特許第6772851号(P6772851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772851
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】スタッカクレーン
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   B65G1/04 531B
   B65G1/04 527
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-5462(P2017-5462)
(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公開番号】特開2018-115041(P2018-115041A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】増田 潤一
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−030010(JP,U)
【文献】 特開2008−081302(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/038300(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行台車と、
前記走行台車に設けられたマストと、
前記マストに沿って昇降する昇降台と、
前記昇降台に設けられた移載装置と、を備えたスタッカクレーンであって、
前記昇降台は、
中空材からなり、前記スタッカクレーンの走行方向及び移載方向の両側に配置されて、上下方向に延びる4本の上下枠材と、
中空材からなり、走行方向に並んだ上下枠材の下部同士を第1ピン支持構造で接続する一対の下方走行方向枠材と、
板材からなり、移載方向に並んだ上下枠材の下部同士を第2ピン支持構造で接続する一対の下方移載方向枠材と、
板材からなり、移載方向に並んだ上下枠材の上部同士を第3ピン支持構造で接続する一対の上方移載方向枠材と、
前記上下枠材の側面に取り付けられ、上下一対のガイドローラ取付部材と、
前記ガイドローラ取付部材に取り付けられ、前記マストに沿って転動するガイドローラと、を有する、
スタッカクレーン。
【請求項2】
前記昇降台は、板材からなり、走行方向に並んだ上下枠材の上部同士を第4ピン支持構造で接続する一対の上方走行方向枠材をさらに有する、請求項1に記載のスタッカクレーン。
【請求項3】
前記昇降台は、前記上下枠材及び前記下方移載方向枠材の交点と前記上下枠材及び前記上方移載方向枠材の交点とを接続し、斜め方向に延びる斜め材をさらに有している、請求項2に記載のスタッカクレーン。
【請求項4】
前記ガイドローラは、移載方向に前記マストを挟む一対のローラを有している、請求項1〜3のいずれかに記載のスタッカクレーン。
【請求項5】
前記ガイドローラ取付部材は、前記第2ピン支持構造及び前記第3ピン支持構造によって前記上下枠材に固定されている、請求項1〜4のいずれかに記載のスタッカクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカクレーン、特に、複数段の棚を有する自動倉庫に荷物を搬入又は自動倉庫から荷物を搬出するスタッカクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動倉庫は、複数のラックを有している。各ラックは、並列に並んで配置されており、延伸方向及び上下方向に並んだ複数の棚を有している。
また、自動倉庫は、ラックの棚に荷物を下ろす又はラックの棚から荷物を積み込むための搬送装置として、スタッカクレーンを有している。スタッカクレーンは、レールに沿って走行する走行台車と、荷物を移載する移載装置と、移載装置を上下方向に移動させる昇降装置とを有している。レールの一部はラックの側方に並んで配置されており、スタッカクレーンは、ラックの側方において目的の棚の近傍に移載装置を配置して、その状態で荷物を移載する。
