回路147Bは、ノイズ検出部15Aによるノイズの検出結果により振動信号Vbに歪みが発生しないことが示されるタイミングで電圧を印加するよう、駆動回路148を制御することができる。一方、第1及び第2のカウント値の内容については、第1の実施の形態と同様にして決定すればよい。つまり、第1のカウント値は例えば2とすればよく、第2のカウント値は、金属異物の検出期間がノイズレス期間NLPを超えてしまうことのないように決定すればよい。例えば
図9の例では、第1及び第2のカウント値をそれぞれ2及び6とすることで、図示した丸数字2から丸数字6までに対応する期間が金属異物の検出期間となる。
【0079】
制御回路147Bがこのようにしてパルス印加信号PAの活性化タイミング及び第1及び第2のカウント値の内容を決定することにより、電力伝送のための交番磁界に起因する大きな歪みが振動信号Vbに発生しないノイズレス期間NLP内で、金属異物の検出が行われることになる。したがって、本実施の形態においても、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度を向上することが可能となる。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態によるワイヤレス給電装置10によれば、制御回路147Bが、電力伝送のための交番磁界に起因する大きな歪みが振動信号Vbに発生しないノイズレス期間NLP内に金属異物の検出が行われることとなるよう、パルス印加信号PAの活性化タイミング及び第1及び第2のカウント値の内容を決定しているので、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度を向上することが可能となる。
【0081】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係るワイヤレス電力伝送システム1について、説明する。本実施の形態に係るワイヤレス電力伝送システム1は、ノイズ検出部15Aに代えてノイズ検出部15Bを用いる点で、第1の実施の形態によるワイヤレス電力伝送システム1と相違する。その他の点では第1の実施の形態によるワイヤレス電力伝送システム1と同様であるので、以下では、第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、第1の実施の形態との相違点にのみ着目して説明する。
【0082】
図10は、本実施の形態によるワイヤレス給電装置10及びワイヤレス受電装置20それぞれの内部回路構成を示す図である。同図に示すように、ノイズ検出部15Bは、ノイズ検出用コイルL4と、検出部150とを有して構成される。検出部150の内部には、ハイパスフィルタ回路(HPF)151が設けられる。なお、
図10に示した抵抗R4は、ノイズ検出用コイルL4の直列抵抗を明示したものである。また、ノイズ検出用コイルL4の個数は1個であってもよいし、複数個であってもよい。
【0083】
ノイズ検出用コイルL4は、ワイヤレス電力伝送の実施中に生ずる交番磁界内に配置される。具体的には、給電コイルL1と対向する位置にノイズ検出用コイルL4を配置することが好ましい。このような配置により、給電コイルL1において上述した交番磁界(電力伝送周波数fpで振動する磁界)が発生すると、
図10に示した給電コイルL1とノイズ検出用コイルL4との間の相互インダクタンスM14、及び、受電コイルL2とノイズ検出用コイルL4との間の相互インダクタンスM24によって、ノイズ検出用コイルL4に起電力が誘起される。この起電力により、ノイズ検出用コイルL4に交流電流I4が流れる。
【0084】
ハイパスフィルタ回路151は、交流電流I4から電力伝送周波数fpよりも高い周波数の成分(ノイズ成分)のみを取り出すことにより、出力信号I4a(
図11参照)を生成する回路である。ハイパスフィルタ回路151も、アクティブフィルタで構成されてもよいし、パッシブフィルタで構成されてもよい。ハイパスフィルタ回路151によって生成された出力信号I4aは、ノイズの検出結果として、異物検出部140(具体的には、
図6に示した制御回路147A)に対して供給される。
【0085】
図11は、
図10に示した電圧V1,V2及び電流I1,I2,I4、並びに、ハイパスフィルタ回路151の出力信号I4aの波形を示す図である。なお、同図には電力伝送周波数fpの1周期分を示している。同図に示すように、電流I4には、電力伝送周波数fpで振動する成分に加え、スイッチング素子SW1〜SW4のスイッチング等に起因して電圧V1,V2及び電流I1,I2に重畳したノイズが現れる。出力信号I4aは、この電流I4から電力伝送周波数fpで振動する成分を除去したものとなるので、
図11に示すように、ノイズ成分のみを含む信号となる。
【0086】
出力信号I4aにノイズが現れるタイミング(時刻t
1,t
2,t
3,t
4)は、
図7に示した時刻t
1,t
2,t
3,t
4と一致している。このことは、出力信号I4aの履歴を参照すれば、上述したノイズレス期間NLPを取得することができる、ということを意味している。そこで本実施の形態による制御回路147A(
図6参照)は、ノイズ検出部15Bから供給される出力信号I4aの履歴を参照することにより、次のノイズレス期間NLPの出現タイミングを予測する。ノイズレス期間NLPを予測した後の制御回路147Aの処理は、第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0087】
