(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記サイクロン容器は、上記吸気口が上記清掃用部材の投入のための投入口として兼用され、且つ上記塗料回収口が上記清掃用部材の回収のための清掃用部材回収口として兼用されている、請求項1に記載の塗料回収装置。
上記サイクロン容器は、上記円錐筒部のうち上記小径筒部側に上記清掃用部材の投入のための投入口を備え、上記円錐筒部のうち上記投入口よりも高所に上記清掃用部材の回収のための清掃用部材回収口を備える、請求項1に記載の塗料回収装置。
上記投入口は、上記清掃用部材の投入方向が上記塗料ミストの旋回方向に沿うような位置に設けられ、上記清掃用部材回収口は、上記清掃用部材の回収方向が上記旋回方向に沿うような位置に設けられている、請求項3に記載の塗料回収装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述の各態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0013】
上記の塗料回収装置は、上記気流によって上記吸気口から吸気された塗料ミストが上記処理空間において旋回することで空気と塗料とに遠心分離され、遠心分離後の空気が上記排気口から排気され、遠心分離後の塗料と上記清掃用部材が上記サイクロン容器から回収されるように構成されているのが好ましい。
【0014】
この塗料回収装置によれば、塗料ミストを空気と塗料とに遠心分離する通常処理と同時に、サイクロン容器の清掃処理を行うことができるため合理的である。
【0015】
上記の塗料回収装置において、上記サイクロン容器は、大径筒部と、上記大径筒部を下回る内径を有する小径筒部と、上記大径筒部と上記小径筒部との間に設けられた円錐筒部と、を有し、上記円錐筒部のうち上記小径筒部側が上記大径筒部側よりも低所となるように中心軸線が水平方向に対して傾斜しており、上記大径筒部に上記吸気口が設けられ、上記小径筒部に遠心分離後の塗料を回収するための塗料回収口が設けられているのが好ましい。
【0016】
この塗料回収装置によれば、塗料ミストから遠心分離された塗料を、重力にしたがって円錐筒部の内壁を大径筒部側から小径筒部側へと移動させて、塗料回収口を通じてサイクロン容器から連続的に回収することができる。
【0017】
上記の塗料回収装置において、上記サイクロン容器は、上記吸気口が上記清掃用部材の投入のための投入口として兼用され、且つ上記塗料回収口が上記清掃用部材の回収のための清掃用部材回収口として兼用されるように構成されているのが好ましい。
【0018】
この塗料回収装置によれば、投入口を吸気口とは別に設け、清掃用部材回収口を塗料回収口とは別に設ける場合に比べて、開口部分の数を減らすことができ、サイクロン容器の構造を簡素化することができる。
【0019】
上記の塗料回収装置において、上記サイクロン容器は、上記円錐筒部のうち上記小径筒部側に上記清掃用部材の投入のための投入口を備え、上記円錐筒部のうち上記投入口よりも高所に上記清掃用部材の回収のための清掃用部材回収口を備えるのが好ましい。
【0020】
この塗料回収装置によれば、旋回状態の清掃用部材が円錐筒部の内壁に押し付けられるときに、この清掃用部材を円錐筒部の内壁に沿って大径筒部側へと付勢する付勢力が生じる。この付勢力を利用して清掃用部材を円錐筒部の内壁に沿って小径筒部側から大径筒部側まで摺動させることができる。このため、円錐筒部の内壁を小径筒部側から大径筒部側までの広範囲を清掃用部材によって清掃することができる。
【0021】
上記の塗料回収装置において、上記投入口は、上記清掃用部材の投入方向が上記塗料ミストの旋回方向に沿うような位置に設けられ、上記清掃用部材回収口は、上記清掃用部材の回収方向が上記旋回方向に沿うような位置に設けられているのが好ましい。
【0022】
この塗料回収装置によれば、塗料ミストの旋回流を利用して、使用前の清掃用部材を処理空間に投入口を通じて円滑に投入することができ、また使用後の清掃用部材を処理空間から清掃用部材回収口を通じて円滑に回収することができる。
【0023】