昇降装置は、移載装置が搭載された昇降台と、昇降台を昇降させる昇降機構とを有している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開14/038300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の昇降台は、例えば、複数のフレームが組み合わされて構成されている。その場合、所定の剛性を確保する必要があるので、昇降台全体の重量が大きくなるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、スタッカクレーンの昇降台を軽量化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係るスタッカクレーンは、走行台車と、マストと、昇降台と、移載装置とを備えている。
マストは、走行台車に設けられている。
昇降台は、マストに沿って昇降する。
移載装置は、昇降台に設けられている。
昇降台は、4本の上下枠材と、一対の下方走行方向枠材と、一対の下方移載方向枠材と、一対の上方移載方向枠材と、上下一対のガイドローラ取付部材と、ガイドローラとを有している。
4本の上下枠材は、中空材からなり、スタッカクレーンの走行方向及び移載方向の両側に配置されて、上下方向に延びる。「中空材」とは、断面が環状のパイプ部材、断面が一部開いたCチャンネルを含む。
一対の下方走行方向枠材は、中空材からなり、走行方向に並んだ上下枠材の下部同士を第1ピン支持構造で接続する。「ピン支持構造」とは、ピンを用いてピン回りで両部材が相対回転可能な状態で連結されることをいう。以下も同様である。
一対の下方移載方向枠材は、板材からなり、移載方向に並んだ上下枠材の下部同士を第2ピン支持構造で接続する。
一対の上方移載方向枠材は、板材からなり、移載方向に並んだ上下枠材の上部同士を第3ピン支持構造で接続する。
上下一対のガイドローラ取付部材は、上下枠材の側面に取り付けられている。
ガイドローラは、ガイドローラ取付部材に取り付けられ、マストに沿って転動する。
このスタッカクレーンでは、溶接により製作する部材をなくしつつ、板材を活用しているので、各部分の構造が簡素化される。その結果、昇降台が軽量化される。
なお、板材とは、金属製の板状部材である。板材は、一方向に長く延びる形状を有しているものを含み、断面は例えば直線、コの字、ロの字を含む。
【0007】
昇降台は、板材からなり、走行方向に並んだ上下枠材の上部同士を第4ピン支持構造で接続する一対の上方走行方向枠材をさらに有していてもよい。
このスタッカクレーンでは、一対の上下枠部材の下部同士及び上部同士が連結されているので、移載方向の力が作用した場合に昇降台のねじれが抑えられる。
【0008】
昇降台は、上下枠材及び下方移載方向枠材の交点と上下枠材及び上方移載方向枠材の交点とを接続し、斜め方向に延びる斜め材をさらに有していてもよい。
このスタッカクレーンでは、昇降台において斜め材によってトラス構造が実現されているので、各部材に発生する応力の種類は引っ張り応力と圧縮応力である。つまり、斜め材に曲げ応力が発生しにくい。以上の結果、各部材の軽量化、さらには昇降台の軽量化が実現される。
【0009】
ガイドローラは、移載方向にマストを挟む一対のローラを有していてもよい。
このスタッカクレーンでは、移載装置から昇降台に移載方向の荷重が作用した場合に、昇降台の一対のローラによってマストに支持される。したがって、昇降台の姿勢が安定する。
【0010】
ガイドローラ取付部材は、第2ピン支持構造及び第3ピン支持構造によって上下枠材に固定されていてもよい。
このスタッカクレーンでは、ガイドローラ取付部材は、ピン支持構造によって上下枠材に固定されているので、部品点数が少なくなり、さらに構造が簡単になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスタッカクレーンでは、昇降台が軽量化される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態が採用されたピッキング・システムの模式的平面図。
図2】自動倉庫の部分正面図。
図3】スタッカクレーンの模式的平面図。
図4】スタッカクレーンの昇降装置の模式図。
図5】スタッカクレーンの昇降台の斜視図。
図6図3の部分拡大図。
図7】昇降台の概略正面図。
図8】昇降台の概略側面図。
図9】吊り部材接続部材及び斜め材の中間部分の概略断面図。
図10】ガイドローラの取付構造を示す部分断面斜視図。
図11】ガイドローラとマストの関係を示す模式的部分平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.第1実施形態
(1)自動倉庫
図1及び図2を用いて、自動倉庫1を説明する。図1は、本発明の一実施形態が採用された自動倉庫の概略平面図である。図2は、自動倉庫の概略正面図である。
