特許第6772925号(P6772925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6772925燃焼装置及びガスタービンエンジンシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772925
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】燃焼装置及びガスタービンエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/30 20060101AFI20201012BHJP
   F02C 3/22 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   F23R3/30
   F02C3/22
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-60962(P2017-60962)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162752(P2018-162752A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年11月8日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「エネルギーキャリア」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 正宏
(72)【発明者】
【氏名】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】水谷 琢
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 司
(72)【発明者】
【氏名】藤森 俊郎
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/082359(WO,A1)
【文献】 特表2003−530501(JP,A)
【文献】 特開2012−255420(JP,A)
【文献】 特開平02−055835(JP,A)
【文献】 特開平09−173787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 3/22
F02C 3/24
F02C 7/143
F02C 7/16
F23R 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機で圧縮された燃焼用空気と燃料用アンモニアとを燃焼室内で燃焼させる燃焼装置であって、
前記燃焼用空気の圧縮過程あるいは圧縮前に前記燃料用アンモニアを噴射し、前記燃焼用空気を冷却するアンモニア噴射部を備え
前記圧縮機が静翼と動翼とを備え、
前記アンモニア噴射部は、前記燃料用アンモニアを前記静翼に設けた噴射孔から前記燃焼用空気に前記燃料用アンモニアを噴射し、
前記圧縮機が、複数の前記静翼が環状に配列されてなる静翼列を前記燃焼用空気の流れ方向に複数備え、
いずれかの前記静翼列に含まれる前記静翼に前記噴射孔が設けられ、前記噴射孔が設けられた前記静翼が含まれる前記静翼列よりも前記燃焼用空気の流れ方向の上流側に配置された前記静翼に前記燃料用アンモニアを供給してから回収し、回収した前記燃料用アンモニアを前記噴射孔から噴射する
ことを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記アンモニア噴射部は、液体の前記燃料用アンモニアを噴射することを特徴とする請求項記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記アンモニア噴射部は、前記燃料用アンモニアの噴射量を調整することにより、前記燃焼室の下流における窒素酸化物の濃度を調整する窒素酸化物濃度調整部を備えることを特徴とする請求項1または2記載の燃焼装置。
【請求項4】
