特許第6772945号(P6772945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6772945ターボチャージャの異常判定装置及び制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772945
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ターボチャージャの異常判定装置及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/16 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   F02B39/16 F
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-85602(P2017-85602)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2018-184846(P2018-184846A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大蘆 嘉郎
【審査官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−240825(JP,A)
【文献】 特開2000−074794(JP,A)
【文献】 特開2007−310076(JP,A)
【文献】 特開2013−221429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気のエネルギを利用して吸気を過給するターボチャージャのタービンを収容するタービンハウジング及びコンプレッサを収容するコンプレッサハウジングのうちの少なくともタービンハウジングの振動値を取得する振動値取得部と、
前記振動値取得部の取得した前記振動値が予め設定された基準値以上である状態が予め設定された所定時間以上になった場合に、前記ターボチャージャに異常が生じた旨を判定する異常判定部と、を備える、ターボチャージャの異常判定装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記ターボチャージャに異常が生じた旨を判定した場合に、警報を発生する警報発生処理、及び前記エンジンの出力を低下させるエンジン出力低下処理の少なくとも一つをさらに実行する請求項1記載のターボチャージャの異常判定装置。
【請求項3】
エンジンの排気のエネルギを利用して吸気を過給するターボチャージャのタービンを収容するタービンハウジング及びコンプレッサを収容するコンプレッサハウジングのうちの少なくともタービンハウジングの振動値を取得する振動値取得部と、
前記振動値取得部の取得した前記振動値が予め設定された基準値以上である状態が予め設定された所定時間以上になった場合に、警報を発生する警報発生処理、及び前記エンジンの出力を低下させるエンジン出力低下処理の少なくとも一つを実行する制御部と、を備える、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャの異常判定装置及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排気のエネルギを利用して吸気を過給するターボチャージャが知られている(例えば特許文献1参照)。このようなターボチャージャは、タービンハウジングに収容されたタービンと、コンプレッサハウジングに収容されたコンプレッサと、タービン及びコンプレッサを接続するシャフトとを有しており、エンジンの排気のエネルギによってタービンが駆動し、このタービンが駆動すると、タービンにシャフトを介して接続されたコンプレッサが駆動して、吸気を過給する。
【0003】
また、上述した特許文献1には、コンプレッサを収容するコンプレッサハウジング(吸気側ハウジング)に衝撃センサを設け、この衝撃センサの検出値が標準値以上のときに異常信号を出力する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−321687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の技術を応用すれば、例えば、ターボチャージャに何等かの異常が生じてタービンハウジング及びコンプレッサハウジングが振動した場合に、衝撃センサによってコンプレッサハウジングの振動を検出し、この検出値が標準値以上のときに、ターボチャージャに異常が生じた旨を判定することができる。しかしながら、この技術の場合、異常振動ではない瞬間的な振動が生じた場合であっても、異常が生じた旨を判定してしまう。このため、ターボチャージャの異常を適切に判定できているとはいえない。このため、ターボチャージャに異常が生じた旨をユーザに適切に報知したり、エンジンを適切に制御したりすることも困難である。
