特許第6772830号(P6772830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772830
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/26 20060101AFI20201012BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20201012BHJP
   H01G 11/76 20130101ALI20201012BHJP
   H01G 11/72 20130101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01M2/26 A
   H01M10/04 Z
   H01G11/76
   H01G11/72
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-253985(P2016-253985)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-107009(P2018-107009A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】筒井 孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 量也
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−107146(JP,A)
【文献】 特開2014−182880(JP,A)
【文献】 特開2016−115409(JP,A)
【文献】 特開2016−189247(JP,A)
【文献】 特開2000−133241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/26
H01M 10/04
H01G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一辺から突出した形状のタブを有する電極が積層された電極組立体と、
前記タブが積層されて構成されたタブ群と、
前記電極組立体および前記タブ群を収容するケースと、
前記ケースの壁部に固定され、前記電極組立体と電気を授受する電極端子と、
前記タブ群と前記電極端子とを電気的に接続した金属板の導電部材と、を備える蓄電装置であって、
前記導電部材は、
前記壁部に重なる位置にある基部と、
前記基部に連続し、かつ前記タブ群が接合された接続部と、を有し、
前記基部と前記接続部とが並ぶ方向を前記導電部材の連設方向とするとともに、前記基部の面方向に沿い、前記連設方向に直交する方向を前記導電部材の幅方向とし、
前記接続部の幅は、前記基部の幅より小さく、
前記タブ群は、前記連設方向において前記基部と離間し、
前記接続部の先端部は、前記タブ群から連設方向に突出していることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記タブ群と前記基部との離間距離は、前記タブ群と前記接続部の先端部との間の突出距離より大きいことを特徴とする請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記接続部と前記電極組立体との離間距離は、
前記基部と前記電極組立体との離間距離よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記タブ群の両側部にレーザー溶接による溶接部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された蓄電素子が知られている。特許文献1の蓄電素子では、蓄電素子である電池は、集電タブが端部に沿って延びるように折り曲げられ、ケース内に収容された電極体を備える。また、電池は、集電タブに接合され、外部端子に接続される集電体を備えている。集電体は、集電タブが接合された被接合部と、外部端子に接続されるとともに集電タブが突出する方向と交差する方向に隣接して設けられた接続部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−115409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電装置における電極組立体のタブ群(集電タブ)と電極端子(外部端子)とを電気的に接続する導電部材はタブ群と溶接により接続される。導電部材とタブ群との溶接性をより高めることが要請されている。因みに、導電部材とタブ群との溶接性が低いと溶接部を大きくすることが必要となり溶接時間が長くなる。