請求項1〜いずれか一項に記載の燃焼装置を備えることを特徴とするガスタービンエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置及びガスタービンエンジンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ガスタービン等の圧縮機を備える装置において、圧縮機に供給される吸気中に噴霧を行うことにより、吸気の温度を低下させる構成が開示されている。このように圧縮機への吸気を冷却することによって、圧縮機を備える装置を含むシステム全体の効率を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−236024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、吸気中に噴霧される液体は水である。しかしながら、水が確保し難い地域では、水を噴霧することによって圧縮機への吸気を冷却することは困難である。また、水であってもカルシウム分を含む硬水では、長期間の水の噴霧によって圧縮機の内部等にスケールが発生し、圧縮機の動作不良が生じる可能性がある。このため、水を確保できる地域であっても、硬水が一般的に用いられている地域では水処理に高いコストが必要となるため、水を圧縮機への吸気中に噴霧することは難しい。
【0005】
一方で、近年においては、アンモニアを燃料として燃焼させる燃焼装置が提案されている。このような燃焼装置では、液体で貯蔵されたアンモニアを気化させてから、燃焼室に供給している。このため、アンモニアを気化させるためのエネルギが必要となる。しかしながら、アンモニアを気化させるためのエネルギの使用は、燃焼装置を含むシステム全体の効率向上の妨げとなっている。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、燃料用アンモニアを燃料として燃焼させる燃焼装置及びガスタービンエンジンシステムにおいて、水を用いることなく燃焼用空気を冷却あるいは燃焼用空気の冷却に用いる水の量を削減し、かつ燃料用アンモニアを気化させるために使用するエネルギ量を削減するとともに、圧縮機動力を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、圧縮機で圧縮された燃焼用空気と燃料用アンモニアとを燃焼室内で燃焼させる燃焼装置であって、上記燃焼用空気の圧縮過程あるいは圧縮前に上記燃料用アンモニアを噴射し、上記燃焼用空気を冷却するアンモニア噴射部を備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記圧縮機が静翼と動翼とを備え、上記アンモニア噴射部が、上記燃料用アンモニアを上記静翼に設けた噴射孔から上記燃焼用空気に上記燃料用アンモニアを噴射するという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記圧縮機が、先に上記燃焼用空気を圧縮する低圧圧縮機と、上記低圧圧縮機で圧縮された上記燃焼用空気をさらに圧縮する高圧圧縮機と、上記低圧圧縮機と上記高圧圧縮機とを接続するダクトとを備え、上記アンモニア噴射部が、上記ダクトにて上記燃焼用空気に上記燃料用アンモニアを噴射するという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1〜3いずれかの発明において、上記アンモニア噴射部が、液体の上記燃料用アンモニアを噴射するという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記アンモニア噴射部が、上記燃料用アンモニアの噴射量を調整することにより、上記燃焼室の下流における窒素酸化物の濃度を調整する窒素酸化物濃度調整部を備えるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、ガスタービンエンジンシステムであって、上記第1〜第5いずれかの発明である燃焼装置を備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃焼室において燃料用アンモニアの燃焼に用いられる燃焼用空気が、圧縮過程あるいは圧縮前に、上記燃料用アンモニアが噴射されることにより冷却される。このため、本発明においては、水を用いることなく燃焼用空気の冷却を行うことができる。また、水による燃焼用空気の冷却を併用する場合であっても水の使用量を削減することができる。また、燃焼用空気により燃料用アンモニアが温められるため、燃料用アンモニアを気化させるために必要となるエネルギ量を削減することができる。