(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動装置に接続される安全ドライバであって、通信線を介した標準PLCからの動作指令および前記駆動装置からのフィードバック信号に基づいて前記駆動装置を駆動させる駆動信号を生成する駆動信号生成回路と、前記駆動信号生成回路から前記駆動装置へ前記駆動信号を伝達させる駆動信号経路と、停止指示信号を入力されると前記駆動信号経路を遮断する安全停止回路と、を有する安全ドライバと、
前記安全ドライバと制御信号線で直接接続され、入力手段を用いた操作者の入力に応じて、第1の前記停止指示信号を生成して前記安全ドライバの前記安全停止回路に出力する安全コントローラと、
前記安全ドライバと接続された安全通信ユニットであって、安全PLCからの前記通信線を介した指示に応じて、第2の前記停止指示信号を発生させて前記安全ドライバの前記安全停止回路に出力する安全通信ユニットと、
を有し、
前記安全ドライバは、前記安全停止回路による前記駆動信号経路の遮断を検出して、前記駆動信号経路が遮断されていることを示すEDM信号を出力する第1のEDM出力部を有し、
前記安全通信ユニットは、前記安全コントローラから出力された前記第1の停止指示信号により前記安全停止回路が作動した場合は、前記安全コントローラに前記EDM信号を出力し、前記第2の停止指示信号により前記安全停止回路が作動した場合は、前記安全コントローラに前記EDM信号を出力しない、第2のEDM出力部を有する
サーボシステム。
【背景技術】
【0002】
サーボモータを含むサーボシステムなどのモータ制御システムを用いる製造現場では、装置の操作者の安全を確保することが重要な課題である。安全の確保に関して近年、STO(セーフトルクオフ)という機能を用いるサーボシステムの活用が始まっている。
STOは、可変速電気駆動システムの安全要求事項に関する国際規格IEC61800−5−2に準拠した機能であり、作業者の安全性を確保するために、機械の挙動を監視して危険な場合は機械を停止することを規定している。特に、サーボシステムの駆動源であるサーボモータの位置・速度・トルクの監視・制御への適用が期待されている。
サーボシステムにおいてSTO機能が実行されると、停止指示信号に基づき、サーボモータの駆動に用いる駆動信号が電気的に遮断され、サーボモータの動作が停止する。STO機能は例えば、装置の非常停止回路に好適に使用される。
【0003】
特許文献1(再公表特許第2008/132975号公報)には、入力や出力にコンタクタなどの機械接点スイッチを用いないでPWM信号の遮断ができる安全停止回路を備えた電力変換装置を提供するために、直流を交流に変換するインバータ部を駆動するゲート駆動回路とゲート駆動回路に与えるPWM信号を生成するPWM発生回路との間に介在される安全停止回路において、外部電力遮断用端子と外部電力遮断用端子と連動してPWM信号のいずれかを遮断するPWM信号遮断回路とで構成し、外部電力遮断用端子が開状態のときにPWM信号遮断回路が遮断することでゲート駆動回路へのPWM信号を遮断することが開示されている。
【0004】
特許文献2(特許第4336985号公報)には、安全ユニットにおいて、コンフィグレーションの信頼性を確実に検証させることが可能な検証システムを提供するために、安全ユニット側にダウンロードされたコンフィグレーションデータを再びパソコン側にアップロードするとともに、アップロードされたコンフィグレーションデータとダウンロード前の元のコンフィグレーションデータとを照合し、その照合結果をパソコンの画面上に表示する。ユーザから所定の確認操作が行われるのを待って、パソコンの画面上にユーザ確認済みマークを表示することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
STO機能が実行される際には、サーボシステムの構成要素である安全ドライバがサーボモータ等の駆動装置を停止させる。安全ドライバは、サーボモータに接続され、サーボモータに対する標準制御および安全制御を行う装置である。そして、STO機能を実行させるための停止指示信号を安全ドライバに入力する方法として、ワイヤード方式と通信方式が知られている。
