(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
供給水に含まれる炭酸ガスを気液接触により除去する脱炭酸処理部と、供給水を前記脱炭酸処理部の上方から散水する散水部と、前記脱炭酸処理部に連通する第1吸気口、第1排気口、第2吸気口及び第2排気口と、前記第1排気口を開閉する開閉部と、前記第2吸気口を介して前記脱炭酸処理部に空気を強制的に供給するブロアと、を備える脱炭酸塔と、
供給水及び供給水から炭酸ガスが除去された脱炭酸水のうちの少なくとも脱炭酸水のpH値を検出するpH値検出部と、
前記pH値検出部で検出されたpH値が脱炭酸処理の過剰を示す場合には、前記第1排気口を開くように前記開閉部を制御すると共に、前記ブロアから前記脱炭酸処理部への空気の供給が抑制されるようにし、これにより、前記第1吸気口から導入され、前記脱炭酸処理部で気液接触した空気を前記第1排気口から外部に排出させる第1運転モードへ移行し、一方、前記pH値検出部で検出されたpH値が脱炭酸処理の不足を示す場合には、前記第1排気口を閉じるように前記開閉部を制御すると共に、前記脱炭酸処理部に空気を供給するように前記ブロアを制御し、これにより、前記第2吸気口から強制的に導入され、前記脱炭酸処理部で気液接触した空気を前記第2排気口から外部に排出させる第2運転モードへ移行する制御部と、を備える水処理装置。
前記第1吸気口は、前記脱炭酸処理部の上方に設けられ、前記第1排気口は、前記脱炭酸処理部の下方であって、脱炭酸水を貯留する貯留部よりも上方に設けられる、請求項1に記載の水処理装置。
前記第2吸気口は、前記脱炭酸処理部の下方であって、脱炭酸水を貯留する貯留部よりも上方に設けられ、前記第2排気口は、前記脱炭酸処理部の上方に設けられる、請求項1又は請求項2に記載の水処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る水処理装置の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の水処理装置1の全体図である。
本実施形態の水処理装置1は、例えば、2床3塔式の純水製造システム(不図示)において、カチオン交換樹脂塔とアニオン交換樹脂塔との間に配置される。
【0013】
図1に示すように、水処理装置1は、脱炭酸塔10、ポンプ20、制御部30、第1pH値検出センサ(第1pH値検出部)S1及び第2pH値センサ(第2pH値検出部)S2を備える。また、水処理装置1は、供給水ラインL1及び脱炭酸水ラインL2を備える。なお、「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、
図1においては、制御部30と他の機器との電気的な接続線の図示を省略している。
【0014】
供給水ラインL1は、供給水としての原水W1を脱炭酸塔10に向けて供給するラインである。供給水ラインL1の上流側の端部は、例えば、カチオン交換樹脂塔(不図示)の出口側ポートに接続されている。供給水ラインL1の下流側の端部は、脱炭酸塔10の散水部13(後述)に接続されている。供給水ラインL1には、第1pH値検出センサS1が設けられている。
【0015】
第1pH値検出センサS1は、供給水ラインL1を流通する原水W1のpH値を検出する機器である。第1pH値検出センサS1は、制御部30と電気的に接続されている。第1pH値検出センサS1で検出された原水W1のpH値は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0016】
脱炭酸塔10は、原水W1に含まれる炭酸ガスを気液接触により除去する設備である。脱炭酸塔10は、塔本体11、脱炭酸処理部12、散水部13、貯留部14、吸排気口(第1吸気口、第2排気口)15、排気口16(第1排気口)、開閉部17、吸気口(第2吸気口)18及びブロア19を備える。
【0017】
塔本体11は、脱炭酸塔10の外郭を形成する筐体である。塔本体11の上方には、散水部13、吸排気口15が設けられている。塔本体11の一方の側面には、排気口16が設けられている。塔本体11の他方の側面には、吸気口18が設けられている。また、塔本体11の内部には、脱炭酸処理部12及び貯留部14が設けられている。
【0018】
脱炭酸処理部12は、原水W1に含まれる炭酸ガスを気液接触により除去する領域である。脱炭酸処理部12の範囲は特に規定されないが、本実施形態では、便宜上、
