特許第6772854号(P6772854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772854
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20201012BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20201012BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20201012BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20201012BHJP
   H01R 31/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
   H01B7/18 D
   H01B7/00 306
   B60R16/02 623U
   H01R4/18 A
   H01R31/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-8601(P2017-8601)
(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公開番号】特開2018-116900(P2018-116900A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 克俊
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−310474(JP,A)
【文献】 特開2006−310074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
B60R 16/02
H01B 7/18
H01R 4/18
H01R 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し、複数本の電線が挿通される共通で単一の筒状部材が設けられる中継コネクタと、
前記複数本の電線のそれぞれを被覆する複数の編組部材と、
前記共通で単一の筒状部材の周方向の全周に亘って前記複数の編組部材の端部を層状に重ねた状態で、前記共通で単一の筒状部材と前記複数の編組部材とを連結する連結部材とを備え
編組部材の端部には、前記複数本の電線をすべての前記編組部材の内側に案内する挿通孔が形成されており、前記複数本の電線は、前記中継コネクタ内で電気的に接続されることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記挿通孔は各編組部材の外周壁に少なくとも1つ形成されていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記連結部材は、前記共通で単一の筒状部材に前記複数の編組部材の端部を一括してかしめ固定するかしめ具であることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記ワイヤハーネスは、インバータから供給される高電圧電源を、前記複数本の電線及び前記中継コネクタを介して複数の機器に供給するものであることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項4に記載のワイヤハーネスにおいて、
電線は、P極電線及びN極電線を含むことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の電源配線を中継する中継コネクタに接続されるワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等では、インバータから高電圧の交流電力が高圧ハーネスを介して各種電気機器に供給される。インバータは、バッテリーから供給される直流電圧を所要の高電圧に変換して、各種電気機器に供給する。
【0003】
図3に示すように、インバータ1から例えば暖房機2及びエアコン3に高電圧電源を供給する場合に、中継コネクタ4が介在されることがある。このような構成では、インバータ1からP極電線5aとN極電線6aからなる高圧ハーネス7を介して中継コネクタ4に高電圧電源が供給される。そして、中継コネクタ4からそれぞれ高圧ハーネス8,9を介して暖房機2及びエアコン3に高電圧電源が供給される。
【0004】
高圧ハーネス8はP極電線5bとN極電線6bを備え、高圧ハーネス9はP極電線5cとN極電線6cを備えている。
このような構成により、インバータ1に接続される高圧ハーネスの本数を削減して、インバータ1の小型化が図られている。
【0005】
図4に示すように、中継コネクタ4には3本の高圧ハーネス7〜9が接続され、各ハーネス内のP極電線5a〜5cが中継コネクタ4内で電気的に接続され、同様にN極電線6a〜6cが電気的に接続される。
【0006】
各高圧ハーネス7〜9は、ノイズをシールドするために編組部材10でそれぞれ被覆されている。各編組部材10の端部は、各高圧ハーネス7〜9を中継コネクタ4内にそれぞれ導入可能とした接続筒部11の外周面にかしめ具12でかしめ固定されている。
【0007】