ワイヤード方式では、安全ドライバと制御信号線で直接接続された安全コントローラが、操作者による駆動装置の停止指示(たとえば非常停止スイッチの押下)を検出したとき
に、当該安全コントローラから安全ドライバに停止指示信号が出力される。また通信方式では、安全ドライバと通信線を介して接続された安全PLCから、操作者の入力やプログラムに応じて、安全ドライバに停止指示信号が出力される。
ワイヤード方式には、製造現場で緊急事態が生じて操作者が停止処理を実施したときに、操作者の指示に対するレスポンスが良好であり、応答速度が速いという利点がある。一方、通信方式には、通信線で接続されたPLCからの停止処理が実施でき、遠隔操作によるSTOの実施が可能であるという利点がある。
上記のように、ワイヤード方式と通信方式にはそれぞれ利点がある。また、安全機構を多重化することは、安全性能の向上につながるため好ましい。したがって、ある駆動装置に接続された安全ドライバが、安全コントローラから出力される停止指示信号と安全通信ユニットから出力される停止指示信号の両方に対応してSTO機能を実行できることが好ましい。従来はサーボシステムの安全制御に関して、ワイヤード方式の普及が先行しており、通信方式については今後の普及が期待されている。そこで、ワイヤード方式のSTO機能を有する安全ドライバに、通信方式のSTO機能を持たせたいという要望がある。
しかし、単純にワイヤード方式と通信方式のSTO機能を合わせ持つ安全ドライバを製造した場合、例えば、ワイヤード方式のみに対応する既存の安全ドライバに通信方式のSTO機能を単純に追加した場合、安全ドライバ内の安全停止回路などの部品の点数が増大し、安全ドライバの製造コスト向上や、装置内スペースの減少あるいは装置規模の大型化などの問題が生じる。また、機能追加などの構成変更を行う際には通常、既存の安全停止回路を停止してから作業を行う必要があり、その間は装置が利用できなくなる。さらに、安全ドライバの構成を変更する場合、第三者認証機関(TUV)による規格の再認証が必要となる場合があり、コストや時間の問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、駆動装置に接続されたSTO機能を有する安全ドライバを備えるサーボシステムにおいて、ワイヤード方式および通信方式のSTO機能をともに実現するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の構成に係るサーボシステムは、安全ドライバにおいて、通信線を介した停止指示信号と制御信号線を介した停止指示信号とが、共通の安全停止回路に入力される。
すなわち本発明は、駆動装置に接続される安全ドライバであって、通信線を介した標準PLCからの動作指令および前記駆動装置からのフィードバック信号に基づいて前記駆動装置を駆動させる駆動信号を生成する駆動信号生成回路と、前記駆動信号生成回路から前記駆動装置へ前記駆動信号を伝達させる駆動信号経路と、停止指示信号を入力されると前記駆動信号経路を遮断する安全停止回路と、を有する安全ドライバと、前記安全ドライバと制御信号線で直接接続され、入力手段を用いた操作者の入力に応じて、第1の前記停止指示信号を生成して前記安全ドライバの前記安全停止回路に出力する安全コントローラと、前記安全ドライバと接続された安全通信ユニットであって、安全PLCからの前記通信線を介した指示に応じて、第2の前記停止指示信号を発生させて前記安全ドライバの前記安全停止回路に出力する安全通信ユニットと、を有するサーボシステムを提供する。
このとき、前記安全ドライバは、前記安全停止回路による前記駆動信号経路の遮断を検出して、前記駆動信号経路が遮断されていることを示すEDM信号を出力する第1のEDM出力部を有する。さらに、前記安全通信ユニットは、前記安全コントローラから出力された前記第1の停止指示信号により前記安全停止回路が作動した場合は、前記安全コントローラに前記EDM信号を出力し、前記第2の停止指示信号により前記安全停止回路が作動した場合は、前記安全コントローラに前記EDM信号を出力しない、第2のEDM出力部を有する。