上記の塗料回収装置は、上記清掃用部材を保管するための保管容器と、上記サイクロン容器の上記投入口と上記保管容器とを接続する供給配管と、上記サイクロン容器の上記清掃用部材回収口と上記保管容器とを接続する排出配管と、上記清掃用部材の移送のために上記供給配管及び上記排出配管のそれぞれに内蔵された移送機構と、を備えるのが好ましい。
【0024】
この塗料回収装置によれば、供給配管に内蔵された移送機構を利用することによって、保管容器に保管されている使用前の複数の清掃用部材をサイクロン容器の投入口まで連続的に供給することができる。また、排出配管に内蔵された移送機構を利用することによって、使用後の複数の清掃用部材を清掃用部材回収口から保管容器に連続的に排出することができる。
【0025】
上記の塗料回収装置において、上記清掃用部材は、塗料を捕捉可能な塗料捕捉構造を有するのが好ましい。
【0026】
このような塗料捕捉構造は、清掃用部材の形状、素材などの選択により表面の面粗度や細孔の大きさを適宜に設定することによって実現される。これにより、清掃用部材を回収することによって、この清掃用部材が捕捉した塗料も同時に回収することができる。
【0027】
上記の塗料回収装置において、上記清掃用部材は、弾性変形可能な素材からなるのが好ましい。
【0028】
この塗料回収装置によれば、清掃用部材がサイクロン容器の内壁に堆積している塗料に接触したときに弾性変形して塗料との接触面積が増える。これにより、清掃用部材が塗料を掻き取り易くなる。
【0029】
上記の塗料回収装置において、上記サイクロン容器は、塗料に対する非粘着特性を有するコーティング層が内壁に施されているのが好ましい。
【0030】
この塗料回収装置によれば、サイクロン容器の内壁に堆積している塗料に対して清掃用部材が接触したときに、該塗料が内壁から剥離し易い。
【0031】
上記の塗料回収方法において、上記気流によって上記吸気口から吸気した塗料ミストを上記処理空間において旋回させることで空気と塗料とに遠心分離し、遠心分離後の空気を上記排気口から排気し、遠心分離後の塗料と上記清掃用部材を上記サイクロン容器から回収するのが好ましい。
【0032】
この塗料回収方法によれば、塗料ミストを空気と塗料とに遠心分離する通常処理と同時に、サイクロン容器の清掃処理を行うことができるため合理的である。
【0033】
以下、塗装ブース装置に設けられる塗料回収装置の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0034】
この実施形態を説明するための図面において、特にことわらない限り、塗装ブース装置の幅方向を矢印Xで示し、奥行方向を矢印Yで示し、上下方向(高さ方向)を矢印Zで示すものとする。
【0035】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1にかかる塗装ブース装置1は、自動車ボディであるワークWの噴霧塗装を行うための装置である。この塗装ブース装置1は、塗装室2と、給気室3と、排気室4と、を備えている。
【0036】
塗装室2は、塗装対象であるワークWを導入可能な空間を有する。この塗装室2には、空間に導入されたワークWに向けて両側から塗料Pを噴霧するための塗装ノズル7,7が設けられている。各塗装ノズル7から噴霧された塗料Pは、当該塗装ノズル7から噴出する圧縮エアーにしたがってワークWに塗布される。
【0037】
給気室3は、塗装室2の上方に配置されている。この給気室3には、温度及び湿度の調整が行われた空気Aを作り出すための空調装置(図示省略)と、この空気Aを吸入して吐出する給気ファン5と、が設けられている。給気ファン5から吐出された空気Aは、塗装室2に向けて下向きに流れる下降流を形成する。
【0038】
排気室4は、塗装室2の下方に配置されている。この排気室4には、塗装室2において塗装後に残留する噴霧状の塗料ミストMから塗料Nを回収するための塗料回収装置10が設けられている。
【0039】
塗料回収装置10は、2つのサイクロン容器11,11と、送風装置としての2つの排気ファン20,20と、回収タンク21と、を備えている。1つのサイクロン容器11に対して1つの排気ファン20が設けられ、2つのサイクロン容器11,11に対して1つの回収タンク21が兼用されている。