溶接時にはスパッタが生じるが、溶接時間が多くなるにつれてスパッタが多くなり、スパッタが電極組立体に飛散して付着するおそれがある。一方、特許文献1に開示された蓄電素子では、集電タブが集電体の接続部に溶接されるものの、集電タブと集電体との溶接性を向上させる手段について何ら開示はない。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、タブ群と導電部材との溶接性を向上させることができる蓄電装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、一辺から突出した形状のタブを有する電極が積層された電極組立体と、前記タブが積層されて構成されたタブ群と、前記電極組立体および前記タブ群を収容するケースと、前記ケースの壁部に固定され、前記電極組立体と電気を授受する電極端子と、前記タブ群と前記電極端子とを電気的に接続した金属板の導電部材と、を備える蓄電装置であって、前記導電部材は、前記壁部に重なる位置にある基部と、前記基部に連続し、かつ前記タブ群が接合された接続部と、を有し、前記基部と前記接続部とが並ぶ方向を前記導電部材の連設方向とするとともに、前記基部の面方向に沿い、前記連設方向に直交する方向を前記導電部材の幅方向とし、前記接続部の幅は、前記基部の幅より小さく、前記タブ群は、前記連設方向において前記基部と離間し、前記接続部の先端部は、前記タブ群から連設方向に突出していることを特徴とする。
【0007】
本発明では、導電部材における接続部の幅は、基部の幅より小さく、タブ群は、連設方向において基部と離間している。接続部の先端部は、タブ群から連設方向に突出している。このため、タブ群と導電部材とを溶接するとき、溶接時に生じる熱が接続部から基部へ逃げにくくなる。溶接時に生じる熱が接続部から逃げ難くなることにより、溶接時間を短くすることができ、タブ群と導電部材との溶接性を向上させることができる。
【0008】
また、上記の蓄電装置において、前記タブ群と前記基部との離間距離は、前記タブ群と前記接続部の先端部との間の突出距離より大きい構成としてもよい。
この場合、タブ群は基部からより離間するため、溶接時に生じる熱が接続部からより基部へ逃げにくくなり、タブ群と導電部材との溶接性をより向上させることができる。
【0009】
また、上記の蓄電装置において、前記接続部と前記電極組立体との離間距離は、前記基部と前記電極組立体との離間距離よりも大きい構成としてもよい。
この場合、溶接部が形成される接続部が、基部よりも電極組立体から離れた位置となるため、溶接時にスパッタが飛散したとしても電極組立体に達し難くなる。電極組立体へのスパッタの付着を抑制することができる。
【0010】
また、上記の蓄電装置において、前記タブ群の両側部にレーザー溶接による溶接部が形成されている構成としてもよい。
この場合、タブ群における基部側に近い側部に溶接部が形成されるが、タブ群が基部と離間していることにより、基部側に近い側部の溶接部を基部から離間させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タブ群と導電部材との溶接性を向上させることができる蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る二次電池の分解斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る二次電池の斜視図である。
図3】電極組立体の構成要素を示す分解斜視図である。
図4】タブ群と導電部材と補助端子と外部端子との接合を示す部分断面図である。
図5】タブ群と導電部材との接合状態を示す部分断面図である。
図6】導電部材とタブ群との接合を示す要部平面図である。
図7】第2の実施形態に係る二次電池における導電部材とタブ群との接合を示す要部平面図である。
図8】第3の実施形態に係る二次電池における導電部材とタブ群との接合を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る蓄電装置としての二次電池について図面を参照して説明する。本実施形態の二次電池はリチウムイオン二次電池である。
【0014】
図1図2に示すように、二次電池は、箱型のケース11と、ケース11に収容される電極組立体12を備えている。ケース11は、開口部14を有する有底筒状のケース本体13と、開口部14を塞ぐ蓋体15を備えている。蓋体15は矩形の平板状であり、壁部に相当する。蓋体15には一対の挿通孔16が設けられている。蓋体15の表面における挿通孔16の近傍には凸部17がそれぞれ設けられている。凸部17は蓋体15の表面から矩形状に突出して形成されている。電極組立体12には、電極組立体12との間にて電気を授受する電極端子としての正極端子18と負極端子19が電気的に接続されている。