自動倉庫1は、複数のラック5を有している。ラック5は、複数段の棚5aを有している。複数のラック5は、図1において、左右方向に延びて並列的に配置されている。棚5aは、図2に示すように、集品棚部材24又はパレットP(以下、「荷物」ということもある)を収納可能である。パレットPには、ケース23又は段ボール箱28が載置される。
【0014】
集品棚部材24は、複数段の支持部を有する棚構造を有しており、複数のケース23を収納可能である。ケース23は、商品を収納可能な部材である。なお、集品棚部材24の底面はパレットPの底面と同様の構造を有しており、それによりスタッカクレーン11によって支持及び搬送される。また、図1においてはアルファベットが付されているのは、ラック5に収納されたパレットPである。また、図示しない別のラック5にはケース23や段ボール箱28が収納されている。
自動倉庫1は、ラック5に沿って設けられた天井レール7を有している。具体的には、天井レール7は、ラック5の間の通路5bの上方に配置されている。天井レール7は、ラック5より高い位置、すなわち、複数段の棚5aより高い位置に設けられている。
自動倉庫1は、ラック5に沿って設けられた下部ガイドレール9を有している。具体的には、下部ガイドレール9は、ラック5の間の通路5bの床面に配置されている。
【0015】
自動倉庫1は、懸垂式スタッカクレーン11(以下、「スタッカクレーン11」という)を有している。「懸垂式」とは、上部構造が、走行及び分岐を行い、さらには下部構造を懸垂していることをいう。スタッカクレーン11は、図2に示すように、天井レール7から懸垂した状態で走行する。
なお、図3に示すように、スタッカクレーン11の走行方向を「走行方向」として、図では矢印Xで表す。さらに、走行方向に直交する水平方向を「左右方向」として、図では矢印Yで表す。
【0016】
図1及び図3に示すように、スタッカクレーン11は、上部走行台車12を有している。上部走行台車12は駆動力を発生することで天井レール7に沿って走行する装置である。上部走行台車12は、走行方向に並んで配置された複数の駆動台車13を有している。この実施形態では、駆動台車13は8台設けられている。図3は、スタッカクレーンの概略平面図である。
スタッカクレーン11は、複数の駆動台車13に対して昇降可能に吊り下げられた移載装置15を有している。移載装置15は、集品棚部材24又はパレットPを移載可能である。
なお、図2に示すように、スタッカクレーン11は、下部走行台車17を有している。下部走行台車17は、下部ガイドレール9に沿って案内される。
スタッカクレーン11は、走行方向すなわち前後方向に並んだ一対のマスト25を有している。一対のマスト25は、上下方向に長く延びている。
【0017】
スタッカクレーン11は、移載装置15を昇降させるための昇降装置26を有している。図4を用いて、昇降装置26を説明する。図4は、スタッカクレーンの昇降装置の模式図である。
昇降装置26は、マスト25に昇降自在に装着された昇降台27と、昇降台27に設けられた第1移載装置29A、第2移載装置29Bと、昇降台27を昇降させるための昇降部35とを有している。
昇降部35は、図4に示すように、一対のマスト25それぞれに設けられている。昇降部35は、昇降駆動モータ49、チェーン51、スプロケット53などからなる公知の装置である。チェーン51(吊り部材の一例)が、スプロケット53掛け回され、さらに昇降台27に連結されている。チェーン51は、昇降台27を吊って昇降移動させる吊り部材である。昇降駆動モータ49によって、チェーン51が駆動される。チェーン51の詳細は後述される。
【0018】
(2)昇降台の詳細説明
図5図8を用いて、昇降台27を説明する。図5は、スタッカクレーンの昇降台の斜視図である。図6は、図5の部分拡大図である。図7は、昇降台の概略正面図である。図8は、昇降台の概略側面図である。
昇降台27は、複数のフレームからなる直方体形状を有している。そのため、昇降台27の軽量化とともに、高剛性化が実現されている。なお、以下の説明では、各部材の材料、接続(連結、固定)手段等は公知の技術が適用されているので、それぞれの説明を省略する。
【0019】
昇降台27は、4本の上下枠材61A〜61Dを有している。4本の上下枠材61A〜61Dは、中空材からなる。4本の上下枠材61A〜61Dは、スタッカクレーン3の走行方向及び移載方向の両側に配置されて、上下方向に延びる。より具体的には、上下枠材61A、61Bが走行方向の片側において移載方向に並んで配置され、上下枠材61C、61Dが走行方向の反対側において移載方向に並んで配置されている。「中空材」とは、断面が環状のパイプ部材、断面が一部開いたCチャンネルを含む。