図1に示す領域aを脱炭酸処理部12とする。なお、領域aは、本実施形態における脱炭酸処理部12の範囲を概念的に示したものであり、これに限定されない。また、本実施形態では、脱炭酸処理部12を、内部に機能性部材等が介在しない空間として説明するが、脱炭酸処理部12には、気液接触の効率を高めるための充填剤が配置されていてもよい。
【0019】
散水部13は、脱炭酸処理部12に対して、空気と気液接触させる原水W1を散水する装置である。散水部13は、塔本体11の上方に設けられている。散水部13は、供給水ラインL1を介して供給された原水W1を上方から下方に散水(散布)する。
貯留部14は、脱炭酸処理部12において炭酸ガスが除去された脱炭酸水W2を貯留する部位である。貯留部14は、塔本体11の下方に設けられている。貯留部14の底部には、脱炭酸水ラインL2の上流側の端部が接続されている。
【0020】
吸排気口15は、脱炭酸処理部12に連通する開口である。吸排気口15は、塔本体11の上方に設けられている。吸排気口15は、自然送風モード(後述)において、外部から空気が導入される吸気口(第1吸気口)として機能する。また、吸排気口15は、強制送風モード(後述)において、塔本体11から空気を排出させる排気口(第2排気口)として機能する。すなわち、吸排気口15は、吸気口としての機能と排気口としての機能とを備えている。
【0021】
排気口16は、脱炭酸処理部12に連通する開口である。排気口16は、脱炭酸処理部12で原水W1と気液接触した空気を外部に排出させる第1排気口として機能する。排気口16は、脱炭酸処理部12の下方であって、貯留部14よりも上方に設けられている。排気口16には、開閉部17が設けられている。
【0022】
開閉部17は、排気口16を、図中の矢印方向に開閉する機構である。開閉部17は、排気口16を覆う開閉可能な扉171と、扉171を開閉する駆動部172と、を備える。扉171の一端部は、排気口16の近傍において、塔本体11に回動自在に支持されている。扉171の一端部を回動させることにより、扉171を排気口16から離れる方向又は近づく方向に移動させることができる。駆動部172は、扉171の一端部を回動させる部位である。駆動部172は、制御部30と電気的に接続されている。駆動部172は、制御部30から送信される開度信号に応じて、扉171を排気口16から離れる方向又は近づく方向に駆動する。扉171の開度(0〜100%)は、制御部30から駆動部に送信される開度信号により制御される。以下、扉171の開度を、「排気口16の開度」ともいう。
【0023】
吸気口18は、脱炭酸処理部12に連通する開口である。吸気口18は、強制送風モードにおいて、ブロア19から送風された空気を脱炭酸処理部12に導入する第2吸気口として機能する。吸気口18は、脱炭酸処理部12の下方であって、貯留部14の上方に設けられている。
【0024】
ブロア19は、吸気口18を介して、脱炭酸処理部12に空気を強制的に供給する機器である。ブロア19は、動力源となるモータ191を備える。モータ191は、インバータ192に接続されている。
【0025】
インバータ192は、周波数が変換された駆動電力をモータ191に供給する回路(又はその回路を持つ装置)である。インバータ192は、制御部30と電気的に接続されている。インバータ192には、制御部30から指令信号が入力される。インバータ192は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力をモータ191に出力する。モータ191は、インバータ192から供給された駆動電力の周波数に応じた回転速度で駆動される。ブロア19は、モータ191の回転速度に応じた量の空気を、吸気口18から脱炭酸処理部12に向けて送風する。
【0026】
脱炭酸水ラインL2は、脱炭酸処理部12で炭酸ガスが除去された脱炭酸水W2を排出するラインである。脱炭酸水ラインL2の上流側の端部は、貯留部14(脱炭酸塔10)の底部に接続されている。なお、脱炭酸水ラインL2の上流側の端部が貯留部14に接続される位置は、貯留部14の底部に限定されない。
脱炭酸水ラインL2の下流側の端部は、例えば、アニオン交換樹脂塔(不図示)の入口側ポートに接続されている。脱炭酸水ラインL2には、ポンプ20、第2pH値検出センサS2が設けられている。
【0027】