【0015】
図3に示すように、電極組立体12は、シート状の複数の正極電極20とシート状の複数の負極電極21と、セパレータ22を有している。正極電極20と負極電極21は互いに極性が異なる電極である。セパレータ22は、正極電極20と負極電極21との間に介在されて正極電極20と負極電極21を絶縁する。電極組立体12は、正極電極20、負極電極21およびセパレータ22を交互に層状とした積層型の電極組立体である。
【0016】
正極電極20は、正極金属箔(本実施形態ではアルミニウム箔)23と、正極金属箔23の両面に正極活物質を塗布して構成された正極活物質層24と、を備えている。正極電極20は、正極金属箔23の一辺25に沿って正極活物質が塗布されていない正極未塗工部26を有している。正極電極20は、一辺25の一部から突出した形状のタブ27を有する。
【0017】
負極電極21は、負極金属箔(本実施形態では銅箔)33と、負極金属箔33の両面に負極活物質を塗布して構成された負極活物質層34と、を備えている。負極電極21は、負極金属箔32の一辺35に沿って負極活物質が塗布されていない負極未塗工部36を有している。負極電極21は、一辺35の一部から突出した形状のタブ37を有する。
【0018】
図1に示すように、正極電極20および負極電極21が積層された状態では、正極のタブ27と負極のタブ37が互いに重ならないように、複数の正極のタブ27および複数の負極のタブ37の位置がそれぞれ設定されている。
【0019】
電極組立体12は、正極電極20の一辺25、負極電極21の一辺35およびセパレータ22の一辺を寄せ集めて形成されたタブ側端面28を有する。電極組立体12を構成する各正極電極20は、それぞれのタブ27が積層方向Lに沿って列状に配置されるように積層される。同様に、電極組立体12を構成する各負極電極21は、それぞれのタブ37が積層方向Lに沿って列状に配置されるように積層される。
【0020】
二次電池は、タブ側端面28から突出した正極のタブ群38を有する。正極のタブ群38は、全ての正極のタブ27を電極組立体12における積層方向Lの一端側に寄せ集め、積層して構成されている。また、二次電池は、タブ側端面28から突出した負極のタブ群38を有する。負極のタブ群38は、全ての負極のタブ37を電極組立体12における積層方向Lの一端側に寄せ集め、積層して構成されている。
【0021】
二次電池では、ケース11に収容された各タブ群38および電極組立体12のタブ側端面28に対し、蓋体15の内面が対向している。なお、電極組立体12において、タブ側端面28に沿い、かつ正極のタブ27(タブ群38)と負極のタブ37(タブ群38)が並ぶ方向を並設方向Xとする。また、蓋体15の内面と、電極組立体12のタブ側端面28とを最短距離で結ぶ方向を対向方向Zとする。
【0022】
正極のタブ群38には、電極組立体12と正極端子18とを電気的に接続するための正極の導電部材41が接合されている。正極の導電部材41はアルミニウム板製である。また、負極のタブ群38には、電極組立体12と負極端子19とを電気的に接続するための負極の導電部材41が接合されている。負極の導電部材41は銅板製である。
【0023】
図4図5に示すように、負極のタブ群38と導電部材41は、レーザー溶接により互いに接合されており、電気的に接続されている(導通している)。正極のタブ群38と導電部材41との接合構造は、負極のタブ群38と導電部材41との接合構造と同一構造であるため、正極のタブ群38と導電部材41の接合構造の説明は省略する。以下の説明では、負極を正極と読みかえることにより、正極のタブ群38と正極の導電部材41の接合構造の説明とする。なお、導電部材41の詳細と導電部材41とタブ群38との溶接による接合の詳細については後述する。
【0024】
図4図5に示すように、導電部材41は、内側絶縁カバー42を介して蓋体15の内面に固定され、蓋体15に組付けられている。内側絶縁カバー42は、負極の導電部材41および正極の導電部材41と、蓋体15との間に介在している。内側絶縁カバー42は、長辺の延びる方向の両端部に貫通孔43を有している。
【0025】
蓋体15には正極端子18および負極端子19が固定されている。正極端子18および負極端子19は、蓋体15に固定される補助端子44をそれぞれ有している。正極の補助端子44はアルミニウム製であり、負極の補助端子44は銅製である。補助端子44は、角柱状の台座部45を有するとともに、台座部45の一面から突出する状態の第1かしめ部46と、台座部45の他面から突出する状態の第2かしめ部47を有する。補助端子44と蓋体15の内側面との間には、内側絶縁カバー42が介在されている。補助端子44と蓋体15の外側面との間には、外側絶縁部材48が介在されている。