以上説明したように、本実施の形態によるワイヤレス給電装置10によれば、制御回路147Aは、ノイズ検出部15Bから供給される出力信号I4aに基づき、次のノイズレス期間NLPの出現タイミングを予測することができる。したがって、本実施の形態によっても、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度を向上することが可能となる。
【0088】
なお、本実施の形態では、ワイヤレス給電装置10が第1の実施の形態による金属異物検出装置14Aを有する例を取り上げて説明したが、ワイヤレス給電装置10が第2の実施の形態による金属異物検出装置14Bを有する場合にも、同様に、ノイズ検出部15Aに代えてノイズ検出部15Bを用いることが可能である。この場合、
図8に示した制御回路147Bが、ノイズ検出部15Bから供給される出力信号I4aの履歴を参照することにより、次のノイズレス期間NLPの出現タイミングを予測すればよい。
【0089】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係るワイヤレス電力伝送システム1について、説明する。本実施の形態に係るワイヤレス電力伝送システム1は、金属異物検出装置14A及びノイズ検出部15Bの機能を統合してなる金属異物検出装置16を有する点で、第3の実施の形態によるワイヤレス電力伝送システム1と相違する。その他の点では第3の実施の形態によるワイヤレス電力伝送システム1と同様であるので、以下では、第3の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、第3の実施の形態との相違点にのみ着目して説明する。
【0090】
図12は、本実施の形態によるワイヤレス給電装置10及びワイヤレス受電装置20それぞれの内部回路構成を示す図である。金属異物検出装置16は、給電コイルL1に接近する金属異物の有無を検出する機能(異物検出部)と、電力伝送周波数fpよりも高い周波数の信号(ノイズ)を検出する機能(ノイズ検出部)とを有する装置であり、
図12に示すように、それぞれアンテナコイルL3及び金属異物検出装置用コンデンサC3を含む複数の共振回路RCと、各共振回路RCに接続された検出部160とを有して構成される。なお、
図12に示した抵抗R3は、アンテナコイルL3の直列抵抗を明示したものである。
【0091】
本実施の形態による共振回路RCには、アンテナコイルL3とコンデンサC3の接続状態を切り替える切替部SWが設けられる。切替部SWは、異物検出機能による金属異物の有無の検出を行う期間においてはアンテナコイルL3とコンデンサC3とを接続し、ノイズ検出機能によるノイズの検出を行う期間においてはコンデンサC3をアンテナコイルL3から切り離すという動作を行う。切替部SWのこの動作は、検出部160によって制御される。
【0092】
検出部160は、初めに所定時間長の期間にわたり、ノイズ検出機能によるノイズの検出動作を実行する。具体的には、まず、コンデンサC3をアンテナコイルL3から切り離すよう、切替部SWを制御する。次いで、検出部160は、ノイズ検出用コイルL4(
図10参照)ではなくアンテナコイルL3により受信される信号に基づいて、第3の実施の形態で説明した検出部150の動作(出力信号I4aの生成)と、出力信号I4aに基づくノイズレス期間NLPの予測とを実行する。
【0093】
次のノイズレス期間NLPの出現タイミングの予測を完了した検出部160は、続いて、異物検出機能による金属異物の有無の検出動作を実行する。具体的には、まず、アンテナコイルL3とコンデンサC3とを接続するよう、切替部SWを制御する。次いで、検出部160は、取得したノイズレス期間NLPを用いて、第3の実施の形態で説明した異物検出部140と同様の異物検出動作を実行する。これにより検出部160は、ノイズレス期間NLPの中で異物検出を行うことができるので、本実施の形態によっても、第3の実施の形態と同様、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度を向上することが可能となる。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アンテナコイルL3をノイズ検出用のコイルとしても使用することが可能になる。したがって、
図10に示したノイズ検出用コイルL4が不要になるので、ワイヤレス給電装置10を小サイズ化することが可能になる。
【0095】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態に係るワイヤレス電力伝送システム1について、説明する。本実施の形態に係るワイヤレス電力伝送システム1は、金属異物検出装置14A及びノイズ検出部15Bがワイヤレス給電装置10ではなくワイヤレス受電装置20に設けられる点で、第3の実施の形態によるワイヤレス電力伝送システム1と相違する。その他の点では第3の実施の形態によるワイヤレス電力伝送システム1と同様であるので、以下では、第3の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、第3の実施の形態との相違点にのみ着目して説明する。
【0096】
図13は、本実施の形態によるワイヤレス給電装置10及びワイヤレス受電装置20それぞれの内部回路構成を示す図である。同図に示すように、本実施の形態による金属異物検出装置14A及びノイズ検出部15Bは、ワイヤレス受電装置20内に配置される。アンテナコイルL3及びノイズ検出用コイルL4は、本実施の形態でも、それぞれ給電コイルL1と受電コイルL2の間(ワイヤレス電力伝送の実施中に生ずる交番磁界の内部)に配置される。
【0097】