かかる構成によれば、ワイヤードSTO機能によるサーボモータの停止と通信STO機能によるサーボモータの停止が、安全ドライバの同じ安全停止回路により実行される。そのため部品点数の増加を抑制できるため、コストの低減および部品設置領域の縮小が可能になる。
【0009】
かかる構成によれば、安全停止回路が作動してサーボモータが停止している状態を安全ドライバの外部に通知できる。
【0010】
かかる構成によれば、停止指示信号が安全コントローラから出力された場合はEDM信号が当該安全コントローラに出力されるので、停止スイッチ等を使用した操作者がサーボモータへの駆動電流が遮断されたことを認識できる。一方で停止指示信号が安全PLCから出力された場合、言い換えると、安全コントローラに起因せずに駆動電流が遮断された場合はEDM信号が安全コントローラには出力されないので、操作者が電流遮断の原因を誤認することを防止できる。
【0011】
上記EDM機能を有する構成のサーボシステムにおいて、前記安全通信ユニットは、前記安全ドライバに組み込み可能に構成され、前記安全通信ユニットの前記第2のEDM出力部は、前記安全通信ユニットが前記安全ドライバに組み込まれた状態において、前記安全ドライバの前記第1のEDM出力部の機能を無効にしてその機能を代替する構成を採用しても良い。
かかる構成によれば、第1のEDM出力部が動作して、安全PLCからの停止指示信号によりSTO機能が実行されたにも関わらず安全コントローラにEDM信号が出力されることがなくなるため、操作者の誤認を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動装置に接続されたSTO機能を有する安全ドライバを備えるサーボシステムにおいて、ワイヤード方式および通信方式のSTO機能をともに実現するための技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(サーボシステムの概略)
図1を用いて、本発明の実施例1に係るサーボシステム1の概略構成を説明する。
サーボシステム1は概略、安全ドライバ2と、安全コントローラ3と、安全通信ユニッ
ト4と、サーボモータ6を含む。サーボシステム1はさらに、通信線8を介して、安全PLC52と標準PLC51を含む上位ネットワーク5を含んでいる。また後述するが、安全ドライバ2と安全通信ユニット4は構造上一体であっても良い。
サーボシステム1は、駆動装置であるサーボモータ6が組み込まれた機械の制御(例えば工作機械における可動部の位置決め制御)に用いられる。
【0017】
(詳細な構成)
図2を参照して、サーボシステム1の構成をさらに詳細に説明する。
サーボシステム1は、上位ネットワーク5に含まれる標準PLC51(Standard PLC)と、安全PLC52(Safety PLC)の動作指令によって動作する。
【0018】
安全ドライバ2は、サーボシステムにおいて通常のサーボドライバが行う標準制御と、STO機能の実施を含めた安全制御を行う。
安全ドライバ2は、サーボモータ6等の駆動装置が通常期待される能力を発揮するための標準制御において、通信線8を介して標準PLC51からサーボモータ6の駆動に関する動作コマンドである動作指令信号を受信するとともに、サーボモータ6のエンコーダ(不図示)からサーボモータ6の動作を示すフィードバック信号を受信する。そして安全ドライバ2は、標準PLC51からの動作指令信号とエンコーダからのフィードバック信号とに基づいてサーボモータ6の動作に関する指令値を算出し、サーボモータ6の動作がその指令値に追従するように、サーボモータ6に駆動電流を供給する。
安全ドライバ2は、駆動装置の安全を確保するための安全制御において、通信線8を介して安全PLC52から送信された安全指令信号を、安全通信ユニット4を経由して受け付ける。安全指令信号には、少なくとも、安全ドライバ2がSTO機能を発揮させてサーボモータ6を停止させることを指示するための停止指令信号が含まれる。安全指令信号には他に、サーボモータ6や安全ドライバ2における異常発生の監視に関する監視指令信号を含んでも良い。
安全ドライバ2は、STO機能の実行や監視結果に関する情報を、通信線8を介して安全PLC52に出力する。安全ドライバ2としては、ハードワイヤSTO機能を有するサーボドライバやインバータが好適に用いられる。