【0040】
なお、2つのサイクロン容器11,11は同一の構造を有しており、以下の説明では、便宜上、一方のサイクロン容器11に関連する構造についてのみ記載する。
【0041】
サイクロン容器11は、自らの回転を伴わない固定式の容器であり、主に金属材料かならなり、塗料ミストMを液状又は固形状の塗料(「塗料残渣」或いは「塗料粕」ともいう。)Nと空気Aとに遠心分離する機能を有する。このサイクロン容器11は、吸気部15、排気部16及び回収部17を備えている。
【0042】
吸気部15には、塗料ミストMを空気Aとともに吸入するための吸気口11aが設けられている。この吸気口11aは、塗装室2に連通している。
排気部16には、塗料ミストMから遠心分離された空気Aを排気するための排気口11bが設けられている。この排気口11bは、排気ファン20を介して排気ダクト6に連通している。
回収部17には、塗料ミストMから遠心分離された塗料Nを回収するための塗料回収口11cが設けられている。この塗料回収口11cは、回収タンク21に連通している。
【0043】
排気ファン20は、その吸入側がサイクロン容器11の排気部16に接続されている。このため、排気ファン20が作動することによって、この排気ファン20に対応したサイクロン容器11の後述の処理空間11dに吸気口11aから排気口11bに向かう気流が発生するようになっている。
【0044】
また、この排気ファン20は、その吐出側が対応した排気ダクト6に接続されている。このため、排気ファン20が作動することによって、塗料ミストMから遠心分離された空気Aが排気口11bを通じて排気ダクト6に吐出される。このとき、空気Aは、塗装ブース装置1の圧力バランスにしたがって、給気室3から塗装室2を通り、排気室4のサイクロン容器11を経由して再び給気室3へと戻るような循環流を形成する。或いは、この空気Aは、循環せずに屋外へ排気される。
【0045】
一方で、塗料ミストMから遠心分離された塗料Nは、塗料回収口11cを通じて回収タンク21に流入して回収されるようになっている。このとき、塗料Nは回収タンク21の貯留空間22に貯留される。
【0046】
図2及び
図3に示されるように、サイクロン容器11は、内部に処理空間11dを有する円形断面の中空容器である。処理空間11dは、吸気口11aから吸気した塗料ミストMを処理するための空間であり、塗料回収口11cに連通している。
【0047】
このサイクロン容器11は、最大内径を有する円筒部分である大径筒部12と、大径筒部12の筒径を下回る最小内径を有する円筒部分である小径筒部13と、大径筒部12と小径筒部13との間に設けられた円錐筒部14と、を有する。このサイクロン容器11は、円錐筒部14のうち小径筒部13側の底面が大径筒部12側の底面よりも低所となるように、横断面の中心を通る中心軸線Lが水平方向に対して傾斜している。
図2及び
図3では、サイクロン容器11の傾斜角度をθで示している。
【0048】
吸気部15及び排気部16はいずれも、大径筒部12に設けられている。吸気部15は、吸気口11aから吸気した塗料ミストMが大径筒部12の内壁に沿って周方向に流れる向きで大径筒部12に配置されている。この吸気部15の吸気口11aは、清掃用部材Cの投入のための投入口として兼用されている。従って、吸気口11aを投入口11aということもできる。排気部16は、大径筒部12の内部と外部とにわたって中心軸線L上に延在している。
【0049】
回収部17は、小径筒部13によって構成されている。この回収部17の塗料回収口11cは、清掃用部材Cの回収のための清掃用部材回収口として兼用されている。従って、塗料回収口11cを清掃用部材回収口11cということもできる。
【0050】
円錐筒部14は、大径筒部12から小径筒部13に向けて内径が漸減するように、また小径筒部13から大径筒部12に向けて内径が漸増するように構成されたテーパー形状を有する。
【0051】
清掃用部材Cは、サイクロン容器11の清掃のために処理空間11dに投入される部材であり、塗料回収装置10を構成している。この清掃用部材Cが予め準備される。