【0020】
昇降台27は、移載方向枠材63A〜63Dを有している。移載方向枠材63A〜63Dは、板金材からなり、移載方向枠材63A〜63Dは、移載方向に延びており、移載方向に並ぶ上下枠材61A〜61Dの上部同士及び下部同士を接続する。なお、板金材とは広く金属製の板材をいう。具体的には、移載方向枠材63Aが上下枠材61Aの上側部分と上下枠材61Bの上側部分を接続し、移載方向枠材63Bが上下枠材61Aの下側部分と上下枠材61Bの下側部分とを接続し、移載方向枠材63Cが上下枠材61Cの上側部分と上下枠材61Dの上側部分を接続し、移載方向枠材63Dが上下枠材61Cの下側部分と上下枠材61Dの下側部分とを接続している。
さらに詳細に説明すれば、移載方向枠材63A〜63Dは、各々、走行方向に間隔を空けて配置された一対の部材からなっている。各部材は、一方向に長く延びており、断面がコの字状の金属製板部材である。
【0021】
昇降台27は、走行方向枠材65A〜65Dを有している。走行方向枠材65A〜65Dは、中空材からなる。走行方向枠材65A〜65Dは、走行方向に延び、走行方向に並ぶ上下枠材61A〜61Dの上部同士及び下部同士を接続する。走行方向枠材65A、65Bが上方走行方向枠材であり、走行方向枠材65C、65Dが下方走行方向枠材である。具体的には、走行方向枠材65Aが、上下枠材61Aの上端部と上下枠材61Cの上端部を、第4ピン支持構造としてのピン91によって接続している。走行方向枠材65Bが、上下枠材61Bの上端部と上下枠材61Dの上端部とを第4ピン支持構造してのピン91によって接続している。走行方向枠材65Cが、上下枠材61Aの下端部と上下枠材61Cの下端部を、第1ピン支持構造としてのピン93によって接続している。走行方向枠材65Dが、上下枠材61Bの下端部と上下枠材61Dの下端部とを、第1ピン支持構造としてのピン93によって接続している。
【0022】
走行方向枠材65A、65Bは、一方向に長く延びており、断面がロの字状の金属製板部材である。
走行方向枠材65A、65Bは省略されてもよい。ただし、本実施形態では走行方向枠材65A、65Bがあることで、上下枠材61A〜61Dの下部同士及び上部同士が連結されているので、移載方向の力が作用した場合に昇降台27のねじれが抑えられる。また、本実施形態では、走行方向枠材65A、65Bは、第2移載装置29Bを支持している。
【0023】
昇降台27は、斜め材67A、67Bを有している。
斜め材67Aは、斜め方向に延びており、具体的にはX形状である。斜め材67Aは、走行方向片側にある一対の上下枠材61A、61Bと移載方向枠材63A、63Bの交点同士(つまり、上下枠材61A及び移載方向枠材63Bの交点と上下枠材61B及び移載方向枠材63Aの交点同士、及び上下枠材61A及び移載方向枠材63Aの交点と上下枠材61B及び移載方向枠材63Bの交点同士)を接続する。斜め材67Bは、斜め方向に延びており、具体的にはX形状である。斜め材67Bは、走行方向反対側にある一対の上下枠材61C、61Dと移載方向枠材63C、63Dの交点同士を接続する。交点とは、互いに重なった部分若しくは互いに接続された部分又はそれらの近傍である。
以上の結果、昇降台27において、走行方向両側に4つの三角形のトラス構造が実現されている。
【0024】
上述のように斜め材67A、67Bが斜め方向に延びて、一対の上下枠材61C、61Dと移載方向枠材63C、63Dの交点同士を接続している。
【0025】
以下、斜め材67Aを詳細に説明する。以下の説明は、斜め材67Bについても同じである。斜め材67Aは、さらに具体的には、図4に示すように、斜め部材71A〜71Dと、斜め部材71A〜71Dの端部同士を連結する連結部材73とを有している。連結部材73は、プレート部材であって、斜め部材71A〜71Dの端部に固定される4か所の固定部73aを有している。これにより、斜め部材71A〜71Dは、X形状の剛体になっている。
【0026】
斜め材67Aをさらに詳細に説明する。なお、以下の説明は、斜め材67Bについても同じである。斜め材67Aの斜め部材71A〜71Dは、各々、走行方向に間隔を空けて配置された一対の板状フレーム部材からなっている。また、連結部材73は、走行方向に間隔を空けて配置された一対の板状部材からなっている。一対の連結部材73は、斜め部材71A〜71Dの端部の走行方向外側に配置されている。一対の連結部材73は、固定部73aにおいて、各々、ピン95によって、互いに固定され、さらに斜め部材71A〜71Dの一対の部材に固定されている。なお、各板状フレーム部材は、中間部分が両端に比べて幅が広くなっており、絞り加工されている。したがって、各板状フレーム部材は、延長方向の圧縮荷重に対する強度が高くなっている。この結果、斜め部材71A〜71Dは座屈しにくい。