【0019】
安全ドライバ2は、標準制御時において、標準PLC51から動作指令として受信したコマンドに基づいてサーボモータ6に与える駆動信号を生成するPWM発生回路21(駆動信号発生回路)を備える。生成された駆動信号(PWM信号)は、サーボドライバが通常備えるゲート駆動回路23やインバータ部24などを含む駆動信号経路を介して、サーボモータ6に出力される。具体的には安全ドライバ2は、サーボモータ6の動作が動作指令の値に追従するように、サーボモータ6に駆動電流を供給する。この供給電流として交流電源から安全ドライバ2に対して送られる交流電力を利用することが好ましい。安全ドライバ2としては、三相交流を受けるタイプのもの、単相交流を受けるタイプのものなど任意のものを利用できる。
一方で安全制御時には、安全ドライバ2は上記の駆動信号経路を伝達する駆動信号を遮断してサーボモータを停止させる。そのための機構が、PWM遮断回路221(221a,221b)を備える安全停止回路22である。すなわち安全停止回路22は、停止指示信号が入力されると、PWM発生回路21とサーボモータ6の間の駆動信号経路に配置されたPWM遮断回路221により駆動信号を遮断する。これによりサーボモータ6の駆動が停止し、安全が確保される。
なお本実施例では、回路の障害に対するフェイルセーフの観点からPWM遮断回路221が二重化されているので、2つのPWM遮断回路(221a,221b)が並行して駆動信号経路を遮断する。また、安全コントローラ3から出力される停止指示信号(第1の停止指示信号)と安全通信ユニット4から出力される停止指示信号(第2の停止指示信号)はいずれも二重化されており、それぞれの信号を停止信号入力側の端子が受け付け、フ
ォトカプラでノイズを低減してPWM遮断回路221に伝送する。
また、本発明に特徴的な構成として、安全停止回路22は安全通信ユニット4と安全コントローラ3に共有されている。
【0020】
上位ネットワーク5は、サーボシステム1を制御するために、ラダー言語等により記載されたプログラムと、操作者の操作にしたがって動作する制御装置であるPLC(Programmable Logic Controller)を含む。本実施例の上位ネットワーク5には安全PLC52
および標準PLC51が含まれる。標準PLC51は、駆動装置が通常有する機能を発揮させるための標準制御を行う標準入出力を有する。また安全PLC52は、STO機能を発揮させるための安全制御を行う安全入出力を有する。標準制御と安全制御をともに実行可能な、両者を兼用したPLCを用いても良い。
安全通信ユニットとPLCとの間は、データの通信速度や精度が高度に保証された安全通信を実現可能な、通信線8で接続されている。安全通信としては製造現場での実績があるフィールドネットワークなどが利用される。例えば、ETG(EtherCAT Technology Group)が推進するEtherCAT(Ethernet for Control Automation Technology:登
録商標)の技術を用いたFSoE(Safety over EtherCAT)が好適に利用される。
【0021】
安全コントローラ3は、制御信号線7を介して安全ドライバ2と直接的に接続されており、この接続はワイヤード接続またはハードワイヤ接続とも呼ばれる。
安全コントローラ3は、緊急時に付近にいる操作者が使用可能な停止指示の入力手段として、非常停止スイッチ31を備える。安全コントローラ3はまた、操作者の入力を受け付ける安全入力部32,全体を制御する制御部33,停止指示信号を出力する安全出力部34を備える。
制御部は、安全入力部32が操作者による非常停止スイッチ31の押下を検出すると、二系統(31a,31b)の停止指示信号をパラレルに生成し、安全出力部34から制御信号線7を介して安全ドライバ2に出力する。安全出力部34と安全ドライバ2の間のワイヤード接続は、両者を直結する高速な接続方式であり、通信線8による安全通信接続と比べても応答速度が速い。そのため操作者が安全コントローラ3を用いて停止処理を行った場合、非常停止スイッチ31の押下から少ないタイムラグで停止指示信号を伝達でき、安全ドライバ2の安全停止回路22における駆動電流遮断が迅速に実行される。