したがって、本発明によれば、燃料用アンモニアを燃料として燃焼させる燃焼装置及びガスタービンエンジンシステムにおいて、水を用いることなく燃焼用空気の冷却を行うあるいは燃焼用空気の冷却に用いる水の量を削減しかつ燃料用アンモニアを気化させるために使用するエネルギ量を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態におけるガスタービンエンジンシステムの全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態におけるガスタービンエンジンシステムが備える圧縮機の一部を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態におけるガスタービンエンジンシステムの変形例が備える圧縮機の一部を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態におけるガスタービンエンジンシステムの変形例が備える圧縮機の一部を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態におけるガスタービンエンジンシステムの変形例が備える圧縮機の一部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る燃焼装置及びガスタービンエンジンシステムの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
図1は、本実施形態に係るガスタービンエンジンシステム1の全体構成を示すブロック図である。この図に示すように、本実施形態に係るガスタービンエンジンシステム1は、ガスタービンエンジン2と、燃料用アンモニア供給系3(アンモニア噴射部)と、天然ガス供給系4と、還元触媒チャンバ5とを備えている。なお、本実施形態においては、ガスタービンエンジン2の後述する圧縮機2aと、燃料用アンモニア供給系3と、天然ガス供給系4とが、本発明の燃焼装置を構成している。このようなガスタービンエンジンシステム1は、発電機Gの駆動源であり、燃料用アンモニアを圧縮された燃焼用空気を用いて燃焼させることにより回転動力を発生させる。
【0018】
ガスタービンエンジン2は、圧縮機2aと、燃焼器2b(燃焼室)と、タービン2cとを備えている。圧縮機2aは、外気から取り込んだ燃焼用空気を所定圧まで圧縮して圧縮空気を生成する。このような圧縮機2aは、生成した圧縮空気を燃焼器2bに供給する。図2は、圧縮機2aの一部を模式的に示す断面図である。この図に示すように、圧縮機2aは、ケーシングに固定されて移動することのない静翼2a1と、タービン2cに連結された軸部に固定されて軸部の軸芯を中心として回転移動される動翼2a2とを備えている。静翼2a1は、軸部を中心としてケーシングの内壁面に沿って環状に配列されることによって1つの静翼列を構成している。図2では、このような静翼列が軸部の軸芯に沿う方向に一定間隔で4列形成された構成を図示している。動翼2a2は、軸部を中心として軸部の外壁面に環状に配列されることによって1つの動翼列を構成している。このような動翼列が静翼列同士の間に配置されている。つまり、圧縮機2aでは、静翼列と動翼列とが軸部が延びる方向に交互に配列されている。また、本実施形態では、燃焼用空気の流れ方向の最も下流側に位置する静翼列を除く静翼列を構成する静翼2a1の後縁側には、静翼2a1の内部から下流側に向けて燃料用アンモニアを噴射するための噴射孔2a3が複数形成されている。
【0019】
燃焼器2bは、燃料用アンモニア供給系3から供給される気化された燃料用アンモニアを圧縮機2aで生成された圧縮空気を用いて内部(燃焼室)で燃焼させる。燃焼器2bは、このような燃焼により得られた燃焼ガスをタービン2cに供給する。タービン2cは、燃焼器2bから供給される燃焼ガスを駆動ガスとして用いることにより回転動力を発生する。このタービン2cは、圧縮機2a及び発電機Gと軸結合しており、自らの回転動力によって圧縮機2a及び発電機Gを回転駆動する。このようなタービン2cは、動力回収した後の燃焼ガスを還元触媒チャンバ5に向けて排気する。
【0020】
燃料用アンモニア供給系3は、アンモニア供給部3aと、配管3bと、分配機構3cと、気化器3dとを備えている。アンモニア供給部3aは、液体の燃料用アンモニアを貯留するタンクやタンクに貯留された燃料用アンモニアを送出するポンプ等を備え、不図示の制御装置の制御の下、所定量の燃料用アンモニアを燃焼器2bに向けて送り出す。
【0021】
燃料用アンモニア供給系3の配管3bは、図1に示すように、アンモニア供給部3aと燃焼器2bとに接続されており、気化器3dを介して燃焼器2bに燃料用アンモニアを案内する経路と、気化器3dを介さずに圧縮機2aの静翼2a1に燃料用アンモニアを案内する経路とを有している。また、配管3bは、気化器3dを介して燃焼器2bに燃料用アンモニアを案内する経路から分岐して、燃料用アンモニアを還元触媒チャンバ5の上流の排気ガス配管に案内する経路も有している。
【0022】
本実施形態では、燃料用アンモニア供給系3は、配管3bの気化器3dを介さずに圧縮機2aの静翼2a1に燃料用アンモニアを案内する経路を用いて、圧縮機2aの静翼2a1の内部に液体の燃料用アンモニアを供給し、静翼2a1に設けられた噴射孔2a3から燃焼用空気の流路中に液体の燃料用アンモニアを噴射する。このように燃料用アンモニアは、燃焼用空気に液体の燃料用アンモニアを噴射することにより圧縮過程の燃焼用空気を冷却する。また、本実施形態においては、燃料用アンモニア供給系3は、圧縮機2aの静翼2a1を介して、液体の燃料用アンモニアを燃焼用空気に噴射する。