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、その目的は、ターボチャージャの異常を適切に判定することができるターボチャージャの異常判定装置、及びターボチャージャに異常が生じた場合に、その旨をユーザに適切を報知したり、エンジンを適切に制御したりすることができる制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るターボチャージャの異常判定装置は、エンジンの排気のエネルギを利用して吸気を過給するターボチャージャのタービンを収容するタービンハウジング及びコンプレッサを収容するコンプレッサハウジングのうちの少なくともタービンハウジングの振動値を取得する振動値取得部と、前記振動値取得部の取得した前記振動値が予め設定された基準値以上である状態が予め設定された所定時間以上になった場合に、前記ターボチャージャに異常が生じた旨を判定する異常判定部と、を備える。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る制御装置は、エンジンの排気のエネルギを利用して吸気を過給するターボチャージャのタービンを収容するタービンハウジング及びコンプレッサを収容するコンプレッサハウジングのうちの少なくともタービンハウジングの振動値を取得する振動値取得部と、前記振動値取得部の取得した前記振動値が予め設定された基準値以上である状態が予め設定された所定時間以上になった場合に、警報を発生する警報発生処理、及び前記エンジンの出力を低下させるエンジン出力低下処理の少なくとも一つを実行する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るターボチャージャの異常判定装置によれば、ターボチャージャに何等かの異常が生じて、タービンハウジング及びコンプレッサハウジングが異常振動した場合において、タービンハウジング及びコンプレッサハウジングの少なくとも一方の振動値が基準値以上である状態が所定時間以上になった場合に、ターボチャージャに異常が生じた旨を判定することができる。これにより、異常振動ではない瞬間的な振動がタービンハウジング及びコンプレッサハウジングに生じた場合にターボチャージャに異常が生じた旨を判定してしまう、といった誤判定を抑制して、ターボチャージャの異常を適切に判定することができる。
【0010】
また、本発明に係る制御装置によれば、ターボチャージャに何等かの異常が生じて、タービンハウジング及びコンプレッサハウジングが異常振動した場合において、タービンハウジング及びコンプレッサハウジングの少なくとも一方の振動値が基準値以上である状態が所定時間以上になった場合に、警報を発生する警報発生処理、及び前記エンジンの出力を低下させるエンジン出力低下処理の少なくとも一つを実行することができる。これにより、ターボチャージャに異常が生じた場合に、その旨をユーザに適切に報知したり、エンジンを適切に制御したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るエンジンシステムの全体構成を示す模式図である。
図2】異常判定処理のフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1に係るターボチャージャの異常判定装置100(以下、異常判定装置100と略称する)について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように模式的に図示されており、各部材の厚みや幅、長さ等の比率は必ずしも実際の製品の比率と一致しているとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る異常判定装置100を備えるエンジンシステム1の全体構成を示す模式図である。なお、図1は、実施形態1及び実施形態2に共通の模式図となっている。エンジンシステム1は車両に搭載されている。エンジンシステム1は、エンジン5と、ターボチャージャ10と、各種センサ類(この具体例として図1では振動センサ30が例示されている)と、警報装置40と、制御装置50とを備えている。なお、これは後述するが、本実施形態に係る異常判定装置100は、制御装置50の機能によって実現されている。また、本実施形態では、エンジン5の一例として、ディーゼルエンジンを用いている。
【0014】
ターボチャージャ10は、タービン11と、コンプレッサ12と、シャフト13と、タービン側軸受14と、コンプレッサ側軸受15と、タービンハウジング16と、コンプレッサハウジング17とを備えている。なお、図1に図示されている軸線22は、シャフト13の軸線(中心軸を示す線)である。
【0015】
タービン11及びコンプレッサ12は、シャフト13によって接続されている。シャフト13は、タービン11の近傍に配置されたタービン側軸受14と、コンプレッサ12の近傍に配置されたコンプレッサ側軸受15とによって軸支されている。
【0016】
タービンハウジング16は、その内部にタービン11を収容している。コンプレッサハウジング17は、その内部にコンプレッサ12を収容している。タービンハウジング16には、排気スクロール部18及び排気出口19が設けられている。コンプレッサハウジング17には、吸気入口20及び吸気スクロール部21が設けられている。エンジン5から排出された排気(E)は、排気通路を通過して排気スクロール部18に流入し、次いで、タービン11に当接し、その後、排気出口19から排出される。コンプレッサハウジング17の吸気入口20には、ターボチャージャ10よりも上流側の吸気(A)が吸気通路を通過して流入する。
【0017】
タービン11は、排気スクロール部18から流入した排気のエネルギを受けて回転する。タービン11が回転すると、シャフト13を介してタービン11に接続されたコンプレッサ12も回転する。コンプレッサ12が回転することにより、コンプレッサ12は吸気を過給する。この過給された吸気は吸気スクロール部21から排出されて、吸気通路を通過してエンジン5に供給される。このようにしてターボチャージャ10は排気のエネルギを利用して吸気を過給している。
【0018】