本実施の形態によっても、金属異物検出装置14A及びノイズ検出部15Bは、第3の実施の形態で説明したものと同様の動作を行うことができる。したがって、本実施の形態によっても、第3の実施の形態と同様、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度を向上することが可能となる。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0099】
例えば、上記各実施の形態では、制御回路147A,147Bはいずれも、ノイズ検出部15Aによるノイズの検出結果の履歴から電力伝送のための交番磁界に起因する大きな歪みが振動信号Vbに発生しないタイミングを予測し、その結果に基づき、電力伝送のための交番磁界に起因する大きな歪みが振動信号Vbに発生しないタイミングで金属異物の検出を行っていたが、予測をするのではなく、ノイズ検出部15Aによるノイズの検出結果の確認と金属異物の検出動作とを並行して実施し、ノイズ検出部15Aによりノイズが検出されたことに応じて、金属異物の有無の検出の結果を破棄することとしてもよい。つまり、ノイズ検出部15Aによりノイズが検出されたタイミングで得られた金属異物の有無の検出結果を、ノイズによる影響を受けた不適切な結果であるとみなし、破棄することとしてもよい。こうすることによっても、ワイヤレス給電中における、給電コイルL1と受電コイルL2との間の金属異物の検出精度を向上することが可能となる。
【0100】
また、
図13には、金属異物検出装置14A及びノイズ検出部15Bをワイヤレス受電装置20内に設ける例を示したが、金属異物検出装置14Aに代えて金属異物検出装置14B(
図8参照)をワイヤレス受電装置20内に設けてもよいし、ノイズ検出部15Bに代えてノイズ検出部15A(
図2参照)をワイヤレス受電装置20内に設けてもよいし、金属異物検出装置14A及びノイズ検出部15Bに代えて金属異物検出装置16(
図12参照)をワイヤレス受電装置20内に設けてもよい。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の実施例について、
図14を参照しながら説明する。
【0102】
図14は、本発明の実施例における信号Vb,I4aの波形及び周期Cの計測結果を示す図である。なお、同図に示す計測結果を得るにあたっては、
図10に示した構成を有するワイヤレス電力伝送システム1を使用した。また、計測を始める前に、給電コイルL1と受電コイルL2の間に金属異物がないことを目視確認した。
【0103】
直流電源11としては、450Vの直流電圧を用いた。また、電力伝送周波数fpは89kHzとした。したがって、スイッチング素子SW1〜SW4のオンオフ動作の周波数も89kHzであり、給電コイルL1と受電コイルL2の間に発生する交番磁界の周波数も89kHzである。給電側コンデンサC1及び受電側コンデンサC2の容量はそれぞれ、7nF及び18nFとし、給電コイルL1、受電コイルL2、アンテナコイルL3、及びノイズ検出用コイルL4のインダクタンスはそれぞれ、500μH、200μH、0.7μH、及び0.7μHとした。コンデンサC3の容量は、アンテナコイルL3とコンデンサC3によって構成される共振回路RCの共振周波数が1.73MHzとなるように設定した。また、負荷2としては27.3Ωの抵抗素子を用い、負荷2の消費電力が3.3kWとなるように、給電コイルL1と受電コイルL2の対向位置を調節した。アンテナコイルL3及びノイズ検出用コイルL4はそれぞれ、給電コイルL1の近傍かつ給電コイルL1と対向する位置に配置した。
【0104】
また、
図8に示す電源148bとしては5Vの直流電圧を用い、フィルタ回路142としては、カットオフ周波数が1.5MHzであるハイパスフィルタを用いた。二値化回路143に予め設定する基準電圧値は、0Vとした。
【0105】
図14(a)及び
図14(b)はそれぞれ、振動信号Vb及びハイパスフィルタ回路151(
図10参照)の出力信号I4aの波形の計測結果を示している。
図14(b)に示すように、出力信号I4aには、電力伝送周波数fpの1周期内で4回のノイズ発生(時刻t
1,t
2,t
3,t
4)が観測された。これは、
図11に示したものと同様の結果である。また、
図14(a)に示すように、4回のノイズ発生時刻のうち時刻t
1,t
3は、振動信号Vbがゼロクロスするタイミングとほぼ一致した。このことは、上述した特許文献2のように電力伝送のための磁界の強度が所定値以下となるタイミングで異物検出を行うこととすると、異物検出におけるノイズの影響が増大してしまうことを意味する。
【0106】
図14(c)には、
図14(a)及び
図14(b)に示した電力伝送周波数fpの周期の次の周期において、振動時間長計測回路145から出力される振動時間長TLをプロットしたものである。ただし、同図の振動時間長TLを得るにあたり、カウンタ回路144には、連続的にカウントを実施させた。また、振動時間長計測回路145には、カウンタ回路144のカウント値が1増える都度、そこから次のカウント値までの期間の時間長を振動時間長TLとして出力させた。これにより、
図14(c)における振動時間長TLは、振動信号Vcの周期に等しくなっている。
【0107】
図14(c)に示すように、振動時間長TLは、時刻t
1+1/fpと時刻t
2+1/fpの間、及び、時刻t
3+1/fpと時刻t
4+1/fpの間では大きく変動する一方で、時刻t
2+1/fpと時刻t
3+1/fpの間ではあまり変動せず、共振回路RCの共振周波数frの逆数にほぼ等しい値を維持している。この結果から、時刻t
2+1/fpと時刻t
3+1/fpの間をノイズレス期間NLPとして用いれば、ノイズの影響を受けずに金属異物の検出を行えることが理解される。