【0026】
外側絶縁部材48は筒状であり、軸方向一端側に台座支持部49を有し、この台座支持部49に、台座部45が嵌合する形状の補助端子凹部50を有する。また、外側絶縁部材48は、台座支持部49より小径の円筒状の軸部51を有する。軸部51は、蓋体15の挿通孔16に挿通される。外側絶縁部材48は補助端子44と蓋体15とを絶縁する。
【0027】
補助端子44の台座部45が補助端子凹部50に嵌め込まれた状態では、第1かしめ部46が、外側絶縁部材48の軸部51に挿通され、導電部材41にてかしめられることにより、補助端子44が蓋体15に固定されている。補助端子44は、第1かしめ部46と導電部材41とのかしめによる接続を介して電極組立体12の負極電極21と電気的に接続されている。蓋体15は、外側絶縁部材48および内側絶縁カバー42を介して補助端子により挟持されている。補助端子44は蓋体15に対して絶縁された状態で固着されている。
【0028】
蓋体15の凸部17には、略有蓋四角筒形状の端子絶縁材52を介して外部端子53が配置されている。外部端子53は金属製である。外部端子53は、四角箱状であり、かつ内部に端子絶縁材52を介して凸部17が嵌入される基部54と、この基部54から突設された極柱部55とを有している。極柱部55の外周面には雄ねじが形成されている。そして、端子絶縁材52により、外部端子53と蓋体15との間が絶縁されている。
【0029】
二次電池は、矩形平板状の接続導体56を有している。接続導体56は長辺の延びる方向の一端にかしめ部挿通孔57を有し、長辺の延びる方向の他端に極柱部挿通孔58を有している。そして、接続導体56は、極柱部挿通孔58に外部端子53の極柱部55が蓋体15側から挿入されるとともに、かしめ部挿通孔57に補助端子44の第2かしめ部47が蓋体15側から挿入されている。第2かしめ部47は、接続導体56より外側でかしめられている。よって、接続導体56は、補助端子44には固定されるが、外部端子53は、極柱部55が極柱部挿通孔58に挿通されているだけとなる。また、接続導体56は外部端子53の基部54に接触し、電気的に接続している。
【0030】
正極の外部端子53は、接続導体56、補助端子44および導電部材41を介して、正極電極20の正極のタブ群38と電気的に接続されている。正極端子18は導電部材41と電気的に接続され、正極のタブ群38は、導電部材41と電気的に接続されている。このため、正極端子18は、導電部材41を介して電極組立体12と電気を授受できる。
【0031】
負極の外部端子53は、接続導体56、補助端子44および導電部材41を介して、負極電極21の負極のタブ群38と電気的に接続されている。負極端子19は導電部材41と電気的に接続され、負極のタブ群38は、導電部材41と電気的に接続されている。このため、負極端子19は、導電部材41を介して電極組立体12と電気を授受できる。
【0032】
次に、導電部材41の詳細と導電部材41とタブ群38との溶接による接合について説明する。導電部材41は、並設方向Xから見て、蓋体15と対向方向Zに重なる固定片61と、固定片61に連設された形状である接続片62とを有する。固定片61は導電部材41の基部に相当し、接続片62は接続部に相当する。
【0033】
図6に示すように、導電部材41が備える固定片61は、矩形板状である。固定片61は挿通孔63を有する。挿通孔63は補助端子44の挿通を可能とする孔径に設定され、補助端子44の第1かしめ部46がかしめられた状態では第1かしめ部46が挿通孔63から脱落しない。
【0034】
導電部材41は、固定片61に連続した接続片62を有する。導電部材41において、固定片61と接続片62が連続する方向を連設方向とする。固定片61の面方向に沿い、かつ連設方向に直交する方向を幅方向とし、幅方向に沿う固定片61の寸法を幅W1とする。接続片62は、固定片61の幅W1内の一部から連設方向に突出した形状である。幅方向に沿う接続片62の寸法を幅W2とすると、接続片62の幅W2は、固定片61の幅W1より小さい。
【0035】
図6に示すように、導電部材41の固定片61は、連設方向に延びる一対の縁部のうちの一方に第1固定片縁部61Aを有し、他方に第2固定片縁部61Bを有する。さらに、固定片61は、第1固定片縁部61Aと第2固定片縁部61Bを繋ぐ第3固定片縁部61Cと、この第3固定片縁部61Cとの対辺に第4固定片縁部61Dを有する。よって、接続片62は、第4固定片縁部61Dよりも連設方向に突出した形状である。
【0036】