振動センサ30は、ターボチャージャ10のタービンハウジング16及びコンプレッサハウジング17の少なくとも一方の振動の度合い(振動の程度)を検出できる箇所に配置されており、検出結果を制御装置50に伝える。制御装置50は、この振動センサ30の検出結果に基づいて、タービンハウジング16及びコンプレッサハウジング17の少なくとも一方の振動の度合いを示す指標値(以下、「振動値」と称する)を取得する。なお、本実施形態に係る振動センサ30は、一例として、タービンハウジング16に配置されている。このため、制御装置50は、タービンハウジング16の振動値を直接的に取得している。
【0019】
なお、振動センサ30の配置箇所として、例えばタービンハウジング16の近傍にある部材の所定箇所を用いてもよい。この所定箇所の具体例としては、タービン側軸受14及びコンプレッサ側軸受15を収容するベアリングハウジング(図示せず)のタービンハウジング16の近傍の箇所等を用いることができる。この場合においても、制御装置50は、タービンハウジング16の振動値を取得することができる。
【0020】
あるいは、振動センサ30は、コンプレッサハウジング17や、コンプレッサハウジング17の近傍にある部材の所定箇所(例えば、ベアリングハウジングのコンプレッサハウジング17の近傍の箇所)等に配置されていてもよい。この場合、制御装置50は、コンプレッサハウジング17の振動値を取得する。
【0021】
あるいは、振動センサ30は、タービンハウジング16及びコンプレッサハウジング17の両方の振動の度合いを検出できるように配置されていてもよい。例えば、振動センサ30をタービンハウジング16及びコンプレッサハウジング17の両方にそれぞれ配置することによって、タービンハウジング16及びコンプレッサハウジング17の両方の振動の度合いを検出することができる。
【0022】
振動センサ30としては、例えば、振動の度合いに応じた電圧値を出力する電圧出力型振動センサや、振動の度合いに応じた周波数値を出力する周波数出力型振動センサ等の、公知の振動センサを用いることができる。なお、本実施形態では、振動センサ30の一例として、電圧出力型振動センサを用いることとする。
【0023】
警報装置40は、制御装置50の指示を受けて警報を発生する装置である。このような機能を有するものであれば警報装置40の具体的な構成は特に限定されるものではなく、
例えば、警報として光を発する警報ランプや、音声を発するスピーカ、文字を表示するディスプレイ、あるいは、これらの組み合わせ等を用いることができる。本実施形態では、警報装置40の一例として、警報ランプを用いている。
【0024】
制御装置50は、各種の制御処理を実行するCPU51と、CPU51の動作に用いられるプログラムやデータ等を記憶する記憶部52とを有するマイクロコンピュータを備えている。なお、記憶部52としては、例えばROM、RAM等を用いることができる。制御装置50は、エンジン5の燃料噴射時期、燃料噴射量等を制御することでエンジンシステム1の動作を統合的に制御する統合制御装置としての機能を有している。
【0025】
また、本実施形態に係る制御装置50は、ターボチャージャ10の異常を判定する制御処理(「異常判定処理」と称する)を実行することで、ターボチャージャ10の異常判定装置100としての機能も有している。
【0026】
続いて、制御装置50の異常判定処理について説明する。図2は、異常判定処理のフローチャートの一例を示す図である。制御装置50は、図2のフローチャートを例えばエンジン5の始動開始と同時に実行する。なお、図2のフローチャートの各ステップは、制御装置50の具体的にはCPU51が実行する。
【0027】
まず、制御装置50は、振動センサ30の検出結果に基づいて、タービンハウジング16及びコンプレッサハウジング17の少なくとも一方の振動値(Vs)を取得する(ステップS10)。
【0028】
具体的には、前述したように、本実施形態に係る振動センサ30はタービンハウジング16の振動の度合いを検出する電圧出力型振動センサであるので、制御装置50は、この電圧出力型振動センサの検出結果を取得することで、タービンハウジング16の振動値(具体的には、タービンハウジング16の振動の度合いに応じた電圧値)を取得する。
【0029】
なお、仮に振動センサ30として周波数出力型振動センサを用いた場合、制御装置50は、この振動センサ30の出力する周波数を電圧に変換して、この変換された電圧値を取得してもよい。また、電圧降下の影響で、振動センサ30の出力電圧値が非常に小さい場合には、制御装置50は、増幅アンプ等を用いて振動センサ30の出力電圧を増幅させたものを取得してもよい。
【0030】
次いで制御装置50は、ステップS10で取得された振動値が予め設定された基準値(Vref)以上である状態が予め設定された所定時間以上になったか否かを判定する(ステップS20)。このステップS20の詳細は以下のとおりである。
【0031】
まず、振動値の基準値(Vref)について説明する。この基準値としては、例えば、タービンハウジング16の振動値がこの基準値以上になった場合に、ターボチャージャ10に何らかの異常な振動(異常振動)が生じたと考えられるような値を用いることができる。この基準値(Vref)の一例を挙げると、例えば、通常時(すなわちターボチャージャ10に異常が生じていない時)におけるタービンハウジング16の振動値(振動センサ30の出力電圧)よりも、所定値だけ高い値を、基準値として設定すればよいと考えられる。
【0032】
なお、この基準値は、ターボチャージャ10の容量等によって異なる値を採り得るものであるため、ターボチャージャ10の容量等に応じて適切な値を予め求めておき、記憶部52に記憶させておけばよい。