昇降台27は、吊り部材接続部材69A、69Bを有している。吊り部材接続部材69A、69Bは、斜め材67A、67Bの中間部に固定され、チェーン51と接続する。斜め材67A、67Bの中間部とは、具体的には、前述のX形状の交差部である連結部材73である。
【0027】
上記のように吊り部材接続部材69A、69Bが斜め材67A、67Bの中間部に固定されているので、チェーン51から荷重が実際に作用する対象は、吊り部材接続部材69A、69B及び斜め材67A、67Bの中間部である。
また、昇降台27において斜め材67A、67Bによってトラス構造が実現されているので、各部材に発生する応力の種類は引っ張り応力と圧縮応力である。つまり、斜め材67A、67Bに曲げ応力が発生しにくい。より詳細に説明すれば、第1移載装置29Aが移載動作としてスライドフォークを延ばした状態で荷物を支持した場合に、荷重によるモーメントに対抗して昇降台27に反力としてのモーメントが作用するが、これは上下枠材61A〜61D及び斜め材67A、67Bにおける直線力で釣り合うようになっており、それら部材に曲げモーメントはほとんど作用しない。したがって、上下枠材61A〜61D及び斜め材67A、67B、さらには他の部材の幅、厚みの寸法を小さくしても所望の剛性を確保できる。
以上の結果、各部材の軽量化、さらには昇降台27の軽量化が実現される。
【0028】
さらに、図7に示すように、チェーン51とピン93のY方向の位置は一致又は近接している。したがってチェーン51によって昇降台27を昇降する際に、昇降台27の姿勢が正しく維持される。
【0029】
図8及び図9を用いて、吊り部材接続部材69A、69B及び斜め材67A、67Bの中間部の構造をさらに詳細に説明する。図9は、吊り部材接続部材及び斜め材の中間部の概略断面図である。
吊り部材接続部材69A、69Bは、図7に示すように、斜め材67A、67Bの中間部に回転自在に支持された支持部72を有している。支持部72は、具体的には、一対の連結部材73同士を連結するピン97が貫通する吊り部材接続部材69Aの貫通穴69aからなる。以上より、支持部72の回転軸は走行方向に延びている。
【0030】
吊り部材接続部材69A、69Bは、図8に示すように、中間部よりも上方かつ中間部から同じ距離の2か所でチェーン51に接続された接続部74を有している。接続部74の2か所は、移載方向に所定距離離れており、支持部72から等距離の位置にある。
このように、吊り部材接続部材69A、69Bの支持部72が斜め材67A、67Bの中間部に回転自在に支持されているので、チェーン51から吊り部材接続部材69A、69Bに大きな荷重が作用しない。また、吊り部材接続部材69A、69Bの2か所がチェーン51と接続されるので、吊り部材接続部材69A、69Bの姿勢が安定する。
【0031】
吊り部材接続部材69Aを詳細に説明する。以下の説明は、吊り部材接続部材69Bについても同様である。吊り部材接続部材69Aは、斜め材67Aの一対の部材同士の間(具体的には、斜め部材71A〜71Dの一対の部材の端部同士の間、かつ、連結部材73の一対の部材同士の間)に配置されている。
チェーン51は、吊り部材接続部材69Aの上部から上方に延び、移載方向枠材63Aの一対の部材の間を延びている。このように吊り部材接続部材69Aが斜め材67Aの一対の部材の間に配置され、さらにチェーン51が移載方向枠材63Aの一対の部材の間を延びている。したがって、昇降台27の省スペース化が実現される。
【0032】
移載装置15は、第1移載装置29Aと第2移載装置29Bとを有している。
第1移載装置29Aは、走行方向枠材65C、65Dに支持されている。第2移載装置29Bは、走行方向枠材65A、65Bに支持されている。第1移載装置29Aは、スライドフォーク方式の移載装置であり、スライドフォークを移載方向に伸縮可能である。第2移載装置29Bはリアフック方式の移載装置である。
上述のように昇降台27のトラス構造の上部と下部を利用することで、2つの移載装置を上下に配置している。したがって、2台の移載装置を設ける場合に、省スペース化が実現される。
【0033】