また、導電部材41の接続片62は、連設方向に延びる一対の縁部のうち、一方に第1接続片縁部62Aを有し、他方に第2接続片縁部62Bを有する。さらに、接続片62は、第1接続片縁部62Aと第2接続片縁部62Bを繋ぐ第3接続片縁部62Cを有する。第3接続片縁部62Cは、接続片62の連設方向における先端部に相当する。
【0037】
そして、導電部材41では、第1固定片縁部61Aと第1接続片縁部62Aが同一直線上に位置している。その一方で、第2固定片縁部61Bと第2接続片縁部62Bとは階段状に配置され、第2接続片縁部62Bは、第2固定片縁部61Bよりも第1接続片縁部62Aに近づいた位置にある。即ち、導電部材41はL字型である。
【0038】
図6に示すように、電極組立体12から延びる負極のタブ群38は、負極の導電部材41の接続片62を幅方向に横断するように接続片62に重ねられている。タブ群38と接続片62はレーザー溶接により接合されている。図6では、タブ群38が折り曲げられていない状態である。第2固定片縁部61Bおよび第1接続片縁部62Aは、電極組立体12と対向する。タブ群38の固定片61側の側縁部38Bおよび側縁部38Bの反対側の側縁部38Cには、接続片62との溶接部P(図6においてハッチングにて示す)がそれぞれ形成されている。側縁部38B、38Cはタブ群38の両側部に相当する。タブ群38の先端部38Aは、第1接続片縁部62Aからはみ出していることから、接続片62の幅にわたって溶接部Pが形成されている。
【0039】
第4固定片縁部61Dと側縁部38Bとの間は離間するように距離Aに設定されている。距離Aは、連設方向におけるタブ群38と固定片61との離間距離に相当する。側縁部38Cと第3接続片縁部62Cとの間は距離Bに設定されている。距離Bは、タブ群38と接続片62の第3接続片縁部62Cとの間の突出距離に相当する。タブ群38が折り曲げられない状態では、電極組立体12のタブ側端面28と第2接続片縁部62Bとの間は距離C(=接続部と電極組立体12との離間距離C)に設定されている。タブ側端面28と第2固定片縁部61Bとの間は距離D(=基部と電極組立体12との離間距離D)に設定されている。本実施形態では、距離Aは距離Bよりも大きく設定されている(A>B)。また、距離Cは距離Dよりも大きく設定されている(C>D)。
【0040】
第4固定片縁部61Dと側縁部38Bとの間を距離Aにて離間することは、固定片61と側縁部38Bの溶接部Pとの距離が遠ざかり、固定片61と側縁部38Bの溶接部Pとの間に固定片61よりも幅の狭い接続片62の一部が介在することになる。このため、溶接部Pが固定片61に接近して形成されている場合と比較すると、レーザー溶接時に必要な熱を溶接部Pから固定片61へ逃がし難くする。また、固定片61と側縁部38Bの溶接部Pとの距離が遠ざかることにより、固定片61は溶接時の生じがちなスパッタの付着を受け難くなる。さらに、接続片62がタブ群38から距離Bにて突出することから、タブ群38の両側縁部38B、38Cに対して同じ方向(図6では紙面上方)から溶接ができ、両側縁部38B、38Cに溶接部Pを形成できる。つまり、接続片62のタブ群38からの距離Bの突出は、溶接性(溶接のし易さ)を向上することが可能である。
【0041】
距離Aを距離Bよりも大きく設定する(A>B)ことは、距離Aを距離Bよりも小さく設定する場合(A<B)と比較すると、固定片61と側縁部38Bの溶接部Pとの距離が遠ざかる。従って、レーザー溶接時に必要な熱を溶接部Pから固定片61へ逃がし難くする。また、固定片61と側縁部38Bの溶接部Pとの距離が遠ざかることにより、固定片61は溶接時の生じがちなスパッタの付着を受け難くなる。
【0042】
電極組立体12のタブ側端面28と第2接続片縁部62Bとの間を距離Cに設定することは、溶接部Pから電極組立体12を十分に離間させることになり、電極組立体12は溶接時の生じがちなスパッタの付着を受け難くなる。また、距離Cは距離Dよりも大きく設定されていることは、距離Cと距離Dが同じ場合と比較すると、タブ群38が折り曲げられた状態で電極組立体12がケース11に収容されるときに、折り曲げによるタブ群38への負荷が低減される。
【0043】
次に、タブ群38と導電部材41との溶接の手順について説明する。電極組立体12の負極のタブ37が積層されて負極のタブ群38が形成される。タブ群38は、積層されている状態であって折り曲げられていない。次に、接続片62を幅方向に横断するようにタブ群38を導電部材41の接続片62に重ねる。タブ群38を導電部材41の接続片62に重ねた状態では、接続片62の第3接続片縁部62Cは、タブ群38から連設方向に突出している。このため、溶接部Pの形成が予定される側縁部38B、38Cの一部は、接続片62の面内に位置する。
【0044】