【0052】
なお、所望の清掃効果を得るためには、サイクロン容器11の寸法などに基づいた規定数以上の複数の清掃用部材Cを準備して使用するのが好ましい。勿論、規定数を下回る数の清掃用部材Cを使用することも可能である。
【0053】
この清掃用部材Cは、ボールのような断面円形の球状部材であり、排気ファン20によって発生する気流に乗って処理空間11dを旋回できるような比重を有するのが好ましい。この場合、例えば、排気ファン20の運転状態に応じて定まる気流の流速などのパラメータに基づいて、清掃用部材Cの比重を設定することができる。これにより、清掃用部材Cを処理空間11dで塗料ミストMとともに旋回させて、内壁に堆積している塗料Nに対して周方向の広範囲にわたって接触或いは衝突させることができる。
【0054】
また、この清掃用部材Cは、スポンジ(フォーム材)やフェルトのように表面が粗く、多孔質であり、且つ弾性変形可能な素材からなるのが好ましい。
このような素材からなる清掃用部材Cは、表面が粗いためサイクロン容器11の内壁に堆積している塗料Nを掻き取ることができ、また多孔質であるため掻き取った塗料Nを細孔内に捕捉することができる塗料捕捉構造を有する。また、このような素材からなる清掃用部材Cは、サイクロン容器11の内壁に堆積している塗料Nに遠心力によって押し付けられたときに弾性変形する弾性構造を有する。これにより、清掃用部材Cは、塗料Nに押し付けられたときに該塗料Nとの接触面積が増えることで、一度に多くの塗料Nを掻き取って捕捉することができる。
【0055】
以下に、上記の塗装ブース装置1の動作について説明する。
【0056】
図1に示されるように、塗装ブース装置1において、給気ファン5及び排気ファン20がともに作動することによって、空調された空気Aは、給気室3から塗装室2を通り、排気室4のサイクロン容器11を経由して再び給気室3へと戻るように循環する。或いは、この空気Aは、循環することなく屋外へ排気される。
【0057】
その後、塗装室2の塗装ノズル7からワークWに向けて塗料Pが噴霧される。このとき、塗装ノズル7から噴出する圧縮エアーの流れによって、塗料PがワークWに塗布される。これにより、ワークWに塗装が施される。また、塗装後に残留した塗料ミストMは、空気Aの下降流によって排気室4に流れる。
【0058】
排気室4には、塗料回収装置10を構成するサイクロン容器11及び排気ファン20がそれぞれ準備されている。ここで、排気ファン20が作動しているため、サイクロン容器11の処理空間11dに吸気口11aから排気口11bに向かう気流が発生する。これにより、排気室4に流入した塗料ミストMは、この気流によってサイクロン容器11の吸気口11aから処理空間11dに吸気される。
【0059】
このとき、
図3及び
図4に示されるように、塗料ミストMは、吸気口11aから排気口11bに向かう気流にしたがって処理空間11dにおいて旋回する。この塗料ミストMは、サイクロン容器11の内壁に沿って旋回流Saを形成し、流速を高めながら円錐筒部14を大径筒部12側から小径筒部13側へと流れる。これにより、サイクロン容器11による通常処理によって、塗料ミストMが塗料Nと空気Aとに遠心分離される。
【0060】
サイクロン容器11の処理空間11dにおける空気Aの流速は、旋回流Saの中心付近の領域の方がその周りの領域よりも小さい。このため、この領域においては排気ファン20による吸引力の影響を受け易い。従って、塗料ミストMから遠心分離された後の空気Aは、旋回流Saの中心付近の領域を排気口11bに向けて直線的に流れる直進流Sbを形成する。これにより、遠心分離後の空気Aは、排気ファン20によって吸引されて排気口11bから排気される。
【0061】
また、塗料ミストMから遠心分離された後の塗料Nは、サイクロン容器11の径方向外方へと向かう遠心力を受けることにより、サイクロン容器11の内壁に付着する。このとき、塗料Nは、その一部が円錐筒部14の内壁に堆積し、残りは円錐筒部14の内壁をその傾斜(