図10及び図11を用いて、第1ガイドローラ77及び第2ガイドローラ79を説明する。図10は、ガイドローラの取付構造を示す部分断面斜視図である。図9は、ガイドローラとマストの関係を示す模式的部分平面図である。
昇降台27のX方向両端には、複数の第1ガイドローラ77が設けられている。第1ガイドローラ77は、回転軸が走行方向を向いている。
【0034】
具体的には、上下方向に並んだ一対の第1ガイドローラ77が、上下枠材61A、61Bと移載方向枠材63A、63Bとの交点部分に装着されている。第1ガイドローラ77は、図11に示すように、マスト25の突出部25aの移載方向外側面に対して当接している。言い換えると、移載方向に並んだ一対の第1ガイドローラ77は,マスト25をX方向つまり移載方向に挟んでいる。そのため、第1移載装置29Aから昇降台27に移載方向の荷重が作用した場合に、昇降台27は第1ガイドローラ77によってマスト25に支持される。したがって、昇降台の姿勢が安定する。
一対の第1ガイドローラ77及び斜め材67Bは、図10に示すように、走行方向片側にある一対の上下枠材61A、61Bと移載方向枠材63A、63Bの交点に接続されている。さらに、一対の第1ガイドローラ77及び斜め材67Bは、走行方向反対側にある一対の上下枠材61C、61Dと移載方向枠材63C、63Dの交点に固定されている。なお、上記交点は前述したとおり、斜め材67Aと上記部材との接続部である。
より具体的には、図10に示すように、一対の第1ガイドローラ77は、例えば、ピン101及びボルト103によって、上下枠材61A、移載方向枠材63A、斜め部材71Dに固定されている。より具体的には、一対の第1ガイドローラ77の両端には、それらを挟むように配置された一対の第1支持部材102が設けられている。一対の第1支持部材102がピン101によって回転自在に支持され、一対の第1ガイドローラ77が一対の第1支持部材102によって回転自在支持されている。なお、一対の第1支持部材102は板金材である。さらに具体的には、上下枠材61Aの走行方向の一方の面には、移載方向枠材63Aの一方の部材と斜め部材71Dの一方の部材とが配置されて固定されている。そして、上下枠材61Aの走行方向の他方の面には、移載方向枠材63Aの他方の部材と斜め部材71Dの他方の部材とが配置されて固定されている。
【0035】
言い換えると、ピン101及びボルト103はガイドローラ取付部材として機能しており、第2ピン支持構造及び第3ピン支持構造として上下枠材61A〜61Dに固定されている。このように、ガイドローラ取付部材がピン支持構造によって上下枠材61A〜61Dに固定されているので、部品点数が少なくなり、さらに構造が簡単になる。
【0036】
さらに、昇降台27のX方向端には、複数の第2ガイドローラ79が設けられている。第2ガイドローラ79は、回転軸が移載方向を向いている。第2ガイドローラ79は、図9に示すように、マスト25の突出部25aに対して走行方向に当接している。より具体的には、一対の第2ガイドローラ79を支持する第2支持部材80が設けられている。第2支持部材80は、上下枠材61A、61Bに固定されて、一対の第2ガイドローラ79を回転自在に支持している。なお、第2支持部材80は板金材である。
具体的には、走行方向に並んだ一対の第2ガイドローラ79が、一対の第1ガイドローラ77の近傍に装着されている。一対の第2ガイドローラ79は、マスト25の突出部25aの走行方向両面に対して当接している。
【0037】
このスタッカクレーン3では、溶接により製作する部材をなくしつつ、板金材を活用しているので、各部分の構造が簡素化される。その結果、昇降台27が軽量化される。また、溶接による熱歪みをなくすことで、製作精度の向上も図れる。
【0038】
2.実施形態の特徴
上記のスタッカクレーン3(スタッカクレーンの一例)は、駆動台車13(走行台車の一例)と、マスト25(マストの一例)と、昇降台27(昇降台の一例)と、第1移載装置29A(移載装置の一例)とを備えている。
マスト25は、駆動台車13に設けられている。
昇降台27は、マスト25に沿って昇降する。
第1移載装置29Aは、昇降台27に設けられている。
昇降台27は、4本の上下枠材61A〜61D(上下枠材の一例)と、一対の走行方向枠材65C〜65D(下方走行方向枠材の一例)と、一対の移載方向枠材63B、63D(下方移載方向枠材の一例)と、一対の移載方向枠材63A、63B(上方移載方向枠材の一例)と、上下一対のピン101(ガイドローラ取付部材の一例)と、第1ガイドローラ77(ガイドローラの一例)とを有している。