次に、タブ群38が接続片62に重ねられた状態のまま、タブ群38と接続片62とを共に一対の挟圧部材(図示せず)により積層方向に挟圧する。挟圧部材に挟圧された状態ではタブ群38の面は挟圧部材により覆われる。次に、タブ群38および導電部材41が挟圧された状態にて、レーザー溶接機により側縁部38B、38Cに沿ってレーザー溶接を行い、タブ群38と導電部材41を接合する。接続片62における側縁部38B、38Cには、レーザー溶接により溶接部Pがそれぞれ形成される。溶接部Pがそれぞれ形成された後、図5に示すように、導電部材41が内側絶縁カバー42を介して蓋体15に組付けられ、蓋体15への導電部材41の組み付けに伴い、タブ群38は折り曲げられる。
【0045】
ところで、レーザー溶接時には、レーザー光の照射先である接続片62における側縁部38B、38Cの近傍が加熱される。接続片62は固定片61よりも幅が狭く、タブ群38の側縁部38Bと固定片61とは距離Aだけ離間している。このため、接続片62における側縁部38Bの近傍の部位におけるレーザー溶接による熱は、接続片62に留まり易く、固定片61へ逃げ難くい。この熱が接続片62に留まり易く固定片61へ逃げ難いことにより、溶接に必要な熱が確保され、溶接時間を短くすることができ、側縁部38B側の溶接部Pの溶接性(溶接のし易さ)が向上する。また、接続片62における側縁部38Cの近傍の部位からレーザー溶接による熱は、接続片62における側縁部38Bの近傍の部位と比較してさらに熱が留まりやすい。このため、溶接に必要な熱が確保され、溶接時間を短くすることができ、側縁部38C側の溶接部Pの溶接性が向上する。
【0046】
また、レーザー溶接時には、スパッタが飛散することがある。接続片62は固定片61よりも幅が狭く、タブ群38の側縁部38Bと固定片61とは距離Aだけ離間しているため、固定片61にスパッタが飛散して付着する可能性は小さい。また、接続片62と電極組立体12とは距離Cだけ離間しているため、電極組立体12にスパッタが付着する可能性を抑制できる。特に、レーザー溶接のレーザー光を第1接続片縁部62Aから第2接続片縁部62Bへ向けて走査して溶接する場合、溶接終了側となる第2接続片縁部62Bは、溶接開始側となる第1接続片縁部62Aと比べてスパッタの飛散が顕著である。しかしながら、接続片62と電極組立体12とは距離Cだけより離間させていることから、飛散するスパッタの電極組立体12への付着は効果的に抑制される。
【0047】
本実施形態に係る二次電池は以下の作用効果を奏する。
(1)導電部材41における接続片62の幅は、固定片61の幅より小さく、タブ群38は、連設方向において固定片61と離間している。接続片62の第3接続片縁部62Cは、タブ群38から連設方向に突出している。このため、タブ群38と導電部材41とを溶接するとき、溶接時に生じる熱が接続片62から固定片61へ逃げにくくなる。溶接時に生じる熱が接続片62から逃げ難くなることにより、溶接時間を短くすることができ、タブ群38と導電部材41との溶接性を向上させることができる。
【0048】
(2)タブ群38と固定片61との距離Aは、タブ群38と接続片の第3接続片縁部62Cとの間の距離Bより大きいため、タブ群38は固定片61からより離間する。このため、溶接時に生じる熱が接続片62からより固定片61へ逃げにくくなり、タブ群38と導電部材41との溶接性をより向上させることができる。
【0049】
(3)接続片62と電極組立体12との距離Cは、固定片61と電極組立体12との距離Dよりも大きいため、溶接部Pが形成される接続片62が、固定片61よりも電極組立体12から離れた位置となる。このため、溶接時にスパッタが飛散したとしても電極組立体12に達し難くなる。電極組立体12へのスパッタの付着を抑制することができる。
【0050】
(4)タブ群38の側縁部38B、38Cにレーザー溶接による溶接部Pが形成されているため、タブ群38における固定片61側に近い側縁部38Bに溶接部Pが形成されるが、タブ群38が固定片61と離間していることにより、固定片61側に近い側縁部38Bの溶接部Pを固定片61から離間させることができる。
【0051】
(5)距離Cは距離Dよりも大きく設定されている(C>D)ため、距離Cが距離Dと同じ場合としたときと比較すると折り曲げによるタブ群38への負荷は低減される。
【0052】