安全コントローラ3は通常、製造現場において、駆動装置(またはそれを含む設備)の付近に設置される。安全コントローラ3としては、例えばオムロン社のG9SPシリーズなど、スタンドアロン型のセーフティコントローラが好適に用いられる。非常停止スイッチ31は操作者が使用する停止指示の入力手段であり、操作者が押下可能なキノコ型のスイッチ等を利用できる。ただしスイッチ以外の入力手段を用いてもよい。本実施例では、フェイルセーフの観点から、非常停止スイッチ31および安全出力部34からの出力系統が二重化されている。すなわち非常停止スイッチ31が押下されると、二重化された信号がパラレルに出力されて、安全出力部34から二系統で信号が出力され、2つのワイヤード停止信号出力端子(341a,341b)から停止指令信号が出力される。
【0022】
安全通信ユニット4は、安全ドライバ2に信号を出力する安全出力部41と全体を制御する制御部42を備え、上位ネットワークとの間で通信線8を介した安全通信を行うユニットである。安全通信ユニットが安全PLC52から駆動装置をSTO機能によって停止させるような指示を受けると、制御部42は、安全通信を介した入力の有効/無効判定を行い、有効と判定された場合に停止指示信号を生成する。安全出力部41は、生成された停止指示信号を安全ドライバ2に出力する。本実施例の安全出力部41は、フェイルセーフの観点から、安全PLC52からの1回の指示に対して、2つの通信停止信号出力端子(411a,411b)から2系統の信号出力を行う。なお安全出力部41は、信号と内部回路を絶縁するためのフォトカプラを備えている。
安全通信ユニット4は、安全ドライバ2に組み込み可能な基板として構成されても良い
。その場合、安全通信ユニット4は、安全ドライバ2と一体として用いられる。組み込み方法として例えば、安全ドライバ2の筐体に設けられたスロットに安全通信ユニット4を取り付ける方法がある。また、安全通信ユニット4は、安全ドライバ2と接続され協調的に動作して安全制御を行っても良い。
図2においては標準PLC51から安全ドライバ2に与えられる標準制御コマンドが省略されているが、標準PLC51から通信線8を介して安全ドライバ2に動作指令信号を入力しても良いし、標準制御コマンドについても安全通信ユニット4が仲介しても良い。安全通信ユニット4としては、FSoE通信機能と安全出力機能を有するユニットが好適である。
【0023】
サーボモータ6は機械装置(例えば、産業用ロボットのアームや搬送装置)に組み込まれ、駆動信号に基づいて機械装置を稼働させる。
サーボモータ6として例えば、ACサーボモータを利用できる。サーボモータ6には、サーボモータ6の動作を検出してフィードバック信号を生成し、安全ドライバ2に送信する、エンコーダ(不図示)が取り付けられていても良い。検出されたフィードバック信号は、たとえばサーボモータ6の回転軸の回転位置(角度)についての位置情報、その回転軸の回転速度の情報を含む。図中には一つのサーボモータ6が示されているが、実際には安全ドライバ2によって多数のサーボモータまたは駆動装置が駆動され、協調動作する。
【0024】
(処理フロー)
図3のフローチャートを参照しつつ、本実施例において、安全ドライバ2が動作するときの処理フローを説明する。
製造現場において安全ドライバ2を含むサーボシステム1がスタートアップ処理により起動したのち、シーケンスによるサーボ制御が行われる。サーボ制御が行われている間、本フローに示すSTO機能の実行に関する処理が所定の周期で繰り返し実行される。
ステップS101において、安全停止回路22が停止指令信号を受信した場合(ステップS101=YES)、ステップS102において、安全停止回路22が駆動信号を遮断する。すなわち、安全停止回路22に入力された停止指令信号が安全コントローラ3のワイヤード停止信号出力端子(341a,341b)から出力された場合、安全ドライバ2の端子が信号を受信し、それぞれPWM遮断回路221a,221bに伝送されてSTO機能が実行される。また、停止指令信号が安全通信ユニット4の通信停止信号出力端子(411a,411b)から出力された場合、安全ドライバ2の端子が信号を受信し、それぞれPWM遮断回路221a,221bに伝送されて遮断が実行される。