【0039】
4本の上下枠材61A〜61Dは、中空材からなり、スタッカクレーン3の走行方向及び移載方向の両側に配置されて、上下方向に延びる。
一対の走行方向枠材65C、65Dは、中空材からなり、走行方向に並んだ上下枠材61A〜61Dの下部同士をピン93(第1ピン支持構造の一例)で接続する。
一対の移載方向枠材63B、63Dは、板金材からなり、移載方向に並んだ上下枠材61A〜61Dの下部同士を下側のピン101(第2ピン支持構造の一例)で接続する。
一対の移載方向枠材63A、63Bは、板金材からなり、移載方向に並んだ上下枠材61A〜61Dの上部同士を上側のピン101(第3ピン支持構造の一例)で接続する。
ピン101は、上下枠材61A〜61Dの側面に取り付けられている。
第1ガイドローラ77は、ピン101に取り付けられ、マスト25に沿って転動する。
このスタッカクレーン3では、溶接により製作する部材をなくしつつ、板金材を活用しているので、各部分の構造が簡素化される。その結果、昇降台27が軽量化される。
【0040】
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
(1)斜め材の変形例
斜め部材は、上下枠材及び移載方向枠材の交点のうち対角にあるもの同士を連結するものであればよい。
斜め材は、斜め方向に延びる1本の斜め部材であってもよい。
斜め材は、2本の斜め部材が交差する構造であってもよい。
斜め材は、走行方向に分かれていない一体の斜め部材を有していてもよい。
斜め部材は、板状フレーム部材に限定されず、ターンバックル、ワイヤその他の延伸部材であってもよい。
斜め材が接続される箇所は、上下枠材及び移載方向枠材の接続部に一致していなくてもよいし、ガイドローラの取付部に一致していなくてもよい。
【0042】
(2)チェーンの変形例
吊り部材接続部材に接続されるチェーンは1本でもよい。
吊り部材は、ワイヤ、ベルト、その他の駆動部材であってもよい。
【0043】
(3)吊り部材接続部材の変形例
吊り部材接続部材の形状及び構造は特に限定されない。
吊り部材接続部材の斜め材の中間部への固定手段及び固定位置は特に限定されない。
吊り部材接続部材の支持部及び接続部の位置及び構造は特に限定されない。
【0044】
(4)移載装置の変形例
2台の移載装置は同じ種類であってもよいし、異なる種類でもよい。例えば、下部の移載装置はスライドフォークなどのパレット移載装置として、上部の移載装置をリアフック式などのケース移載装置としてもよい。
移載装置は1台であってもよい。
(5)マストの変形例
マストの本数は1本でもよい。
マストの形状は特に限定されない。
(6)ガイドローラの変形例
ガイドローラの種類、個数、位置、マストとの関係は特に限定されない。
(7)スタッカクレーンの変形例
本発明は、床面に設置したレールを走行するスタッカクレーンの昇降台にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、スタッカクレーンに広く適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 :自動倉庫
2a :ラック
2b :ラック
3 :スタッカクレーン
5 :スタッカクレーン通路
7 :前側支柱
9 :後側支柱
11 :荷物支承部材
13 :荷物収納棚
21a :ガイドレール
21b :ガイドレール
23 :走行台車
25 :マスト
25a :突出部
26 :上側フレーム
27 :昇降台
29A :第1移載装置
29B :第2移載装置
51 :ワイヤ
53 :ローラ
61A :上下枠材
61B :上下枠材
61C :上下枠材
61D :上下枠材
63A :移載方向枠材
63B :移載方向枠材
63C :移載方向枠材
63D :移載方向枠材
65A :走行方向枠材
65B :走行方向枠材
65C :走行方向枠材
65D :走行方向枠材
67A :斜め材
67B :斜め材
69A :吊り部材接続部材
69B :吊り部材接続部材
69a :貫通穴
71A :斜め部材
71B :斜め部材
71C :斜め部材
71D :斜め部材
72 :支持部
73 :連結部材
73a :固定部
74 :接続部
77 :第1ガイドローラ
79 :第2ガイドローラ
91 :ピン
93 :ピン
95 :ピン
97 :ピン
101 :ピン
103 :ボルト
P :パレット
W :荷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11