図3中の傾斜角度θを参照)にしたがって塗料回収口11cに向けて移動する。この塗料Nは、塗料回収口11cを通じて回収タンク21の貯留空間22に貯留される。これにより、この塗料Nをサイクロン容器11から回収することができる。
【0062】
なお、
図4に示されるように、サイクロン容器11の内壁は、コーティング層18によって被覆されているのが好ましい。このコーティング層18は、非粘着特性を有する素材(典型的には、フッ素材料やセラミック材料など)によって形成されている。ここでいう非粘着特性を、撥水撥油性、離型性、防汚性などということもできる。このようなコーティング層18は、塗料Nが付着しにくいという効果、或いは塗料Nが付着しても剥がれやすいという効果を有する。
【0063】
また、サイクロン容器11による通常処理時にこのサイクロン容器11の清掃処理を行うために、吸気口11aからサイクロン容器11の処理空間11dに複数の清掃用部材Cが投入される(
図3参照)。なお、
図3では、便宜上、使用前の清掃用部材Cを白抜きの丸印で示し、使用中及び使用後の清掃用部材Cを黒い丸印で示している。
【0064】
これにより、複数の清掃用部材Cは、処理空間11dに投入された状態で排気ファン20によって発生した気流にしたがってサイクロン容器11の内壁に沿って旋回する。即ち、複数の清掃用部材Cはいずれも、塗料ミストMの旋回流Saに乗って旋回し、サイクロン容器11の内壁に沿って周方向に動く(
図4参照)。
【0065】
このため、サイクロン容器11の内壁に堆積している塗料Nに対して清掃用部材Cが旋回しながら接触或いは衝突することで、該塗料Nが内壁から剥がれ易くなる。これにより、サイクロン容器11の内壁を清掃用部材Cによって清掃することができ、サイクロン容器11に塗料Nが堆積しにくくなる。また、サイクロン容器11の内壁に付着しようとする塗料Nに清掃用部材Cが干渉することによって、該塗料Nの付着を邪魔することができる。
【0066】
ここで、清掃用部材Cは、サイクロン容器11の内壁に堆積している塗料Nを掻き取って捕捉し、重力にしたがって塗料回収口11cに向けて移動する。この清掃用部材Cは、塗料回収口11cを通じて回収タンク21の貯留空間22に落下して貯留される。これにより、清掃用部材Cをサイクロン容器11から回収することができる。
【0067】
なお、複数の清掃用部材Cを種々のタイミングでサイクロン容器11の処理空間11dに投入することができる。このタイミングとして、例えば、排気ファン20が作動する前や、排気ファン20が作動した状態で排気ミストMを処理空間11dに吸気する前や、処理空間11dへの排気ミストMの吸気が開始された後などが挙げられる。
【0068】
図5に示されるように、処理空間11dに投入された複数の清掃用部材Cはいずれも、その表面に付着した塗料Nを捕捉することによって投入時から回収時までの間で外径寸法が変化する。即ち、この清掃用部材Cの外径寸法について、例えば投入時である初期状態C1での外径寸法をd1とし、回収時である後期状態C3での外径寸法をd3とし、旋回時である中間状態C2での外径寸法をd2としたとき、d1<d2<d3なる関係が成り立つ。
【0069】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0070】
上記の塗料回収装置10において、排気ファン20が作動した状態でサイクロン容器11の処理空間11dに吸気口11aから排気口11bに向かう気流が発生し、これにより塗料ミストMが吸気される。そして、この塗料ミストMは、処理空間11dで旋回することによって塗料Nと空気Aとに遠心分離される。このとき、処理空間11dに投入された各清掃用部材Cも塗料ミストとともに旋回し、この清掃用部材Cが遠心力を受けつつサイクロン容器11の内壁に沿って動く。
【0071】
このため、サイクロン容器11の内壁に堆積している塗料Nに対して清掃用部材Cが旋回しながら接触或いは衝突し、該塗料Nが内壁から剥がれ易くなる。これにより、サイクロン容器11の内壁に堆積した塗料Nを除去できる。また、サイクロン容器11の内壁に付着しようとする塗料Nに清掃用部材Cが干渉することによって、該塗料Nの付着を邪魔することができる。
【0072】