なお、上記従来技術に関連する先行文献として、特許文献1,2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【特許文献2】特開2014−150725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図4に示す構成では、各高圧ハーネス7〜9の編組部材10を中継コネクタ4にかしめ固定する場合に、各高圧ハーネス7〜9を取り付ける接続筒部11の間隔が狭いと、かしめ作業の作業性が低下する。また、作業性を向上させるために、各接続筒部11の間隔を広くすると、中継コネクタ4が大型化するという問題点がある。
【0010】
なお、編組部材でシールドされた電線が挿通される接続筒部が密集して配置された構造を有していれば、上記中継コネクタ4以外であっても上述した問題は同様に生じる。
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は編組部材との接続作業性の低下を抑制しながら、機器の小型化を図り得るワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するワイヤハーネスは、導電性を有し、複数本の電線が挿通される筒状部材と、前記複数本の電線のそれぞれを被覆する複数の編組部材と、前記筒状部材の外周面に前記複数の編組部材の端部を層状に重ねた状態で、前記筒状部材と前記複数の編組部材とを連結する連結部材と、前記各編組部材の端部には、前記複数本の電線をすべての前記編組部材の内側に案内する挿通孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成により、各電線は挿通孔を通じて各編組部材の内側に案内され、各編組部材の端部は連結部材で筒状部材の外周面に層状に重ねられて連結される。
また、上記のワイヤハーネスにおいて、前記複数本の編組部材の端部は、前記筒状部材の周方向の全周に亘って層状に重ねられることが好ましい。
【0013】
この構成により、複数本の編組部材の端部は、前記筒状部材の周方向の全周に亘って層状に重ねられる。
また、上記のワイヤハーネスにおいて、前記連結部材は、前記筒状部材に前記複数本の編組部材の端部を一括してかしめ固定するかしめ具であることが好ましい。
【0014】
この構成により、各編組部材の端部はかしめ具で筒状部材に一括してかしめ固定される。
また、上記のワイヤハーネスにおいて、前記ワイヤハーネスは、インバータから供給される高電圧電源を、前記複数本の電線及び中継コネクタを介して複数の機器に供給するものであって、前記筒状部材は、前記中継コネクタに設けられることが好ましい。
【0015】
この構成により、中継コネクタに設けられる筒状部材に各編組部材の端部が連結される。
また、上記のワイヤハーネスにおいて、前記各電線は、P極電線及びN極電線を含むことが好ましい。
【0016】
この構成により、各電線のP極電線及びN極電線がすべての電線の編組部材の内側に案内される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のワイヤハーネスによれば、編組部材の接続作業性の低下を抑制しながら、機器の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態のワイヤハーネスを示す正面図。
図2】一実施形態のワイヤハーネスを示す断面図。
図3】中継コネクタに接続されるワイヤハーネスを示す概要図。
図4】従来のワイヤハーネスと中継コネクタの接続例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ワイヤハーネスの一実施形態を図面に従って説明する。この実施形態のワイヤハーネスは、図3に示す従来例と同様に、中継コネクタを介して、インバータ1を例えば暖房機2、エアコン3等の機器に接続して高電圧電源を供給する高圧ハーネスとして使用される。高圧ハーネスを構成するP極電線5a〜5cとN極電線6a〜6c、インバータ1、暖房機2、エアコン3等の構成は従来例と同様であるので、同一符号を付して説明する。
【0020】
図1に示すように、中継コネクタ21には、それぞれ編組部材22〜24で被覆された3本の高圧ハーネス25〜27が接続されている。高圧ハーネス25は、編組部材22で被覆され、高圧ハーネス26は編組部材23で被覆され、高圧ハーネス27は編組部材24で被覆されている。編組部材22〜24は、筒状に形成されている。
【0021】
図2は、中継コネクタ21に接続される高圧ハーネス25〜27の内部構成を示す。
高圧ハーネス25は、中継コネクタ21とインバータ1を接続するハーネスであり、P極電線5aとN極電線6aを有している。高圧ハーネス25を構成するP極電線5a及びN極電線6aは編組部材22で被覆されている。
【0022】
高圧ハーネス26は、中継コネクタ21と暖房機2を接続するハーネスであり、P極電線5bとN極電線6bを有している。高圧ハーネス26を構成するP極電線5bとN極電線6bは編組部材23で被覆されている。
【0023】
高圧ハーネス27は、中継コネクタ21とエアコン3を接続するハーネスであり、P極電線5cとN極電線6cを有している。高圧ハーネス27を構成するP極電線5cとN極電線6cは編組部材24で被覆されている。