(6)レーザー溶接のレーザー光を第1接続片縁部62Aから第2接続片縁部62Bへ向けて走査して溶接する場合、溶接終了側となる第2接続片縁部62Bは、溶接開始側となる第1接続片縁部62Aと比べてスパッタの飛散が顕著である。しかしながら、接続片62と電極組立体12とは距離Cだけより離間させていることから、飛散するスパッタの電極組立体12への付着を効果的に抑制できる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る蓄電装置としての二次電池について説明する。本実施形態では導電部材の構成が第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と同じ構成については、第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0054】
図7に示すように、第2の実施形態に係る二次電池は、固定片71および接続片72を備える導電部材70を備えている。固定片71は導電部材41の基部に相当し、接続片72は接続部に相当する。固定片71は矩形板状であり、補助端子44の挿通を可能とする孔径の挿通孔73を有する。導電部材70は、固定片71に連続した接続片72を有する。導電部材70において、固定片71と接続片72が連続する方向を連設方向とする。固定片71の面方向に沿い、かつ連設方向に直交する方向を幅方向とし、幅方向に沿う固定片71の寸法を幅W1とする。接続片72は、固定片71の幅W1内の一部から連設方向に突出した形状である。幅方向に沿う接続片72の寸法を幅W2とすると、接続片72の幅W2は、固定片71の幅W1より小さい。
【0055】
図7に示すように、導電部材70の固定片71は、連設方向に延びる一対の縁部のうちの一方に第1固定片縁部71Aを有し、他方に第2固定片縁部71Bを有する。さらに、固定片71は、第1固定片縁部71Aと第2固定片縁部71Bを繋ぐ第3固定片縁部71Cと、この第3固定片縁部71Cとの対辺に第4固定片縁部71Dをおよび第5固定片縁部71Eを有する。接続片72は、第4固定片縁部71Dをおよび第5固定片縁部71Eの間にて第4固定片縁部71D、第5固定片縁部71Eよりも連設方向に突出した形状である。
【0056】
接続片72は、連設方向に延びる一対の縁部のうち一方に第1接続片縁部72Aを有し、他方に第2接続片縁部72Bを有する。さらに、接続片72は、第1接続片縁部72Aと第2接続片縁部72Bを繋ぐ第3接続片縁部72Cを有する。第3接続片縁部72Cは、接続片72の連設方向における先端部に相当する。そして、導電部材70では、第1固定片縁部71Aと第1接続片縁部72Aとは階段状に配置されている。また、第2固定片縁部71Bと第2接続片縁部72Bとは階段状に配置されている。
【0057】
図7に示すように、電極組立体12から延びる負極のタブ群38は、負極の導電部材70の接続片72を幅方向に横断するように接続片72に重ねられている。タブ群38と接続片72はレーザー溶接により接合されている。図7では、タブ群38が折り曲げられていない状態である。第2固定片縁部71Bおよび第1接続片縁部72Aは、電極組立体12と対向する。タブ群38の固定片71側の側縁部38Bおよび側縁部38Bの反対側の側縁部38Cには、接続片72との溶接部P(図7においてハッチングにて示す)がそれぞれ形成されている。タブ群38の先端部38Aは、第1接続片縁部72Aからはみ出していることから、接続片72の幅にわたって溶接部Pが形成されている。
【0058】
第4固定片縁部71Dと側縁部38Bとの間は離間するように距離Aに設定されている。距離Aは、連設方向におけるタブ群38と固定片71との離間距離に相当する。側縁部38Cと第3接続片縁部72Cとの間は距離Bに設定されている。距離Bは、タブ群38と接続片72の第3接続片縁部72Cとの間の突出距離に相当する。タブ群38が折り曲げられない状態では、電極組立体12のタブ側端面28と第2接続片縁部72Bとの間は距離C(=接続部と電極組立体12との離間距離C)に設定されている。タブ側端面28と第2固定片縁部71Bとの間は距離E(=基部と電極組立体12との離間距離E)に設定されている。本実施形態では、距離Aは距離Bよりも大きく設定されている(A>B)。また、距離Cは距離Eよりも大きく設定されている(C>E)。
【0059】
第4固定片縁部71Dと側縁部38Bとの間を距離Aにて離間することは、固定片71と側縁部38Bの溶接部Pとの距離が遠ざかり、固定片71と側縁部38Bの溶接部Pとの間に固定片71よりも幅の狭い接続片72の一部が介在することになる。このため、溶接部Pが固定片71に接近して形成されている場合と比較すると、レーザー溶接時に必要な熱を溶接部Pから固定片71へ逃がし難くする。また、固定片71と側縁部38Bの溶接部Pとの距離が遠ざかることにより、固定片71は溶接時の生じがちなスパッタの付着を受け難くなる。
【0060】