その結果、清掃用部材Cを準備するのみで、サイクロン容器11の定期的な清掃作業を行わなくてすむため、塗料回収装置10の維持管理コストを低く抑えることが可能になる。
【0073】
特に、塗料ミストMを空気Aと塗料Nとに遠心分離する通常処理と同時に、サイクロン容器11の清掃処理を行うことができるため合理的である。
【0074】
なお、通常処理であるサイクロン容器11による遠心分離処理の終了後に、清掃用部材Cを処理空間11dに投入してサイクロン容器11の清掃処理を行うこともできる。この場合には、塗料ミストMが吸気されないため、サイクロン容器11の処理空間11dにおいて塗料Nを含まない空気Aによって清掃用部材Cを旋回させて、内壁に堆積している塗料Nをこの清掃用部材Cによって除去することができる。
要するに、サイクロン容器11の通常処理時と通常処理後の少なくとも一方のタイミングで、清掃用部材Cを使用した清掃処理を実行することができる。
【0075】
また、上述の実施形態1によれば、サイクロン容器11は円錐筒部14のうち小径筒部13側が大径筒部12側よりも低所となるように傾斜している。これにより、塗料ミストMから遠心分離された塗料Nを、重力にしたがって円錐筒部14の内壁を大径筒部12側から小径筒部13側へと移動させて、塗料回収口11cを通じてサイクロン容器11から連続的に回収することができる。
【0076】
また、上述の実施形態1によれば、サイクロン容器11において吸気口11aが清掃用部材Cの投入のための投入口として兼用され、且つ塗料回収口11cが清掃用部材Cの回収のための清掃用部材回収口として兼用されている。このため、投入口を吸気口11aとは別に設け、清掃用部材回収口を塗料回収口11cとは別に設ける場合に比べて、開口部分の数を減らすことができ、サイクロン容器11の構造を簡素化することができる。
【0077】
上述の実施形態1に関連した変更例として、サイクロン容器11が、清掃用部材Cの投入のための専用の投入口と、清掃用部材Cの回収のための専用の清掃用部材回収口と、の少なくとも一方を備える実施形態を採用することもできる。
【0078】
以下、上記の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0079】
(実施形態2)
図6に示されるように、実施形態2にかかる塗装ブース装置101は、実施形態1にかかる塗装ブース装置と同様に、自動車ボディであるワークWの噴霧塗装を行うための装置である。この塗装ブース装置101は、排気室4に塗料回収装置110を備えており、この塗料回収装置110の構成が実施形態1の塗料回収装置10の構成と相違している。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0080】
この塗料回収装置110では、回収タンク21が塗料Nの専用タンクとして構成されており、この回収タンク21とは別に清掃用部材Cを保管するための保管容器23が設けられている。
【0081】
図7及び
図8に示されるように、保管容器23は、使用前の清掃用部材Cが保管される第1保管領域24と、回収後の清掃用部材Cが保管される第2保管領域25と、を有する。これら2つの領域24,25は、互いに仕切られていてもよいし、或いは連通していてもよい。
【0082】
塗料回収装置110は、いずれも上下方向Zに延在する供給配管26及び排出配管27を備えている。供給配管26は、サイクロン容器11に設けられた清掃用部材Cの投入のための投入口14aと保管容器23の第1保管領域24とを接続するように構成されている。排出配管27は、サイクロン容器11に設けられた清掃用部材Cの回収のための清掃用部材回収口14bと保管容器23の第2保管領域25とを接続するように構成されている。このため、サイクロン容器11の処理空間11dは、供給配管26及び排出配管27のそれぞれを通じて保管容器23に連通している。
【0083】
図9に示されるように、サイクロン容器11の投入口14aは、円錐筒部14のうち小径筒部13側であって、且つ供給配管26を通じて投入される清掃用部材Cの投入方向D1が塗料ミストMの旋回方向Saに沿うような位置に設けられている。このため、塗料ミストMの旋回流Saを利用して、使用前の清掃用部材Cを処理空間11dに投入口14aを通じて円滑に投入することができる。