ポンプ20は、脱炭酸水ラインL2の上流側から下流側に向けて、脱炭酸水W2を吐出する機器である。ポンプ20は、制御部30と電気的に接続されている。ポンプ20の運転(駆動及び停止)制御部30から出力されるポンプ運転信号により制御される。
第2pH値検出センサS2は、脱炭酸水ラインL2を流通する脱炭酸水W2のpH値を検出する機器である。第2pH値検出センサS2は、制御部30と電気的に接続されている。第2pH値検出センサS2で検出された脱炭酸水W2のpH値は、制御部30へ検出信号として送信される。
【0028】
制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、水処理装置1に係る各種の制御を実行する。以下、制御部30の機能の一部について説明する。
【0029】
制御部30は、後述するように、第1pH値検出センサS1で検出された原水W1のpH値と第2pH値検出センサS2で検出された脱炭酸水W2のpH値との相関に基づいて、脱炭酸処理の過剰又は不足を判定し、後述する自然送風モード、強制送風モード及び警報モードのいずれかの運転モードに移行する。
【0030】
次に、自然送風モード及び強制送風モードへ移行した場合の水処理装置1の動作を、
図2を参照して説明する。
図2(A)は、自然送風モードに移行した場合の水処理装置1の動作を説明する図である。
図2(B)は、強制送風モードに移行した場合の水処理装置1の動作を説明する図である。
図2(A)、(B)においては、説明に必要な部分のみを図示している。
【0031】
制御部30は、脱炭酸処理が過剰であると判定した場合には、運転モードを自然送風モード(第1運転モード)に移行させる。
図2(A)に示すように、自然送風モードにおいて、制御部30は、排気口16が開状態となるように開閉部17を制御する。ここで、開状態とは、排気口16の開度が100%(全開)となる状態をいう。また、制御部30は、ブロア19から脱炭酸処理部12への空気の供給が停止されるように、インバータ192への指令信号の出力を停止する。これにより、散水部13から原水W1が上方から下方に向けて散水されることによる巻き込み(吸い込み)効果により、空気A1(図中、矢印)が吸排気口15から導入され、脱炭酸処理部12で気液接触した後、排気口16から外部に排出される。自然送風モードでは、ブロア19の運転が停止するため、ブロア19の消費電力を低減できる。
【0032】
一方、制御部30は、脱炭酸処理が不足していると判定した場合には、運転モードを強制送風モード(第2運転モード)に移行させる。
図2(B)に示すように、強制送風モードにおいて、制御部30は、排気口16が閉状態となるように開閉部17を制御する。ここで、閉状態とは、排気口16の開度が0%(全閉)となる状態をいう。また、制御部30は、脱炭酸処理部12に空気が供給されるように、インバータ192へ指令信号を出力する。これにより、ブロア19から供給された空気A2(図中、矢印)が、吸気口18から強制的に導入され、脱炭酸処理部12で気液接触した後、吸排気口15から外部に排出される。強制送風モードでは、ブロア19が運転されるため、脱炭酸水W2の水質を高い水準に回復させることができる。
【0033】
次に、制御部30において、脱炭酸処理の過剰又は不足を判定する手法について説明する。
図3は、水処理装置運転制御テーブルの一例を説明する図である。
図3において、横軸は、第1pH値検出センサS1で検出される原水W1のpH値(入口側pH値)である。縦軸は、第2pH値検出センサS2で検出される脱炭酸水W2のpH値(出口側pH値)である。
図3に示す水処理装置運転制御テーブルは、原水W1のpH値と脱炭酸水W2のpH値との相関を定めたデータテーブルである。
図3に示す水処理装置運転制御テーブルに関するデータは、例えば、制御部30のマイクロプロセッサのメモリに記憶される。
【0034】
図3に示すように、水処理装置運転制御テーブルは、第1運転領域D1、第2運転領域D2、第3運転領域D3、第1警報領域C1及び第2警報領域C2の各領域に区分されている。各領域は、原水W1のpH値と脱炭酸水W2のpH値との相関に応じて定められた領域である。制御部30は、検出された入口側pH値及び出口側pH値の交点となる位置を水処理装置運転制御テーブル上で特定し、その位置がどの領域に属しているかに応じて、脱炭酸処理の過剰又は不足を判定する。
【0035】