駆動信号経路が遮断されると、仮にPWM発生回路21が駆動信号の出力を続けたとしても、サーボモータ6によるトルクの出力が停止することになる(ステップS103)。
一方、S101において停止指令信号が受信されていない場合(S101=NO)、この回のフローは終了し(END)、所定の期間が経過後、次回のフローに入る。
【0025】
上記のように、本実施例に係るサーボシステム1においては、安全コントローラ3から出力された停止指示信号と安全通信ユニットから出力された停止指示信号が、ともに、安全ドライバ2の内部の安全停止回路22によって処理されSTO機能が実行される。したがって、安全停止回路22に関する部品点数を削減できるため、装置製造コストの低減やユニットの小型化などが可能になる。
【0026】
[変形例]
図4を用いて、実施例1の変形例に係るサーボシステム1について説明する。
図2と同じ構成については同じ符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0027】
本変形例の特徴は、安全通信ユニット4が安全ドライバ2にアドインとして組み込まれて構造的に一体化し、安全通信部を構成している点にある。そのため、安全通信部の安全出力部41から出力される停止指示信号は、通信停止信号出力端子411の代わりに安全
ドライバ2内部の結線を介して、安全ドライバ2の安全停止回路に入力される。
【0028】
上述したように、先行して普及しているワイヤード方式のSTO機能を有するサーボシステム1に、通信方式のSTO機能を追加したいという要望があった。そこで本変形例のサーボシステム1によれば、従来から使用されていた安全ドライバ2において、基板を追加して結線する等のアドオン処理により、安全PLC52との安全通信を用いた通信方式のSTO機能を利用できるようになる。その結果、装置の設置面積を増大させることなく、簡易にサーボシステム1の安全性を高めることができる。
【0029】
[実施例2]
本発明の実施例2に係るサーボシステム1について、実施例1との違いを中心として説明する。実施例1と同じ部分については、同じ符号を付して説明を簡略化する。
【0030】
まず前提として、安全ドライバ2のEDM(External Device Monitoring:外部出力監視)機能について述べる。
図5に示すサーボシステム1において、安全ドライバ2はEDM出力部27を備えている。なお、
図5では
図4と同様に、安全通信ユニット4が安全ドライバ2に組み込まれて安全通信部を構成しているが、
図2と同様な安全通信ユニット4を用いても構わない。また、
図5では制御部42および安全出力部41に代えて、二重化された安全制御部43(43a,43b)と安全出力部44(44a,44b)が備えられているが、この構成に限られない。
安全ドライバ2の第1のEDM出力部27は、安全出力を常時監視して外部機器モニタとして機能する。すなわち、第1のEDM出力部27は、PWM遮断回路221によって駆動信号経路が遮断されているかどうかを検出し、遮断されていればEDM信号をEDM出力端子271から安全コントローラ3に出力する。
本図の安全コントローラ3はEDM信号を受信するためのEDM監視入力部35を備える。EDM監視入力部にEDM信号が入力されると、制御部33は、駆動信号経路が遮断状態にあることをランプ等の提示手段により提示する。これにより、安全ドライバ2中の遮断状態を操作者に知らせて、緊急事態対応や装置のリセット処理等の適切な対応を促すことができる。
【0031】
ここで
図5に示したのは、実施例1のサーボシステム1に単純にEDM機能を付加したものである。このとき、安全コントローラ3からの停止指示信号(第1の停止指示信号)と安全通信ユニット4からの停止指示信号(第2の停止指示信号)それぞれによりSTO機能が実行された場合について検討する。