【0084】
図10に示されるように、サイクロン容器11の清掃用部材回収口14bは、円錐筒部14のうち投入口14aよりも高所であって、且つ排出配管27を通じて回収される清掃用部材Cの回収方向D2が塗料ミストMの旋回方向Saに沿うような位置に設けられている。このため、塗料ミストMの旋回流Saを利用して、使用後の清掃用部材Cを処理空間11dから清掃用部材回収口14bを通じて円滑に回収することができる。
【0085】
また、清掃用部材Cの移送のために供給配管26及び排出配管27のそれぞれに移送機構30が内蔵されている。この移送機構30は、駆動源(図示省略)によって回転する回転軸30aのまわりに螺旋型のスクリュー30bを備えた既知のスクリューフィーダーによって構成されている。
【0086】
本構成によれば、供給配管26に内蔵されている移送機構30が作動しているときには、使用前の清掃用部材Cが保管容器23から供給配管26を通じてサイクロン容器11の投入口14aへ上向きに供給される。これにより、サイクロン容器11の処理空間11dに使用前の複数の清掃用部材Cを連続的に投入することができる。
【0087】
一方で、排出配管27に内蔵されている移送機構30が作動しているときには、塗料Nを捕捉した状態の清掃用部材Cがサイクロン容器11の清掃用部材回収口14bから排出配管27を通じて保管容器23へ下向きに排出される。これにより、サイクロン容器11の処理空間11dから使用後の複数の清掃用部材Cを連続的に回収することができる。
【0088】
サイクロン容器11の処理空間11dに投入された清掃用部材Cは、径方向外方に向かう遠心力を受けることによって旋回しながら円錐筒部14を大径筒部12側へと移動する。この原理について
図11及び
図12を参照しながら説明する。
【0089】
図11に示されるように、旋回している清掃用部材Cに対しては重力Gと遠心力Faとの合力Fbが作用する。ここで、重力Gは鉛直下向きに作用し、遠心力Faはサイクロン容器11の中心軸線Lに垂直であり、且つこの中心軸線Lから遠ざかる方向に作用する。また、
図12に示されるように、清掃用部材Cに作用する合力Fbは、内壁に平行であり且つ大径筒部12に向かう方向の分力Fcと、内壁に垂直であり且つ径方向外方に向かう分力Fdと、に分解される。
【0090】
ここで、分力Fcは、清掃用部材Cを円錐筒部14において大径筒部12側へと移動させる力、即ち内壁に沿って上昇させる付勢力となる。このため、清掃用部材Cは旋回しながら大径筒部12側へと摺動する。また、分力Fdは、清掃用部材Cを内壁に押し付ける力となる。このため、清掃用部材Cは、径筒部12側へ移動するときに、内壁に付着している塗料との間に強い摩擦力が作用し、該塗料をこの摩擦力によって掻き取ることができる。
【0091】
そして、清掃用部材Cは、清掃用部材Cは旋回しながら大径筒部12側へと移動する途中で清掃用部材回収口14bに到達したとき、この回収口14bに連通している排出配管27を通じて保管容器23に回収される。
【0092】
上述の実施形態2によれば、サイクロン容器11において、旋回状態の清掃用部材Cが円錐筒部14の内壁に押し付けられるときに、この清掃用部材Cを円錐筒部14の内壁に沿って大径筒部12側へと付勢する付勢力が生じる。この付勢力を利用して清掃用部材Cを円錐筒部14の内壁に沿って小径筒部13側から大径筒部12側まで摺動させることができる。このため、円錐筒部14の内壁のうち、小径筒部13側から大径筒部12側までの広範囲(
図8中の領域Bを参照)を清掃用部材Cによって清掃することができる。
【0093】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0094】
上述の実施形態2に関連した変更例として、移送機構30としてスクリューフィーダー以外の移送手段を利用することもできる。例えば、清掃用部材Cを圧縮エアーなどで加圧して供給配管26を通じてサイクロン容器11の処理空間11dに押し込む構造や、清掃用部材Cを吸引によって排出配管27を通じてサイクロン容器11の処理空間11dから抜き出す構造などを採用することもできる。