【0023】
分配機構3cは、第1バルブ3eと、第2バルブ3fとを備えている。第1バルブ3eは、配管3bの気化器3dを介して燃焼器2bに燃料用アンモニアを案内する経路の途中部位であって、気化器3dの上流側に配置されている。この第1バルブ3eは、不図示の制御装置によって開度が調整され、アンモニア供給部3aから送出された燃料用アンモニアの気化器3dへの供給量を調整する。第2バルブ3fは、配管3bの気化器3dを介さずに圧縮機2aの静翼2a1に燃料用アンモニアを案内する経路の途中部位に配置されている。この第2バルブ3fは、不図示の制御装置によって開度が調整され、アンモニア供給部3aから送出された燃料用アンモニアの静翼2a1への供給量を調整する。このような分配機構3cは、第1バルブ3e及び第2バルブ3fの開度に合わせて燃焼器2bに供給する燃料用アンモニアの一部を静翼2a1に分配する。
【0024】
気化器3dは、第1バルブ3eを介してアンモニア供給部3aから供給された液体の燃料用アンモニアを気化させ、気体の燃料用アンモニアを生成する。この気化器3dで生成された燃料用アンモニアは、燃焼器2bに供給されると共に、一部が配管3bを介して還元触媒チャンバ5に供給される。
【0025】
天然ガス供給系4は、天然ガス供給部4aと、配管4bとを備えている。天然ガス供給部4aは、液化天然ガスを貯蔵するタンク、タンクに貯蔵された液化天然ガスを送り出すポンプ、及び、液化天然ガスを気化する気化器等を備えている。この天然ガス供給部4aは、不図示の制御装置の制御の下、所定量の天然ガスを燃焼器2bに向けて送り出す。配管4bは、天然ガス供給部4aと燃焼器2bとに接続されており、天然ガス供給部4aから送り出された天然ガスを燃焼器2bに案内する。
【0026】
還元触媒チャンバ5は、内部に還元触媒が充填されており、燃焼ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を還元処理することにより窒素(N)に還元する。この還元触媒チャンバ5は、内部に収容した還元触媒と、燃料用アンモニア供給系3の配管3bを介して供給される燃料用アンモニアとの協働によって窒素酸化物(NOx)を還元処理する。なお、還元触媒チャンバ5に供給される燃料用アンモニアは、燃料として使用されるものではなく、還元用のアンモニアとして消費されることになる。
【0027】
このような本実施形態のガスタービンエンジンシステム1の動作の一例について説明する。
【0028】
例えば、ガスタービンエンジンシステム1を停止状態から起動する場合には、天然ガス供給系4から天然ガスが燃焼器2bに供給される。燃焼器2bに供給された天然ガスは、燃焼器2b内の空気と混合されると共に、不図示の着火装置により着火されることで燃焼する。天然ガスが燃焼することにより発生した燃焼ガスがタービン2cに供給されると、回転動力が生成され、圧縮機2aが駆動される。圧縮機2aが駆動されると、圧縮機2aにおいて圧縮空気が生成され、この圧縮空気が燃焼器2bに供給されることにより、燃焼器2bでの燃焼が促進される。これによってガスタービンエンジンシステム1が起動される。なお、天然ガスに換えてあるいは天然ガスと共に、燃料用アンモニア供給系3から気化器3dを通じて燃料用アンモニアを燃焼器2bに供給することで、ガスタービンエンジンシステム1を起動するようにしても良い。
【0029】
ガスタービンエンジンシステム1が起動されると、不図示の制御装置の制御の下、燃料用アンモニア供給系3から燃焼器2bに必要量の燃料用アンモニアが天然ガスに換えてあるいは天然ガスと共に供給される。アンモニア供給部3aから送り出された液化状態の燃料用アンモニアの一部は、圧縮機2aを介することで気化され、その後に燃焼器2bに供給される。アンモニア供給部3aから送り出された液化状態の燃料用アンモニアの残部は、気化器3dによって気化され、その後に燃焼器2bに供給される。燃焼器2bに供給された燃料用アンモニアは、圧縮空気と共に燃焼する。そして、燃料用アンモニアが燃焼することにより発生した燃焼ガスがタービン2cに供給され、タービン2cで圧縮機2a及び発電機Gを駆動する回転動力が生成される。燃焼ガスは、タービン2cでエネルギが回収された後、還元触媒チャンバ5によって還元処理がされてから排気される。
【0030】