まず、操作者により安全コントローラ3の非常停止スイッチ31が押下され、ワイヤード停止信号出力端子341から停止指示信号が出力され、安全停止回路22が動作した場合について検討する。駆動信号を常時監視している制御部26は、PWM遮断回路221が駆動信号経路を遮断している遮断状態を検出すると、第1のEDM出力部27にEDM出力端子271からEDM信号を出力させる。これにより安全コントローラ3は必要な後処理を実施できる。
一方、安全PLC52からの指令にしたがって安全通信ユニット4の安全出力部(44a,44b)が停止指示信号を出力して安全停止回路22が動作した場合も、制御部26は遮断状態を検出し、第1のEDM出力部27から安全コントローラ3にEDM信号を出力させる。その結果、非常停止スイッチ31が押下されていないにも関わらず安全コントローラ3に駆動信号経路が遮断状態にあることが提示されるので、操作者による停止原因の究明や、装置状態のリセットおよび復帰処理などの事後対応に影響を与える。
【0032】
(装置構成)
上記の問題を踏まえ、
図6に、本実施例におけるサーボシステム1の構成を示す。上記各図と同じ構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
図6に示す安全通信ユニット4は、第2のEDM出力部45を備える。安全通信ユニット4はまた、2系統の安全制御部(43a,43b)それぞれに対応する、2つのワイヤード入力モニタ部(46a,46b)を備える。
【0033】
かかる構成において、安全通信ユニット4が安全ドライバ2に組み込まれると、第2のEDM出力部45は、第1のEDM出力部27の機能を無効化し、その機能を引き継ぐ。すなわち、従来は第1のEDM出力部27が制御部26を介してPWM遮断回路221の遮断状態かどうかを監視し、遮断状態が確認されるとEDM監視入力部35に出力していた。
一方、
図6の構成では、安全通信ユニット4のワイヤード入力モニタ部46a,46bは、PWM遮断回路221a,221bに安全コントローラ3の安全出力部から出力される停止指示信号(第1の停止指示信号)を監視しており、停止指示信号出力があった場合はそのことを検知して、安全制御部43a,43bに信号を出力する。そして、第2のEDM出力部45は、安全通信ユニットの安全制御部43a,43bにより安全コントローラ3の安全出力部に起因して駆動信号経路が遮断状態にあることを認識すると、第1のEDM出力部27の代わりにEDM信号を出力して、EDM出力端子271を経由して、安全コントローラ3のEDM監視入力部35に入力させる。このように、
図6の構成において安全コントローラ3からの停止指示信号に従ってSTO機能が実施された場合、第2のEDM出力部45によってEDM信号が出力される。
【0034】
一方、安全PLC52からの指令によりSTO機能が実施される場合、安全通信ユニット4の安全制御部43a,43bが入力の有効判定を行って停止指示信号(第2の停止指示信号)を生成し、安全出力部44a,44bが停止指示信号を出力する。したがって安全制御部43a,43bは、PWM遮断回路221が遮断状態にある場合に、ワイヤード方式と通信方式のいずれの側から停止指示信号が出力されたのかを把握しており、必要に応じて安全PLC52に遮断状態に関する情報を送信する。
【0035】
上記のように、本実施例に係るEDM機能を有するサーボシステム1においては、停止指示信号が安全コントローラ3から出力された場合は、安全コントローラ3にEDM信号が出力され、停止指示信号が安全PLC52から安全通信ユニット4を介して出力された場合は、安全コントローラ3にEDM信号が出力されない。したがって、駆動信号経路の遮断状態を操作者に適切に通知できる。
【0036】
[変形例]
上記の説明では、安全ドライバ2に第1のEDM出力部27が存在するものとしていた。しかし、安全通信ユニット4が有する第2のEDM出力部45がEDM機能を実行することを前提として、安全ドライバ2に第1のEDM出力部27を設けない構成としても良い。この場合も上記の説明と同様に、安全通信ユニット4が安全ドライバ2に組み込まれた(または安全ドライバ2と接続された)場合に、第2のEDM出力部45が駆動信号経路の遮断状態と、停止指示信号の出力元を検出し、EDM信号の出力先を決定する。
本変形例の構成によれば、安全ドライバ2における部品点数の削減やコスト低減という効果が得られる。