【0095】
また、上述の実施形態2に関連した変更例として、サイクロン容器11の円錐筒部14において、供給配管26の接続位置(即ち、投入口14aの位置)を
図9に示される位置から周方向の任意の位置に移動させた実施形態や、排出配管27の接続位置(即ち、清掃用部材回収口14bの位置)を
図10に示される位置から周方向の任意の位置に移動させた実施形態を採用することもできる。
【0096】
本発明は、上述の実施形態1,2のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、各実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0097】
上記の各実施形態では、サイクロン容器11の処理空間11aに気流を発生させるために、サイクロン容器11の排気部16に接続された排気ファン20(送風装置)を用いる場合について例示したが、サイクロン容器11の吸気部15及び排気部16の少なくとも一方に送風装置を接続して、この送風装置を用いてサイクロン容器11の処理空間11dに気流を発生させるようにすることができる。
【0098】
上記の各実施形態では、清掃用部材Cが断面円形の球状部材である場合について例示したが、この清掃用部材Cの断面形状は円形に限定されるものではなく、例えば楕円形、三角形、四角形、多角形などの断面形状を有するものであってもよい。
【0099】
この場合、清掃用部材Cは、サイクロン容器11の処理空間11aに形成された気流に
乗って旋回できるような比重を少なくとも有していれば、その形状や寸法は限定されない。即ち、清掃用部材Cは、サイクロン容器11の処理空間11aにおいて気流によって旋回し、その旋回時に内壁に堆積している塗料Nに接触或いは衝突することができる質量体であればよく、上述の塗料捕捉構造や弾性構造を必ずしも有するものでなくてもよい。
【0100】
また、清掃用部材Cを、回収した塗料Nを塊状に成形した成形体によって構成することもできる。本構成の場合、回収した塗料Nを清掃用部材Cとして再利用することが可能になる。
【0101】
上記の各実施形態では、大径筒部12と、小径筒部13と、円錐筒部14と、を有するサイクロン容器11を用いる場合について例示したが、このサイクロン容器11の構造はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更可能である。例えば、円錐筒部14に相当する部位のみを有する構造や、大径筒部12及び小径筒部13の少なくとも一方に相当する部位のみを有する構造などを採用することもできる。また、サイクロン容器11の断面形状は、円形以外に、楕円形、三角形、四角形、多角形などであってもよい。
【0102】
上記の各実施形態では、サイクロン容器11の中心軸線Lが水平方向に対して傾斜している場合について例示したが、塗料N及び清掃用部材Cの回収が可能な場合には、サイクロン容器11の中心軸線Lが水平方向に延在するように構成されてもよい。
【0103】
上記の各実施形態では、サイクロン容器11の外部に設置した回収タンク21や保管容器23を利用して塗料Nや清掃用部材Cの回収を行う場合について例示したが、これに代えて或いは加えて、サイクロン容器11の内部に貯留空間を設け、この貯留空間に塗料Nや清掃用部材Cを一時的に回収するような構造を採用することもできる。
【0104】
上記の各実施形態では、2つのサイクロン容器11,11を使用する場合について例示したが、サイクロン容器11の数はこれに限定されるものではなく、必要に応じて1つ或いは3つ以上のサイクロン容器11を使用することもできる。
【0105】
上記の各実施形態では、サイクロン容器11の内壁をコーティング層18によって被覆する場合について例示したが、このコーティング層18を必要に応じて省略することもできる。
【0106】
上記の各実施形態では、自動車ボディの塗装設備に使用される塗料回収装置について例示したが、この塗料回収装置を、自動車以外の他の分野の塗装設備に適用することもできる。