また、本実施形態のガスタービンエンジンシステム1では、燃料用アンモニア供給系3によって、圧縮機2aの静翼2a1に設けられた噴射孔2a3から、圧縮過程の燃焼用空気に液体の燃料用アンモニアが噴射される。このように噴射された燃料用アンモニアは、圧縮過程の燃焼用空気と比較して低温である。このため、燃焼用空気は燃料用アンモニアが噴射されることによって冷却される。さらに、本実施形態では、液体の燃料用アンモニアが噴射されるため、燃料用アンモニアの気化潜熱によって燃焼用空気をより冷却することが可能となる。このように圧縮過程の燃焼用空気が冷却されることによって、その後の圧縮に必要なエネルギを削減することができる。なお、燃焼用空気に噴射された燃料用アンモニアは、圧縮空気と共に燃焼器2bに供給され、燃料として消費される。
【0031】
以上のような本実施形態のガスタービンエンジンシステム1においては、燃焼器2bにおいて燃料用アンモニアの燃焼に用いられる燃焼用空気が、圧縮過程において、燃料用アンモニアが噴射されることにより冷却される。このため、本実施形態のガスタービンエンジンシステム1においては、水を用いることなく燃焼用空気の冷却を行うことができる。また、水による燃焼用空気の冷却を併用する場合であっても水の使用量を削減することができる。また、燃焼用空気との熱交換により燃料用アンモニアが温められて気化するため、燃料用アンモニアを気化させるために必要となるエネルギ量を削減することができる。さらに、水は燃焼器2bにおいて燃焼の阻害物質であるが、本実施形態においては水に換えて燃焼器2bで燃料となる燃料用アンモニアを噴射するため、燃焼器2bでの燃焼状態を安定させることができる。また、水の付着が原因となるスケールの発生を防止することができる。
【0032】
なお、アンモニアは、天然ガスと比較して燃焼速度が遅い。このため、燃料用アンモニアが混合した圧縮空気が燃焼器2bに供給される場合であっても、天然ガスが混合した圧縮空気を燃焼器2bに供給する場合よりも逆火等が発生するリスクを小さく抑えることができる。
【0033】
また、本実施形態のガスタービンエンジンシステム1においては、圧縮機2aにて燃料用アンモニアを燃焼用空気に噴射するため、噴射箇所から燃焼器2bまでの距離が長い。このため、噴射された燃料用アンモニアが燃焼器2bに到達するまでに、十分に燃料用アンモニアが燃焼用空気と混合され、局所的に燃料用アンモニアの濃度が濃い領域が燃焼器2b及び燃焼器2bの近傍で発生せず、逆火等のリスクをより低減することが可能となる。また、圧縮機2aでは燃焼用空気の流速が速いことから、このような箇所で燃料用アンモニアを噴射することで、噴射された燃料用アンモニアが燃焼器2bに到達するまでに、十分に燃焼用空気と混合させることができる。
【0034】
また、本実施形態のガスタービンエンジンシステム1においては、圧縮機2aにて燃料用アンモニアを燃焼用空気に噴射するため、噴射された燃料用アンモニアが圧縮機2aにて燃焼用空気と共に圧縮される。このため、アンモニア供給部3aに設けられる燃料ポンプを小型化することができる。
【0035】
また、一部の圧縮空気は、圧縮機2aとタービン2cとを接続する軸部等の冷却に用いられ、燃焼器2bに供給されずに、燃焼器2bの下流側に流れる。このような圧縮空気に混合された燃料用アンモニアは、還元触媒チャンバ5にて脱硝用の用途に消費されるため、無駄になることはない。
【0036】
また、圧縮空気の一部が燃焼器2bに供給されずに燃焼器2bの下流に流れ、この圧縮空気に含まれる燃料用アンモニアが脱硝用に用いられるため、燃焼用空気への燃料用アンモニアの噴射量を調整することにより、燃焼器2bの下流側における窒素酸化物の濃度の調整を行うことができる。つまり、分配機構3cを本発明の窒素酸化物濃度調整部として機能させ、燃焼用空気への燃料用アンモニアの噴射量を調整することにより、燃焼器2bの下流側における窒素酸化物の濃度の調整するようにしても良い。
【0037】
また、本実施形態のガスタービンエンジンシステム1においては、燃料用アンモニア供給系3が、圧縮機2aの静翼2a1を介して燃焼用空気に燃料用アンモニアを噴射している。このため、別途、燃料用アンモニアを噴射するノズル等を設置しなくても、燃焼用空気に対して燃料用アンモニアを噴射することができる。このため、ノズルを設置することによる圧力損失の増加を避けることができる。また、圧縮機2aの静翼2a1は、燃焼用空気の流路中に多数配置されている。このため、複数の静翼2a1から燃料用アンモニアを噴射することにより、燃焼用空気に対して均一に燃料用アンモニアを噴射し、燃焼用空気に意図しない温度ムラや濃度ムラが生じることを抑止することができる。このように濃度ムラが生じることが抑止されることにより、局所的に濃度が濃い領域が発生せず、逆火等のリスクをより低減することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態のガスタービンエンジンシステム1においては、液体の燃料用アンモニアを噴射することで燃焼用空気を冷却している。