第1運転領域D1は、脱炭酸処理が過剰であると判定される領域を示している。第1運転領域D1は、入口側pH値に対して、出口側pH値が概ね高くなる相関の領域である。制御部30は、水処理装置運転制御テーブル上において、入口側pH値及び出口側pH値の交点が第1運転領域D1に属している場合には、脱炭酸処理が過剰であると判定して、運転モードを自然送風モード(第1運転モード)に移行させる。
【0036】
第2運転領域D2は、脱炭酸処理が適切に行われていると判定される領域を示している。第2運転領域D2は、入口側pH値に対して、出口側pH値が適切な範囲で高く又は低くなる相関の領域である。制御部30は、水処理装置運転制御テーブル上において、入口側pH値及び出口側pH値の交点が第2運転領域D2に属している場合には、脱炭酸処理が適切に行われていると判定して、現状の運転モード(自然送風モード又は強制送風モード)を継続する。
【0037】
第3運転領域D3は、脱炭酸処理が不足していると判定される領域を示している。第3運転領域D3は、入口側pH値に対して、出口側pH値が概ね低くなる相関の領域である。制御部30は、水処理装置運転制御テーブル上において、入口側pH値及び出口側pH値の交点が第3運転領域D3に属している場合には、脱炭酸処理が不足していると判定して、運転モードを強制送風モード(第2運転モード)に移行させる。
【0038】
なお、
図3に示すように、第1運転領域D1〜第3運転領域D3では、入口側pH値が高くなるにつれて、領域の幅が徐々に狭くなっている。これは、pH値の高い領域では、脱炭酸処理で除去可能な炭酸ガスの含有量が少なくなるため、水処理装置1が正常に運転されていても、脱炭酸処理によるpH値の変化が少なくなり、相関する出口側pH値の範囲も狭くなるためである。
【0039】
ちなみに、原水W1に含まれる炭酸成分は、炭酸ガス、炭酸水素イオン、炭酸イオンのうち、いずれかの形態をとり、その存在割合はpH値により変化する。このうち、脱炭酸処理で除去可能な形態は、炭酸ガスだけであるが、その存在割合は、pH値4.0未満でほぼ100%、pH値8.0でほぼ0%となる。
図3は、このpH値の範囲における原水W1のpH値と脱炭酸水W2のpH値との相関を表している。
【0040】
第1警報領域C1は、脱炭酸処理が過剰すぎると判定される領域を示している。第1警報領域C1は、入口側pH値に対して、出口側pH値が極端に高くなる相関の領域である。入口側pH値及び出口側pH値の交点が第1警報領域C1に属する場合とは、原水W1から炭酸ガスが過剰に除去されている状態である。このような状態となる要因としては、例えば、制御部30からインバータ192に出力された指令信号に対応する駆動電力よりも、より大きな駆動電力がインバータ192からモータ191に出力された場合等が挙げられる。
【0041】
このような場合、水処理装置1の運転を継続すると、脱炭酸水W2の水質が適切な範囲から外れるだけでなく、ブロア19が損傷する等の不具合が生じることが考えられる。そのため、制御部30は、入口側pH値及び出口側pH値の交点が第1警報領域C1に属している場合には、運転モードを警報モードに移行させて、水処理装置1の運転を停止すると共に、管理者に対して運転の停止を知らせる警報等を発する。
【0042】
第2警報領域C2は、脱炭酸処理が不足しすぎていると判定される領域を示している。第2警報領域C2は、入口側pH値に対して、出口側pH値が極端に低くなる相関の領域である。入口側pH値及び出口側pH値の交点が第2警報領域C2に属する場合とは、原水W1から炭酸ガスがほとんど除去されていない状態である。このような状態となる要因としては、例えば、制御部30からインバータ192に出力された指令信号に対応する駆動電力よりも、より小さな駆動電力がインバータ192からモータ191に出力された場合又は駆動電力がインバータ192からモータ191に出力されていない場合等が挙げられる。
【0043】
このような場合、水処理装置1の運転を継続しても、脱炭酸水W2の水質が適切な範囲から外れるだけでなく、インバータ192が故障している等の不具合が生じていることが考えられる。そのため、制御部30は、入口側pH値及び出口側pH値の交点が第2警報領域C2に属している場合には、運転モードを警報モードに移行させて、水処理装置1の運転を停止すると共に、管理者に対して運転の停止を知らせる警報等を発する。
なお、水処理装置1の運転モードが警報モードに移行した場合に、水処理装置1が設置された純水製造システムの運転を停止する等の制御を行ってもよい。