【0033】
また、ステップS20の所定時間は、異常振動ではない瞬間的な振動がタービンハウジング16に生じた場合に、これをターボチャージャ10の異常と誤って判定しないようにするために設けられたものである。そこで、この所定時間として、瞬間的な時間ではないと考えられる時間を予め求めておき、これを記憶部52に記憶させておけばよい。なお、所定時間の一例として、5秒程度の時間を挙げることができる。
【0034】
ステップS20でNOと判定された場合、制御装置50はステップS10を再度実行する。すなわち、ステップS20はYESと判定されるまで繰り返し実行される。
【0035】
ステップS20でYESと判定された場合(すなわち、振動値が基準値以上である状態が所定時間以上になった場合)、制御装置50は、ターボチャージャ10に異常が生じた旨を判定する(ステップS30)。具体的には、制御装置50は、ターボチャージャ10の特にタービン11、コンプレッサ12及びシャフト13(以下、これらを「回転部」と総称する)に異常が生じた旨を判定する。
【0036】
次いで制御装置50は、警報装置40に警報を発生させる警報発生処理、及び、エンジン5の出力を低下させるエンジン出力低下処理の少なくとも一つを実行する(ステップS40)。この一例として、本実施形態に係る制御装置50は、警報発生処理及びエンジン出力低下処理の両方を実行している。
【0037】
具体的には制御装置50は、警報発生処理において、警報装置40の一例としての警報ランプを点灯させる。これにより、ユーザはターボチャージャ10に異常が生じたことを知ることができる。また、制御装置50は、エンジン出力低下処理において、エンジン5の出力(具体的には回転数)をステップS40が実行される前よりも低下させる。
【0038】
また、制御装置50は、エンジン出力低下処理において、エンジン5の出力を所定の基準出力(具体的には基準回転数)以下になるまで低下させる。なお、制御装置50は、エンジン5の出力を低下させるにあたり、例えばエンジン5を停止させてもよい。ステップS40の後に制御装置50は、フローチャートの実行を終了する。
【0039】
なお、ステップS10を実行する制御装置50のCPU51は、本発明の「振動値取得部」としての機能を有する部材に相当する。ステップS30及びステップS40を実行する制御装置50のCPU51は、本発明の「異常判定部」としての機能を有する部材に相当する。
【0040】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。まず、本実施形態によれば、ターボチャージャ10に何等かの異常が生じて、タービンハウジング16が異常振動した場合において、このタービンハウジング16の振動値が基準値以上である状態が所定時間以上になったときに、ターボチャージャ10に異常が生じた旨を判定することができる(ステップS30)。具体的には、ターボチャージャ10の回転部に異常が生じた旨を判定することができる。これにより、異常振動ではない瞬間的な振動がタービンハウジング16に生じた場合にターボチャージャ10に異常が生じた旨を判定してしまう、といった誤判定を抑制しつつ、ターボチャージャ10の異常を判定することができる。したがって、ターボチャージャ10の異常を適切に判定することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、ターボチャージャ10に異常が生じた旨を判定した場合に警報を発生するので(ステップS40)、ターボチャージャ10に異常が生じた旨をユーザに適切に報知することができる。これにより、ユーザはターボチャージャ10に異常が生じた旨を早期に把握することができる。この結果、ユーザは、例えば修理工場に修理を依頼する等の適切な処理を施すことができる。これにより、より重大な故障が生じる前に
修理がなされることになるので、結果的に、修理コストの低減を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、ターボチャージャ10に異常が生じた旨を判定した場合にエンジン5の出力を低下させるので(ステップS40)、エンジン5を適切に制御することができる。具体的には、ターボチャージャ10に異常振動が生じた状態でエンジン5が高出力で運転することを抑制することができる。これにより、エンジン5に二次的な損傷が生じることを抑制することができるので、修理コストの低減を図ることができる。また、安全性を確保することもできる。
【0043】
なお、振動センサ30が、タービンハウジング16ではなく、コンプレッサハウジング17の振動の度合いを検出できる箇所に配置されている場合には、図2のステップS10において制御装置50は、コンプレッサハウジング17の振動の度合いを示す振動値を取得することになる。そして、制御装置50は、このコンプレッサハウジング17の振動値が基準値以上である状態が所定時間以上になった場合(ステップS20でYESの場合)に、ターボチャージャ10に異常が生じた旨を判定する(ステップS30)。
【0044】
この構成によれば、異常振動ではない瞬間的な振動がコンプレッサハウジング17に生じた場合にターボチャージャ10に異常が生じた旨を判定してしまう、といった誤判定を抑制しつつ、ターボチャージャ10の異常を判定することができる。この場合においても、ターボチャージャ10の異常を適切に判定することができる。
【0045】