気化された燃料用アンモニアを噴射することにより燃焼用空気を冷却することも可能である。しかしながら、液体の燃料用アンモニアを燃焼用空気に噴射することで、液化アンモニアの潜熱を利用して燃焼用空気を冷却することができ、ガスタービンエンジンシステム1のシステム全体効率を向上させることができる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、燃料用アンモニアが内部に供給された静翼2a1は、全て噴射孔2a3から外部に燃料用アンモニアを噴射している。つまり、上記実施形態においては、燃料用アンモニアが供給されない静翼2a1を除いた残りの全ての静翼2a1から燃料用アンモニアが噴射される構成を採用している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、1つの静翼列を構成する静翼2a1のみに噴射孔2a3を設け、噴射孔2a3が形成された静翼2a1よりも上流側に配置された静翼2a1には、燃料用アンモニアを供給するが噴射せずに回収する構成としても良い。このような構成を採用した場合には、燃料用アンモニアが供給されるものの噴射されずに回収される静翼2a1の設置箇所では、静翼2a1を介して燃焼用空気と燃料用アンモニアとの間接的な熱交換が行われる。つまり、このような構成を採用することにより、間接的な熱交換による燃焼用空気の冷却と噴射による直接的な燃焼用空気の冷却との両方を行うことができる。
【0041】
また、図4に示すように、圧縮機2aが、燃焼用空気の流れ方向における上流側に配置されて先に燃焼用空気を圧縮する低圧圧縮機2dと、燃焼用空気の流れ方向における下流側に配置されて燃焼用空気をさらに圧縮する高圧圧縮機2eと、低圧圧縮機2dと高圧圧縮機2eとを接続するダクト2fとを備えた構成とすることもできる。このような場合には、燃料用アンモニア供給系3の配管3bが、ダクト2fの内部に挿入された噴射管3b1を備え、噴射管3b1に設けられたノズル孔3b2から燃料用アンモニアを燃焼用空気に噴射する構成を採用することも可能である。このような構成を採用することによって、圧縮機2aの静翼2a1に内部流路や噴射孔2a3を形成する必要がなくなるため、静翼2a1の構成を単純化することが可能となる。
【0042】
また、図5に示すように、上述の噴射管3b1を圧縮機2aに対して上流側に配置するようにしても良い。燃料用アンモニアの噴射直後の温度は、一般的に大気温度よりも遥かに低い。このため、圧縮前の燃焼用空気に燃料用アンモニアを噴射した場合であっても、燃焼用空気を冷却することができる。このような構成を採用する場合も圧縮機2aの静翼2a1に内部流路や噴射孔2a3を形成する必要がなくなるため、静翼2a1の構成を単純化することが可能となる。
【0043】
また、上記実施形態においては、本発明の燃焼装置を、ガスタービンエンジンシステム1に適用した例について説明した。しかしながら、本発明の燃焼装置は、ガスタービンエンジンシステム1にのみ適用可能なものではない。例えば、圧縮空気を燃料用アンモニアと混合して燃焼させる燃焼装置を備えるシステム等であれば、本発明の燃焼装置を適用することができる。
【0044】
また、上記実施形態においては、ガスタービンエンジンシステム1が天然ガス供給系4を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。気化器3dを備えるのであれば、天然ガス供給系4を備えない構成を採用することが可能である。
【0045】
また、上記実施形態においては、燃料用アンモニアだけでなく、天然ガスも燃焼器2bに供給可能な構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、天然ガスではないハイドロカーボンやその他の燃料を、上記実施形態の天然ガスの替わりに用いることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1……ガスタービンエンジンシステム
2……ガスタービンエンジン
2a……圧縮機
2a1……静翼
2a2……動翼
2a3……噴射孔
2b……燃焼器
2c……タービン
2d……低圧圧縮機
2e……高圧圧縮機
3……燃料用アンモニア供給系(アンモニア噴射部)
3a……アンモニア供給部
3b……配管
3c……分配機構(窒素酸化物濃度調整部)
3d……気化器
3e……第1バルブ
3f……第2バルブ
4……天然ガス供給系
4a……天然ガス供給部
4b……配管
5……還元触媒チャンバ
G……発電機
図1
図2
図3
図4
図5