【0044】
本実施形態では、
図3に示す水処理装置運転制御テーブルに基づいて脱炭酸処理の過剰又は不足を判定する例について説明するが、水処理装置運転制御テーブルにおいて、原水W1のpH値と脱炭酸水W2のpH値との相関は、原水W1の水質(Mアルカリ)、出口側pH値の目標値等によっても変化する。そのため、原水W1の水質、出口側pH値の目標値等の条件に応じて、相関の異なる複数の水処理装置運転制御テーブルを用意しておき、上述した条件に合わせて水処理装置運転制御テーブルを選択するようにしてもよい。
【0045】
次に、制御部30において、自然送風モード、強制送風モード及び警報モードに移行する機能について、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態における自然送風モードと強制送風モードと警報モードとの間の状態遷移図である。
【0046】
(自然送風モード)
第1運転モードとしての自然送風モードは、脱炭酸処理が過剰を示す場合に、脱炭酸処理の機能を低くするモードである。自然送風モードにおいて、制御部30は、
図2(A)に示すように、排気口16が開状態となるように開閉部17を制御すると共に、ブロア19から脱炭酸処理部12への空気の供給が停止されるように、インバータ192への指令信号の出力を停止する。これにより、空気A1(図中、矢印)が吸排気口15から導入され、脱炭酸処理部12で気液接触した後、排気口16から外部に排出される。
【0047】
(強制送風モード)
第2運転モードとしての強制送風モードは、脱炭酸処理が不足を示す場合に、脱炭酸処理の機能を高くするモードである。強制送風モードにおいて、制御部30は、
図2(B)に示すように、排気口16が閉状態となるように開閉部17を制御すると共に、ブロア19から脱炭酸処理部12へ空気が供給されるように、インバータ192へ指令信号を出力する。これにより、ブロア19から供給された空気A2(図中、矢印)が、吸気口18から強制的に導入され、脱炭酸処理部12で気液接触した後、吸排気口15から外部に排出される。
【0048】
(警報モード)
警報モードは、脱炭酸処理に異常が生じたと判断される場合に、水処理装置1の運転を停止させるモードである。制御部30は、出口側pH値が極端に高くなり、脱炭酸処理の過剰を示す傾向が更に顕著になった場合又は出口側pH値が極端に低くなり、脱炭酸処理の不足を示す傾向が更に顕著になった場合に、警報モードに移行する。警報モードにおいて、制御部30は、水処理装置1の運転を停止する。具体的には、ブロア19から脱炭酸処理部12への空気の供給が停止されるように、インバータ192への指令信号の出力を停止する。また、制御部30は、ポンプ20により脱炭酸水ラインL2の下流側への脱炭酸水W2の吐出が停止されるように、ポンプ20へのポンプ運転信号の出力を停止する。更に、制御部30は、管理者に対して運転の停止を知らせる警報等を発する。
【0049】
次に、制御部30が運転モードを移行させる移行条件(イベントE1〜E4)について説明する。制御部30は、後述するST1〜ST6の工程において、イベントE1〜E4が発生(成立)すると、発生したイベントに対応付けられた運転モードへ移行する。
【0050】
(ST1)
制御部30は、第1pH値検出センサS1で検出された原水W1のpH値及び第2pH値検出センサS2で検出された脱炭酸水W2のpH値をそれぞれ取得する。そして、制御部30は、水処理装置運転制御テーブル(
図3参照)に定められた相関に基づいて、取得した原水W1のpH値及び脱炭酸水W2のpH値の交点となる位置を特定する。イベントE1〜E4は、特定された交点の位置が水処理装置運転制御テーブルのどの領域に属するかに応じて発生する。
なお、制御部30による原水W1及び脱炭酸水W2のpH値の取得は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。脱炭酸処理の過剰又は不足の判定とイベントE1〜E4の発生は、同じ時間間隔で実行されてもよいし、異なるタイミングで実行されてもよい。
【0051】
(ST2)
制御部30において、取得した原水W1のpH値及び脱炭酸水W2のpH値の交点となる位置が、水処理装置運転制御テーブルの第1運転領域D1に属していると特定された場合、イベントE1が発生する。イベントE1は、自然送風モードと対応付けられている。そのため、制御部30は、イベントE1が発生すると、