あるいは、振動センサ30がタービンハウジング16及びコンプレッサハウジング17の両方にそれぞれ配置されている場合には、ステップS10において制御装置50は、タービンハウジング16の振動値(第1振動値と称する)及びコンプレッサハウジング17の振動値(第2振動値と称する)の両方を取得してもよい。そして、ステップS20において、制御装置50は、ステップS10で取得された第1振動値及び第2振動値のうち、一方の値が基準値(Vref)以上である状態が所定時間以上になった場合に、YESと判定してステップS30を実行してもよい。
【0046】
なお、タービンハウジング16やコンプレッサハウジング17の異常振動の具体例やエンジン5の二次的な損傷の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0047】
ターボチャージャ10においては、特にタービン11のタービン翼部分が高回転で共振を起こすことで、タービン翼の一部(すなわちタービン11の一部)が欠損する場合が考えられる。このようにタービン11の一部が欠損した場合、タービン側とコンプレッサ側との重量バランスが崩れる。この状態でタービン11が回転した場合、タービンハウジング16及びコンプレッサハウジング17が通常よりも大きく振動する(すなわち、異常振動する)。そして、この異常振動がエンジン5に伝わり、この状態でエンジン5が高出力で回転した場合、エンジン5の例えば燃料配管が大きな振動で損傷する等の二次的な被害が生じる可能性がある。
【0048】
これに関して、本実施形態によれば、タービン側とコンプレッサ側との重量バランスが崩れたことに起因してタービンハウジング16が異常振動した場合であっても、ステップS30において、ターボチャージャ10に異常が生じた旨を判定することができるとともに、ステップS40において、ユーザに異常を報知することができ、且つエンジン5の出力を低下させることができる。これにより、タービン側とコンプレッサ側との重量バランスが崩れた状態でターボチャージャ10が回転することに伴うエンジン5の二次的な被害を抑制することができる。
【0049】
また、タービン11の一部が欠損した場合、コンプレッサハウジング17よりもタービ
ンハウジング16の方が先に異常振動を起こす傾向がある。そこで、振動センサ30は、少なくともタービンハウジング16の振動の度合いを検出可能な箇所に配置されていることが好ましく、また、制御装置50は、図2のステップS10において、少なくともタービンハウジング16の振動値を取得することが好ましい。
【0050】
この構成によれば、タービン11の一部が欠損することに起因する異常振動を迅速に検出することができるので、タービン11の一部の欠損に起因するターボチャージャ10の異常(例えば、タービン11の一部が欠損したという異常)を迅速に判定することができる。この結果、タービン11の一部の欠損に起因するターボチャージャ10の異常をより適切に判定することができる。
【0051】
また、この場合、予め実験、シミュレーション等を行うことによって、タービン11の一部が欠損した際に生じるタービンハウジング16の振動値を求めておき、この振動値以上の値を図2のステップS20の基準値(Vref)として設定することが好ましい。この構成によれば、タービン11の一部が欠損することに起因するターボチャージャ10の異常をより精度良く判定することができる。これにより、タービン11の一部の欠損に起因するターボチャージャ10の異常を適切に判定することができる。
【0052】
(実施形態2)
本実施形態に係る制御装置50a(この符号は図1に括弧書きで図示されている)は、図2のフローチャートで、ステップS20でYESと判定された後にステップS30を実行せずにステップS40を実行する点において、実施形態1の制御装置50と異なっている。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る制御装置50aは、タービンハウジング16及びコンプレッサハウジング17の少なくとも一方の振動の度合いを示す振動値を取得し(ステップS10)、この取得された振動値が予め設定された基準値以上である状態が予め設定された所定時間以上になった場合(ステップS20でYESの場合)に、警報を発生する警報発生処理、及びエンジン5の出力を低下させるエンジン出力低下処理の少なくとも一つを実行する(ステップS40)。
【0054】
なお、本実施形態において、ステップS40を実行する制御装置50aのCPU51は、本発明の「制御部」としての機能を有する部材に相当する。
【0055】
本実施形態によれば、ターボチャージャ10に何等かの異常が生じて、タービンハウジング16が異常振動した場合において、振動値が予め設定された基準値以上である状態が予め設定された所定時間以上になった場合に警報発生処理が実行されるので、ターボチャージャ10に異常が生じた旨をユーザに適切に報知することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、ターボチャージャ10に何等かの異常が生じて、タービンハウジング16が異常振動した場合において、振動値が予め設定された基準値以上である状態が予め設定された所定時間以上になった場合にエンジン出力低下処理が実行されるので、エンジン5を適切に制御することができる。
【0057】
以上本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 エンジンシステム
5 エンジン
10 ターボチャージャ
11 タービン
12 コンプレッサ
16 タービンハウジング
17 コンプレッサハウジング
30 振動センサ
40 警報装置
50,50a 制御装置
51 CPU(振動値取得部、異常判定部、制御部)
100 ターボチャージャの異常判定装置
図1
図2