【0024】
各編組部材22〜24の端部には、複数本の高圧ハーネスをすべての編組部材22〜24の内側に案内する挿通孔が形成されている。詳述すると、編組部材22の中継コネクタ21近傍の端部には、2つの挿通孔28,29が形成されている。編組部材24の中継コネクタ21近傍の端部には、2つの挿通孔30,31が形成されている。編組部材23の中継コネクタ21近傍の端部には、挿通孔32が形成されている。
【0025】
編組部材24の端部は、編組部材22の挿通孔29を貫通して編組部材22の内側に挿通され、編組部材23の端部は、編組部材22の挿通孔28と編組部材24の挿通孔30を貫通して、編組部材22,23の内側に挿通されている。そして、各編組部材22〜24の端部は、中継コネクタ21の接続筒部33を層状に覆う位置まで延設されている。本例では、編組部材22〜24の端部は、接続筒部33の周方向の全周に亘って層状に重ねられている。また、編組部材22〜24の端部は、接続筒部33の外周面上に編組部材23、編組部材24、編組部材22の順に層状に重ねられている。この層状に重ねられた編組部材22〜24の端部では、すべての編組部材22〜24が略同心円状に配置されている。
【0026】
高圧ハーネス26を構成するP極電線5b及びN極電線6bは、編組部材23内に挿通され、接続筒部33内を経て中継コネクタ21内まで延設される。換言すると、P極電線5b及びN極電線6bは、編組部材22の外部から編組部材22の挿通孔28と編組部材24の挿通孔30を通じて、すべての編組部材22〜24の内側に案内されている。
【0027】
高圧ハーネス27を構成するP極電線5c及びN極電線6cは、編組部材24内から編組部材23の挿通孔32を通じて編組部材23内に挿通され、接続筒部33内を経て中継コネクタ21内まで延設される。換言すると、P極電線5c及びN極電線6cは、編組部材22の外部から編組部材22の挿通孔29と編組部材23の挿通孔32を通じて、すべての編組部材22〜24の内側に案内されている。
【0028】
高圧ハーネス25を構成するP極電線5a及びN極電線6aは、編組部材22内から編組部材24の挿通孔31と編組部材23の挿通孔32を通じて編組部材23内に挿通され、接続筒部33内を経て中継コネクタ21内まで延設される。換言すると、P極電線5a及びN極電線6aは、編組部材22内から編組部材24の挿通孔31と編組部材23の挿通孔32を通じて、すべての編組部材22〜24の内側に案内されている。
【0029】
そして、P極電線5a〜5cは中継コネクタ21内で電気的に接続され、N極電線6a〜6cも中継コネクタ21内で電気的に接続される。
編組部材22〜24の端部は、導電性を有する接続筒部33の外周面に層状に重ねられた状態で、かしめ具34により接続筒部33にかしめ固定されている。これにより、編組部材22〜24と接続筒部33とが連結されるとともに、編組部材22〜24と接続筒部33とが電気的に接続される。
【0030】
次に、上記のように構成されたワイヤハーネスの作用を説明する。
各高圧ハーネス25〜27は、それぞれ編組部材22〜24で被覆されているので、各高圧ハーネス25〜27内のP極電線5a〜5c及びN極電線6a〜6cのノイズシールド性が確保される。
【0031】
各高圧ハーネス25〜27内のP極電線5a〜5c及びN極電線6a〜6cは、共通の接続筒部33から中継コネクタ21内に案内される。そして、各高圧ハーネス25〜27を被覆する編組部材22〜24は、接続筒部33に対しかしめ具34で一括してかしめ固定可能である。
【0032】
上記のようなワイヤハーネスでは、次に示す効果を得ることができる。
(1)3本の高圧ハーネス25〜27を被覆する編組部材22〜24を、中継コネクタ21の共通の接続筒部33に一括してかしめ固定することができる。従って、各高圧ハーネス25〜27の編組部材22〜24を中継コネクタ21にかしめ固定する作業を容易に行うことができる。
【0033】
(2)各高圧ハーネス25〜27の編組部材22〜24を中継コネクタ21の共通の接続筒部33に一括してかしめ固定することができるので、中継コネクタ21の筐体の小型化を図ることができる。
【0034】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・中継コネクタに接続する高圧ハーネスを4本以上としてもよい。
・上記実施形態では、インバータ1からエアコン3及び暖房機2に高電圧電源を中継して供給する中継コネクタに具体化した。これに限らず、インバータ1以外の機器から複数の機器に電源を中継して供給する中継コネクタに具体化してもよい。
【0035】
・上記実施形態では、編組部材22〜24と接続筒部33を連結する連結部材としてはかしめ具34に具体化したが、これに限定されない。例えば、連結部材としてテープや樹脂バンド等に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…インバータ、2…機器(暖房機)、3…機器(エアコン)、21…中継コネクタ、22〜24…編組部材、25〜27…電線(高圧ハーネス)、28〜32…挿通孔、33…筒状部材(接続筒部)、34…連結部材(かしめ具)。
図1
図2
図3
図4