図4に示すように、運転モードを強制送風モードから自然送風モードに移行させる。
【0052】
(ST3)
制御部30において、取得した原水W1のpH値及び脱炭酸水W2のpH値の交点となる位置が、水処理装置運転制御テーブルの第3運転領域D3に属していると特定された場合、イベントE2が発生する。イベントE2は、強制送風モードに対応付けられている。そのため、制御部30は、イベントE2が発生すると、
図4に示すように、運転モードを自然送風モードから強制送風モードに移行させる。
【0053】
(ST4)
制御部30において、取得した原水W1のpH値及び脱炭酸水W2のpH値の交点となる位置が、水処理装置運転制御テーブルの第2運転領域D2に属していると特定された場合、イベントは発生しない。第2運転領域D2には、イベントが対応付けられていない。そのため、制御部30は、現状の運転モード(強制送風モード又は自然送風モード)を継続する。
【0054】
(ST5)
制御部30において、取得した原水W1のpH値及び脱炭酸水W2のpH値の交点となる位置が、水処理装置運転制御テーブルの第1警報領域C1に属していると特定された場合、イベントE3が発生する。イベントE3は、警報モードと対応付けられている。そのため、制御部30は、イベントE3が発生すると、
図4に示すように、運転モードを自然送風モードから警報モードに運転モードに移行させる。
【0055】
(ST6)
制御部30において、取得した原水W1のpH値及び脱炭酸水W2のpH値の交点となる位置が、水処理装置運転制御テーブルの第2警報領域C2に属していると特定された場合、イベントE4が発生する。イベントE4は、警報モードと対応付けられている。そのため、制御部30は、イベントE4が発生すると、
図4に示すように、運転モードを強制送風モードから警報モードに運転モードに移行させる。
【0056】
上述した本実施形態の水処理装置1によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
本実施形態の水処理装置1において、制御部30は、脱炭酸処理が過剰を示す場合、運転モードを自然送風モード(第1運転モード)に移行させる。自然送風モードにおいて、制御部30は、排気口16を開状態にすると共に、ブロア19の運転を停止する。これによれば、ブロア19の運転を停止しても、吸排気口15から導入された空気が脱炭酸処理部12で気液接触した後、排気口16から外部に排出される。そのため、本実施形態の水処理装置1は、ブロア19の運転を停止して、外部から空気を導入しないようにした場合に比べて、脱炭酸水W2の水質を高い水準に維持しつつ、ブロア19の消費電力を低減できる。
【0057】
本実施形態の水処理装置1において、吸排気口(第1吸気口)15は、脱炭酸処理部12の上方に設けられ、排気口(第1排気口)16は、脱炭酸処理部12の下方であって、貯留部14よりも上方に設けられている。この構成によれば、原水W1の散水による巻き込み(吸い込み)効果により、吸排気口15から空気が導入されやすくなると共に、排気口16から空気が排出されやすくなる。これにより、脱炭酸処理部12における空気の入れ替えが促進され、原水W1により多くの空気が接触することになるため、脱炭酸処理をより効率良く行うことができる。
【0058】
本実施形態の水処理装置1において、吸気口(第2吸気口)18は、脱炭酸処理部12の下方であって、貯留部14の上方に設けられている。この構成によれば、ブロア19により強制的に脱炭酸塔10に導入された空気は、散水部13からの散水により下降する原水W1に対向して上方に導かれるため、脱炭酸処理部12において、原水W1により多くの空気を接触させることができる。
【0059】
本実施形態の水処理装置1によれば、制御部30は、第1pH値検出センサS1で検出された原水W1のpH値と第2pH値検出センサS2で検出された脱炭酸水W2のpH値との相関に基づいて、脱炭酸処理の過剰又は不足を判定する。そのため、脱炭酸水W2のpH値のみに基づいて脱炭酸処理の過剰又は不足を判定する場合に比べて、制御部30は、脱炭酸処理の過剰又は不足をより正確に判定することができる。
【0060】
本実施形態の水処理装置1において、吸排気口15は、吸気口としての機能と排気口としての機能を備える。この構成によれば、吸気口及び排気口をそれぞれ別々に設ける必要がないため、脱炭酸塔10の構造を簡素化できる。また、開口の数を減らせるため、コストの削減が可能となり、保守、点検等も容易となる。