距離Aを距離Bよりも大きく設定する(A>B)ことは、距離Aを距離Bよりも小さく設定する場合(A<B)と比較すると、固定片71と側縁部38Bの溶接部Pとの距離が遠ざかる。従って、レーザー溶接時に必要な熱を溶接部Pから固定片71へ逃がし難くする。また、固定片71と側縁部38Bの溶接部Pとの距離が遠ざかることにより、固定片71は溶接時の生じがちなスパッタの付着を受け難くなる。
【0061】
電極組立体12のタブ側端面28と第2接続片縁部72Bとの間を距離Cに設定することは、溶接部Pから電極組立体12を十分に離間させることになり、電極組立体12は溶接時の生じがちなスパッタの付着を受け難くなる。また、距離Cは距離Eよりも大きく設定されていることは、距離Cと距離Eが同じ場合と比較すると、折り曲げによるタブ群38への負荷が低減される。
本実施形態に係る二次電池によれば、第1の実施形態の作用効果と同等の作用効果を奏する。
【0062】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る蓄電装置としての二次電池について説明する。本実施形態では導電部材の電極組立体に対する位置が第1の実施形態と異なる。各構成については第1の実施形態と同じである。
【0063】
図8に示す蓄電装置としての二次電池は、導電部材41を備えている。図8では、タブ群38が折り曲げられていない状態である。第1固定片縁部61Aおよび第1接続片縁部62Aは、電極組立体12と対向する。
【0064】
第4固定片縁部61Dと側縁部38Bとの間は離間するように距離Aに設定されている。側縁部38Cと第3接続片縁部62Cとの間は距離Bに設定されている。タブ群38が折り曲げられない状態では、電極組立体12のタブ側端面28と第1固定片縁部61Aおよび第1接続片縁部62Aとの間は距離Fに設定されている。つまり、本実施形態では、電極組立体12と導電部材41との距離は距離Fで一定である。
本実施形態に係る二次電池によれば、第1の実施形態の作用効果(1)、(2)、(4)と同等の作用効果を奏する。
【0065】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0066】
○ 上記の実施形態では、離間距離Aが突出距離Bよりも大きいとしたがこの限りではない。離間距離Aと突出距離Bは同じでもよく、また、離間距離Aが突出距離Bよりも小さくてもよい。
○ 上記の実施形態では、導電部材とタブ群との溶接としてレーザー溶接を用いたが、溶接方法はレーザー溶接に限定されない。導電部材とタブ群との溶接は、例えば、スポット溶接などの抵抗溶接や超音波溶接でもよい。抵抗溶接や超音波溶接の場合、タブ群の両縁部ではなく、タブ群と導電部材が互いに重なっている領域に溶接部が形成される。
○ 上記の実施形態では電極組立体を積層型の電極組立体としたが、電極組立体は、帯状の正極電極と帯状の負極電極とを、互いに絶縁した状態で捲回軸線を中心として捲回した捲回型であってもよい。捲回型の電極組立体において、正極電極は、正極金属箔の一辺となる長辺に沿って正極活物質が塗布されていない正極未塗工部を有している。また、正極電極は、一辺の一部から突出した形状のタブを、長手方向に間隔をおいて複数有する。負極電極は、負極金属箔の一辺となる長辺に沿って負極活物質が塗布されていない負極未塗工部を有している。負極電極は、一辺の一部から突出した形状のタブを、長手方向に間隔をおいて複数有する。そして、捲回型の電極組立体では、同じ極性のタブ同士が重なるようにして、正極電極と負極電極とを絶縁した状態で捲回することにより、電極組立体の捲回軸線の延びる方向の一端側において、複数の正極のタブ同士が電極組立体の積層方向に積層され、複数の負極のタブ同士が電極組立体の積層方向に積層される。
○ 上記の実施形態では、二次電池をリチウムイオン二次電池としたが、二次電池は、リチウムイオン二次電池に限らず、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池等の他の二次電池であってもよい。
○ 上記の実施形態では、蓄電装置としての二次電池について説明したが、蓄電装置は、二次電池に限らず、例えば、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等のようなキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
11 ケース
12 電極組立体
18 正極端子
19 負極端子
27、37 タブ
28 タブ側端面
38 タブ群
41、70 導電部材
61、71 固定片(基部としての)
62、72 接続片(接続部としての)
A、B、C、D、E、F 距離
P 溶接部
L 積層方向
X 並設方向
Z 対向方向
W1、W2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8