【0061】
(変形形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0062】
実施形態では、自然送風モードにおいて、排気口16の開度が100%となるように制御する例について説明したが、これに限定されない。自然送風モードにおいて、脱炭酸処理が過剰を示す程度に応じて、排気口16の開度を調節するようにしてもよい。例えば、脱炭酸処理が僅かに過剰である場合には、排気口16の開度を50%程度としてもよい。このように、自然送風モードにおいて、脱炭酸処理が僅かに過剰である場合に、排気口16の開度を調節することにより、脱炭酸水W2の水質が短時間で極端に低くなり過ぎることを抑制できる。
【0063】
実施形態では、自然送風モードにおいて、ブロア19の運転を停止する例について説明したが、これに限定されない。自然送風モードにおいて、ブロア19の運転を停止させずに、空気の供給量を少なくするだけでもよい。例えば、自然送風モードにおいて、脱炭酸処理の程度に応じて、ブロア19の運転を停止せずに、ブロア19からの空気の供給を少なくするようにしてもよい。
【0064】
実施形態では、強制送風モードにおいて、排気口16の開度が0%となるように制御する例について説明したが、これに限定されない。強制送風モードにおいて、脱炭酸処理が不足を示す程度に応じて、排気口16の開度を調節するようにしてもよい。例えば、脱炭酸処理が僅かに不足している場合には、排気口16の開度を50%程度としてもよい。このように、強制送風モードにおいて、脱炭酸処理が僅かに不足している場合に、排気口16の開度を調節することにより、脱炭酸水W2の水質が短時間で極端に高くなり過ぎることを抑制できる。
【0065】
実施形態では、水処理装置運転制御テーブル(
図3参照)に定められた、原水W1のpH値と脱炭酸水W2のpH値との相関に基づいて、脱炭酸処理の過剰又は不足を判定する例について説明したが、これに限定されない。水処理装置運転制御テーブルと同じ相関を有する関数式に基づいて、脱炭酸処理の過剰又は不足を判定してもよい。
【0066】
実施形態では、制御部30において、第1pH値検出センサS1で検出された原水W1のpH値と第2pH値検出センサS2で検出された脱炭酸水W2のpH値とに基づいて脱炭酸処理の過剰又は不足を判定する例について説明したが、これに限定されない。制御部30において、原水W1のpH値に基づかず且つ脱炭酸水W2のpH値に基づいて脱炭酸処理の過剰又は不足を判定する制御を行ってもよい。
【0067】
具体的には、制御部30において、第2pH値検出センサS2で検出された脱炭酸水W2のpH値が脱炭酸処理の過剰を示す場合には、自然送風モードへ移行し、第2pH値検出センサS2で検出された脱炭酸水W2のpH値が脱炭酸処理の不足を示す場合には、強制送風モードへ移行する、という制御である。このような制御を可能とするため、脱炭酸処理が過剰であると判定する上限閾値及び不足であると判定する下限閾値を予め設定しておき、脱炭酸水W2のpH値がどの閾値範囲に属するかにより脱炭酸処理の過剰又は不足を判定することができる。この場合、上限閾値と下限閾値との間の範囲は、現状の運転モードを維持する範囲となる。
【0068】
また、閾値を一つに設定し、脱炭酸水W2のpH値がこの閾値以上か又は未満かに基づいて、脱炭酸処理の過剰又は不足を判定するようにしてもよい。
このように、脱炭酸処理の過剰又は不足の判定は、原水W1及び脱炭酸水W2のうちの少なくとも脱炭酸水W2のpH値に基づくものであればよい。
【0069】
実施形態では、吸排気口15が、吸気口としての機能と排気口としての機能を備える例について説明したが、これに限定されない。塔本体11において、吸気口(第1吸気口)と排気口(第2排気口)を、それぞれ独立して設けた構成としてもよい。その場合、吸気口と排気口は、隣接していてもよいし、離れていてもよい。
【0070】
実施形態では、2床3塔式の純水製造システムにおいて、カチオン交換樹脂塔とアニオン交換樹脂塔との間に水処理装置1を配置する例について説明したが、これに限定されない。水処理装置1は、逆浸透膜装置とEDI(電気脱イオン)装置との間に配置されてもよいし、逆浸透膜装置とカートリッジ式純水装置との前段に配置されてもよい。また、水処理装置1は、飲用水供給システムにおいて、酸液注された濾過塔と膜濾過装置との間に配置されてもよい。